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( ^ω^)死人のようです

1 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:19:34.84 ID:E+6HYbv80
過去スレ
URL2 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1282406582/
dat2  http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/146260
URL1 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1282323469/
dat1  http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/146033

−前回のあらすじ−
     _
   ( ゚∀゚)x"⌒''ヽ、   
   (|     ...::   Y-.、
    |  イ、     ! :ヽ
    U U `ー=i;;::..   .:ト、
          ゝ;;::ヽ  :`i
            >゙::.   .,)
           /:::.  /;ノ
     ゞヽ、ゝヽ、_/::   /
     `ヾミ :: :.  ゙  _/
       `ー--‐''゙~

以上。

2 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:22:29.94 ID:E+6HYbv80
四話 −不安−


 内藤はその後、そのままジョルジュの家に来ていた。
モララーと出会った内藤を一人には出来ないと、ジョルジュが提案したためである。

 ツンは用事があるからと来ていなかったが、
ジョルジュは自分一人だけでも内藤は守れる、と自信満々だった。
それに対し内藤はいくらかの不安を抱いていたが、もちろん口にすることは無かった。

( ^ω^)「それにしても……」
  _
( ゚∀゚)「散らかってるだろ。まあ、適当によけて座ってくれ」

( ;^ω^)「……はぁ」

 床には雑誌が散らばり、
椅子には洗濯したのかしていないのか分からない服が乱雑にぶら下がっている。

 テレビの前はゲーム機のコードが絡まりあい、テーブルの上にはソフトが積みあがっていた。

( ^ω^)「ジョルジュさんゲームするんですかお?」
  _
( ゚∀゚)「おう、するぜ。格ゲーとアクションな。
     あ、何飲む? 麦茶で良いか?」

( ^ω^)「お、麦茶好きですお」
  _
( ゚∀゚)「了解ー」

3 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:25:31.57 ID:E+6HYbv80
 そういえばいつの間にか家に上がりこんでしまっているけど、
少しくらいは警戒しなくていいのだろうか。
そんなことを考えながら内藤は部屋を見回した。

 壁には胸の大きなグラビアアイドルのポスターが貼られていたり、
壁掛けラックに溢れんばかりのCDが積まれていたり、
部屋自体は生活観溢れる部屋だった。
  _
( ゚∀゚)「その子可愛いだろ?」

(;^ω^)「お? あ、ええ」
  _
( ゚∀゚)「ほら、麦茶」

( ^ω^)「あ、ありがとうございますお」

 どうやら内藤がポスターの女に釘付けになっていると思ったらしい。
内藤は少しばかりそれを不満に思ったが、
取り立てて訂正することでもないと、忘れることにした。

 氷の浮いたグラスには確かに麦茶が注がれていた。
内藤はその安全性についても一考したが、もはやその行為に罪悪感を覚え始めていた。
既に内藤は彼に危険を感じることがないどころか、むしろ彼に親近感さえ覚えていた。

4 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:28:31.91 ID:E+6HYbv80
  _
( ゚∀゚)「ぷはー! うめー!」

( ^ω^)「うん、おいしいお」
  _
( ゚∀゚)「さて、勢いで家に連れてきちまったけど、どうする?」

( ^ω^)「……色々教えて欲しい事がたくさんあるお」
  _
( ゚∀゚)「あー。ま、そうだよな」

 ここに来るまでだけでもたくさんの事が内藤の身の回りで起こった。
喫茶店の襲撃に、モララーという男との出会い。
その全てが既に内藤とは無関係のものではないのだ。
  _
( ゚∀゚)「何から話すかなー。何から知りたい?」

( ^ω^)「とりあえず、僕にとって危険な人について教えて欲しいお」
  _
( ゚∀゚)「そりゃ大事だな。えーと……あ、その前によ」

( ^ω^)「?」
  _
( ゚∀゚)「敬語やめね?」

( ^ω^)「え、でもジョルジュさん僕より年上かと……」
  _
( ゚∀゚)「いや、俺もう死んでるし。年齢無し。0歳。バブー」

(;^ω^)「そんな無茶苦茶な」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 21:31:39.29 ID:6o859xvc0
ttp://localboon.web.fc2.com/099/top.html

まとめられてたよ

6 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:31:45.02 ID:E+6HYbv80
  _
( ゚∀゚)「いいだろいいだろ! 仲良くしようぜ! 敬語だと距離が遠いんだよ!」

 そう言ってジョルジュは強引に内藤と肩を組んだ。
急に近づいたジョルジュに内藤は一瞬驚いたものの、不快だとは思わなかった。
  _
( ゚∀゚)「おー、ちけーちけー。俺たちこれで友達だな」

(;^ω^)「僕たち今日会ったばかりじゃ……」
  _
( ゚∀゚)「友達になるのに時間はいらねえ! 勢いだ!」

( ^ω^)「……はあ。それじゃあ敬語は止めるお」
  _
( ゚∀゚)「そう来なくちゃな!」

 彼が詐欺師だったとしたなら、僕はたった今から人生が狂っていくのだろう。
心がわずかに弾むのを感じながら内藤はそう思った。
  _
( ゚∀゚)「まず今分かってる人間関係をはっきりさせとこうか」

 ジョルジュはおもむろに近くにあった片面印刷のチラシを掴むと、
裏返して真ん中に線を引き、その両側に名前と思(おぼ)しきものを書き始めた。
  _
( ゚∀゚)「こっちが俺たち。害無し」

 ジョルジュが差した右方には名前が三つ。
『おれ』、『ツン』、『内とう』。
『内とう』とはどうやら内藤の事らしい。

7 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:35:47.02 ID:E+6HYbv80
( ^ω^)「じゃあ左側に居るのは……」
  _
( ゚∀゚)「害有り」

 左方に書かれていた名前は五つ。
『モララー』、『ギコ』、『ペニサス』、『ハイン』、『ヒート』。
それに加えてクエスチョンマークが二つ書かれていた。

( ^ω^)「多いお……」
  _
( ゚∀゚)「そうだな。
     一応ハテナマークは二つだけど、実際何人いるかわかんねえ」

( ^ω^)「十人とかも……」
  _
( ゚∀゚)「ありうる」

(;^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「まあ気持ちは分かるが、ここで絶望するな」

 ジョルジュは真ん中の区切り線の上に大きなV字を描いて、
第三の領域を作り出した。
そしてそこに一際大きなクエスチョンマークを書いた。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 21:36:56.97 ID:6o859xvc0
携帯規制でこの時間帯でも露骨に支援は減ると思うけど、
それは話がつまらないせいじゃないからがんばれ。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 21:37:20.82 ID:3ZYgaA7IO
毎日お疲れというのは後にして支援だ

10 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:38:03.61 ID:E+6HYbv80
  _
( ゚∀゚)「敵でもない味方でもない奴。
     もしくは、まだ死人でもないかもしれない奴。
     そんな奴が居るんだ」

( ^ω^)「え、そうなのかお?」
  _
( ゚∀゚)「そうなのかおってお前そうだったじゃん」

( ^ω^)「あ」
  _
( ゚∀゚)「ここをいかに押さえるか。
     それがこれからの戦局を変えると俺は思っている。
     ちなみに、お前が初白星」

( ^ω^)「お?」
  _
( ゚∀゚)「少なくとも二人はあっちに先手を打たれてる。
     しかも仲間になったっぽいんだよなー」

(;^ω^)「あー……それで」

 つまりモララー側には少なくとも七人居るということになる。
それに対してジョルジュ側は三人。しかも内一人は一般人同然だ。

( ^ω^)「えーと、全員殺意むき出し?」
  _
( ゚∀゚)「むき出しと言うか、躊躇い無く殺すって感じかな」

11 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:40:50.74 ID:E+6HYbv80
( ^ω^)「……そもそもどうしてそんなことに」
  _
( ゚∀゚)「それを話すと、まあ長くなるんだが……」

 と、急にジョルジュがポケットから携帯電話を取り出した。
どうやら着信が来たらしい。
  _
( ゚∀゚)「お電話ありがとうございます。長岡運送です」
  _
( ゚∀゚)「やべ、怒られちった。しかし電話なんて久しぶりだな。どした?」
  _
( ゚∀゚)「もしかしてそれ大事な話か? 二人きりの方が良いとか」
  _
( ゚∀゚)「そっか。いいぜ。じゃあ、あの場所で待ってるわ」

 終話するとジョルジュは内藤に向き合い両手を合わせ頭を下げた。
  _
( ゚∀゚)「わり、ちょっと出かけなきゃなんなくなった」

( ^ω^)「え? あ、わかったお。えーと……僕はどうしたら」
  _
( ゚∀゚)「だよなー。
     多分今日すぐに危険な目に遭うなんてことは無いと思うけど……
     一応これ持っとけ」

 そういってジョルジュが取り出したのは黒いボールペンだった。
それをしばらく眺めた後、内藤は首を捻りながらジョルジュの顔を見た。

12 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:42:49.70 ID:E+6HYbv80
  _
( ゚∀゚)「まあまあ」

 促されるままにボールぺンを受け取った内藤。
これで相手を刺せとでも言うのだろうかと考えながらキャップを開けると、
内藤は想像との食い違いに目を見開いた。
キャップの中から現れたのはペン先ではなく、スプレーノズルだったのだ。
  _
( ゚∀゚)「ピンときた?」

( ^ω^)「スプレー……?」
  _
( ゚∀゚)「催涙ガス」

 てっきりナイフだの警棒だのというグッズを渡されるものだと思っていた内藤は、
それがひどく頼りないものに見え、素直に喜べずに居た。
内藤の心中を察したのか、ジョルジュがそれに言葉を付け加える。
  _
( ゚∀゚)「別にナイフ渡してもいいんだけど、お前絶対に取られない自信あるか?」

( ^ω^)「……無いお」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、躊躇い無く相手を刺す自信は?」

( ^ω^)「……多分、無理だお」
  _
( ゚∀゚)「じゃあこれだな。吹っかけて全速力で逃げろ」

 確かに、戦う術を持たない内藤には逃げることが一番なのだが、
その事実に内藤は納得しきれずに居るのも事実だった。

13 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:46:03.43 ID:E+6HYbv80
 それは一人役に立てない無力さが生む惨めさか。
あるいは逃げると言う選択肢しかないことに男としてのプライドが刺激されたせいか。

 しかし自分の力の程を理解している内藤は、やはり口を噤んだままその感情を飲み込んだ。
  _
( ゚∀゚)「じゃあ俺はそのまま直であいつらと戦ってくるから、
     お前は俺が帰ってくるまで自分の身の安全の事だけ考えてろ」

(;^ω^)「そんな軽く言って……」
  _
( ゚∀゚)「大丈夫だって。それに俺負けたらお前守れねーからな」

( ^ω^)「そんなセリフ、男の僕に吐くとは思わなかったお」
  _
( ゚∀゚)「惚れたか」

( ^ω^)「正直惚れた」
  _
( ゚∀゚)「……だはは! 惚れたか。そうかそうか」

 予想していない返事だったのか、一瞬あっけに取られた様子だったものの、
その後ジョルジュは陽気に笑って部屋を後にした。
一方、気まぐれでとぼけた返事を返した内藤も、その後すぐに思い出し笑いをした。
そうすると何だか少し楽しくなり、内藤はジョルジュとの距離がグッと縮まったように感じた。

14 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:48:39.01 ID:E+6HYbv80





 一人取り残された内藤は結局、
陽が暮れるまで何をするでもなく、ただぼーっと今までの事を思い出していた。

 突然目まぐるしく変化し始めた周囲の状況に、内藤は不安もあったがどこか楽しくもあった。
非現実的な展開も、命を失ったという非現実的な状況では、
どこかゲームのような気軽さ、浮遊感のようなものがあった。

( ^ω^)「そういえば……僕はどうやってこれ以上死ぬのかお?」

 一般的な死とは違うこの状態。
戦い、殺されることがあったとしたら、やはりそこに待っている死は一般的な死なのだろうか。

( ^ω^)「……考え出したらお腹空いてきたお」

 哲学的なことを考えるのが苦手な内藤は、早々と思考を切り上げた。

( ^ω^)「何か食べ物は……って人の家あさるわけにも行かないお。
      ってジョルジュ無用心すぎるお。僕が泥棒だったらどうするんだお」

 独り言(ご)ちながら、
『そういえばツンは死人を探せるんだっけ』
と心の中の疑問に答えを出した。

15 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:51:20.66 ID:E+6HYbv80
( ^ω^)「しかし一度気にしたらどんどんお腹空いてきたお」

 仕方なく内藤はコンビニへ買い物に出ることにした。
ここへ連れてこられる途中に一軒あるのを見ていたのだ。

( ^ω^)「最近全然食べてなかったからなんかワクワクしてきたお」

 あれを食べようかこれを食べようかと妄想しながら、内藤はジョルジュの家を飛び出した。
と、内藤は一旦外に出たが、直ぐに引き返した。

( ^ω^)「鍵かけないと大変だお。家のどこかに鍵があればいいんだけど……」

 再び入りなおそうとドアノブを捻り、ドアを引く。

ガン!

(;^ω^)「あれ、鍵……あ、オートロック……あー……」

 鍵の心配は無くなったが、同時に内藤はもうこの家には入れなくなってしまった。

(;^ω^)「……どうしよ」

 いつ帰ってくるか分からないジョルジュを待って、
このドアの前に座っていなければならないのか。

( ^ω^)「ま、とりあえずコンビニ行くお」

 思考は空腹により中断され、内藤は暗くなり始めた道を歩き出した。
こんなにも空腹を感じたのは死んでから初めての事だった。
それに、いざとなれば自分の家に帰ればいいだけの事だった。

16 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:54:12.08 ID:E+6HYbv80
( ^ω^)「あえてアイスを最初に食べて……」

 そして思考に囚われていた内藤は、眼前に迫った人物に気付かなかった。
全く減速することなく衝突し、内藤の妄想の源である食べ物が宙を舞った。

(;^ω^)「痛っ!」

(  )「……」

 衝突したときの柔らかい感触に、内藤はすぐ人間と衝突したことを悟った。
しかし派手にリアクションを取った内藤に対して、その人物は尻餅をつきながらも無言だった。
もしかしたら大きな怪我をしたのかもしれない。

 既に沈んだ陽は人物を照らさず、
また黒のパーカーを着てフードまで被っているその人物の様子を窺うのは難しかった。

(;^ω^)「ご、ごめんなさい。大丈夫ですかお?」

 手を差し伸べた内藤であったが、やはりパーカーの人物は何も反応しない。
小柄で華奢な体つきは女の様でもあったが、骨格はどうやら男のそれだった。
カーキのカーゴパンツの裾から覗く足も、やはり細くとも男のようであった。

( ^ω^)「あの……もしもし? 大丈夫ですかお?」

 まるで死んだように動かないパーカー男。
手を突いて体を支えているから死んでいるわけは無いのだが、
どうにもここまで反応がないと、さすがに不気味だった。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 21:54:15.93 ID:rL9lt5mpO
好きよ

18 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 21:57:35.76 ID:E+6HYbv80
(  )「……しかねえ」

( ^ω^)「はい?」

 フードの奥から低い声でそう一言。やはり男の声だった。

('A`)「殺されてたまるか……」

 男は急に立ち上がりポケットから黒い棒のような物を取り出した。
コンパスを開くように棒は二つに割れ、中から刃が顔を出した。
そして二つの棒はそのまま軸を中心に開き、
反対側で再び重なって柄となった。

 俗に言うバタフライナイフであるが、
男の開閉操作にもたつきがあり、どうも使い慣れていないようであった。

 男はバタフライナイフを握ったまま、
左手で外れていた白いイヤホンを両耳に付けなおした。
ナイフを持ちながらイヤホンをする男など話にも聞いたことは無いが、
ただならぬ状況であることは間違いなかった。

(;^ω^)「ちょっと待つお! なんでナイフなんか出してるんだお!」

('A`)「……」

 内藤の問いに答えることなく、男は足でリズムを取り始めた。
そして男は次第に頭でもリズムを取り始めると、あろうことか目を瞑った。
完全に音楽の世界に没頭し、ナイフを握っている手が不自然に見える。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 21:59:06.84 ID:6o859xvc0
ちなみにタイトルはしにん?しびと?しえん

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:01:48.56 ID:3ZYgaA7IO
しびとしえん

21 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:02:06.20 ID:E+6HYbv80
('A`)「殺してやる……」

 男が顔を上げた刹那、姿が消失。
視覚がそれをエラーでないということを判断した瞬間、
ザッと靴底が細かい砂利を蹴る音が耳に届いた。

 瞬間的に爆発した恐怖に、内藤は身をよじった。
それと同時に頬を冷たい風が撫(な)ぜた。
頬を走る冷たい線はやがて熱を持ち、痛みを生む。
指先を当てると僅かに滲む赤。

(;^ω^)「う、うわ!」

('A`)「……」

 しかし男は気にする風も無く、リズムをとり続けている。

敵だ。
背中を寒気が走り、頭に血が上る。
内藤は咄嗟にポケットの催涙スプレーを探った。

 前から地面を蹴る音。

(;^ω^)「――!」

 顎を引き、背中を打ち付ける覚悟で後ろに倒れこんだ。
勢い良く地面に激突する背中。
痛みと共に数秒呼吸が浅くなったが、無視しそのまま横へ転がる。

22 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:04:51.66 ID:E+6HYbv80
 切られた感じは無い。
どうやら二撃目はかわしたようだった。
慌てて顔を上げ、姿を確認。
居ない。
飛び上がって後ろを振り向く。
居ない。

居ない。居ない。居ない! 居ない!

 恐怖が指数関数的に増加していく。
右か左か、後ろか前か。
意識を広範囲に広げる。

 ふいに訪れた金属音。
コンクリートに金属が落ちた音。
内藤は反射的にその方向を見る。
観察して初めて疑問が生まれる。
ナイフが落ちているのは、おかしい。

 ならば後ろか。
振り向こうとしたその途中、
足元で動く不審な影に、内藤は違和感だけでその場を飛び退いた。
次の瞬間、重々しい音が響き、鼻の先に細かい砂粒が当たった。
目の前には人の頭ほどの石を地面に叩き付ける男の姿があった。
砕けた石が、自分の頭と重なって見え、内藤はぞくりとした。

 どれもが奇跡的な回避だった。
内藤はそれをひしひしと感じ、
次はもう無いと冷や汗が出るのを抑えられなかった。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:06:27.77 ID:6o859xvc0
じゃあ、相中とってデスマン支援

24 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:09:34.71 ID:E+6HYbv80
 決めるならこの瞬間。
内藤は既に遅いと知りながらも、
催涙スプレーを男に向かって噴出した。

 視認し、恐怖し、決意し、行動した。
無駄なプロセスに殺されるのは、やはり内藤だった。
スプレーはただ夜の空気に霧散し、
それと同時に内藤の希望も霧散した。

 死んだ。
心が諦めれば体は動かない。
もはや死の時まで架空の痛みを妄想するだけの人形。

 硬い物の砕ける音が、やけに遠くで聞こえた。
頭部に走る強烈な痛みと共に、内藤は意識を失った。





25 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:14:47.60 ID:E+6HYbv80
五話 −脱離−



 廃ビル、廃工場といった類のものは、
日常で近づくことも無ければ、見つけようとすることも無い。
大体そんなものが現実に本当にあるのだろうか。
ツンは非日常的な光景に、そんなことを考えていた。

ξ゚听)ξ「子供の頃なら秘密基地にしてたわね」

 暗闇の倉庫でツンは一人呟いた。
人形を持ち込んで舞踏会ごっこなんかを開いたかもしれない。
ファッションショーごっこなんて事もやったかもしれない。
しかし、まさか大人になって殺し合いをするとは思わなかったものだ。

 倉庫にはツンの背丈を軽く越える鉄製の箱こそあれど、中身があるのかは分からない。
この倉庫が使われているのか使われていないのか。
その問題は、生死に比べれば瑣末(さまつ)なものだ。

ξ゚听)ξ「さてさて、どう来るのか」

 既にツンのセンサーは二人の敵を捉えていた。
恐らくはヒートとハイン。
ペニサスが居ない状態の二人なら、どんな不意打ちをしてもおかしくは無い。

26 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:16:33.58 ID:E+6HYbv80
ξ゚听)ξ「たく、アイツは肝心な時に遅いんだから」

 一人で凌げるだろうか。
いや、大丈夫に違いない。
帽子を深く被って、ツンは笑った。

ξ゚ー゚)ξ「別に気にしてるわけじゃないけど、
      男の前じゃちょっと本気出し辛いし」

 カーディガンの前を閉め、大きく伸びをした。
一人で戦う事態を予測していたツンはいつも使っている武器は持ってこなかった。

ξ゚听)ξ「胴衣より、私服の方がやっぱ可愛いしねー」

 戦う場所が決まっていれば、そこに罠を仕掛けるのは当然である。
探知能力に関してはツンが一番秀でているのは、敵も重々承知であった。
だからこの倉庫にはツンが来たとき、罠は一つも無かった。
すべて看破されてしまうからだ。

 となれば、罠を仕掛けられるのはツンだけである。
それは最早暗黙の了解だった。
会場を決めるなどという行為自体愚かしいが、
ペニサスとジョルジュの複雑な関係がそれを成り立たせていた。

 言わばこれはある種の協定なのだ。
二対三と言うハンデの代わりに、ツンは会場に罠を仕掛ける。
敵もそれを納得し、ツンより早く会場に行くことは無い。
決して良心などと言うものではない。
これは言い訳なのだ。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:19:02.00 ID:MBWsVwvS0
うん、面白いぞ。がんばれ。

28 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:19:34.28 ID:E+6HYbv80
 二対三なのだから殺しても仕方が無い。
罠があるから殺しても仕方が無い。
殺人という大きなストレスにはその逃げ道が必要なのだ。
それを全て受け止めてしまっては、
自分も同時に殺してしまうことになるのだ。

ξ゚听)ξ「……」

 ツンも、一人の人間をその手で殺したときの事は良く覚えている。
事故だったが、結果的にそれは殺人だった。
突然圧し掛かった罪悪感に負け、ツンは死んだ。

ξ゚听)ξ「……ヤバ、いま意識飛んでた」

 突然その時の事を思い出したツンは、
いま置かれている状況を再確認し、それを頭の隅に追いやった。
敵はどうやら倉庫入り口前で止まっているようだった。

ξ゚听)ξ「へー、壁を破ったりはしないわけだ」

 二人にしては大人しい行動だった。
ツンは攻撃用の感覚入り武器を入り口に集中させ、
探知用のセンサーも一応倉庫の周りに数ヶ所残しておく。

 それらに使用した感覚器数は約二十、タマシイ量は約五分の三。
これらも上限まで使えるわけではない。
感覚器数は三十、タマシイ量は半分を超えたあたりから、
次第に自分の体の方の意識が曖昧になっていく。

29 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:22:46.23 ID:E+6HYbv80
 タマシイの消費量は、使用する感覚の種類、数、
あるいは注ぐ物体との距離やその性質によって変化する。
今回入り口付近に待機させたものは、
金属で出来た刃物類十二と、ガラス製の置物が三、いびつな形の鉄くずが五。
これらは入り口が開けられた瞬間二人目掛けて飛んでいく。

 また、入り口には開閉と同時に、
マグネシウムリボンが燃焼する仕組みを施してある。
目を開ければ視界を奪われ、目を瞑れば罠をかわせない。

ξ゚听)ξ「まー、でもこれは通用しないだろうなー」

 ただ、二人の能力を考えるとこの罠が妥当だとは思えなかった。
ヒートとハインは、共に超高エネルギー体を発生させることが出来る。
その能力差は、ヒートが点であるのに対し、ハインが線であるということである。
その分ヒートはレンジが長く、長距離型。
ハインは短〜中距離型だった。

 恐らく二人の発生させるエネルギーの前では、
ここらにある金属など、フライパンに水滴を落とすように、
あっという間に昇華してしまうだろう。
それはツンとて承知の上だった。

ξ゚听)ξ「来る、か」

 目元を大袈裟なまでに全て覆う大きなレンズのサングラスをかけると、
ツンはセンサーにまわしていた感覚を切った。
それとほぼ同時に扉が開かれ、閃光が倉庫内を激しく照らす。

30 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:25:41.59 ID:E+6HYbv80
 暗闇を激しく侵す暴力的なまでの光量を確認し、
ツンは入り口付近に待機させていた凶器を全て二人目掛けて飛ばす。
結末は確認せず、それら二十の感覚を切断。

 さて、刃物や鉄くず、それに人間を曖昧に感知する程度のセンサー。
その程度の規模の物質一つに使用するタマシイの量はいったいどれくらいか。
 答えは、全体の五十分の一から百分の一といった程度である。
この時ツンがタマシイの大部分を裂いていたものは、もっと質量の大きな物体なのだ。

ξ#゚听)ξ「死っねええええええ!」

 倉庫の隅にあった大きな鉄の箱。
人を詰めれば何十人、
いや百人や二百人は詰められるのではないかと言うサイズ。
人間に対してあまりにも大きすぎる箱が、
十分な加速をつけて、二人の影を轢(ひ)いた。

 箱はそのまま反対側の壁に爆音を上げて衝突。
いくら高エネルギー体を発生させられるからといっても、
その質量差が絶対的に大きければ、
昇華させるに値するエネルギーを与えるにはそれなりの時間が必要だ。

 その差がコンマ一秒だったとしても、
それは死へ届かせるには十分な時間だ。
何より箱が形を保ったまま壁に衝突し音を上げたのだから、
二人は轢(ひ)き殺されたのだ。

31 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:27:10.38 ID:E+6HYbv80
ξ゚听)ξ「……」

 僅か数秒のうちの出来事だった。
鼻を突く焦げ臭さと、煙や埃が未だ収まらない倉庫内。
耳の奥に未だ残る音の刺激を感じながら、ツンは溜息を吐いた。

ξ゚听)ξ「はぁ〜……ダメか〜」

 立ち上る土煙の向こうには、
体を密着させ青白い光の蔓(つる)を巻き付けた二人が居た。
よく見ると、ヒートは二つの手をそれぞれピストルのように構えていた。

ノパ听)「甘い甘い。俺の早撃ちは宇宙一だぜ」

从 ゚∀从「お前、箱の壁一枚撃ち抜いて安心しただろ。
      途中で気抜きやがって。箱くらい想像出来ろよ。壁は二枚。」

ノパ听)「うっせ! お前にも活躍の場を与えてやろうと思ったんだよ。
     つーかさっさと離れろよ!」

从 ゚∀从「おーおー、そんなこと言って、俺の服の裾を掴んでるのは誰だ?」

ノハ;゚听)「え? ……おい、掴んでねーじゃねーか!」

从 ゚∀从「やーい、引っかかった! もしかして本当に怖かったのか?」

ノハ#゚听)「んなわけねーだろ! ブチ殺すぞ! ハゲ!」

从#゚∀从「はぁ!? テメー上等じゃ……」

32 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:29:23.86 ID:E+6HYbv80
ノパ听)「……」

从 ゚∀从「……」

 いつものように喧嘩に発展するかと見えた二人だったが、
急に押し黙ると、蔓(つる)を消し、揃ってツンの方を見た。

ノパ听)「オメーは気に食わねーけど……まあ約束だからな」

从 ゚∀从「ああ。今日はペニサスさんに迷惑かけないで行こうぜ」

 呟き、ツン目掛けて歩き出した。

ξ゚听)ξ「へえ。今日はなんか違うっぽいの?」

 サングラスを外し、ツンは二人を見据えた。

ξ゚听)ξ「困ったなあ。ワタシ前線に立って戦うってタイプじゃないのに」

 帽子を捨て、ポケットから平たい皮のケースを三つ取り出した。
中から取り出したのは、風車のように刃が付いた金属の円盤。
電動ノコギリなどに使われる、ロータリー刃である。

ξ゚听)ξ「三ついけるかなー。ま、行くっきゃないよね」

 これらにツンは合計で二分の一のタマシイを注いだ。
二人に捉えられないスピードと変則的な動きを両立させ、
また、自己の防衛も疎かには出来ないのだ。
ほぼ全てを注ぎ、武器のみで体を守り通す策もあるが、
不測の事態が起こったとき咄嗟に体を動かせないのは、やはり致命的なのだ。

33 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:32:14.97 ID:E+6HYbv80
ξ゚听)ξ「まったく。アイツはどこほっつき歩いてるんだか」

 緊張感の無いトーンで悪態を吐くと、ツンはロータリー刃を中に抛(ほう)った。
その瞬間からロータリー刃は弧を描きつつ、
時には交差しながら唸りを上げて二人の元へ飛んでいった。

ノパ听)「来たぞ」

从 ゚∀从「まだ俺の距離じゃねーし」

ノパ听)「近づいてきたら任せたぞ」

从 ゚∀从「はいはい」

 そう言ってヒートは駆け出した。
それをチャンスとばかりに三枚の円盤がヒートを切り刻みに向かう。

ノパ听)「全部ぶち抜いてやるぜ!」

 ヒートは手のひらを地に向け五本の指を開き、
そのまま円盤へ向けて両手を突き出した。

ノパ听)「しゃあ!」

 計十本の指先の延長線上に、十発の小爆発が起こった。
空気の裂けるような音が耳を突き、それと同時に倉庫内が一瞬明るく照らされる。
 円盤は辛うじてそれらを交わし、一度距離を置くために弧を描いてツンの方へと引き返す。

34 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:34:43.66 ID:E+6HYbv80
从 ゚∀从「お前はアホか! わざわざ位置教えてどうする!」

ノパ听)「なんか目印無いと自分でもやりづれーんだよ!」

 ヒートの生み出すエネルギー体は、言わば軌跡を描かない弾丸だった。
ヒートが思い描いた座標に突如としてエネルギー体が発生するのである。
その威力は距離と数に反比例するが、
指向性が無いので近距離で使用すると自らも被害を食らうことになる。

从 ゚∀从「お前は全速力で本体叩きにいけ! 円盤は俺に任せろ!」

ノパ听)「おい! それじゃ俺が危ねえじゃねえか!」

从 ゚∀从「黙って信じとけ!」

 それを聞きヒートは舌打ちをすると、ツン目掛けてまっすぐに駆け出した。
無防備なヒートを切り刻もうと、三枚の円盤が一層の唸りを上げヒートへ向かっていく。

ノパ听)「うらぁぁぁぁ!」

 しかしヒートは立ち止まらない。
ツンだけを視界に入れ、致命傷を与えられる間合いへと駆けていく。
そして間合いまで後三歩のところで一枚目の円盤がヒートの左足へ、
二枚目の円盤がヒートの右眼へ切迫した。

 回避行動をする気の無かったヒートの体勢から言って、
この時点で、最低でも左足を失うことが決定していた。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:34:46.47 ID:MBWsVwvS0
wktk

36 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:37:26.71 ID:E+6HYbv80
从 ゚∀从「もらったぁ!」

 その未来をハインが塗り替える。
ハインは自らの後方から発生させた無数の青白い光線を重ね、
二枚の面状光にして円盤へ照射したのだ。
 その速度差は絶望的なまでに円盤が劣っていた。
二枚の円盤は標的を目の前にして甲高い金属音とともに跳ね飛ばされ、
間髪居れず飛んできた二度目の照射光により跡形も無く気化した。

ノパ听)「こええっつーの!」

 叫びながら、しかし確実に間合いを詰めたヒート。
ツンの立つ位置へと意識を集中し始める。
そこへ残った一枚の円盤がヒートのうなじ目掛けて飛来する。

从 ゚∀从「悪あがきだな!」

 今度は光線を鞭のようにしならせ、ハインは最後の円盤を処理しに掛かった。

 まさに光の鞭が円盤を絡め取ったときの事だった。
突如バランスを保てなくなり、ハインは右半身を強く打ち付ける形で倒れた。

ノパ听)「!」

 この異変にヒートが気付き、
ハインの方へ振り向こうとして、足元に迫っていたそれを偶然視認すると、
攻撃を諦め側方へ回避、それを見えない弾丸で撃った。

37 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:39:16.48 ID:E+6HYbv80
ξ゚听)ξ「チッ」

 それは剥きだしの刃だった。
十分な厚みを持ち、刃渡りは十五センチほど。
闇に紛れるように全体が黒く塗られていた。

ノハ;゚听)「ハイン!」

 ツンが打った罠は未だ残っていたのだ。
ごく微量のタマシイしか入れず、倉庫内に無造作に放置していたこの黒塗りの刃。
これ見よがしに円盤を飛ばすことで意識をそちらへ向け、
密かにこの刃で彼女らの足を狙っていたのだ。

 最初の二枚が無力化した瞬間、
ツンは使用していたタマシイの大部分を黒塗りの刃へと移した。
そして十分に近づけたところで三枚目の円盤を慣性力に任せて解放。
全神経を集中させ、二人のアキレス腱を狙った。

 策は功を奏し、ハインのアキレス腱を切断した。
しかしツンにはヒートが動揺こそすれども、攻撃を中断し振り返る、
と言うことまでは予想が出来なかった。

38 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:42:05.23 ID:E+6HYbv80
ノハ;゚听)「おい、大丈夫か!」

从#゚∀从「てめえなんでツンを撃たなかった!」

ノパ听)「けど!」

从#゚∀从「あの距離ならいけたはずだ! 足一本にビビってんじゃねーぞ!」

ノハ#゚听)「そうじゃねーよ!」

 確かに、ヒートがあの時ハインにも動揺せず、
アキレス腱を切られても動揺することなくツンを撃っていれば、
ツンは致命傷、もしくは逃げようの無い重傷を負っていた可能性は高い。

 勿論ツンもそれなりの回避行動は頭にあったのだが、
自らの作戦が成功した直後に、ヒートが動揺しなかった場合に対して、
冷静なまま対処出来ていたかは怪しい。

 現に、八割程度思い通りにいっていた先程の状況に対して、
ツンは未だ興奮しており、自分でもそのような回避行動はとれなかっただろうと思っていた。
しかし今は反省をしている場合ではないのだ。

ξ#゚听)ξ「ああああ!」

 怒号と共に、暗闇の中から二人目掛けて鉄筋が飛んでいく。
その数は十か二十か。
四方八方から迫る鉄筋は、いかに二人といえども、的が細長いため、
短時間で全てを跡形も無く消し去るのは難しいだろう。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:44:06.72 ID:xkK8tH7u0
まとめで見たぜ紫煙

40 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:45:09.07 ID:E+6HYbv80
ノハ;゚听)「ヤバ」

从#゚∀从「ヒート! 行け!」

 少なくともこれで動きを封じたハインは仕留めることが出来た。
ツンはそう確信した。

 そう、彼女はやはり興奮していたのだ。
これがもともと二対三の戦いであることすら忘れていたのだから。

『融けなさい』

 どこからか聞こえたその言葉に、
あろうことか全ての鉄筋が見えない高音の壁に触れたように、
常温のまま水銀のように融けてしまった。
びちゃびちゃと音を立てて滴る鉄筋の向こう、そこに彼女が居た。

('、`*川「ツン子ちゃん、上出来じゃない」

 その言葉の主はいつの間にか二人の直ぐ近くに立っていたのだ。
となれば先程の鉄筋はペニサスによって溶融されたに違いない。
ツンは舌打ちをし、背筋に寒気が走るのを感じた。
  _
(*゚∀゚)「おーっと危ない! こっちにも融け落ちそうなものが二つも!」

ξ#゚听)ξ「シャオラァ!」

 いつの間にか後ろから胸を捕らえんと、
手を伸ばしてきていたジョルジュの顔面を肘打ちし、ツンは寒気の原因を悟った。

41 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:47:06.34 ID:E+6HYbv80
  _
(; * )「いやあ、なんだろねこの味。口の中に融けた鉄が入ったかな……?」

ξ゚听)ξ「ホント最低だよね、アンタって。笑えない」

 これを切っ掛けに、場の空気が弛緩した。
しかし既に冗談では済まされない怪我をしている者が居るのだ。
ツンは場の空気に流されないよう、辺りの状況に気を配り続けた。

('、`*川「ハイン、大丈夫?」

从;-∀从「……ちょっと……痛いッス」

ノパ听)「とりあえずお前はもう下がってろよ。
     ペニサスさんが来てくれたんだから、大丈夫だって」
  _
( ゚∀゚)「いや、もうその必要は無いぞ」

 ジョルジュが唐突に三人の会話に割って入った。

ノパ听)「どういうことだよ。……全員片付けるってか」
  _
( ゚∀゚)「いや、戦う意味が無い」

ノパ听)
       「「え?」」
ξ゚听)ξ

 苦痛に声を出せなかったハインを除き、二人が同時に声を上げた。

42 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:50:16.42 ID:E+6HYbv80
('、`*川「私、モララーに付くの止めたから」

ノハ;゚听)「……え? え、えーと。えーと?」
  _
( ゚∀゚)「モララーの命令で戦う、なんてことは無くなったってことだ」

('、`*川「でも別にジョルジュの仲間になったわけじゃないから」
  _
( ゚∀゚)「それが残念なところだよなー」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、どういうこと?」
  _
( ゚∀゚)「まあ説明する前にハインを病院に連れて行こうぜ」

ノハ;゚听)「ペニサスさん! 俺、俺どうしたらいいんですか!」

('、`*川「とりあえずハインを運びなさい」

ノハ;゚听)「はい!」

 青白い顔で呻くハインを背負い、
ヒートはペニサスに頭を下げるとそのまま外へと飛び出していった。
それを見送ると、ペニサスは未だ床に融けている鉄の表面に触れ、
人差し指と中指に絡め取ると、それを親指とで擦りながらツンを見て薄く笑った。

43 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:52:16.48 ID:E+6HYbv80
('、`*川「溶けた金属ってすごく神秘的だと思わない?」

ξ゚听)ξ「なによ、いきなり」

('、`*川「とても流動的で、とても排他的。私にだって気を許してくれない。
     そのくせ、見ればいつも私と目が合う。もちろん、他人にだってそう」

ξ゚听)ξ「なに、ポエマーに転職? キモ」

 ペニサスは鉄の絡みついたその指先を、地面に広がる鉄の溜まりに向けた。
するとまるでビデオの逆再生のように液状の鉄が指に吸い寄せられていく。

 ペニサスの力は金属を隷属させるものだった。
その種類も様々、明確な定義はどんな学問にも縛られるものではない。
彼女が本能的に金属だと感じた物を隷属させられるのだ。
すなわち、彼女が隷属させられる物質、それこそが彼女における金属の定義なのだ。

 そして隷属の定義に至っても明確ではない。
特殊な相変化や物質移動など、熱力学では説明の付かないことをいとも容易くやってしまう。
その金属のあまりの従順さゆえ、隷属という言い方をされている。

ξ゚听)ξ「モララーに付くのを止めたってどういうこと?」

('、`*川「どうって言われても」

 滑らかに、ペニサスの右手を覆い始める液状の鉄。
それは差し込む僅かな光を反射し、
ペニサスの手が芸術家の作ったオブジェのように見えてくる。

44 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:54:27.63 ID:E+6HYbv80
('、`*川「上司のパワハラに嫌気が差した、とか?」

ξ゚听)ξ「なんで私に聞くのよ。じゃあ、私もセクハラ酷いから止めようかしら」
  _
( ゚∀゚)「なんと! セクハラを受けてたとは。
     まあしかし内藤も男の子なんだ、大目に見てやろうぜ」

ξ゚听)ξ「お前マジありえねえ」

 ペニサスの手に上る鉄は尽き、それらは全て彼女の手の表面に収まった。
鉄は手の上で絶えず流動を続け、ペニサスはその様子をじっと眺めていた。

('、`*川「……結局、私の悪癖は死んでも治らなかったのよ」

 そして纏わり付いていた鉄は一つの球へと姿を変え、
ペニサスの手の上に浮かび、静止した。

('、`*川「だから私はもう誰の言葉も聞かない。ジョルジュ、あなたの言葉でも」
  _
( ゚∀゚)「マジで? 参ったなー」

('、`*川「……ジョルジュはこれからどうするつもりなの?」
  _
( ゚∀゚)「秘密」

('、`*川「何も考えて無いくせに」
  _
( ゚∀゚)「ん、そうだな」

ξ゚听)ξ「……」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:56:04.94 ID:MBWsVwvS0
見てるぞー

46 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 22:57:37.60 ID:E+6HYbv80
 二人の間に流れる妙な空気に、
ツンは疎外感を覚えつつも警戒を解き始めていた。
二人はまるで恋人のようであり、家族のようでもあった。

('、`*川「私、しばらく姿消すからあの二人をうまく言いくるめてね」
  _
( ゚∀゚)「おい、無茶言うなって。
     それにお前が居なくなったら二人がどうなるか……」

('、`*川「どうなると思う?」
  _
( ゚∀゚)「どうもならねえな、きっと。アイツはそういうことしないだろうし」

('、`*川「そうね。ふふ、私もそう思う」

ξ゚听)ξ「えーとぉ? つまりもう戦わないってことでいいですかぁー?」

 妙な空気を我慢できずに、ツンが大きめの声を上げた。

('、`*川「なに? ツン子ちゃん妬いてるの?」

ξ;゚听)ξ「な! 冗談じゃない! こんな胸しか見ない男の何を!」
  _
( ゚∀゚)「顔も交互に見てます」

ξ゚听)ξ「ほら、聴いた? 百年の恋も冷めるわ。これ。
      お前私が若干引いていることに気付けよ?」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 22:59:22.63 ID:6o859xvc0
がんばれ

48 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:00:21.80 ID:E+6HYbv80
('、`*川「いいじゃない。陽気なジョルジュの方が楽しくて」

ξ゚听)ξ「……」

('、`*川「それじゃあ見つかる前に行くね」
  _
( ゚∀゚)「ああ、元気でな」

('、`*川「生きてたらまた」
  _
( ゚∀゚)「もう死んでら」

 ジョルジュの冗談にペニサスは薄く笑うと、
浮かべていた球を吸い込むようにして袖の中に仕舞い、
そのまま倉庫を後にした。

 ペニサスを見送るジョルジュの背中にツンは何かを尋ねようかとしたのだが、
その背中はツンの言葉を受け入れそうではなかった。





49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 23:03:01.88 ID:MBWsVwvS0
終わり?

50 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:04:38.22 ID:E+6HYbv80
六話 −卒爾−



 目が覚めたとき、内藤が居たのは天国でも地獄でもなかった。
そこは誰かの部屋だった。
天井は真白な壁紙が貼られているだけで、何も飾られていない。
体がふわふわと柔らかい何かに包まれていた。
そしてそれはドキドキするような甘い匂いがした。

( ^ω^)「……布団?」

 内藤はベッドの上に寝ていることに、ここで気が付いた。
首を横に向けると、部屋の様子が窺えた。
テレビと、テーブルと、カーペットにカーテン。

 テーブルの上には青いガラス細工のオブジェがあった。
テレビはそれほど大きくなく、またその電源は入っていなかった。
カーテンはゆらゆらと風に靡(なび)き、時より日光をカーペットに差し込ませていた。

 目にも耳にも静かな部屋だった。
まるで家のコマーシャルか何かのようだと、
内藤は枕に顔をうずめながら思った。

( ^ω^)「……あれ、ここどこだお?」

 のんきに枕の感触を楽しんでいる場合ではない。
記憶を掘り返せば自分は間違いなく死にかけているではないか。
多少のデジャヴを覚えながら、内藤は薄ピンクの掛け布団を跳ね除けた。

51 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:07:44.83 ID:E+6HYbv80
 見慣れないワンルームの空間を、
内藤はベッドから降りてキョロキョロと観察し始めた。
簡素と言うほどでもないが、無駄なものが少ないという印象を受けた。

 家具の配色や、ところどころにあるオブジェや小物を見ると、
住人は女なのかもしれないと内藤は思った。

( ^ω^)「とすると……ツン?
      いや、大穴で僕を襲ってきたあの男の部屋とか……」

 想像するに気持ちの悪いものだった。
そう言えばあの男はどうなったのだろうか。
いや、そもそも内藤自身がどうなったのか。

( ^ω^)「とりあえず怪我が無いか確かめてみるお」

 体を動かすのに苦痛は感じなかったが、
意識していないだけで傷はあったなどと言うことはあるものだ。
それに死人になった時だって、血の跡だけは残っていたのだ。

 内藤は上半身に着ていたものを脱ぐと、
前、後ろともに注意深く確認をした。
もちろん目で確認できる胸や腹も確認をする。

( ^ω^)「……なんともないお」

 続いて内藤は少々躊躇いながらも、
辺りに人の気配が無いことを確認するとズボンを脱いだ。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 23:08:43.98 ID:MBWsVwvS0
まだあるのか。全力でwktk待機するぜ

53 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:10:38.27 ID:E+6HYbv80
 足に怪我は無し。
ズボンもシミ一つ無い様子だった。

( ^ω^)「……しかし、妙な開放感があるお」

 他人の家でパンツ一丁になった内藤は、
体内を爽やかな風が駆け巡るのを感じていた。

( ^ω^)「他人の家でパンツって……パンツってwwww」

 自分の状態を今一度確認すると、
内藤は何故かテンションが上がり、ケラケラと笑い始めた。

( ^ω^)「パンツwwwwwパンツだおwwwwwww」

( ^ω^)「パンツってwwwwwwバカすぎるおwwwwwww
      このパンツも脱いだらwwwwwwwwもwwwwwももももwwwwwww」

川 ゚ ?゚)「目が覚めたか」

(;^ω^)「ひいいいいいいいいいいいい!」

 パンツを連呼してはしゃぐ男に対して、
優先事項四番目くらいの言葉を掛けてきた女に内藤は驚愕した。

( ;ω;)「な、なんで僕がこんなところに居るんだお!」

 そして錯乱し、訳の分からない言葉を吐き捨てながら、
内藤はズボンで股間を隠した。

54 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:12:15.65 ID:E+6HYbv80
川 ゚ -゚)「昨夜道端に倒れているのをたまたま見つけて、
      放っておくわけにもいかないし、私の家に来てもらったんだ。
      ちなみに、誤解の無いように言っておくと、私は脱がせてないぞ」

( ;ω;)「はい、それは勿論! 申し訳ありませんでしたお!」

 内藤は謝りながらズボンを穿き、上着もすぐに着た。
そんな内藤を尻目に、女は手にぶら下げていたビニール袋から、
なにやら食材を冷蔵庫に仕舞い始めた。

川 ゚ -゚)「そうだ。あそこに散らばっていた物は君のだろうと踏んで、
      綺麗で食べられそうなものだけ拾ってきたけれど、食べるかい?」

(;^ω^)「あ、それはどうもご丁寧に……」

 服を着た途端、内藤の中で羞恥心が膨れあがった。
普通逆だろうと自分自身で思いながらも、
内藤はしばらく顔の火照りが収まらなかった。

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 23:12:17.80 ID:MBWsVwvS0
文字化け?

56 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:15:22.23 ID:E+6HYbv80





 カラメルソースとすっかり混ざりあってしまったプリンを食べながら、
内藤は目の前の女を観察していた。
 ダークブラウンのストレートの髪が肩に丁度掛かるくらいまで伸びている。
フェイスラインはほっそりとしていて、肌は若干青白く、
化粧をしているかどうかは内藤には判断できなかった。

川 ゚ -゚)「コーヒーは飲めるかな?」

( ^ω^)「あ、はい」

川 ゚ -゚)「今フレンチローストの豆しかないが、カフェオレとアイスコーヒー、どっちがいい?」

( ^ω^)「えーと……カフェオレで」

川 ゚ -゚)「ああ、わかった」

 立ち上がる女から僅かに匂ったのは恐らく香水。
トップスは細めのブラックの長袖で、細いチェーンに捕らえられ羽根を散らす鳥が、
簡単な白のアウトラインでプリントされていた。
ウエストシェイプされているのか体のラインが強調されており、
内藤は少しの間そのラインに目を奪われた。

 ボトムスは深いブラウンで、こちらはそれほどタイトな作りにはなっていなかった。
しかし一目見るだけで女が細身であることはわかった。

57 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:19:08.95 ID:E+6HYbv80
 女がキッチンへ向かう後姿を見た後、
内藤はプリンを平らげ、改めて部屋を見回した。

(;^ω^)(僕は今まさしく女の人の部屋に居るんだお……)

 呼吸をする度に鼻腔に香る匂いが内藤の心拍数を上げる。
そして内藤はさっきまで自分が寝ていたベッドと、
そこに眠る女の姿を想像し始めた。

(;^ω^)「……くそっ! なんでもっと味わっておかなかったんだお!」

川 ゚ ?゚)「面白い奴だな。そんなにプリンに執着してる奴は初めて見た」

( ^ω^)「え?」

 見ると女がカップを二つ持って内藤を見ていた。
面白いと言う割に表情は固いままであったが。

(;^ω^)「あ、えーと、プリン大好きなんだお」

川 ゚ ?゚)「そうか。ほら、カフェオレだ」

( ^ω^)「あ、どうも」

 テーブルの上にカフェオレを二つ置くと、
女は再び香水の匂いをさせながらゆっくりと座った。
遅れて香ってきたコーヒーの香りに、内藤は思わず唸った。

58 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:21:20.88 ID:E+6HYbv80
( ^ω^)「おいしそうだお」

川 ゚ -゚)「感想は飲んでみてから言ってくれ」

 それもそうだと内藤はさっそくカップに口を付けた。
   _, ,_
( ^ω^)「……」

 内藤はそのままカップをソーサーに置くと、
スティックシュガーを無言で二本加えた。

川 ゚ -゚)「入れすぎだ」
   _, ,_
( ^ω^)「ちょっと予想外のテイストだったお。
      これミルキーなのに全然甘くないお」

川 ゚ -゚)「よく意味が分からんが、体を壊すなよ」

 忠告を聞きながらスプーンで砂糖を溶かし、
再び口を付けると内藤は笑顔になった。

( ^ω^)「おいしいお」

川 ゚ -゚)「複雑だな。そう、ところで名前は?」

( ^ω^)「あ、内藤ですお」

川 ゚ -゚)「そうか、どうりで。お前があの死人(しびと)か」

(;^ω^)「し……」

59 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:23:43.72 ID:E+6HYbv80
 突然の『死人』という言葉に内藤は戸惑い、返答に窮した。
「しにん」ではなく「しびと」なのだ。
だとしたら目の前の女は誰なのか。敵なのか。
肯定するべきか惚(とぼ)けるべきか。
既に詰まってしまった時点で肯定しているようなものだが、
それでもグレーになら出来る。

(;^ω^)「しびとって……死んだ人ってことかお?」

川 ゚ -゚)「ああ。もう話は聞いているんだろ? お前はどっちに付くんだ?」

 揺さぶられているのか。
モララーに付くといわなければ始末されるとでも言うのだろうか。
内藤はにわかに高まる鼓動に負けそうになりながらも、
なんとか思考を続ける。

(;^ω^)「言っておくけど僕は凡人だお。何の力も無いし、何も知らないし――」

川 ゚ -゚)「別に脅しているわけじゃない。世間話だ」

 そう言って女は自分のカップに口を付けた。
カフェオレに浮いた泡が、女のふっくらとした唇の隙間に静かに吸い込まれていく。
その様子を見ながら内藤はポケットをゆっくり探ったが、何も入ってはいなかった。

川 ゚ -゚)「そうそう、私も内藤と同じ死人だ。名前は……クー」

 自分のグループに居ないのだから、目の前のクーと言う女は敵なのだ。
しかし内藤は抵抗する術を持たず、
ただ事態が悪化しないことを祈ること位しか出来なかった。

60 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:26:35.35 ID:E+6HYbv80
川 ゚ -゚)「私はどちらにも付くことなく、しばらく一人で死人としての生活を送っている」

( ^ω^)「え? それはどういう……」

川 ゚ -゚)「どうもこうも、言葉の通りだ」

 どちらにも付くことなく。
それはすなわちモララーの仲間ではないということであった。
しかしその事実に内藤は却(かえ)って混乱した。

( ^ω^)「えーと……どうして?」

川 ゚ -゚)「何がだ」

( ^ω^)「だって、モララーが嫌いだったらジョルジュに付くし、その逆だってあるし……」

川 ゚ -゚)「どっちかに付かなきゃいけない決まりでもあるのか?」

( ^ω^)「いや……」

川 ゚ -゚)「私は別にどちらにも協力したいと思うほど共感しないだけ、ただそれだけだ」

( ^ω^)「……あ」

 そこで内藤はジョルジュに教えられた第三の勢力の存在を思い出した。
未だ死人ではない、あるいは敵でも味方でもない者。
それは立場が未決定ということではなく、
中立な立場だという意味でもあったのかと始めて気付いたのだ。

61 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:29:20.01 ID:E+6HYbv80
川 ゚ -゚)「二つの敵対したグループが居たとしても、
      別にどちらかが必ず正義というわけでもあるまい」

( ^ω^)「じゃあなんで僕に『どっちに付くか』なんて訊いたんだお」

 その問にクーは目を普段よりも少しばかり開いて、内藤の顔を数秒見つめた。
そして薄く笑うと左手をテーブルの端に突いて体を少し傾けた。

川 ゚ -゚)「そうだな。たしかにそうだ」

 一人納得した様子のクーは、それきりしばらく沈黙した。
互いにただカップの中身を減らすことで時間を潰すだけ。
死人には贅沢な時間だったが、
内藤はカップの中身が無くなると共に今度は自分から問を投げかけた。

( ^ω^)「昨日、僕を運んでくれたのは、クーさんかお?」

川 ゚ -゚)「ああ。そうだ」

( ^ω^)「えーと……その時、僕はどんな感じだったか教えて欲しいお」

川 ゚ -゚)「地面に頭を打ち付けて白目を剥いていたぞ」

( ^ω^)「……地面?」

川 ゚ -゚)「ああ」

(;^ω^)「え? え? だって……えーと、僕の他に人とかは」

川 ゚ -゚)「居たぞ。パーカーの男が」

62 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:32:19.32 ID:E+6HYbv80
(;^ω^)「そ、その人はどうなって……」

川 ゚ -゚)「退治した」

( ^ω^)「退治?」

川 ゚ -゚)「ああ、ちなみにいま玄関に寝ているぞ」

(;^ω^)「……」

 無言で立ち上がり玄関へと向かう内藤。

ヽ('∀`)ノ.......
  (  )........
 ノ  |.............

 居た。

 緩んだ表情で諸手を上げ床に寝そべる男は、間違いなく昨晩内藤を襲った者だった。

(;^ω^)「床って……かわいそ過ぎるお」

川 ゚ -゚)「何言ってるんだ。家の中であるだけでもありがたいものだ。
     君はこいつに突然襲われたんだろ?」

( ^ω^)「それは、まあ……」

川 ゚ -゚)「まあ最後は君が勝手に転んで気を失ったみたいだったが」

(;^ω^)「転んで? ……え?」

63 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/22(日) 23:34:57.12 ID:E+6HYbv80
川 ゚ -゚)「私が助けに入ってこいつの攻撃を無効化した瞬間、
      君は足の力が抜けたように崩れ落ちて一人で地面に頭を打ち付けたんだ」

(;^ω^)「……? と、言うことは、自滅ですか僕」

川 ゚ -゚)「自滅です」

(;^ω^)「は、恥ずかしいお……」

 頭を抱えて俯く内藤。
顔が熱くなっていくのを感じながら、状況の整理をする。
そして一つ、気になることが浮かんだ。

( ^ω^)「なんで僕を助けたんですかお?」

川 ゚ -゚)「咄嗟に助けなければと思ったからだ」

( ^ω^)「そう、ですかお」

 何か深い理由がありそうだと思っていたわけではないが、
それにしても単純なその理由は内藤を少なからず驚かせた。

('A`)「……んぁ」

 と、突然倒れていた男がうめき声を上げた。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 23:36:52.85 ID:MBWsVwvS0
ドクオだせぇ

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/22(日) 23:37:53.52 ID:qZH+h0Xj0
ドクオwww

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:00:06.49 ID:kbexz5GK0
猿か?

67 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:00:23.30 ID:E+6HYbv80
(;^ω^)「……お、起きそうだお」

川 ゚ -゚)「そうだな」

(;^ω^)「そうだな、じゃなくて、何かしないと」

川 ゚ -゚)「何もする必要は無い。こいつは君が思っているほど凶暴じゃない」

( ^ω^)「そうなのかお?」

川 ゚ -゚)「ああ」

('A`;)「う……ゲホッ! ゲホッ! う〜……」

( ^ω^)「咳き込んでるお」

川 ゚ -゚)「水でも持ってくるか」

 台所へと向かったクーを尻目に、内藤は倒れたままの男の様子を窺い続けた。

('A`)「……」

( ^ω^)「……」

('A`)「……ん。……んんっ!」

 咳払いのような声を出して、男は手のひらで顔を拭い始めた。

68 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:02:58.10 ID:gsqUxCYt0
('A`)「ん〜……ん? ……」

('A`;)「え!?」

 飛び上がるようにして四つん這いになると、
素早く辺りを何度も見回し、最後に内藤と目があった。

('A`)「……」

(;^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「水を持ってきたぞ。ほら、飲め」

 緊縛した空気もまるで気にせず、クーは男にグラスを差し出した。

('A`)「……なんで?」

川 ゚ -゚)「咳き込んでいたからだ」

('A`)「そうじゃなくて、なんで俺がここに居るのかって」

川 ゚ -゚)「私がお前を倒したからだ」

('A`)「倒してない。なんで俺をここに連れてきた」

川 ゚ -゚)「それは私の勝手だ」

('A`)「……敵じゃなかったのか」

69 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:06:34.29 ID:gsqUxCYt0
 呟くと男は立ち上がり、パーカーのカンガルーポケットをまさぐると、
イヤホンを引き出して耳に着けた。

('A`)「……帰る」

川 ゚ -゚)「そうか」

(;^ω^)「いやいやいや!」

 フードを被り部屋を出て行こうとする男を、内藤が慌てて呼び止めた。

(;^ω^)「えーと、その、そうだ、なんで僕を襲ってきたんだお」

('A`)「……」

 しかし男は何も答えることなくそのままドアを開けて出て行ってしまった。

( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「水飲むか?」

( ^ω^)「いらないお」

川 ゚ -゚)「ふう、お前は人気がないなあ」

 グラスに語りかけるクーの傍らで、
内藤は男が何を考えていたのかだけを、ずっと考えていた。

70 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:09:45.94 ID:gsqUxCYt0





( ^ω^)「――という事があったんだお」
  _
( ゚∀゚)「つまり、夜道で地面に頭をぶつけりゃ美人に拾われると」

ξ゚听)ξ「別に美人なんて言ってないでしょ」

( ^ω^)「いや、結構美人だったお」
  _
( ゚∀゚)「ほれ見ろ。俺の美人センサーに狂いはねえ」

ξ゚听)ξ「あっそ」

 あれからすぐにクーの部屋を後にした内藤は、
そのままジョルジュの家に向かった。
そして幸運なことに二人と再会し、これまでの経緯を説明した。
  _
( ゚∀゚)「冗談は置いといて、大変だったな」

( ^ω^)「うかうか外も歩けないお」

ξ゚听)ξ「それで、その子どうするの?」
  _
( ゚∀゚)「どうするって?」

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:12:15.31 ID:kbexz5GK0
しえん

72 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:12:25.94 ID:gsqUxCYt0
ξ゚听)ξ「仲間に誘ったりとか」
  _
( ゚∀゚)「いやー、無理でしょ。
    俺たちの事よく知ってるようなのに、何もアクション取らないんだから」

ξ゚听)ξ「珍しく消極的ね」
  _
( ゚∀゚)「いや、まあな」

 表情を変えずに、首の後ろをニ三度掻くと、
ジョルジュはそのまま黙ってしまった。

ξ゚听)ξ「別に良いけどね。あっちの戦力は大分減ったわけだし」

( ^ω^)「あ、まさか倒したのかお?」

ξ゚听)ξ「いや、倒したって言うか、敵じゃなくなった?」

( ^ω^)「味方でもなく?」

ξ゚听)ξ「何だろうね。最近そういうスタンスが流行ってるのかな」

 中立勢力の増加、あるいは敵が増えたとも取れる。
今でこそ、各々の規模は微々たるものだが、
もし今よりも数十、数百倍の規模にまで拡大したなら、
もはやモララーが云々という事態ではなくなってくるだろう。

73 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:14:41.42 ID:gsqUxCYt0
( ^ω^)「これから先、例えばジョルジュやモララーの、あるいは他のグループも、
      数十人とか数百人の規模になったら、戦争みたいになっちゃうのかお?」

ξ゚听)ξ「う〜ん……そしたら私は女王様ね」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ俺殿様!」

ξ゚听)ξ「あんたバカ殿ぴったりね」
  _
( ゚∀゚)「喰らえ! ちょんまげビーム!」

 ケラケラと笑うツンに、真顔でとさかのように(本人はちょんまげを意識しているのだろうが)
手のひらを頭の上に乗せるジョルジュ。

(;^ω^)「……」
  _
( ゚∀゚)「どうした、爺」

(;^ω^)「いや、なんでここまで楽天的になれるのかなって」

ξ゚听)ξ「ま、コイツはちょっと異常だよね」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、俺だけかよー。
     んー、ま、最初はそんなもんだ。お前も多分何かしらの力が発現すれば楽になる。
     それまでは俺がビシッと守ってやるからまかしとけ」

(;^ω^)「うーん……」

 男にそんなことを言われても嬉しくないなあと思いながら、
内藤はそれでもなんとなく納得をした。

74 : ◆CftG3KV7X3mq :2010/08/23(月) 00:19:14.61 ID:gsqUxCYt0
ξ゚听)ξ「そう言えば、この力ってどうなってんだろ?」
  _
( ゚∀゚)「どうなってんだろって?」

ξ゚听)ξ「いや、私とジョルジュの力は違うじゃん。
      当たり前といえば当たり前だけど、みんな何が原因で違うんだろうって」
  _
( ゚∀゚)「さあ? 個性? 運? そんなの俺とお前の顔が違うようなもんじゃねえの」

ξ゚听)ξ「あ、なんかジョルジュのくせにそれっぽいこと言っててムカつく」
  _
( ゚∀゚)「まあ、なんとなく思う節はあるんだけど……まだ良くわかんないって感じだな」

ξ゚听)ξ「なになに?」
  _
( ゚∀゚)「ひ、み、つ」

ξ゚听)ξ「え、キモイ」

(;^ω^)「……はあ」

 結局何一つ前に進まない会議だったが、
それでも今の内藤はそれをどうにかする知識も経験も力も、
まるで持ち合わせていなかった。





75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:22:53.64 ID:kbexz5GK0
乙。ジョルジュいいやつ。好きだ。

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:24:08.33 ID:gsqUxCYt0
明日月曜なのでここら辺で止めておきます。
これから先をもう一度練り直したいので、次は早くて一週間後くらいかと思います。
投下すると刺激で先が開けますね。

支援本当にありがとうございました。
後半gdって申し訳ない。

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:40:07.90 ID:n4s6UHLO0
お疲れ。次の投下も待ってるぞ。

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:40:40.20 ID:+Kh0XsMM0
おもろかった乙

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 00:56:19.11 ID:Qf2zCWAJ0
絶倫だな
面白かった 乙

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 02:04:57.23 ID:dgwbwqDF0
続き期待して待ってるよー
乙!!

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 04:27:21.77 ID:MHJzVV3LQ
おもしれー
続き待ってるよー
乙乙

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/23(月) 06:01:35.71 ID:741UV5d+0
携帯全規制されてるからあわててPCの電源入れたしw

>>1

続き楽しみにしてるよ

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