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【とらドラ!】大河×竜児【ウトウト妄想】vol.22

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 22:19:37 ID:z4CqbrT0O
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
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/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨
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| ヽ ' ∠
      ',∧      |、 \   〉 、_       (: :/ ,ニ、: : :ィ ,ニ=、
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      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Y: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
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  ,'            |            /. : : : :|:///∧ : ∨///: :
: : : : : : : . \

まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【キラキラ妄想】Vol21
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1278256303/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 22:21:29 ID:9GrHedT10
過去スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1231122796/
【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/
【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1242374673/
【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1245146459/
【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1246704738/
【とらドラ!】大河×竜児【ナツナツ妄想】Vol13
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1248388647/
【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249487623/
【とらドラ!】大河×竜児【モグモグ妄想】Vol15
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251296860/
【とらドラ!】大河×竜児【ハフハフ妄想】Vol16
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253001418/
【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1255435399/
【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/
【とらドラ!】大河×竜児【ニコニコ妄想】Vol19
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1262338222/
【とらドラ!】大河×竜児【ハラハラ妄想】Vol20
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1268576015/
【とらドラ!】大河×竜児【キラキラ妄想】Vol21
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1278256303/

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 22:22:39 ID:9GrHedT10
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは新避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所
http://jbbs.livedoor.jp/anime/7850/

★関連スレ
竹宮ゆゆこ107
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1273744718/
【竹宮ゆゆこ】とらドラ4!【絶叫】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/comic/1277527895/
【フラゲ】とらドラ!総合ネタバレスレ 3版目
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1236595750/
【間島淳司】とらドラジオ!【喜多村英梨】
http://atlanta.2ch.net/test/read.cgi/netradio/1229772543/
【PSP】とらドラP!part10【ポータブル】
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1254273765/
【田村くん】竹宮ゆゆこ 32皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1274222739/

★キャラスレ
【とらドラ!】キャラ総合スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1222905488/
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http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1280407856/
【とらドラ】逢坂大河は手乗りタイガー可愛い 8匹目
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1280756770/
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http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1279588944/
【とらドラ!】川嶋亜美はモデルかわいい Part.10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1265360375/
【とらドラ!】竜児×亜美【私もいれてよ】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1273070058/
■とらドラ! 総合スレッド Part.1■
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1215959570/


4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 22:23:20 ID:9GrHedT10
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった
Eいろいろあって付き合うことになっておしまい ←今ここ

実際は竜児を犬扱いしている大河こそが飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora


5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 22:24:01 ID:9GrHedT10
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で応援よろしくお願いします

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意

●売り場
http://2ch.tora3.net/

年間33$(だいたい3500円〜4200円前後 円高だと安く買えます)
登録メルアドはプロバイダのメールアカウントのみ フリーメールや携帯メールは使用不可

携帯もってんならこの方法で簡単なんじゃないか?

1:http://get.ula.cc/pc/ こっから携帯で新規口座作って12000狐PをGET
2:http://bainin.ula.cc/sale/maru/ ここから●二週間お試し券を買う
3:http://maru14.ula.cc/ ここでお試し券を交換
4:完了メールきたら専ブラのログイン設定にIDとパスいれる
5:今までと同じように書き込める

2週間過ぎたらまた同じ手順やればいいだけ。数回分あるし一月半規制続いても安心
iPhoneだったりしたらクレクレするしかないんだろうけどさ

お試し●の交換・利用について
1つの●をPC+携帯で共有可
同じメアドで試用期間内に重複登録はできない。14日経過後、期限切れメールが届いてからであれば、同じメアドで交換可
同一アカウントから期間が重複した交換をするには、メアドを複数用意すれば可能
ちょっと間使えなくてもいいという人は期限切れのメールがきてから再申請してください

栄光のニダーラン @ wiki
http://www36.atwiki.jp/nida-run/pages/1.html


6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/05(日) 23:04:58 ID:qPnRCtfP0
>>1
超乙です!
ごほうびに大河の髪を1回撫でていいよ!

7 :マジレス1IX91w ◆MAJI1IX91w :2010/09/06(月) 00:31:31 ID:gQ/pXT5HP ?2BP(5)
とらドラは終わらせるべきではなかったのだよ……

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 03:29:17 ID:DnDNrRYY0
>>1
AA怖いことになってるなw

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/06(月) 08:08:27 ID:6esuQSlw0
>>1乙です!

ウトウトと聞くと、どうしても眠そうな大河の世話を焼く竜児の姿が思い浮かぶw

10 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/07(火) 22:22:47 ID:GBQ5pdC80
もう一乙……

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/07(火) 23:40:48 ID:MLs+owtj0
一乙

ところで前スレの>>275-281のコントまとめてもらえないかな?


大河「あいすたべたい…」

竜児「ねぇぞアイスなんて」

大河「竜児買ってきなさい!」

竜児「ほら、買ってきたぞ...って寝てるし!」

………ゴクリ

(あ……ほっぺたに畳のケバが……)


スレ一同「待て、不用意に手を伸ばすんじゃない!」


                       ______
                        \        \
     _, -、                  |,.\        \
.  〃´ ^⌒ヽ               /   \        \
.  i{ /{八人}i              /    ,. i \_______\
  八ハ#゚ 、゚ノハ  パンパン        |    /.| |\||_______||~
  ノノ ノ)iてと八    ..         | .|   | | |  ||          ||
 ( (く/_j」〉ノ )   .  _./⌒..───' | / | | .||          ||
     (_ハ_)     ..  __/⌒ 二二ニニ ノ  U ||        ||



良いリレーSSだと思うんだが…

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/08(水) 00:58:17 ID:0hSFpG7l0
期待

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/08(水) 15:21:04 ID:db9cqWxr0
前スレ 埋め乙
竜児だけのAAとは珍しい!
てか2つ目ちょっとコワイw


14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/09(木) 20:51:30 ID:QVLSoZsE0
竜児って身長どれくらいなんだ。大河の頭が30センチ下に見えるんだっけ。
亜美ちゃんが165で、俺はもう少しあるとか言ってたから170は無い?

今たまたまDVD一巻のジャケが目に入ってふと気になった。
一巻のジャケ好きだ、冷めた顔してて。でも背景はピンクっていうw


15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/09(木) 21:39:46 ID:cBbQw/hl0
大体30センチ差と書かれてるね
大河が143.6だから173くらい?少なくとも170はあると思う

差はいいよな…大河は竜児にすっぽり収まるサイズだしすごい萌え
竜虎で身長差カプに目覚めたw

16 : ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:20:23 ID:O9gqxOLE0

またまたずいぶんと間があいてしまったのですが、「とらドラ!, again」の続きができたので、
投下させて頂きます。

えー、すいません、今回も長いです。15レスほどあります。
●あるからさるさんは大丈夫かと思いますが
途中で切れたらすいません。放置にならないよう、その時は何とかお知らせします。 

では、vol.20の 552、
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS11/578l.html
大河の母親の家を脱出してからの続きとなります。
(まとめ人様、いつも有難うございます)

17 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:21:41 ID:O9gqxOLE0


日曜日 20:30
県道に止めたタクシーから降り立つと、竜児は亜美の家の別荘を見下ろした。
以前来た時よりも常緑樹が増え、道路からは建物が見えにくい。増築したのだろうか、少し建物の形が
変わったような気もするが、なにせ高校2年の夏以来なので記憶があやしい。

大河の父親の家から、飛行機、バス、新幹線、電車、タクシーと乗り継ぎ、ここまで6時間もかかった。
冬の夜はとっぷりと暮れており、タクシーがUターンして駅の方へと戻っていくと、周囲には街灯の
ほんのわずかな光しかなく、真冬の暗闇の中に放り出されたような気分になる。防風林の下から小さく
聞こえる波の音以外、シンと静まりかえっていた。

移動中に何度か電話やメールでやりとりし、全員が無事に別荘に着いたことは確認している。亜美も
撮影班の撤収と共に、現場からマネージャーの車で2台のライトバンを追いかけて、途中で合流できた
ようだった。今は夕食が終わり、皆、一息付いている頃だろう。

「しかし、なんか、静かすぎねぇか…?」

ケータイで足元を照らしながら、竜児は別荘へと続く階段をゆっくりと降りていく。徐々に建物全体が
見えてくるが、どの窓にも明かりが付いていない。階段を降りきって、建物に近づいていくと、少なく
とも8人もの人間がいるはずなのに、話し声はおろか、人が動いている気配すら感じられない。

玄関前の駐車スペースには、ライトバンが2台止まっていた。1台は実乃梨のチームのもの。もう1台は
春田の家のものだが、今日の番組を放映したテレビ局のステッカーが側面にでかでかと貼られている。
ヤクザや警察が来た時に、マスコミがついてきていると勘違いさせるためのカムフラージュだった。

玄関の扉の前に立ち、耳をすませてみるが、やはり何の物音も聞こえてこない。
「まさか、みんな疲れて、もう寝ちまったってことは無いよな…」

ふと、嫌な想像が竜児の頭の中を掠めていく。
「…ヤクザの連中が襲ってきて、全員連れだされた、なんて、ははっ、そんな馬鹿なこと…」
つい30分程前、駅から電話し、弟を寝かしつけている大河に代わって、春田や実乃梨と話したばかりだ。
その時、変わった様子は全く感じられなかった。

しかし、押し迫ってくるような周囲の暗闇と不自然なまでの静けさが、竜児を不安にさせる。
「そんなはずはない、鍵だって、ちゃんと掛かっているはず…」
玄関の取っ手に手を掛け、レバーを引くと、「カチャ」という軽い音と共に扉がいとも簡単に動いた。

「えっ…?」
心臓の鼓動が高くなる。真冬だというのに、嫌な汗がいく筋も背中を流れていく。
亜美やしっかり者の奈々子がいて、こんな不用心なことはしないはず、するとやはり… でなければ…

中に誰かが潜んでいるかもしれない… そう考えて、竜児はできるだけ物音を立てないようにゆっくりと
玄関の扉を引いた。

僅かに開いた扉の隙間から、そーっと顔を入れてみる。玄関とその先のホールはやはり真っ暗で、外から
挿し込む僅かな光でぼんやりとモノの輪郭が見えるだけ、もう少し良く見ようと半身を入れた、その時、

目の前に、先の尖った何かが突きつけられていることに気づいた。

先端の反対側、下の方には獣の目玉のような2つの鈍い光が暗闇に浮かび上がっている。
それに気づくと同時に、地を這うような恐ろしい声が…

− おい、命が惜しかったら、手を後ろに組んで、腹這いになれ −


18 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:23:52 ID:O9gqxOLE0

* * * * *

「大河っ、お前なぁ!!」
竜児は木刀の切先を右手でぐいっと掴むと、大河の手から取り上げた。
「あっ、あっ、ちょ、ちょっとぉ、何すんのよ、竜児っ!」

玄関からホール全体にパッと明かりが灯ると同時に、大きな笑い声が巻き起こった。
「お〜、高っちゃんだぁ〜」
「やっと着いたね。てか気づくの早くね?」
「高須君、お疲れ様」
ホールから2階へと続く階段の下には、春田と麻耶、奈々子の3人が立ち、にこにこと笑っている。

「大河、お前、なにやってんだよっ!」
バタバタと両手を動かし、時には飛び跳ねて木刀を取り戻そうする大河をかわしながら、竜児は視界に
入った者を石に変えてしまいそうな強烈な目付きで睨みつける。
だが、最愛の婚約者は、そんな視線も言葉も全く意に返さず、無理矢理遊びを中断させられた子供の
ように、口を尖らせて不満を訴えるだけだった。
「ちょっとぉ、せっかく侵入者をやっつける予行演習してたのに、つまんないわね! 次は目隠しして、
簀巻きにしようと思ってたのに……」

「バレバレだ。てか、こんな得物、誰が用意したんだ?」
脱いだ靴を揃え、ホールへと上がりながら、竜児は尋ねた。
「あ、オレっす」
「春田、大河に渡すなよ! こんなもん使うと捕まるぞ」
「あら、家の中で侵入者の撃退に使う分には、凶器準備集合罪にはならないのよ」
「誰もそんなことは聞いてねぇ。ったく、ちょっとはビビったんだからな!」

「へぇー? ちょっとなんだ。高須君も成長したね」
声の方を見ると、リビングルームに通じる扉の横、照明スイッチのところに、亜美が立っていた。
竜児と目が合うと、
”よっ!” 
と片手を上げ、声を出さずに挨拶をする。

「まぁ、あまりにも不自然だったからな、一応考えた。それより川嶋、撮影現場の方、大変だったろ、
本当にありがとな。うまくいったのは全部お前のおかげだ」
「え? えーっと、あ… あれぐらい、亜美ちゃんにはどうってことないわよ…」
「なに真っ赤になってんの??? ばかちーのくせに」
「うっさい! チビトラは黙ってろっつーの!! で、高須君、そっちはどんな感じだった?」
「ああ、こっちも上々だ…」

竜児は大河の父親とのことを順を追って説明した。最初は頑なに協力を否定していたが、恵児への
インタビューで大きく心が揺らぎ、大河の叫びで完全に開かれたことを。

「ん? 大河、どした?」
気がつくとさっきまでの不満顔はどこへやら、大河は気まずそうに顔を赤らめ、珍しく上目遣いで
開いた両手の指先を合わせながら、もじもじと竜児の方を見上げている。

「あのっ、竜児、ごめん。わ、わたし、ついカッとなって、余計なことしちゃった…」
自分のドジが引き起こしたハプニング、そして計画に無い行動を取ってしまった。大河はそれを気に
しているのだ。ふと周りを見ると、みんなが優しく微笑んでいる。きっと大河はここに来るまでの
移動中にも皆に繰り返し謝っていたのだろう…

「大丈夫だ。この物語の主役は大河、お前だ。俺達は主役を全力でサポートするためにいるんだ。
それに今も話したろ。お前の叫びのおかげで、大河の親父さんは、やっと自分の本心に気付けたんだ。
俺の言葉だけじゃ無理だった。大河にも礼をいわなきゃな、ありがとう。親父さん、最後はお前のこと、
“大河ちゃん”じゃなくて、“大河”って呼び捨てにしてたぞ」

竜児のその一言で、大河は全てを理解した。かつての”新しい”父親は、今、本当の父親として、自分を
実の子と同じように感じてくれるようになったのだ。

19 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:26:20 ID:O9gqxOLE0

「うん!」
竜児は、顔をくしゃくしゃにして喜びを見せる大河の頭の上に手を置くと、自分が感じた父親の想いが
大河にも伝わるよう、力を込めて、繰り返し何度も撫でてやるのだった。

「大河のお母さんは?」
「さすがに疲れみたいだから、恵児と一緒に休んでる」
「そっか… そういえば、櫛枝の姿が見えないがどこに…?」

「うおぉい、高須君、こっちだぜ!!」
ホールに向かって開いた扉の向こう側、リビングルームへと続く廊下から、実乃梨のいつもの明るい声が
響いてきた。扉を通り抜け、声の方に近寄ってみると廊下の先に新たな小部屋が作られており、実乃梨が
豪勢なデスクチェアに座ったまま、手をあげている。建物の形が変わったと感じたのはこの部分だった。

「櫛枝、そこでなにやって…? おぅ、すげぇな!」
小部屋を覗き込むと、そこには数台の液晶モニタが置かれて、敷地や建物のいたる所の様子をリアル
タイムで写し出していた。
「赤外線カメラにセンサーもあるんだぜ! すげぇだろう!」
「前にでっちあげのスキャンダルでママが芸能記者達にしつこく追われたことがあってさ、その時の
証拠づくりにあちこちにカメラとか置いたんだけど、まさかこんなことで役に立つとはね…」
竜児の後を追って、大河や皆と共に小部屋にやってきた亜美が事も無げに言う。

「さっき俺が着いたのがわかったのはこれのおかげか… しかし櫛枝、いつもすまねぇな。監視とか
見張りとか運転手とか大変な役ばかりやらせて。ありがとう、あとは俺が変わるから、休んでてくれ」
竜児はいつも頼りになる友人の肩をポンッと叩き、その労を少しでもねぎらおうとした。

「ひゃっ、た、た、たきゃすきゅん! こんなことは、お、おいちゃんにはどってことないんだぜ!」
「実乃梨ちゃん、テンパリ過ぎ…」

その時、液晶モニタの画面の1つに警戒を表す赤のサインが灯り、スピーカーから警告音が響いた。
「なんか来た! 車だ!」
すぐさまモニタに振り返った実乃梨が鋭く叫び、その場にいた全員に緊張が走る。
ありふれた商業用の白いワゴン車が県道から林道に入り、別荘に続く坂道をゆっくりと下ってくる。
その緊張を一瞬で解きほぐしたのは、モニタを覗き込んだ麻耶の一言だった。

「あ、あれ、久光の車!」
麻耶はドライバーの姿が見えずとも、能登であることを確信しているようで、嬉しそうに顔を綻ばせて
いる。この日、能登は撮影現場ではなく、東京の編集部にいた。スクープ記事を書いた人間として、
上司と共に放映内容をチェックし、万一、記事と齟齬が生じた場合には対策を取らなければならない。
最悪の場合、雑誌の回収も起こり得るため、編集部に詰めていたのだ。

「能登か? なんで分かるんだ?」
「会社の取材用の車だよ、最近はいつもこれに乗ってる!」
「そ、そうか…」
皆の安堵の溜息が小部屋一杯に広がる中、嬉しそうに目を輝かせている小虎が一匹。

「ね、また電気全部消して! さっきの予行演習、も一回やろうよ!」
大河はいつの間にか取り戻していた木刀を握り直すと、いそいそと玄関の方へ向かおうとして……
竜児にむんずと首根っこを掴まれた。

「なによぉ…」
「お前なぁ、いい加減にしろよ…」

1秒後、別荘に明るく、賑やかな笑い声が響いた。

* * * * *


20 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:29:38 ID:O9gqxOLE0

「ひゃあ… 東京からほとんど休憩無しでぶっ飛ばしてきて、さすがに疲れたよ…」
見張りを続けると言い張る実乃梨を小部屋に残し、皆がリビングルームに集まった。能登は両手両足を
広げ、ソファーにもたれながら、大きな溜息をついた。

「久光、お疲れ様!」
そんな能登に、麻耶はかいがいしく、温かいタオルや飲み物を次々に差し出している。ここ一連の活躍で、
麻耶はすっかり能登に惚れ直している… そんな奈々子のつっこみに、2人が真っ赤になる場面もあった。

「いやぁ、しかしタイガーには参ったよ…」
顔を拭っていたタオルを置き、眼鏡を掛け直すと、能登はおもむろに大河の方に振り返った。
「ア、アタシ…?」
大河は自分の顔に人差し指の先を向けながら、急に青ざめた表情を見せる。
「そ。タイガーのあの絶叫を見てさ、デスクがカンカンに怒ったんだよ。“こんな話聞いてない。
これじゃタイガーが亜美ちゃんを利用してるみたいで、ウチの記事と全く逆じゃないか”ってさ」

穏やかな空気が流れていた空間が、急にシンと静まりかえった…

「やっぱり… ご、ごめんなさ…い…」
ソファーの上にちんまりと座っていた大河は、肩をすぼめ、小さな身体をさらに小さくして俯く。
「久光! そんな言い方無いでしょ! 私は見てないけど、あれはタイガーのホントの気持ちだから
いいんだって、せっかくみんなでタイガーを元気づけてきたのに…」
さっきまで甘い表情を見せていた麻耶が、一転してキツイ目付きで能登を責めたてはじめた。

「わーわーわー、ごめんごめん、ウソ、いや嘘じゃないんだけど… 大丈夫! 問題無いってば!」
恋人のひと睨みで、能登は両手を大きく振ると、あっという間に前言を翻した。
「へっ…?」
大河は混乱してきょとんとしてるだけ。麻耶はまだ膨れっツラのまま能登を睨んでいる。春田はそもそも
なぜデスクが怒ったのか分からない。

「デスクに怒鳴られたのは事実なんだ。でもウチの編集長が大河の啖呵をえらく気に入っちゃってさ、
亜美ちゃんのスキャンダルよりタイガーの方が面白そうだから、今度はタイガーを取材しろってさ…」
「ちょっとぉ、亜美ちゃんよりチビトラの方が面白そうって、どういうこと? 一体どこ見てんのよ」
亜美は抗議の声をあげながら、顔はニコニコしていた。

能登は汗を拭うような仕草をしながら、取り調べで完落ちした犯人のごとく、真相を話し続けた。
「最初の計画よりも放映された方が数倍インパクトがあった。当然、大きな話題になる。ウチの週刊誌に
関連した記事が載っていれば、中身が少々違っていようが、皆、知りたがって買うってことさ。タイガー、
さっきはごめんな。俺も肝を冷やしたもんだからさ、ちょっとしたお返しというか…」
「久光は余計なことしなくていいのっ!」
「イテテテッ! よせっ、俺がハゲてもいいのか?」
麻耶が能登の髪をひっぱり、リビングルームは再び、暫しの笑い声に包まれた。

「あーあ、でもタイガーの絶叫、私も見たかったなー。この中で生で見たのは奈々子だけだよね?」
能登の髪をやっと解放した麻耶が、ソファに身を預けながら、口を尖らせる。
「うふふっ、凄かったわよ。窓なんかビリビリ震えちゃってたし」
「ウソっ!」 「ウソでしょっ!」
珍しく大河と春田が息ぴったりに、素っ頓狂な声をあげた。
「ホントのことよ… あ、私、櫛枝と監視係、代わってくるね」
軽やかに逃げていく奈々子を見送りながら、能登が痛む頭をさすりつつ、DVDのケースを取り出した。
「ほら、録画したのなら持ってきたぜ…」
生でもTVも見ていなかった麻耶、春田、遅れてリビングルームに入ってきた実乃梨から歓声があがった。

「ちょっ、ちょっ、ちょっと、ま、待ったぁー!」
「なぁに? さすがの手乗りタイガー様もやっぱり恥ずかしい?」
大河に、というより監督に翻弄された亜美が、こちらも筋違いの腹いせとばかりにチクリと刺す。
真っ赤になった大河はしどろもどろになりながらも“見るな”とは言えず、条件を1つ出すのが精一杯。

「ん、み、み、見てもいいけど、わ、わたしのいない時にして…」
「「「「「あっはははっははは」」」」」

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 01:30:52 ID:eC67RK410
支援っ!

22 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:33:43 ID:O9gqxOLE0

* * * * *

日曜日 21:00
「でも次の動き、考えといた方がいいよな…」
何度目かの笑い声がおさまった後、さっきの悪ふざけとは違い、能登が真剣な表情で話し出した。

「ヤクザが心配か?」
心当たりのある竜児が即答する。
「出てくる前にデスクと話してたんだ。ヤクザの動きが早くなるかもしれないってね」
「あぁ、俺もそう考えて、じいちゃんに頼んで、泰子を実家に避難させた…」

竜児は移動の間に、あらかじめ事情を打ち明けてあった祖父の清児に連絡し、泰子を店から自宅に
戻らせず、当分実家で寝泊りさせるよう、頼んでいた。

計画では、警察とヤクザに情報が伝わるタイムラグを作り、その間に然るべき警察から保護を受けること
を狙っていた。警察には編集部を通じて、番組の放映時間や今回の件のあらまし、連絡方法を伝えてある。
一方、ヤクザは、恐らくテレビで流れた内容の噂から始まり、何の話か特定して裏を取るまで、それなり
に時間が掛かるとを踏んでいたのだ。

しかし、大河がテレビに顔を見せたことで、その時間は大幅に短縮されることになった。逢坂陸郎の件が
動いた。であれば、奴らが考えるのはどう対処するか、それだけだ。必要な情報を集め、望まない結果を
実力で阻止しようするのは想像に難くない。竜児は、大河が自分の行動を気にし過ぎないように注意しな
がら、単刀直入に尋ねた。

「なぁ大河、休んでもらってるところ悪いが、今すぐお母さんに話を聞いてもらえないか?」
「な、なにを?」
「全てを、だ」

竜児が考えていた、もう一つの大切なこと。
これまで大河の母親は、ヤクザに関する詳しい情報を竜児達はおろか、大河にも詳しく話していなかった。
自分と同じ危険に大河や皆をさらさないためと言い張ってきたが、この期に及んではもはや全員が運命
共同体だ。せっかく打った先手を生かすためにも、仕掛けられる次の手を考えておかなければいけない。
そのためには真実が、起きたことの全てを知ることが必要だ… 竜児はいつしか熱っぽく大河に語りかけ
ていた。

「俺たちの前では話しにくいこともあるだろう。でも大河、お前は血のつながった、たった1人の娘で、
この何年間かの苦労を共にしてきたんだ。真剣に伝えれば、きっと話してくれる」

「う…ん、わかっ…た」
少し自信なさげな表情を浮かべながら、大河は頷いた。
目の奥にかすかな恐れが揺らいでいるのが見える。その恐れは今から聞きだそうとしている話に対して
ではなく、母親そのものであると竜児は感じていた。指輪を渡したクリスマスイブ、母親に拒絶されそうな
様子を語った時と同じ目をしている。

竜児は、大河の恐れと大河の母親が多くを語ろうとしない理由、その2つはどこか重なるのではないか… 
漠然とそんな予感を持っていた。

「大河、頼んだよ!」
「俺達の敵を教えてくれ」
「頼むぜ〜」
「大丈夫だよ、チビトラ。きっと話してくれるってば」

皆が大河を取り囲んで、口々に語りかける。大河は1人1人の顔を見回した後、最後に竜児の顔をじっと
見つめ、やがて意を決したようにリビングルームのドアを開けて、ホールへと出ていった。

* * * * *


23 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:37:31 ID:O9gqxOLE0

日曜日 22:20
大河がもたらした情報は、予想以上の衝撃を皆に与えていた。

「…密輸の相手がよりよってメキシコの麻薬組織ってなんだよ? 最悪じゃんか… 麻薬のせいで
何万人も死んでて、もはや戦争状態って言われてるんだぞ…」
「それに白虎会っていう暴力団、この間ニュースで見たよ。通りすがりの警官に殴りかかったって」
「ああ、関西の武闘派で知られて、最近、独自に勢力を伸ばしてきてるんだ。そっちも厳しいよな…」
週刊誌の記者として裏社会の事情にも詳しい能登だからこそ、麻耶への説明には実感がこもっていた。
「どおりで、あの男… 」
路地で襲われた時の、関西弁のヤクザ者の顔を思い浮かべ、竜児もポツリとつぶやく。

「今更おじけづいてどうすんのよ! 相手が分かったとたんに意気消沈しちゃって、腹括ってるんでしょ!」
亜美がなんとか盛り上げようとさっきから孤軍奮闘しているが、能登の言葉が皆の気持ちを代弁していた。
「覚悟はしてたさ。でも亜美ちゃん、あまりにも相手が悪すぎるんだよ。確かに情けないけど…」

大河が1枚のディスクを片手に戻ってきたのは、もう少しで時計の針が22時を回ろうかという頃だった。
つまり、母娘は1時間近く話し合っていたことになる。

戻ってきた時の大河の表情は硬く、顔色は蒼白だった。麻薬とヤクザの話に対する驚きより、別のことに
ショックを受けていると竜児には感じられた。どこか上の空の状態で、大河は仲間達に尋ねられるまま、
母親から聞いたことをポツリ、ポツリと語っていったのだった。

バーのマスターから聞いたとおり、逢坂陸郎は家具などのインテリアから建築材料、つまり、家1軒作る
ために必要なものを世界中から日本に輸入していた。メキシコも数ある相手国の1つに過ぎなかったが、
ラテンの鮮烈な色使いと独特のセンスが日本の一部の富裕層に受けて、取引が特に増えていったという。

やがて、美術品や宝石など高価なものも取り扱い始め、それと共に逢坂陸郎の羽振りも良くなり出した。
大河の母親は、逢坂陸郎のビジネスセンスと才覚、人脈作りのうまさによる成功と信じていたのだが、
裏では麻薬の密輸入が行われていたのだった。

大河の母親には、その事実は伏せられたまま、取引は巧みに行われていた。情報漏れを防ぎ、偽装をより
完璧にするためと、摘発された時のスケープゴートに仕立てる意図があったのだろう。

大河の母親は、ヤクザとの関わりも表立って知ることはなかったが、とあるオフィス街の路上で、高級車
から降りてきた逢坂陸郎が、ある人物と親しげに握手を交わしているのを見かけた。その人物は週刊誌で
偶然見た白虎会の幹部にそっくりだったという。
大河の母親は、すぐさま取引の書類や連絡先から関係を調べてみたが、繋がりを示す直接的な証拠を掴む
ことはできず、勿論、陸郎からも当時は何も聞き出すことができなかった。結局、全ての事実を知ったのは、
数年前に借金の肩代わりを要求された時だったのだ。

「い、今からすぐ警察に駆け込む、ってのはどうよ?」
「いや、白虎会ぐらいなら、マジで警察内部に内通者を抱えている可能性がある。中途半端に駆け込もう
として、情報が漏れたりしたら、移動中や滞在先を狙われるかもしれない。信頼できる警察がここに来て、
タイガーの母親から話を聞いてくれるのを待った方がいいと思う。白虎会も1日や2日でここまで辿り着く
ことはないだろうし、有名人の別荘をいきなり襲うってのも難しいだろうし…」

次の手を打つという相談はすっかり煮詰まってしまい、春田と能登の話もすっかりネガティブなものに
なっていた。今日の計画実行のため、皆、朝早くから行動していて相当疲れているはずだが、次の一手が
見えなければ、心安らかに休むことができない… そんな雰囲気の中、ただ、時間だけが過ぎていく。

「じゃあ、ヤクザが欲しがっているのは、メキシコの麻薬組織につながる密輸ルートの記録なのね」
少し前に監視役を再び実乃梨に代わり、リビングルームに戻ってきた奈々子がぽつりと言った。

「ああ、あのクソオヤジがメキシコで商売を広げる過程で見つけたものだ。大河の母親はそうとは知らず、
普通の取引先だと思ってた。取引の記録はこのディスクの中に入っているが、数が多くてどれが密輸に
使われていたものなのか分からない。だからヤクザは、データと一緒に大河の母親を拘束して、順にあた
らせようとしているんだ。過去に取引に関わっていた名前がないと向こうもすぐに信用しないだろうしな」
竜児は奈々子のために、大河が語ったことを整理してみせた。


24 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:40:23 ID:O9gqxOLE0

「で、もしそれに協力したら、タイガーの母親も麻薬密輸の立派な共犯者っつーわけだ」
週刊誌の記者らしく、能登がシビアな現実を思い起こさせてくれる。

「じゃあ、ルートそのものが無くなっちゃえばいいのよね。そしたら、記録もタイガーのお母さんも、
ヤクザが狙う必要は無くなるわけよね」

「は?」
「香椎、お前何言ってんだ?」
「そりゃそうだけど…」
誰もが奈々子の言ったことがすぐ理解できず、困惑した表情を浮かべている中、春田が唐突に叫んだ。

「あ、俺、奈々子様の言ってること、分かっちゃったかも! えと、ある人達の居場所を知ろうとして
るんだけど、そこを訪ねても、もう誰もいないってことがわかったら、居場所を知ること自体に意味が
無くなって、タイガーもタイガーのかーちゃんも安心ってことだよね!」

「そ、つぶせばいいのよ。メキシコのヤクザを。白虎会も居場所や連絡方法は分からなくても相手の
組織やトップの名前ぐらい多少知ってるものでしょ?」
「まぁ、取引を始める時にちゃんとしたブツを手に入れられる相手かどうかぐらい、確認するだろうな」
「で、どうやってつぶすの? 戦争? タイガーぶつける?」
「春田アホか、お前!!」
とたんに春田が総スカンを食らうが、奈々子の意見に対しても微妙な空気が流れている。

「奈々子、日本のヤクザ相手だってどうしようもないのに、メキシコのマフィアなんて、ウチらがなんか
できるわけないじゃん。ハリウッド映画の見過ぎだよー」
「正しくはマフィアじゃなくて、麻薬カルテルな。麻耶」
「いるでしょ? 尋ねてみるべき人が、アメリカに」
「アメリカ…?」
「あっ!」
「北村か!」
「そ、データはここにあるんだし、まるお君のいるところなら、何とかなるかもしれないんじゃない?」
「ちょっと待て、頭真っ白になってたけど、なんか思い出してきた。ハーバードのロースクールなら、
あのニュースが使えるかも… 麻耶、ちょっとパソコン貸してくれ」

麻耶がバッグから取りだしたノートパソコンをひっつかむと、能登はおもむろにネットで
“IvyLeagueSports.com”というサイトを開き、ニュースの検索を始めた。

「あった! 俺、アメフトも好きでさ、昔、いろんなチームのパーカーをよく着てただろ。向こうの
ニュースも見てるんだけど、先シーズンのアイビーリーグ、あ、ハーバードを含めたアメリカの8つの
名門私立大学の集まりのことな。フットボールの最優秀選手はハーバードから出てる。ほらっ、名前は
トム・ジョーンズ。このインタビュー記事にさ、ここ、いいか、訳すぞ」

麻耶のパソコンの画面を指し示しながら、能登は、立派な体格の男がインタビューを受けている記事を
読み上げ始めた。

“将来の夢は何を? プロへの道を目指しますか、それともビジネスの世界ですか?”
“いや。僕の父親は麻薬と戦っている。僕も大切な友人を麻薬で亡くしたことがあるんだ。だから、
ロースクールに進んで、僕も父親と同じ麻薬と戦う仕事をしたいと思っている”

「能登っち、麻薬と戦う仕事ってなによ? 警察?」
「FBI、かしら…?」
「身分がバレるとまずいから詳しくは書かないと思うけど、たぶんDEAか司法省だな」
「ねぇ久光、DEAってなぁに?」
「麻薬取締局のことさ」
「英語読めるんだー すげー」
「でも、この人がまるおと知り合いかどうかなんて、わかんないじゃん?」
「フットボールつったら、アレやるよな、アレ」
そう言いながら、能登は両腕を広げて構え、上げたり下ろしたりの動作をする。


25 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:43:38 ID:O9gqxOLE0

「あ、ウエイトトレーニング!」
「大先生、鍛えてるって言ってたよな。学内のジムで」
「だったら、まるお君、知ってるかもね…」
「尻合い?」
「ロースクールの先輩だし!」
「なんか、映画の脚本みたくなってね? そんなにうまいいく? これホントのホントに現実の話?」
「実感はないけど、たぶん現実みたいね…」
言い出しっぺの奈々子ですら、急に繋がりだした話に苦笑せざるを得なかった。

−オイ! 北村にメール打てメール、いやSkypeの方が早い、先にケータイ鳴らしてからな!−
能登、麻耶、春田、奈々子達が繰り広げる会話を、竜児と大河、亜美の3人は見守るのが精一杯だった。

全員で実乃梨が監視を続けている小部屋に移り、麻耶がPCの1つを操作すると、あっという間にモニタに
北村の姿が映し出された。
「大先生! 朝から急に悪いな。ちょっと聞きたいことがあってさ!」
「おぉっ、能登か、連絡待ってたぞ。ネットの掲示板で放送の様子を追っていたが、大変な展開になって
るな。逢坂の動画が次々とアップされてるぞ。すみれさんと手分けして削除依頼を掛けているが…」
ひぇぇっ… 大河が観念したようにうめく。

「あのさ大先生、トム・ジョーンズって知ってるか? お前の学校にいるだろ、アメフトの…」
「もちろんさ、能登。トムはウチの学校の英雄だぜ」
「いや、知ってるかじゃなくて、知り合いか? の間違いだった」
「その答えもYesだ。彼は今、俺の隣に寝てる… いや冗談だ。特別親しいわけじゃないが、ジムで
世間話ぐらいはするぜ。ロースクールのカリキュラムとか。正義感溢れるナイスガイだぞ」

やりとりを聞いていた竜児がずいっと前に出て、モニタに向かって話しかけた。
「お前の冗談は笑えねぇよ。狩野先輩に失礼じゃないか… なぁ北村、麻薬カルテルを1つ潰してくれないか?」
「麻薬カルテル? 潰す? なんのことだ?」

* * *

能登と竜児が大河の母親の話について、北村に説明した。これまでの経緯と考えられるリスク。白虎会の
動きを意味の無いものとし、かつ報復を避けるためには、自分達が手を回したと分からないほど、迅速に
動くことがポイントになる、と。

「わかった。そういうことなら、すぐトムと話してみる。昨日ジムで会ったばかりだし、きっと学内に
いるだろう。ディスクの方はどうする? まさか航空便じゃ時間が掛かり過ぎるだろう」
「ウチの会社のサーバにデータをアップするよ!」
大河からディスクを受け取り、もう1台のPCで中身をチェックしていた麻耶がさっと手をあげた。
「結構、半端ないデータ量。亜美ちゃん、ここのネット環境はどう?」
「パパがここにいるとき、ネットで会議したり、動画のやりとりしたりするから、バリバリの極太よ」

(バリバリの極太って、櫛枝かよ… )
そんな竜児のつぶやきはあっさりと無視されて、大河の母親のデータがモニタに映し出される。

「これは、ちょっとしたものね…」
大手食品メーカーで役員秘書として勤めている奈々子が、画面を一目見て、感心したように言った。
「取引時期、数量、価格、流通経路、利用業者、銀行口座、商品の画像、担当者の顔写真に事務所の地図…
必要な情報が取引先や商品ごとに整理されていて… さすが有能と言われるだけあるわね…」
「あの、ママがデータを落とす時、気になる所に印をつけたって… それでも結構な数あるけど…」
大河がおずおずと母親から託された伝言を告げる。

「よしっ、と。まるお! このサーバに置くから、後でアクセスして。アカウントはmaruoで」
チャットのスペースに猛烈な早さでアドレスなどの情報を打ち込みながら、麻耶が北村に伝えた。

「木原、わかった。パスワードはどうする?」
「パスワードは用心のため、口頭で伝えるね。そうだ! ゆりちゃん先生のあだ名は?」
「do… だな。分かった。データのアップが終わったら、また連絡くれ!」


26 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:45:55 ID:O9gqxOLE0

* * * * * 

1月下旬。水曜日 12:55
研修所の食堂の隅で1人、竜児は昼食を摂りながら、ぼんやりと考えごとをしていた。午前中の研修が
終わり、午後は各自で課題をやることになっていたが、率先して片付けを手伝っていた竜児はすっかり
食事が遅くなってしまっていた。

「…ふぅ……」
ひとしれず、ため息をつきながら、進まない箸をなんとか動かそうとするが、すぐ止まってしまう。

計画実行の日から3日経ち、まだ北村からも編集部を通じた警察からも連絡は無い。

日曜日の深夜、北村からデータのダウンロードが無事完了したこと、トムの父親と連絡がつき、すぐに
話を聞いてくれることを確認した後、監視を交代制にして、皆はようやく休むことができた。

翌月曜日は、新人である竜児達の多くには仕事があった。冬の太陽が昇り切る前の薄暗い時間に、竜児、
実乃梨、春田、麻耶の4人は別荘を離れなければならなかった。ヤクザと警察の動きに備えつつ、大河の
取材を命じられた能登は仕事として残り、休暇がとれた奈々子も別荘に残ることができた。なんでも、
秘書として担当している役員にお願いして『休んでもらった』らしい。

明け方にやってきた亜美の事務所のスタッフ達から「暫くここに留まるように」という事務所の指示と
監視役を交代してくれることを確認した後、4人は2台の車に分乗し、別荘を後にしたのだった。

しかし、その後丸2日経っても、何の動きも無い。
大河とは数時間おきに連絡を取り合い、無事であることを確認しているが、あれだけのことをしたにも
関わらず、何の変化も無いというのは却って不安になるものだ。

竜児はまた止まってしまった手を動かして、味噌汁を啜ろうとするが、別の心配事が頭の中をよぎり、
持ち上げようとした椀がトレイの上に逆戻りする。ヤクザと警察だけではない、もう1つの心配事、
それは借金のことだった。

今回の計画で大きな穴があるとすれば、正月に大河の母親に指摘されたように、借金をどうするかが
決まっていないことだった。大河の父親の協力を得て、交渉のテーブルにつくことまでは考えていたが、
その先は全く決まってない。

勿論、丸々3億円を払うつもりは無いが、ビタ一文払わない、では、金融屋も収まりがつかないだろうし、
とても逢坂陸郎の居所に関する情報を得ることはできない。双方が納得できる痛み分けのポイントを探ら
なければならないのだが、そもそも借金のいくらかを払うお金のアテは、全くと言っていいほど無い。

大河の父親とは、日曜日以降も頻繁に連絡を取り合っている。すっかり見方が変わった大河の父親は、
自宅や会社を売り渡しても家族4人の暮らしを取り戻すと息巻いている。それはとても有難いことなのだが、
親から受け継いだ財産や人を手放させるのは、みんなで幸せになるという、竜児と大河、2人の誓いを逸脱
してしまうことになる。

「まぁ交渉始める前から、俺一人で悩んでも仕方ないんだけどな…」

またみんなで話そう、大河の両親、今度はじいちゃんやもっと多くの大人達の力を借りよう、そうすれば
きっと何か方法が見つかるはず… 無理矢理にでも思い込もうとしたその時、テーブルに置いたケータイ
が突然震え出した。

大河か能登からの連絡かと思い、サブディスプレイを見ると、普段、全く目にしたことの無い番号。
咄嗟に相手が誰か思い浮かんだ竜児は慌ててケータイを開く。


27 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:47:53 ID:O9gqxOLE0

「おう、高須か?」
「北村、待ってたぞ!」
「なかなか連絡ができずにスマン!で、いきなり悪いが今、近くにテレビはあるか?」
「えっ? 研修所の食堂だから、置いてあるが…」
「衛星放送は映るか? 公共放送の。口で説明するより、そっちを見てもらった方が早いんだが…」
「ああ、確か映ったはずだが、ちょっと待ってくれ、すぐつけてみる」
「13時からワールドニュースがある。それを見てくれ」
「わかった」

慌てて食堂の大きなテレビの前に移動すると、リモコンで電源を入れ、チャンネルを変えた。
ちょうど13時になったところで地球のCG映像と共に「World News」の文字が浮かび上がる。政治情勢、
経済情勢に続いて、女性アナウンサーが読み上げるニュースと映像に、竜児の目と耳は釘付けになった。

『現地時間x日夜、日本時間の本日未明、メキシコで大規模な麻薬組織の摘発がありました。メキシコ
当局と軍は、同国の有力な麻薬カルテルのアジトを急襲し、組織のトップと幹部の計5名を逮捕、多数の
武器と麻薬を押収しました…』

「北村、まさかこれって…」
「そうだ。お前が俺に潰してくれと頼んだ麻薬カルテルだ」
「そんな… まさか… 本当なのか? こんな早く結果が出るなんて、ちょっと信じられんのだが…」
「おや? 急いでくれって言ったのは、高須、お前じゃなかったか? もっとのんびりしていいのなら、
そう言ってくれればよかったのに…」
「いや、それは…」
竜児は、否定するつもりは無かったことを伝えようと慌て、自分がふわふわとした足場のうえに立って
いるように感じた。目と耳から入ってくるニュースと自分達に繋がりがあるという実感が無いのた。

「ハッハッハッハッハッ。まぁ気持ちは分かるがな、これは正真正銘、お前達が提供してくれた情報の
結果だ。逢坂の母親のデータは少し古いものだったが、それが却って幸いしてな、彼らが色々偽装を
行う前の貴重な情報が多く含まれていたんだ。あまり詳しいことは話せんが、トムの親父さんのチームは
3日3晩寝ずに今の記録と照合し、他にも協力者を得て、あっという間にたどり着いたんだよ、奴らに」

「そ、そうなのか?」
こうして説明を受けると、ほんのわずかだが事実だと感じられるような気持ちになる。同時に北村は
何故そこまで知っていて、どこまで関わっているのかが気になるが…

「ところで高須、もう一つ大事なことを伝えておかなければならない」
「なんだ? これ以上、大事なことなんか無いだろう?」
「それがあるんだよ。麻薬カルテルのボスと幹部の情報提供には報奨金が掛けられていたんだ」
「報奨金?」
「連中はいわゆる賞金首だったということさ。金額は総額でおよそ600万ドル。他にも多くの人が協力
してくれているので、全てが高須達のものになるわけではないが、かなりの額が渡されるだろう」
「渡されるって… もらえるということなのか? あ、い、一体いくらぐらいになるんだ?」
「そうだな、ざっとだが、日本円で3億円は下らないと思う」

バンッ! 
大河のビンタを思いっきり食らったような衝撃が、竜児の頭の中に広がる。いや、3億円なんて金額に
比べたら、大河のビンタなんてしれたものだ。

「き、北村っ! 悪いが、もう一度言ってくれないか!」
思わず大声で叫ぶ竜児の視界の隅に、研修所の指導員がこちらに歩いてくるのが目に入った。
北村との通話を繋いだまま、竜児は指導員に大股で歩いて近づくと、必死の形相で告げる。
「すいません! 今日は早退させてくださいっ!」

ひぃいいぃ…と、指導員が仰け反ったのは見なかったことにした。

* * * * *


28 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:51:03 ID:O9gqxOLE0

「たいがっ!」
冬の短い1日の終わりを告げるように、最後の陽の光が闇の中に消えかかる頃、研修所から4時間かかって、
竜児は別荘にたどり着いた。呼び鈴も鳴らさず、玄関のドアを開けると中に飛び込んで、大河の名を呼んだ。

「高須君、お疲れさま」
「よう高須! 本当に来たんだな。さっき電話で話した通り、大先生からこっちにも連絡あったぞ」
玄関で竜児を迎えたのは、3日前の焦燥感が嘘のように晴れやかな表情をした能登、奈々子の2人だった。

「ああ、いてもたってもいられずな。大河は?」
「あれ? さっきまでリビングルームで一緒にいたから、トイレにでもいってんじゃね? それより高須、
さっき警察から連絡があったぞ! 勿論、いい話だ」

「警察から? なんだって?」
竜児は能登の方ににじり寄っていた。虫が良すぎるとは思うが、北村がもたらした奇跡のような話は
連鎖するんじゃないかという予感があった。警察の容疑が晴れて、ヤクザの動きが止まれば、借金の件も
含め、ほとんどの問題が解決したことになる。

「編集部に連絡があった。編集長も顔見知りの信頼できる人物だ。で、密輸入の件で大河の母親の疑いは
完全に晴れた。いずれ話を聴かせて貰うことはあるけど、容疑者としてではなく、証人として、だってさ」

懸念が1つ消えた。これで警察を頼っても拘束される心配は無い。なら、もう1つの方はどうか?
「ヤクザの方は何か言ってなかったか?」

竜児の言葉を聞くと、能登はまるで自分の手柄のように誇らしげに胸を張った。
「それがなんと、もう心配ないってさ! 詳しいことはまだ話せないらしいけど、今週一杯、ここで
過ごした後はもう自由に行動していいって。あ、勿論、居所は警察に伝えなきゃいけないんだけど…
なぁ、高須。北村が俺に連絡してきた時、このことを予想できてたっぽいんだ。“大丈夫、そっちも
きっとすぐ片がつく”ってさ 大先生はアメリカでどんなマジックを使ったんだと思う?」
「わ、わかんねぇ… それより能登、ウソじゃないだろうな。冗談とか言ったら、俺は本気で怒るぞ…」

能登は、目から怪光線を発しそうな竜児にひるむことも、気を悪くする様子も無く、ポンとその肩を叩いた。
「気持ちは分かるよ。俺も編集長に同じこと言ったしさ。でも間違いない、終わったんだよ。俺たちを
脅かすものは、もう無くなったんだよ…」

竜児の肩に置かれた能登の手に力がこもる。ちらっと奈々子の方を見ると、もう何度も皆で話し、確認
しあったことを告げるように、竜児に穏やかな笑みを向け、小さくもしっかりと頷いた。

「ははっ… ホント…なんだ…」
気が抜けたようにがっくりと膝をつくと、竜児は乾いた笑い声を発した。ここ数日間、極度の緊張を
強いられてきた。それが思わぬ形で急に解放された時、人はそんな反応しかできないのかもしれない。
と同時に、竜児は大事なことを忘れているのに気がついた。

「川嶋! 大河はっ?」
ちょうどホールに入ってきた亜美の姿を見つけると、竜児は大きな声で尋ねる。
「あら高須君、亜美ちゃんには挨拶もしないで、いきなりタイガーのこと聞くわけ?」
「あ、いや、す、すまねえ…」
「冗談よ。タイガーなら、さっきデッキから海の方に出てったわよ。このクソ寒いのに旦那が来るのを
放ったらかして、何やってんだろうね、あいつ…」
「行ってくる! あ、この荷物を頼む、中に食うもんが入ってるから、しまっておいてくれ!」

大きく膨らんだバッグを足元に置くと、180度ターンして、再び外へ飛び出していく竜児を見送りながら、
亜美、能登、奈々子の3人は顔を見合わせて、ニッコリするのだった。

* * * * *


29 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:53:32 ID:O9gqxOLE0

「…ここにいたのか」
冬の澄みきった夜空の下、別荘の海側の階段を降り、浜辺に立つ大河の姿を見つけると、竜児は早足で
駆け寄った。

「ん」
大河はチラと後ろを見る動きをしただけで、完全には竜児の方に振り向かない。まるで足音だけで誰が
来たか分かっているようだ。

「寒くねぇか? こんな真冬の海風に吹かれて」
「だいじょ… ぅえっくしょいっ!!」
「ほらっ、いわんこっちゃねぇ!」
竜児は慌ててと着ていたコートを脱ぎ、大河の肩に羽織らせた。

「いいの、アンタが着るの! 風邪ひいたら、どうすんのよ?」 
大河は肩にかかったコートを剥ぎ取りると竜児に向かってまっすぐ突き返す。竜児はその様子を笑みを
浮かべながら、黙って見ていた。

「って何ニヤニヤしてんの? 気持ち悪い…」
「そのセリフ、いつか聞いたような気がしてな… わかったよ。じゃ、こうすればいいだろ」
竜児はコートを着直すと、その前を広げて、背後からすっぽり大河の身体ごと包み込んだ。

「!」
「こうすりゃ、2人ともあったかいだろ」
「う…ん」
「で、どした? 1人で」
「ちょっと… ね…」
「…終わった、ってのが信じられないのか?」
「まぁ…ね。ずっとこの時を夢見てきた。それがいきなり… まぁ、みんなで力を合わせたからなん
だけど、 “はい、終りました。もう心配ありません”って言われても、なんか混乱しちゃって… だから、
ちょっと頭冷やしにきた」
「…冷やしすぎだろ。まるで陽の光の下に引きずり出されたモグラだな」
「なによ、その失礼な言い方! もっとマシな例えは無いの…? って、ちょっ!」

竜児は答えるかわりに、背を屈めて、大河の頭のてっぺん、豊かな髪の中にアゴを乗せ、ほんの少しだけ
重みをかけた。そして、大河の華奢な肩から上半身全体を掻き抱くように両腕を回す。

「そうだな、俺もモグラだ。まだ信じらんねぇ… でも、きっと本当なんだと思う。だから北村を、能登を、
俺達のために動いてくれた大人達を信じてみようぜ。それに戸惑ってることはそれだけじゃねぇだろ?」
竜児は腕に力を込め、大河をもっと近くに抱き寄せると、脇からその横顔をじっと見つめた。

微かに竜児の方を見る仕草をし、観念したように大河は言葉を吐き出す。
「バレてた…? まぁ、竜児は誤魔化せないよね…」
「あぁ、お前が自分から話してくれるまで待ってようかと思ってたけど、もう大丈夫な気がしたからさ…
お母さんのことだろ?」
「うん…」

大河は計画実行の夜、メキシコの麻薬組織や白虎会の話と共に母親から聞いたことを少しづつ話し始めた。
それは大河の母親が昔、大河を捨てた理由、その全てだった。

「ママは真っ先に気づいたのよね、あいつの正体に。そのおぞましさに」

当初、大河の母親は逢坂陸郎との間にいさかいが生まれ、家庭が乱れ始めたのは、互いの仕事のスタイルや
性格の違いのせいだと思っていた。いくら鋭い大河の母親といえ、自分が選んだ夫が金の為なら手段を選ばず、
裏社会と手を結ぶ人間であるとは思ってもみなかったのだ。だが、ヤクザの幹部らしい男と話しているのを
見かけてから、改めて振り返ってみると逢坂陸郎の変化と符号する事実が次々と浮びあがり、戦慄を覚えた。

逢坂陸郎の巧妙な点は、大河の母親に疑いをかけられ、追及されても決してボロを出さず、冷徹に尻尾を
掴ませなかった点にある。もし感情の動くままに任せて、怒りをぶちまけたり、脅したりしていたら、せっかく
築いたルートもいつか綻びが生じていただろう。

30 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 01:57:42 ID:O9gqxOLE0

大河の母親に残されていた選択肢は逃げること、生きていくうえでこの男との関わり合いを一切断つこと
しか無かった。当然一人娘も一緒に連れて行こうとしたのだが、中学生だった大河にとって、壊れかけた
家庭を修復しようともせず、出て行くことでピリオドを打とうとする母親の行為は、自分や父親に対する
裏切り行為にしか見えなかった。

「私、ママに何度も酷い言葉を浴びせたのよ。ママが私を連れていくのを諦めたの、分かる。おまけに
次の母親、アイツはきっとクソジジイの悪巧みを知ってた、そういう人間だと思うんだけど、アイツと折り
合いが悪くなって、家を追い出されてからは、世界中の誰もが敵だと思っていた。この世界で自分は
1人ぼっちなんだ、なんて悲劇のヒロイン気取っちゃってさ。なんか…  バカみたいでしょ、私」

大河は顔を上げ、夜空に目を向けながら、後頭部を竜児の胸の辺りにギュッと押しつける。
「結局、ママは私のことをずっとどこかで気にかけていてくれた。だからクソジジイが破産した時も真っ先
に迎えに来てくれた。それを私は“新しい家族がいるのに今頃のこのこ出てきてなによ!”って反発して、
アンタ呼ばわりして、駆け落ちまでして。もし竜児が“みんなで幸せになろう”って言ってくれてなかったら、
きっと今でもママと一緒にいなかったかもしれない…間抜け過ぎて、ママの顔をまともに見られないの…」

そこまで一気に語り終えると、少し息を荒げながら、大河は竜児の腕の中で身体を小さく縮こませる。
竜児は、大河を包みこむ腕にギュッと力を込め、大河の呼吸が少しづつ収まるのを待って、口を開いた。

「…良かったんじゃねぇのか?」
「なんで…?」

腕の中で大河が振り返って、真っ直ぐに竜児の目を見つめた。星の光が映り込みそうな、その大きな瞳に
宿る感情は気高き虎が見せる悔恨か、持って行き場の無い気恥ずかしさか…

「だって、大河のお母さんはずっと大河のことを思ってくれていて、大河はその気持ちを知ることが
できた。昔の大河は、家族が元に戻るのを信じていたから、お母さんにキツイことを言ってしまったん
だろ? 大河のお母さんもそれをわかっている。じゃあ、どこに問題がある?」
「でも、わたし…」
「きっと大河のお母さんも長く苦しんで来たんだろう。娘に罵られようが、父親を犯罪者呼ばわりしようが、
どうしてあの時一緒に連れて逃げださなかったのかって。だから今回の件もここまで頑張って、核心を
たった1人で抱えてきたんだと思う。それに…」

「それに?」
大河は竜児の目を見つめたまま、同じ言葉を繰り返す。

「あり得ねぇことだけど、大河が一番辛かった時、誰からも見放されたと感じて、ささくれ立っていた時の
自分に、もし声を掛けることができたらさ、こんな風に言ってあげられるんじゃねぇか…  “大丈夫だよ、
見ていてくれる人は必ずいる…” ってな」

竜児を見つめていた大河の瞳が揺らぎ、見る見るうちに透き通った、清浄な水分が目元から満ち始める。
全てを洗い流すかのようにゆっくりと溢れ出すと、幾つもの光の筋となって、大河の頬を零れ落ちていった。

「フィ… フィアンセ、ボロ泣きさせて… どうすんのよ…」

俯き、嗚咽をあげる大河を固く抱きしめ、竜児は子をあやすようにその小さな背をゆっくりと叩き続ける。
「お前がいなくなって、俺、本当につらかったけど、そのお陰で大河が真実を知って、大河がいらない子
なんかじゃなかったこと、大河が耐えてきた痛みは決して底無しじゃなかったことがわかったのなら、
俺は嬉しい」
「う…ん」
「大丈夫だ。お母さんの目を見て、一言だけ、ありがとうって、言えばいい」
「う…ん」
「よかったな、大河」
「う…ん……」

* * * * *


31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 01:58:29 ID:iaWtVzQk0
ギ・・・ギシアン?

32 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 02:01:19 ID:O9gqxOLE0

「今回のこと、とてもひどかったけど、私も1つだけいいことがあった」
ひとしきり竜児の腕の中で泣いたあと、大河は顔をあげ、赤く腫らした目で微笑んだ。

「何だ?」
「…竜児の幼い頃の気持ちが聞けた」
「なんだ… そんなことか…」
バツが悪そうに竜児は頭をボリボリと掻く。

「でも、弟の、恵児のことがなかったら、私にも話すつもり、無かったでしょ?」
「まぁな… 5才かそこらの子どもが、毎日自分が消えて無くなるんじゃないかって怯えていた、なんて
話はあんまり人に聞かせるものじゃねぇからな」

「バカ。私はね、竜児の大切な気持ちはどんなことでも知りたい。出会った時からずっと不思議だったの。
竜児はなんでこんなにしっかりしていて、そして優しさを持っているんだろうって? 気持ちが通じあって
からは、どうして私のことなんか好きになってくれたんだろうって、時々…」
「“なんか”なんて言うな。それにしっかりしてねぇぞ。お前、ずっと駄犬よばわりしてたじゃねぇか…」
「私はまだ誰かの”せい”にできた。怒りに変える相手がいた。でも、竜児はそんな小さな頃から自分自身と
向き合っていたんだね。だから、私にも気付いてくれた…」
「理由なんかねぇよ。ほっとけなかったんだよ。最初に出会った時から、ずっとな…」

竜児はぶっきらぼうに言い、その話題を終えようとした。竜児には大河に伝えなければいけないことが
もう一つあるのだ。

「そんな昔話よりさ、見ろよ、空。星、きれいだぞ」
その言葉に導かれ、大河はクルリと向きを変えると、竜児を背にして再び空を見上げる。
冬の澄み切った空は宝石箱をぶちまけたように、輝く光に満ちていた。

「ほんと。今日はひときわ綺麗に見える…」
「ああ…」
二人は夜空を指差しながら、あれはオリオン座、あれがおおいぬ座で、冬の大三角形はこれとこれを
結んで、とひとしきり語り合う。

やがて、2人が覚えている星座の名前を言い尽くすと、大河がポツリと呟いた。
「私、ずっと星と話してて良かった。だって、竜児がクリスマスにアパートへ来てくれた時、2人が離れて
いても、やっぱり同じことをしてるのに気付かなかったら、まだずっと意地張ってたかも」
「ああ、そうだな… いや、いつかきっとこうなったさ、俺達はいつも、ずっと傍にいるんだからな」
「うん… でも良かった… こうやってね、星にお願いしてたの。手を伸ばして、また竜児と一緒いられ
ますように、って…」

大河はいつかのクリスマス、イルミネーションに囲まれた所で見せたように、右手を真っ直ぐに空に
向かった伸ばした。

「大河、願いも叶ったことだし、今日は右手だけじゃなく、両手にしてみないか?」
「そうね。今日はとびっきりのお礼言わなきゃ…」
大河は夜空を抱き締めるように 両手を伸ばす。
竜児はその左手を取ると、星を映し、光輝く石を載せた指輪を、大河の薬指にそっと通した。

「なに? これ… まさか!」
「給料3か月分とかじゃなくて悪いが、婚約指輪だ。改めて言わせてもらうぞ。大河、結婚しよう」
「りゅうじ…」
「これが片付いたら、もう一度プロポーズしようと思ってた。今日はその日だ。大河、俺はもう待てない、
1分たりともな。何度でも言う、嫁に…来いよ!」

その大きな瞳を驚きでさらに大きく見開いた後、再び溢れようとする涙を抑えて、大河は華やかな笑顔を
見せる。こんな幸せな瞬間に涙なんかいらない、とびきりの笑みを竜児に返したかったのだ。
「…うん。私、竜児のお嫁さんになるね。もうずっと、一生、離れない…」

見つめ合った瞳と瞳がゆっくりと近づき、やがて感覚の全ては唇に集中した。重なりあい、相手の熱を
感じ、再び誓いあった絆を心と身体に刻みつけるように、何度も何度も、強く、唇を重ねあった。

33 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 02:03:02 ID:O9gqxOLE0

* * * * *

「ねぇ、この指輪、今日買ってきたの? 急に手に入れたにしてはセンスいいけど…」
お互いの気持ちを十二分に確かめあった後、左手の薬指に収まった指輪をじっと見つめながら、大河が尋ねた。

「ん? 前から買ってあった」
「前からって?」
「社会人になって、4月に初めて給料をもらったのを全部つぎ込んだんだ。あ、今回は川嶋のアドバイスは
もらってねぇぞ。自分で調べて、大河に似合いそうなのを選んだんだ」
「初めてのお給料って、その時まだ、私、見つかってなかったのに?」
「まぁな。でも、そうしようって決めてたんだ。絶対無駄にならねぇって信じてたからな。ほら、一人前に
なったら、俺達一緒になろうって言ってただろう? 給料もらうってことはさ、一人前になることだからな」
「うん…… ありがと…… 今日はなんか、竜児に泣かされっぱなしね」
再び溢れそうになった涙をそっと指で拭いながら、大河は微笑む。

「でも、なんか… 私ばっかいじらてる気がして、だんだんムカついてきた!」
優しい目をしたまま、大河は竜児を見上げると、口元を歪ませて、不敵な笑みを浮かべた。
「オイオイ…」
竜児は苦笑を浮かべるが、それが大河流の照れ隠しだということは分かっている。

「ねぇ竜児! 大体初めてのお給料って親のために使うもんでしょ? 一人前に育ててくれたお礼にって。
どうして、やっちゃんに何か買ってあげなかったの? この親不孝者!」
「ああ、大河には悪いが、最初はそうしようと思ってた。でも先に泰子に釘さされちまってさ。
”やっちゃんには、お金とかプレゼントとか、ずぅぇーったい要らないから!!”って泣きベソかかれて…」
「それで引き下がったわけ? あきれた鈍犬ね! そんなの口だけに決まってるじゃない!」
「いや、なんか “そういうの貰うと竜ちゃんがいなくなっちゃうみたいだからヤダ!”っ言うんだよ。
だからその日の晩は、泰子の好きなメシをこれでもかっていうぐらい、目一杯作ってやった」

「竜児の料理を… 目一杯…? これでもかっていうぐらい…?」
まるで呪文を唱えられたかのように、小虎のお腹が「食わせろ!」という抗議の音を猛烈に立て始めた。

「できるぞ。材料は来る時に買ってきた。今日はお祝いだ。30分あれば、お前の好きなもんを作ってやる」
「ねぇ、10分で作って、私、そんなに待てない!」
「無茶言うなよな… わかった。15分で作ってやるから、大人しくしてろよ!」
「うん!!」

* * *

「まったく… このくそ寒いのに、おあついこって…」
亜美は、ダイニングルームの海側に面した窓に腕を組んだまま持たれかかり、2人の様子を伺っていた。

亜美の視線の遠く先で、大河は竜児の腕に掴み、ぶんぶんと前後に大きく振り回したかと思えば、次は
両手で竜児の腕を引っ張り、その身体をぐるぐると回す。パッと手を放すと、今度は自分が竜児のまわりを
駆け回りだした。

”りゅーじのりょうり、りゅーじのごはん”

何度もそう叫びながら、浜から別荘へとあがってくる大河の表情は暗闇に紛れて良く見えないはずだが、
亜美にはまるで光に照らされているかのように、輝く笑顔が見えていた。それは亜美が何よりも見たか
った大河の姿だった。

「あのチビ、どんだけはしゃいでんのよ。……でも、その笑顔を取り戻せてよかったね、タイガー。
あんたが本当の孤独に気づいたこの場所で、あんたは手に入れたかったものを取り戻したんだよ…」

そっと窓ガラスに手をあてると、亜美は演技でも決して見せたことの無い、優しい表情を2人に向けるの
だった。



34 : ◆VW.RtTKf1E :2010/09/10(金) 02:05:38 ID:O9gqxOLE0

今回は以上です。 無事投下できました。長い間すいません。
また、超展開になってしまい、大変失礼しました。<(_ _)>

あーみんちの別荘は、アニメと原作の設定をミックスしています。

>>21 >>31
支援感謝! ギシアンじゃなくてスマン! チューだけだw

残すところあと1回。本編は次で最終回の予定です



35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 02:21:10 ID:iaWtVzQk0
>>34
おk
そして乙!

36 : ◆Eby4Hm2ero :2010/09/10(金) 06:26:27 ID:GXs9mhOA0
>>34
乙&GJ!
よかった……やっと大河が、大河と竜児が幸せになれる……
最終回も期待してます。

37 : ◆Eby4Hm2ero :2010/09/10(金) 06:27:27 ID:GXs9mhOA0
お題 「言う」「泣いている」「言ったはず」



 何処とも知れぬ場所を、高須竜児は歩く。
 広がる草原、吹き抜ける乾いた風。
「おう、サバンナか……さては夢だな、こりゃ」
 なぜか見たことがある気がする風景の中、その足取りは迷うことなく。
 やがて行く手に表れたのは、大きなテーブルとその端の椅子の上にうずくまって静かに泣いている、
「……大河」
 最初から、なんとなくそんな気がしていたのだ。
 竜児は膝を抱えた大河にそっと歩み寄り、その頭にぽんと手を乗せる。え?と顔を上げた大河の瞳が驚きに見開かれる。
「りゅ、竜児!? あんたどうして……」
「言ったはずだぞ、いつも傍に居るって」
「で、でも……」
「まあ、細かい事は気にするな。どうせ夢なんだから」
「……夢?」
「おう、だから何でもアリだぞ。例えば……」
 言いながら竜児はご飯に卵、ベーコン玉ねぎカブの茎と取り出して、手早くフライパンを振り始める。
 そして真っ白なテーブルクロスの上に湯気を立てて鎮座まします『あの日の』チャーハン。
「ほれ、食え」
「うん……いただきます」
 差し出されたスプーンを受け取り、大河は最初おずおずと、そしてすぐにいつものペースでチャーハンを口に運び始める。

「で、どうして泣いてたんだ?」
 竜児の言葉に動きを止め、なぜか少し顔を赤らめる大河。
「べ、別に大した事じゃないわよ」
「大した事なくて泣くかよ。遠慮してねえで言ってみろって」
 竜児の眼差しに大河は視線を逸らし、更に頬を染めて。
「……かったのよ」
「おう?」
「寂しかったの!竜児に会えないのが!」
「……毎日メールしてるじゃねえか。電話だって時々は……」
「それじゃ足りないんだもん。もっと声聞きたいし、直接姿見たいし、触りたいし……竜児は違うの?」
「そりゃ俺だって、できるもんなら……だけど」
「わかってるわよ、今はそういう時期じゃないってことぐらい。だけどやっぱり時々、どうしても……」
 言う大河は次第に俯き、瞳には再び涙が滲む。竜児はその頬にそっと手を添えて。
 柔らかな唇を上に向かせ、そこに自分の唇を触れさせる。
「!」
 絶句して、だが見る見る紅潮して行く大河。
 竜児もまた自分の頬が熱くなるのを感じる。
「……その、夢とはいえせっかくこうやって会えたわけだし、いや、夢だからこそ、朝まで……目が覚めるまでは『恋人同士』しててもいいんじゃねえかな」
「竜児……」
「正直に言うと、俺も時々すげえ寂しくてさ……だから、次に会えるまでそんなこと思わずにすむぐらいに……」


 薄明かりの中、竜児は布団で半身を起こして。
「……夢だからって、俺はなんつー恥ずかしいコトを……」
 多少おぼろげながらも残る記憶に、頭を抱えて悶えることしきり。
「欲求不満なのか?……このこと大河には言えねえな……」
 と、その時響くはメールの着信音。
「ん?」
 開けばそこには。
『今、竜児の出てくる夢見てた』
「……まさか!?」

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 16:47:25 ID:AahFG+UE0
>>37
竜児、見てる夢が全部筒抜けだぞ。

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 21:16:41 ID:20D91l890
久しぶりに来たけどやっぱ竜虎良いわ
皆さん乙です

40 : ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:54:10 ID:raVMCkEF0
>>37
夢の中で何があったか解釈の余地があるところが憎い。
キスだけだとすると、それはそれで。

さて、間が開いて申し訳ない

「遊園地作戦」続き

41 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:54:56 ID:raVMCkEF0
「45分待ちだってよ」
「いいじゃない。並ぶわよ」
「家に帰るころには飯の時間過ぎてるぞ」
「外食にしましょうよ。どうせあんたのことだからその辺はぬかりないんでしょ」
「当たり前だ。誰に向かって口きいてると思ってんだよ」

早めに帰って家で食事ができるようちゃんと食材は用意しているが、遅くなって外食してもいいように、消費期限が切れるようなものは冷蔵庫に入っていない。高須竜児。どんなときにも家事に抜かりはない。

「じゃ、決まりよ。どーんと構えて並んでればいいのよ」

お前みたいに小刻みでドジを繰り出す奴の横で、どうやってドーンと構えてられるんだよ。

ジェットコースターでの大騒ぎはどこへやら。大河は今日の締めくくりをこれ以上ない絶叫で飾るつもりらしい。一方、ドジを踏む、泣く、怒る、暴れると大車輪だった大河に振り回されて、すでに竜児はへとへとである。
気配りエネルギーも消費しつくした感があって、大河の言葉にも、おう、おう、と適当な返事を返すだけ。

ぐだぐだのうちに終わってしまう下見をもとに、一体大河はどんなデートを計画するのか竜児には想像もつかない。だいたい、ジェットコースターをどうするつもりなのか。
自分だけ乗らないつもりか、それともさっきみたいに歯を食いしばってやり過ごす気か、ああ、もうわからねぇ、と竜児は特大のため息を漏らす。

「なによ、竜児。ため息なんかついちゃって」
「疲れてるんだよ。てか、お前は疲れてねぇのかよ」
「『疲れた』っていうのは働いた人や勉強した人が言う言葉よ。あんた一日遊んでいたじゃない」

俺はお前の面倒を見るのに疲れたんだよ!とは言わない。ぶっ殺されるから。

「大河、俺ソフトクリーム買ってくるわ。列に並んでてくれ」

全身を覆うぐったりとした疲労感に、竜児の脳みそはさっきから『もっと糖分をよこせ!』とわめいている。いつも燃費の悪い大河は不思議なことにまだ平気なようで、ひょっとするとこいつは遊ぶ時だけ高燃費か?と竜児は眉を寄せる。

「さっき食べたばっかりじゃない。あ、でも私もほしい!竜児!バニラ!」

おう、と、背中で手を振って大河のそばを離れ、「すみません」と丁寧に声をかけてびっしり並んだ客の列を割っていく。時折「ちっ」、と舌打ちが聞こえるが、基本的にお詫びのために顔をあげると人波が割れる。もういい。
疲れた。俺は落ち込まないぞ、と竜児はゾンビの表情で列を離れていく。

ぐったり疲れた体で売店まで辿りつき、メニューを見上げる。たかがソフトクリームに250円。さっきの3段アイスとはわけが違う。ごく普通のソフトクリームがだ。
これが普段の竜児なら目じりを釣り上げてメニューをくまなく探し、妥当な価格でそこそこおいしそうな代用品を探し始めるところだ。
だが、エネルギー切れを起こしている竜児の不完全な良心回路はで、とても良心的とはいえない値段付けにも目じりを釣り上げるなどできる分けもなく、素直に500円払って両手にソフトクリームを装備すると大河の待つ列まで引き返してきた。

帰りは楽なもので、「すみません」と声をかけると顔も見ずに通路をあけて通してくれた。みんな親切じゃないか、と竜児は低燃費で静かにむくれ気味である。

42 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:55:42 ID:raVMCkEF0
「ほら」
「やった!竜児が食いしんぼだからアイス食べ放題だわ」
「言ってろ。こいつもおごりだ」

えへへ、と嬉しそうにソフトクリームを受け取ると大河は、ぺろりとクリームのご神体をひとなめして

「あ」

いきなりドジってくださった。形のよい鼻には白いクリームがちょこんと付いている。盛大にため息をついて思わず突っ込む竜児だが、

「おまえいきなりなにやらかしてんだよ」
「うぇぇぇ、竜児、早く早く」

大河は聞いちゃいない。拭って、と顔を突きあげる。自分で拭うという発想はないらしい。まぁ、ハンカチを探している間にぽとりとクリームが落ちてしまう姿もありありと想像できるので、あるいは的確な判断なのだろう。

まったくよう、とつぶやきながらハンカチを取り出してぬぐってやろうとして、

「おう」

思わずガン見。

「え?何?」

これはこれで…ありかも。などと思ってしまう。もともとツラはいいのだから、鼻の先にクリームをつけるドジっ娘の姿は、なかなかどうしてかわいい。あるいはこれで北村のハートを鷲掴みに。

「あー、いや。なんでもねぇ」

なわけねーか。と竜児は拭ってやる。鷲掴みにする前に、そんな計算高い演技を大河に求めるリスクの高さが恐ろしい。素直に食べようとしてこれなのだ。鼻につけろと指示したら目玉でアイスを舐めかねない。そしてそのドジのつけは全部竜児にまわってくる。

鼻を拭ってもらって大河は改めてソフトクリームをひと舐め。表情は帽子の下に隠れる。くぐもったような甘い声が聞こえてきて、ああ、満足そうだなと確認。竜児もガブリとクリームにかぶりつき、おう、甘い、と一息つく。

亀の歩みでしか進まない列の中でソフトクリームをなめているうちに、糖分補給が終わったせいか竜児にも少し余裕が出てきた。体の疲れは相変わらずだが、気分が少し楽になっている。
少し余裕の出てきた頭で周りを見回して、先ほどからうっすらと感じていた妙な違和感の正体がわかった。

「なあ大河、これってあんまり絶叫してないな」
「ふぇ?あ、ほんとだ」

二人してスカイスクレーパーのご本尊を見上げる。

当遊園地最凶最悪などという大げさなレッテルを貼られている割には、さっきからそれほど客の悲鳴は大きくない。

アトラクションの構造はシンプルそのもので、天に向かって高さ100mの柱が一本立っているだけである。その柱を囲む形で4脚のいすが4つ背中合わせに配置されている。客がいすに座るとジェットコースターの時と同じようなバーで体を固定し、16人を椅子ごと真上に引き上げる。
そして一番上についたらそのまま落としてしまうのだ。当然ブレーキはついているが、ブレーキがきき始めるまで、存分に自由落下を楽しめるわけだ。

43 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:56:29 ID:raVMCkEF0
「えーと、最初の1秒で…」
「竜児、あんた何ぶつぶつ言ってるの?」
「ちょ、ちょっと黙っててくれ。今計算してるんだ」

気でも狂ったかといぶかしげに見上げる大河の横で竜児はなにやら暗算。少したって、ようやくはっきりと言う。

「だいたい4秒くらい自由落下してるな」
「ふーん、計算でわかるんだ」
「ああ、物理の初歩だぜ。最初の1秒で重力加速度の係数の半分だけ落ちるんだ。地球上だとだいたい5mだな。あとは時間の自乗に比例した距離になる。4秒だとだいたい80mくらいか。最上部まで引き上げないだろうし、一番下に来る前にブレーキが始まるから、4秒弱だろう」

どうだ、理系志望の力を思い知ったかと晴れ晴れとした表情でタワーを見ながら竜児は解説するものの

「ふん、これだから理系犬は融通が利かないのよ。そんなの時計で計ればいいじゃない」

と、大河は一蹴、竜児に忘れていた疲れをもう一度思い出させる。

もっとも、時計で計るなら少し耳を澄ます必要がありそうだ。竜児たちのいるところからはタワーの頂上部分は見えないのだ。落ち始めは耳で確かめるしかないだろう。

二人が並んでいるところは大きな天幕による屋根が覆っており、強い日差しから守られている。雨の日にもぬれる心配もない。ジェットコースターや観覧車にはこんな天幕は無かったから、きっと遊園地一の絶叫マシンのために特別に作ったのだろう。
天幕はタワー基部も覆っており、おそらくは高さ15mくらいのところにある穴をタワーが貫通する形になっている。

乗客は自由落下が終わって停止したあとや降りたときに、ひゃーとか、ふへーとかジェットコースターの降り場でも聞いた情けない笑い声を上げているくらいで、落下中に悲鳴を上げている人はほとんどいない。これならジェットコースターのほうがずっと悲鳴がやかましい。
張り切って屋根まで作ったのだろうが、どうやらそれほど怖くないのかもしれない。

怖くないなら、それもいいかもしれないと竜児は思う。ジェットコースターで竜児の名前を叫んだことすら忘れるほど興奮した大河も、これくらいなら落ち着いて乗れるかもしれない。ならば、北村と最初にこれに乗ればいいのだ。
うまいこと4人掛けだから、大河、北村、竜児、実乃梨で座ればいい。

いや、と竜児が目をすがめ、瞳を小さくする。3人ともてっぺんから突き落としてやる、と考えているでのはない。席順を考えているのだ。いきなり北村と大河だけだと不審がられるか。北村、大河、竜児、実乃梨の順がよさそうだ。これなら自然。

そんなことを考えたり、大河とおしゃべりをするうちに少しずつ列は前に進む。最近の弁当は肉が少ないとか、タンパク質より野菜を今は摂らなければならないとか、独身の授業は退屈だとか、お前宿題に名前書き忘れたらしいなとか、みのりんに前髪笑われたとか、
北村の日焼けがはんぱねぇとか、やっちゃんお酒飲みすぎとか、この前おまえんちの冷蔵庫チェックしたらアイスとジュースだらけだったぞ、とか。どうでもいいことばかりだけど、気がつけば話しているのはお互いの友達と、それ以上にお互いのことだったりする。

当然と言えば当然か、と竜児はほほえむ。お互い想い人が相手の親友だから共同戦線を張ったのであり、おまけに虎と竜はワンセットなのだから。

学校以外の社会とほとんど接点を持たない上に共通の趣味なんかない二人の話題は、勢いお互いの友達か二人の身の回りのことばかりになる。

44 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:57:15 ID:raVMCkEF0
適当な会話を続けながら、いったい大河はどんなことを考えながらおしゃべりをしているのだろうと思う。このわがままで単細胞でどうしようもない気分屋が、実はみんなの知らない繊細な顔を持っていることを竜児は知っている。
竜児とあった頃、大河はひとりで泣いていると言ったことがある。実際、竜児は大河が泣いているのを何度も見た。

親にかまってもらえない一人暮らしの中で、将来のことや、思うようにいかない北村のことを思って何度も泣いていたのだ。さっきの観覧車の件だってまるで今では無かったような顔をしているが、きっと明日になればやはり同じことを不安に思うのだろう。

大河と北村をくっつけるには、どうしたらいいのだろう。このどうしようもなく手のかかる女を親友と言える男に押しつけることに多少とも良心の呵責を感じることが無かったわけではない。しかし、心根は優しい女だし、北村への気持ちは本物なのだ。
なんとかしてやりたいと思う。

遊園地デートがうまくいくかどうか、竜児にだって絶対とは言えない。どうすればうまくいくか、疲れがたまってきた体と頭では、正直よくわからない。でも、うまくいってほしいと思う。大河の恋が叶えばいいと思う。もちろん、竜児の恋だってかなえたい。

「竜児!何ぼうっとしているのよ。私たちの番よ!」

脇腹にいきなり肘をたたき込まれて思わず苦痛に顔をゆがめる。大河の大声に振り向いた前のカップルが竜児の苦悶にゆがむ顔を正面から見てしまい、慌てて目をそらす。待ち続けること45分。ようやく、本当にようやくだ。二人の番が回ってきた。

「ああ、もう私乗る前から疲れちゃった。列が長すぎるわよね」
「てか、俺は列に並ぶ前から疲れていたぞ」
「あんた犬なんだからスタミナくらいつけなさいよ」
「お前と会話するだけでHPを削られている気がする」

大河の帽子を預け、係員の指示通り靴を脱いで椅子に腰掛け、ジェットコースターの時と同じく上から降りてくるバーで前に回した髪ごと大河の体を固定してやる。竜児の方は、ようやく座れて人心地。絶叫マシンだろうがなんだろうが、椅子は椅子だ。

やがて全員の準備が終わるとベルが鳴り、ゴトリと揺れて乗客が小さな悲鳴を上げた。カタカタと音をたててゆっくりと登り始めた椅子は、すぐに人の目の高さを超える。

「竜児、結構並んでたんだね」
「おう、45分だからな。列が長いはずだぜ」

目の前には天幕の下に並ぶ人、人、人。仕切りのテープに沿ってぐねぐねと並ぶ何百人もの人の列が広がる。椅子が上昇するにつれ、列の見え方もかわっていく。

「ねぇ、竜児」
「おう」
「遊園地。北村君誘った方がいいと思う?」
「何だよお前のアイデアだろう」
「うん。そうだけど。いろいろあったじゃない。竜児はどう思う?」
「誘え」

竜児は断言する。北村はきっと喜ぶ、と。喜ばないはずがない。そして二人の仲は進展するだろうと思う。大河の片思いもそろそろ先に進んでいい頃だ。
さっきは遊園地ダブルデートがいったいどうなるのか頭を抱えていた竜児だが、ソフトクリームによる糖分補給が追いついたせいか、あるいはようやく椅子に座れて落ち着いたか、今は前向きになっている。

「そっか。北村君喜ぶか。よし、誘おう」

すぐ横で、大河が顔をほころばせ、犬がしっぽを振るみたいに脚をぶらぶらと振る。そして、竜児に向かって顔を上げるのと同時、

「わあっ!」

と声を上げた。

45 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 22:59:13 ID:raVMCkEF0
大河だけじゃない。竜児もつられたように「わぁっ」と狂眼乙女全開に声をあげる。

それどころか、いすに固定されて引き上げられている全員が声を上げた。乗客を乗せたいすは天幕の高さに到達し、そして天幕に開いた穴をくぐり抜けた。ここにきてはじめて竜児は大きな天幕が張ってあった理由を理解する。
あれは日よけでも雨よけでもなかった。これを演出するためだったのだと。

天幕を抜けた竜児たちの上には突如として青い空が広がった。濃い青に沈みゆく空には鱗雲が浮いていて、暑いけどもう秋は始まっているのだと知らせる。そして、沈みゆく太陽がその雲を赤く染めている。濃い青と赤の作るコントラストに全員が息を呑んでいた。

「空、おおきいね」

大河がつぶやくように言う。透けるように白い肌は夕日にあかね色に照らされ、大きな瞳もきらきらと輝いている。

「おう。いつも建物に遮られてるけど、こうやって高いところに来ると空って広いな」

もちろん、河原に来れば空は広いし、校舎の2階から見る空もなかなかのものだ。
だけど、やっぱり何か違う。高い柱に引き上げられながらむき出しの椅子から見上げる空はとてもとても雄大で、ジェットコースターには無かった心の余裕がある分、竜児の胸をさわやかにしてくれる。

一方、天幕は急速に遠ざかり、足下には遊園地広がり始める。いつの間にか椅子の高さはジェットコースターどころか観覧車を超えており、遊園地で一番になっている。うねうねとのたうつレールの上を、おもちゃのように疾走するコースターから悲鳴が聞こえる。
遊園地の外の道を自動車が行き来している。遠くの線路を電車が走っている。

「なんだか全部おもちゃみたい」

大河がクスクスと笑う。

観覧車よりも高く、観覧車よりも開放的な景色だった。こりゃぁいい。センチになんかなりようがない。大河も大喜びらしく、竜児に「ほら、あのビル高い」とか、「飛行機が飛んでる」とか、「あれって野球場?」などと次々と指さす。
そのたびに竜児は大河の紅葉のようなかわいらしい手が指し示す方向に目をやり、一つ一つ相づちをうったり、答えてやる。

「大河、遊園地来てよかったな」
「うん、本当にそう思う」

青空の中につり上げられたまま、二人顔を見合わせて笑う。意味もなく、幸せな気分になった。

「ねぇ竜児、北村君てさ」

大河がうれしそうに何かを言おうとした瞬間、椅子ががくんと揺れて停止した。おしゃべりに興じていた16人の乗客から口々に小さな悲鳴が漏れ、そして何が起きたのかを全員が理解する。

地上100m。スカイスクレーパー最上部にご到着である。

46 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 23:00:00 ID:raVMCkEF0
それまでの楽しげな雰囲気は一変し、全員が黙り込んだ。さもありなん、これでのんびりした空中散歩は終わったのだ。稼いだ高さをこれから一気に放出することになる。
登る際にジェットコースターのような緊張感が無かった分、突然思い出したこれから起きることに全員が息を呑んでいる。

乗客が黙り込んだせいで、周囲に満ちあふれている町の喧噪が突然大きく感じられ、風の音が急に恐ろしい高さを思い知らせてくれた。そうだ、自分は今地上100mにあって、落下を待つ身なのだ。竜児も大河も表情を硬くし、バーにしがみついてその瞬間に身構えた。

ところが。

「あれ?」

大河が声を漏らす。大河だけではなかった。いぶかしむような声がほかの乗客からも漏れ始める。竜児も同じだ。上についたらすぐ落ちるものだとばかり思っていたのだが、椅子はぴくりとも動かない。息を呑んでいるうちに緊張が切れてきて何人かがひそひそと話を始める。

「竜児、落ちないね」
「おう、す」

ガチャンという大きな音とともに椅子が突然落ち始めた。すっかり警戒を解いていた竜児はなんの対応もできない。声も立てられなかった。聞こえるのは背後でレールがたてる轟音と、一気に暴力的な音量になる風の音だけ。
ハラワタに羽が生えてふわふわ飛んでいきそうな妙な感覚に、大きく吸ったまま息を吐くこともできず、それどころか下手をしたら口から魂が漏れて飛んでいきそうな具合だった。
すごい勢いで風の中を落ちていく椅子に座ったまま、竜児はバーにしがみつき、大河に鬼般若のような顔を向けてひたすら腹筋に力を入れるだけ。

大河も同じなのだろう。目と口をまん丸に開いて竜児の方を向いたまま、きゃーともひーとも言わずにバーにしがみついている。

誰も、何も言わない。悲鳴すら上げられない。

長く長く続いているような落下は、たぶん竜児がさっき計算したとおりたかだか3秒か4秒だったはずだ。いきなり背後でガーッという新しい音が鳴り響くと同時に全員が椅子に押しつけられ、そのまま天幕のあたりで椅子は制止した。

「ひゃー」
「ほぇー」
「ふあははは…」

まわりでうつろな声とも笑い声ともつかない声が上がる。竜児も大河も同じだ。怖くないだって?絶叫マシンとしては期待はずれだって?そうではない、悲鳴を上げることすらできなかったのだ!

47 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 23:00:46 ID:raVMCkEF0
カタカタと音を立てて降り続けた椅子が地面につくと、係員の合図でバーがあがる。靴を履いて立とうとして、おっといけない。竜児はよろめく。大河も同じらしく、しかもこいつは本当にこけそうになるが、竜児に腕を捕まれて危うくセーフ。
顔を見合わせて、そしてようやく二人とも笑えるようになった。

「きゃははははは!何これ!」
「あははは!いや、すげぇ」

人の邪魔にならぬよう道を空けながら竜児は柱を振り返る。すでに新しい組が椅子に固定されてカタカタと柱を引き上げられていくところだ。なんてアトラクションだろう。本当に、悲鳴をあげることすらできなかった。

「これだったら、北村君と乗ってもいいよね」

満面の笑顔のまま、おかしそうに大河が言う。

「おう、これなら大丈夫だ」

ああ、いいとも。絶対大丈夫だ。だって悲鳴を上げることすらできなかったのだから。竜児の名前だろうが、北村の名前だろうが、口にすることすらできないだろう。決定だ。こいつがデートの最初のアトラクションだ。こいつでメンバーの頭をがつん!とたたいてやる。
あとは遊園地気分で楽しく過ごせること請け合い。

「うふふふ、本当『最凶最悪』よね、ぐわーって落ちていって、私おなかがくすぐったくなっちゃった。あんたも変な顔してるし」
「ああ、すげぇーぜ。ははは、思い出すだけで笑えてくる。てか、顔のこと言うな。お前も相当だったぞ」
「何よ、ひどいんだから」
「なんかこう、気を抜くと口から魂がぬけちまいそうで」
「あ、わかるわかる!

ようやく。本当にこれで、デートのための下見が終わった気分だ。これで大丈夫。デートは絶対に成功する。大河の恋も竜児の恋も、きっと一歩前進だ。本当に遊園地に来てよかった。なんて楽しいところだ。

ようやく落ち着いてきた二人は、晴々した気持ちで最後に顔を見合わせてもう一度笑い声を上げる。しかし、しかしだ。

「やあ高須!逢坂!偶然だな。ずいぶん楽しそうじゃないか。これってそんなに楽しかったのか?」

声をかけられて振り返った竜児と大河が凍り付く。眉毛のあたりでびしっと前髪を切りそろえ、真っ黒に日焼けした顔の眼鏡の男が手を挙げて近づいてきていた。

北村祐作、なぜお前がそこにいる。

◇ ◇ ◇ ◇

48 : ◆fDszcniTtk :2010/09/10(金) 23:01:32 ID:raVMCkEF0
今日はここまで。

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 23:36:43 ID:r4qt1sdF0
>>48
あっれーぇ。
最後のラ王にビックリ!!

しかし、スカイスクレーバーの頂上あたり、
本当に乗っている気分になった。
ドキドキしながら読みました。

続き楽しみにしています!!

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/10(金) 23:57:45 ID:FqeOhLVY0
うわーーみなさん超乙です!
あとでじっくり楽しませていただこう…

51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/11(土) 16:16:48 ID:7XIt8+OY0
乙です
いやー 続き楽しみだ

52 : ◆fDszcniTtk :2010/09/12(日) 06:41:38 ID:VsVkVD7q0
「遊園地作戦」つづき

53 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/12(日) 06:42:24 ID:VsVkVD7q0
二駅手前で目が覚めた。

大河と二人でがっくり落ち込んで、飯も食わず、話もせずに電車を乗り継いでこの電車に乗り換えた。最初は立っていて、席が空いたから大河を座らせた。大河はすかさず寝てしまい、隣の席が空いたのを見て竜児も座った。
どうやら竜児も座るのとほとんど同時に寝てしまったらしい。よほど眠りが深かったのか、あるいは寝る前によほど疲れていたのか、妙に頭がすっきりしている。大河は竜児の肩に寄りかかって寝息を立てている。

ついてなかった。

すたすたと歩いてきた北村は「なんだ、デートか?相変わらず仲がいいな」などと軽口をたたいて二人をパニックに蹴落とした。言い訳などできるはずもない。「お前を陥落させるためのダブル・デートの下見だ」などといえるはずがなかった。

大河の

「やっちゃんを連れてこようって言ってたの」

という、苦し紛れの、しかしぎりぎり嘘ではない一言にすがるように

「おうそうだ。三人で来るはずが泰子が来れなくなったんだよ」

と、話をあわせて見るも、納得したのかしてないのか、少し話をして北村は戻っていったのだった。

北村は今日、女子ソフトボールチームの練習試合の応援で近所に来ており、帰りの経路に遊園地があったのでほんの少し立ち寄っただけだということだった。つまりは女子ソフトボール部も一緒だったのだ。

起き抜けの頭でそのときの会話を思い出しながら、そういえば女子ソフトボール部にいるはずの実乃梨が来なかったなと思い出す。
北村によれば全員が同じアトラクションに並んでいたらしいのだが、だったら実乃梨だって、いや実乃梨こそ大河を見つけて駆け寄ってきそうなものだ。駆け寄って来られたら来られたで、言い訳を迫られただけだろうが。しかし、それにしてもなぜ。

ああ、わからねぇ。

小さくつぶやいて横で寝息を立てている大河を見下ろす。いったいどれだけがっかりしたことだろう。誘おうとした本人に見つかり、おまけに竜児とのデートと勘違いされたのでは、遊園地に誘ってでダブルデートなどできるはずもなかった。遊園地の話はお流れだ。

(私こんなに頑張っても振り向いてくれないし)

観覧車のゴンドラの中でそう言った大河を思い出す。今回だけはこいつのドジのせいじゃなかったのだ。ドジは確かに踏んだが、どれも何とかフォローできるものだった。ただ、最後についてなかった。

家に帰ったら泣くのだろうか。誰にも、竜児にも見せずに涙を流すのだろうか。

泣き虫め、冗談じゃねぇ、と思う。親に放り出されて、想い人に声すらかけられずに大河は一人で泣いていた。運が悪かったからって、これ以上泣く必要なんか無いのだ。

竜児だって同じだ。これで実乃梨との遊園地デートはお流れ。だからといっていちいち落ち込んではいられない。片思いとはそう言うものだ。次のアプローチを考えるだけだ、日々のアプローチを重ねていくだけだ。

54 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/12(日) 06:43:07 ID:VsVkVD7q0
「おい、大河。起きろ、もうすぐ着くぞ」

肩を揺すって小さく声をかける。よほど疲れていたのかなかなか起きない。ってこともないか。と、竜児は苦笑い。こいつはいつだって寝起きがしゃっきりしない。電車の中で大声を出すわけにも行かず、肩を大きく揺らし、肘でつついて起こしにかかる。

「!」

ふがっとか、ふにゃっとか言う声と同時に飛んできた裏拳に額を殴られて、竜児が無言で頭を押さえる。

電車の乗客は目の前でいきなり演じられたコントにぷっと吹き出すやら、にやにや笑やら楽しそうだが、手を下ろした竜児の血しぶきをまき散らしそうな凶眼に目をそらす。思わず席を立って去っていった人もいる。

ちくしょう、もう遠慮しねぇぞ。

さっと立ち上がって肩を抜くと、いきなり枕を失った大河がぐらりと揺れ、座席にぱっと手をついてようやく目を覚ました。

「ふぇ?」
「もうすぐ着くぞ、ほら」

返事を待たずに網棚に上げておいた、つば広の帽子をぽんとかぶせてやる。かぶせられた大河はつばを持って帽子をかぶり直すと、竜児を見上げる。まだ寝ぼけているのか、悲しさも、悔しさもない、あどけない顔で。
ねぇ、どうして電車に乗ってるんだっけ?ご飯は?とでも言いそうな顔で。

それを見ていられなくて、

「早くしろって、ドアが開くぞ」

乱暴に言い放つと、くるりと向きを変えて一人電車を降りる。あ、待って!そう一声発して大河が立ち上がると電車から駆け下りる。

ドジのくせに走って降りたりして、こけても知らねぇぞ。

冷房の効いた車両から出てきたのでそれなりに暑さを感じるが、それでも昼間よりはだいぶましになった。それはそうだろう。いくら暑くたって、もう秋なのだ。

携帯をとり出して時間を見る。7時半過ぎ。まだ時間はある。

55 :遊園地作戦 ◆fDszcniTtk :2010/09/12(日) 06:43:55 ID:VsVkVD7q0
「大河」

なによ、と言う声を聞きながら、きっと今頃ようやく今日のことを思い出しているのだろうなと思う。

「飯、これから材料買うからスーパーについて来いよ」
「ええ?こんなに遅いのに?外で食べた方がいいんじゃない?」

思い出して、きっとまただめだったと落ち込むのだろう。

「だめだ。俺が納得できねぇ」
「納得できないって、何よ」

太陽はとっくに落ちてしまっていて、空の明かりだけが残っている。もうかぶっている意味のない帽子を取って体の前で持っている大河に向き直る。発車した電車が轟々と音を立てて二人の横を走っていく。
どうしようもなく我が儘で、態度がでかくて、乱暴で、怒りっぽくて、ドジで、泣き虫で、どうしようもなく傷つきやすい大河。

「俺たちには作戦が失敗したなんて落ち込んでいる暇はねぇんだ。落ち込んでいる暇があったら次の作戦を考える。そのためには飯だ。うまい飯を食って、腹をいっぱいにして気分を切り替える」
「だからご飯は外で食べようって……うまい飯?」
「おう」

ぎろり、と不動明王の目つきで大河を見下ろす。卵に漬けてパン粉をまぶして揚げてやろうというのではない。好物を食わせてやろうというのだ。

「今日はトンカツにする」

厳かに言い放つ。

「でも時間が」
「とって置きの新レシピがあるんだ。ミルフィーユトンカツって知ってるか?」
「ミルフィーユトンカツ?」
「おう。薄切りにした豚肉を束ねて間に脂肉を挟んだトンカツだ。脂肉は小さく切るからお前の嫌いな固まりじゃなくて、肉汁になる。一口噛んだだけで旨みたっぷりの肉汁があふれ出してくるんだ。言うまでもないが衣はサクサクだ。
昼間の偽物なんかと比べものにならないくらい旨いトンカツだぞ。どうだ、食いたいだろう」

不道明王から一転して悪事へ誘うような凶悪な笑顔で見下ろす竜児を大河が見上げる。ごくりと、つばを飲んだのが喉の動きでわかる。あどけない表情が消えて、腹を空かせた猫の顔になる。

「私、もうおなかぺこぺこで死にそうなんだけど」
「我慢しろ。我慢するだけの価値のあるものを食わせてやる」

自信満々で言い放って、竜児は向きをかえると出口に向かって歩く。後ろで駆け出す足音が聞こえて、大河が追いついてくる。

「何よ、待たせるだけ待たせて期待はずれだったら許さないんだから。覚悟しときなさいよ」
「お前じゃあるまいし俺がそんなドジ踏むかよ」
「何ですって!」

今では腹を減らした肉食獣の顔になった大河をいなしながら、竜児はスーパーで買うものを考える。今日はキャベツは安かっただろうか。

「なあ大河」
「何よ」
「北村のこと、あきらめないでがんばろうぜ」
「当たり前じゃない。あんたこそ私と北村君のためにきりきり働きなさいよ」
「はいはい」
「返事は一回!」

気がつけば虫の声がすっかり秋のそれになっている。タイムセールは終わっただろうか。

いや、閉店前でかえって安いかも。

(おしまい)

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 23:10:19 ID:v7vLntHj0
>>34
GJ!北村がおいしいとこもってったw
大河の両親の離婚原因に、このいざこざを絡めてるのは感心した。
大量投下乙でした。続き期待して待ってます!

>>37
GJ!離れてる間、竜児も寂しいだろうし
夢でくらいはいい思いしてもいいよなw定期投下乙でした!

>>48 >>55
GJ!下見という名の疑似デート萌えたw
大河の心配するのが体に染み付いてる竜児が笑えるというか、微笑ましいなw
連日投下&完結乙でした!

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/12(日) 23:12:05 ID:ZlF4/wya0
>>55
遊園地の中でギシアンするならどこがいいのか
やはり定番は観覧車か

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 04:13:15 ID:yaiELRMp0
againの方、GJです!
次で完結かー…大作が終わるのは感慨深い
毎度原作ネタの取り入れ方が素晴らしくて唸らせられます。まさにagain!
そして悶えるw
本編最終回、ってことは後日談などもあり…!?とひっそり心踊らせつつ、
次回も全力で待機しています!

>>55
北村登場にはびびったが、そうまとめるかぁ。
笑ってほしいんだろうな。この頃の竜児じゃ認めそうにないけどw
二人の不器用さがいじらしい。一日の間に色んな感情が交錯してて、読後感はんぱない
力の入った長編、連日読めて嬉しかったです!
GJでした!

59 : ◆fDszcniTtk :2010/09/13(月) 07:55:05 ID:HVgCrg5J0
>>49
似たようなアトラクションに乗ったことがあるんだが、もう二度と乗れないと思う(w

>>56
つきあう前の二人にデートさせようと思って書いたんだけど、結局竜児の世話焼き
イベントだったような気がする。

>>58
このツンデレ具合が竜児だね。
大河のアップダウンが激しすぎて盛り込み過ぎじゃないかと書いている間不安だったけど、
こんな風に喜んでもらえるなら、書き終えることができて良かったと思うよ。
ありがとう。

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/13(月) 23:35:25 ID:DsR8SUpX0
ゆゆぽ新刊を読んだら、とらドラ熱が再燃してしまった
竜児や大河はサークル入るんだろうか

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/14(火) 00:16:33 ID:5f+otWmN0
クリスマス大好きな大河の事だから結婚してからも盛大に祝うんだろうな
高須家の子供は中高生になってもサンタ信じてそうだw

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/14(火) 00:56:45 ID:0KwJrwaU0
>>55
>>59
長編、乙でした。面白かった!。
スカイスクレーパーも描写が秀逸! 特に、上へあがっていくときの開放感と、落ちる直前のあの間が
余すことなく表現されていて、昔に八○島で乗ったのを思い出しました。 あんな剥き出しの開放感、
他にはなかなか無いですね。(3回連続で乗ったら慣れて、自由落下の無重力状態を楽しめるようになります!)
大河の「時計で計ればいいじゃない」は、「一方、ロシアは鉛筆を使った」を思い出したw
待ち時間の様子も自然でうまいなぁ…

さて、ここからは妄想ですが、北村登場後、帰りの電車まで飛ぶのが、却って想像を引き立ててくれました。
みのりん、その場にいたかもしれないけど、笑い転げながら降りてくる2人を見て、声かけられなかったのかなぁとか、
それが夏休み明け、2学期の竜児との距離感につながったのかなぁ?とか。 
みのりん、ホントにいい奴なのでせつない…

あと、大河が眠りにつく時には、下見の失敗や孤独感を思い出さずに、今日は竜児を相手にいっぱい感情を
さらけ出したことを思い出して、笑ってて欲しいなぁ、とか。

難しい時期の2人が存分に描かれていて本当に嬉しい限りでした。

>>60
ゆゆぽ新刊、もうでてたんだ! アキバ軒並み売り切れですと? また尼でぽちるか。
大学生なら竜虎でやって欲しかった、という人いるかもw

63 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/14(火) 09:57:24 ID:MicAW8fS0
お題 「逢坂」「確かに」「やる気」



 救護テントから戻ってきた実乃梨は、まだ少し脚を引きずっていて。
「みのりん、大丈夫?」
「うん、軽くひねっただけだから大した事はないよ。ただこの後の競技に出るのはアウトだって」
「……あいつら、後で絶対に殺すわ」
「こらこら大河、物騒な事を言うんじゃねえ」
「なによ竜児、あんたみのりんを怪我させた連中を許せるっていうの?」
「事故だったんだから仕方ねえじゃねえか」
「そうだよ大河、避けきれなかったオイラもドジだったんだし」
 二人がかりで宥められ、それでも大河は不機嫌顔。その横では北村も眉根を寄せて難しい表情を。
「う〜む、そうなると困ったな……」
「おう北村、何がだ?」
「最後のリレーだよ」
「おう、そういや櫛枝が選手だったな」
「C組連合が逆転優勝するための、おそらく唯一のチャンスだからな。適当に決めるわけには……」
「……なあ北村、その代役、大河がいいんじゃねえか?」
 その言葉に、『え?』と『ふむ』と二種類の視線が竜児に注がれる。
(ちょっと竜児!なにめんどくさいこと言い出してるのよ!?)
(馬鹿、北村にいいとこ見せるチャンスじゃねえか。こんな時こそやる気出さないでどうする)
(む、それもそうね……)
「なるほど、確かに逢坂の運動神経なら……
 逢坂、悪いが頼めるか?」
「も、もちろんよ!まま、まかせてちょうだい!」

 リレーの走者は一年男子、二年女子、三年男女の計四人。すなわち大河はその二番目。
 C組連合は第一走者が大きく遅れ、トップとの差はトラック三分の一周程度。
 そして今、大河の手にバトンが渡される。
「どぅおりゃあぁぁぁぁっ!」
 その姿はまさに地を駆ける虎の如し。
 先を行く者を一人二人と抜き去り、コーナー出口ではトップとほぼ横一線。
 その勢いに押されるように第五走者二人が同時にスタートする。
「大河ぁぁぁ!いっけぇぇぇぇ!」
 竜児の叫びに応えるかのように大河は一歩前に出て、バトンを持つ手が伸ばされて。



64 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/14(火) 09:59:59 ID:MicAW8fS0

「なあ大河、北村も言ってたじゃねえか、気にするなって」
「……」
「急な話で次の走者をきちんと確認できてなかったわけだしさ、バトン渡す相手間違えても仕方ねえよ」
「……」
「結局アンカーは狩野の兄貴がぶっちぎりだったわけだから、負けたのは別に大河のせいじゃねえし」
「……」
「……あー……大河、晩飯何がいい?」
「……何よ急に」
 やっと返ってきた返事も、その声にいつもの力は無く。
「リレーも総合順位も二位にはなったわけだしさ、その、なんだ、敢闘賞ってことで今日はメインのおかずを大河のリクエストでだな」
「あのねえ、竜児」
 大河は突然立ち止まり、ぐいっと顔を上げて。
「おう?」
 足を止めた竜児をびしぃ!と指差して。
「そもそも!あんたが余計な提案しなけりゃ私があんな恥かくことも無かったわけよ」
 つい先程までの気弱さはどこへやら、睨みつけてくるその瞳の輝きは『手乗りタイガー』そのもので。
「お、おう」
「それをおかず一品で誤魔化そうってのは虫が良すぎるんじゃないかしら?」
「お……おう、すまねえ」
「とんかつは昨日食べたから……そうね、ハンバーグ!でっかいの!それとデザートにミルクレープ!この間美味しかったあれに生クリーム追加で!それで許してあげる。わかった?」
「おう、まかせとけ。じゃあハンバーグは高須流特製煮込みハンバーグにするか……」
「ちょっと竜児、なにをニヤニヤしてるのよ!本当あんたは家事の事となると興奮する変態なんだから……ま、それで美味しいもの食べられるんだからいいけどね」


65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/15(水) 00:40:36 ID:IMOP1A9X0
おつ
どんなときでも遺憾なくドジを発揮する
それが大河クオリティ!ですね

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/15(水) 02:11:05 ID:pJOPEfZi0
久しぶりにまとめサイト読み直すかな

67 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:32:13 ID:tZkUBDND0
規制のせいで随分間が開いてしまいました。
取り合えず一応終わらせます。

68 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:33:02 ID:tZkUBDND0
「よし、弁当はこれで完璧だ。」

豚肉の生姜焼きに春巻、生野菜のサラダ。
竜児も思わず自画自賛が出るほどのデキだった。

「ほら大河。お前の分も作っといたぞ。」
「…ん。」

気のない返事をして、弁当を受け取る大河。

「なんだよ、まさか今更学校行きたくないとか言わねーだろうな?」
「…そうじゃないわよ。そうじゃないけど…っ。」

大河はそこでやや口ごもると、渋々、と言った様子で続く言葉を搾り出す。

「…どんな顔して行ったらいいのか、わかんない……。」
「…。」

竜児も思わず二の句を告げなかった。
確かに、大河にしたら北村とどう接すればいいのか、わからないというのは無理ないことだ。

悩んだ挙句、竜児は大河にこう伝える。

「じゃあ、一言。教室入って、一番最初に北村の所に行って一言だけ。それならどうだ?」
「…………なんて言うの?」
「何でもいいさ。…そうだな、「おはよう」って言えばいい。大丈夫だ!北村ならそれでちゃんと伝わるさ。」
「……………………わかった。」

やはり渋々だったが、大河は頷いた。

告白されて、フってしまった女の子が翌日休んでたら、気にしないはずが無い。北村だってきっとそうだ。
もう大丈夫だって、伝えた方がいい。今後ギクシャクしない為にも。

「りゅうひゃ〜ん、はいはひゃ〜ん!もう行っひゃうのぉ〜?」

玄関で靴に履き替えていると、まだ眠そうな顔をした泰子が歯を磨きながら顔を出した。

「ああ、歯を磨きながら喋るな…。昼飯は冷蔵庫に入ってるからな。温めて食えよ。」
「はぁ〜い☆」
「んじゃ、行ってきます。」
「…。」
「ほら大河。お前も言えよ。」
「え?アタシも?」
「早くしろ。」
「え、えと……い、行ってきます。」
「はぁ〜い♪行ってらっしゃ〜い♪」

ぶんぶんと手を振る泰子に、照れくさそうに玄関を飛び出す大河。
軽い溜息と裏腹に、竜児の口元はほころんでいた。

69 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:34:57 ID:tZkUBDND0
「おぉ〜〜い、とぅあいがぁ〜〜!!昨日はどうしたんだよぉ〜!!俺っち心配で心配で夜も眠れなかったぜぇ〜い!!見よっ!!」

遠くの方から大きな声で呼びかけてくる、今日も元気いっぱいの櫛枝実乃梨。何か充血した目を描いたパーティーグッズの出来損ないのようなものを着けているようだが、遠すぎてよく見えない。
まことに持って、色々と残念な少女ではある。

「…ぶつ、ぶつ…。」

大河はいつもなら櫛枝とじゃれあうのだろうが、今日はまるで視界に入っていない。

「…お、おは…お、………おはよっ…おは…。」

北村に挨拶する練習をしているようだ。まるで高須家の愛玩動物インコちゃんみたいになっているが。

「およ、およよっ…そこに控えるは高須君。おはー♪」

櫛枝はそばまで近づいていくと、さすがに無反応だった小道具をそそくさとしまい、いつも通りの晴れやかな笑顔を向ける。

「ああ、おはよう櫛枝。」
「むむむ……。」
「??」
「はっ!!こ、これは…もしかして、もしかすると、あ、アベックと言う奴では!?」
「あべっく…。」

今時…と思うがつっこまない竜児。それ以上に無反応な大河。

「家、近所だったんだ。昨日初めて知ったんだけど。」
「へぇ〜。あのマンションの近くなんだ、高須君。」
「ああそうか。櫛枝はあのマンション行ったことあるんだな。」
「う、うん…まあね。」

やや口ごもって大河のほうを覗き見る櫛枝。しかしやはり大河の耳には入っていない。

「…どしたの、大河?」
「さ、さぁ?」

竜児は本当の事を言うわけにもいかず、頭を振った。
櫛枝の疑問をヨソに、大河にとって緊張の瞬間は刻一刻と近づいて来る。

70 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:36:11 ID:tZkUBDND0
教室の前。既に櫛枝は中に入っている。
当然だ。ここで立ち止まっている方が不自然なのだ。

「いいか、最初の一言で言うんだぞ。それを逃したらずるずる言えねえぞ、きっと。」
「わ、わ、わ、わかってる…!」

なんかこっちの方が緊張してきた、と竜児は思いながらも、先にドアをくぐり北村の姿を確認すると、わざと大河に聞こえるように挨拶を交わす。

「北村、おはようっ!!」
「お、高須。今日はいつになく元気だな!おはよう!」

「ビクッ」という擬音が大河を振り返らなくても聞こえてきそうだった。
竜児は心の中で祈るような気持ちで大河を待つ。

やがて、ゆっくりと。小さな足音は近づいてくる。
怖い気もしながら、振り向いてそれを確認する竜児。
大河は、下を向いていてその表情は伺えない。

―――と、思ったのも一瞬だった。キッ、と顔をあげ、まっすぐと北村の方を向くと

「おはよう、北村くん…っ!」

言った。
たった一言。でも、それがどれ程勇気を振り絞ったものか。竜児は、よくわかっていた。本当は、よく言えたなって今すぐ褒めてやりたいくらいに。

北村は、ほんの一瞬固まったような表情を浮かべたが、すぐにいつもの気さくな笑顔を浮かべて。

「ああ、おはよう逢坂。」



良かった。
竜児は、心からそう思った。


しかし大河はそこでもう限界だった。一歩も動けず完全にフリーズしてしまっている。
竜児は、もう予鈴がなるぞとかなんとか言いながら無理やり大河を自分の席に座らせた。

71 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:38:11 ID:tZkUBDND0
1時限目が終わるまでずっとフリーズ状態だった大河が、チャイムを合図に飛び起きると、いきなり竜児の傍につかつかと近づいてくる。

「なんだよたい…ぐわっ!?」

そのまま首根っこを引っ掴んで、教室から出て行ってしまう。
後に残されたクラスメイト達は

「と、とうとう手乗りタイガーvsヤンキー高須!!!」
「こ、これは是非とも覗きに行かないと…!」
「馬鹿、ばれたら殺されるぞ!!」
「どっちが帰ってくるかで勝敗はわかるじゃないか。」

などと無責任な噂話で盛り上がっていた。

「…臭う。」

そんな中ただ一人、櫛枝実乃梨だけが、真剣な面持ちで二人の後姿を見送っていた。


一方竜児は、昼以外は人気の少ない自販機コーナーまで連れて来られていた。

「痛ぇな…まったく、何だよ!!」
「い…言えた。言えた!言えたっ!!アタシ、ちゃんと言えた!!」
「わ、わかってるよ。落ち着け。」
「何よ!アタシがこんなに頑張ってるのに、やれって言ったアンタは賞賛の一つもよこせない訳!?」

普通自分からそういう言い方するか…とは思ったが。


「…凄えよ。」

でも、竜児もそう思っていたのだから、仕方ない。

「俺なら、もし俺なら言えたのかな…って思った。大河、お前は凄いよ。本当に。」
「な、何よ急に、こ、こっぱずかしい事言ってんじゃないわよ…。」
「勝手な奴だな…お前が言えって言ったんじゃねえかよ?」
「う、うるさいわねっ!!」

ふん、とそっぽを向いてしまう大河。でも、その顔は耳まで真っ赤になっていた。

「…よし、それじゃなんか飲み物でも奢ってやる!何がいい?」
「ホント?じゃあいちご牛乳!」
「おう!」

だが、気をつけろ。
このドジな女の子は、買ってやったいちご牛乳をこぼしてしまうかも知れない。制服まで汚すかも知れない。もしかしたら、転んで放り投げてしまうかも知れない。

だから、目を離さないように。
いつも、傍に。虎に並び立つのは―――――。

72 :パラレルとらドラ ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/16(木) 16:40:46 ID:tZkUBDND0
―――次回予告!
==================================
「今日からこのクラスで皆さんと一緒に学校生活を送る事になりました、川嶋亜美です♪」
「うおお!!!!」
「さすが現役モデル!!可愛いレベルが…違う!!!」
「…た、確かに。」

思わず竜児も納得した。それ程、川嶋亜美は――圧倒的に――輝いていた、のだ。

「チッ!」

前方の席から、最早お馴染みになったなった舌打ちが響く。
いつもは担任の永遠のどくし…29歳、恋ヶ窪ゆりに向けられるソレは、今この瞬間は、自分に向けられている。

確かに、それがわかった。大河が振り返ったわけではない。
だが、確かに竜児に向けられた負のオーラのようなものが、背筋を冷たくしたのを感じていた。
==================================
仮面の美少女川嶋亜美、その正体を知るのは北村だけ。
竜児と大河に好奇と疑惑の眼差しを向ける実乃梨&クラスメイト。
亜美と、竜児の接近??―――それは、嵐の前触れか??






…ジョークです。

て事で、「ぱられるとらドラ」ひとまず終了とさせて貰います。長々とありがとうございました。


73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 23:27:05 ID:mmXzie0pO
パラレルとらドラ超待ってました!!

次も期待ィィイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!…ハァハァ(´ω`

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/16(木) 23:58:55 ID:whN21UsA0
完結乙
ジョークと言わず次も書いてよ

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/17(金) 00:01:19 ID:QfeplgYI0
面白かった。

普通に次も期待してるぜ!

76 : ◆fDszcniTtk :2010/09/17(金) 01:36:14 ID:PXvRF3H+0
>>62
感想ありがとう!あんなものに3回も。恐ろしや。

みのりんは、本当は北村と登場する筋書きだったけど、登場してもまさに
二人に声をかけられなくて黙ったまま笑ってる予定だった。ここまで想像してくれるなら
やっぱりシーンを大幅に省略して正解だったよ。

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/17(金) 23:50:00 ID:nK3gLyAF0
そろそろ大河が太ってくる時期だな
(秋の味覚的な意味で)

78 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/18(土) 00:05:06 ID:Qh8MDicb0
>>73 >>74 >>75
ありがとうございます。
ご要望して下さる声があるようでしたら、いずれまた…。

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/18(土) 03:59:35 ID:Jt11ikYa0
大河が太ったらダイエットするはず
もちろんギシアン方式で

80 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/18(土) 06:05:21 ID:wteNqeYO0
お題 「失敗」「さよなら」「独り言」



「おはよー、竜児!」
 日曜日、いつものようにドアを開ける大河。が、いつもならばすぐに返ってくる竜児の声が聞こえない。
「ん?」
 見やれば、卓袱台に座ったまま背を向けている竜児。
 居眠りでもしているのかとそろそろと近づいてみれば、その前にはなぜか大河が昨日忘れて帰ったファッション誌。
「……生まれたままのお前が……って、それじゃ変態みたいか……」
 そして、なにやらぶつぶつと独り言を。
「……竜児!」
「おうっ!?」
 至近距離からかけられた声に、跳び上がって驚く竜児。
「『おう』じゃないわよ、まったく。人が来たのにも気づかないで何やってんの?」
「そ、それは……」
 竜児は一瞬視線を逸らし、ぎゅっと拳を握りこんで、大河を真っ直ぐに見つめ直して。
「大河……俺はお前が好きだ」
「え?えええ!?」
 突然かつ直接的な台詞に、たちまち真っ赤になって絶句する大河。
「それは、大河の容姿も込みで好きなわけでさ。いや、もちろん見た目だけで好きになったわけでも、外見が違ったら好きにならなかったってわけでもねえんだけど」
 が、妙に回りくどくなる言葉に茹で上がりかけた大河の頭の温度が下がっていく。
「……竜児、あんたは何が言いたいのよ?」
「いや、だからさ……これ……」
 言いながら竜児が差し出したのは、折り目がつけられたファッション誌のページ。
 『今までの自分にさよなら!』等の文句が踊る、それは美容整形の広告で。
「そりゃ、大河がどうしてもって言うなら俺が止める筋合いじゃねえのかもしれねえけど、こういうのは失敗が怖いとかも聞くしさ……」
「竜児……それ、裏」
「は?」
「だから、その広告の裏のページのバッグなのよ、私がチェックしてるのは」
「……こういうのは普通、折り曲げた側のページじゃ」
「どっちに折ろうが私の勝手じゃない」
「そりゃそうだが……なんだ、そうなのか……よかった……」
「ねえ竜児」
「おう?」
「あんた今、私の容姿が好きって言ったわよねぇ?」
「お、おう。『容姿も』な」
「参考までに聞いときたいんだけど、具体的にはどこがどう好きなわけ?」
「そ、それは……その……」
「まさか答えられないなんてことは無いわよね? あと『全体的に』なんて漠然としたのは認めないから」

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/18(土) 12:52:28 ID:nI/xPTBG0
>>78
じんわりときて、良かったです。続編でなくても、また何か待ってます。

>>80
乙です!
そしてこのあと小一時間、竜児の絶賛褒め殺し大会が始まるわけですねw


82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/18(土) 18:45:22 ID:YdGfAjQy0
>>81
You are too buautiful思い出した
読んでこよう

書き手の皆様gjです〜

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/18(土) 20:54:21 ID:HcUoVWE10
>>82
俺も思い出した
保管庫の管理人様、様々だな

84 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/18(土) 23:54:48 ID:Qh8MDicb0
新シリーズ始めさせて貰います。

時期的には小説後。
クラス編成はご都合主義的な所がありますが、大目に見てやってください。

85 :告白の情景 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/18(土) 23:56:20 ID:Qh8MDicb0
それは、梅雨の残り雨が降り続く7月の始めのある日。
4時限目が終わり、辺りは思い思いに昼食の準備に取り掛かっている。

「お〜い高須っちゃん!お客さんだよ〜!」
「お客…??」

竜児は春田の声に教室の入り口に目を向ける。
そこにはいかにもおとなしそうな女生徒がいた。

やや落ち着かないその挙動は下級生のように見受けられる。ボブに纏めた髪に、大きな瞳はいかにも「可愛らしい」と言った面持ちだ。

「誰?」
「ん〜?女の子だよ〜。」
「…それは見ればわかる。どちらのどなた様だと聞いてるんだが…。」
「さぁ〜?」

春田に問い詰めても埒が明かないと判断したのか、竜児はやれやれと腰を上げる。
そこに大河がいつものように近づいてきた。

「りゅうじ、お昼っ!」
「ああ、ちょっと待ってくれ。なんか俺に用事だって言うんだ。」

竜児は目線で入り口の女生徒を指して言った。
瞬間、ヒヤリと冷たい物を感じる。

「…誰?アレ?」
「さ、さぁな。誰なのかもなんの用なのかもわからん。ほ、ホントさっぱり。取り敢えず話を聞いてくるから、先に食べててくれ。」
「…。」

フェンシングの剣のような鋭い視線がグサグサと背中からつきささるのを耐え、竜児はその女生徒の所まで重い足を引きずって行った。


86 :告白の情景2 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/18(土) 23:58:01 ID:Qh8MDicb0
「お〜い、大河ぁ!」

今日も今日とて元気印の櫛枝実乃梨。
この元気さと明るさで大抵は大河の毒気も骨抜きにされてしまうのだが。

今日は勝手が違っていた。

「今日はあーみんも誘ってきたぞぉ!」
「なぁんでこ・の・亜美ちゃんまで…」

そう亜美が言い掛けた所で、大河が野獣のような目付きで睨み付けているのに気付く。
目線の先を追って二人が振り向くと、竜児と、おどおどとした様子の女生徒。

傍目にはまるで竜児が脅しているかのような構図だが、もちろんそんな訳はない。

「なんか犯罪臭のする絵ね。」
「あ〜みん…。しっかし誰だろね、あの子。下級生…かな?大河知ってるかい?」
「…知らない。」

憮然としたその顔は、明らかに不機嫌そのもの。

それもそうだろう。女生徒と竜児は、見た感じ割と楽しそうに話していた。
亜美は獲物を見つけたかの如く、不適な笑みを浮かべる。

「おーおー、愛しの高須くんが取られちゃったかなぁ?まー無理もないか、かたや従順そうな子犬ちゃん、かたや獰猛な手乗りタイガー!」
「こら、あーみん!!」
「はいはいすいませぇん。櫛枝大先生ぇ〜。」

そう言ってべろを出し、まるで反省の色はない。
それもいつもの事。ただ、違うのは大河の方がそれに反応しない事だ。

「全くもう。大河、あ〜みんのお馬鹿チンの言う事なんか気にすることないぜぃ!高須くんが浮気なんかする筈ないって!」
「ていうか、そんな甲斐性ないっつーの。」

そんな二人の会話にも、大河はほとんど耳を貸さない。
相変わらず鋭い目付きで睨み付ける標的は、教室の入り口の二人。竜児と、女生徒だ。

女生徒は竜児が一つ頷くと飛び跳ねて喜んで見せ、頭を下げて教室を後にした。
それを見送ってから、竜児が戻ってくる。ややその顔が引きつっているのは、決して生まれつきいかつい目付きのせいだけではないだろう。

87 :告白の情景3 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/18(土) 23:59:27 ID:Qh8MDicb0
「お、おぅ。待っててくれたのか。お、今日は川嶋も一緒か?」
「まぁね。あんまり乗り気じゃなかったんだけど、気が変わっちゃった♪亜美ちゃんとお昼一緒できるなんて超〜幸運ね、高須くん。」
「竜児、お弁当。」

にやにやと底意地の悪そうな笑顔を浮かべる亜美を無視するように、大河がずいっ、と手を伸ばして竜児お手製のお弁当を要求してくる。
その目は完全にすわっていた。

「あ、あぁ…ほ、ほら。」
「ん。」

恐る恐る渡す竜児から無造作に受け取ると、いつものように隣に座り、包みを広げ始める。
てっきり一から十まで問い詰められると思っていた竜児は、返って気味悪さを感じて自分から切り出した。

十中八九、返り討ちになるのは目に見えているのだが…。

「な、なぁ大河。い、今の子は別に何でもなくてだな…。」
「何?今の子って?あぁ、あのわざわざ上級生の教室まで来てアンタを名指しで呼び出したあの気の弱そうなボブカットの女の事ね。何でもないんだ、ふぅん。何でもないならわざわざ言う事ないんじゃない?私、お腹減ってるの。」

いきなり一撃必殺のクロスカウンター。ジャブもボディーもありゃしない。
早くもKO寸前の竜児だが、これでめげてる訳にも行かなかった。

「い、いや…何でもないというか、大した用事じゃないと言うか…その、な。」
「大したことない用事はあったんだ。何でもないんじゃなかったっけ?ま、別にいいけど。全然全くこれっぽっちも気にしてないし。」

ま、負けるものかと必死に一歩踏み出そうとするが。
残念ながら百獣の王と並び証せられる虎の牙には、旗色が悪い。

傍で聞いてる亜美と実乃梨の顔まで引きつってきていた。

88 :告白の情景4 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/19(日) 00:01:22 ID:UKT7Ba500
「う…。と、とにかく話をだな…。」
「話?大したことないんでしょ?それってお昼御飯より大事なの?ねぇ、アンタがあの女と話しこけてる間ずっと待っててお腹がすいてるって言ってるのに、それよりも大事な話なの?」
「い、いや…。」
「そ。じゃあ別に聞く必要ないわね。」

取り付くしまなくノックアウト。
所詮竜は竜でもたつのおとしごクラスの竜児では、太刀打ちできる相手ではなかった。

(うーわ、タチ悪ぅ…。高須くんからかって遊んでやろうと思ってたけど、何かかわいそうになって来たわ…。ちょっと実乃梨ちゃん、何とかしてよ。とてもご飯食べる雰囲気じゃないわよ?)
(うぅ〜、アタシは男女の機微というやつにはとんと疎くてねぇ…。あ〜みんの方が得意でしょ?)
(馬鹿言わないでよ、アレに巻き込まれるなんて、冗談じゃないわ。)

実乃梨の後ろに周って、背中を押す亜美と、それに抵抗する実乃梨。
大河は目線も合わさずに二人に言葉を投げかけた。

それはもう、穏やかに。

「何コソコソ言ってるの、二人とも。お昼、食べないの?」

思わずビクリと一歩下がって、亜美と実乃梨は乾いた笑いを浮かべる。

「あは、あはははは、そ〜だねぇ!あああーみん、それじゃアタシたちも頂くとしようかねっ!」
「そ、そーね。」

逃げ出したい。その言葉が喉下まで来ているのを必死に飲み込んで、諦めて席を合わす二人。

「何してるの?竜児も早く座りなさいよ。それとも立って食べる気?」
「…あぁ。いや…。」

しずしずと座る竜児。
結局4人は、まるで砂を噛む様な昼食を味わう事になった。


「二度と一緒になんか食わねぇから」と亜美が言うのも、無理はなかった。

89 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/09/19(日) 00:04:50 ID:UKT7Ba500
今回は以上です。
そんなに長く続くお話ではないので、次かその次くらいで完結予定です。

タイトルは某漫画のある一話のタイトルから頂きました。

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/19(日) 01:47:25 ID:hdChQd3g0
間が空きましたが、前スレ21の続きです。

シンデレラなんかになりたくない5

以下、9レスほど使います。

91 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:48:49 ID:hdChQd3g0

竜児の部屋にある時計が8時を過ぎる。
その途端、そわそわと落ち着かなくなる竜児。
まだかなと、携帯電話を手に部屋中を歩き回る。
その竜児が心待ちにしているものは軽やかな着信音と共に8時3分過ぎにやって来た。
竜児は心の中でゆっくり1、2、3と数えると受話器ボタンを押す。
すぐに出てもいいのだが、以前すぐに出た時「あんた、電話の前で待機してたでしょ?」と大河に言われ、事実、その通りなのだが認めるのもしゃくで、家事の途中だったと竜児は言い張ったことがあったのだ。


「竜児?」
スピーカーから聴こえ来る大河の声に竜児は軽い安堵を覚えた。
・・・良かった、何もなかったんだな。
この点で大河は非常に分かり易かった。
落ち込んだり、不愉快なことがあれば「竜児↓」と語尾が下がる。
反対に嬉しいことがあれば「竜児↑」と語尾が上がる。
今日はフラット・・・やや上がりかと竜児は聞き取ったのだ。

「おう、ちゃんと飯食ったか?」
「食べたわよ、心配しなくて大丈夫」
食後間もないのか大河の声色に満足が色濃く出ていた。
「グラタンだったの」
竜児がメニューを問うと大河はそう答えた。
おいしかったと付け加える大河に良かったなと思う反面、竜児は少なからず物足りなさを覚える。
今の大河の台詞が、自分が調理したものへの賛美であればどんなに心が浮き立つだろうと思うからだ。

「お父さんがあんなに料理できるなんて思わなかった」
会社社長として働きながらも、週に何回かは厨房へ立ち料理を作ると言う、大河の義理の父親。
大河の話だと結構なグルメみたいだが、美食を極めると言う感じではなく家庭料理こそが基本だと言うスタンスらしい。
その点で多いに同感できると言わざるを得ないと、まだ会ったことも無い相手に共感を感じてしまう竜児。

「ママより上手・・・あ、竜児には適わないけどね」
「そりゃどうも」
大河なりに気を遣ってかそんなことを言う。
竜児としては苦笑するしかない。
それにしても、大河の落ち着いた口調を聞くにつれ、短期間で新しい家庭に馴染んでいる様がうかがえて、竜児は安心する。
もしも大河がひと言でも辛いとか漏らしたら、飛んで行って大河をかっさらって行く位の覚悟が竜児にはあった。
でも、この分ならそんなことはしないで済みそうだった。


92 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:49:40 ID:hdChQd3g0


「学校は平気か?嫌な事とかないよな?」
「・・・竜児」
竜児の名前を呼び、そのまま電話口でクスクスと笑い出す大河の声が竜児へ届く。
「何だよ?」
心配してやって笑われるのが心外なのか竜児の声が尖る。
「ごめん、ごめん・・・だって、竜児がおんなじこと聞くんだもん」
笑いを収めると、大河はさっきの食事の席で父親から同じ事を聞かれたと事情を説明する。
「声の調子まで似てたから・・・つい・・・ごめんね、竜児」
「・・・いや、そういうことだったらかまわねえけどよ」
大河への理解者が増えるのは嬉しいことだし、ましてそれが義理の父親なら尚のことなのだが、竜児の心は小さく波打つ。
だから、そう言ったものの竜児の気持ちは晴れない。
・・・何だ、これ?
今まで感じたことのない感覚に竜児は戸惑う。

それから、今日の出来事や、昨日のTVの話題など取りとめもない会話を続け、いつもの様におやすみと電話を切る竜児。
布団に寝転び、携帯電話を宙にかざす竜児。
薄暗くした部屋の天井に携帯電話越しに浮かぶ大河の顔。

ん?竜児?・・・そんな顔でこっちを見てる。
無意識に竜児は手を上げ、大河に応えた。
嬉しそうな表情で大河が駆けて来て・・・その足が途中で止まる。
誰かが大河を呼んでいた。
天井の大河は困ったような顔で悩むような仕草を見せたが、やがて、竜児にごめんねと言うポーズをするとそのまま声のした方へ走り去った。

「た、たいが〜!!」
自分の発した大声に驚いて竜児は布団から跳ね起きた。
その傍らには畳みの上に転がった携帯電話の姿。
どうやら、あのまま寝入ってしまったのだと気がついた竜児。
「・・・夢か」
吐息と一緒に声を漏らす。
開け放した窓から流れ込む風がカーテンを揺らす。
湿り気を帯びた生暖かい風が夏が近いことを知らせていた。

馬鹿な夢を見たと竜児は鼻で笑った。
もちろん、大河が心変わりして新しい誰かとどうにかなるなんて竜児は砂粒の欠片も思っていない。
それなのにあんな夢を見るなんてと竜児は思う。

大河のことを一番、想っているのは自分で、何よりもあいつのことを分かってやっていると言う自負が竜児にはある。
その大河に新しい理解者が出来た。
それもすぐ身近に・・・。
言うまでもなく、それは大河の義理の父親であって、竜児としては手放しで喜べばいいことなのだが・・・。

ようするに竜児は面白くないのだ。
今まで自分が座っていた指定席に見知らぬ父親が顔を出し、我が物顔で座っているということが。
言ってしまえば小さなジェラシーだった。
・・・馬鹿か、俺は。
再び、ため息を漏らすと竜児は窓辺に寄る。
相変わらず、空き部屋のままの旧大河邸・・・窓ガラスの向こうに大河の面影を見出しながら竜児はその日、三度目のため息を漏らした。

・・・会いてえよな、大河。



93 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:50:35 ID:hdChQd3g0


着メロが鳴ると同時に竜児は携帯を掴み、電話に出た。
「遅いじゃねえか!」
「ああ、ごめん・・・ちょっと出掛けてて」
非難するような竜児の口振りに大河は謝った。
時刻は8時をとうに過ぎ、10時に限りなく近い。
8時に電話するね、これが竜児と大河の間で交わされた暗黙の約束だった。
実際、これまでも大河が電話を掛けるのが遅くなったこともあったのだが、待ち切れなくなった竜児が掛けて来たりして大きな問題もなく収まっていた。
それが今日に限って、何度電話しても大河は出てくれない。
・・・どうしたって言うんだよ?
不安や嫌な想像が竜児の中を駆け巡る。
もやもやした気持ちを抱えたまま、あれから数日を過ごした竜児は心の平衡を欠いたまま、大河へ向き合っていた。

「何してたんだよ?」
「言ったでしょ、出掛けてたって」
いつになくしつこく絡む竜児をあしらうようにする大河。
「じゃあ、何処へ行ってたんだ?」
「いいでしょ、何処だって」
「俺にも言えないような所か?」
知らず知らずのうちにヒートアップする竜児。
「なんで、いちいち私があんたに出かけた先まで報告しなきゃいけないの?」
「俺との会話より大事なことなのかよ・・・しょせん、その程度か・・・だいたいな・・・」
やや素直じゃない大河の返答を聞きながら、竜児は言葉が飛び出るのを止められなかった。
「何回も電話しただろ・・・どうして出ねえんだよ・・・おかしいだろ!」
「・・・それは」
やや言いよどむ大河の声。
大河の電話に残る竜児からのたくさんの着信履歴が竜児の焦燥を表しているようだった。
「言えないって言うならいいさ」
もう知らねえとばかりに言う竜児。
ここまで言えば「うっさいわね、この駄犬」とか大河の罵詈雑言が返って来るのは覚悟の上だった。
「・・・」
「なんだよ、だんまりかよ、おい!大河」

電話と言う相手が見えないツールの不幸。
もしも、大河の顔を見ながら竜児が話していたのならば、ここまで言わなくても済んだだろう。

「・・・」
「大河!、おい」
「・・・」

竜児の電話のスピーカーは何の音も伝えて来ない。
電話が切れたのかと竜児が画面を見れば通話中の文字。




94 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:51:54 ID:hdChQd3g0

「・・・」
「・・・大河?」
「・・・・・・っ」

ノイズ交じりに聴こえたのは小さな嗚咽だった。

ようやく、大河の様子がいつもと違うのに竜児は気が付いた。

「ど、どうしたんだよ・・・大河・・・黙ってちゃ、わかんねえ」
うろたえたように竜児は電話に向って叫ぶ。

「・・・」

やがて切れ切れに聴こえて来た大河の声。

「・・・家族で、外食中だったの・・・」
大河はか細い調子で続けた。
予定では8時前に家に帰って来れるはずだったが、父親が仕事で遅れ、食事の開始が遅れたこと。
竜児からの電話が掛かって来た事は知ってたけど、途中で抜け出せなかったこと。
帰り道が込んで帰宅が遅くなったこと。

「・・・ごめんね、竜児」
そこで電話は切れた。

ツーツーと言う電子音を竜児は呆然と聞いた。

会えないだけに竜児としてはこの電話での時間を何より大切にしたかったのだ。
その優先ランクを下げた大河の行為が許せなくて、つい竜児は責めてしまった。
しかし、事情を聴けばひどく納得できることで、それだけに竜児はひどい後悔にさいなまれる。

「最低だ、俺」
よりによって会えないイライラを当の本人にぶつけてしまうなんてと思う。

慌てて電話を掴み、リダイヤルする竜児。
すぐさま、謝ろうと思ったのだ。
・・・出てくれ、大河。

呼び出しコールはやがて無機質な留守電のメッセージに切り替わった。

がっくりと竜児はうなだれる。
・・・わりい、大河。

竜児は福岡の方角を向くと頭を下げた。




95 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:52:58 ID:hdChQd3g0


深夜、着信メロディが奏でる音が竜児の眠りを妨げた。
・・・電話?
半覚醒のまま、布団から起き上がった竜児はメロディを流し続ける電話機を掴み、反射的に受話器ボタンを押した。
「はい、高須」
そう、竜児が答えるのに被さって響く大声。
「りゅ〜じ!!」
「た、大河か」
いっぺんで目が覚める竜児。
「そうよ、その大河様よ」
ハイテンションな大河。
「ど、どうしたんだよ、こんな夜中に」
「・・・寝てたわね」
威嚇するような、低い大河の声。
「・・・ああ、それがどうした」
「こっちはあの後、眠れないくらい悩んでたのに、寝てるなんて許せない!」
その後、天誅と言う叫び声と続けざまに何かが派手に壊れる音を竜児は聴いた。
思わず、携帯から耳を離す竜児。

「・・・大河?」
おずおずと話し掛ける竜児に息も荒く大河は言葉を返す。
「私が今、目の前に居ないことを感謝することね」
世にも恐ろしげな台詞を吐くとそのままダムが決壊した様な勢いで話し始めた。

おととい、ばかちーと何処へ行ったの?
竜児は何にも言わない・・・みのりんと話してて、それを聞かされた時、私がどんな気持ちだったと思うの?
ううん、竜児が心変わりしたなんて思わない。
だけど、変な隠し事なんてして欲しくない!

竜児が何か言い掛けると「黙って聞いて!」と大河は口を差し挟むのを許さなかった。
大河の話を聞きながら竜児はいちいち腑に落ちることばかりだった。
なぜならそれは竜児自身が思っていたことだったからだ。

確かに竜児は数日前、川嶋亜美に頼まれて一緒に買い物に付き合っていた。
別にデートとか言うレベルじゃなかったが、買い物の後で付き合ってくれたお礼とばかりにお茶に付き合わされて、それなりに楽しい時間を過ごしたことは事実だった。
クラスが違ってしまえば以前ほどの接点も無く、廊下ですれ違いざまに挨拶する程度になってしまっていた関係。
その点は川嶋亜美も同様だったらしく、久しぶりに話が出来て嬉しかったと言い残して立ち去っている。

後ろめたさと言うほどではないが、なんとなく竜児は大河へ言いそびれていたのだ。
櫛枝にしても大河へご注進へ及んだわけじゃなく、大河との普段の会話の流れでポロっと言っただけなんだと竜児は思う。

でも、自分の知らないところでそれが行われて、その報告が無かった。
その一事が大きいんだと竜児は大河の罵詈雑言を聞きながら痛感した。
たった、1時間余り電話が遅くなったくらいで、あれこれ変に気に病むくらいなのだから、お互いに見えないところで何をしているのかくらい、言うべきだよな。



96 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:53:55 ID:hdChQd3g0


「・・・竜児!ちょっと聞いてるの?」
「ああ、しっかり聞いてるぜ・・・大河」
「・・・な、なら、いいのよ・・・ちゃんと聞きなさい」
「ひと言も漏らさないで聞いてやる。全身で受け止めてやる・・・だから、言いたいことがあったら・・・なんでも言ってくれ」
真面目で力のこもった竜児の口調が大河の調子をあきらかに変えた。
「もういい・・・言いたいこと言ったから」
「それだけでいいのか?朝まで付き合うぞ」
「・・・なんか疲れた」
「おしまいか?」
「もういいわ、すっきりしたし・・・なんか喉、渇いちゃった。竜児?」
「おう」
「お茶、淹れて」
「・・・ちょっと待ってろ」
「うん」

「ほらよ・・・」
携帯電話の前でこぽこぽと音を立てて湯飲みに注がれるお茶。
「ありがと・・・って、どうやって飲むのよ」
「心で飲むんだ」
「はいはい、気持ちだけもらったわよ」
竜児のバカと付け加えながら、大河はぷっと笑った。

「そう言えば、竜児の淹れてくれたお茶もずいぶん飲んでない」
「いつも熱いだのぬるいだの文句ばっかり言ってたくせに」
「あ〜あ、もっと大事に飲むんだった」
後悔をにじませながら大河は嘆く。
「だって・・・竜児の家でああやってご飯食べて・・・お茶飲んで・・・寝転んで・・・竜児と一緒にって・・・ずっと続くって思ってたから」
もっと大切にするんだったと大河は悔やんだ。

「会いたい・・・竜児・・・会いたいよぉ・・・」
不意に聞こえた大河の切なげな声。
今すぐ、ひと目でいいから会いたいと、子供の様に大河は訴えた。
「竜児に触れたい、竜児の声をそのまま聞きたい、竜児の温もりを感じたい・・・そんなの・・・わがまま?」
きっと耐えられるって思ってたのに、全然ダメと大河は自分の弱さを口にする。

「俺んちの前だったよな・・・大河と別れたの」
やや、あってから竜児はポツリと切り出した。
「うん・・・やっちゃんと竜児と一緒に帰って来て、それから・・・マンションに・・・」
「あれから何回も思った。走り去ろうとするお前の手を掴んで、なんで連れ戻さなかったんだろうって」
「竜児」
「そうしてれば、今も一緒に居れたかもしれねえ・・・だけど、そんなの砂浜の家と変らねえ。波が来たら、みんな崩れちまう」
意味分かるかとの竜児の声に大河は何となくと答えを返す。
「夜が長ければ、それだけ朝が来たら嬉しいだろ・・・長い夜だけどさ、その間に俺は大河とのこれからを夢見てる。砂の家じゃない、どんな波が来ても壊れない家に住むって言う夢だ」
偉そうなこと言ってるな俺と竜児は照れたように付け加えた。

「あの時、もしかしたら竜児が追い掛けて来てくれるのを期待してたのかもしれない」
「・・・大河」
「ママの所へ戻ろうって思ったけど、とっても恐かった・・・拒絶されたらどうしようって・・・だから、竜児が引き止めてくれたらって」
「それって?」
「ううん、誤解しないで、引き止めて欲しかったんじゃない・・・竜児なら・・・竜児なら分かってくれるって、そう思ったの」
「俺は何も・・・」
していないと続けた竜児。
「ちゃんと竜児はしてくれたよ・・・黙って私を見送ってくれた・・・」
もしも、あの時、竜児が少しでも引き止める素振りを見せたら、決心が崩れたかもしれないと大河は打ち明ける。
「だから、私はここに居る・・・電話でしか話せないくらい遠い所に・・・」



97 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:54:44 ID:hdChQd3g0


お互い、しばらく無言のままだった。
小さなノイズだけがふたりの間を分ける。

やがて、ほぼ同時にお互いの携帯電話のスピーカーから聞こえた長い吐息。
竜児も大河も相手がまるで目の前に居るかの様な錯覚を覚える。

「大河」
「竜児」

名前を呼び合う声が1000キロ空間を切り取る。
この瞬間、大河は竜児の部屋に、竜児は大河の部屋に確かに存在した。



「でも、やっぱり直接、会いたいよね」
「ああ」
織姫と彦星だって年に一度は会えるのにこれって酷くない?と大河は七夕伝説を持ち出して、ままならない現状に文句を付ける。
まだ一年も経っていないと突っ込みたいのを竜児は堪える。

「そうだ、竜児」
「なんだ?」
「彦星って、どれ?」
「どれって・・・そんなことも知らねえのか」
「いいじゃない・・・教えてよ」
いつものように唐突に言い出した大河を納得させるべく、竜児は音を立てないようにして家の外へ出た。
梅雨の中休みで、雲は少しあるものの空は晴れている。

「そっちは晴れてるんだろうな?」
「当たり前じゃない」
雨の日にそんなことを聞くほどドジじゃないと大河は強弁する。

今、南に向いた庭に出てるという大河に竜児はにわか星空解説を始める。

「・・・で、その明るいのがアルタイル、彦星だ・・・見つけたか?」
「あ、あれかな」
やや、自信無さそうに答える大河。
「明るい星が3つあって・・・線で結ぶと三角形になるだろ?」
「え?・・・あ、ホントだ!」
ようやく確信が持てたのか大河の声のトーンが高まる。


「あれが・・・彦星・・・竜児だね」
「じゃあ大河は織姫か?」
「当たり前じゃない・・・文句ある?」
「大河がお姫さま・・・」
「竜児・・・笑わない」
「ああ、わりい・・・」
笑いを収めて、竜児はアルタイルから離れたベガ、織姫星を見つめる。
あの星は大河だと言う。
そして竜児は彦星を見た。




98 :シンデレラなんかになりたくない5 ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:56:22 ID:hdChQd3g0

「大河」
「何?」
「何見てる?」
「竜児の星・・・」
「そっか」

不意に竜児の胸が熱くなる。
大河と同じ物を、今、同時に見つめてるんだ、俺。

「・・・竜児も見てるんだよね、あの星」
ほぼ、同時に大河もそのことに思い至ったのか、そんなことを言う。
「ああ、見てるぜ」
「うん」
言いたことはいろいろあるけど、今のふた言で通じてしまったような気がすると竜児は思った。
「すぐ近くだね」
「何がだよ?」
「彦星と織姫」
「近いって?・・・何光年も離れてるんだぜ」
「ううん、絶対近い・・・だって、私の指先で測っても納まるもん・・・竜児の大きな手なら楽勝だよ」
そう大河に言われて竜児は指先をふたつの星の間にかざした。
すると、遠いと思っていた星がすぐ側にあることに気が付いた。
「ね、近いでしょう」
まるで、すぐ側で竜児の動作を見ていたように大河が言う。
「ああ、近いな」

次の日、寝不足になるって分かっていながら、竜児も大河も星が明け方の太陽によって消えてゆくまで、星空の下で眠れないままでいた。




「そんなこともあったわね」
ベールの下で懐かしそうにする大河。
「ああ、ちょうど会えないフラストレーションが溜まってたんだよな」
「おかげで、次の日授業中に眠くて眠くて・・・あの時は仮病使って保健室で寝たんだっけ」
「授業中に寝なかったのかよ?」
「うるさい学校だったの・・・竜児は?」
「俺は授業中に寝た」
「ずるい」
「そういう問題か?」
クスクスと笑いを漏らす大河。
そんな楽しげに笑う大河に竜児はある疑問をぶつける。

「なあ、大河・・・あの時・・・壊したものって何だったんだ?」
「壊した物?・・・ああ、天誅を加えたものね・・・知りたい?」
「いや、無理にとは言わない」
「そうね、知らない方がいいかもね」
意味ありげな表情の大河に竜児はそれ以上の追求をやめた。

どうしてあの時、泣いてしまったのか、大河は今もって分からない。
ぶち切れていい場面だったのにと思う。
何度も掛かって来た竜児からの電話だって無理すれば出られた。
でもそれをしなかったのは、少しくらい心配させちゃえみたいな意地があったのかも知れないと大河は考える。
だから、竜児を本気で怒らせたことが申し訳なくて、泣いてしまったのかもしれない。
もっとも、だんだん考えたら腹が立って来て深夜に竜児に電話を掛けたんだっけ・・・。
今となっては懐かしい記憶だけど、あのおかげで離れ離れの一年が耐えられたんだと大河は思う。

・・・まだかよ?
そうつぶやきながら窓辺に立ち、外の進行状態を気にする竜児も同じ思いだよねと大河は優しげまなざしを向けた。

99 : ◆x6jzI2BeLw :2010/09/19(日) 01:57:51 ID:hdChQd3g0
今回はここまでです。

いくら、気持ちが通じていても、お互いに相手が見えないといろいろな不安が生まれるでしょうね。
本当はもう少し大ケンカになっていたんですけど、あんまりだったので書き直しました。
仲の良いふたりで居て欲しいから・・・。

次回、少し空くかもしれません。


100 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/19(日) 23:42:13 ID:xKCPMAAY0
>>89
GJ!
竜児に言い訳させない大河が容赦ねえw続き待ってます!

>>99
GJ!
電話越しにお茶淹れるところがぐっと来た。続き待ってます!

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/20(月) 21:05:29 ID:FABx5ins0
>>99
乙です!
すれちがっても、行き着くところはむず痒いほどアマアマーな二人が可愛いw
そりゃ不安になるよね。しかも通じ合った途端に離れ離れだからねぇ
彦星&織姫コスの竜虎が見たくなったw
続きもゆっくり待ってます

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/21(火) 21:12:20 ID:LSb/Bc6C0
……ハッ!
大作続きで思わずROM専になってたぜ。
皆様、グッッジョブ!

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/21(火) 23:59:22 ID:jgF4G7JX0
アニメ版は一年離れ離れなのが切ないと言うか、少し寂しい
だからこそ最後の「好きだ」が活きるんだろうが

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 00:03:33 ID:u9C251nW0
俺も最後の終わりは原作派だな
三年生での一年間はギシアンしまくりのはず

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 00:08:45 ID:l2bdMBkE0
俺は原作よりアニメの終わり方の方が好きだなぁ
やっぱ離れてる期間が原作だと短いような気がする
まぁ、その分ラスト1年の妄想は膨らむけどw

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 01:45:37 ID:JKdobtnQ0
3年時のバカップルっぷりが妄想できる原作のほうが好きだけど、
原作の終わりはご都合主義的な感は少しあるな。

1年間会えないのは相当きつかっただろうけど、将来的に見れば精神的な成長が大きいのは多分アニメの方だと思う。
それに1年間会わなかった反動が・・・とか考えると2828が止まらない。

どっちも良さはあるんだけど、アニメは終わり方にも直接関わる大河ママの扱いが悪かったからその分が個人的にマイナスかな。


107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 02:06:24 ID:ccsKiHDn0

>>89
GJ!
「何でもない」は死亡フラグ?
みのりんとあーみんの気苦労が伝わってくるw
続き期待。

>>99
乙でした!
失敗してもすぐさま過ちを認めて、全力で取り返す竜児カコエエ!
同じ星を眺めながらの会話にも胸が熱くなりました。
大河が何ぶっ壊したか、超 気になるw
続き待ってますので、ぼちぼちいってくだされー

>>103-105
どちらの終わり方も好きだが、アニメの黒セーラー大河の可愛さには吐血した。


108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 02:16:06 ID:JKdobtnQ0
ああ、作品語りの前に、
書き手の皆さん、素晴らしい作品提供していただきありがとうございます。
このスレの存在を最近知ったんで過去スレを最初から頑張って読ませていただいてます。



それにしても原作やアニメを何周しても満たされなかった何かを
やっとここで見つけたような気がする。

触発されて自分もずっと抱えてた妄想があったからちょっと書き出してみたけど
SSなんか書いたことないからここの神様たちと比較してもどう見ても駄文にしかならない。
ほんと説得力のある文章書くのって難しいわ。

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 03:13:17 ID:nzOizKLt0
>>106
原作もお互いこれまでの自分を見つめ直してるし、傍で支え合って良い成長ができると思うな
ただやっぱり、離れてた期間はこの先の強みになるだろうね

アニメ版ラストは演出や盛り上がりは素晴らしかったけど、
大河ママの扱いと、最後の大河でかなりマイナスされてるな
ツンデレセリフは久々再会の照れ隠しってことで許容範囲として、なんで頭突きさせたのか…セーラー大河は可愛いのに

あと個人的に、竜児のみんな幸せ!に「君の未来は明るい〜」とゆりちゃんが微笑むところが好きだから
見れなかったのが残念だったな
いい先生だよね

110 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/22(水) 07:40:42 ID:DjMo0klc0
お題 「小憎らしい」「マジ」「翻し」



 夏。
 時間と共に気温はじわじわと上がっていき、窓に吊るしてみた風鈴も短冊を翻してくれる程度の風すら無ければ意味を為さず。


「大河、そこ間違ってるぞ」
「ん?」
「『小僧らしい』って何だよ。『小憎らしい』だろ」
「は!いかんいかん、暑さと眠気で脳味噌ボケてたわ〜」
「暑いのはともかく、眠いのは自業自得だろ。夏休みだからって毎日毎日夜更かししやがって」
「一緒に遅くまで起きてる竜児に言われたくないわねぇ」
「お前がダラダラといつまでも帰らないから付き合わされてるんだろうが」
「そんなことより、いいかげんクーラーつけない?」
「……駄目だ。七月中につけるのは俺の、高須家のポリシーが許さん」
「何よその無駄な拘り」
「今からクーラーに頼ってるようじゃ、これからの夏本番の暑さを乗りきれねえぞ。それに電気代もMOTTAINAIじゃねえか」
「結局セコいだけじゃないの」
「エコだエコ。電気代の節約は二酸化炭素の削減にも繋がってだな」
「うるさい黙れセコ犬。あんたはご主人様が快適にすごせる事を第一に考えてりゃいいのよ」
「大河、お前なあ……」
「何よ」
 じりじりと火花を散らすようにぶつかるが、すぐにどちらともなく逸らされる視線。
「……やめよう、余計暑くなる」
「……そうね」
「ちょっと早いが飯にしちまうか。それから少し昼寝でもして、宿題の続きはその後にしようぜ」
「それはいいけど、お昼寝するにしてもちょっと暑すぎない?」
「大河は自分の部屋で寝ればいいじゃねえか」
「……やだ、こっちで寝る。いちいち帰るの面倒だし」
「おう、それならタオルケット貸してやる。畳の上に直接寝っころがればけっこう涼しいし、あとは氷枕でも使えばいいんじゃねえかな」
「ん、それでいいわ。今日のお昼ご飯何?」
「冷やしタヌキうどんだ。麺茹でるから泰子起こしてくれよ」
「んー。私の分は揚げ玉多めのワサビ抜きでお願いね」
「おう」


「ん〜……」
 身を起こして大きく伸びをする。
 ちりん、と風鈴の奏でる小さな音。そして静寂。
 開けっぱなしの襖から覗けば、案の定ベッドの上で静かな寝息を立てている竜児。
 大河はニヤリと笑みを浮かべ、マジックを手にその傍へそろそろと。
「何書いてやろうかしらねえ……ベタだけどおでこに犬とか……」
 と、気づく。
「そういや竜児の寝顔をじっくり見るのって初めてかも……」
 他人に恐れられる最大の原因である瞳が閉じられたそれは、意外にもわりと整っていて。
「…………あ、ほっぺたに糸くず」
 取ろうとして竜児の頬に触れた大河の鼻をふわりとくすぐる、男臭いというのだろうか、嗅ぎなれない匂い。
 思わず動きを止めたその時、ぱちりと開かれる竜児の瞼。
「……大河、お前何してるんだよ?」
「……べ、別に」

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 21:24:59 ID:JKdobtnQ0
>>110
今年みたいな酷暑だときっとこんなやりとりしてたんだろうね。
とても微笑ましい。
寅年の暑過ぎる夏もやっと終わってもうすぐ虎肥ゆる秋ですな。

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 23:48:11 ID:7+WlBWeu0
定期おつ!

竜児は大河専用フェロモンを発している
ということでおk?

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 23:52:25 ID:6suTAwxn0
>>108
君は昔の俺だなw
「ようこそ天国へ」とか何とか、歓迎された事を思い出したよ。
なので今度は俺が言おう。

ようこそ!

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/22(水) 23:54:02 ID:7+WlBWeu0
>>108
投下期待してる

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 00:01:31 ID:FXvjYSfP0
>>110
額にもう一つ目をかくべきだと思うんだ。

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 00:49:04 ID:AAbWTCM10
>>113
歓迎ありがとうw

投下はまあいつかできればいいかなとは思ってる。


それはそうと現在進行形で「とらドラ!」(首位攻防戦)がアツいね。

超攻撃的だけど守りは隙だらけ、そしてドジ(外野)な虎
外(ビジター)に出ればおとなしいけど家(ナゴヤドーム)に帰れば強く、作戦は細かくて神経質な竜

なかなかぴったりじゃないか。


117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 01:35:45 ID:QrSam/hX0
>>116
以前にもこんな風に盛り上がったことがあるのを思い出した。
つ ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/kako/kako05.html#R97

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 02:16:32 ID:mhS7fYv90

>>116
いつか、でいいから投下を楽しみにしてます。
皆が想い描く、竜虎の色々な姿を読んでみたいです。

首位決戦ワロタ。うまい!
自分が何故、虎を愛してやまないのか、分かった気がする。
そして、竜にも愛着を持てる気持ちに。監督は是非、目つきの鋭い人なって欲しいものだ。

>>117
懐かしいスレだなぁ。良く覚えていらしたことw
手錠ラスト、そして記念すべきクリームソーダ。

まだ一年半近くしか経ってないなんて… 文豪どんだけw

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 03:38:47 ID:AAbWTCM10
城島「ああああんたの苦手なところに投げさせたのに、なななんでううう打つのよ!このバカ!ハゲ!ハゲ!」

和田「何言ってるんだ。お前の考えてることがこの俺に分からないわけないだろう?」

城島「・・・・バカ・・・」




なんか受信したんで勢いで書いた。深く反省してる。正直すまんかった。

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 19:46:05 ID:gh6jeiU1O
>>110
乙!
なんだかすごく萌えたw

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 22:34:49 ID:mhS7fYv90
>>119
いい加減自重せんといかんのだが… ワロタ! 
ハゲってwwwww


122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/23(木) 23:53:46 ID:YnKnYqVV0
ポータブルの廉価版が出るみたいだけど、買おうか迷ってる
これに金払うってことは、他キャラとのENDも認めることになるよな
我ながら潔癖すぎて笑えるけど、とらドラは大河×竜児以外ありえないと思ってる

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 00:08:38 ID:JIDafkMz0
だがそうすると、大河×竜児ルートの

PSPだけの音声(いちゃいちゃ)
PSPだけのカラー絵(いちゃいちゃ)
PSPだけのエンディング(いちゃいちゃの結果)

が見れないじゃないか!!!

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 00:37:41 ID:i1U4Ria60
>>122
同意
買ってないしやる気もないな
とらドラは原作にアニメ、コミックが最高

125 : ◆odaAq0EgoE :2010/09/24(金) 17:07:02 ID:v1TdpgAeO
テスト

126 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/24(金) 17:27:25 ID:v1TdpgAeO
空気を読まずに、過去の遺物か書きますよっと。
何事もなかったようにしれっと書かせてもらいますので、生暖かい目でヌルーしてやってくださいm(__)m

しくじったと思った。
やらかしたと思った。
内心自己嫌悪に落ち入りながら、俺は静かに逢坂の方を見やった。
『なんで?飯なら親が・・・』
思わず口をついて出た言葉だった。
慌てて口を押さえたけど、そんなの手遅れなのは一目瞭然だった。
その一瞬、逢坂の動きが止まったから。
馬鹿野郎か俺は。
昼間散々北村に聞いておきながら、何を無神経な事をと思った。
言い様の無い罪悪感が込み上げてきてますます落ち込んでいった。
「・・・わりい・・・」
思わず口をついて出て謝罪の言葉。
今考えれば失礼な行為。
逢坂の境遇を不幸と決め付けての自己弁護の言葉。
でも。
それなのに逢坂は、
「私は気にしてない。だからあんたも気にすんな」
そんな風に何事も無かったかのように流してくれて。
複雑だった反面、少し安堵した俺。
でも次の言葉が聞こえた時、俺は自分の迂闊さを心底呪った。

「今更だから」

流される涙と共に漏らされた言葉。
その時になって俺は逢坂を傷つけた事をまざまざと自覚した。
自分の鈍感さに怒りが込み上げてきた。
だが今は俺が落ち込んでる場合じゃない。
そんなもんは後でいくらでもしやがれ。
だからゆっくりと手を伸ばした。
「・・・ついてるぞ」
米粒をとる振りをして、ゆっくりとその涙溢れる大きな目に。
添えた言葉に隠したのは二つの意図。
一つはカモフラージュと若干の照れ隠し。
もう一つは、
「・・・安心しろ」
「え?」
「・・・俺はここにいるだけで、取ったりなんかしねーから」
「・・・」
「・・・ちゃんといるから」
傍に「ついてる」から。
「落ち着いて食えよ」
そう言って不器用に笑った俺の目の前、逢坂は泣き笑いの表情を浮かべた。

『1話if・14』




127 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/24(金) 17:29:29 ID:v1TdpgAeO
>>126
「・・・食べたー!」
「お粗末さん」
ゴロンと畳の上に寝転がった逢坂を見て、俺は笑いながら相槌を打った。
内心舌を巻きながら。
昨夜の残りの飯をしこたまぶち込み、優に3人前はあったチャーハン。
それを逢坂はいとも簡単にぺろりと平らげた。
この小さな体のどこにとは思うが、ここまでされるといっそ清々しい。
「おーいしかったー!」
満面の笑みを浮かべる逢坂。
そうしてふと気付くのは初めて見た笑顔だったな、と。
そっか。
こいつはこんな顔で笑うんだ。
つられて笑顔になりながら、俺はなんだか嬉しくなってきた。
「あんた料理上手ね?」
「そうか?」
何気ない逢坂の言葉に、カチャリと皿を手にして立ち上がる。
「まあ昔からやってるからな」
「そうなの?」
「ああ」
そのまま台所へ向かうと、流し台へ皿を置く。
軽く水で流した後、泡立てたスポンジで擦っていく。
「親が夜の仕事してるモンでな。物心ついたときには家事は俺の仕事になってた」
「へえ・・・」
意外そうな逢坂の声。
「じゃあ掃除や洗濯もできるの?」
「大得意だ」
キュッと蛇口を締めて水を止める。
洗い終わった皿を丁寧に拭いて流し台横の台に置く。
同時にシュンシュンと蒸気を発しているやかんの火を止める。
戸棚からお茶っぱを出して急須へ。
手際良くお湯を注ぎ暫し蒸らす。
その間に出した湯飲みは、既にお湯を注いで暖気してある。
お湯を捨て、そこにコポコポと茶を注ぐ。
最後の一滴まで使うのが美味く飲むコツ。
そうして出来上がったお茶を持って振り向いたら、
「すごいっ!!」
「おわあっ!!」
すぐ目の前に逢坂が立っていてメチャクチャ驚いた。




128 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/24(金) 17:34:32 ID:v1TdpgAeO
>>127
「な、なにやってんだあぶねえな!!」
「あんたすっごいわねっ!!」
ぶつかってたら熱湯が・・・とか言おうとした俺の言葉を遮って、逢坂はキラキラした目で俺を見上げてきた。
「今のなに!?すっごい!あっという間にお茶が入ったわよ!?どうやったの!?手品!?」
「て、手品でもなんでもねーよ」
普通にお茶入れただけだ・・・そう言いかけた俺に、
「うそっ!」
「うわっ!」
ズイッと背伸びするかのようにして、逢坂が顔を近づけてきた
「うそよ!だって私あんなのできないよ!?お茶っぱとかバサーッ!ってなっちゃうし!」
「い、いやそれは、慌てすぎ・・・」
「ポットのお湯も飛び散って、熱っ!てなるし!」
「・・・ドンだけ落ち着きないんだよ・・・?」
俺は、目の前でまくし立てられる言葉に逐一返事をする。
が、実は内心かなりドギマギしていた。
・・・こいつやっぱりかなり可愛い。
顔ちっさいし目おっきいし唇ぷっくりしてるし顎のライン綺麗だし・・・って待て。
何を考えてる俺!?
何マジマジと分析してんだ!?
HENTAIか!?
いや違う!
だってこんな可愛い女子にこんなに接近されたら、男は誰だったドキドキするだろう!?
じっくり見ちゃうだろう!?
そうだ。
そうに違いない。
俺がおかしい訳じゃない。
きっかり2秒、脳内葛藤を経た末、せめてもの理性を持って声をかける。
「あ、逢坂・・・も、もう少し離れて・・・」
「すごいねー!すごいねー!」
「・・・」
・・・目の前ですごいすごいとまくし立てる逢坂に、思わず顔が綻ぶのを自覚した。
常日頃この顔の所為で敬遠されがちな俺に対して、こんなにも自然に接してくれる相手など極僅かだった。
しかもほぼ初対面だと言うのに。
また、胸の奥から何か暖かいものが込み上げてきた。
なんなんだろうなコレは?


129 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/24(金) 17:35:23 ID:v1TdpgAeO
>>128
「・・・そっか。すごいか」
「うん!すっごいよ!!」
俺の言葉に大きくブンッ!と首を縦に振る逢坂。
見た目の愛らしさと相まってか、このような子供っぽい仕草は逢坂に妙にマッチしていた。
普段学校で見せている姿など、所詮『外向け』の顔に過ぎないのだと確信するほどに。
「・・・今度教えてやろうか?」
「!!ほんと!?」
俺の言葉に、逢坂がパアッと顔を輝かせる。
「やった!ありがとう!」
その顔に笑顔で、ああ、と返してから、お茶が冷めるからと、居間へと連れ立って戻る。
「・・・あれ?」
「ん?どうした?」
戻る・・・。
「・・・わたしなんでここにいるんだっけ・・・?」
「!!」
戻ろう・・・。
「あれ?あれ?」
「あ、逢坂それは・・・」
戻ろうとする・・・途中。
「・・・・あーーーーーーーーーっ!!」
真夜中に不似合いな逢坂の大声を聞いて、俺は思わず額に手を当てて天を仰いだ。

『忘れたままでいてくれたらよかったのに・・・』

驚愕に目を見開く逢坂を視界の端に捉えながら、俺は小さく溜め息をついた。 時計の針は既に3時を回っていた。



130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 18:41:17 ID:c0AoOF/zO
ウオオオォォォ!1話if奇跡の生還してゆー!!

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 18:44:21 ID:lAl94hUg0
うむ

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 20:10:54 ID:3NUKJZVP0
>>122
>>124
自分も大河エンド以外興味ないし買うもんかと思ってたけど、あまりに評判が良いのに負けて買ってしまったんだが
実際やってみたらエンディングにたどり着くまでのイベントもかなりいいし、
3種類+αある大河エンドそのものももちろん良かった。

大河のベストエンドまでははっきり言って攻略サイト見ないとムリゲーだし
他のルートのエンディングも見なきゃいけないが、その苦労する価値はあったよ。

3ヒロインエンド以外もなかなか笑えるのもあったし、個人的にはオススメ。
基本設定が小説準拠っぽいから原作読んでる人ならなおオススメ。

どうせifだから公式でもなんでもないし深く考えずにやってみればいいと思うよ。


どうしても許せなかったらデータ残しといて他のルート見たあと口直しに大河END見ればいいんだよw
自分はいつもそうしてた。

あとコンプリイトとプリーズフリーズの各ソロバージョンはゲーム買わないと聞けないはず。

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 23:20:45 ID:5pzc3y0y0
おれ、ゲームやらないんでポータブルはノーチェックだったんだが、めちゃめちゃ評価高くて
おまけに売れてたんだな。勝手にぽしゃったと思ってたわ。

134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/24(金) 23:59:03 ID:vSMpHpN60
>>129
GJ
未完ものの投下大歓迎

135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/25(土) 09:21:24 ID:+/jI7XY+O
>>129
乙!
まとめで復習してから読ませていただきました。
竜児の優しさと器のデカさが凄い。
後半のはしゃぐ大河の破壊力も凄いw
あと、なんだかお茶が飲みたくなったw

136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 06:49:57 ID:cWC6zv2o0
「起きろ、朝だぞ」
「んん……………もうちょっと寝かせて」

137 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/26(日) 06:58:54 ID:0ChGNxXu0
お題 「有名」「冷え切った」「いいんだ」



「ただいま……」
 潜めた声に、暗い部屋からの返事は当然無く。
 キッチンへ行き、冷蔵庫を開ければそこにはいつものように一人分のおかずが。
 冷え切ったそれをレンジで温めながら、竜児はそっと溜息をつく。
 こんな日々がどれだけ続いただろうか。

 風呂を手早く済ませて寝室に入ると、二つ並んだベッドの片方で大河は小さく丸くなっていて。
 足音を忍ばせながら自分のベッドに入ろうとする竜児。その背後から聞こえる小さな声。
「竜児……」
「おうすまねえ、起こし……」
 振り返った竜児の目に映ったのは、眉根を寄せて目尻に僅かな涙を浮かべた大河の寝顔。
「……すまねえ、大河」
 竜児はその髪を、起こさぬようにそっと撫でる。



 四月二十九日。千葉の某有名テーマパークに向かう車が一台。
「いい泰児、基本戦術はヒット&アウェイよ。捕まったらスキンシップに見せかけた逆襲がくると思いなさい」
「りょーかーい!」
「おい大河……何をレクチャーしてやがる」
 運転しつつルームミラーで確認した大河の表情は至極真面目で。
「着ぐるみネズミの襲撃方法」
「するなそういう教育を」
「えー? でもそういうのが許されるのって小学生ぐらいまでだし、せっかくだから……」
「園の人に迷惑だろうが。大体子供だからって許されてるわけじゃねえぞ」
「ふん、仕事仕事で家の事ほったらかしだった竜児に教育うんぬん言われたくないわね」
「おかーさん、そーゆーこといっちゃダメ!おとーさんはきょうからのおやすみのためにずっと『ザンギョウ』してたんじゃない!」
「竜河……」
「おう、ありがとな竜河。でもいいんだ、お前達に寂しい想いをさせてたのは事実だし。
 だから、この二泊三日は朝から晩までたっぷりサービスしてやるからな」
「「わーい!」」
「晩までって、ちょっと竜児……」
「あー!おかーさん真っ赤ー!」
「ちょっと、泰児!」
「ほんとだ、まっかー!」
「竜河まで!?」
「おう本当だ、こりゃ見事に赤いな」
「りゅ、竜児っ!」

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 11:21:10 ID:JLDRSDXg0
ミッ●ーをイジメちゃだめえええw

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 11:24:45 ID:DlKo6CdC0
●ッキーと竜河の大冒険

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 11:26:21 ID:JLDRSDXg0
あぁ、そうか、その手があったな

141 : ◆fDszcniTtk :2010/09/26(日) 14:55:32 ID:cWC6zv2o0
ありゃ、今日は遠出?じゃぁ、勝手コラボで。お題 「有名」「冷え切った」「いいんだ」

◇ ◇ ◇ ◇

「ちょちょ、何これ!」
「おい、大河!竜河の手離すなよ!」

突如現れた楽団の行進にあちこちから歓声があがる。ここ千葉県某有名遊園地は休日の人で猛烈に混んでいる。駆け寄った人々はあっという間に楽団を人垣で囲み、少し離れた人々も群れをなして寄って来る。

こんなところで迷子になったらとんでもないことになる。そんなことはわかっている。でも、わかっていてももみくちゃにされて、母と娘は離してはいけない手を離してしまう。

「おかーさーん!」
「竜河っ!竜河っ!」

自分の背の低さが恨めしい。小さな娘の姿はついたてのように立ちはだかる人波に飲み込まれてあっとい間に見えなくなった。

「おかーさーん!おとーさーん!」
「おい大河!どうした」
「手、離れちゃった!」
「馬鹿、なにやってんだ!」

馬鹿も何も無いわよ!と蹴っ飛ばしてやりたいところだが、その竜児の姿も見えない。声が聞こえるだけ。本当に腹立たしい人混みだ。

「おとーさーん!おとーさーん!」

あの馬鹿娘、土壇場ですがる相手を変えやがって。とは思うものの、手を離したのは自分だし、竜児が頼りになるのも紛れもない事実。そして何より、氷のように冷え切った背中が、事態がどんどんまずい方向に流れていることを知らせる。

「おーい、竜河!ちきしょう、声は確かにあっちから聞こえるんだが」

もみくちゃにされながらも押してくる若い男の脇にエルボーを叩き込んだ時、竜児の声を聞いて突如頭上の太陽のように明るくナイスアイデアがひらめく。にやりともらした笑みは肉食獣のそれ
。一息大きく吸い込むと、竜児に聞こえるように、はっきり大きな声で竜河をしかりつけた。

「ああーっ!竜河!ソフトクリームで服汚しちゃ駄目でしょ!」
「何!」

人垣の向こうでプシッ!と音が聞こえたような気がした刹那、いっそう大声で大河が一声。

「きゃー!」

半径三十メートルの人々がいっせいに大河の悲鳴に振り向き、次いで一角から「うっ」「うわぁ」と微妙な声が。そして立錐の余地もないほどぎゅうぎゅうだった人波が大河から見えない所で割れ始める。眼と眼があってしまったのだ。竜児と。

パックマンの口のように割れた裂け目の向こうには、半泣きの竜河。突如開いた人波の向こうに父親を見つけて、今度こそほんとに泣きながら駆け寄ってくる。

◇ ◇ ◇ ◇

「おとーさーん、こわかったー」
「おう、よしよし。もう大丈夫だから。服汚さなかったか?汚さなかったのか」

と目をすがめて我が娘をなでる竜児。だが泰児は知っている。怒っているのではない。傷ついているのだ。あ、そういえば。

「ねぇ、お母さんは?」

割れた人波と方角違いにいたらしい大河は、まだ家族と合流できずにいる。どこかであっぷあっぷしているのだろう。

「いいんだ。さぁ、行こう」

あちゃー、父さん怒ってるぞ。と、泰児は独り笑いをかみ殺す。

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 17:41:10 ID:SGDMxoVa0
ナイス! コラボ 
ほのぼの家族の楽しい休日ですねw

>>137
前半シリアス展開かと思いきや、浦安の富士額ネズミへのヒット&アウェイ ワロタ。
>>141
竜児の目付きは、モーゼの十戒並かw 大河もナイスと言っておこう。かわいそだしなw


143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/26(日) 23:57:13 ID:ZKezUgWS0
遊園地コラボGJ!

休日に家族で遠出とか仲良さそうでいいなw

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/27(月) 01:14:17 ID:cfTc6zDo0
ほんと高須家の未来は幸せそうな光景しか思い浮かばんよね。
原作版のラストのゆりちゃんのあのセリフ、直接的には大河が戻ってくること差してるんだろうけど、
もっと遠い将来も暗示してると思う、きっと。

145 : ◆Eby4Hm2ero :2010/09/27(月) 04:15:34 ID:3wakNOLD0
>>141
GJ!
竜児、さすがの眼力w

146 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/27(月) 18:21:04 ID:c0gnPvdXO

『朝の風景』

「おかわり」
「はいよ」
大河から茶碗を受け取り、カパッと炊飯ジャーの蓋を開ける。
ペタペタと盛る量は普通の1.5倍。
しかも女の子用の小さな茶碗ではなくれっきとした男用の大きな茶碗。
それに器用に飯を盛り付ける。
山盛りになった飯が綺麗に整えられたのを確認して竜児は差し出す。
「はいよ」
「ん」
短く答えて受け取るな否や、大河はかき込むようにして飯に取りかかる。
「おい、よく噛めよ」
「うるさい」
パクパクと口に運ぶ箸を止めぬまま大河が短く返す。
溜め息を一つ、竜児も自分の食事を再開する。
グズグズしていたら遅刻してしまう。
最後の一口を口に運び租借して飲み込む。
ちらりと目をやった時計は8時きっかり。
片付けをしてもどうにか間に合う時間だ。
安堵と共に自分の食器を片そうと立ち上がりかけた目の前に、
「ん」
「・・・」
差し出されたお椀を見て溜め息をついた。
「・・・なんだ?」
「お味噌汁。おかあり」
ムグムグとまだ口に入ったご飯を噛みながら大河が言ってのけた。
もう一つ溜め息をつくと、竜児は無言でそれを受け取った。
時間がおしてるのになにも言わないのは経験済みだから。
ここで口論になって遅刻したことは記憶に新しい。
何も言わず自分で用意してしまった方が遥かに早い。
そう思いながら、コンロのスイッチを入れて味噌汁を少し温める。
「早くしてよ。遅刻しちゃうじゃない」
背後から聞こえてくる勝手な言い分を綺麗にスルーして味噌汁をよそう。
「ほらよ」
「ん」
それを持つ竜児の手ごと握りズズッと一口。
「あつい」
「冷ませよ」
ことりとちゃぶ台に置くと、竜児は自分の部屋へ。
手早く制服に着替えると、エプロンをつけて再び台所へ戻る。
カチャカチャと自分の食べた食器を洗いながら、ちらりと大河を見やる。
あらかた食事は終わったらしい。
蛇口を締めて、居間に戻る。
大河が持っている味噌汁のお椀以外を手に乗せ再び台所へ。
先ほどと同じようにスポンジでそれらを洗ってると、背後からお椀が差し出された。
「はい」
「さんきゅ」
それを受け取ると洗い物を再開。
粗方洗い終えたものを端から水で流していく。
最後のお椀の泡を流したところで水を止める。
流し台横の水きり台に伏せてふうっと一息。
コレで朝の仕事は粗方片付いた。
エプロンの腹の辺りに手をやって一応周りをチェック。
やり残しはないと一人頷いて、先ほど手をやったところを叩く。
背後から回された両手を。


147 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/27(月) 18:23:24 ID:c0gnPvdXO
>>146

「大河、終わったぞ」
「んーもう少し」
抱きつかれたまま、すりすりと背中に頬を擦り付けられる感触に竜児の顔が僅かに綻ぶ。
「俺もそうしてたいけど、もう出ないと遅刻するぞ」
竜児の言葉に、えーっと不満の声が背後からあがる。
「あんたがグズグズしてるからでしょグズ犬」
「お前が食べすぎなんだよ」
「美味しいのがいけないのよ」
「不味きゃもっと文句言うだろお前」
「当たり前よ。そんなもの作ったらこの世から抹殺してくれるわ」
剣呑な響きを声に滲ませて大河がガウッと吠える。
まだ、すりすりと竜児の背中に頬を擦りつけながら。
「なら文句言うなよ」
「文句じゃないわ。でも遅れそうなのはあんたの所為」
腰に回された手を握りながら、竜児がおかしそうに笑った。
「わかった。俺の所為でいいからそろそろ用意しろ」
「んー・・・」
まだグズグズと竜児に引っ付いている大河。
竜児の顔がもう一度綻ぶ。
腰に回された手を優しく解きながら振り返る竜児。
「・・・ん」
少し屈みながら差し出す唇。
少し背伸びするように受ける唇。
交わした口づけはほんの数秒。
「・・・まだ歯磨いてない。虫歯うつったらどうしてくれんのよ?」
「うつんねーよ。つか、虫歯ねーし」
「駄犬菌とか」
「それもねーよ。さて遅れるぞ大河。歯磨いてくるなら急げよ」
「わかってるわよ。・・・起きたとき磨いたからいいわ。カバンとってくる」
ててててっと居間に戻る背中を見ながら、竜児はそっと唇に触れる。
居間に置きっぱなしだった荷物に手を伸ばしながら、大河はそっと唇に触れる。
お互いに見えない、お互いだけがわかる至福。
お互いに見せない、お互いだけにわかる幸福。
「さ。行くわよ竜児!」
「おう」

そうしてまたいつもの1日が始まる。
そんな朝の風景。



148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/27(月) 21:11:07 ID:g2fbpv0a0
>>137>>141
コラボイイ!
微笑ましい家族の休日に頬がゆるむ
ここは大河GJすべきだなw

>>144
同じこと思った!
再会時の涙ぐみながらの笑顔が印象的だったんだけど
この二人ならいつまでも笑顔で仲睦まじくやっていけるんだろうなー。
どつきあい・すれ違い妄想も楽しいけどねw

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/27(月) 22:55:41 ID:2NtphyHn0
おださん、自然すぎる朝の二人と大河の甘えっぷりが最高だよ!

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 01:00:26 ID:jjig/OT00
十五夜の竜虎的なものを考えてたら短編一つ書けたので投下します。
時期は原作の文化祭直後?くらいで。至らない所だらけですがよろしくお願いします。

151 :『月に揺られて』:2010/09/28(火) 01:01:39 ID:jjig/OT00

「綺麗な満月だなぁ」
「ん。そうね。中々いけるわ……モグモグ」
「見てみろよ。月明かりってこんなに明るくて柔らかいものだったんだな」
「うんうん。柔らかくって、頬っぺたが落っこちそうよ……ハムッ」
「風も涼しくて気持ちがいい。なんていうか、体がクリアになるような……あ、何かもののあはれに目覚めそうだ」
「そうにぇー。あんこがあればもっといとをかし、ね。をかし……お菓子……ハグッ……マグマグ」
「……大河よ……」
「パク……ゴクッ……何。生意気な目をこっちに向けるな」
「少しは月見を楽しめ!」
「うるふぁ〜い」

竜児と大河はお月見をしていた。学校帰りに米粉を入手して急いで団子を作り、近所の公園で毟ったススキと一緒に大河の家のリビングにお供えをして。
ベランダに出る窓を全開にし、そこから臨む夜空に浮かぶ月は正に絶景。

それなのにこの虎っ娘は。さっきから月見団子を頬張りっぱなしではないか。
月明かりの下でギラギラと大河を睨む瞳の持ち主は、それがおまえの最後の晩餐だ、満月みたいに丸めて捨ててやるぜ、などと思っているわけではない。
せっかく手間をかけたのだから、もう少し一緒に一晩限りの観賞会を楽しみたいと思っているだけなのだ。

「べっつにいいじゃない。最初はお月見楽しみだったけど、よく考えたら月なんて毎日出てるんだから、美味しいものをさっさと頂くまでよ」

などと罰当たりなことを言う。

「こら。十五夜の祭りは豊作に感謝する日なんだぞ。米粉でできた団子食いまくってちゃ意味ねーじゃんか。……程々にしとけ」
「ふぁーい」

普段の竜児なら十分にお月見を楽しむまで大河に団子は与えなかっただろう。しかし今の竜児はちょっと違う。
何と大河は自ら団子作りを手伝い、不格好ながらもいくつか見れるものを作り上げた。普段の横暴さとのギャップのせいか竜児は感動し、ちょっとばかり摘み食いが過ぎても許してやりたくなるくらいに嬉しかったのだ。
一生懸命手伝ってくれたんだ。竜児は、今回は多目に見てやろうと思う。
しかしそうは言っても食意地の張った虎が相手ではロマンに欠ける。竜児は、自分の想い人の笑顔を思い浮かべ、

「……櫛枝も見てるのかな」

と一言。
竜児の呟きを聞き、団子に伸びた大河の手が止まる。

「……さぁね」

そのまましばらく黙って月を見上げた後、竜児の左半身に背を預ける。

「……おい」

自分でも何故こんなことをしているのか分からなかった。竜児には実乃梨がいるのに。

そうだ――
月がこんなに綺麗だから変な気分になるのだ。こんなに月が美し過ぎるから、竜児の側にいたいなんて思うのだ。

「……竜児」
「おう」
「……ばか犬」
「……なんでだよ」

今だけ……今だけはお月様に許してもらおう。
満月に抱かれているような穏やかな気分に浸り、大河は目を閉じる。
寄りかかった背もたれもが同じことを感じているなんてことは夢にも思わず。

秋の一夜はゆっくりと更けていく。



152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 01:09:31 ID:jjig/OT00
以上です。失礼しました。

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 22:42:58 ID:+uCkmfa40
>>147GJ
悪態をつきながら抱き付いてるのが素直じゃないw
あーもーかわいいかわいいかわいいったら!

>>152GJ
秋の物寂しい雰囲気が大河の気持ちと合ってて切ない
そしてやはり月より団子かw

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 23:00:09 ID:EKZgJ/Zr0
>>152
今>月より団子
1年後>団子より竜児
になるわけですな。

秋〜冬の煮え切らない2人の様子がすごく伝わってきた。
GJです。


155 :kQHO++7b0:2010/09/28(火) 23:00:13 ID:s5lcO5O20
お久しぶりです。8月中は外房の海水浴場のガードに泊まり込みで行き、9月中はライフセービングの合宿・大会関係でなかなか投下できませんでした。
さすがに2か月も経つとSS作成能力が落ちてしまい困っていたので原点に返ります。
>>151さんのお月見ネタで頭にピンと来たので投下。設定は高校3年の9月頃

秋に入り虫の音が郷愁を感じさせる十五夜の頃、大橋高校で桃色空間を作り出しいちゃつくバカップルの竜虎は大河の自宅に居た…。

「やっぱりこの時期になるとだいぶ涼しくなるな…。」
「そうね…、今年は特に異常な暑さだったしね…。」
「しかし、いい月だな〜。普段はあのマンションで見えねえし…。」

そういいながら2人で楽しむのは中秋の名月。もちろん高須農場で採れたサツマイモ、スーパーで買った梨、
通学路途中のとあるお宅の敷地から公道にはみ出した栗の木から落ちた栗などをお供え物にし、
ススキは大河とバトミントンで勝負した公園から拝借。
そして月見団子は竜児が作ったものだった…。

「うん、やっぱり竜児の作ったお団子おいしい。」
「そうか、よかった。ところで何でお前少し団子を潰して食べてるんだ?」
「お団子って周りが餅の比率が高くて中央部があんの比率が高いじゃない?だからおおよそ餅とあんの比率が1対1の比率で食べられるようにしてるの…、名付けて『モチアンの法則』」
「お前…、絶対に〇眼の○○ナからパクッたろ?そういうことはやめろ。」
「いいじゃない、向こうだって私たちのネタ使ってんだし…、それに文庫の出版社とアニメの制作会社が一緒だから平気よ!」
「だからってやめろ。気を遣いすぎて俺の神経がすり減る…。」
「あ〜もう、うるさいうるさいうるさい。いい?ニコニコ動画では『公式が病気』に設定されてるの…。要は公式が病気なら何でもありなのよ。これ以上言ったら木刀で討滅するからね。」
「あ〜はいはい悪かった悪かった。そんなことより月見楽しまないと早く寝れないぞ?明日も学校だろ。」
「う、まあね…。」
そんなやり取りの後2人で月を愛でつつお茶をすすり月見団子を味わい残りわずかになった時に竜児は大河に素朴な疑問をぶつけた…。
「そういや大河は粒あん派かこしあん派どっちだ?今日は安さ重視でお月見団子のあんを粒あんにしたけどさ…。もしこしあんの方が好きだったら申し訳ないな…って思ってな。」
「私はギシアン派よ…。」
「いやだから…。」
「よくみたらこのスレまだギシアンが無いじゃない!全く…。」
「お〜い、大河?聞いてるか〜?」
「うるさいわね、私は粒あんとかこしあんよりも美味しい高須棒がいいの!というわけで早速ベッドに向かうわよ…。
「大河!」
ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン
ギシギシアンアンギシギシアンアンギシギシアンアン


〜お・ま・け〜

「あ、もしもし泰子さん?」
「はい、そうで〜す。あ、大河ちゃんのお母さんですね?」
「ええ。ひょっとしたら初孫そろそろ抱けるかもしれませんよ。」
現場を押さえてしまった大河の母親はきっちり報告をしていた…。

後日
「ねえ、大河ちゃん?やっちゃんの初孫はまだかな?」
「「な、何の事(だ)?やっちゃん(泰子)?」」
「シラをきっても無駄で~す。やっちゃんは大河ちゃんのお母さんからお月見してた時にチョメチョメをしていたことを聞かされました〜。」
「「しまった〜。」」
この後大河が高須家に来るたびに泰子に初孫の件を聞かれるので(当然やっちゃんには悪気はなく)赤面し続けたそうな…。


156 :kQHO++7b0:2010/09/28(火) 23:07:39 ID:s5lcO5O20
やっべえ、題名入れ忘れた『粒あんVSこしあん、それとも…』でお願いします。
ちなみにいかに「下ネタ」とかJ.〇.S〇〇FFから「パクリ」と言われても毛頭反省するつもりはない。キリッ

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 23:10:34 ID:EKZgJ/Zr0
>>156
ちょwww
4秒差で投下来たと思ったらやっぱり団子より竜児かよw

ところでシャナ全部読んでるけど(アニメは見てない)、とらドラ!ネタってどこにあったっけ?



158 :kQHO++7b0:2010/09/28(火) 23:29:57 ID:s5lcO5O20
灼眼のシャナたんで出てきます
とりあえず見た感想では腹痛いwww


159 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/28(火) 23:55:03 ID:EKZgJ/Zr0
ああ、シャナたんなら1回だけ何かで見たことあるな。シュドナイと悠二がギシアンしてるやつだっけ?w

とりあえず遅ればせながらナイスギシ餡でしたw


160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 00:35:10 ID:NZsEtY2Z0
大河の事かとw

旦那の器がでかすぎてダメ人間になりそうで怖い
ttp://chasoku.blog.shinobi.jp/Entry/1426/?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 02:26:28 ID:/FKwdwDl0
VIPでべそかきながら書き込んでる大河を想像して萌えた

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 03:31:19 ID:A0XRv/et0
スルー物件なんだろうけど


竜児とくっつく=寄っ掛かるじゃない
大河の決意とか選択とか見てなかったのかね
そんなんじゃいつかダメになるだろうし、そんなカプ興味ないわw

163 :kQHO++7b0:2010/09/29(水) 08:12:27 ID:OJVrKvOu0
>>162に同意。
少なくとも大河は料理は消し炭にしたり、家事(洗濯だと洗剤入れ忘れたり)でドジしつつ
覚えて行きそうな気がするんだよな…

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 09:12:41 ID:9vL/OcyZ0
結婚後、なぜか夫への依存度が増大し続ける妻

165 : ◆6U1bthnhy6 :2010/09/29(水) 10:45:02 ID:sCi6fa8AO
大河「竜児人差し指出して」
竜児「は?なんだ?」
大河「はむ(お口でクチュクチュ)」
竜児「!?ななななななななにやってんだ!?」
大河「ん?クチュクチュアタック」

すいません俺です。
ひさびにプレパラ聞いたら・・・w
覚えててくれた方はこんにちは。
知らない人は初めましてw
完結させない投げやりな俺ですw
マイホムペの更新にかまけててねー・・・すんません。
正直こっちに書きたいのが増しまくりだたw
まあ自己満なんだけど、少しばかりおつきあい下さいよぅw

166 :同級生の器がでかすぎて怖い ◆IZmCNVpHBc :2010/09/29(水) 17:09:36 ID:KuKq5fw50
>>160
2年の8月頃を仮定してみた

----
普通、朝は起きて朝ごはん作らなきゃいけないのに
自分を起こさないように静かに行動してる。
朝ごはんはあいつが自分で用意して食べているらしい。

なんで起こしてくれないのか聞いても「眠い時は寝るのが一番。」と聞く耳持たず。 自分は目覚まし数個あっても起きられないタイプだから、昼まで寝てしまう。
それで夜が寝れなくなる→ゲーム三昧→朝に眠くなって寝る→以下永久ループここ数日ろくに掃除も料理もしてない。

それでも何か一つ家事をすれば「いつもありがとう。コレやってくれてありがとう。」とお礼を言ってくる。
たとえそれがシャツ一枚アイロンかけただけでも言ってくる。

あんたいつも私にいいように使われてるのに、何言ってるのと笑い飛ばしても、↑で「アイロンかけてくれたじゃん。」の一点張り。このままだとダメ人間になりそうで怖い。

ダメな生活だと分かってはいるんだが
生活を改善出来ない甘ったれた自分がだんだん惨めに思えて死にたくなる。
どうすれば良いんだ……。

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 18:34:07 ID:yQJEC+JB0
>>162
>>163
に同意するわ。
大河そんなダメな嫁になるとは思えないけどな。
作中一番成長したのは大河(か川嶋)だと思うし、
並び立ちたいって言ってるんだからなんとかして竜児と対等になろうと努力するはずだよ。
作中でさえもうただ縋るだけの生活はやめたじゃないか。

そもそも竜児はそんなに甘やかしたりしないだろう。

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 19:57:22 ID:LhuVdmbJ0
一番成長したのは竜児だと思う

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/29(水) 21:41:31 ID:wTLH/J+L0
>>166
2年の夏ならありえるなw
とらドラは時系列にそって変化や成長が見えるところがいいな

縋る気ならそもそも家族の元に戻ってないだろうね
クリスマス頃の大河の気づきや後悔は、単純に色恋だけの話ではなく、
今後の指標として大河のなかに刻まれてると思うよ
数年後には見違えるほどいい女になってそう
環境から怠惰になっていただけで、元々スペックは高いんだし。ドジ以外はw

>>168
大河はもちろん、竜児の成長も著しいよね
欠点がわかりやすい大河に比べて、竜児は自ら覆い隠している分厄介だった
竜児がかなり大河に依存してたこと、アニメ版のみだと気づいてない人も多そうだなぁ…
描写が薄かったから

大河を追いかけてしまったけど、悲しみごと飲み込んだ竜児は偉いと思う
つまり竜虎は最高だな、とw

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/30(木) 01:38:15 ID:/jep4asE0

「ねぇ竜児、これみて」
「おう、なんだ?」

>>169
> 数年後には見違えるほどいい女になってそう

「ですって。やっぱり見る人が見れば、ちゃんとわかるのよね。ドジやってても隠しおおせない、溢れる知性とか素養の高さとか…」
「おまえなぁ、そもそも何でこの話が始まったのか、気づいてないのか?」
「いちいちうっさいわねぇ、フィアンセが褒められてるのが嬉しくないの? そーゆー奴だったんだ、竜児は」
「いや、そりゃ、俺だって、大河のこと、いい・・・女・・・だと、おも・・・」
「何? 聞こえない、もっとはっきり言いなさいよ!」
「あー、もううるせぇ! 大体、 これなんだよ?」

> 竜児がかなり大河に依存してたこと  

「あら、あんた、気づいてなかったの?」
「大切にしたいとは思ってたさ、でも俺は自分で自分のことはちゃんとできるし、勉強だって、家事だって…」
「ハァ・・・ いい? 忘れちゃったようだから言うけど、私と出会ってからのあんたの行動原理の多くは、やっちゃんと、私と、その主婦くさいMOTTAINAI精神だけよ」
「な、なんだよそれ? てか、MOTTAINAIを悪く言うな!」
「じゃ、聞くけど、私が“竜児のこと好きなんだもん・・・” ってうっかり言っちゃった時、あんたはどう思ったの?」
「ぐっ…」
「みのりんやばかちーや北村君が骨を折ってくれなかったら、私のこと、追いかけられた? 好きって言えた?」
「ぐはっ…」
「これ以上追い込むと本当に吐血しそうね・・・ 大丈夫だよ、竜児」
「な、なんだ・・・?」
「私はもう竜児に依存しきってるんだから」
「何・・・を?」
「それを私に言わせる気? いいから早くこっち来なさいよ、もうすっかり遅い時間なんだから」
「やっぱり、それっ、かぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!」

ギ・・・?


171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/30(木) 02:37:47 ID:N4NgaHcJO
シギシギンアンア

172 :kQHO++7b0:2010/09/30(木) 07:45:35 ID:Y4a59jku0
ギシギシアンアンギシギシアンアンwww


結論をまとめると 

普段の生活面=甘やかさない。互いに並び助け合う?的な。依存しきることは無い。

恋人としてのイチャイチャ=互いに依存しきっている。当然だが2人とも依存状態から抜け出すことは不可能。
             異論は認めない。つーか認めたらこのスレでギシアンが出来ねえだろ〜〜が〜〜〜。

これでOK?


173 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/09/30(木) 07:48:20 ID:xl4ylLta0
お題 「北村」「守る」「なんとか」



「……いいわねえ……」
 呟いた大河の視線の先には、テレビドラマの最終回。
 飽きるほどの紆余曲折を乗り越えた主人公(イケメン)が恋人にプロポーズの真っ最中。
「なんだ大河、お前そーゆーのが好みか」
「違うわよ馬鹿。私の好みっていえば北村君に決まってるじゃないの」
「おう……じゃあ何がいいんだ?」
「『お前を一生守る』とかなんとか、私も北村君に言われてみたいなあ……って」
「いや、お前は大人しく守られてるようなタマじゃねえだろ、どう考えても」
「うるさいわね、そういうデリカシーの無いこと言ってるからあんたはいつまでも鈍犬なのよ。あーあ、こんな朴念仁に惚れられたみのりんがかわいそう」
「……そこまで言うか?」
「女の子だったらね、みんな一度は憧れるもんなのよ。もちろんみのりんだってね、多分だけど」
「おう、そうなのか……」
「そうだ竜児、あんたちょっと練習してみない?」
「何だよ唐突に」
「竜児にはいつもいつも北村君との事手伝わせてばかりだもんね。たまにはみのりんとの事協力してあげる」
「いや、だけどそんなこと練習しても……」
「なによ、ご主人様のせっかくの厚意を無にするつもり?あんたはいつからそんなに偉くなったのかしらねぇ?」
「……わかったわかった、やればいいんだろ。えーと、く、櫛枝」
「はい失格」
「……まだ何も言ってねえぞ」
「あのね、今あんたと相対してるのは誰?」
「いや、だって櫛枝に言う練習なんだろうが」
「そうだとしてもね、目の前の相手を蔑ろにするもんじゃないわよ」
「……おう」
「はい、やりなおし」
「おう……大河、俺がお前を一生守る」
「……全然駄目。あのね、何も考えずに定型文を棒読みしてどうするのよ。ちゃんと自分で考えて、気持ちを込めて言わなきゃ」
「お、おう……」
「じゃ、もっぺんね」
「大河……これから一生、何があっても、俺がお前を守ってやる」
「うーん……いまいち」
「今度は何だよ?」
「竜児のくせに上から目線なのがなんかむかつく」
「完全に大河の好みじゃねえか……」
「いいからほら、もう一度」
「……大河、これから一生、俺にお前の事を守らせてくれ」
「……生涯ずっと?」
「おう、ずっとだ」
「何があっても?」
「おう、どんなことがあっても、どんな相手からもだ」
「いいわ、守らせてあげる」
「おう、よかった……」
「じゃ、今の宣言通り竜児は一生私の下僕で番犬ってことで」
「何!? そうじゃねえだろ、今のは……」
「ちゃんと録音したからね、言い逃れはできないわよ」
「あ!いつの間にお前携帯……ちょっと貸せ!」
「無駄よ、もうパソコンに転送したもの」
「な、何てことだ……」
「ふふん♪」
「人を陥れといて随分楽しそうだな、お前は……」


174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/30(木) 21:38:19 ID:ZtvkOMKU0
ホント、おまえらの愛が溢れてるよな、ココはw

175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/09/30(木) 22:00:06 ID:UUlRlgTs0
そりゃあここは聖地だもんw

>>173
いつもながらGJです。
もうそのデータは一生モノだね。事あるごとに再生して蕩けてる様子が目に浮かぶ。


176 :kQHO++7b0:2010/09/30(木) 22:43:40 ID:Y4a59jku0
>>173
定期的な投下尊敬します。
この後本当に互いが一生守りあう存在になるとは思っていない竜虎がほほえましいです

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 01:54:44 ID:XhI1xHLE0
意外と夜の営みは大河がリードしている説
サービス満点というご近所の噂

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 09:10:00 ID:5zwzh7u3O
とらドラBD化するかもっちゅう話やね

皆の願いがカタチにした…っちゅう話やね

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 13:22:15 ID:YmnmIonM0
なにそれ泣けるやん
素敵やん

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 21:46:47 ID:toH3DYO+0
まとめサイトから飛べるBDで出して欲しい作品の投票のとこ見る限りだとやっぱ人気は根強いみたいだね。
まだ2年しか経ってないけど風化してしまう前に出してほしいもんだ。

アフターの短編とか特典で付けてくれたらもうそれだけ目当てでも買うわ。
BDの再生機持ってないけどとらドラ出してくれたらそれも買う。

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 22:52:13 ID:hvx9ET8g0
特典は映像でなくても、サントラの未収録曲入れてくれたら、ゼーガペインの値段でも絶対買っちゃる!
ということで、キングレコード様、よろしくお願いします。

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 23:32:45 ID:ocOvTCb/0
どっちも魅力的すぐるw

俺としてはHD画質で再撮りして欲しいが・・それはさすがに高望みか

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/01(金) 23:56:25 ID:toH3DYO+0
180だけど、短編ってアレだ。期待するのは映像じゃなくてゆゆこ先生の書き下ろしだよ。
今までの関連商品(DVD・ポータブル・電撃RPG、等)には全部付いてたし
BD化してくれるならかなり高確率で付いてくると思うんだけど、
そうなったら書いてくれるのかねぇ?

映像特典ならスピンオフの映像化なんて高望みはしないし、
SOSかモノマネの新作でも作ってくれれば十分満足w



184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 05:52:06 ID:/vYlNqu+0
そんな特典付けてくれたら自分も再生機ごと買うw

田村くんはとらドラ終了後にも短編の新作があったみたいだし
とらドラも後日談な感じで一つ書いてほしいなあ…

185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 07:50:01 ID:O0vVigLo0
「BD化プロジェクト」、ついに1位になったな。前回はキングレコードさんざん
渋っていたから、予算的にきついんだろう。高望みはしない。未収録サントラだけ
つけてくればいい。ずっと待機状態の、俺の「とらドラ!BD」貯金が火を噴くぜ。

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 11:44:30 ID:VfQwoV1a0
まとめさんおめでとう
俺もそこから投票にいったわ

187 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/10/02(土) 17:09:46 ID:kBOrOlir0
まとめサイト更新しました。





             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 | 神様仏様キングレコード様
     ,__     | BD化を是非お願いします…
    /  ./\ .   \______
  /  ./( ・ ).\        o〇
/_____/ .(´ー`) ,\    ∧∧
 ̄|| || || ||. |っ¢..||     (,,  ,)
  || || || ||./,,, |ゝ||ii~○  ⊂  ヾ ナムナム
  | ̄ ̄ ̄|~~凸( ̄)凸  .(   )〜


188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 19:26:16 ID:Ifxckwcg0
まとめ人様、いつもご苦労様です。ほんとにありがたいです。

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 21:20:16 ID:PXSey+U20
>>187

BDされるといいね

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/02(土) 23:45:29 ID:5phQOJad0
>>187
乙乙!
いつもありがとうございます!

191 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:22:11 ID:bxyvKP9I0
まとめ人様、お疲れ様です。
いつも感謝です。

『告白の情景』続きを書かせてもらいます。

192 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:23:26 ID:bxyvKP9I0
竜児サイド

「はぁ…。」

溜息も一際大きく、竜児の苦悩を表していた。
そう、あの女の子に頼まれた事が、そもそもの始まりだった。



「手作りの…クッキー作りを手伝ってほしい?」

どっかで聞いた事があるような…と、竜児は大河と初めて出会った時を思い出したりしていた。

「はい。実は私、どうしてもプレゼントしたい人がいて…。やっぱり、手作りの方が愛情がこもってるじゃないですか!」
「あ、あぁ…。そうかもな。」
「私、手芸部の先輩から聞いたんです。あ、私手芸部なんですけど。っていうか、自己紹介もしてません私っ!!ああ、ごめんなさいっ!」
「大丈夫だから、取りあえず落ち着け。」
「は、はい!スー、ハー…。」

胸に手を当て、深呼吸をする女生徒。
遠目には胸に手を当て、頬を赤らめているように見えるのは、当然竜児の知る所ではない。

「私、2年の相野三崎(あいのみさき)っていいます。三(さん)ちゃんって呼ばれてますから、高須先輩もそう呼んでくださっていいですよっ♪」
「…い、いや…遠慮しとく。」
「えー、そうですかぁ…?まぁいいや。あ、でもでも、名前で呼んでくださいね!私、妹がいるから苗字で呼ばれるより名前で呼ばれるのが普通になってて!」

小学校のときなんか…などと、ほっておいたらいつまでも喋り続けそうなこの少女・相野三崎を、取りあえず本題に戻してやる事にする。

「えっと、三崎…その、それで手作りクッキーがどうのって話だけど。」
「ああっ、忘れてました!そうですそうですそうなんです!!手芸部の先輩が『高須先輩は私達より器用』だって言うじゃないですか!しかも料理も上手だって!!」
「そ、そうか…。」

確かに昔手芸部に頼まれてレクチャーをした事があるのだ。おそらくその時の誰かだろう。

193 :告白の情景6 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:25:40 ID:bxyvKP9I0
「お願いします!クッキー作るの、手伝ってください!」
「いや、それはいいんだが、何故俺に?クッキーぐらい、いくらでも作れる子もいるだろう?」
「確かに作るだけなら…でもでも、先輩はもう一つ貴重な情報を私にもたらしてくれるはずなんです!」
「貴重な情報…?」

両手を胸の前で握り拳にして、竜児の顔前にずいっ、と体ごと突き出して力説する三崎。
それがどう見えるかは、ご想像に任す所ではある。

「私がプレゼントしたい人は、このクラスにいるんですっ!」

成る程、と納得した竜児。
確かに相手の趣味思考や恋人の有無などを知る上でも、同じクラスの竜児なら適任と言える。

「まぁ、クッキー作りぐらい別に手伝ってもいいけど…。」
「本当ですかっ!!ありがとうございますっ!!」

大喜びで何度も頭を下げる三崎。
大河の突き刺さりそうな視線はずっと感じてはいるのだが、三崎のその姿を見ると、どうにも憎めない。
理由を説明すれば、大河もわかってくれるだろう。そう軽く考えていた竜児だった。

「それじゃ、明日の放課後とかでいいですか?」
「ああ…家庭科室でいいんだろ?」
「はい!使用許可は取って置きますから!」

満面の笑顔で何度もお礼を言いながら、三崎は竜児たちのクラスを後にしようとする。
その去り際。

「あ、この事は誰にも言わないでくださいねっ☆」
「え?」

そう一方的に言い放って、三崎は跳ねるような足取りであっという間に消えてしまった。

「だ、誰にも…?」

それは、俺の背中のこの視線の先にいる、あの姫君にも―――か?

194 :告白の情景7 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:27:15 ID:bxyvKP9I0
大河サイド

「たいがー、たいがー。そろそろ許してやるべ。高須くんがやましい事なんて、するわけないって。」

結局昼休みから放課後まで不貞寝を決め込む大河の席の前で、実乃梨がなだめるように言葉をかける。
大河にしても、実乃梨に言われるまでもなく、それはわかっていた。

ちょっと、やきもちを焼いて見ただけだ。別に竜児が浮気をするなんて、これっぽっちも思ってはない。
ただ、妙にあの女【相野三崎】が馴れ馴れしそうにしてるのが腹が立った。それだけだ。

「ほっときなって実乃梨ちゃん。結局こいつは甘えてるだけなんだから。」
「これこれ、わざわざ事を荒立てるでないよあーみん。」
「うっさいわね…ばかちー。」

わかってるわよ、と聞こえないほど小さな声で呟く。亜美はそんな大河に一瞥すると、そのまま教室を出て行った。

「あ、あーみん。」

実乃梨はいったんその後を追いかけようとして、その前に大河に耳打ちをする。

(おらおら、さっさと仲直りしちまいな!この実乃梨せんせいが手伝ってやるから。)

どーいう意味…と大河が尋ねるより早く、実乃梨は竜児に向かって大声で。

「おぉーい高須君!!大河が一緒に帰りたいそーだぜっ!」
「み、みのりん…!」

言って、自分は亜美の後を追う。竜児にアイコンタクトで「よろしく頼むよ」と促して。

「…。」
「…。」

大河が振り返ると、自分の席で固まってる竜児と目が会う。
教室には微妙な緊張感となんとなく期待感が高まっているようにも感じたが、大河には関係のない事だった。

やがて、金縛りが解けたように竜児が大河の元まで歩み寄る。

「…帰ろうぜ。」
「…。」

大河はぶすっとしたまま竜児を睨み付けたが、やがて鞄を掴むと、それを竜児の胸元に押し付ける。


195 :告白の情景8 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:28:29 ID:bxyvKP9I0
竜児サイド

「おぅ…な、何だよ?」
「荷物もちするなら、話くらいは聞いてあげるわ。」
「…お前は。」

そもそも俺が何かしたのか?と文句の一つも言いたい所だが、それを耐えて竜児はその鞄をつかんで身を翻す。

「…ほら、帰るぞ。」
「あ、待ちなさいよっ。」

しょうがない奴だ、と溜息一つ。
でも、後にパタパタと続く足音にホッとするのだから、仕方ない。

後は、相野三崎の事をどう話すか―――それが問題だ。
でも、その逡巡は徒労に終わるだろう。何故なら、相手は逢坂大河だ。竜児の隠し立てなど通用しない。
洗いざらい聞き出されるに決まっているのだ。


竜児は、心の中で三崎に手を合わせる。他の奴には言わないからと言い訳しながら。


〜おまけ:実乃梨&亜美サイド〜

ポン、と肩に手を置いたのは実乃梨だった。
その顔は笑顔。

「んふふ、まあ心配なのはわかるけど。相変わらず天邪鬼だねぇあーみんは。」
「…子供を諭すみたいに言うの、やめてくれる?」
「だーいじょうぶさっ!あの二人は。明日にはケロッとしてるよ。」
「だから心配なんかしてねぇっての。」

196 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/03(日) 06:30:37 ID:bxyvKP9I0
今回は以上です。

次回で一応完結予定です。

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 02:23:45 ID:BnPYL//b0
GJ
これは誤解するw

>>まとめ人さん
サイト更新乙&感謝

198 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/04(月) 04:17:13 ID:HxYS11We0
お題 「ミーティング」「先生」「しょうがない」



「高須、昨日のBスフィアーズは見たか?」
 昼休み、弁当を食べ終わった竜児に話しかけてきたのは北村裕作。
「おう、見た見た。しかしあれ、最終回だってのに決着ついてないことが多すぎねえか?」
「海外ドラマではたまにある展開だな。次シーズンへの興味を惹くためにあえて謎を残したり、『続く』的な終わり方にするんだ」
「おう、そうなのか……俺としてはきっちり終わらないってのはどうにも気持ち悪いんだが」
「確かに次シーズンが制作されずに尻切れトンボになることもあるけど、俺は長いスパンで大きな謎や事件を追っていくのは好きだぞ。逢坂はどう思う?」
「え?わ、私!?」
 憧れの人に突然話を振られ、思わず硬直する大河。
「おっとすまない、逢坂は見てなかったか?」
「ううん、み、見てる。その……私も、好き……」
「おお、そうか!逢坂とは気が合うな!それじゃ……」
 とその時、教室の入り口からかけられる声。
「北村部長、櫛枝部長、先生が緊急ミーティングだそうです!」
「む、しょうがない、ちょっと行ってくるか。逢坂、今度是非海外ドラマについて語り合おうな」
「う、うん」
 そして北村が去った後には、にへらと表情を緩める虎と憮然とした顔の竜が。
「えへへ、気が合うって……」
「おい大河」
「なによ竜児。人がせっかくいい気分でいるんだから邪魔するんじゃないわよ」
「お前、昨日俺以上にぶーぶー文句言ってたじゃねえか、納得いかねえって。なのに『私も好き』って何だよ?」
「う、うるさいわね。今度から好きになるからいいの。それより今週中にDVDでシーズン1から全部見なおすからね、あんたも付き合いなさいよ」
「おう……」


199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 05:01:00 ID:JKQ6eTrh0
今さらながら虎竜カプに萌えて書き込みしましたスイマセン
以下駄文投下につきご容赦を。


夏の終わりに降る雨は嫌いじゃない。
晴れる度に心地よい秋風を連れて来てくれるから。
お天気に恵まれた休日は、みんなにとって最高のご褒美。

「ねー竜児ぃー」
「何だよ大河?」

一見して、目つきは悪いけど端々に優しさが垣間見える男の子。
そんな彼と手を繋いでいるのは、薄い色のワンピースでおめかしした小柄な女の子。

「背中のひもがほどけたから結んで」
「ん…仕方ねえなー」

立ち止まり、少し困った表情を見せる彼女。
彼は日焼けの跡が残る首周りに視線を落としつつ手際良く結んでいく。

「んふっ、ありがと竜児」
「ああ、気にすんな」

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 12:55:10 ID:Q+rQmVQY0
大河「お礼に今晩から夜の回数増やすわね」

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 19:52:24 ID:LLlABnNV0
>>199
乙です。
細かい情景描写がすごくいいと思います。


駄文だけど自分も以下初SS投下してみる。
ストーリーを一から考えるセンスは無いから大まかな流れはとある楽曲を参考に。
初めてだから簡潔にしたかったけど、簡潔にまとめるほうが難しい。

1レスでどれくらい書けるのかも勝手が分からないのでとりあえず手探りで。


202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 19:57:23 ID:LLlABnNV0
「悲しいね」


とある秋の日の日曜日、高須家にて

「わー!すごい!竜児あれなに?なに魚!?」
「おう、あれは特大サイズの新巻ジャケだ。大家さんが旅行に行ってきたらしくてお土産に貰ったんだ。」
「へぇ、あのばあちゃんなかなか気前いいじゃないの」

「それがな、『あの子にもいっぱい食べさせてやるんだよ』なんて言いながら渡されたんだ。」
「あの子って私?意外な展開ね。」

「実はな、冬にお前がいなくなった時に時々、『あの子最近見ないけどどうしたんだい?』って聞かれてたんだよ。
お前が何か訳ありなのは感じてたんだろうな。外車に乗ったオッサンと出かけてたのも見てたらしいし。
ああ見えて心配してたんだろ、口では今でもあんな調子だがお前が戻って来たときはなかなか嬉しそうにしてたんだぞ。」

「そうなんだ、あの口うるさいばあちゃんがねぇ。」

「それに戻ってきてからのお前は休日限定になったし、前みたいに暴れたりしなくて迷惑かけてないだろ?そういうこともあって、
遅くなったけど『おかえりなさい』のプレゼントなんだと。あの人もちゃんとお前が喜ぶ物わかってるじゃねぇか。」

「うん!シャケは大好物よ!」

「今日の昼飯はあれだな。俺は下ごしらえしておくからその間に大家さんにお礼言って来いよ。」
「なんか照れくさいけど、分かった!ちょっと行ってくる!」


203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 20:01:07 ID:LLlABnNV0
>>202続き

竜児が台所に立つと何やら下から話し声が聞こえてきた。結構盛り上がっているようだ。


「ただいまー!」
「遅かったじゃねえか。話し込んでたのか?」

「うん。今まで迷惑かけた分も謝って、ついでに肩揉んできた。
そしたらねぇ、『いつだったか結婚したら苦労するなんて言ったけど、今のあんたならいいお嫁さんになるよ』なんて言われちゃった!」

「そうだな、俺としては今のままの大河でも十分満足だけど、俺も負けずにいい旦那にならないとな。」
「もう、朝っぱらから何言ってるのよ、照れるじゃない・・・。それより昼は何にするの?」

「色々考えたんだが、ここは素材の味を生かすためにシンプルにおにぎりにしようと思う。シャケのアラ汁もつけてな。」
「やったー!いいわね、おにぎり。それなら私も手伝えるし!上手くなったんだからね。
私の腕前見たらもうドジなんて言えなくなるわよ!」
「おう、頼りにしてるぜ。」


そしてその後2人で握ったのだったが、自信たっぷりの言葉通り大河の成長ぶりは竜児を大いに驚かせることになった。
おかゆでさえ黒焦げにしていたあの大河が、竜児の作るおにぎりと見分けがつかないくらいの出来ばえのものを
次々こしらえていったのである。

だがしかし、このことが皮肉にもこの日の事件の原因になってしまうのであった。


204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 20:07:09 ID:LLlABnNV0
とりあえずここまでで。
分けなくても1レスでいけたのかな?
ワードだとかなり多く見えるけど投稿してみたらそうでもないんだね。


205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 21:33:37 ID:Z2brTHqt0
>>204
>5
お察しの通りかなりの文字数いける
一文が長すぎて改行が無いとエラーになっちゃうので注意かな。

続きも期待してっぜ!


206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 23:36:37 ID:LLlABnNV0
>>203続き

泰子を加えて3人での昼食。

『いただきまーす』

「何が出るかな〜(カプ)・・・・なんだ梅か、残念。」
「こら、残念とか言うな。梅だって美味いじゃないか。お、俺のはシャケだ。」
「そうだよ〜大河ちゃん。どれもおいしそうじゃな〜い♪あ、やっちゃんもシャケだ〜」

「むう・・・・、竜児のを真似して作ったらどっちの作品か見分けつかなくなっちゃったじゃないの。我ながら上出来だわ。
私はシャケばっかり握ってたから判別できれば簡単なのに。今度こそ(カプ)・・・ってツナマヨかぁ。でもこれもおいしいわね。」

「いやー、ほんと家事できるようになったんだな、明日雪降ったりしないだろうな?お、またシャケだ。」
「あんた、それ以上言ったらぶっ飛ばすわよ。素直に大河様の腕前に感服いたしました、
とか言えないのかしらまったく。ってまた梅・・・・・」

「お前なあ、そんな減らず口叩いてるからシャケが当たらないんだぞ。まあでもほんとにびっくりしたのは確かだ。お、また当たり〜」
「やっちゃんもまたシャケだ〜、これ大河ちゃんも作ったの?すごくおいしいよ〜」
「えへへ〜、本気出せばざっとこんなもんよ(カプ)・・・・・ううう・・・・シャケはいずこ・・・」

大皿に盛ったおにぎりの半分が消えたがそれでも大河は当たらない。

「ちょっと竜児!!なんで私のおにぎりだけシャケが入ってないのよ!!!!」
「知るか!また騒ぐと怒られるぞ。落ち着いて食えよ。」
「うるさい!あんたのそのシャケよこしなさい!!」
「こら、具だけ引っこ抜くな!」
「(モグモグ)うーん、程よく塩が利いて絶妙の味わいね。これはご飯何杯でもいけそうだわ。」
「おう、よかったな。でもお前が外すごとに具の無いおにぎり食わされるのは勘弁してほしいぞ。」


自分では当てられないままどんどん減っていき、

「結局最後の1個か・・・、ついてないやつ。まあ最後くらいは当たるだろ。そんな泣きそうな顔しないで食ってみろよ。」

「(カプリ)・・・・」
「・・・・・その顔はまたハズレか、っておいどうした、肩まで震わせて・・・」
「か・・か・・か・・・」
「おかか?そんなの作ったっけか?」
「空っぽ・・・」
「へ?」

「なななななんで私のおおおおにぎりだけ、シャケどころかななな何も入ってないのよー!!!!」
「プププ、それ俺じゃねえぞ。お前が入れ忘れたんだろうが!やっぱりお前はドジだなぁ。そういや中身入れ忘れるのは得意技だったな。」

「ななななんですってぇぇ!?やっちゃん!!やっちゃん!!今の聞いた?こいつ許せないわ!
あの新巻ジャケみたいに切り開いて吊るしてやるから覚悟しなさい!!」

「ちょ、ちょっと落ち着け大河!普通はいいお嫁さんは旦那に開くだの吊るすだの言わないもんだぞ!」
「それとこれとは話が別よ!」
「わ、悪かった!あんまり面白かったもんでつい言い過ぎた!
シャケならまだアラ汁があるからそれ食べて機嫌直してくれ!」
「おにぎりで食べたかったのに!遺憾だわ!」

「ほら、シャケ本体はまだ半分以上残ってるだろ。お前に全部やるから持って帰って家族にもお前の腕前披露してやれよ。
その時ゆっくり味わえばいいじゃないか。」
「大河ちゃんごめんね〜、やっちゃんもシャケいっぱい食べちゃった。」
「あうぅ・・・・。」


207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 23:43:11 ID:LLlABnNV0
>>206続き

食後機嫌の悪そうな大河はふらっと出て行ってしまった。
食器を片付けてもまだ帰ってこないので手持ち無沙汰になってしまった竜児は仕方なく窓を開けて掃除を始めた。

「まったく、食いもんくらいであんなに怒るなよな。まあアイツらしいといえばらしいけど」

などとブツブツ言っていると、下の階から聞きなれた声が聞こえてくる。

「ねえ、ばあちゃん!竜児ったら酷いのよ!あのシャケ自分ばっかり食べて私には食べさせてくれないの!」

「大河のヤツどこに行ったかと思えば1階かよ。また人聞きの悪いことを言いやがって・・・・。
しかもさっそくばあちゃん呼ばわりか。まあ大家さんと仲良くなったのはいいことだしここは我慢しとくか。」


結局夕方になってやっと大河は帰ってきた。

「ただいまー。」
「おう、ちょうど良かった、晩飯できたところだぞ。」
「知ってるわ。下までいいにおいしてたもの。今日はカレーね?」
「ご名答。さすがの嗅覚だ。夕飯食べて機嫌直してくれよ。お前のための特別メニューにしたんだから。」
「そんな気遣わなくてもいいわよ、もう怒ってないから。大家さんところでゴロゴロしてたら眠くなっちゃって昼寝してきただけよ。」
「まったくお前ってヤツは・・・。」


泰子は店に出たため夕飯は2人である。
食卓には2種類のカレー。竜児の前には普通のカレー。そして大河の前には具の無いカレー。

「・・・・・何よこれ、あんたふざけてるの?いい加減にしないとホントに吊るすわよ?」

ある程度覚悟はしてたことだが、大河の目に久しぶりに見る殺気が宿る。

「オイ竜児!!な、な、な、なんで・・・・私のカレーだけなんにも具が入ってないのよ!!!!
あんたのには山ほど入ってるのに!!!!最近おとなしくしてるからって、私のことナメたらどうなるか思い知らせてやるわ!!」

「オイってなんだよ!落ち着けって!お前のための特製だって言ったろ!」
「この何も入ってないカレーが特製ですってぇ!!もう許せないわ!!大家さんにもとっちめてもらうんだから!!」

「ばあちゃん!!ばあちゃん!!竜児が・・・・・!」

「こら、バカ、やめろ!騒ぐな、落ち着け!騙されたと思って一口食べてみてくれよ!」
「チッ、そこまで言うなら仕方ないわね。ほんとに騙してたら許さないから(パク)・・・・・あれ、何これ・・・・?」

「どうよ?」

「私の好きな甘口・・・でもただ甘いだけじゃなく深いコクと旨みが詰まってて・・・すごく濃厚。
いつものスパイスセットもおいしいけどこれは格が違うわ。どういうこと?」

「それはな、何も入ってないんじゃない。いつものスパイスのカレーにいろんな具を細かく刻んで入れて溶けて無くなるまで煮込んだんだ。
よく見てみろ、具のカケラみたいなのが入ってるだろ?それにな、ルーの色も俺のと違うのに気付かないか?」

「あ、ほんとだ、ちょっと色が濃いわね。謎のカケラも入ってる。」
「おう、分かってくれたか・・・っておいおい。」
「(ガツガツガツガツ・・・)おかわり!」
「こら、そんな慌てて食うんじゃない、服に飛ぶだろ。カレーは逃げやしないよ。」
「いいから黙ってよそいなさい!」

「やれやれ・・・」


208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 23:46:50 ID:LLlABnNV0
>>207続き

2杯目もあっという間に平らげたところで落ち着いたらしく
「ふう、すごくおいしかったわ!ありがとうね、竜児。それから騒いで悪かったわ。」
「おう、機嫌直してくれて俺も嬉しいぞ。」


「でもね竜児、あんた一つだけ分かってないことがあるわ。」
「え?」

「私はね、あんたと同じご飯が食べたいの!なんであんたは普通のカレーなのに私だけ特別製なのよ。
あんたもこっち食べればよかったじゃない。」
「いや、実は煮詰めたら意外と少なくなっちまってな。水増ししたら薄くなるし。
それにお前がたらふく食うだろうと思って俺のは別に作り直したんだ。案の定あっさり全部食っちまいやがって。」

「もう、そんな余計な気は遣わなくていいわよ!・・・・でもまあお礼は言っておくわ。
それにしてもあんたってばほんとに鈍いんだから。今度別メニューにしたら許さないからね!」
「それはすまなかったな、もうしないよ。今日のところはもう食べちまったし許してくれないか?」

「そうね・・・、あんたのと同じのも食べさせてくれたら許してあげるわ。」
「お前まだ食うのかよ!また太るぞまったく。しょうがない、よそってきてやるよ」

「違うわよこの鈍犬!私はね、『食べさせて』って言ったのよ?ここまで言えば分かってもらえるわよね?
ほら、あんたまだ自分の全然食べてないじゃない。ん〜、とりあえずそこの肉からね♪」

具が無いのが物足りなかったのか大河は具ばかり要求し、結局竜児のカレーの具は全て虎の胃袋に消えてしまった。


「俺のカレーだけ・・・・何も入ってねぇ・・・・。俺のは正真正銘具が無いだけのただのカレーじゃねえか・・・。」
「あらやだ、遺憾だわー」
「まったく嬉しそうにしやがって。」
「あら、あんただってブツクサいいつつ顔はニヤけてるわよ?」


209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/04(月) 23:52:47 ID:LLlABnNV0
>>209続き

夕食後、いつもの大河の帰宅時間

「ほれ、持ちやすいように切り分けてやったぞ。送るついでに途中まで持って行ってやるよ。」
「ふふん、今度こそ私の胃袋におさめてやらないとね。」
「あんまり一気に食いすぎるなよ。塩分濃いんだからな。」
「分かってるわよ、いちいち細かいわね、あんたは。」

2人がいつも分かれる大河の家の近くの交差点

「竜児、今日はほんとに色々悪かったわね。それとありがと。また明日ね。」
「おう、また明日学校でな。」

「あ、そういやあのカレーって何を溶かし込んでたのか詳しく聞いてなかったわね。」
「おう、あれはな・・・、」

材料を思い出そうとした竜児の頭にふと具を奪われたおにぎりやカレーがよぎり、たまにはちょっと反抗してやろうと数秒考え、

「あれはな、ひき肉と、たくあんと、しおからと、ジャムと、にぼしと、大福と、その他いろいろだ。」

「え・・・、何それ、そんな具材であんな味になるんだ。あの甘さは大福とジャムだったのね。
その発想は無かったわ!さすが竜児ね、今度はいっぱい作ってやっちゃんと3人で食べようね!それじゃ!」

大河は言い直す間も与えず去ってしまった。

「おいおい。あんなの信じるか?たくあんやにぼし煮込んだって溶けるわけないだろ・・・。
おにぎりは上手くなってもやっぱりアイツの料理のセンスは問題だな・・・。」

「いい嫁」になってもらうためにいつか料理の基礎から叩き込んでやろうと決意する竜児であった。

END


210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 00:06:19 ID:TULXhMvT0
本編は以上です。

>>108でそのうち書くかもなんて言ってた者です。

ほんとに書きたい内容は別にあるんで、習作のつもりで書いたら妙に長くなってしまいました。
校正もかなりやったけどテストの答案見直しみたいなもんで自分じゃ気付かないところいっぱいありそう。

後日談があと1レスほどあるけど投下するかどうかはもう少し考えてからで。

ところで参考にした資料のリンク先って貼り付けても構わないもんなんですかね?

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 07:29:58 ID:pk48D1DU0
>>210
乙です。違法とかエロじゃないかぎり、別に資料のリンクくらいいいんじゃない?

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 13:28:40 ID:W2drkRER0

>>210
乙です。おにぎり話、面白かった。日常の素朴な感じが良かったです。
竜児、しゃけおにぎり、さっさと分けてやれよw あと、竜児の言うことならなんでも信じて
メシ作りそうだな、大河は。
もう一つの方も、のんびり楽しみにしています。

>>199
も乙です。短くてもいい雰囲気。
また新しい方が竜虎の色んなシーンを妄想して投下してくださるのは嬉しいっすね。

>>196
血の雨が降るのか、はたまた涙か、次の回も楽しみにしています。あーみんが可愛いw
下級生色々怖いもの知らず杉ワロタ。

>>187
まとめ人様、いつも有難うございます。

キングレコード様への要望は、BD化の管理人さんに米すれば、届けてくださるんだろうか…
ttp://ameblo.jp/bdmeister/day-20101001.html

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 17:49:02 ID:TULXhMvT0
>>210です

駄文に感想つけてくれてありがとう。
そういうことならリンク先付きで、後日談の投下を。
1レスのはずがちょっと書き足したんで2レス使います。

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 17:52:38 ID:TULXhMvT0
>>209続き

数日後、昼休みの教室にて

「た・か・す・くーーーん!!!たいがーー!!!」
「あれ、みのりん一緒に食べる?」「どうしたんだ櫛枝、そんなに血相変えて」
「どうしたもこうしたもないよ!コレはどういうことさ!」

そう言って見せられた写真は何やら鍋の中で白っぽい茶色に濁って泡立った謎の液体。
何かよく分からない黒い粒やふにゃふにゃの黄色い謎の物体が浮かんでいて、
分類するならグロ画像、とても食事中に見るようなシロモノではなく・・・

「ちょっとみのりん(櫛枝)!、ご飯の最中になんてもの見せるのよ(んだ)・・・!」

「おー、さすが息ピッタリだねぇお二人さん、じゃなくて・・・大河!
こないだあんたから聞いた高須君の特製カレーの材料の通りに作ったらこうなったんだよ!どういうことなのさ!」
「え・・・・、そうなの?ちょっと竜児、これはどういうこと?説明してもらえるかしら?」

「大河、お前あんなデタラメ教えたのかよ!櫛枝も信じるなよ、お前の家事のセンスは一目置いてたのに、
お前ら二人揃ってアホか!ってか最後まで作れたのが逆にすげえよ、途中でおかしいことに気付くだろう、普通は!」

「私が春田君並ってどういうことさ!高須君のレシピだからおかしいと思いながら信じて作ったのに!」

「・・・ねぇみのりん。どうやらこの犬は人を騙した挙句アホ呼ばわりまでしてくれたみたいだよ。」
「・・・そのようだね、大河。」
「これはどうやらシメなきゃならないようね、みのりん。」
「うん、責任取ってもらうしかないね、これは。」


その日竜児の弁当は二人に食べつくされ、さらに放課後「昼も食べないで腹が減ってるだろう」などと言われながら
櫛枝家まで連行され、例の写真の物体を食べさせられる羽目になったのである。
竜児はかつて憧れた女子の家にこのような形で訪れることになろうとは思いもしなかったことだろう。


215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 18:02:11 ID:TULXhMvT0
>>214続き

「な、なにこの臭い・・・、ものすごく遺憾な感じがするわ・・・。」
「く、櫛枝・・・、俺はこれを食わなきゃならんのか・・・?」
「あったりまえさね、私はともかく大河を騙した罪は重いんだよ!さあ食え!」

観念して一口食した竜児だったが、甘いのやら塩辛いのやらが混ざった上わけのわからない味と臭気で意識が飛びそうになり、

「・・・・すまん、もう無理・・・、一口食べたしこれで許してくれ・・・。人間の食いもんとは思えねぇ・・・。」

「んー、そうだねー、こうしよう。本物のレシピを私と大河に教えてくれたら許してあげることにする。大河もそれでいいよね?」
「うん、っていうか最初からそれが聞きたかっただけなんだけどね。私もみのりんも。」
「お前ら・・・、それなら最初からそう言えよ。」

「いやー、ごめんね高須くん。でもやっぱ大河にウソついた分はお仕置きしとかないと、ねぇ?」

「そりゃ悪かった。あんなにあっさり信じるとは思わなかったんだよ。しかもさっさと行っちまいやがって。
そんじゃレシピ書いてくるから明日まで待ってくれな。」

ちなみに翌日竜児によって書かれたそのレシピは、元の大河用の甘口に実乃梨の好みに合わせた辛口版を追加され、
さらにスポーツ少女の彼女のために栄養価を考えてアレンジを施されたものであったが、
後にそのカレーは実乃梨によってソフトボール日本代表チームにもたらされ、
チームの名物メニューとして受け継がれていくことになる。


「やったね!今度挑戦してみようっと。それはそうと竜児、みのりんの手料理食べたんだから私のも食べてくれるわよね?
おにぎり以外にも得意料理あるんだから。」

「お、大河の得意料理とな。おっちゃんも興味あるねぇ。なんだいなんだい?」

「お味噌汁。」

『み・・・みそしる・・?。』

「何よ、二人して固まっちゃって、不満だっての?たかが味噌汁で悪かったわね!ひどいよみのりんまで!」
「い、いや違うぞ大河。その・・・、嬉しくて。なぁ櫛枝、ってお前なにハァハァしてんだよ。」

「だって・・・ハァハァ・・・あの大河が毎朝・・・ハァハァ・・・『今日のお味噌汁はどう?おいしい?』
・・・なんて、可愛すぎるじゃないのさ、・・・なにその理想の嫁は・・・って鼻血出てきた・・・」
「お前興奮しすぎだ!ティッシュ使え!ってまあ大河、そういうわけだ。
味噌汁のうまい妻というのは日本人男性の理想の一つであってだな、お前がそうなってくれるならすごく嬉しい。」

「理想の嫁・・・ホントに?」
「ああ。」
「私も大河の味噌汁飲みたいけど、やっぱ最初は高須君に譲らないとね。そのうち頼むね?」

「うん、わかった!味のほうもママのお墨付きだから大丈夫よ!」
「おう、そりゃ楽しみにしてるぜ!」

END


カレー参考資料(リンク先はブログ) 勝手に参考にさせてもらいました。
ttp://a-c.comic.to/dora/gianstw0.html

ストーリーの元ネタの曲はこちら(某音ゲープレイ動画) ただのネタ曲です。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10347640


216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 18:16:14 ID:TULXhMvT0
ああ失礼、ブログじゃなくて個人サイトだった。

ってまあ友人がこの曲クリアできなくて何回も連奏してるの横で見てたら
何か閃いたんで書いてみただけだったり。

ともあれ以上で完結です。スレ汚し失礼しました。


それにしてもBD化希望作品ダントツで1位とはすごいもんだ。これは期待せざるを得ない。

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 18:45:58 ID:Xp8goEkI0
>>198
いつも乙です!
本当に気が合ってるのは…w

>>199
GJ!ワンシーンなのに幸せそうな雰囲気出ててイイ
二人のまわりだけお花が飛んでそうだw

>>216
後日談まで楽しませてもらいました、GJ!
にぎやかな食卓の声が聞こえてきそう
仲良く料理は想像すると顔がにやけるよな〜。既にいい夫婦w
大家さんと大河も微笑ましい
次回作、いつでも待ってます!

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 19:30:40 ID:W2drkRER0
>>216
早速の投下、乙
おいしいカレーのレシピかと思いきや、そっちかい! ジャイアンwww 
後日談、そう来るとは思わなかったので面白かった。やっぱ話のオチまであった方がいいな!
みのりんのバケツプリンを考えると本当にありそうだw


219 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:47:22 ID:pLkB45g50
『告白の情景』続きです。

今回でラストになります。

220 :告白の情景9 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:48:42 ID:pLkB45g50
「あのあのー、高須先輩!私聞きたい事があるんですケドっ。」
「…ま、まあ大体わかる。」
「なら、説明してくれませんか…この状況をっ!!?」

翌日。約束通り家庭科室で三崎にクッキー作りをレクチャーする竜児。
そして、その二人から離れた教室の一番後ろ、壁に背を持たれかけた大河。右手には竜児もよく見慣れた木刀を遊ばせている。

「気に…するな。」
「これ気にしなかったら、私ちょっとおかしい子ですっ!!」

全く持って返す言葉もなかった。竜児は大河に聞こえないような小さな声で「スマン」と呟き

(邪魔する訳じゃないからさ…と、とにかくクッキーを作っちゃおうぜ?)
(えぇ〜〜…超気になりすぎなんですけど…。それに、誰にも言わないで下さいって言ったのにぃ…。)
(重ね重ねスマン…。)

竜児に合わせるようにボソボソと話す三崎。その姿が手乗りタイガーを触発するに十分である事は、想像に難くないだろう。

「あら、なんか私お邪魔してるかしら?お・二・人・の…。」

「ニコッ」と笑うその顔が怖いから、などと竜児が言えるはずはもちろんない。

「誰かに言いふらしたりするつもりないし、その点は安心して良いわ。別に邪魔する気もない。ただここにいるだけよ。悪い?」
「うわぁ〜、全部聞こえてるし…。」
「とっ、兎に角だ!三崎も早く作ってしまいたいだろう?俺もあまり長々とは居られないし!さあさあ、早速作ろう!今すぐ作ろう!!」
「んん〜〜…ご本人に内緒にしててくれるんならまあいいんですけどぉ。」

大河の方を見ながら右に左にと首をかしげる三崎。
そう言えば目当ての人がクラスにいると言っていたな、と竜児は昨日の言葉を思い出していた。

「でもでも、じゃあちっちゃい先輩さんは何でここにいるんですかぁ?」
「ひぃっ…!!」

思わず悲鳴をあげる竜児。

「…あぁ?」

大河は三崎を射殺そうかとばかりに睨み付け、持たれかけた背を壁から浮かす。
そんな空気が読めないのか、そもそも危機管理能力が欠如しているのか、三崎は構わずさらに続けた。

「…ひょっとしてぇ、高須先輩と私が二人っきりなのが心配だったんですかぁ☆」
「みみみみみ三崎!!」
「はぁい、何でしょう?三ちゃんって呼びたくなりましたかぁ?」
「ならない!」
「そうですか…それだけ力いっぱい否定されると、少しショックです…。」
(頼むから、本題に戻ろう!)
(せっかくならあのちっちゃい先輩もこっちくればいいのに。)
(いいからっ!!)

大河と三崎の間に割って入るようにして、三崎の背を押しクッキー作りに入る。

「…フン。」

幸いにも大河は爆発に至っていなかったようで、再び背を壁に預ける。
今だけで寿命がかなり縮んだな、とため息を付きながらとにもかくにもさっさとこの空間から抜け出したい、と願う竜児だった。

221 :告白の情景10 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:50:17 ID:pLkB45g50
「そこで混ぜすぎないようにな。混ざったなと思ったらすぐ止めていい。」
「ハイッ」

生地を混ぜ、冷やし、オーブンで焼く。総じて約1時間。その間大河は一切その場を動こうとしなかった。

「…なあ、三崎。その、上げたい相手って結局誰なんだ?俺はてっきりその人の好みとか聞きたいのかと思ったぞ?」
「あ、ハイ!実は実は…あー、そうかっ!!好みとか聞けばよかった…高須先輩知ってますか?」
「…いや、だから誰なんだって…。」
「え?言ってませんでしたか?」

やっぱり天然だなこの子は、とややあきれながらもその相手というのに興味がないかと言えば嘘になる。

「じ、実はぁ…。」

思い切って、といった趣で三崎はその思い人の名を口にした。






「は…?」

鋭いその目を真ん丸くして、竜児はその驚きを隠せないでいた。
振り向いて見ると、大河も同じように目を丸くしている。

「で、高須先輩に渡すの手伝って欲しいんです!わ、私なんかとても一人じゃ声掛けられなくてっ!!」
「て、て、手伝うって…どうすればいいんだ?」

動揺しつつも、何とか言葉をつなぐ竜児だが、動揺はありありだ。
だが、一人興奮している三崎はそれどころじゃないようだ。

「教室の入り口まで呼んでもらうだけで良いんですっ!」
「そ、それでいいのか?人気のないとことかじゃなくて?」
「それだと返って緊張して…。」
「まあ、それでいいならいいけど…。」

良くないけど、とも言えず。なし崩し的にそれを受諾する事になった竜児。
きっと今週の占いをすれば、最悪だろう。年下の女性に気をつけろ、と出るのかも。そんな事を考えながら。

222 :告白の情景11 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:52:30 ID:pLkB45g50
翌日放課後。

「な、なぁ川嶋…さん。」
「はぁ??」

いきなり竜児にさん付けで呼ばれ、思いっきり怪訝そうな顔をする亜美。

「お、お前に用があるって人がいるんだ…今教室の入り口の所に来てる。ちょっと行ってやってくれねぇか?」
「いったい何よ?ファン?そういうのマジ迷惑なんだけど。」
「いや…スマン。」
「な、ちょ…そんな本気で謝んないでよ!わかったってば…。」

頭を下げて謝る竜児に、仕方なくめんどくさそうに席を立つ亜美。

「…。」
「…。」

その後姿を見送り、無言で目を合わせる大河と竜児。

「大河、帰ろうか。」
「そうね、竜児。」
「おお、二人とも仲直りしたかね!うんうん、よかったよかった!」
「ま、まあな櫛枝。」
「そ、それじゃねみのりんっ!」

挨拶もそこそこに、そそくさと立ち去る二人。もちろん亜美の向かった入り口とは反対から。



しばらくして、目の据わった亜美が戻って来る。顔はやや青ざめて。
手には何やら可愛いラッピングがされた包装紙を抱えていた。

「ど、どしたあーみん??」

恐る恐る声を掛ける実乃梨に、その目つきのまま向き直る。
思わず実乃梨も一歩後ずさった。

「…高須くんは…?」
「さ、さっき何か急いで帰ってったケド…?」
「あの野郎…知ってて逃げやがったな……!」

言うが早いか教室を飛び出していく亜美。
何がなんだかわからないままに取り残された実乃梨は、一人ぼーぜんとするしかなかった。

「何か知らないけど、あーみんが怖いぜい…。」

223 :告白の情景12 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:57:41 ID:pLkB45g50
「いやー、世の中には色々な人がいるもんだな…。」
「そうね。」

逃げるように教室を後にして、二人はいつもの帰り道を歩く。

「…なんかね、思い出した。」
「ああ。俺もだ。」

はじめて会った去年の春。北村にプレゼントするためにクッキー作りを竜児が手伝った事を。

「…アンタ、あんなしょっぱいクッキー黙って食べるんだもん。」
「お前は出会ったときからドジだったからなぁ。」
「何よっ!」

「キッ」と睨む大河だが、それも一瞬。

「「プッ」」

二人で笑う。
あれから二人でずっと。
怒って、喧嘩して、泣いて―――そして、今笑ってる。

それが嬉しくて。幸せで。



「…フッフッフッフッフ…」

そんな二人の笑い声に被せるように背後から響く声に、ビクゥッ、と二人の肩が揺れる。

「……どうもぉ〜お二人さぁ〜ん♪よ・く・も・騙してくれたわねぇ…。」
「川嶋っ!いや、それは違うっ!決して騙したわけじゃないぞ!黙ってただけで…。」
「それで言い訳してるつもり?」

凄まじい迫力で竜児ににじり寄る川嶋のそのわき腹に、大河が指を突き指す。

「ひゃうっ!!」

思わず飛び上がる亜美。

「逃げるわよ、竜児!」
「えっ、お、おぅ…!」

満面の笑みで手を引く大河につられて走り出す竜児。
亜美の周りにはゴゴゴゴゴとオーラが見えるよう。いや、確かにそれが見えた。

「待てやコラァーーーーーーーーーーーーー!!」

大河は本当に楽しそうで。亜美には悪いと思いつつも、竜児も自然に顔がほころぶ。








「あははは、いいじゃないばかちー!!モテモテで!」
「やかましいちびトラっ!!てめー絶対ぶん殴る!!」
「竜児早くっ!ばかちーに追いつかれるわよっ♪」

224 : ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/05(火) 22:58:43 ID:pLkB45g50
以上で終了です。

コメントくれた方々、感謝です。


225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/05(火) 23:43:18 ID:iCs9GZuc0
>>224
GJ!
乙です。面白かった! あーみん、いじるとこんなに楽しいなんてwwww
意外とこういうネタなかったなぁ

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 14:04:46 ID:ucpuON3h0
大河は音ゲー好きで受信しますた。

「今日は特売で肉が安かったからすき焼きだぜー」
「みっ○みっ○にしてあげる〜♪」
「食べ物を邪険に扱うんじゃありません!」
『ネギは…つい…てない…け…けけけ』
「はわっ!インコちゃん何を!?」
「えへへー」

227 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/06(水) 17:37:25 ID:O+XKDhjjO
「君がいないと、何にも出来ないよー・・・君のご飯が食べたいよーー・・・」
「なんだ大河その歌?」
「あ、竜児。なんかね、作者が転びそうなんだって」
「は?」
「けいおん」
「ああ。あれか」
「だからもっと、ここに居られるようにSS欲しいって」
「わがままか」
「俺妹にも嵌まりそうだって」
「ドンだけ浮気性だ!?」
「だからもっとみんな頑張ってって」
「お前が頑張れよ!!」

ですねw

てなわけで少し投下しますw
「竜児という存在アフター」の続編ッスw
しかも書きかけでしたバカヤロウw

「今日すっごくいい天気ねっ!」
「ああ。皆も喜ぶだろうよ」
嬉しそうな大河の言葉に誇らしげに答えてやる。
今日は特別な日。
「・・・むー・・・」
「?どうした大河?」
しかし想い人は仏丁面で。
「・・・私が一番喜んでるのに・・・」
「!ああ、悪い。勿論俺も喜んでるからな」
かいぐりかいぐり。
頭を撫でてやるととたんに相好を崩して。
「なんたって久々にお前と過ごす休日だもんな」
にへ〜。
しまり無い顔で受け答え。
「うん!頑張って取った休みなんだかんね!?私に感謝しなさい!?」
「はい。心の底から感謝しますよ奥さん」
にへー
「・・・どうなのあれ?」
「あーうん。・・・まだまだ新婚家庭だねえ・・・」
「・・・もう少しで8年になるけど?」
「・・・だねえ・・・」
見合わせて思わず吹き出す二人。
実乃梨と亜実。
待たされた居間の中で、目の前で繰り広げられる変わらない二人を見据えながら。

『花見』



228 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/06(水) 17:39:48 ID:O+XKDhjjO
>>227

「そういや北村」
「ん?」
「お前等子供作らないのか?」
「ブッハァ!!」
吹き出したのは、聞かれた当の本人ではなく。
「なななななにを言い出すんだ高須竜児!?」
兄貴こと狩野すみれ。
「いや俺は全くもってそのつもりなんだが、会長が・・・」
「北村あぁぁぁぁっ!!!」
メコッという音が確かに聞こえたかのような鉄拳が、北村の顔面に突き刺さってい
る。
「ひひひ人前では、すすすスミレと呼べとああああれほど言っておいただろうがっ!
!」
「す・・・すいません、会長・・・」
「まだ言うか!!?」
ボコズカドクボク・・・
「・・・あれ死んでないの?」
「・・・祐作はタフだから、たぶん・・・」
「・・・家じゃ会長って呼んでるんだな・・・・」
「てゆうか、あの女も『北村』って呼んでる時点でどうなのよ?」



229 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/06(水) 17:42:03 ID:O+XKDhjjO

「でも子供できるってのはいいわよねー」
「なに、ばかちー子供欲しいの?なんなら一匹やろうか?」
「犬の話じゃねーっつの!・・・冗談はともかく、やっぱり子供って可愛いじゃん」
「・・・ばかちー・・・」
そうなのだ。
この憎まれ口を叩く悪友は、決して愛する人との間に子供を設ける事は出来ないの
だ。
そこに思い至り、大河の顔も神妙に・・・。
「まーでも、実乃梨ちゃんをとられないんだから逆にいっか!正直、子供とはいえあたしと実乃梨ちゃんの仲裂いたらマジ殺しちゃいそうだし♪」
「・・・今心底あんたに子供できない事を祝福したわ・・・」
「ん?」
なる訳もなかった。

「ところで能登と木原は?」
「あーなんか、能登が浮気したとかで麻耶マジ切れでこれないって」
川嶋の答えに少し驚いた竜児。
「・・・・は?」
「こわいねー」
「いや・・・怖いねで片付けて・・・」
「お待たせー」
「へ?」
「え?」
視線の先にはにこやかな木原。
「ごめんねー送れちゃってー」
「あ・・・ああ・・・」
「き・・・気にしないで麻耶・・・」
「「ん?なんか声暗くない?」
『そんなことはないです!』
声を揃えて答えた二人の前。
「・・・」
木原麻耶の右手に引きずられた能登は、辛うじて生きているようだった。




230 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/06(水) 17:43:38 ID:O+XKDhjjO
>>229
「・・・なんつーか・・・・あ、春田は?」
「あー。なんかゆりちゃんがあれで、これないとか?」
「あ、そうなのか?・・・ゆりちゃん先生も、いい加減高齢出産だしなー・・・」
しみじみと言う竜児。
やはり、あの『事件』は記憶に新しい。
「・・・まさか春田と結婚とはなー・・・」
「まーありえなくはないんじゃね?あいつ、あー見えて結構面倒見いいし」
「まーな・・・でも、驚くだろ普通?」
「まあね。でも収まるべく・・・」
そこで言を切って黙り込む亜美。
当然のように竜児が問い掛ける。
「?どした?」
「・・・あーうん。ね?」
くいっと盃をあけて頷く亜美。
その顔には違和感がありありとある。
「なんだよ?」
「・・・あれが見間違いじゃなけりゃ・・・」
「へ?」
「あたしも感心したんだけどねえ・・・」
「は?」
促されてみつめる視線。
その先に促された『あれ』にあんぐりと口を開く竜児。
「・・・なんでいるんだ春田?」
「さあね」
目の前に談笑する春田をみつめ、二人は無言で盃を煽った。
「・・・殺されるな」
「うん・・・だね」

続きますw


231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/06(水) 19:39:53 ID:xaZr/m170
酔った大河は淫乱

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/07(木) 02:47:11 ID:9Ge8kMOz0
新たな書き手さんが!!
萌えは溜め込まないでどんどん吐き出していくといいと思う
古参の人も新手の人も超GJ

233 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/08(金) 08:05:48 ID:0HQnsq8Q0
お題 「真実」「これ」「言いたい」



「なあ大河」
「んー?」
「ずいぶん機嫌よさそうじゃねえか。何かあったのか?」
「あ……わかる?」
「わからいでか」
 何しろ大河は帰って来た時からずっとニコニコ、時にニヤニヤ、鼻歌など奏でつつ夕食の片付けを手伝う始末。
「そうね……竜児には特別に教えてあげる。今日みのりんと遊びに行ったじゃない」
「おう」
「その時占い館の出張所見つけてね、ちょっと見てもらったのよ」
「……占い、ねぇ」
「あ、胡散臭いとか何とか言いたいんでしょ。でもね、そこは本物だったのよ。
 私の顔見て開口一番『あなた、好きな人がいますね。それも身近に』だもの」
 女子高生で身近に多少なり好きな人が居るのは普通なんじゃねえかな……などと思いつつ、竜児はとりあえず無言で。
「でね、その占い師が言うには、今は関係が近過ぎて本当の気持ちが見えにくくなってるけど、強くて太い絆で結ばれてるから心配するなって。やっぱり北村君は私の運命の相手だったのよー」
「おう、よかったじゃねえか」
「でしょでしょ。ただ、これからの卦があんまり良くなくてね、なんか色々と障害が湧いてくるらしいのよ。だからほら、これ」
 言いながら大河が取り出したのは、どこにでもありそうな星をモチーフにしたキーホルダー。
「おう?何だそれ?」
「絆を更に強くする、縁結びのお守りだって。ついでにあんたの分も買ってきてあげたから。みのりんと上手くいくように」
「おう、すまねえな。いくらだ?」
「一個二千円」
「にせっ……!」
 大河お前占い師の術中に嵌りすぎだとか二千円あれば買える物リストとか、思わず脳内に浮かべつつ絶句する竜児の前で大河はふと不思議そうな表情に。
「ただ、最後に言ってたことがよくわからないのよねー。くれぐれも真実の相手を見間違わないようにって」

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/08(金) 09:49:41 ID:qzr6iTmc0
本屋で平積みになってた『もしドラ』が「もしトラ」に見えたorz
やばい妄想脹らませてくる

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/08(金) 12:31:39 ID:g4Dtf2KwO
>>233
乙!
占い師の言ってることが的確過ぎてワロタw
2000円でもいいかなと思えるぜ

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/08(金) 17:03:04 ID:5dvHx1j10
>>233
eroの人は本当に最後の一行がうまいなぁ。
>>234
もしどら!で書こうと思ってなんど挫折したやら。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/08(金) 19:41:17 ID:uKq05hBu0
大河「どうして中華風トムヤムクンのソースはほんのりアレの味がするのかしら」
竜児「アレって何だ?」
大河「あんたのアレよ、アレ」
竜児「・・・・?」
大河「毎晩布団の中で飲んでるあんたのニガくてねばねばした白いアレよ」
竜児「し、知らねぇよ!(そんな味するのか・・・・)」

238 :雨の日 ◆GYdNqEbDyU9L :2010/10/08(金) 22:34:01 ID:+nsZdr5K0
「は?お前、朝持ってるって言ってたじゃねえか。」
「だから、折り畳みが鞄の中に入りっぱなしだって思ってたの。」
「で、いざ見てみたら無かったって訳か。」
「そ。」
はぁ、しょうがねえな、と竜児は溜息を一つ。
大河は、何やらそっぽを向いて、靴のつま先を地面でくねらせている。
「だから、アンタの」
「そんな事もあろうかと、ほらよ!」
大河が言いかけた瞬間、竜児が折り畳み傘を放って渡す。
「…なんでアンタ、傘2つも持ってる訳?」
「俺は常に折り畳み傘も常備してるんだよ。」
それだけじゃないぞ、と大河仕様に携帯ティッシュやタオル、絆創膏や風邪薬まで。自慢げに大河に見せ付ける。
「お前のドジは計算済み…ぐはっ!!」
意気揚々と語る竜児にローリングソバットをかます大河。倒れこむ竜児をよそに、一足先に校舎から外へ。
その一歩目で振り返り、鋭く冷たい目線で一言。
「…鈍感犬。」
そうはき捨てて、スタスタと先に行ってしまう。
「お、おい待てよ…ったく、何なんだくそっ!」
「いやー、今のは高須君が悪いでしょ?ねぇあーみん。」
「そうねぇ。高須君って、馬鹿だから♪」
蹴られた腰を抑えながら声の方を振り返ると、実乃梨と亜美が立っていた。
「…なんだよ、馬鹿って。」
「言葉通り。」
「仕方ないなぁ。そんな高須君にいい事を教えて進ぜよう!」
実乃梨は人差し指をピンと立てて、それを竜児に突き立てる。
「人を指で指しちゃ駄目だって、教わらなかったか……?」
「ノンノン、そんな小さい事はこの際どうでもいいのだよ。いいかい高須君。大河は今日ちゃんと傘持っていたんだよ?」
にやり、となぜかニヒルな笑みを浮かべる実乃梨。
一方の亜美は心底小ばかにしたような目つきで竜児を見下ろしながら。
「これでわからなきゃただの馬鹿から祐作レベルに格上げしてあげるわ。」
「…あ。」
竜児ははっとして、あわてて大河の行き先を目で追う。もうその姿は見えない。
「悪い、俺先に行くわ。またな、二人とも。」
「おぉう、よろしく頼むぜぇ高須君!」
「はいはい、さっさと行けば。」
「ありがとう。」
満面の笑みの実乃梨と、やれやれといった感じの亜美に見送られて、竜児は大河の後を追う。
追いついたらなんて声をかけようか?それだけを考えながら。



「ちょっと竜児。もっと傘こっちに寄せなさいよ。私の肩が濡れちゃうでしょ?」
「だったら…」

「もっと、そばに寄れよ。」

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 00:47:14 ID:SHrb0hASO
>>237
ま、マジで!?

>>238
竜児の鈍犬具合に腹がたったw
しかし最後の一言で帳消し。
むしろお釣りがくるぐらいだぜ。
GJ

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 05:06:07 ID:hJES9jff0
朝からニヨニヨが止まらないぜw
正直な話、このスレを見て嫁と付き合い始めた頃を思い出した。

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 19:41:46 ID:GEwuz1cj0
また何やら書けたんで投下してみます。

前のオイパンクこと「悲しいね」はポップンミュージック6で10年位前の古い曲でしたが
今度参考にさせてもらったのは最新作ポップンミュージック18より、ジャンル名「万葉歌」、曲名「防人恋歌」です。

本来は防人として行ってしまった男とその帰りを待つ女の互いを想う心を歌った曲です。

防人は一応3年の任期があったそうですが、延長されることも頻繁にあったようで、
行ってしまったら次にいつ会えるか分からないというものでした。


まあ竜虎の場合はそんな悲愴な別れじゃなく希望に満ちたものなので、多少いじくってみました。

いいタイトル思いつかないのでとりあえず引用元そのままで。

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 19:46:17 ID:GEwuz1cj0
「防人恋歌」

竜児と別れて1週間、新しい家族と暮らし始めてから毎日、大河は眠れない夜が続いていた。


夜、ベッドの上で横になると脳裏に浮かぶのはいつも、春に竜児と出会ってからのこと。
互いに気持ちに自覚の無いまま過ごした騒々しくも穏やかな日々。
おそらくはこれまでの人生で一番安らいだ日々。

今にして思えば、傍にいてほしいと思ったときにはいつも竜児は傍にいてくれた。
父親に裏切られ一人ぼっちだった文化祭の時は、ボロボロになりながらも親友と2人で真っ先に駆けつけてくれた。
クリスマスのときなんかは他にもっと大事なことがあったのに、一人ぼっちだった私のところに来てくれた。
修学旅行のときも危険を顧みずに助けに来たのはやっぱり竜児だった。

あの時も、あの時も・・・・。


でもその竜児は傍にはいない。

自立すると言って高須家に行かなくなった時も、寝室の窓の向こうにはいつも竜児の存在は感じていた。
でも今はそれもない。


淡い思い出を振り返る最後にいつも感じるのは自分の手に、腕に残るあの感触。





あの夜、大河は結局ほとんど寝ていなかった。
竜児が寝たのを見計らって、再び大河は竜児の部屋に戻ってきたのだ。

「いつまでかかるか分からないけど、きっと戻ってくるからね。」

そうささやいてどういうわけかそっぽを向いて寝ている竜児の頬を撫でてみた。
驚くほど温かい・・・、というより廊下でずっと頃合を待っていたので大河の体のほうが冷え切っていた。

一度触れると竜児のぬくもりをもっと感じたくなり、布団越しにその広い背中を
ひどく頼りなく見える自分の腕で、起こさぬようそっと力を込めずに抱きしめた。

そのまま出発の準備をしなければいけない時間までそうやっていた。


243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 19:50:35 ID:GEwuz1cj0
>>242続き

 大河は別れ際に自分の中で約束を作った。
竜児のため、そして私のために、また会える日までどんなに辛い日々が続いても笑顔でいようと。

しかしそれも家族のいる前では気丈に振舞えても、一人になると無理だった。
どうしたって想いが溢れてくる。
自分たちの選択は正しかったと思う。この先に希望に満ちた未来があることも分かっている。
でもやはり、やっと思いが通じ合ってすぐ分かたれて、悲しいものは悲しいのだ。



天井の闇に向かって、その先の星空に向かって溢れる想いを乗せる。
行き場の無い悲しみ、早く会いたい気持ち、そして一人でも頑張る決意を。
この想いは竜児に届いているだろうか?

そうしているうちにようやく眠りに落ちる。その浅い眠りの中で見るのはやはり竜児の夢。
大橋に戻り、竜児に再会する夢。

いつも2人で歩いた通学路の先に竜児の背中を見つけ、驚かせてやろうと思って背中に飛びついて抱きしめようとする。
しかしいつも抱きついた途端に腕に感触だけを残して竜児は幻のように消えてしまうのだ。

「竜児!?どこ行ったの?」
辺りを見回してみるとまた道の先に竜児の背中が見える。

「竜児!待ちなさいよ!せっかく戻ってきたのに無視するんじゃないわよ!」
そう叫んでも背を向けたまま歩き続けてまるで振り向いてくれない。

「もうあったまにきたわ!蹴っ飛ばしてやるから覚悟なさい!」
先を行く竜児に手加減した跳び蹴りでもかましてやろうと思い走って追いかける。
しかし今度はどうしたことかどれだけ走ろうとも竜児の背中に追いつけない。

「竜児!ねぇってば!待ちなさいよ!りゅうじぃ!!」
声が枯れるまで叫んでも竜児は振り向いてくれずどんどん先に歩いていって、ついには消えてしまい、
そして夢はいつもそこで終わる。



朝目を覚ますといつも頬は涙が伝い、枕は濡れ、喉もカラカラに渇いている。

「またあの夢・・・。本物の竜児は消えたりしないよね・・・。ずっと待っててくれてるよね・・・。」
そうつぶやいて丸めた毛布を震える腕で強く抱きしめる。

しばらくそうしていた後、
「自分で決めたんだもん、こんなくしゃくしゃの顔をママやあの人に見せるわけにはいかないわ。」

真っ先に洗面所で顔を洗い、先に起きて居間にいるはずの両親のところへ行く。

「おはようママ。」
「おはよう大河。」
「おはよう、大河ちゃん。」

大河は思う。今は無理やりでもいい。でもいつか自然に笑って家族と過ごせるようになれば、その時は堂々と竜児の元へ、
空翔ける竜のところへ飛んでいこうと。虎の背に翼をつければ何も恐れるものなど無い、
竜と並んでどこまでも一緒に飛んでいくのだと。


244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/09(土) 20:14:29 ID:GEwuz1cj0
とりあえず以上です。
ここで終われば原作・アニメ両対応でいけるかな?と思うけど、
自分は終わり方に関しては原作派なんで投下するかどうかは別にして続きは一応書いてます。


参考
歌詞はこちら。見たら分かるとおりちょっといじって肉付けしただけです。
ttp://www7.atwiki.jp/bemanilyrics/pages/497.html
公式ページ
ttp://www.konami.jp/bemani/popn/music18/mc/manyoka/manyoka.html

ちなみに大河の夢は担当キャラの負けアニメを参考にしてます。

この曲はほんとに聞けば聞くほど切ない歌詞と曲調でプレイ中でも涙を誘う名曲です。
個人的にはたかが音ゲーと思わず聞いてみて欲しい一曲ですね。


>>233
いつもGJです。この大河と竜児のニブさも大概ですねw

>>238
>>239
同じく。どうしようもなくニブい竜児のたまに出るクリティカルヒット炸裂って感じですね。



245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/10(日) 01:47:43 ID:SDgUNSBM0
「わあっ!海だー。ねえねえ竜児見てー」
「おおすっげー!波しぶき迫力あるな…ちょっと怖いかも」

ややあって、列車は速度を落としつつ小さな集落に滑り込んでいく。
寂れた無人駅に降りたのは、地元の学生と思しきセーラー服姿の女の子が数人。
そして…竜児と大河。

「本当に田舎よね、ここに何かあるの?」
「んー。特に何もないから、来てみた」
「何よそれ…」

轟音を立てながらのっそり出発する列車を見送ると、あとは静寂だけが残る。
二人の手には、車掌のスタンプが押された切符が握られている。

「ここなら嫌でものんびりできるだろ」
「まあ、ね」

まばらな民家の向こうから、微かに聞こえるのは打ち寄せる波の音。

「そうだ。海、見たいな。良いでしょ?」
「ん、いいよ。行こう」

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/10(日) 16:03:30 ID:YqhZJO880
>>244
GJです!ありそうな補完に胸一杯になった
大河けなげだよ、大河
ちなみに自分も原作派だな。続きも気が向いたら是非投下を。

>>245
なんて可愛い爽やかカップルだ!観察したいw

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/10(日) 23:42:11 ID:CAkI4NJm0
秋の夜長にはもちろん……



わかるだろ?







わかるよな!?

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 02:30:40 ID:rrh9kSShO
>>244
GJ! これは続きが楽しみだ。
何より音ゲネタとか俺得過ぎて困るw
「Ignited Night」的なギシアンネタ書いてください!

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/11(月) 23:54:15 ID:pGAGKdIq0
ttp://skm.vip2ch.com/-/hirame/hirame121580.jpg
あの後もしつこくブチュブチュやっていたと予想

250 :U-ma:2010/10/12(火) 00:31:39 ID:ebyc7hBI0
とらドラアゲインとか、完結してないヤツの続きがきになる…

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 02:40:36 ID:4Ba3+jlm0
俺もだw
まとめサイトで続く!ってなってるのが気になるよな

252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 06:27:30 ID:jBTGoANZ0
他の人で勝手に書いてしまおう

253 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/12(火) 08:38:41 ID:kCZawqO00
お題 「極道」「左目」「逃げる」



「痛っ!」
「大河、どうした?」
「ちょっと、目にゴミが……」
「ああ、こするなこするな。取ってやるからこっちこい。左目だな?」
「んー」
 大河の頬に手を添えて上を向かせ、ガーゼを手にその瞳を覗きこむ竜児。
 と唐突に、大河はふいっと顔を逸らせて。
「……おい」
 竜児がそちらに回り込むと、またもやその顔は反対側に。
「何で逃げるんだよ?」
「いや、その……なんとなく」
「ゴミ取れねえじゃねえか、まったく……」
 竜児が顎のあたりを掴みながら再び覗きこむと、大河は今度はぎゅっと目を閉じて。
「……大河」
「……ああ、あんたが悪い!そんな極道そのものの目で睨みつけてくるから!」
「別に睨んじゃいねえし、俺の目つきに関しちゃ今更だろ。ほら、ちょっとだけ我慢しろって」
「わ、わかったわよ」
 今度こそ……と竜児が顔を近づけたその時、すうっと襖が開いて。
「竜ちゃん、大河ちゃん、おはよ〜……あら?あらら?」
  思わず固まる二人の前で、泰子の表情は寝ぼけ顔からたちまち喜色満面の笑みに。
「二人とも、やっぱりそうだったんだね〜。ごめんね、お邪魔しちゃって〜」
 まあ男女が至近距離で見つめ合っていれば、なにやら誤解されるのも無理はない話で。
「やっちゃんもうちょっと寝てるから〜、ごゆっくりね〜」
「ま……待て待て泰子!これは違うんだ!」
「そうよやっちゃん!竜児とキ、キスなんて!」
「ん〜と、30分ぐらい?一時間のほうがいいかな〜?」
「「話を聞けーっ!」」


254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 10:51:13 ID:EpTMln7vO
ニヤニヤ止まんないですどうしてくれるんですか

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 11:40:29 ID:RFok8Jzf0
初期スレの頃ずっと駐在してたが、仕事が忙しくて離れてたんだが・・・

スレが伸びてて安心した。次の土日はここのSS三昧だな・・・

256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 12:36:15 ID:O1bZaz910
うっかり同人誌を買ってしまった
『TIGER NO PANTS』
『腕の中のタイガー』
ニヤニヤが止まらないどうしよう

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 20:18:10 ID:ebyc7hBI0
みんなモット書き込もうZE☆

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 22:37:16 ID:WD4T4yii0
>>253
高須家ではこんなやりとりを
飽きるほど繰り返していたんだろうなw

>>256
その二冊は自分的に非エロの殿堂入り
描いた人は本当にとらドラ好きなんだろうなって伝わってくる

259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/12(火) 22:47:22 ID:8CINQv6a0
最近初めてアニメ見たけど、ロンバケっぽくて面白いね

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 00:00:25 ID:DvSvlV4u0
>>248
すまん、センスが無いからギシアンは無理だw
ってかまだ2作目で手探りなもんで。

そういや「Ignited Night」ってサントラにも歌詞書いてないんだ。歌詞というより声ネタなのかな?
ギシアンで使えそうな曲ならサイバーデジビートとかかな?ギシアンってよりはガチエロかもしれんけどw


って話逸れたけど
>>243の続きです。

竜虎分少ないので期待はずれかもしれないけど、大河が戻ってくるところまではやりたかったんで。


261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 00:08:11 ID:DvSvlV4u0
話は夜まで遡る。

「そろそろ話してもいいんじゃないか?もうこれ以上は見てられないぞ。」
「そうね、もう話してあげないとね。私だって意地悪で黙ってるんじゃないのよ。」

「毎晩うなされてりゅうじ、りゅうじ、って・・・。ほら、今も。」
「・・・・朝も起きたらなんでもないフリしてるけど私の目はごまかせないわ。あんなに大きなクマ作っちゃって。
声もおかしい時があるし。」

「君の話だと手がつけられないくらい我侭で乱暴だって聞いてたけど、素直でいい子じゃないか。
僕にはまだなじんでくれないみたいだけど。」
「ほんの1週間前まではそうだったんだけどね。何があったんだかあの逃げ出したたった1日で急に成長したみたい。」

「例の『りゅうじ』君か。向こうに行ったら会ってみたいもんだ。」
「高須竜児くん、ね。彼には問い詰めたいことは山ほどあるけど、とりあえず感謝しないといけないみたいね。
私もこれ以上あの子に辛い思いはして欲しくないし、明日病院に行く前に話すわ。」



出産間近なので台所に立てない母親の代わりに朝食を作るのは大河と新しい父親の役目だ。
卵料理さえ満足に作れない大河だったが、パンを焼いてマーガリンを塗るくらいはできる。
本来ならついでに紅茶かコーヒーでも淹れるところだが、
間違って妊婦に濃すぎるのを出したら体に良くないのでそこは父親に任せている。


「あら、大河。今日のは焦がさずに焼けたじゃない。」
「もう、このくらい出来るに決まってるじゃない、子ども扱いしないでよね!」
「まあまあ大河ちゃん、毎日手伝ってくれて助かってるよ。」
「・・・・・どういたしまして。」

慣れては来たものの、やはりまだ新しい父親に対してはぎこちなさは消えない。




262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 00:10:04 ID:DvSvlV4u0
>>261続き

「あのね大河、今日病院に行くんだけど、きっとそのまま入院になると思うの。」
「え、もう産まれるの?」

「そうよ。だからね、その間お父さんと二人なんだから仲良くしててね。」
「う、うん、家族なんだから当たり前じゃない。」


「・・・・そんじゃあね、改めて聞くけど大河はこの子も自分の家族と思ってくれる?」
「・・・・・。」

「・・・・私はママの子。その子もママの子。だから私とその子は兄弟。今はちゃんとそう思えるようになったのよ。
今まで意地張って、その・・・・悪かったわ。」

「そう、ありがとう大河。じゃあこの先私が見られないときは私の代わりにこの子の面倒も見てくれる?お姉ちゃん?」
「もちろん、任せといてよ!ほんとはね、産まれてくるのすっごく楽しみなの。だからちゃっちゃっと産んできてね!」

「もう、あんたはまた無茶なこと言って、そういうところは変わらないのね。
あのね、大河。こんな話するのもね、あなたに話しておかなくちゃならないことがあるからなの。
もっと早く話してあげても良かったんだけど。」

「僕は大河ちゃんがここに来てからすぐ話してやれって言ったんだけどねぇ。」
「この子がちゃんとうちの家族になってくれるまで待ってたのよ。もう安心みたいだけど。」

「もう、一体何なのよ、二人してもったいぶって。」

「ほら、まだあんたが新学期から通う高校の話してなかったわよね?」
「あ〜、そういえばすっかり忘れてたわ。他のことで頭一杯で・・・。」

『他のこと、ねぇ・・・・?』
「もう、なにニヤニヤしてるのよ!」

「ふふふ、ここよ。きっと気に入るわよ。」


そう言って見せられたパンフレットの高校は・・・・


263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 13:41:35 ID:pg81jsFq0
GJ!

これは良い原作補完だ

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 14:03:43 ID:oBWgFoEu0
GJ!(^0^b

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 22:01:16 ID:L+6D0rup0
>>253
乙!
なんかジワジワ効いてきたw
微笑ましい高須家ごちそうさまです。

>>262
乙!
なんてニクイ演出なんだ大河ママw

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 23:11:44 ID:DvSvlV4u0
>>262続き

 母親が入院して何日かたったある日、父親は仕事なので大河は一人で母親の面会に行った。

「具合はどう?もうすぐ?」
「そうね、お腹の中でよく動いてるわ。ちょっと元気すぎるかも。」
「へぇ、ママに似たのかな。困ったもんだわ。」
「何言ってるのよ、あんたも私にそっくりじゃない。」
「ほんとにね。・・・・どうせなら体型も似てくれれば良かったのに・・・・。」

「そんな気にしなくてもそのうち大きくなるわよ。(ペタペタ)」
「さ、触るな!し、身長の話よ!」
「ふぅーん。」


「そういえばあんた、大橋に戻ることはもうお友達には話したの?」
「んー、まだよ。あれだけ大騒ぎしてあちこち世話になって別れてきてからそんなに日も経ってないのになんか気まずくって。」

「まったくだわ、私もこんな体で探し回るの大変だったんだからね。」
「・・・悪かったわよ。でも私の友達のこと悪く思わないでね。
みんな一人だった時支えてくれた大事な友達なの。あれだって私のために・・・。」

「分かってるわ、あんたがこれだけ素直になって帰ってきたんだからよっぽどいいお友達に恵まれたみたいね。」
「うん、またあの場所に戻れるなんて夢みたい!ほんとにありがとうね。」

「そうそう、お友達もだけど、あんたが逃げ出した後の話聞きたい?あの担任の・・・こいなんとか先生・・・」
「恋ヶ窪よ。先生がどうしたの?」

「これ見てみなさい、あんたに見せようと思って持ってきたの」
「何この紙切れ、・・・竜児?」
「裏も見てごらんなさい。」
「え、これって・・・・」


267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 23:14:40 ID:DvSvlV4u0
>>266続き

「そうよ、あんたがもし連絡してこなかったらあの先生今頃路頭に迷ってたわね。」
「ここまでしなくてもよかったじゃない!」

「今はちょっとやりすぎたって思ってるわ。でもあの先生のほうから言い出したのよ、
高須君があんたに連絡させるって約束守れなかったら教師を辞めるってね。
私もこんな性格だしあの場では何も言わなかったけど、あの先生の行動見て
あんたが約束守って戻ってきたら退学取り消すってことはもう決めてたのよ。」

「そんな・・・、私あの先生にはいつも・・・」

「私も今時あんな先生がいるなんて思わなかったわ。教師なんてクラスに問題があっても見ないフリするか、
困った時は自分の保身ばっかり考えるか、そんな人間しかいないと思ってたもの。
でもあの先生は違うわね。本当に生徒のことを思って生徒のために体を張れる人だわ。
また担任になってくれるといいわね。私も安心して娘を任せられるし。」

「うん、私もまたゆりちゃんがいいな・・・。戻ったらすぐ謝りに行かなくちゃ。」

「そうしなさい。それにしても一人で暮らしてる間にずいぶんいい人に出会えたみたいね。
本当は私がもっとそばにいなくちゃいけなかったんだけど・・・・。ほんとにごめんなさいね、大河。」

「もういいわよ、ずっと辛かったけどそれがなかったらみんなとも出会ってなかったし、
今はとっても幸せなんだから。」

「そう言ってくれると助かるわ。そうそう、幸せって言えばあんた、もう夜中に悪い夢は見なくなったの?」

「え、え、え、何で知ってるの?何も言ってないのに。」
「そりゃ分かるわよ、あれだけ毎晩寝言でりゅうじりゅうじってうなされてちゃあねぇ?ちなみにお父さんも知ってるわよ。」

「な、な、な・・・・」

「あらあら、真っ赤になっちゃって。まあそのうち家に連れてきなさい。私も話したいこといっぱいあるし。
他のお友達もね。ええっと、北村君と川嶋さんと櫛枝さんだったかしら。」

「う、うん、みんなママのこと怖がってるかもしれないけどそのうち誘ってみるわ。そうなったら赤ちゃんも紹介しなきゃ。」

「ふふ、それなら私も頑張って産まないとね。それにしてもやっぱり私は敵扱いなのね、まったく困ったもんだわ。」


268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 23:21:43 ID:DvSvlV4u0
>>267続き

4月2日、朝刊の公立高校の人事異動の欄を見て恋ヶ窪ゆりの名前が無いことを確認した大河はさっそく大橋高校に出かけた。


「失礼しまーす。」

どうやら今日は出勤日だったようでタイミングよくお目当ての人はいてくれた。

「あ、逢坂さん!おかえりなさい、元気にしてた?」
「そりゃもう元気よ、また戻ってこられたんだもん!」

「お母さんに感謝するのよ?すぐ次の日に取り消してくれたんだから。」
「うん、それもそうなんだけどそれも全部先生のおかげ。本当にありがとうございました。それと迷惑かけて申し訳ありませんでした。」

「どうしたのよ改まって、私は何もしてないのよ。」
「ううん、ママから聞いたの。私のために仕事やめなきゃいけなかったかもしれなかったって。ほんとにごめんなさい。」

「そんな、私はただ逢坂さんと高須君を信じただけ、教師として生徒を信じるのは当たり前のことなのよ。・・・・・そりゃちょっとは不安だったけど・・・。高須君には黙っててね?恥ずかしいから。」

「ママが言ってたわ。あんな先生は今時珍しいって。」
「それって、褒められてるのかしら?」

「うん、ママも先生には悪いことしたし改めて挨拶に来るって。」
「それはまた緊張しちゃうな・・・・。」



269 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 23:24:20 ID:DvSvlV4u0
>>268続き

「そういえば、もう高須君とか櫛枝さんには会った?」
「ううん、まだ。いきなり会って感動の再会を演出しようと思って。」

「そう、きっとみんなびっくりするわね。私の他にはまだ校長先生と学年主任しか知らないから。」

「新しいクラスまたゆりちゃんが担任だと嬉しいな。」
「ふふ、ありがと。クラスは知らないけどできることなら私も最後まで面倒見てあげたいわね。また大変かもしれないけど。」

「・・・・去年はほんとにいろいろ迷惑かけてごめんなさい。あの時のハガキもずっと何書こうか迷ってるうちに結局出さずじまいになっちゃって・・・。
まだ書くこと決まってないの。ずっと待っててくれる?絶対出すから。」

「うん、いつまででも待ってるわ。卒業して大人になってからでも。でもメール魔にはならないでね・・・。」

「え、何の話?」
「いえいえ、こっちの話よ。」


「それじゃそろそろ帰るね。また新学期に。」
「ええ、またよろしくね。」

「あ、そうそう、もう一つ謝らなきゃいけないこと思い出したわ。」
「ん?何?」

「あのね、私先生の先越しちゃった。ごめんね。」
「え、え?何の話?」

「プロポーズされちゃったの!それじゃあまたね!」


「・・・・え・・・・・?ええええええええええええええ!?」


恋ヶ窪ゆり(30・独身)はこの後1年間これでもかと見せ付けられるバカップルっぷりの恐怖はまだ知らない。

270 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/13(水) 23:29:19 ID:DvSvlV4u0
以上でほんとに終わりです。感想いただいた方ありがとうございました。

竜虎モノってよりはママとゆりちゃんがメインになってしまって若干スレチな気もしなくはなかったですが
アニメの後で原作読んで10巻のゆりちゃんの見せ場がカットされてたことを知ってとても不満だったんですよね。

ってなわけでリスペクトしてみました。もっと上手く書ければいいけどこんなもんが限界です。

271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/14(木) 00:17:36 ID:mDBHKbR90
いい補完だと思います!

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/14(木) 20:44:35 ID:yCdVxeGtO
>>260>>270
いいねー、いいねー! GJです。

Ignited Nightは歌詞は・・・下手するとRyuちゃん考えてないかもw
ギシアンじゃなくても良いんで音ゲネタ期待しております。


273 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/14(木) 20:58:54 ID:2V/tq0ldO

>>230続き


「高っちゃーん!飲んでるー?」
「俺はお前が飲んでることが驚きだけどな」
呆れ顔で、これ見よがしの嫌味をかます竜児に、
「はえ?」
アホはやはりアホのままで。
疲れたように竜児はため息を吐くと、気を取り直したかの如く春田に話し掛けた。
「ゆりちゃんはどうした?」
「あー嫁さん?お産だっつって叩きだされた」
ひでーよな?
そういってケタケタと笑う目の前のアホ毛に、竜児はやはり根気よく答える。
「いやちげーだろ。おん出されたのは病室・・・」
ブブブブ・・・・ブブブブ・・・・
「・・・携帯なってんぞ?」
「あーまたかー」
「また?」
ヒョイッと取り出した春田の携帯を何気なく覗き込む竜児。
そこでビクリと止まる。
「・・・なあ」
「ん?なあに高っちゃん?」
「いや・・・やばくねーか・・・今の?」
「??なんで?」
「いや・・・」
取り出すなり切った携帯をポケットにしまう春田。
しかし竜児は見てしまった。
着信42件。ゆりちゃん。
その表示を・・・。
「さ!飲もうぜ高っちゃん!!」
「・・・ああ」
クイッと盃を傾けながら、
『お前の末期の酒をな・・・』
「ん?なんか言ったー?」
呟きは聞こえることなく宙に消えた。



274 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/14(木) 21:00:13 ID:2V/tq0ldO
>>273


「・・・ばかちー。そろそろ降参しなさいよ・・・」
「・・・っはあ?チビ虎こそそろそろ諦めたら?」
桜の下、カタカタと震えながら二人が不敵に笑いあう。
まわりでは俄然盛り上がり、煽るだけ煽る聴衆の群れ。
「な、なんだこれ?」
そこにやってきた竜児が、何事かと目をぱちくりさせる。
人海の中、件の美少女二人はビールの缶を持ってにらみ合っていた。
周りに転がる数は既に20を越えている。
「お、おいなんだこれ!?」
訳も分からず、すぐ隣にいた奴の肩を揺さぶる竜児。
「えっへー・・・」
しかし揺さぶられた方は心底幸せそうな顔で。
「!?櫛枝!!?」
「えっへー・・・」
「な、なんなんだよこれは!?」
締まり無く緩んだ顔をする実乃梨にとりあえず聞く竜児。
答えを期待した訳じゃなかったが、意外にもそれは返ってきて。
「えへへ・・・大河とあーみんがね?」
「あ、ああ・・・」
「・・・どっちが私を好きかって競いあっちゃって」
「・・・・は?」
ポカンとする竜児の目の前、実乃梨はそれはもう花も恥じらう乙女の如く。
「もー可愛いよねー二人ともっ!!」
頬に当てた手ごと、ブンブンと頭を振ってみせたり。
「・・・あー・・・・なんつーか・・・」
頭を抱えた竜児に、
「竜児!」
「高須君!」
かかるは果たしてなんの声やら。
「「バカルディあるだけ持ってきて!!」」
「・・・ねーよ」
とりあえず搾り出した言葉は、なんというか郷愁に満ちていた。



275 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/14(木) 21:01:59 ID:2V/tq0ldO
>>274

「・・・たくこいつらは・・・」
酔いつぶれた大河を膝に寝かせつつ、竜児は桜の木に背もたれた。
その横ではくすくす笑いを隠さぬまま、実乃梨が同じように腰掛けていた。
無論、膝には同様の想い人を抱えたまま。
「いーやー。しっかし果報者だね私はっ!!」
「あー・・・それに関しちゃ異論はねーよ」
チビリっと手に持った缶を傾けて、小さく竜児が溜め息をついた。
「おんや〜?なにやら含むところがある?」
「うっせー」
ちらりと膝上の大河をみて、もう一度溜め息をつく。
「こいつはほんとにお前が好きなんだなー・・・と、そう思っただけだ」
言葉とは裏腹の仏頂面に、ますます実乃梨の笑みが濃くなる。
「なに?ヤキモチ?」
「おうよ」
及びも隠すことなく答える竜児。
「・・・ったく。お前には一生勝てる気がしねえ」
「にひひ」
「・・・なんだよ?」
「ん?高須君も、素直になったなーって」
「・・・」
いずれ強面と評される顔に朱が差す。
その様子に実乃梨はまた笑みを深める。
「ふふ・・・あの頃こんなだったら、私ら付き合ってたかね?」
「!?お、おまっ・・・そ、それどっからっ!?」
突然の口撃に、ぐりんと竜児の顔が向き直る。
その顔はもはや熟れた林檎よりも赤い。
目の前には悪戯っぽく笑う実乃梨。
「ん?ふふ〜。みーのりんはなんでも知っておるのだよー?」
「っ・・・!・・・はあ。・・・お前・・・楽しんでるだろ?」
脱力したように紡ぎだした言葉に、ますますその笑みは濃くなって。
でも、発する言葉ははぐらかすが如く。
「んー?お花見だからねー?」
「・・・ち。本当にお前には勝てねーよ・・・」
「お褒めに預かり、櫛枝、恐悦至極にございます!!」
ピッ!っと額に手をかざして答えるかつての想い人に、知らず竜児の顔も綻ぶ。
「・・・ま、どうせ一生このままか」
「そうだよ」
ンフッと笑った後、掲げてきたビールの缶に竜児も同じようにあわせる。
カツン。
「いつまでも、な」
「いつまでも、ね」
一瞬の沈黙の後上がった大きな笑い声は、降り続く花びらの中に吸い込まれていった。


も少し続きますw

>>252
やめて下さいw(-人-)

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/14(木) 23:55:31 ID:dvFR1agk0
おつ〜
みのりんがゆるゆるでかあいいw
春田は後でフルボッコだなwww

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/15(金) 00:25:15 ID:O343AxYB0
春田………。

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/15(金) 08:42:16 ID:RWdjG+KH0
GJ!

>「「バカルディあるだけ持ってきて!!」」
どこのロアナプラだw


279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/16(土) 01:23:47 ID:BH/xnbmT0
Tiger Meet Ryuji
OH Tiger! MY Dragon!

君はキレイだから 黙ってればなんも問題ない
だけど口を開きゃ ちょっとばかり機嫌が悪いと 八つ当たり

ヨーグルトはメシじゃない 部屋は清掃してもキリがない
黒焦げの目玉焼き 塩と砂糖を間違えた菓子 俺が処理

乱暴で 萎えちゃう日もあるけど
誰もが気付かぬ 君の心繊細で

OH! Tiger 泣かないでおくれ 僕が君を守るから
今は二人じゃなくても 夜空は同じだから


誰も頼んでない! お節介も甚だ迷惑!
何だかんだ言って 君に支えてもらう毎日 好きになる

友達に 遠慮する恋心
離れて気が付く 私の中の君に

MY Dragon! 何もかも嫌よ! 彼方私に追いつく
好きと言われて固まる 触れ合うキスはBurning Love!

時に呆れもするけど やっぱりその笑顔可愛い
僕の人生をあげる 竜虎はいつもそばに

元ねた:
T.M. Revolution
OH MY GIRL! OH MY GOD!

280 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/16(土) 07:22:50 ID:bLxGeh6L0
お題 「教師」「良い目」「痒くて」



「先生、これ、後ででいいから読んで下さい」
 そんな言葉と共に手渡されたのは、微妙に厚みのある封筒。
「おや恋ヶ窪先生、生徒からラブレターですか? なかなか隅に置けませんなぁ〜」
「そんなのじゃありませんってば」
 恋ヶ窪ゆり、教師生活九年目。そんな良い目(?)にあったことなど無いし、そもそも生徒は恋愛対象ではない。
 それ以前に手紙の主からして『ラブレター』などということはありえない。
 なぜならそれは、あの高須竜児なのだから。



「へっぷし!」
「おうっ!?」
 くしゃみと共に大河の箸からこぼれ落ちた卵焼きを、机に落ちる寸前に竜児の手がキャッチ。
「逢坂、大丈夫か?風邪か?」
 ぐずぐずと鼻を擦る大河を、向かい合わせに座る北村が心配そうに覗きこむ。
「んー……軽いアレルギーだと思う。少しだけど、なんか目のあたりも痒くて……」
「なんだと? おい大河、お前まさかまた部屋散らかしっぱなしにしてるんじゃねえだろうな?」
 卵焼きを大河の弁当箱に戻しながら、元実質的保護者で現婚約者の竜児は渋い顔。
 なにしろ去年の大河は息をするように部屋を散らかし、その度に竜児がせっせと掃除をしなければいけなかったのだから。
「ちゃんと片付けてるわよ。もしサボろうもんならママに『こんなことじゃ竜児君の所にお嫁に行かせるわけにはいかないわね』とか言われちゃうんだから」
「おう……」
 しばらくはサボっていたこととそれを改善するきっかけが自分への想いであったことを同時に告白されて、竜児は何やら微妙な表情に。
「それに、最近出るのは学校でだけなのよ。それも曜日ごと大体決まった時間に」
「そりゃ妙な話だな……大河、アレルギーが出る心当たりというか、なにか共通点はねえか?」
「んー……そうだ、考えたら独身の授業の時か、その後だわ」
「おう……? そういや今日のうちの四時間目も英語だったが……関係あるのか?」
「ふむ……恋ヶ窪先生といえば、この間生徒会の用事で話した時に猫を飼い始めたと聞いたが……」
「「それだ!」」



「しかし、我ながら他人の服についてた抜け毛ぐらいで症状が出るまでひどいとは思わなかったわー」
「ゆりちゃんに渡したメモに対策に有効そうな掃除のテクニックは一通り書いておいたから、これでだいぶ改善されるんじゃねえかな」
「ま、独身がきちんと実行してくれればだけどね」
「本当は俺が自分で乗り込んで掃除してえんだけど……」
「あんな独のために竜児がそこまでしてやる必要無いわよ」
「先生のためじゃねえ、大河のためだ」

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/16(土) 17:13:17 ID:C4qTSkTJ0
>>280
ゆりちゃん、その「拾った猫」って、"all"の綴りがわからない長毛種のオスじゃない?

282 :U-ma:2010/10/17(日) 01:20:41 ID:ku/dQEqF0
インコちゃんの脱羽毛のほうがアレルギーでそうだ

283 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/17(日) 07:38:28 ID:8bRaK3QlO

読んでくれた方ありがとう♪意外に春田人気w

>>278
>「「バカルディあるだけ持ってきて!!」」
どこのロアナプラだw

こーゆーの気付いてもらえると嬉しいねぇw
ツッコミサンクスw

さて感想ばかりじゃあれなんで、ちょい続き書きます(^-^)

284 : ◆6U1bthnhy6 :2010/10/17(日) 07:41:42 ID:8bRaK3QlO
>>275続き

「・・・しかしあれだな」
「ん?」
「変わんねーな・・・どいつも」
少し傾いた日の光。
その中、桜の木に背をあずけたまま、ふぃっと竜児が顎をしゃくる。
つられるように、その先に視線を送る実乃梨。
その顔が・・・みるみる笑顔に彩られる。
「・・・そりゃー、ねぇ」
チビリっと手の中のビールを傾けて、それでも顔は笑顔のままで。
「かわんないさ」
笑顔のままみつめる先。
かつて同じ学生時代を過ごしたその面々。
それらを眺め、実乃梨は知らず言葉を零す。
木原の目の前、必死に土下座して謝る能登。
方や、酔っ払った兄貴・スミレに首根っこ抱えられ息も絶え絶えな北村。
一方では、傅く(かしず・く)男共に冷笑を浮かべながら相対する香椎。
その全てが懐かしく、そして目新しい・・・目新しい?
実乃梨の横、同じように眺めながら、ふと竜児の頭に浮かんだ疑惑。
「・・・なぁ?」
「ん?」
なに?っと、缶を口に咥えたまま、実乃梨がコテンと首を傾げる。
「どしたい?」
「あー・・・な?」
「?」
「・・・香椎ってよ・・・」
「?うん?」
「・・・いつからあんなんなってんだ?」
「うに?」
竜児の示す先。
そこには、跪いた男に腰掛け、たおやかに女王然と振舞う香椎奈々子がいた。
「あー、奈々子様?」
「様っ!?」
ガバッと振り返った竜児。
その顔には違和感がありありと浮び上がっていて。
「さ、様って?」
「うん?知ってるっしょ、この事?」
「い、いや皆目・・・」
困ったように目を逸らす竜児。
その目の前。
キュピーンッ!と悪戯げに目を光らせるのは彼の人。
ご丁寧に、そっと気不味げに目を伏せる演技のオプションつき。
「・・・そっか、うん。なんでも奈々子、高校卒業と同時に・・・ね・・・」
「な、なんだ!?」
「・・・高須君にはちょっと・・・言えない・・・かな?」
「!?だ、だからなんだよ!?い、言えよ!」
わたわたと慌てる竜児。
それをみつめながら溢れ出るため息一つ。
「・・・はぁ。遊ばれてるわねぇ竜児・・・」
その声ははたして聞こえたのか否か。
「教えろよ櫛枝!!」
「私からは・・・」
とりあえず、一部変わったところもあったようだ。

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/18(月) 00:59:07 ID:7DKVojmu0
ちょw
奈々子様に何があったww

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/18(月) 12:32:54 ID:0+NUWGFU0
みなさんおつおつ

そうだった、大河は猫アレルギーなんだよな
絶対絵面かわいいのにMOTTAINAI

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 15:39:02 ID:XzifqivS0
> 大河は猫アレルギー

そうだったっけ?
鎮痛剤アレルギー持ちというのは「不幸の黒猫男伝説」で
判明したけど猫アレルギーの方は思い出せん

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 17:15:35 ID:jt+OE82D0
>>287
>猫アレルギー
スピンオフ3のとらとら!で「本当は飼いたいけど、酷いアレルギーがあるから一生飼えない」って言ってるよ。

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 17:44:19 ID:0nP14qhtO
大河の鼻炎もそうだが
食事と生活環境しっかりすれば
体質改善されそうな気もするけどな

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 18:45:24 ID:IFrr5BnO0
しかしドラマCDだと猫と乱闘してたりするんだよなぁ。

気にしたら負けレベルかもしれんけどオリジナル話は細かい設定がかなり適当なところ多いよね。
竜児が序盤であっさりバイトしてたりとか、(大橋)高校が無意味に私立だったりとか。


まああれだ。
ここの住人が体質改善する作品書けばこのスレの世界では大河は堂々と猫が飼えるようになるぞ。




って言いだしっぺが書くべき・・・・?


291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 18:58:44 ID:XzifqivS0
>>288
サンクス
確認できた

俺にとってスピンオフ3はTHE部長の好き嫌い克服のくだりとか
ニセとら!の印象が強すぎたせいで記憶が飛んだのかもしれん


>>290
5巻の福男レースではみのりんは竜児よりスタミナないようなこと
書いてあったのに虎、肥ゆる秋ではチート級だったとかな

あくまで本編は本編、スピンオフはスピンオフということだろう

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 19:03:52 ID:IFrr5BnO0
そういやそんなこともあったな。確か甲羅干しの人が埋めネタで指摘してたっけ。
まあやっぱり気にしたら負けか。

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/19(火) 19:12:49 ID:jgm5kpxx0
>>290
とらドラにアニメ3話なんてなかった
ってことに自分の中ではなってる
物語の根本否定やらキャラ改悪やらでまじ最悪だった…

猫ネタはいつでもお待ちしてますw

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 01:24:49 ID:fFZ7v8cz0
>>290だけどネコ書けた!
そのうち書こうと思ってた20年後シリーズを見切り発車でからめてみた。
全然校正してないしやっつけ気味だけど言いだしっぺなんで投下してみる。

娘の名前はお借りしました。




「ねえ、お父さん、お母さん。ちょっとお願いがあるんだけど・・・・。」
「おう、なんだ?」

「ええっとね、うちにはペットいないじゃない?だからその・・・何か飼いたいなと思って。」

ちなみにインコちゃんは18年前竜児と大河が2人で暮らすようになった時に泰子が実家に連れて行って、
その後有り得ないくらい長生きしたものの10数年前に他界した。今は3代目インコちゃんを飼っているとのこと。

「ふーん、ペットねぇ。実はお母さんも昔から飼いたいなと思ってる動物はあるんだけど・・・、竜河は何がいいの?」
「ネコ飼いたいの!友達に写真見せてもらったらこれがもうどうしようもないくらいかわいくって。私もモフモフしたい!」
「あら奇遇ね、お母さんもネコ飼いたかったのよ。」
「ならちょうどよかったじゃない、ねえお父さん、その友達が子猫の引き取り手探してるんだって。貰ってもいいでしょ?ちゃんと世話するからさぁ。」

「そうだなぁ、2人とも飼いたいって言うんだったら別に構わんぞ。でも何か引っかかるんだが・・・。」
「あら竜児、忘れちゃったの?高校生の時言わなかったっけ?猫アレルギーだから飼えないって。」
「え、そうだったの!?」
「えーっと・・・・ああ!思い出した!あの川嶋達にぬいぐるみ貰った時に確か言ってたな。」

あのぬいぐるみに関しては竜児にも特別な思い出があるので忘れてはいないのだが。

「そっかぁ、ならダメだね。あきらめるしかないか・・・。」
「ごめんね、竜河。代わりって言っちゃなんだけどいいものあげるわ。ちょっと待ってなさい。」

そう言って大河は何やら物置に取りに行った。

「すまんな、俺も飼ってやりたいんだがな。犬とかじゃダメなのか?」
「うーん、私犬はあんまり好きじゃないのよねー。」
「そ、そうか・・・・。」

そう言う娘の姿を見て竜児はかつて駄犬呼ばわりされてた自分のことやバカチワワ呼ばわりされていた(現在もだが)川嶋亜美のことを思い出した。
大河ははっきりとは言ったことはないがどうも犬は嫌いらしい。やはり母と娘は似るもんだとしみじみ思った竜児であった。


295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 01:28:59 ID:fFZ7v8cz0
>>294続き

「でも意外だったわ。お母さんがくしゃみしたり鼻詰まらせたりしてるの見たことないからアレルギーなんて思いもしなかった。」
「あれ、竜河は知らないのか?お母さんはものすごいアレルギー性鼻炎持ちだぞ?」
「そうなの?私ホントに全然見たこと無いよ?」

そんな会話をしてると大河が戻ってきた。

「お待たせ、はいこれ。ちょっとほこりっぽいけど洗ったら大丈夫でしょ。」

そう言ってテーブルに置かれたのはちょっと埃で黒ずんだ「手乗りタイガー」のぬいぐるみである。

「何これ、ぬいぐるみ?」
「おう、お前まだこれ持ってたのか。懐かしいな。」
「うん、お気に入りだったし、一応ばかちー達に貰った大事な思い出の品だもんね。」

「もしかしてさっきチラっとお父さんが言ってた川嶋おばさんに貰ったとかっていうぬいぐるみ?トラかしら。」
「そうよー、抱き心地がすっごく気持ちいいの!ネコ飼いたかったけどこれ抱いて我慢してたのよ。これ竜河にあげるわ。ねぇ竜児、今度洗濯してフワフワにしといてね。」
「え、思い出の品なのに貰っていいの?」
「いいわよ。私のせいで飼ってあげられないんだから。」
「ありがと、大事にするね。」

「なあ大河、洗濯するのはいいんだが、お前こんな埃っぽい物が置いてあるような物置で探し物なんかして大丈夫だったのか?」
「大丈夫って何がよ?」
「鼻炎だよ。アレルギー性の」
「あら、そういえばなんともないわね。っていうか・・・・そういえば長いこと発症してないような?いつからだろ。」

「そういや竜河もさっき言ってたな。言われてみれば俺もお前と2人で暮らし始めてからは見てない気がするぞ。」
「うん、お母さんが鼻炎持ちなんて全然知らなかったもん。」
「ってことはやっぱり竜児のおかげなのかな?」
「ああいうのって結構環境や食事で改善されるって話も聞くしな。俺はいつも家の中はきれいにしてたし料理も栄養バランス考えて作ってたから。
お前たちが飯作る時も俺が教えた料理だから俺が作ってるのと大差ないし。」

「ねえお母さん、もしかして猫アレルギーも治ってるんじゃない?」
「おう、そうかもしれないな。今度病院で検査してもらったらどうだ?」
「・・・・ねぇ竜児、もしなんともなかったら私もネコ飼いたい!いいでしょ!?」

「おう、もちろんいいぞ。」
「やった!ありがとうお父さん!」「ありがと竜児!」
「お前ら気が早いな、検査して何も無かったら、だぞ。」


296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 01:36:01 ID:fFZ7v8cz0
>>295続き

「きっと大丈夫よ。そういえばお父さんはペットいなくて寂しいと思ったことは無いの?昔はインコ飼ってたんでしょ?」

「そうだなぁ、最初はインコちゃんがいない生活は違和感はあったが・・・、
うちには20年前から世話の焼けるトラがいたから寂しいと思ったことはないぞ。」
「世話が焼けるとは何よ!私だって寂しがりの爬虫類の面倒見てたからネコ飼えなくても別に寂しくなんかなかったわよ!」

「爬虫類って言うな!お前こそ寂しがりじゃねえか。毎日仕事中に何回メールしてくるんだよ、まったく。」
「何よ、嬉しいくせに!」

「もう、喧嘩しないでよ!」

まったく何年経っても困った新婚夫婦だと思う竜河であった。


後日検査に行った大河だったが、結果は見事に陰性で長年の夢であったネコを飼うことができるようになったのである。
さっそく家族揃って竜河の友人の家に伺うことになったのだが、その向かう途中ネコを飼うことを快諾したはずの
竜児の様子がどうもおかしい。なにやら渋っているようでもある。

「どうしたのよ竜児、さっきから微妙な顔して。せっかくアレルギー治ったのに喜んでくれないの?」
「い、いや、そんなことはないぞ。もちろん嬉しいさ。」

「やっぱり何かおかしいわね・・・。もしかしてネコ嫌いなの?」
「いや、そういうわけじゃなくてだな・・・・」

「・・・・あ、お母さん、分かった!(ヒソヒソ)」
「・・・あ、なるほど!」

何やら耳打ちされた大河の口が意地の悪そうな笑みを浮かべる。

「ふふーん、あんた、ネコにヤキモチ妬いてるのね。」
「な、な、な何言ってるんだ、そんなことあるわけないだろ!」
「あらあら図星かしら。ネコ飼ったら私がそっちばっかり構ってあんたのことほったらかすとか思ってたんでしょ。」
「ぐ・・・・」

「バカねぇ、そんなことあるわけないじゃない。ネコはネコ、あんたはあんたよ。なんならあんたもモフモフしてあげてもいいわよ?」
「モフモフってなんだよ?俺はその・・・、ネコ構いながらでもいつもどおり
背中にもたれかかってきたりひざの上に乗ってくれたりしてくれればそれで・・・。」

「あったりまえじゃない。そうしないと私が落ち着かないもの。」


「はいはい!そこまで!まったくもう。これ以上2人とも往来の真ん中で恥ずかしい会話繰り広げるのやめてくれる?」


その日から夕食後の高須家では竜児のひざの上に大河、大河のひざの上にはネコという構図が基本スタイルになった。
その両親の様子を見て平和な家庭の幸せを噛みしめると同時に、
自分にはなかなかネコを譲ってくれない母親に若干の不満を覚える竜河であった。

おしまい。


こんなんですいません。できれば他の方の猫ネタも読んでみたいです。

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 01:45:28 ID:fFZ7v8cz0
一つ言い忘れ。猫アレルギーが治る件については医学的根拠なんかは全く気にしないで書いたので
あんまり気にしないでもらえると助かります。

自分の経験だと、アレルギーじゃなくてアトピー持ちなんだけど部屋の衛生状態や気候の変化によっては
根本的には治らないけどかなり症状は改善されるかな。

うちの親も猫アレルギーなんて言いつつ仰々しい防護マスクつけてネコいじくってたりしてたけど
最近何もつけなくても大丈夫みたいだし治るか症状緩和する方法は何かあるんだと思われる。


298 : ◆Eby4Hm2ero :2010/10/20(水) 10:45:51 ID:lTquPO/w0
>>297
GJ!
微笑ましい家族の状景、いいですねえ。
あと、
>まったく何年経っても困った新婚夫婦だと思う竜河であった。
ここが個人的な萌えポイントw

大河と猫の組み合わせはいいですよねー。三題噺でも(アレルギー知る前に)一度書いてたり。

299 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/20(水) 10:47:14 ID:lTquPO/w0
お題 「喜べ」「相談」「キッチン」



「おう……」
 ぺらりとページをめくる度に現れる機能的で清潔なキッチンに、竜児は思わず溜息を漏らす。
 と、それを聞き逃さない地獄耳が約一名。
「ちょっと竜児、あんた何こんな所でエロ本見てハァハァしてるのよ。そーゆーのは私が帰ってから自分の部屋でやりなさいよねこの変態ドエロ犬」
「お前なあ、妙な濡れ衣を着せるんじゃねえよ。俺が読んでるのはインテリア雑誌だ」
 言って竜児は開いたページを大河の鼻先に突き付けるが、
「キッチン特集ねぇ……まさかあんたが台所に興奮する異常性欲の持ち主だとは思わなかったわー。
 医者か警察に相談したほうがいいかしら? まさか私が見てない時にうちのキッチンで腰振ったりしてないでしょうね?」
「何でそうなる!?」
「だって、こんなの見て何が楽しいのよ?」
「料理人にとって台所は戦場であると同時に自分の城だ。今ある物を十分に活用するのは当然だが、将来の為に理想を追求して何が悪い」
「……よくわかんない」
「大河だってファッション雑誌見て楽しんでるだろ? それと同じだ」
「だって、おしゃれはぱっと見て可愛いとかわかるじゃない。でも台所とか、こんなのどこがどう違うのよ?」
「例えばだな、このカウンターキッチンは冷蔵庫や収納の配置が動線も考えられた作りになってるだろ。ある程度のカスタマイズも出来るから使い易さとしては完璧だ」
「……はー……」
「料理しながらリビングと話がし易いのもいいよな。やっぱり食ってくれる人とのコミュニケーションってのは大事だし、急なリクエストにも対応できるし。実際に使ってる所を想像してみろ」
「想像っていうか、妄想よね」
「うるせえ、イメージってのは大切なんだよ。自前でこのキッチンを揃えられる頃は当然もう社会人でだな……」


『ふん、ふん♪』
『何よ竜児、ずいぶんご機嫌じゃない』
『おう大河、今日は何の日だかわかるか?』
『今日?……誕生日でもないし、記念日でもないし……』
『答えはだな、ボーナスの支給日だ。というわけで喜べ大河。本日の夕食は奮発して国産和牛のすき焼き・肉多め!』
『やった!牛どーん!』
『おう、どーん!』


「……あれ?」
「ちょっと竜児、どうしたのよ? いきなり固まったりして」
「いや、その……何でもねえ」

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 12:36:22 ID:5cOqFVys0
竜児の股間が固まった!?

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 16:54:45 ID:/bqA0QxA0
>>297
GJ!てか、はや!
平和な日常にほのぼの
ばかちーたちの贈り物を大事にとってある大河カワユス!
猫アレルギー、治るといいよな〜
竜児は独占欲強いよね。モフモフしてもらえばいいよw

>>299
GJ!
将来現実になるわけですねw
ほんとこの二人はお互いが傍にいて当然と無意識に思ってる感じだ
自覚後との対比とか考えるとたまらんな

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/20(水) 23:35:53 ID:Innj322MO
「竜児、寒い」
「そうか?」
「あんたは冬用の毛に生え変わるからいいけど、私は人間なの」
「……おう、ひどい言いようだな」
「だからその高い体温を私に分けるべきなわけ」
「体温ってどうやって分けるんだよ」
「……鈍犬。早く抱きしめろ!」
「おう、最初からそう言えよ」
「うっさい」


みたいなねー。
最近寒いですよねー。

書き手の皆さん乙です。
感想は別の機会にゆったりと書かせていただきます。

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/21(木) 01:09:35 ID:aRisKTjF0
>>297GJ
竜児は動物好きだし、
環境が許せばいろんな生き物飼いそうだな
>>299GJ
家事萌え(?)ってあるのかねw
未来図に普通に大河がいるのが2828
>>302GJ
体が小さいと体温調節とか苦手かもしれない

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/21(木) 15:51:40 ID:C09u64X00
>>245の続き

のどかな休日の昼下がり、田舎独特のしんと静まり返った細い道。
海沿いの国道に出ると、眼前に広がるのは小さな浜辺と青い海。

「人…見かけないよね」
「住んではいると思うけど、少ないんじゃないかな」

さして広くない国道を渡り、海沿いにとりあえず歩いてみる二人。
都会とはまるで違う、ゆったりとした時の流れにぼうっとしてしまう。

「ねえ、駅の時刻表ちゃんと見た?」
「あー。見てないけど…1時間は無いんじゃね?次の列車まで」
「ほんと適当よね。まあそんな感じだろうけど」

それにしても、潮の香りと山の緑の匂いがこんなにも濃いとは。
響き渡る波の音もそうだ。体全体に何かがぶつかる感じがして…

「うん?どうした大河」
「えへへー。少しおねむ…んにゃぅにゃ…」

ふいに、遠くから何かの音が聞こえたと思い振り返ってみると、
甲高い音を上げて特急列車が集落を駆け抜けていく。

「もう少し…のんびりしていきますか」

305 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/22(金) 08:47:04 ID:otOfipuT0

>>304
なんか、いいね。
短い文章なのに、情景が思い浮かんで、広がる…
前回同様、1レスだけ、雑誌かなにかの不定期連載みたいで、GJっす

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/22(金) 20:04:57 ID:36Q76YSH0
激しく同意

このあと二人で無人駅のホームのベンチに座って、大河が竜児のひざ枕で寝てる姿が想像できる

竜虎やっぱいいな

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/22(金) 21:25:56 ID:otOfipuT0
>>306
なに? その萌えるシチュ!
そういえば、昔、pixivに無人駅みたいなところでほほ染めながら寄り添うモノクロの画があったなぁ・・・
2828したよ。

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/22(金) 22:17:29 ID:YoL4cEZ70
>>304
映画のワンシーンみたいだ。GJ!

>>307
そのイラスト、速攻で浮かんだw同じくニヤニヤ
竜虎って賑やかなカップルってイメージだけど、たまには穏やかに寄り添うのもいいなぁ

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/22(金) 23:33:48 ID:H5E56YKq0
199,245,304です。
予想外にレスを頂きましてありがとうございます。
虎竜はゆるい日常とバカップルが似合います。

やはり気動車は鈍重な加速とアイドリングのカラカラ音…
スレ違いにつき自重。

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/23(土) 21:29:39 ID:NfnaXHCK0
>>290だけどみなさん感想くれてありがとう。まだ3つ目のSSで投下するの怖いけど
感想もらえると次も書いてみようかなって思う力になる。

>>299
読んだほうも竜児の妄想が自然すぎて何がおかしいのか1回目で気付かなかったw

>>302
素直じゃない大河かわいいです。

>>304
ゆったりな風景いいね。竜虎はどんなシチュでも似合いそう。


ところで自分で書いて思ったけど40前の大河の外見ってどうなんだろう?
公式絵だと27歳ニートタイガーは全然見た目変わってなかったけどw


311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/23(土) 23:57:42 ID:fu2uJCIN0
>>310
インコちゃん以外みんな変わってなかったなw

大河は背丈に反して大人っぽい容貌だから、
年取ったら逆に幼く見えそうな気がする
竜児は…貫禄すごそうw

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/24(日) 01:23:11 ID:n0uzO7KE0
ほとんど見た目変わらないけど
曲がり角を過ぎたお肌と毎日戦っています。

ってイメージだなぁ。

ばかちーお勧めの保湿パックで今日もお手入れよっ!みたいなw

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/24(日) 02:13:09 ID:A/d/DSKm0
ドラゴン食堂ははっきり27歳って書いてあるけど、アニメ絵ならポータブルの大河100点EDも年齢的にそんなもんだよね。
あれもくぎゅのちょっと大人っぽい落ち着いた演技は上手かったけど外見は全く変わってなかったなw

40歳竜児は例の父親みたいになってそうで怖いw

川嶋お勧めグッズ使ったら同じの使ってるはずなのに大河だけいつまでもツヤツヤで妬まれる展開だね。

314 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/24(日) 06:29:52 ID:Usz1PRa10
お題 「嬉しかった」「この間」「目指す」



「……ごちそうさま」
「……おう」
「……何よ竜児」
「何よって、何がだ?」
「何をそんなに睨み付けてるのかってことよ」
「別に睨んでるわけじゃねえ……というかだな、どうしたのか聞きたいのはこっちの方だ」
「はぁ?」
「お前、この間から飯の後必ず妙な表情してるじゃねえか」
「あんた自分は悪鬼羅刹みたいなくせに、よく人の顔に文句つけられるもんね」
「顔の作りの話じゃねえよ。なんというか、困ってるような考えこんでるような……」
「別に、そんなこと……」
「あるから言ってるんだ」
「…………」
「なあ大河、もし俺の飯が不味かったり気に入らなかったりするなら言ってくれよ。出来るだけ直すからさ」
「そんなことない!竜児のご飯が美味しくないなんてあるわけないじゃない!」
「おう……じゃあ、なんであんな顔するんだ?」
「そ、それは、その……美味しすぎるから」
「は?」
「竜児のご飯を、ただ美味しいって言うだけじゃなんか足りない気がして……ほら、まったりとかもったりとか、宝箱や〜とか、なんとか。
 だけど実際食べてて、それを具体的にどう表現すればいいか、いくら考えてもうまく思いつかなくて……」
「大河……お前はどこのグルメレポーターを目指すつもりだ。素直に出てきた言葉ならともかく、そんな無理に捻り出した表現で褒められても嬉しくねえぞ」
「だけど……」
「そりゃ隠し味とかの小技に気づいて貰えれば嬉しいし細かい味の感想貰えりゃ有難いけどな、
 それ以前に料理する人間にとっては、心からの『美味い』って一言が一番で、十分なんだよ」
「……本当に?」
「おう、当人が言うんだから間違いねえ」
「そ、それじゃ、その……今日も、美味しかった。昨日も、その前も、ずっと」
「おう、ありがとな」
「……あ、そうか、そうなんだ」
「ん?どうした?」
「今わかっちゃった。竜児のご飯って、美味しいだけじゃなくて嬉しいんだわ」
「え?それは、美味いのが嬉しいってことじゃ……」
「違うわよ!もっとこう、精神的なというかなんというか……そのぐらいわかりなさいこの鈍犬!」
「お、おう、すまねえ」
「だからね、竜児……今日も『嬉しかった』。昨日も、その前も、ずっと。一番嬉しかったのはやっぱり……あの日の、最初のチャーハンかしらね」
「……おう」
「何よ、赤くなっちゃって」
「いや、だって、そんなことを急に真正面から言われたら……その、照れるっつうか」
「ふ〜ん……」
「な、何だよ」
「竜児ってば言葉攻めに弱かったのね〜。憶えておこうっと」
「おいっ!?」

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/24(日) 13:05:53 ID:A/d/DSKm0
>>314
GJ!
読んでるほうも「ごちそうさま」でした。
やっぱり元をたどれば自覚の有無は別としてチャーハンの時からもう大河はメロメロだったよね。

グルメレポーターな大河もそれはそれで見てみたい気もする。
寺沢大介的なのとかw

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/25(月) 00:22:21 ID:/7bSw7GF0
>>314
GJ
幸せそうに食ってるのを傍で見てるのがなにより楽しいだろうな

>>310
個人的な願望だけど、
ニーソにかわって黒タイツ、もしくは黒ストをはいていてほしい

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/25(月) 23:57:12 ID:ub5WSOFT0
>>314
いつも乙です
なんとか気持ちを伝えようと言葉探す大河がかわいい
大河の変調を見逃さない竜児がいい
>言葉攻め
あの夜のスキスキ光線全開な大河、照れまくり動揺しまくりな竜児を思い出したw

318 : ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:09:22 ID:PcJde9yz0

とらドラ!, again の最終回を投下します。
前回は、超展開で大変失礼しました。
コメ下さった方、続きが気になるとおっしゃってくださった方、有難うございます。

では、いよいよラストです。

>>33
の続きとなります。
また長くてすいませんが、13レス投下します。


319 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:10:39 ID:PcJde9yz0

2月中旬 金曜日 19:00
大河が大橋に帰ってきた!

その日、大河の帰還を祝う会で、弁財天国は店始まって以来の賑わいを見せていた。

いつものメンバーと元2-Cクラスメートの一部を中心に、竜児の祖父母、清児と園子に、富家幸太や
狩野さくらとその両親(つまりスーパーかのう屋店主)、泰子の帰路を守り続けた稲毛商店の主人を
はじめとする「魅羅乃ちゃん親衛隊」や、かつて共にバーベキューを楽しんだ毘沙門天国の面々まで、
大橋で竜児と大河に関わってきた、そうそうたる顔ぶれが集まり、店内は熱気に満ち溢れていた。

亜美の家の別荘を離れた後、大河達3人はまっすぐに自宅に向かった。仕事を放り出して伊豆の別荘
まで迎えに来る、という大河の父親をなんとか押し止め、東京の空港ロビーで感激の対面。最初は
おずおずと、やがてしっかりと父親に歩み寄り、ギュッと抱きついた恵児と、我が子を腕の中に抱き
締める父親の姿に、その場に居合わせた全員が涙を抑えられなかった。

金融屋との交渉はようやく進展を見せ始め、報奨金のことは当然隠しつつ、駆け引きが続いている。
今のところ、妥当な返済額を差し引いても、これまで大河の母親が金融屋に払った額以上の報奨金が
手元に残りそうだった。勿論、陸郎を自分達の手で捕まえる、という大河母娘の意思は、数々の懸案
が無くなった今でも変わっていない。

警察からの来訪や呼び出しは未だになく、大河の母親と大河自身が電話で何回か質問された程度で、
「いずれ、そのうち」
と半ば放置された恰好になっている。身の危険を感じるような出来事は何も起こらず、白虎会が手を
引いたことは、竜児の自宅に仕掛けられていた盗聴器が別荘から戻った時には、既に回収されていた
ことからも伺えた。(再度の不法侵入に竜児が激怒して、皆になだめられたことは言うまでもない)

こうして、折り重なるように積み上げられた、大河とその家族、竜児を覆っていた重しが、一つずつ、
消えてなくなり、完全に、とはいかないが、自由が、日常が戻ってきたのである。
1つ残念なことが起こったのは、能登による大河への独占インタビュー記事が、警察からの警告により、
中止になってしまったことだった。もっとも、悔しがったのは能登やデスク、編集部の人間だけで、
無用な刺激を避けたかった竜児や大河をはじめとする、他の仲間達はむしろ安堵したものだった。

休学扱いだった大河の大学への復学が認められると同時に、高校卒業当初に入学するはずだった東京の
私立大への編入も決まった。今日はその手続きのために、単身上京してきた大河にあわせて、お祝いの
会が開かれたのだった。

大河の両親と弟の恵児は、自宅がある九州から出掛けるには大橋は遠方であり、恵児が新しい幼稚園と
数年ぶりに帰ってきた街に早く馴染んで落ち着くために、今回の集まりには参加していない。大河は
「みなさんにきちんとお礼を言ってきなさい!」
と母親に気合いを入れられて、快く送り出されてきたのだった。

祐作とすみれの北村夫妻もお腹の子の様子を見ながら、残り少なくなったアメリカ滞在の総仕上げに、
忙しい日々を送っているようだった。



320 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:12:42 ID:PcJde9yz0

* * * * *

「さあっ、お集まりの皆様、グラスを持って、真ん中にお集まりくださいよー はい、ぎゅぎゅっとー」
いつの間にか、場を取り仕切っている実乃梨が店の中心で声を張り上げ、皆に乾杯の準備を促している。

久しぶりの再会を祝って、あちこちにできていた小さな輪が大きな輪に変わり、真ん中にいる大河と竜児、
実乃梨を二重三重と囲みはじめていく。

「では、誠に僭越ながら、この不肖、櫛枝実乃梨めが乾杯の音頭を取らせて頂きます!」
実乃梨が高らかに宣言すると、周囲の仲間や既に酒が入っているオッサン達などから、
「おぉー!」「よっ、ジャパン不動の一番打者!」「いいぞー、女イチロー」
などと歓声があがる。

「え、では…」
コホンとわざとらしく咳払いをすると、実乃梨は、正面に立つ大河の目を真っ直ぐ見つめながら、フレッ
シュジュースが注がれたグラスを掲げ、皆の予想に反して、静かな口調で語り始めた。

「ホント言うとさ、大河にはもう会えないんじゃないかって、何度も思ってた…」
シン…と店の中が静まり返る。
「でも、こうして大河は帰ってきてくた。この大橋に、私達のところに。うん、帰ってきたんだ、本当に…」
実乃梨は、大河と竜児の斜め後方に立つ、亜美と視線が合うと笑顔になり、軽く頷いた。

「それはここにいる全員のおかげだと思う。だから、今日は力をくれたみんなと、その健闘を讃え合いたい。
じゃーいくよー、せーのっ!」

「「「「「「おかえりっ! 大河っ!!!!」」」」」」

弁財天国が弾けた!
あちこちでグラスとグラスがぶつかる音が響き、歓声があがる。
大河と竜児は周囲の人間から、何度も何度も乾杯を求められもみくちゃになっている。
実乃梨は、そんな2人の肩に後ろから両手を掛けると、再び大声を張り上げた。

「どうどうどうどう、皆の衆、お祝いはこれだけじゃ終わらんのだよ!」
祝宴の始まりをあえて制するように、実乃梨の声が店の中に響いた。

「えー、大河と高須君の結婚が決まりましたっ! 結婚式は今年の春に行われます!」

えええーっ?という驚きの声と、やっぱり、やっとか、すげー、という同意と賛同の声、どちらかと
いうと後者の方が多いだろうか、インパクトには欠けても、宴に華を添える最高の肴を見つけたという
雰囲気でざわめきのトーンが一段と大きくなる。

「ここにいる全員は難しいと思うけど、招待状が来た人は、是非お祝いに駆けつけてくれたまえ。
ということで、さぁ、もう一回行くよ、せーのっ!」

「「「「カンパーイ!」」」
「「「「結婚、おめでとう!」」」

弁財天国が再び揺れる。
大河と竜児は歓声の真ん中で、ひたすら顔を真っ赤にしてモジモジとしている。
自分達で決めたこととはいえ、こうして大勢の人間から祝福されることに、2人は全く慣れていない。
乾杯の後は、あっちのテーブル、こっちのテーブルと呼ばれては酒を注がれ(大河が何杯も飲もうとして、
竜児に止められること数回)、武勇伝を聞かせてくれとせがまれるなど、一向に解放される様子はない。


321 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:16:09 ID:PcJde9yz0

一方、店の別の一角では、妙な盛り上がりを見せるテーブルがあり…

「川嶋さんがテレビに出るって言うでしょう? 家でしっかり待機して見てたら、急に逢坂さんが出て
きて、大絶叫するじゃない。あなた達の担任だった頃を久し振りに思い出して、心臓止まるかと思った
わよ! あー、もうこれ以上、シワ増やさないでくれます?」
「ゆりちゃんてば、全然大丈夫だって! 今でも(実年齢よりは)すっごく若いって」

独神こと恋ヶ窪ゆり(旧姓か現姓かは本人の名誉のためにここでは触れないでおく)とも久し振りに顔を
合わせ、亜美を中心に盛り上がる元2-C女子達の面々を遠目に見ながら、店の隅では春田と能登が
のんびりと酒を汲み交わしていた。クマの着ぐるみを探してくれた春田の彼女、瀬奈は個展の準備が忙しく、
残念ながら今日は参加できていない。

「で、結局、タイガーのとーちゃんはまだ見つかってないんだっけ?」
「ああ、金融屋と交渉が進んで、彼らも知ってる限りの情報は出して来たんだが、どれも居所を見つける
手掛かりにはならなかったみたいだな」
「じゃあ、またなんか仕掛けてくるとか? こんな風に浮かれてる場合じゃないんでねーの?」
「いや、それは無いだろう。おっさんのカードは全てつぶれたわけだし、下手に姿を見せて、警察か白虎
会に見つかるより、逃げまわるに決まってる。ま、いつか逃亡資金が尽きて、自首せざるを得ないかもな。
ヤクザに捕まるよりマシだろうし…」
「なるほどー、じゃあ、タイガーのとーちゃんも、いつか警察が捕まえてくれるってわけだ…」

「ハイ、ビールおかわり、どーぞ!」
2人の所にちょうどやってきたのは、店長として、またお嫁さんとなる大河の義母として、危なっかしくも
はりきって今日の会を切り盛りしている泰子だった。1時間前には再会した大河の顔をその巨乳に埋めて、
窒息死させそうになる程、強く抱き締めた後、2人して延々10分ほど、泣き続けていたのだが。

「ね、今、大河ちゃんのお父さんって聞こえたけど… 警察に捕まるって? 何か悪いことでもしたの?」

馴れた手つきで2人のグラスにビールを注ぐ泰子を見ながら、春田は慌てて手を振った。
「あ、とーちゃんって言うのはさ、タイガーの今のじゃなくて、前のお父さんのことで…」
「前の、って高校の時に、大河ちゃんのマンションを引き払いに来た?」
泰子の顔がほんの少し曇る。高校2年の文化祭の前、ベランダ越しの会話で感じた悪い印象を今でも覚えて
いるのだ。

(そんなことあったっけ…?)
能登と春田はひそひそと話し合い、でも”大河の父親”と呼ばれる人物は2人しかいないことを確認し合う。

「そそ、たぶん、そのお父さんじゃないかな…」
「大河ちゃんがいなくなってたことに、かんけーあるの? なんか、おウチの事情って聞いてたけど…」

再び声を潜めて、能登が春田に話しかける。
「そういえば、高須は詳しい話はしてないって言ってたっけ…? いずれ、落ち着いてからって…」
「でもさ、もういいんじゃね? 大方解決したんだしさ。ねぇねぇ、高っちゃんのかあちゃん、聞いてよ、
俺、すっげー活躍したんだから…」
「春田だけじゃないだろ、みんなでやったんだから… あのさ…」

大河が大橋に帰ってきて、結婚も発表された。その達成感と開放感に浸りきっていた2人は、喜び勇んで
これまでの顛末を泰子に語り聞かせ始めた。
そのことを竜児が知ったのは、少し後になってからだった。

* * * * *

次の日の朝、今度は泰子がいなくなっていた。

といっても、
“大河ちゃんが帰ってきてくれて、ホッとしたので、ちょっと一人旅がしたくなりました”
という意味不明の書き置きが残してあり、竜児がケータイにかければ、大体、ちゃんと繋がった。

1週間後、泰子はいつもと変わらない様子で「温泉三昧で、命の洗濯ができたよー」と元気に帰ってきた。

322 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:18:01 ID:PcJde9yz0

* * * * *

6月中旬。土曜日 6:00
竜児はホテルの部屋の窓辺に立つと、カーテンをそっと引いて、窓の外の風景に視線を走らせた。

眼下には深い森。そして雨。一面に広がる灰色の雲から降り注ぐ雨が、新緑の柔らかい葉や窓を叩き、
優しい雨音を奏でている。窓の向こう側から聞こえてくるその規則的なリズムは、やるべきことが何も
無ければ、もう一度ベッドに潜り込みたい誘惑にかられる心地良さを醸し出していた。

弁財天国でのお祝いから4ヵ月あまり。竜児と大河は結婚式の当日を迎えていた。
場所は都心から車で3時間程離れた、高原にあるリゾートホテル。挙式はホテルから少し離れた森の中の
由緒ある大きな教会で行われる。竜児と大河、その家族と親族、招待客の一部は昼過ぎからの結婚式に
備えて、昨夜からこのホテルに泊まっていた。

背後で人の動く気配がしたかと思うと、微かな足音と共に、自分の隣にやってくるのを感じた。
「わりぃな、起こしたか…」
「んーん… 勝手に目が覚めただけだから…」

数年続いた大河の早起きの習慣は、東京で一人暮らしを始めてもまだ抜けていないようだった。
東京の大学編入に合わせて、大河は大橋にマンションの一室を借りた。一人暮らしとはいっても、東京の
部署に正式配属になった竜児の自宅からは目と鼻の先にあり、大河がご飯を食べにくるのには楽勝の距離。
そして、この家は2人の新居にもなり、結婚後も泰子を寂しがらせない配慮をしていた。

「雨… ねぇ、竜児、やっぱり雨じゃない。せっかくの晴れの日なのに雨だなんてサイアク…」
「しかたねぇだろ、お天道様には逆らえねぇ。てか、式までまだ時間もあるし、止むかもしれねぇだろ」
「アンタがこんな梅雨の最中に式を挙げようとするからいけないんでしょ?」
「お前だって、ジューンブライドだからいいって、少し憧れてた、って言ったろ?」
「それは竜児があまりにも早く早くって言うから、まぁ、いいかなって…」
「だって、それは…」

竜児は言葉を飲み込む。
結婚について、お互いの親(実質は大河の両親だけ)の了解を得ると、竜児はすぐさま両家の親族、
欠かすことのできない招待客のスケジュールが合う、できるだけ早い日を探した。大河の父親だけでなく、
母親の実家も商売をやっているため、日柄やホテルの格式など多くの要求があり、それらを満たす都内の
主だったホテルや式場は半年以上先まで全滅。東京の近郊にまで対象を広げて、ようやく6月のこの日に
空いている場所を見つけた。竜児は周囲の“急すぎる”という意見を粘り強く説得し、着々と準備をこなして、
今日という日を迎えることができたのだった。

竜児が結婚を急ぎたかった理由。それは、夫婦になれば、もしこの間のような問題が起きた場合でも、
もう他人ではなくなり、身内として積極的に関わることができる。その一点が大きな部分を占めていた。

そんなことを大河に言おうものなら、また気に病むか怒るかのどちらかだと思い、竜児がこの4ヶ月間、
何度も繰り返した「早く大河と一緒になりたいから」という理由を今一度ここで言おうとするが、大河の
強い視線に遮られてしまう。

「………まぁ、いいわ。今さら延期できるもんでもないし、そんなことしたら余計に縁起悪いしね…」
竜児の心の内を知ってか知らずか、大河はその会話を打ち切ると、はわわ〜と生あくびを繰り返し、
「二度寝しようかしら…」と呟いている。

竜児は心の中で「サンキュ」とつぶやく一方、言っておかなければならないことを思い出し、厳しい顔を
大河に向けた。


323 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:19:43 ID:PcJde9yz0

* * * * *

「お前、昨日何時にここに来たか、覚えているか?」
「ん? 知らないわよ、そんなの」
「2時だぞ、2時。夜中にガンガン、ドア叩きやがって、寝るなら自分の部屋に行けよな!」
「ばかちーの部屋にカギ置いてきちゃったのよ。しょうがないでしょ。それに今日から夫婦なんだから、
別にいいじゃない。ここならベッドだって2つあるんだし、竜児の邪魔になんなかったでしょ!」
「結婚式が済むまでまだ夫婦じゃねぇだろ。お義父さんもお義母さんもここに泊まっているのに…」
「はぁ? アンタいくつ? 昭和の人? それともウチの親が入籍を先に済ませるのを認めなかったから、
まだ根に持ってんの?」
「そんなんじゃねえ。大切な日なんだから、けじめをつけなきゃ、ってことだ。俺はしっかり日付が変わる
前に眠ったぞ。今日の主役は花嫁のお前なのに、何やってんだよ…」
「しょうがないじゃない… ばかちーが夜の11時なんて非常識な時間にホテルに着くのがいけないのよ」
「仕方ねぇだろ、川嶋だって多忙なスケジュールの合間を縫って来てくれたんだから、文句言うなよな…」

ゴールデンウィーク前に公開された亜美主演の映画は、目下大ヒット公開中となっていた。公開前こそ、
能登の週刊誌のライバルから“ヤラセで話題作りをしないと注目を集められない映画”という下馬評を流され、
叩かれたりもしたが、いざ公開になってみると、大河が起こしたハプニングなどあっという間に忘れられる
ぐらいに高い評価を集めた。亜美は今、拡大した上映館での舞台挨拶や取材の対応に大忙しの日々だった。

「ばかちーがますます偉そうになって、ムカツクけどね。そう言う竜児だって、こんな朝早く起きて、
何やってんのよ?」
「言ってあったろ? 俺はこれから、披露宴のお色直しの後で配るドラジェをホテルの厨房を借りて作るん
だよ。芸なんか何もねぇ俺にできることはこれぐらいだからな… 大体、バチェラーパーティなんてのは、
男が騒ぐもんだろ? 女が飲んだくれるなんて聞いたことねぇ」
「あら、偏見。それに女の場合はバチェロレットパーティっていうのよ。竜児もやればよかったじゃない。
お約束のストリップなら、ばかちーがやってくれたかもよ」
「馬鹿なこと言うな。って、お前ら、まさか北村を呼んで、脱がせたりしてねぇだろうな?」

2人は互いに目を眇め合い、ガンを飛ばしあう…
が、やがてどちらからともなく、目が笑い、頬が緩んだかと思うと、同時に吹き出した。

「ぷはっ…」「ぷくくく…」
「北村なら、ホントにやりかねねぇ…」
「竜児、ダメだよ。北村君、もうすぐお父さんになるのに悪いよ。ぷっ… あははははは」
そうして、2人でひとしきり笑いあった後、大河は生あくびをもう一つ。

「じゃ、私はも一回寝るわ。竜児、頑張ってね」
「ああ、部屋のカギを開けてもらうよう、頼んできてやるから、ちゃんと自分の部屋で寝ろよ」
「分かってるって」
「9時には叩き起こすぞ。髪のセットとかメイクとか式のリハーサルとか、やることは色々あるんだからな」
「はいはい」
「ったく…」

竜児が大河の手を取り、部屋へと送ろうとしたその時だった。
突然、窓からまばゆい陽の光が差し込み、カーペットの上に2人のシルエットを作った。

同時に窓の方へと振り返ると、いつの間にか雨はやみ、空一面を覆っていたはずの厚い雲の間から、1つ、
また1つ、と光が差し込みはじめ、見事な天使の梯子をいくつも描いていた。

「あの時… みたいだな」
「うん… 私も思った。ばかちーとの水泳対決の日」
「あの時もひどいケンカ、してたよな…」
「懐かしいね…」
「今日みたいな日が来るなんて、あの時は思いもしなかったな…」
「…そだね。でもホントなんだよね…」
「ああ…」

2人はそっと手を繋いだまま、雨に代わって、光が降り注ぐ空をしばらく見つめていた。

324 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:21:18 ID:PcJde9yz0

* * * * *

6月中旬。土曜日 12:45

「はあっ、はぁっ、はあっ…」
息を切らせながら、作業着姿の小柄な男が、教会へと繋がる森の中の小径を1人、ゆらりと歩いていた。
おぼつかない足取りで、右手に持ったステンレス製の携行缶の重みに耐えかねるように右から左へ、
また右へとふらついているが、目だけはギラギラと異様にどぎつい光をたたえている。

「へへっ、お前ら… だけ… 幸せになろうなんて、そうはいくか… 俺の… 計画を… 全部…
ぶち壊しやがって…」

やがて、教会の建物の一角、ざわめく声が聞こえる窓の下に目立たぬようたどり着くと、男は缶の蓋を開け、
その中身をトクトクと周囲に撒き始めた。

「これぐらいありゃ、さぞ盛大にはじけるだろうよ…」
カラになった缶を足元に転がし、3m、5m…と窓の下から離れると、作業着のズボンのポケットをまさぐり
始める。やがて、右のポケットから銀色に鈍く光るオイルライターがあらわれ、男は右手の親指でその蓋を
「カチン」という音とともに開いた。

* * * * *


325 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:25:57 ID:PcJde9yz0

人いきれと化粧品や香水の匂いが混じり合った空気を入れ換えるため、教会の裏手にある新婦控室の窓は
大きく開け放たれていた。

大河は、肩を出したマーメイドラインの純白のウェディングドレスに、白いサテンのロンググローブ、
アップにまとめた髪を覆うベールを身にまとい、窓の近くに座って、挙式の開始時間を待っていた。
大河の父母の親戚への挨拶からようやく解放されたばかり、寝不足の少しぼんやりした頭でやれやれと
窓際の椅子に座り込んでいる。

大河のお茶の間デビューとそれに続く竜児との結婚話は、父母の親族に様々な波紋を呼んだが、どちらも
気っぷの良い地方で商売をやってきた一族、無事にことが収まったのを理解すると、大河の勇ましい姿や
これまでの頑張りを讃え、大河を、そして父母をホッとさせた。

今日の結婚式にも遠方から数多くの人達が集まってくれていて、まるでフランス人形のように美しい大河の
ウェディングドレス姿を褒めそやし、大河と並んで写真を撮りたがる人達が引きも切らなかった。
腰を落ち着けることができたのは、挙式の時間まであと15分というタイミング。今はおめかしした跡取り
息子である恵児に関心が集まり、ようやくフラッシュの嵐から解放されたのだった。

「結婚式がこんなに慌ただしいものなんて、思いもしなかったわ… ったく、感慨もへったくれも
無いわよね… ま、みんなお祝いしてくれてるんだから、贅沢言っちゃいけないんだけど…」

ふと、窓の外から、何かつぶやくような男の声が聞こえたかと思うと、風に乗って、鼻をつく刺激臭が
流れ込んできた。
「なんだろ? この臭い… 誰かいるの?」

椅子から立ち上がり、窓際に近づいたその時、大河は建物から少し離れたところに立つ、作業着姿の
小柄なやつれた男と目があった。

そこには、ずっと行方を探し続けていた逢坂陸郎の姿が、あった。

「クソジジイっ!!! なんで、ここに…?」
「よぉっ、久し振りだな。親切な誰かが、今日のことを教えてくれてな…」
そう言うと、陸郎は右手に持ったオイルライターに「ジッ」と火を付けた。目はうつろで、もはや焦点も
合っていないようにすら見える。

「ちょうどお前のいるとこだったんだな。じゃ、これは俺からの結婚祝いだ。せいぜい幸せになるんだな」
陸郎は意地の悪い笑みを浮かべると、大河の方に向かって、火のついたオイルライターを山なりに大きく
放り投げた。

「えっ…?」
ライターがふわりと浮かび、視界の中をスローモーションのように、ゆっくりと放物線を描くのを大河は
呆然と見ていた。この臭い… 窓の下にはおそらく大量に撒かれたガソリンが…

(だめ、ここにいちゃだめ、すぐに離れなきゃ…)
大河はそう思ったが、足がすくみ、振り返ることすらできない。

(みんなにも逃げてって言わなきゃ…)
背後からはこちらの様子など微塵も気付かない、賑やかな歓談の声が聞こえている。瞬きするぐらいの
短い時間の中でやらなければならないことを思いつくが、唇は凍りついてしまったかのように微かに
「みん…」
と発するのが精一杯。

狭くなった視界の中で、火のついたライターは放物線の頂点を過ぎ、重力に引かれて、緩やかな下降の
曲線を描き始めようとしている。
(だめ… もう落ち… 間に合わ… な…)

コンマ何秒後かに起こるであろう、恐ろしい光景を想像しながら、大河の脳裏に浮かぶのはたった1人の顔…
(りゅう… じ…)

* * * * *

326 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:29:40 ID:PcJde9yz0

ピシッ!
小枝を踏み折るような音と共に、視界の外から細身の男が飛び込んで来たかと思うと、腕を伸ばし、頭の
高さまで落下していたライターを “キン!”という鋭い金属音をたてて、軽やかにその手のひらに収めた。

そして、男が腕を振り上げた次の瞬間、手にしていたライターは一直線に空気を切り裂き、炎上に巻き
込まれないよう、よたよたと走り出していた陸郎の後頭部を直撃し、朝までの雨に濡れた、日陰の草地の
上に転がった。

「っ痛! な、なに? なんだ?!」
全く予想だにしていなかった衝撃に陸郎は後ろを振り返ると、思いもよらない光景に目を大きく見開き、
驚愕の表情を浮かべる。

「オイ、待てコラぁ!」
建物の影から大勢の男達が一斉に飛び出してきていた。
2人の若い男が再び走りだそうとした逢坂陸郎をタックルで押し倒し、その両脇を抱えて建物の方へ引き
ずってくる。残りはガソリンが撒かれたと思われる所に、揮発を防ぐ中和剤を大量に撒き始めている。
皆、一応、結婚式向けらしい服装をしているが、5分刈りやパンチパーマ、金のアクセサリーや白のエナ
メルの靴を身につけた者もいて、どこか堅気ではない風貌をしていた。

騒ぎに気づいた大河の父母、親族達が次々と窓際に集まってくる。

ライターを掴み取った男は、背が高く、細い身体にオールバックの頭、濃いサングラスを掛け、黒の
スーツに礼装用の白ネクタイを緩め、剃り込みこそ入っていないものの、いかにもヤクザという雰囲気
だった。連れてこられた逢坂陸郎の目の前に立ち、片手でそのアゴを掴むと、軽く捻り上げる。

「麻薬取締法違反、私文書偽造、恐喝、そして放火は特に罪が重いぜ。今度、シャバの空気を吸えるのは
何年? いや何十年先かね?」

その時、控室の入口からスタッフの恰好をした体格の良い男2人が「どいて、どいて」という怒号と共に
飛び込んできて、大河の父母と親族をかき分けたかと思うと、あっという間に窓から地面に飛び降りた。

「やぁ刑事さん、遅かったね。あんたらのお目当ての男はこっちで捕まえときましたよ」
細身の男は陸郎のアゴを掴んだまま、楽しそうに男達に声を掛けた。

「て、てめぇ、俺を誘い出して、ハメやがったなっ!」
逢坂陸郎は、若い男達に掴まれていた腕を、思いもよらぬ力で急に振り払うと、目の前の男の顔を拳で
殴りつける。男のサングラスがふっ飛び、草地のうえに音もなく落ちた。

「あー 傷害罪も追加だな。刑事さん、今ので懲役5年ぐらい追加ですかね?」
刑事と呼ばれた男達はそれに答えず、陸郎の腕を掴もうと手を伸ばしながら、長身の男を睨みつける。
「お前、一歩間違っていたら、大惨事だぞ」
「まぁまぁ、その時は真っ先に俺の身体が吹っ飛んでましたよ。こうして何事も起こらずに、身柄を
押さえられたんだから、いいじゃないっすか?」

たった1人、会話が耳に入らず、殴りつけた男の顔を信じられないという表情で見つめていた陸郎は、
「オマエ… その顔はまるであいつ… そんな、あいつにそんな…」
とだけ絞りだすと、刑事に腕を掴まれたまま、がっくりと膝から崩れ落ちた。

「刑事さん、さっさとぶちこんじゃってくださいよ。今回の件は貸しってことで、今度ウチで何かあったら、
大目に見てくださいよ」
地面に落ちたサングラスを拾って掛け直しながら、男はひょうひょうと話している。

「オイ、逢坂! 立て! 署で洗いざらい、話してもらうからな!!」
「待て、待ってくれ… 殺される… 刑務所なんかに入ったら、二度と生きて出られない!」
「黙ってさっさと歩け!」

窓の外で繰り広げられる光景を、大河と大河の母親、父親もただひたすら呆然と見つめていた。
全ての元凶、逢坂陸郎は、刑事と見られる2人の男に両腕を掴まれ、みっともないまでに泣き喚きながら、
森の向こうに急停止した黒塗りの車に乗せられ、あっという間に連れ去られていってしまった。

327 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:32:42 ID:PcJde9yz0

陸郎と入れ替わるように車から降りてきた、刑事の上役と思われる年配の男が、窓越しに所属と名前を告げ、
晴れの日を騒がせたことのお詫びと、容疑者逮捕の協力の礼を手短かに伝えた。

「あの、私には本当に何もお咎めが無いんでしょうか?」
ようやく眼の前にした警察関係者に少し怯えながら、大河の母が尋ねた。
「ああ… 逢坂陸郎を捕らえるために直接の接触を控えていましたが、あなたには捜査協力のお礼をきちん
とさせてもらわないといけないですね。上の、ずっと上の方からも失礼の無いように、と言われています」
その言葉を聞いて、大河の母親は卒倒しかけ、すかさず大河と父親に助けられた。

「ママ… もう大丈夫、大丈夫だよ。これで本当に終わり。ぜんぶ、全部終わったんだよ…」
母親の身体を支え、何度も繰り返し声を掛けながら、大河は湧き上がる疑問を押えきれずにいた。

…あのヤクザ風の男は誰なんだろう? あの男が身を挺して、放火を防ぎ、クソジジイを捕まえたのよね。
クソジジイはあの男の顔を見て、驚いていたけど、知り合いだったのかな…?

ふと気がつくと、大河の傍らにはケータイを耳にあてたまま、大粒の涙を目に浮かべた泰子の姿があった。
「約束、守ってくれたんだね。わたしたち、これでもう大丈夫だよ。ありがとう、あなた…」

大河が立ち上がって外を見ると、さっきの男が泰子と同じ様にケータイを構えながら、こちらを見ている。
窓の外からと泰子のケータイから微かに、同じ声が聞こえていた。

「約束? そんなことは知らねぇなぁ… いくつかのルートに情報を流しただけで、奴が来るかどうか
なんて分からなかったしな… ま、ウチの利益のために、うまく利用させてもらったと言っておくぜ」

男は泰子に向かって、さっき陸郎に殴りとばされたサングラスを少しばかり持ち上げる。
サングラスの下から、大河が愛する男と同じ三白眼があらわれた。

「っ!!」
大河は思わず息を呑み、そして、全てを理解した。
「やっちゃん、あの人、竜児のお父さんなんでしょ? 私、竜児呼んでくるから、絶対帰らないように
あの人に言って!」

大河はすかさず控室を飛びだそうとしたが、思いもよらぬ強い力で泰子に肩を掴まれ、その動きを阻まれる。
「大河ちゃん、ダメ。ダメなの約束なの。大河ちゃんのお父さんを探し出して、もう竜ちゃんと大河ちゃんに
迷惑を掛けられないようにする。その代わりに自分の存在は竜ちゃんには知られたくない、行方不明か死んだ
ままにしておくのが、あの人との約束なの、だから大河ちゃん、おねがい…」

普段のおっとりした泰子からは想像できない、強い呼び掛け。その言葉に大河も一瞬口をつぐんでしまう。
だが、正月に母親の家で聞いた、そして、父親を説得する際にも話したであろう、竜児の幼い頃の告白が
甦ってくる。それを聞かされた時、竜児が歩んできた道のりの険しさ、悲しみの深さに、身体中の水分が
無くなるかというぐらい泣いた。

…私はこんな思いをしてきた男を心の底から信じられずに、行方をくらませてしまった。なんてひどい女。
これから一生掛けて、自分がその空白を埋めると誓った。

だけど、竜児はひとりぼっちじゃなかった。やっちゃんだけじゃない、こうして力を貸してくれる親が
もう1人、ちゃんといたんだ。だから竜児にとって、父親を実体の無いものになんかさせない、いつか
生まれてくるかもしれない自分達の子供のためにも、たとえ親がどんな人間であっても、真実を知り、
その存在を心に刻みつけておかなきゃいけない…

「そんな約束、知らない! そんなのダメ。竜児だけ知らないなんて、竜児だけ救われないなんて
絶対にダメっ!!  私が、ゆるさないっ!!!」

大河は泰子の手を振り払い、窓際に駆け寄ると、男に向かってまっすぐ指を突きつける。
もし今、その手に木刀があったら、迷わず、その切っ先を向けていただろう。

「アンタ、3分間そこでジッとしてなさい! もし動いたら、追いかけて、必ずブチ殺すから!」

そう言うと男の返事も聞かず、控室を飛び出し、建物の反対側の新郎の控室に向かって駆け出した。

328 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:36:36 ID:PcJde9yz0

* * * * *

バンッ!

勢い良く開かれたドアの音に、新郎控室にいた竜児や園子と清児、親戚全員が驚いて振り返った。

「竜児っ、すぐ来なさい! アンタが見ておかなきゃいけないことがあるの!」
「おい大河、花嫁が息切らせてなんだよ? 泰子もどっか行ったまま戻ってこねえし… もうすぐ本番だぞ」
「るっさい、駄犬! いいからすぐ来い、走れっ!」
大河は最大級の虎の力で竜児の手を掴むと、もう一方の手でウェディングドレスの裾をたくし上げ、
ヒールが脱げるのもお構い無しの猛烈な速度で、控室を飛び出し、教会の裏の廊下を駆け出した。

「ちょ、ちょっとお前なんだよ、い、いてぇよ… そういえばさっき、そっちの方、騒がしかったよな?
なんかあったのか?」
「つべこべ言わずに走れ、しゃべると舌噛むよ!」

新婦控室の扉は、開いたままだった。
大河は竜児の手を掴んだまま、部屋に飛び込むと、竜児の後ろに回り、ドンっとその背中を窓の方へと
思いっきり押し出した。

* * * * * 

「竜ちゃん……」
泰子が泣きながら、顔をクシャクシャにして立っていた。お前、こんなところにいたんだ。
なんで泣いてるんだ? もうすぐ式が始まるのに… ほら、メイクがすっかり崩れちまって、ぼろぼろだぞ。

「竜児、窓よ、窓の外を見なさいっ!」
大河が外を指差しながら叫んでいる。
「何だよ? 一体なにがどうなっ… って、えっ…?」

窓の外に、オールバックの、一見してヤクザと分かる男が、ケータイを耳に当てたまま、立っていた。
その顔は、写真よりずいぶん老けているが、いつも見ていたツラ、そして自分と全く同じ三白眼。
人生の中で何度も呪ってきた自分のものと同じ目がそこにあった。

背後で、2人を追いかけてきた園子と清児が大河のヒールを手に、部屋へ飛び込んできた。
「園子、あの男まさか」「泰子の…」

大河がゆっくりと告げる。
「竜児の… お父さんだよ… 竜児のお父さんが全部終わらせてくれたよ… クソジジイはもう檻の中だよ」



329 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:40:59 ID:PcJde9yz0

ウソだろ…
死んだんじゃねぇのかよ、行方不明じゃねぇのかよ?
クソ親父が檻の中? 全部終わらせたってなんだよ? この男が仕組んだのか?

「竜ちゃん、これ…」
泰子がこわばった顔で、ケータイを差し出してきた。
混乱しながら、それを受け取るとゆっくり耳に押し当てる。

「気合いの入ったいい嫁じゃねぇか。会うつもりなんてなかったが、顔を見せたのはそのお嬢さんに
免じてだ。今さら罪滅ぼしなんてつもりはねぇが、何か言いたいことがあるなら、聞いといてやる…」

ケータイから聞こえてくるのは、今まで耳に触れたこともない声。
そんな人間を相手にいきなり、父親だ、話せ、って言われても………

…そうだ。オマエは一体、誰なんだ? どうやってクソ親父を見つけた? 何をした? 
いや違う… そんなことより… そうだ泰子、泰子のことだ。
泰子はオマエがいなくなったおかげで、16才の時から苦労して、実の親にも十何年も会わずに、身体を
壊したりしながら、たった1人で俺を育ててきたんだ。泰子をそんな不幸な目に合わせたのは…

ふと、誰かの手が肩に触れたのを感じ、隣を見ると、涙を拭った泰子がにっこりと微笑みながら、
2度、3度と首を横に降っている。

(やっちゃんは、ちっとも不幸なんかじゃなかったよ…)
泰子の表情は、そう語っていた。

竜児の脳裏に、何度も聞かされた泰子の言葉が浮かんでくる。
『竜ちゃんが元気でいてくれさえすれば、やっちゃんはいつだって幸せなんだよ…』

昔は、いつもふざけて、大袈裟に言いやがってと思っていた言葉。
泰子は言葉通りに、ずっと、ずっと、そのたった一つだけを考えてきたんだ…

じゃ、じゃあ、俺は? 俺はどうなんだ?
こいつに顔が似たおかげで、人に怖がられ、誤解されて、傷ついて… いや違う、そんなことはもう、
どうだっていい…
じゃあ、俺はガキの頃から、誰からも見捨てられないよう、行儀良くして、必死に家事を覚えて、 
メシ作って、掃除なんか… いや、それも関係ない… 

だったら、俺は… こいつに… 一体何を言えば…

* * * * *


330 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:46:16 ID:PcJde9yz0

「竜児!」
眼前に立つ大河に名を呼ばれ、ハッとその顔を見る。
鋭い言葉とは裏腹に、大河も優しく微笑んでいる。
そして大きく1つ頷くと、背伸びをして、手袋を外した手をこっちに向かって、まっすぐ伸ばしてくる。

吸い寄せられるように顔を近づけると、大河の指先は自分の眉間にそっと触れ、2度、3度と優しく撫でた。
大河の細い指先から柔らかな温かさが伝わり、ゆっくりと頭から身体全体へと広がっていくのを感じる。
しかめていた眉根が緩み、いからせていた肩の力が、すうーっと抜けていく… 全身が柔らかく、穏やかな
力に包まれていく。

幼い頃から、自分は他の人とは違うといつも思っていた。
人と同じことを望んじゃいけないと思っていた。
だって、自分には欠けているから。あるはずのものが無いのだから。
状況を受け入れ、拒否することなんかありえなかった。
求められることに応えさえすれば、自分の居場所を確保できると思っていた。
傷ついても、じっとそれを見つめているヒマなんて無い。そういうものなのだと思っていた。

でも、ある人の傍らにいたい、そう思ってから、何かが変わり始めた。
その人を強く求めるようになってから、もっと大きく変わった。
痛みを、傷を、あるがままに受け止めようと思ってきた。

でも、もう、いいのか…? 良かったのか… 俺はもう… 誰かと違っているなんてことは無いのか…?
ひょっとして、ずっと前からそうだったのか…?

ふと気配を感じて、顔をあげると、控室にいる全員がこっちを見て、微笑んでいた。
じいちゃんも、ばあちゃんも、大河のお母さんも、お父さんも、恵児君も、親戚たちも、今日から身内に
なる大勢の人達が、皆、自分を見て、微笑んでいた。そして表の聖堂では大勢の仲間達がいる。

振り返った時、自分の居場所の確かさに気付く。
そうだ… これは俺自身と、そして大河と2人で築いてきたんだ。
離れていても、傍にいても、俺達は互いを想い合い、支え合い、ずっと立ってきたんだ。
だから、もう、淋しさなんて、どこにも…

窓の外に立つ、父親の顔を再び真っ直ぐに見据えた時、身体の奥から言っておかなければならない言葉が
ゆっくりと浮かび上がってくる。

* * * * *

何かを察したかのように、竜児の耳にケータイから再び男の声が飛び込んでくる。
「特に話すことはねぇようだな。もう切るぞ。オマエとは二度と会わねぇからな。嫁と母親を
ちゃんと幸せにしてやらなかったら、オレが承知しねぇぞ… じゃあな…」

「あ…」
竜児が言葉を返す暇も与えず、男はケータイを切ると、踵を返して、森の中へと歩き出した。
そして、まるで敬礼をするように、右手の指先をこめかみに当てると、地面に向かって、
すーっと優雅な半円を描いた。

“あばよ、坊主。元気でな” 
竜児の父親は、背中でそう語っていた。

竜児は、泰子のケータイを床の上に落とすと、それを追うようにゆっくりと膝をついた。
「親父… いたんだ… 本当に… なんだよ今頃… 今までなにやってたんだよ。何のこのこ出てきて、
俺達のことを助けたりしてんだよ…」

心の奥底からこみ上げてくる、熱いものを拭いもせず、竜児は泣いた。
ただ、ひたすらに泣いた。
今まで、ずっと、ぽっかり開いていたと思っていた穴を満たしてしまうかのように、涙を流し続けた。

「馬鹿野郎、1人でカッコつけやがって… “ありがとう” ぐらい、言わせろよな…」

331 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:50:00 ID:PcJde9yz0

「竜児…」「竜ちゃん…」
大河は泰子の手を引いて竜児のそばにひざまずかせ、2人で竜児の身体をそっと優しく抱き締めた。
3人は長い間、ずっと、そのままだった。

* * * * *

結婚式は当初の予定時刻から20分遅れて始まった。
列席者達が一体どうしたのか?とざわめきだした頃、両家の親族が入ってきて、
最後に新郎がバージンロードの終点である、祭壇の前に立った。

「ねぇ祐作。高須君、いやお母さんも他の親族の人もなんかみんな、目が腫れてない? 顔は笑ってるけど…」
亜美が隣に座る、眼鏡を掛けた幼馴染みにささやいた。

「なんかあったんだろ、裏で。さっきちょっと見たら、黒塗りの外車が何台か止まってたし」
「なによそれ? あんたなんか知ってるんでしょ? 教えなさいよ!」
「それより、ほら見ろよ、高須の顔。俺は出会ってから、親友のあんな表情を見たことがないぞ」
「あ、ほんとだね。あーみん見てよ。目つきはいつもと変わらないのに、なんか凄く晴れ晴れとしてるよ」
「……ホンッと、いいツラしちゃって。生まれてからずっとためてた便秘が解消しましたーって感じよね」
「なんつー例えを。ほら亜美っ、始まるぞ!」

* * * * *


あの扉の向こうに、大河がいる。
父親に手を引かれ、純白のウェディングドレスに身を包んだ大河が、もうすぐここに来る。
目の前の、真っ直ぐなバージンロードを歩いて、大河が俺のところにやってくる。

高校2年の春、大河に出会ってから、本当に色々なことがあった。

尻餅をついた新学期の廊下、机と椅子が舞う夕暮れの教室、深夜のチャーハン、一緒に蹴っ飛ばした電柱、
どしゃぶりのプール、みんなで見た海辺の花火、河原で大騒ぎしたバーベキュー、はぐれちまった夏祭り、
駆け抜けた校庭、台風直撃の菜園、図書館での雨宿り、一緒に見上げたオリオン座、ぬいぐるみを着て踊った
ダンス、吹雪の中の急斜面、でこぼこコンビのチョコレート売り、小雪舞う川の中へのダイブ、大ケガの嘘、
からっぽのマンションの部屋、卒業式での再会、弁財天国で撮った記念写真、駆け回ったクリスマスイブ、
カウンター越しに掴んだ細い手首、想いをぶつけ合ったアパート、2人して眠りこけたタクシーの中… 
そして、長い時を共に過ごした高須家の8畳間と、会話を重ねたベランダとマンションの窓辺…

心が千切れそうなほど苦しいこともあった。でも、気がおかしくなるほどの喜び、仲間達との心からの笑顔、
泰子と3人での平穏で満ち足りた時間。心から愛おしい、何よりも大切な、守りたいという気持ち。
じいちゃんとばあちゃん、父親にも会えた。新しい家族や親戚も増えた。その全てをあいつがくれた。

大河、これから始まるんだよな。俺たちはまた、再び。
ずっと永遠に、傍らに並び立ち、どこまでも一緒に歩いていこうな。

「それではみなさん、新婦の 入場です」
外国人の初老の神父がたどたどしい日本語で、式の始まりを告げた。
パイプオルガンの荘厳な音色が聖堂いっぱいに鳴り響き、2階のバルコニーに並ぶ聖歌隊が祝福の賛美歌を
高らかに歌いあげる。

教会の扉が左右に大きく開かれると、やわらかな光が竜児をめがけて、一直線に差し込んできた。

そして、光の向こうから天使があらわれ、満面の笑みを浮かべたまま、
竜児に向かってゆっくりと歩きだした。

― fin ―


332 : ◆VW.RtTKf1E :2010/10/27(水) 01:53:27 ID:PcJde9yz0

ふぅーっ・・・ 無事投下できました。

とらドラ! 、againは、これで終わりです。
長い長い長い間、本当に有難うございました。
皆様にコメを頂いたおかげで続けることができ、たどり着きたかったところまで来ることが
できました。(本当)

元々アニメエンドからスタートしているものですが、大河の両親の離婚原因とか色々と
原作から離れてしまい、違ってるとこだらけ思いますが、自分なりに書いてしまいました。
つくづく無謀だったなぁ・・・と、orzです。

あと、蛇足になるかもしれませんが、エピローグを少し考えています。
最終回から間があいてしまうと、文字通り間抜けになるのですが、ここまで書き下ろして、
息も絶え絶えな感じですので、近いうちに・・・ としておきます。

皆様、本当に有難うございました。


333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 02:10:03 ID:WIU0Pn5t0
長い間おつかれー

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 02:40:46 ID:rJmQpFr90
長編乙&GJ!
正直途中、大河が辛い状況にある時はこっちも辛くて堪らなかったが、
ここまで読んできてよかったと心の底から思うよ。

エピローグにも期待。

335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 16:17:38 ID:iVGqbS6eO
>>314
「三題噺」って、文学少女からだったのか。
いまさらだが、がんばれコノハw

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 19:19:52 ID:ewyTGrwo0
>>332
お疲れ様でした!

一番楽しみにしてたシリーズだったんで最後まで書いてくれてありがとう。
途中はどうなるんだろうってハラハラしたり涙ぐんだりしながら読んでたけど綺麗に終わってとてもよかった。

原作本編もそうだけど一旦底の底まで落としてから持ち上げてくるとクライマックスの盛り上がり方とか最後の感動が全然違うなと思った。
これだけのものが書けるのは正直羨ましい。

エピローグも楽しみに待ってます。

337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 23:05:13 ID:liguBDWy0
>>332
長編完結、本っっっ当に、お疲れ様でした!
最後まで読むことができてすごく嬉しいです。

竜児と大河もすばらしいんだけど、二人の為に動く元2-Cの熱さがらしくて好きでした。
難しいとは思うけど、氏の作品の様にいつまでも繋がりが切れないでほしいなぁ…

締めはやっぱり結婚式で
竜児の回想に原作&アニメ&again、二人が辿ってきた道が蘇ってきて胸が熱くなった
お幸せにと心から思うよ。
エピローグ、楽しみにしています!

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/27(水) 23:59:01 ID:XFs/z/d40
>>332
最後までドラマティックな展開で、飽きないで読んた
スッキリしたハッピーエンドでよかった!GJ、それから完結乙!

339 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/10/28(木) 06:42:50 ID:1aBlgWlV0
お題 「自分」「雪」「大河」



「……おはよう、竜児」
「おう、おはよう」
 ドアを開けた大河の目の前に立っていたのは、コートにマフラー姿の高須竜児。
「珍しいわね、休みの朝にわざわざ迎えに来るなんて」
「いや、なんせこの状況じゃねえか……ちょっと心配になっちまって」
 応えた竜児の背後は、見事なまでの銀世界。


 さくさくと軽い音と共に、踏み出す度に長靴が足首まで雪に沈む。
「これは……ちょっと凄いわね」
「ニュースで記録的な大雪だって言ってたからな。電車もあちこち遅れたり止まったりしてるらしいぞ」
 並んで歩く竜児はさりげなく車道側、大河より微妙に後に。
「ふーん……」
 えいやっと雪を蹴り飛ばすように足を振り抜いて、案の定その拍子にバランスを崩す大河。
「わわっ!」
「おっと」
 その体をしっかりと抱き止めて、竜児は思わず苦笑する。
「気をつけろよ」
「ん。雪積もった日は何でか必ず転びそうになるのよねー」
「何でじゃねえだろ。雪無くてもしょっちゅう転びそうになるんだから、こういう時は一層気をつけねえと」
「あ〜、雪ってあんまり好きじゃないかも」
「そうか?修学旅行の時バスでけっこうはしゃいでたじゃねえか」
「あれはほら、量が量だったし旅行中の妙なテンションもあったし。その修学旅行は……結局あんなだったし」
「……おう」
「大体、雪に関してあんまりいい思い出が無いのよね。クソ親父の所出てきた時も雪だったし、あんたと二人で逃げ出して川に落ちた時だって」
「…………おう」
「あ……ぷ、プロポーズは別ね。あれは例外、ちゃんと嬉しい思い出だから。だけど、やっぱり全体的には……」
「……なあ大河」
「何?」
「せっかくだからさ、ちょっと遊んでかねえか?」
「は?何よ急に」
「こんだけ積もるなんてめったにねえんだし、どうせなら楽しまなきゃMOTTAINAIじゃねえか」
「あんたはどこまで貧乏性よ……それに遊ぶったってどうやって?」
「そうだな、流石にかまくらは無理だろうけど、ここから雪玉転がしていけばかなり大きな雪だるま作れるんじゃねえかな。
 それから北村と櫛枝と、あと皆も呼んで雪合戦しようぜ、公式ルールで」
「公式?雪合戦にそんなのあるの?」
「おう、実はあるんだよ。詳しくは北村が知ってるはずだ」
「へー……」
「ほら、まずは雪だるまだ。芯になる雪玉作って」
「こんな道端の雪使ったら汚くならない?」
「公園まで行きゃ綺麗な雪がたくさんあるだろ。それで表面覆ってやればいい」
 そうだ、哀しい記憶は消せないだろうけど、もっと新しくて楽しい記憶をたくさん作ればいい。
 一人で転べば自分自身が痛いだけだが、皆が一緒に居れば笑い話にだって出来るはずだ。



「今よ!チビトラ砲・ファイヤー!」
「おうりゃあぁぁぁ!」
「ちょっ!痛いよこの雪玉痛いよ!」
「高っちゃん、お助け〜!」
「おい大河!お前雪を強く握りすぎだ!ほとんど氷玉になってるじゃねえか!」

340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/28(木) 08:27:46 ID:3HoghQmCO
>>339
いつもGJ
なんか優しい、ちょっと切ない気持ちになった

もうすぐ冬だな

341 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/28(木) 23:02:35 ID:FeH9hn2k0
大河に雪道歩かせるのはかなり心配だw

342 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/28(木) 23:39:13 ID:AXxtE6xp0
今年は雪降るかな

343 :U-ma:2010/10/30(土) 02:03:47 ID:138y3o850
とらドラagain、GJです! 2-Cの9人、生徒会の3人の協力がつながっている点が 一番好きです。 最後の竜児父の活躍も良かったです! 最後まで楽しみに待っていた甲斐がありました!! エピローグも楽しみにしてます。

344 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/30(土) 16:03:05 ID:0inx9Kjd0
(*´Д`)ポワワ

345 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/30(土) 21:18:11 ID:2h+rHTwT0
冬SSのネタ探しと思って7巻読んでて思い出したんだけど、とらドラ読むまでクリスピークリーミィの存在自体知らなくて7巻のネタがググるまでさっぱり分からんかったんだが、
最近近く(京都の地下鉄四条)にできたって聞いて行ってみたら並びすぎて買えないってほどでもないけど結構すごい行列できてたな。
そしておいしかった。

知ってて当たり前みたいな書かれ方だったし割と一般常識的な存在なの?京都なんて今までドーナツといえばミスドしか無かったけどw

346 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 02:24:51 ID:O/exwCJBO
>>345
首都圏以外への出店が今年になってからだから仕方ない。
ただ首都圏だと越谷レイクタウンの様な大規模モールから
池袋東武・玉川高島屋の様な百貨店にまで入ってるからかなり
知名度は高いはず。

347 :ms07b3:2010/10/31(日) 21:04:02 ID:zoG/4w9w0
季節にはまだ早いとは思いますが。クリスマスネタ投下します。
竜虎は直接は登場させませんが、判る方には判るネタです。
題名は「クリスマスは誰にでもやってくる」

車が徳生学院に近づくにつれ、未来が無口になっていった。

今週のお泊りは、あと数分で終わる。
次に我々夫婦が迎えに行くまで、未来は施設での生活することになる。
それは、幼い未来にとっては、辛い事だろう。
 後部座席では、妻の響子が未来のマフラーを直している。
マフラーは未来の為に、響子が編んだもの。未来が大好きなピンク色だ。
「ねえ、今度はいつお迎えに来てくれるの?」
未来が、響子に問いかける。
「土曜日にお迎えに行くよ。」
「何回寝るといいの?」
「6回寝て、起きたら、お迎えに行くわよ。」
「絶対? 絶対にお迎えに来てね。」
「大丈夫よ。」
響子が未来を抱きしめた。出来る事なら、このまま未来を連れて、自宅に
帰りたい衝動に駆られた。

未来と私達夫婦に血縁関係はない。未来は、生まれてすぐに病院の敷地内に
置き去りにされた子供だ。
普段は徳生学院という、さまざまな理由から親と暮らせない子供達が生活す
る児童養護施設で暮らしている。
私達夫婦は、週末に彼女を迎えに行き、土日の2日間を共に過ごす里親なのだ。
未来と私達は、彼女が小学校に入学する来年の4月に養子縁組をする予定に
なっている。未来も響子もその日が来るのを待ち望んでいるのだ。

一人の子供を引き取るという事は並み大抵の事ではない。
収入や住居・夫婦関係の良好さ等を始めとして、子供を養育するに相応しい
生活環境が整っているかの調査が行われる。
その次に、引き取る子供との相性確認の為に、何度も施設に通い、親子とな
るのに最適な子供を探す為のマッチングを行う。
子供の一生を左右する事になるので、何ヵ月も、下手すると何年もかけて相性
の良い子供を探すのだ。

348 :ms07b3:2010/10/31(日) 21:10:48 ID:zoG/4w9w0
「クリスマスは誰にでもやってくるA」
私達が未来と出会ったのは、昨年のクリスマスだった。
その年の夏。妻は子宮癌により、子宮の全摘出手術を受けた。幸い、ガンに
ついては転移は見つからなかったが、37歳で、生殖機能をなくした彼女は
精神的に落ち込んでしまった。
妻は、救いを求めるかのように、学生時代に取り組んでいたボランティア活動
を再開した。
平日は老人ホームへ出向き、歌を歌ったり、紙芝居をしたりして、お爺ちゃん
おばあちゃんを喜ばせ、休日はその地域の篤志家が設立した児童擁護施設で、
子供達と遊んだり、面倒をみたり、手焼きのクッキーを届けたりしていた。
慰問や、手焼きのクッキーを児童養護施設へ届けたりといった活動は、彼女に
活力を与えた。
私は、妻が元気を取り戻して行く姿をみて安堵するとともに、彼女の活動の足
として、週末の活動に参加した。
ただ、この段階では、私は彼女の活動を懐疑的に見ていた。
持てる者が持たざる者に奉仕する事に、偽善の匂いを感じていたのだ。
なので、積極的に参加はせず、行き帰りの運転手と男手が必用な作業を手伝う
程度で、あとは車の中で仮眠しているような状態だった。
クリスマス。私は妻に手渡された衣装に車の中で着替えていた。茶色の安っぽい
ブーツ、赤い帽子、赤いズボン。俗に言うサンタクロースの衣装だ。
 私の出番は、子供達がいまやっている劇の後。妻からの電話連絡で、お菓子
が沢山入った麻袋と共に、登場する事になっている。
今時の子供が、サンタクロースの存在を信じているとは思えない、ならば適当
にサンタらしい振る舞いをしようと軽く考えていた。
しかし、この施設には、サンタクロースの実在を確信する少女がいたのだ。
携帯が鳴る、そろそろ出番だから講堂の外で待機するようにという妻からの指
示だった。溜息をひとつ。プレゼントで満杯の袋を担ぎ、車の外に出る。
12月の風が、帽子に着いている白いボールのような飾りを揺らす。パーティー
グッズのサンタの衣装に防風性を期待できる訳でもない。衣装の下はTシャツ
一枚。このままでは風邪を引くのは時間の問題だ。
仕方なく講堂にほど近い、玄関ホールで風を除けていた。
「あっサンタさんだ!」
ホールに響く声に振り向くと、5歳くらいの女の子が立っていた。
肩までの髪をおさげにした彼女は、突然のサンタクロースの登場に驚いていた。
「やぁ。」
あ〜ぁ、見つかっちゃったよ。子供の夢を壊すなと怒る妻の顔が目に浮かぶ。
女の子は恐る恐る近づいてきた、驚きのあまりか、目が大きく見開かれている。
「ねえ、本当にサンタさんなの?」
年齢相応の舌っ足らずな口調で女の子は質問する。
ええい、こうなったら開き直ってやる。
「そうだよ、サンタのおじさんだよ。みんなにお菓子をプレゼントしに来たよ。」
近づいてきた女の子を抱き寄せてハグした。
「本物のサンタさんだっ! やっぱりいたんだ。でもお爺ちゃんじゃないね?」
あら、いきなり偽物疑惑ですか・・・・。
「いや、サンタクロースは世界中に何人もいて、おじさんは見習いなんだ。」
どうせウソをつくなら、もうちょっとまともなウソをつけと脳内から突っ込みが入る。
「だからお爺ちゃんじゃないし、日本語も喋れるんだよ。」もうどうにでもなれ。
 少女は私の手をふりほどいて、廊下に降り立つ。そして顔をじ〜っと見つめる。
「お爺ちゃんじゃないけど、まぁいいや。」
彼女は俺の腕を引っ張って駆けだした。
玄関の横の講堂の扉を開けると大きな声で叫んだ。
「みんな、サンタさんが来たよ〜!」っと。
この小さな身体のどこから、そんな声が出るんだと思うほどの声量は、クリスマス会
の劇を止めるに充分だった。教室の片隅で、妻が大きな口を開けてぽかーんとしていた。
これが、未来と私たち夫婦の出会いだった。

349 :ms07b3:2010/10/31(日) 21:12:13 ID:zoG/4w9w0
「クリスマスは誰にでもやってくるB」
クリスマス会の後は、夕食を兼ねたパーティーが待っていた。先ほどの女の子が、私と妻のテーブルに一緒に座ることになった。
「お名前を教えてください。」
妻が聞くと、女の子は、はにかみながら答えた。
「みらいだよ。おおはしみらい。5さい。」
右手を大きく開いて、5を示す姿は天使のようだった。
「ねえ、おじさんとおばさんの名前を教えて?」
「おじさんは、宮本大我(たいが)、おばさんは、恭子(きょうこ)って言うんだよ。」
「タイガーさん?」
「いや、たいが だよ。」
「ふーん。あのね、おばさんと同じ名前の子がいるんだよ、あのこ。」
みらいは、二つほど離れたテーブルに座る少女を指さした。
「そうなんだ、おばさんと同じ名前なんだね。」
妻が笑った。

 施設の責任者の男性が、大きな箱を抱えて入ってきた。
「さあ、今年もみんなに、サンタクロースさんから、いっぱいオモチャが届いたよ。」
開けてごらんという声に、何人かの子供達が箱に近づき、中身を取り出して包装紙を剥がした。
 中には、ぬいぐるみやボードゲームが入っていて、子供達がみんなで遊べそうなものばかりだった。
 未来も椅子から降りて大きな箱に向かう。そして箱の外側をしげしげと見つめていた。
 未来が妻に向かって手招きをする。
「おばさん、こっちに来て〜。」
 プレゼントを手にした子供達の歓声に負けない大声で妻を呼ぶ。
 妻は、一瞬、不思議そうな表情を浮かべたが、手にしていたティースプーンをテーブルに置くと、席を立ち、未来がいる方に歩いて行った。
 妻が箱に近づくと、未来は箱の上蓋部分を指さして、何事かを妻に訴えている。
 妻は困った顔をしながら、しゃがみ込んで、上蓋を覗き込んだ。そこに書かれている事を説明しているようだが、みらいは、妻の説明を聞いても、納得していないようだった。 しばらくすると、妻がみらいの手を引いて、テーブルに戻って来た。
「おかえり、箱に何か書いてあったのかい?」
私が聞くと、妻は困惑した表情で言った。
「サンタさんの住んでいる場所を知りたいんだって。」
「えっ?」妻の言っている言葉の意味がよく理解出来なかった。
「あのね、サンタさんの箱をね、お昼にクロネコの人が持ってきたの。」
みらいが、妻の言葉を引き継いで説明してくれた。
「郵便の人が持ってきたんだから、郵便の人はサンタさんに会っているんでしょ、その人にお願いして、サンタさんのお家に連れて行ってもらうの。」
みらいは得意げな表情でそう言った。
「みらいちゃんは、箱の伝票を読んでほしかったみたい。」
「伝票って、送付状の事かい?」
「そう、で、送り主のところに書いてある住所と名前を読んでってせがまれたの。」
「で、なんて書いてあったの?」
「・・・・サンタクロースって書いてあるだけ。」
「・・・・。」
「でも、取り扱った営業所は、大橋郵便局だったわ。」
「なるほどね、サンタさんは大橋市民なんだね。」
誰かしらないが、妻以上に奇特な人がいるらしい。
「とりあえず、何かの手がかりになるかも知れないから、伝票の写真を撮ったわ。」
妻の携帯を覗き込むと、伝票の送り主の部分がアップにされて写っていた。
そして、そこには書き殴ったような筆跡で サンタクロース  とだけ書かれていた。

350 :ms07b3:2010/10/31(日) 21:17:38 ID:zoG/4w9w0
間違ってageてしまいました。
申し訳ありません。

351 :ms07b3:2010/10/31(日) 22:34:36 ID:zoG/4w9w0
「クリスマスは誰にでもやってくる C」
クリスマス会の間中、妻はみらいと色々な話をしていた。
学園での生活の事、同じ部屋で暮らしている、一つ年上のきょうこちゃんの事。
サンタさんが去年プレゼントにくれた、うさぎのぬいぐるみの事。
みらいは、妻に一生懸命に話していた。その中で、妻とみらいは一つの約束をした。
サンタさんがプレゼントを発送した郵便局とその周りで、サンタさんのお家を
探すというのだ。
クリスマス会が終わり、私たちもお暇する時間になった。
みらいは、私たちを玄関まで見送ってくれたが、職員の声に促されて、自室に
もどって行った。
廊下の奥に消えてゆく、みらいの後ろ姿を妻が寂しそうにみつめている。
「今日は、いろいろとありがとうございました。」深々と頭を下げる、園長先生に礼を返す。
「こちらこそ、遅くまでお邪魔してしまいまして・・・。」
「いえ、普段と違う大人と過ごすのは、子供達にとっても良い経験ですから。」
ガラスの向こうの教室では、高学年と思われる園生達が、パーティーの後片付け
をしていた。
「みらいが随分と引っ付いていましたけど、ご迷惑じゃありませんでしたか?」
「いえ、いろんな話ができて面白かったですわ。」
「そう。それを聞いて安心しました。みらいは少し人見知りが激しい子供ですか
ら、宮本さん御夫婦に懐いている姿をみて、びっくりしたんですよ。」
「そうなんですか、すごく人なつっこい子なのだと思っていました。」
「職員や園生以外とはめったに話さない子なので、よほど宮本さん御夫婦を気に
入ったんでしょうね。」
ドアを開けると、冷たい風が吹き込んできて、教室のガラス戸を揺らした。
「では、ここで失礼します。」
駐車場まで見送ろうとする園長先生を制して、私たちは表に出た。

車の中も、外の寒気に冷やされて、まるで冷蔵庫のように冷え込んでいた。
エンジンをかけて、ヒーターを全開にする。
妻は、後部座席から膝掛けを取り出して、毛布のようにくるまった。
先にヒーターを入れておけば良かったと少し後悔する。
車をバックさせて駐車場を出す。なんだか心地よい疲労感が身体を支配している。
「みらいちゃん。かわいかったね。」
妻が、助手席の窓の外を見ながら言った。
「そうだね。かわいかったね。」
抱き寄せてハグした時の軽さと頬の柔らかな感触を思い出した。
「なんで、あんなにかわいい子供を捨てるのかしら・・・。」
「・・・・人にはそれぞれ事情があるさ。」
「・・・・でも。」
「でもじゃない。子供を育てられない事情なんていくらでもあるさ。貧乏、病気
、離婚、育児放棄。今の時代、逆に馬鹿な親から離れた方が幸せになれる子供だ
っているよ。」
「望んでも子供が出来なかった私たちみたいな人もいるのにね・・・。」
妻が大きな溜息をつく。
「人生なんてそんなものさ。みらいちゃんの未来に幸多かれし事を願うばかりだ。」
車内の暗い雰囲気を紛らわす為に、あえて軽い口調で言ったのだが、妻は非難の
籠もった視線を投げつけてきた。
「今すぐじゃなくて、近い将来でいいから、私は里親になりたいの。血の繋がりは
なくても、次の命を育み、育てたいのよ。」
「俺は、他人の子供を育てられるほど、出来た人間じゃないよ。」
何度となく繰り返して来た言葉の応酬。妻の気持ちは判らなくもないが、父親の愛
情を知らずに育った俺は、子供を愛する自信はなかった。

物心ついた時には、すでに父親は蒸発して消え失せた後だった。
18で俺を生んだ母親は、まともな会社に勤められる筈もなく、水商売を生業とす
るしかなかった。母親は、男なしでは生きられないタイプの女だった。
思い出せるだけで、6人の男が我が家を出入りし、最初は上手く行っていた関係が
しばらくすると、罵声と何かが壊れる音に変化していった。
母親は、酔うと幼い俺に「あんたがいなければ幸せになれるのに」と言って絡んだ。

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 22:43:35 ID:MQw9ed9l0
wktk 支援。 sage忘れドンマイ!

353 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 23:03:07 ID:ejux0Lib0
さあこい!
待っている!

354 :ms07b3:2010/10/31(日) 23:21:06 ID:zoG/4w9w0
すみません
今週はCで終了です。
単身赴任先の高崎に帰ります。

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/10/31(日) 23:35:54 ID:5jqxyeLf0
>354
おつおつ。
まだ序章かな?
今後の展開に期待しております。


356 : ◆Eby4Hm2ero :2010/11/01(月) 09:09:36 ID:7ROIgkdc0
>>354
乙です。

さて、今回の「サンタさんのプレゼント」以外に竜虎がどう関わってくるのか……
期待します。


そしてクリスマスより更に気の早いネタを投下w

357 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/01(月) 09:10:51 ID:7ROIgkdc0
お題 「隠したい」「亜美」「先導」



 ぽちぽちとボタンを押す度、テレビに映るものはバイクに先導される駅伝ランナー、タレントのトーク、初詣の中継と変化して。
 電源を切ってリモコンを放り出し、大河は畳の上にごろんと横になる。
「あー……やること済ませちゃうと正月って意外ににヒマよねえ……特番はつまらないのばっかりだし」
「おう」
 応えながら竜児は年賀状のチェック中。
 北村のは墨跡も鮮やかに『謹賀新年』。実乃梨のは右手を顔の横に掲げたイラストと共に『がしょ〜ん!』。亜美のは自身の晴れ着姿の写真に『A HAPPY NEW YEAR』。
「ねえ竜児。竜児はおじいちゃんの所行ってきたのよね?どうだった?」
「どうって聞かれてもな……普通に年始の挨拶しておせち食って……おう、そういやおせちの作り方のコツ色々と教わってきたぞ」
「さっき食べたおばあちゃんの黒豆、美味しかったもんねえ……来年は私も行こうかしら。よ、嫁なんだし」
「そりゃこっちとしてはかまわねえし、じいちゃんもばあちゃんも喜ぶと思うけど……お前んちの都合はどうなんだよ?」
「ママの実家は元々正月には行かないし、パパの所は今年で顔見せ済んだし」
「いや、一回行ったからもういいってもんでもねえだろ……どうだった?」
「ん、いい所だったしいい人達だったよ。『新しい娘です』って紹介された時はちょっと恥ずかしかったけど」
「おう、そいつはよかった」
「お年玉もいっぱい貰っちゃった」
「そうだ、じいちゃんたちから大河の分のお年玉も預かってるんだった」
「わ〜い! ねえ竜児、懐もあったかいことだしどっかに遊びに行かない?」
「いや、今日はまだ殆どの店が休みだろ」
「そうなのよねえ……やっちゃんの新年会にお邪魔するとか」
「やめとけ、なんせ毘沙門天国と弁財天国合同だからな」
「それは……ちょっと怖いわね」
「久しぶりにベロベロになって帰ってくるぞ、きっと」
「あ〜あ、そうするとやっぱりヒマねえ……」
 大河はゴロゴロと転がって、泰子の女性誌を手に取ってパラパラとめくり、
「……ねえ竜児、あんた隠し事とかしてないわよね?」
「……なんだよ急に」
「ほら、これ」
 身を起こして開いて見せるのは、『恋人に隠しておきたい事トップ10』なる記事。
「おう……」
「『過去の恋愛』ってのが男女どっちのランキングにも入ってるわよねー。そのへん竜児はどうなのよ?」
「あのなあ、俺達が付き合い始めるきっかけは何だった?」
「……ああ、そうだったわね。それじゃ、男の人の『財布の中身』ってこれ何なの?」
「おう、そりゃあれだ、デートの時なんかに実際は厳しくても奢ってみせるとか……ま、男の見栄だ」
「……竜児はそんなこと無いわよね?」
「そりゃ、ずっと共同生活してて経済状態も知ってる相手に見栄張ってもしょうがねえだろ。それより女性で『素顔』とか『体型』とかが上位なのは……どうなんだ?」
「ほんとあんたはデリカシー無いわよねー。ちょっとでも綺麗に見せたいってのは女として当然じゃないの」
「いや、それと正体隠したいってのは別問題な気が……いずれバレることだろ?」
「バラすのは逃げられないようにしてからなのよ」
「……女って怖いな」
「もしくは、バレても逃げなかった人を選ぶの」
「……お、おう」

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/01(月) 23:50:15 ID:8jJd6vv20
フライング年初めGJw

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/02(火) 00:37:31 ID:xaZwKOef0
>>351の続きを避難所( http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7850/1256747762/ 375 名前:ms07b3[sage] 投稿日:2010/11/01(月) 22:46:16 ID:???)より転載

「クリスマスは誰にでもやってくるD」
俺がグレもせずに生きて来られたのは、早く大人になって独立する事を夢見ていた
からだろう。一刻も早く母親から逃れたかった。
母親が俺の事が邪魔であると同様に、俺にとっても母親は邪魔な存在だった。
昼夜逆転の生活を送る母親と、学生である俺の生活は滅多にクロスしなかった。
毎日、キッチンのテーブルに1,500円が置かれていた。朝・昼・夜の3食を賄うには
充分な金額。学費や、急に金が必要になった場合には、夜、キッチンのテーブルに
メモを書いて残しておく。そうすれば翌朝には必要な金額が置かれていた。
中学を卒業して、地元の高校に進学すると、俺はバイトに明け暮れた。
そうすると、母親と接する機会は全くなくなった。
月に一度、偶然顔を合わせる。そんな関係だった。
幸い、俺はバイトに明け暮れる生活を送っていても、学業の成績は良かった。
高校卒業後、大学に進み、中堅どころのイベント運営会社に就職すると、寝食を忘れ
たように仕事に打ち込み、30歳を過ぎる頃には、大きなイベントを取り仕切る立場
になった。


ティーン向けの雑誌のイベントは、随分と華やかな雰囲気だ。
雑誌の看板モデルが勢揃いして、バレンタインデーのチョコを手にしてフラッシュの
放列に向かい笑顔を振りまく。
観客の多くは小学校の高学年から高校生までの女の子。カメラ小僧も紛れ込んではい
るが、制服・私服の警備員が一定の距離以上には近づけないよう見張っている。
「亜美ちゃーん!」「こっち向いて〜!」と言った黄色い声に混じって
「亜美さま〜。」「こっち向いてくださ〜い。」という野太い声も混じる。
ケミカルウォシュのデニムは色褪せ太い。何年巻いているんだ?と聞きたくなるほど
草臥れたようなチェックのバンダナにカメラマンベスト。川嶋亜美の事務所の人間か
ら、要注意人物だと伝えられた男は、カメラ小僧達の真ん中に陣取り、高そうなカメ
ラでモデルの女の子を狙う。
手元のトランシーバーで舞台袖に配置された警備責任者に注意を促した。

イベントが終わり、出演者達は帰って行く。ただ1人、川嶋亜美を除いて。
「おつかれさま。まだ帰らないのかい?」
俺が聞くと、川嶋亜美は営業用の笑顔を見せた。
「ええ、マネージャーが迎えに来てくれる筈なんですけど、来ないんです。」
困っちゃいますよね〜。川嶋亜美は明るい声で言う。
「次の仕事は?」
「今日はこれで終わりなんです。」
いくら人気モデルとは言え、ティーンズ雑誌のモデル程度に専属のマネージャーなど
いるはずもない、例えそれが、有名女優の川嶋杏奈の娘でもだ。
時計を見るとすでに5時半過ぎ。辺りは暗くなっている。
「俺も帰りだ。途中の駅まで乗っていくかい?」
「でもマネージャーも来るし。」
「そうか、じゃあ気をつけてな。さっき警備の無線聞いていたら、バンダナ巻いた男
が楽屋口の歩道をウロついてるそうだ。」
俺がそう言うと、川嶋亜美は表情を曇らせた。
ポケットから車の鍵を取り出して、歩き始めると、黙って川嶋亜美もついてきた。

車が大橋駅のロータリーに着くと、川嶋亜美はお礼を言って降りていった。
さて、これからどうしようかと考える。
家に帰っても、今日は妻はいないはずだった。
去年のクリスマス以来、妻は毎週のように徳生学院に出かけている。

徳生学院の生徒達の半分には、土曜・日曜を過ごす週末里親がいる。
年明けから、みらいと姉妹のように仲の良いきょうこちゃんが、毎土日、週末里親の
元に預けられるようになると、必然的にみらいはひとりぼっちになってしまった。
時折、訪れる里親候補者に対して、激しい人見知りを示すみらいは、難しい子供とし
て扱われてしまい、早々に里親達の興味の対象から外れてしまう。
しかし、妻だけには、思慕の態度を示すのだった。

360 :ms07b3:2010/11/02(火) 22:22:57 ID:wvCPtlaZ0
「クリスマスは誰にでもやってくるE」
携帯を取り出して妻に電話してみた。プップップという機械音の後、数回コールした
が、すぐに留守番電話サービスに繋がった。もしかしたら既に家に帰っているかも知
れない。そう考えて車を発進させようとしたところで、コンソールボックスに置いた
携帯から聞き慣れた音楽がながれた。「星に願いを」プリインストールされた着信音
の中から、妻からの着信専用に設定しているものだ。
携帯を取り上げ、通話ボタンを押す。
「もしもし。今どこだい?」
「今、大橋の商店街にいるの。」
電話の向こうから、商店街の喧噪が漏れ聞こえてくる。
「1人・・・な訳ないよな。」
「うん、みらいちゃんと一緒よ。」
確か徳生学院には、19時までに送って行かなければならない筈だ。
「みらいちゃんの門限に間に合うのか?」
市街から外れた場所にある徳生学院までは、バスで20分以上かかるはずだった。
「出来れば車で送って欲しい・・・。」
申し訳なさそうな妻の声・・・。
「わかった。駅のロータリーにいるから、迎えに行けると思う。大橋商店街のどの
あたりにいるんだい?」
「須藤コーヒースタンドでお茶してるの。」
「ああ、あそこか・・。」
商店街の外れにあるコーヒーショップ。妻との買い物の途中、たまたま通りかかっ
た時に、どこぞの有名コーヒーチェーンにそっくりな看板に笑った店だ。
3分で行く。そう言って電話を切った。

コーヒーショップで2人をピックアップして郊外に向かう。
道路は少しばかし渋滞気味だ。後部座席には、妻とみらいが座っている。
学院で昼食を食べた後、妻とともに街に出て、約3時間も商店街を歩き回って、
サンタクロースの家を探し歩いたみらいは、疲れているようだった。
ウエストがゴムになっているデニム生地のズボンに長袖のトレーナー。モコモコ
とした中綿キルティングの上着は、お姉ちゃん院生のお古かも知れない。
信号待ちで停まった時、ふとルームミラーで後部座席を見ると、ミラー越しに、俺
をみらいが見つめていた。
「歩きまわって疲れたかい?」
問いかけると、小さく首を振った。
「タイガーさんは、どこに行っていたの?」
みらいが急に質問してきた。
「タイガーじゃなくて、た・い・が だよ。今日はお仕事だったんだ。」
「タイガーさんの方が強そうだよ。」
いや、そう言う問題じゃなくて・・・。みらいの隣で妻が腹を抱えて笑っていた。
「おじさんは、虎さんほど強くないよ。みらいちゃん。サンタさんは見つかった?」
「うーん、郵便の人は、サンタさんのお家知らないって言ってた。」
残念そうな表情は、どこまでも真剣だ。
「おばさんとサンタの家探すのは、今日で何回目なのかな?」
「うーんと・・・。3回目だよ。」
「次こそは、サンタさんのお家を見つけようね。」
妻が、みらいを抱き寄せて言った。
みらいは、うれしそうに頷き、天使のような笑顔を妻に向ける。チクリと胸が痛んだ。

徳生学院には、19時の門限ギリギリで着くことが出来た。
駐車場に車を停めて、妻と2人で玄関までみらいを連れて行く。
車が徳生学院へと続く坂道に差し掛かったあたりから、みらいの笑顔が消えた。
楽しかった1日が終わったのだ。自然と足取りも重くなる。
玄関横の事務室から園長先生が出迎えてくれた。
「すみません、遅くなってしまいました。」
恐縮する妻と俺に、園長先生は笑顔を見せた。
「みらい。楽しかったかしら? 宮本さん達にお礼を言いなさい。」
先生の隣に立つみらいは、小さく頭を下げただけだった。
「みらいちゃん、バイバイ。また遊びましょうね。」
みらいは、妻の呼びかけにも答えず。ただしょんぼりと地面を見つめ続けた。

361 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/02(火) 23:52:58 ID:Fuye4/ML0
>>360
連載乙です
珍しい構成。竜虎にどう絡んでいくのか気になるぜー

362 :ms07b3:2010/11/03(水) 00:48:33 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやって来るF」
帰り道の車内は静かだった。
5歳の女の子が残して行った体温は、後部座席で、今もその存在を主張し続けていた。
ステレオから流れる、ピーターポール&マリーの「500マイル」のもの悲しい調べが、
より一層、得体の知れない喪失感を伸張させているのかも知れない。
沈黙を破ったのは、妻だった。
「今日、園長先生に、宮本さん御夫婦に折り入って御相談したい事が有るから、時間
を作ってもらいたいって、お願いされたわ。」
「用件は?」
「多分、みらいちゃんの週末里親の話だと思う・・・。」
「そりゃ、それ以外の話題はないだろうね。」
「あなたは、どう思う・・・・。」
「前から言っている通り、俺は、他人の子供を育てられるほど、人間が出来てない。」
「・・・・。」
「それに、土日に仕事が入る事もある。父親代わりを務めるには役不足だよ。」
「私は、みらいちゃんを娘にしたい。あの子が、私たちにだけ、心を開いてくれてい
るのは、偶然以上の何かがあると思うの・・・。」
「子犬や子猫を貰うんじゃないんだから・・・。下手な感傷なんて邪魔なだけだよ。」
妻ならば本当の母娘以上に愛情を込め、みらいを立派に育てあげるだろう。
しかし、俺には、子供をほったらかして男に媚びを売るような女の遺伝子と、18歳
の妊娠した女を捨て去って、平気でいられるような男の遺伝子が生命に刻まれている。
そんな男が、里親になんかなれるはずがない。
「感傷なんかじゃないわ。本能よ。私の中の母性が、みらいちゃんを育てたいって
叫ぶのよ。」
妻は、感情を押し殺したような声で言った。
悲しみの陰に揺るぎない何物かを宿した瞳は、俺を見据える。
引き結すばれた唇は、彼女の決意の深さを語る。鬼子母神というものが実在するのな
ら、多分、いまの妻と同じような表情を浮かべているのだろう。
「園長先生に会うのは、いつなんだ?」
「あなたの都合がつく時でいいそうよ。」
「わかった。一週間ばかり考える時間をくれ。」
ピーターポール&マリーの歌声は、「パフ」に変わった。

イベントの企画を考える時には、静かで集中できる場所がよい。最近はホテルのシン
グルルームに自主的館詰になって企画を練るのだが、金がない頃は、神社の参道を登
りつめた場所にある、展望台の椅子に座って考えるのが常だった。
2月半ばなのに、今日は20℃近くまで気温が上がっていて、分厚いダウンのコート
は無用の長物と化していた。
久しぶりに歩く参道は、日陰の部分に雪が残っていて、スウェードのリングブーツに
染みを作った。
駐車場で買った、缶コーヒーを懐から取り出し、プルトップを押し開けて一口啜る。
次の仕事までは2時間ある。移動を考えても、約70分は物思いに耽る時間が出来た
訳だ・・・。
俺にとって、自分を見つめるという作業は、ひどくストレスのかかる作業だ。
だから、自分の原点とも言える場所で、自分という人間を見つめたかった。

俺の思考の根底には、親に愛されなかった子供時代が常にある。
必要とされていない子供。あんたがいなければ幸せになれると母親に言わせる子供。
自分の存在意義が見いだせなかった。
ろくでもない両親から生まれた俺は、ろくでもない子供でしかない。
あんな親たちの遺伝子を次の世代に引き継ぎたくない。
俺は遺伝子レベルからして、自分の事が嫌いなんだと改めて気づかされる。
では、自分以外の遺伝子を持った「みらい」を、里親として育てるのはどうなんだ?
イベントプロデューサーとしての収入を、みらいの為に費やす事に抵抗はない。
逆に、あの子が幸せな未来を手にするのを見たいとも思う。
しかし、引き取り育てる自信はない。・・・・矛盾だな。

ふいに背後の草むらが、ガサガサと音を立てる。振り向くとジャージ姿の赤毛の
女の子が息を切らせて立っていた。
「よーし、一等賞ゲットだぜ!」

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/03(水) 10:53:55 ID:KwIUxoczO
>>357
乙!
もう新年かw
最後の3行の破壊力がすごいwww

>>362
乙!
み、みのりんキター!?
wktkしてまいりました

364 :ms07b3:2010/11/03(水) 16:47:14 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやってくる F−2」
ふいに背後の草むらが、ガサガサと音を立てる。
振り向くとジャージ姿の赤毛の女の子が息を切らせて立っていた。
「よーし、一等賞ゲットだぜ!」
展望台に俺がいることに気がついて、彼女はバツが悪そうに笑顔を見せた。
「すみません、お騒がせしてます。」
お騒がせしてます? なぜ現在進行形? その理由はすぐに解った。
展望台へと続く山道を駆け登ってくる何人もの足音が聞こえてきた。
野球に使う白い練習用のユニフォームを着た、男の子が5人、縦一列になって、展望台
前の狭い草原に駆け込んで来る。多分、後にも部員達が続いているのだろう。
「えーい、女子ソフトの櫛枝は化け物か?」
坊ちゃん刈りのメガネ君が息も絶え絶えに言う。
「ふふふ、日頃の鍛錬の賜物だよ、それに赤いジャージは機動力3倍の証だよ。」
櫛枝と呼ばれた女の子は、草原にへたり込む、白いユニフォーム達を見て不敵な笑顔を
見せた。
「誰だよ、体力強化にトレールランニング取り入れたの!」
「体力強化の前に、死人が出るぞこれ。」
男の子達は、口々に文句を言う。
「ふっふっふ。君達、本当の恐怖はこれから始まるのだよ。山は登るより下る方が体力
が必要だと言う事を、身を持って知るが良い。」
「まさか、下りも走れって言うのか?・・・?」
「おうよ。ちなみに今日のメニューはこのコースを2周だ。頑張って箱根の山の神の
尊称を目指そう!」
ギャーッと言う男の子達の悲鳴を押し切り、女の子は再び駆け出して行った。
男の子達は立ち上がる事も出来ない。
「軟弱者、それでも男ですかって、セイラさんに怒られるぞ?!」
山道の向こうから、女の子の叱咤が聞こえた。

展望台が白いユニフォーム達の野戦病院と化す前に、俺は山道を降りた。
途中、赤ジャージが率いる白いユニフォーム達に抜かれた。
「怯えろ、すくめ、自らの運動能力を生かさぬまま脱落していけ〜。」
赤ジャージの女の子はそう言いながら駆け下って行った。きっと名のある陸上選手に違
いない。


365 :ms07b3:2010/11/03(水) 18:26:45 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやってくるG」
駐車場に停めて置いた車に乗り込み職場に向かう。
神社から職場に行くには、徳生学院の前の道を通るのが近い。
時計を見ると午後2時半。徳生学院では、もうじき三時のおやつの時間だ。
そう言えば、大橋高校を過ぎた商店街にドーナツショップが有った筈。院生15人と職
員が3・4人いると妻から聞いていた。たまには差し入れでもしようか。そう考えて、車を商店街に走らせた。
少し多めに買ったドーナツの入った紙袋を助手席から取り出して、駐車場から玄関に向かう。
事務室の窓ガラスの向こうに、こちらを見つめる顔を発見した。みらいだった。
両手に持っているドーナツの袋を左手にまとめて、みらいに手を振った。
その瞬間、みらいの顔にぱっと笑顔が広がり、手をふりかえしてくれた。
玄関の扉を開けると同時に、みらいが事務室から飛び出してくる。
ジャージ素材の長ズボンにピンクの熊の絵が描かれたトレーナーは、みらいを普段より幼く見せた。
「たいがーさんだ。なんで。おばさんは?」
矢継ぎ早に質問してくるみらいをみて、少しだけホッとする自分がいた。
みらいの後を追って、園長先生が事務室から出てきた。挨拶を交わし、通りがかったつ
いでに、差し入れのドーナツを持ってきたことを伝えると、園長先生は上がるように勧
めた。しかし、残念な事に談笑する時間は残されていなかった。
「今日は時間がありませんのでこれで失礼します。ですが、今度の土曜日に妻と共にお
伺いさせて頂きます。」園長先生は、とても残念そうな表情を浮かべた。
「え〜、たいがーさん、もう帰っちゃうの?」寂しそうな顔をするみらい。
「うん、お仕事の途中だからね。また、おばさんと一緒に遊びにくるよ。」
前屈みになって、みらいの頭を撫でる。みらいは両腕を俺の首に回して抱きついてきた。
「帰っちゃやだ。たいがーさんと一緒にお家に帰りたい。」
イヤイヤをするように、みらいは首を振った。首にまわされた腕に力が入る。
この子は、こんなにも俺達夫婦を好いてくれているのか・・・・。
「今日は木曜日だから、今日と明日の2回寝たら、おばさんと一緒にみらいちゃんを迎
えにくるよ。我慢できるかい?」
左腕をみらいの膝裏にまわして抱き上げる。右手でみらいの頭を何回も撫でた。
何も言わずに1分ほどなで続けていると、ふいに首にまわされた腕の力が弱まった。
「本当に? 約束だよ。」か細い声で聞いて来るみらいを、俺はいっそう強く抱きしめた。
「約束するよ。土曜日は、おじさんのお家に泊まって行こうね。」
勝手に約束してしまった事に気がついて園長先生を見ると、静かに頷いてくれた。
その日の夜、いくつかの予定をキャンセルして早い時間に帰宅した俺は、久しぶりに妻
を外食に誘った。
すでに作り終えていた夕食は、翌日の朝食と昼食の弁当にまわす事で妻を説得し、馴染
みの洋食屋に出かけたのだ。
洋食屋と言ってもお上品な店ではない。社会人になったばかりの頃、妻とデートをする
時に利用したごく普通の街の洋食屋だ。
L字型のカウンターに、今となっては珍しいスチール製の四つ足のテーブル。テーブル
クロスは白のレース。客層も贅沢とは無縁そうな若者とサラリーマン。値段も手頃。
ある程度の収入を得るようになってからも、俺達夫婦にとって洋食と言えばこの店だけだった。
俺はチーズハンバーグセットのごはん少なめ&ビール。妻はデミグラスソースがたっぷ
りかかった、特製オムライスを頼む。
「今日、徳生学院に差し入れのドーナツを持って行って、みらいちゃんと土曜日に迎え
に来るって約束してきたよ。」
「えっ?」
「養女に迎えるかどうかは別にして、みらいちゃんの週末里親になるつもりだ。」
「・・・・。」
「反対かい?」妻が黙っていることに不安を覚えた。
「どうして急に、そう思うようになったの?」
「わからない。みらいちゃんを抱き上げてたら、急に意地を張ることが馬鹿らしくなっ
たのかも知れない。」
「・・・・。」
「子供ってさ、大人と違って全力で感情を示すだろ、みらいちゃんは俺達と一緒にいた
いって必死になってしがみついてきたんだ。俺が頭の中でどんなに理屈を捏ねたって、
みらいちゃんを抱きしめてあげたいって感じたのは本能なんだよな・・・・。」
「・・・・。」
「言いつくろったりせず、あの子を大事にしてやりたいって感じた事に素直になるよ。」
男の人にも「母性本能」があるのね。そう言って妻は泣きながら笑顔を見せた。

366 :ms07b3:2010/11/03(水) 20:19:28 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやってくるH」
土曜日。前日、遅くまで打ち合わせが続き、自宅に帰り着いたのは午前3時過ぎ。
風呂も入らず、着ていたシャツとパンツを脱いで下着だけで布団に潜り込んだ。しかし、朝7時には
たたき起こされて、シャワー室にぶち込まれた。
 木曜の夕食から帰った後、妻は片付けの鬼と化した。リビングや寝室、風呂場は勿論のこと、普段
あまり使用していない6畳の和室の畳まで拭き清める始末。
 片付けが終わったら、子供用のシャワーキャップから、子供用の洋式便座に至まで、ありとあらゆ
る子供用品を買い揃えてきた。
 風呂場には、イチゴの形をしたかわいらしいスポンジ。つい一昨日までは、俺達夫婦の2本しかなか
った歯ブラシいれにも、パンダの絵柄が入った子供用歯ブラシが差し込まれている。
 髭をあたり、風呂から出ると、既に妻のおでかけ準備は整っていた。みらいを迎えに行くのは11時
の約束だから、いくら何でも早過ぎるだろう。それだけ、妻は今日という日を楽しみにしていたのかも
知れない。
 約束の11時少し前に徳生学院に着いた。駐車場には何台かの車が止まっている。殆どが、週末里親
として子供を迎えに来た、俺達とにたような境遇の夫婦だ。
 何度か日帰り(正しくは半日)で出かけた事は有るけど、泊まりとなると若干事情が変わってくる。
みらいに関するいくつかの注意事項、食品アレルギー・薬アレルギー、持病や夜尿症等の癖。担当の職
員から、事細かく申し送りを受けるとすでにお昼に近い時間だった。
 職員と、居残る院生に見送られて徳生学院を後にする。
 昼食は、例の洋食屋で食べる事にしていた。
 初めて3人で食べたのはオムライス。俺達夫婦の間で、この洋食屋での思い出がまた一つ増えた。
 こうして、血のつながりのない3人の仮の家族がスタートした。

 3月のひな祭りは、妻が実家から雛人形を持ってきて3人で飾った。
 4月はお花見。妻が花見弁当を作りすぎて、食べきれなくて、周りの花見客に振る舞った。
 5月はドライブで千葉の牧場へ。牛が怖いとみらいが大泣きした。
 6月は市内に新しくできた「ラクージャ」というレジャー施設へ。プラネタリュウムに感動する。
 7月はプール。幼児用プールに中学生の女の子が入り込んでいるのを見て妻と苦笑する。
 8月は川原でバーベキュー。近くのグループと意気投合し大騒ぎになった。
 9月はお月見。みらいが作った月見団子を食べる。月うさぎの由来を話したら泣かれた。
 10月は徳生学園の運動会。また妻が大量のお弁当を作り、院生が総出で食べ尽くす事になった。
 11月は高尾山で紅葉狩り。体力不足とダイエットの必要性を痛感する。子供の体力は無尽蔵だ。
 そして12月・・・・。
日曜日の大橋商店街は混雑していた。3人で「かのう屋」で夕食のハンバーグの材料を買い、自宅の
クリスマスツリーに飾るオーナーメントを買って帰る。
 大橋商店街は、商店街一丸となってクリスマスディスプレイに力を入れているのか、各お店のショー
ウィンドにはツリーが飾られ、カッティングシートや白い発泡樹脂で「Merry Xmas」の文字やサン
タクロースの姿が描かれていた。
 本屋さんの前で、サンタクロースの衣装を着た女の子が、絵本の読み聞かせ会のチラシを配っていた。
みらいは参加したかったようだが、午後7時の門限に間に合うように夕食を食べるため、参加するのは
無理だった。
 みらいは名残惜しそうに、サンタのお姉さんと握手をしてその場を離れた。
こうして子供と歩いて見ると、サンタグッズの多い事。お肉屋さんでは豚と牛がサンタの衣装を着たポ
スターが飾られ、ペットショップでは、猫がサンタの帽子を被っている。
 物珍しいサンタグッズを見つける度に、みらいは駆け寄ってジッと見つめる。そして俺達が待ってい
る事に気がつくと、慌てて駆け寄り、右手を俺と、左手を妻とで手を繋いだ。
「みらいちゃんは、本当にサンタクロースさんが好きね。」
妻が笑って言った。
「うん、私、サンタさん大好きなの〜。」
「あらそう、じゃあ今年も来てくれると良いわね。」
「う〜ん。」
そう言ってみらいは、俺達の腕にぶら下がった。ブランコのように腕を持ち上げるとおさげにした髪を
結んでいる白い布製の髪留めが揺れた。
少し先の道ばたで、白いコートを着た女の子が突然しゃがみ込んだと思ったら、両手両足を拡げて大
きくジャンプした。
「私、クリスマスだーい好き。」
女の子は大きな声で叫んだ。妻もみらいも笑顔になった。
そう、みんなクリスマスが好きなのだ。


367 :ms07b3:2010/11/03(水) 21:19:57 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやってくるI」
12月10日。大手出版社主催のファッション業界人向けのクリスマスパティーが行われた。
この秋にオープンしたばかりの話題の新らしい商業施設には、タレントを始め、女優・俳優・お笑い
芸人等が招待されて、テレビのワイドショーのカメラも入っていた。
 これからクリスマスまでの間はイベントが目白押しだ。正直、家に帰っている暇もなく、よくてソファー
最悪、設営途中の会場の床に段ボールを敷いて寝るようになる。
 今回は招待状がなければ会場に入ることが出来ないクローズドパーティーだから、訳のわからない輩
は入って来られないが、その分、プライドの高い芸能人を相手にしてイベントを運営するのは気疲れだ。

 川嶋亜美が、折り入って相談事が有ると言って、バックヤードに入って来たのはイベントが終わって
一時間程が過ぎてからだった。
 挨拶を交わすべき関係者は帰って行き、残るは仕切り部隊と肉体労働専門のスタッフだけ。やっと落
ちついたところだった。
「やあ、人気モデルさん。お疲れさまだね。」
「お疲れさまです。あのちょっと相談があるんです・・・・。」
「なんだい、また駅まで送れって言うのかい?」
そう言ったら、少しだけ嫌そうな顔をした。しかし、その後の顔面変化はまさにプロだった。
「あの〜。このイベントで使ったツリー欲しいんですけどぉ。出来たらタダで。」
「えっ? このツリーって、こんな馬鹿でかい物を自宅に飾るのか?」
さすが大女優の娘。随分と剛毅な申し出じゃないか・・・。
「いえ、学校のクリスマスパーティーで飾りたいんですよ。」
細かい事情を聞くと、2学期の終業式の後に有志でクリスマスパーティーをやるそうだ。
へー面白いじゃないか。
これだけでかいクリスマスツリーは、保管に手間がかかるうえに、倉庫の使用料もかかるから、一度
使ったら廃棄する場合も多い。このツリーも同じ運命を辿り、年明けには粗大ゴミとして処分される。
ただツリーの所有権は発注者であるから、俺の一存で判断する事は出来ない。
 携帯を開き、今回の主催者側の責任者である広報部長のアドレスを呼び出す。
「とりあえず、事情は伝えてあげるよ。でも交渉は君自身がやるんだよ。」
川嶋亜美はコクンと頷いた。

時計の針は午前一時を回っている。会場はあらかた片付き、あとに残るのは、このツリーの解体だ
けだ。空調の切れたホールは意外と寒い。身体を動かしている野郎どもには丁度よいが、パーティー
ドレスにトレンチコートを羽織っただけの川嶋亜美は、すこしばかり寒そうだった。
「風邪ひくぞ。暖かいところにいろよ。」声をかけたが首を振るだけだった。
川嶋亜美のお願いは、広報部長の許可が出た。この場で適当な大きさに壊す予定が、作業開始直前
に分解して梱包するという手間がかかる作業に変更になった。13人×4時間の作業予定が、13人
で6時間という予定に変更になった。大の男が13人。時給3,000円で計算したとしても、川嶋亜美
の「お・ね・が・い」の一言で、主催者側は78,000円の予定外の出費。そして分解した後、川
嶋亜美の所属プロダクションの倉庫まで運ぶのに、メインモデルを務める雑誌社のスタッフが動員さ
れる。職人には金が払われるが、動員されたスタッフには残業代も出ない。他人事とはいえご苦労な
事だ。
 川嶋亜美が偉いのは、お願いをした事により、どれだけの人間が迷惑を被り、人件費がどれだけ掛
かるかを逃げずに見つめている事だ。
 友人の為とはいえ、なんの根回しもなく、思いつきの行動でおねだりをした結果、多くの人に迷惑
かけているいる事実を、歯を食いしばって見つめ、今、この場で出来る事を見つけようとしている。
 綺麗な洋服を着ているのに、解体で出たゴミを拾い、分解した物が搬出されていく導線に邪魔な物
が置いてないか確認して片付けている。
 最初はブーこら文句を言っていた作業員も今は、気遣う声をかけている。
 この子は、川嶋杏奈の七光りでモデルをやっていると思っていたが、その辺りの2世タレントとは
違うなと感心した。
 結局、川嶋亜美は、全ての作業が終わるまで立ち会い。雑誌社のスタッフの運転する車で帰っていった。


368 :ms07b3:2010/11/03(水) 23:50:20 ID:Wuk1IwJ10
「クリスマスは誰にでもやってくるJ」
12月24日。みらいと出会ってちょうど一年が経った。去年と違うのは、院生の里親達が招かれ
参加している事だろう。
 里親の母親達の間でネットワークが立ち上がり、イベント事でお料理や設営を行う必要があれば、集
つまり、わいわい言いながら準備を整えるようになった。
 父親達も役に立たないながらも部屋の飾り付けを手伝い、何とか面目を保った。15人いる院生の中
で週末里親を持たない子供達も、最近は週末ごとに、誰かの家に連れられて行き、土日は、面会の予定
がない時には、院生が誰もいないなんて状態になってしまっている。
 母親達の合い言葉は「どの子もうちの子」であり、一切分け隔てがないのだ。
今年のサプライズは川嶋亜美の協力で成り立っている。クリスマスツリー解体の時に、徳生学院の子
供達とクリスマスパーティーの話をしたところ、お手伝いの申し出があった。何で君が協力を申し出る
んだ?と聞いたら。「宮本さんには借りが有りますから」とニヒルな笑顔で返された。
「人手も料理も足りているよ。足りないのはサンタクロースだけだ。」
「サンタクロース?」
「そう。今は、男親はみんな顔がばれていてね、普通にサンタクロースの衣装を着ただけだと、○○ちゃ
んのパパだって言われちゃうんだ。」
子供の夢を壊すなって女房に言われていてね・・。そう言ったら川嶋亜美は任せてくださいと言った。
パーティーが始まる直前に一台のタクシーが駐車場に停まった。中からは川嶋亜美と熊のサンタクロース
が降りてきた。
 川嶋亜美は熊サンタの手を引き、裏口へ回る。手には蛍光イエローの丈長のはっぴ。
「宮本さん。借りは返しましたよ。」営業用スマイルを見せた。

 熊のサンタの破壊力は抜群だった。去年と同じ失敗を繰り返さないよう、熊サンタは登場直前まで
子供達に見えない場所に秘匿され、最高のタイミングで登場した。
 高学年の院生は爆笑。低学年から幼児の院生は叫声をあげた。熊サンタからのプレゼントは例年通り
お菓子の入った長靴だったが、その他に子供達それぞれの名前が書かれた包みが手渡された。中身は手
袋やらカバンやら実用的なものだったが。子供達が喜んだのは言うまでもない。
 時間の都合上、熊サンタは会場を後にした。来た時と同じように川嶋亜美に手を引かれて帰ってゆく。
そうして、今年のクリスマスパーティーは終わった・・・。もう一つサプライズを残して・・・。
 今年も、差出人「サンタクロース」の段ボールが届いた。ただ去年と違うのは、すばらしく綺麗な
筆記体でサンタクロースと書かれていた事だろう。
 園長先生の判断で、この段ボールの中のプレゼントは、子供達が寝静まった後、そっと部屋の中に
置いておく事になった。
「その方が、本当のサンタさんからのプレゼントらしいでしょ。」悪戯っぽい笑顔を浮かべた。

 片付けを終えたところで、みらいに声をかける。「今日はみんなと一緒に過ごすかい?」っと。
みらいは少しだけ迷ったけど、俺達と帰る方を選択した。
 院生の内、今日は高学年が4人。低学年が5人残ることになった。みんな、サンタさんが来ることを
期待しているのだ。

帰りの車の中。みらいは妻の腕の中で眠っていた。
底冷えする寒さ。冷たい風。クリスマスイブらしい静かな夜だ。
次の交差点を曲がれば我が家はもう少し。ウィンカーを出して左に寄る。ニットキャップを被った女の
子がライトに浮かび上がった。女の子が通り過ぎ、安全を確認して発進する。
 大橋高校へと続くこの道は、少し急な坂道になっている。アクセルを踏み込む。そのショックでみらい
が目を覚ましてしまった。
 キョロキョロと辺りを見回すみらい。俺はルームミラーをチラリと見やる。
「あーっ、サンタさんがいる。」突然、みらいが叫んで左側の窓に近づく。
みらいのあわてぶりに驚いて、俺は車を停めた。


369 :ms07b3:2010/11/04(木) 00:27:01 ID:b3/NA4yu0
「クリスマスは誰にでもやってくるK」
大橋高校の校門の前に熊のサンタが倒れていた・・・。
 何が起きたのか判らないから、俺は妻とみらいに車内で待つように言った。
もしかしたら、事件かも知れないのだ。
 運転席を出て、熊サンタに駆け寄る。頭部が身体から離れていて、俗に言う中の人が見えていた。
辺りが暗くてよく見えないので、俺は携帯のフリップを開けて、中の人の顔の前に光を当てる。
「うぉっ!」思わず叫んでしまった。
うっすらと開いた瞼から覗いているのは強烈な三白眼。邪眼もかくやという代物。商売柄、その筋の
世界の方にも知人はいるが、この方は幹部クラスに違いない。闇討ちにでもあったのか?
念の為に周囲を確認するが、異常はない。チャカもポン刃もないしナイフもない、まさか毒殺?
「とりあえず救急車だ・・・。」119と押す直前。中の人が呻いた。
「くしえだ〜。たいが〜。やすこ〜。」
情婦の名前を呼んでいるのか・・・・・。
 とりあえず、意識を回復した中の人に事情を聞くと、今日は学校でパーティーが有って、その準備
で動き回っていて疲れて倒れてしまったのだという。
 住所を聞くと、ここから歩いて帰れない距離ではないが、意識が朦朧としているようだから、車で
家まで送ることにした。
 車で送る事を伝えると、中の人はふらつきながら頭部を装着した。しきりに寒いといいながら。
 助手席に乗せ車を折り返す。中の人の家は古ぼけたアパートだった。

 みらいは大興奮だった。探し求めていたサンタクロースの家を見つけることが出来たと。
興奮が醒めやらぬままマンションに帰ると。ベランダに大きな箱が置かれていた。
「あれなにっ?」そう言ってベランダに飛び出していくと箱に恐る恐る近づいて行った。
妻と俺はすぐ側に立つ。みらいが箱を見つめてパッ喜びの笑顔を浮かべた。
「サンタさんからのプレゼントだ〜。」
箱には、みらいでも読めるように、ひらがなで「さんたくろーすより」と書かれていた。
寒いから中に入りなさいと促してリビングに移動する。
みらいは箱の周りを小躍りして喜び、下の階に音が響かないか心配する妻をハラハラさせた。

翌日。このところの寝不足の俺は、目覚ましがなっても起きられなかった。2つめのアラームが鳴るが
これもすぐに止めた。
 リビングの方から、トーストが焼ける臭いが漂ってくる。
 遠くで妻がみらいに俺を起こすように命じる声がする。
「はーいママ。パパを起こしてくるね。」
小さな足音が近づいてくる。扉が開く。
「パパ。ママが起きなさいってさ。」
目を開けると、愛しい「未来」のはにかんだ笑顔があった。
「おはよう、未来。」
抱き寄せてハグをした。
(了)


370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 02:15:32 ID:nMJdHMj20
なあお前らはもう知ってるかと思うんだけど1月からドラゴンクライシスっていうラノベアニメが始まるんだが
ヒロインのローズが惚れる主人公の名前が竜司って言うんだよ
そんでローズのCVが釘宮理恵なんだけどさ…竜司のCVは下野紘なんだよ!
ものすごく惜しくてしょうがねえ…

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 07:41:27 ID:VK/AdL5xO
今から抗議しよう

372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/04(木) 07:56:11 ID:cbZFdbDO0
>>369
乙&GJ!
とらドラ!キャラの絡ませ方が面白かった。こーゆーのもアリか。
一年前と「サンタクロース」の字の書き方が違うってのがいいね。

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 02:02:54 ID:U1YrguhS0
>>369
早めのクリスマスGJ
大河が慈愛の表情で見つめていたおチビちゃんの話か
ほぼ一瞬だけ出演のモブにここまでエピソードが付くとは

>>370
PV見てきたけど、ローズの声は大河とは別物だった(ドスが無くて甘ったるい)

大河の声って釘宮の他の女キャラと比べると異質だな
ツンデレ的なかわいい意地っ張り感じゃなくて本気の不機嫌さがにじみ出てる
くぎゅマジ演技派

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 03:22:06 ID:ERGImTlm0
>>369
GJ!乙です!
素晴らしい! 十二分にとらドラ!世界が楽しめた。そして、じわっと来た。こういう描き方もあるんだなぁ・・・
亜美ちゃん、やっぱいい奴杉
みのりん、ワロタ。

>>373
> 大河が慈愛の表情で見つめていたおチビちゃんの話か
> ほぼ一瞬だけ出演のモブにここまでエピソードが付くとは

ああっ、そうか! 17話「…水星は逆行する」のドーナツのとこ。
確かに、普通の親子じゃ、「あらそう・・・」はちょっと違和感も。
すげーっ、これからはじんわりと見てしまいそうだ

「グズ馬鹿駄犬アホ竜児」は何度見ても吹く。
くぎゅうの大河はいいよなぁ、やっぱり。

375 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/05(金) 10:38:32 ID:Ijc2L0OR0
お題 「失敗」「バランス」「一瞬」



 木片を積み上げた塔の高さは当初のおよそ1.5倍。
 それに伴って細くなった塔は、僅かの振動でも崩れてしまいそうで。
 竜児は摘んだ木片にそろそろと力を加えていく。
 失敗すれば、待つのは破滅。ゆえに一瞬たりとて気を抜かぬように。
「た・か・す・く〜ん♪」
 艶めかしい声と共に耳に吹きかけられる吐息。一瞬動きが止まるが、なんとか耐える。
「あーっ!ばかちー反則!」
「体に触っての妨害じゃないもの、セーフよ。つーか!焼きそば食ってる箸で人を指すんじゃねーよ!」

 まあ、要するにジェンガ大会@『おれのこえ』なのである。罰ゲームつきの。

「高っちゃん、ほら、べろべろば〜」
「ちゃらり〜、鼻から牛乳〜♪」
 春田の変顔も能登の小学生のようなネタも無視。ポイントはヨガの呼吸法での精神集中。
「ふ……なかなか手強いね、高須くん。だがその鉄壁の牙城、この笑いの申し子たる櫛枝実乃梨が打ち崩してみせよう!」
 ニヤリと笑いながら実乃梨はマイクのスイッチオン。エコーも最大に効かせて、
「のっぴょっぴょ〜ん!!」
 ょ〜ん、〜ん……
 ……
 …………
 ………………
「……あ、あれ? おっかしーな……えと、それじゃもう一発……ぱんぽれぴにょ〜ん!!」
 ょ〜ん、〜ん……
 ……
 …………
「よし、抜けた」
 ほっと一息つく竜児。向こうで実乃梨ががっくりと崩れ落ちているが、今はスルー。
 バランスを崩さないように注意して抜いた棒を最上段に乗せ、
「逢坂、スカートの上に焼きそばがこぼれてるぞ」
「何っ!」
 北村の声に思わず振り返り、その拍子にジェンガはがらがらと崩れ落ちて。
「……あ」
「『あ』じゃないわよバカ竜児っ!」
 激昂して立ち上がった大河のスカートは染み一つなく真っ白。
「はっはっは、すまん高須、今のは嘘だ」
 なぜかイイ笑顔でサムズアップの北村に、竜児は絶句するしかなく。
「やったやった!高須くん罰ゲーム!」
「麻耶、喜びすぎ。高須くんに悪いわよ」
「そう言う奈々子だって期待してるんじゃないの?」
「……実はちょっと」
「ささ高須くん、約束どおりきっちりかっちり語ってもらいましょうか!」
 何時の間にやら復活した実乃梨がマイクを突きつけてくる。
 助けを求めて見回すも、周囲には期待に満ちた眼差し×7。大河は怒りと羞恥で顔を赤くしたまま視線を逸らせて。
「か……勘弁してもらえねえか?」
「今更逃げようったってそうはイカのなんとやらだぜ高須く〜ん。さあ覚悟を決めたまえ!」
 更にずずいと近づいてくるマイク。
「正直亜美ちゃんはあんまり興味無いんだけどね〜」
 そう言いつつ、亜美も好奇心を押さえきれない様子で。
「高須、ちゃんとルールは守らないと駄目だぞ」
 北村が示すのは、最初に決めた罰ゲームが書かれた紙。
『高須竜児・逢坂大河―――――ファーストキスの体験談を詳しく』

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 12:51:59 ID:2unYEsepO
罰ゲームの内容からして
竜児以外が負けたらどーすんだよwww

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 17:08:20 ID:v3T9Eo/q0
375の続きもぜひ見たい!!

378 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/05(金) 23:43:44 ID:h44+o3250
>>375
乙!
北村わかってるなw
楽しそうでいいわー。その後の妄想が広がるw

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/06(土) 22:23:56 ID:mVTpx/0q0
『Always beside(いつも傍らに)と彫りこんだ指環を大河にプレゼントする竜児』

というシチュが突然アタマに浮かんだ



誰か俺を乙女チック野郎と罵ってくれないか

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/07(日) 16:38:01 ID:ekIf9CZ10
アレか?
その指輪はクラスだの学部だのが一緒になれなかったのが寂しくて
でもそーゆートコロを見せまいと強がる大河にキュンとしちゃった竜児が
なけなしの貯金と寸暇を縫って汗水垂らして稼いだ資金を合わせて買っちゃうんだな?

んで、かまってもらう時間が減っちゃって凹んでた大河がそれもらって
思わず泣き笑いしながらバカ犬呼ばわりしつつ抱きついて竜児をポカポカ叩いちゃうんだな?

んで、竜児と大河がバカップルぶりを発揮する時間が激減してたのを陰ながら心配してた友人一同が
その光景を物陰から見守りつつ口から砂糖を5kmくらい吐いたりするんだな?

>>379の乙女チック野郎!

ところで、オレは何と罵ってもらやぁいーんだ?

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/07(日) 23:10:29 ID:g/KxaYu30
>>369
乙!
じんわり心が暖まりました。
校門前に倒れてるクマサンタを想像して笑ったのは内緒。

>>378
乙!
みのりんw頑張れwww

そして俺もその辺詳しく聞きたいw

>>379
この乙女チック野郎!
色々と妄想が膨らんでてきて眠れねぇじゃねぇか!
よくやった!

>>380
>5kmくらい吐いたりするんだな?
誤字かもしれないけどワロタwww
このラブコメ野郎!


竜虎じゃないけど、こんなもん発見した。
ttp://skm.vip2ch.com/-/hirame/hirame126047.jpg

382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/08(月) 01:15:52 ID:ESuJDFku0
リアルとらチワ!w

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/08(月) 22:51:42 ID:LBtjLtg90
「ねぇ竜児。あんた、並び立つって約束したでしょ?」

「おう、突然なんだよ」

「なんで隠してたの?」

「……何を?」

「しらばっくれるな! あんたが一人で溜め込んでるのはわかってんのよ!」

「いや、何をだ?」

「定期的に発散しないと死んじゃうんでしょ?」

「……は?」

「溜め過ぎたら破裂しちゃうんでしょ!?」

「何の話かさっぱりわからねぇが……」

「事態は一刻をあらそうの! 竜児の命が危機なのよ!」

「ちょっと待て大河! なんで脱いでるんだよ!?」

「い、いいい今、助けてあげるからね! 竜児!」

「お……おぉう!?」

「ぅおおうりゃああああああ!!」

ギシギシアンアン


「っで? いったい誰にあんなこと吹き込まれたんだ?」

「……ばかちーとみのりん」

「あいつら……余計な気を遣いやがって……」

「あああ……こんな恥さらしちゃったら、もうお嫁に行けないわ……」

「……いや、来いよ!?」



粗ギシアンですた

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/08(月) 23:37:37 ID:cnroyyxp0
>>383
ラスト二行にすげー萌えたww

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/08(月) 23:42:51 ID:wxnuSp4D0
大河さん気合い入れすぎ

だが、それがイイ

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/09(火) 01:09:45 ID:X+NlNVda0
>>383
ギシアンGJw大河が上なんですかそうですか

>>380
たった一行のシチュ妄想からそこまでストーリー思いつくなんて
ホントにラブコメ野郎だw

>>379は俺だけどyouが抜けていることに今更気付いてしまった
ああ恥ずかしい

Pの大河100点エンドを考慮するとイタリア語がよかったかもしれない
Sempre accanto a teとか
結婚指環だったらTi amo per sempre(永遠に愛している)とかね

痛痒すぎる妄想なのはわかってるが、
もったいなくてずっと読めなかった最終巻を読み終えてテンションがあがってしまったww
今はPで悶え転がってる

一つ気になってるんだけど、六巻の三十六ページで竜児が呆然と声を失ったのは、
大河にぞんざいな言い方の礼をされたから、ではなく仕草が可愛すぎて萌え死にそうになったから
という解釈で合ってる?

387 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/09(火) 09:49:37 ID:MGeLpaoW0
お題 「櫛枝」「スリッパ」「震わせて」



「ねえ竜児、これどう思う?」
 言いながら大河が目の前に突きつけてきたのは、通販雑誌の1ページ。
「おう……アニマルスリッパ? 悪くないと思うが、お前こういう子供っぽいやつあんまり好きじゃないんじゃなかったか?」
「私のじゃないわよグズ犬。みのりんの誕生日プレゼントなの!」
「おう、そうなのか。櫛枝の……」
 先ほど一瞬鼓膜を震わせて消えた言葉、その意味が竜児の脳に浸透するまで数秒。
「……た……たんじょう、び?」
「……何でブサ鳥みたいな言い方するのよ」
「誕生日っていうとあれだよな、バースデイだよな」
「それ以外の何だって言うのよ」
「誕生日……櫛枝の……おう……おうおうおうおう……」
「ちょっと、竜児?」
「そ、そうだよな、誕生日といえばプレゼントだよな、あげても不自然じゃねえよな。ああでも何贈ったらいいんだ?女子の好みなんてわからねえぞ?そもそもいつどうやって渡せばいいんだ?」
「戻ってこんかこの馬鹿犬ーっ!!」
 ばちこぉーん!!「おぶぅっ!!」
 大河のビンタ(と呼ぶにはあまりに重い一撃)を食らって竜児の体はくるりと一回転。
「お……おう、すまねえ、ちょっと錯乱してたみてえだ」
「まったく、あんたは……」
「えっとだな、念の為に一応確認してえんだが……もうじき櫛枝の誕生日なんだな?」
「そうよ」
「その、誕生会とか、するのか?」
「小学生じゃないんだから……ちょうどみのりんの部活もバイトも休みだから、一緒にごはん食べてプレゼントあげるぐらいよ」
「おう、そうなのか……なあ大河、頼みがあるんだが」
「嫌」
「……大河……」
「……ああもう、わかったわよ。ついでだし、代りにプレゼント渡すぐらいはしてあげる。だけど何あげるかは自分で考えなさいよ」
「さっきお前、俺に相談を……」
「それとこれとは別」
「この間、北村に何あげたら喜ぶかって……」
「うるさい黙れハゲろ」
「おう……そうすると何がいいかな……予算の都合もあるし……」
「……ねえ竜児」
「おう?」
「私の誕生日も近いって言ったらどうする?」
「おう、そうなのか、早く言えよ。まずはケーキの材料揃えとかないとな。その日の夕食はトンカツ……いや、いっそのこと奮発してステーキにするか?
 大河がいつも欲しがってるような服やバッグは俺にはちょっと高いからな……プレゼントは手作りの小物とかになると思うけどそれでもいいか?」
「……ん、いい」
「おう、それじゃ何作るか考えないとな。リクエストはあるか?」
「そうじゃなくて、本当は誕生日はまだ先だから、いいの」
「……は? じゃあ何で近いなんて?」
「ちょっと聞いてみたくなったの、それだけ!」
「……???」

388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/09(火) 18:17:27 ID:lgQ5/KkS0
GJです!(`0`b

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/09(火) 22:25:16 ID:HX9zD69k0
>>387
乙!
この鈍犬www
ビンタ☆してやりたいw

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 21:58:11 ID:HCuEjq6n0
大河「うぅ〜寒い!さむい寒いさぶい〜〜〜っ!竜児!お布団の中入れて!!」

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 22:20:43 ID:OTOSd2sCO
竜児「いいけどよ、お前寝相悪すぎなんだよ。いつも俺を布団から弾き出しやがって」

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 22:39:16 ID:V6kgG2Jx0
ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1448499919

393 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/11(木) 23:22:10 ID:uOK+AKX4O
大河「ハイハイ詰めてくださいよー。はー、あったかい。もっとくっついていい?」むぎゅ

394 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/12(金) 20:50:53 ID:KcUPY2R3O
竜児「ちょ…待て!何か柔らかいものが当た…らないな」

395 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/13(土) 07:12:37 ID:BshrzP9/0
お題 「棚」「とりあえず」「お姉さん」



「……ねえ父さん」
「おう泰児、どうした?」
「俺、すっげえヒマなんだけど」
「だったらお前も服見てくればいいじゃねえか」
「もう一通り見て回ってきたよ」
「……おう、そうか」
「母さんも竜河も、一着選ぶのによくもまああれだけとっかえひっかえ出来るもんだね?」
「憶えておけ泰児、女の買い物は時間がかかるものだってな。それに、今日は荷物持ちだけで済むんだからまだマシなほうだ」
「そうなの?」
「これがデートだったりしてみろ。そのとっかえひっかえに付き合わされた上に『どう?』だのなんだの聞かれて、
 いいかげんな答え返そうもんなら無神経だのセンスがないだのあんたに聞くんじゃなかっただの罵詈雑言浴びせられるんだぞ」
「それ、後半は母さんだけだと思う」
「大河は棚に戻す時にいいかげんに突っ込むもんだから、一々直さなきゃいけねえしな」
「……それも父さん達だけだよね、多分。だけど、そんなに大変なのによく付き合ってられたね?」
「そりゃまあ、大河となら……っと泰児、ちょっと待ってろ」
「ん?」
「緊急事態だ」
 見れば、大河と竜河に何やら話しかけている若い男の二人組が。
 竜河がオロオロしているのは、傍らの大河の機嫌がみるみる悪くなっていくからのようで。
「……どっちの緊急事態なんだろうなー」

「あの連中、竜河の事を『お姉さん』、私の事を『妹さん』って呼びやがったのよ!信じられる!?」
「……若く見られたんだからいいじゃねえか」
「それにしたって限度ってものがあるわよ!あいつら竜児が来たとたんに逃げちゃったから結局誤解したままだし!」
 憤懣やる方ない大河とそれを宥める竜児。
 泰児は一つ溜息を吐くとその場を離れ、二枚のTシャツを手に戻ってくる。
「ねえ母さん」
「何よ泰児」
「そんなに誤解されるのが嫌ならさ、とりあえずこれ着てれば? 父さんとペアで」
 大河はそれを広げて見て、
「泰児……あんた今日晩ご飯抜き」
「えーっ!?」


「……大河」
「何よ竜児」
「結局着るんじゃねえか。というか、いつの間に買ったんだよ?」
「ぱ、パジャマ代りだからいいのよ」
 寝室で二人はTシャツにジャージのズボンというお揃いの格好。
 竜児のシャツには『旦那』、大河のには『嫁』とでかでかとプリントされていて。

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/13(土) 10:16:03 ID:vs22oKa50
>>394
パンパンッ(AA略)

>>395
そのTシャツ着た2人の姿、見てみたい。
泰児のつっこみが、冷静かつ的確でワロタw
子供達は中高生ぐらいかな?
娘より年下に見られる母、怖すぎる!
大河は妖か… おや、誰か来たようだ…

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/13(土) 15:14:37 ID:31Ydypqt0
今日もここは天国だな、みなさんお疲れ!

コミック4巻は1/27発売か。
地味にちゃんと続いてくれてるのが嬉しい。
俺としてはプールのシーンはもっと切羽詰った感を出して欲しかったが…。


398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/13(土) 23:04:50 ID:XnFhtUw30
>>395
乙です
いい雰囲気に和んだ

2人の子供が泰児だとしたらやっぱりヤスって呼ばれるのだろうか、とふと思った

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/13(土) 23:28:41 ID:oVaen2uS0
>>395
乙です!
息子相手にのろけるパパw
両親がこんなラブラブだったら、子どももすくすく育つだろうな

>>397
コミック、最近ちょっとはしょりすぎだよね
無自覚に惚れあってる感じはすげー出てるけどw
地味でもいいから完結までいってほしいなぁ…10巻の内容が読みたすぎる
10年コース覚悟はとっくに出来ている

400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/14(日) 00:36:27 ID:y5vDwt8+0
ttp://skm.vip2ch.com/-/hirame/hirame126998.gif
ttp://skm.vip2ch.com/-/hirame/hirame126999.gif
仲良し

401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/14(日) 01:36:53 ID:If7K795g0
2つ目の時、こんな顔してたっけ
かわいい

402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/14(日) 02:01:08 ID:z2/qULdX0
すっ飛ばした感の強い9巻10巻の内容を視覚化ってのは自分も期待してるな。
コミックも頑張って最後まで書いて欲しいもんだ。

403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/14(日) 21:17:11 ID:smW2K25A0
>>395
乙!
若かりし竜児の苦労が垣間見えるw
ってか大河半端ねぇ!
竜河が逆に傷つきそうだ
最後はフイタwww

>>400
この二人はどー考えても仲良しだよねー
微笑ましいw

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 21:45:33 ID:lJ76IZED0
原作だと大河が弟の世話をする、ってことになってるんだよな?
おしめを替えたり、ミルクあげたり、子守唄うたってやったりするわけだよな?
もちろん哺乳瓶で竜児と赤ちゃんプレイをするわけだよな?

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 22:02:38 ID:t5zojdtn0
久しぶりにみたけどやっぱとらドラ面白いな
二期やれとは言わないけど軽い後日談か竜虎ラブラブぬぷぬぷシーンでOVA作ってくんねーかな

406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 22:14:08 ID:UtRU2oX90
もしOVAやるならスピンオフ2・3がいいな
エピソードを時系列順に並べて最終巻はドラゴン食堂の第一話で終わる

407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 22:42:35 ID:A537FpbK0
スピンオフのOVAはぜひ見たい!
締めは原作同様に透明人間がいいな
能登と麻耶様の甘酸っぱさにも胸キュンするんだが、どうしても竜児に注目してしまう…
大河のロッカーをどんな気持ちで片付けたんだろうとか、「大丈夫だ!…多分!」の心のうちとかw

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 23:11:29 ID:35Grfcdl0
オリジナル要素入れるならドラゴン食堂の続きってのもアリかもしれんね。動く27歳大河が見たい。
他にはバッドエンドさらにいじるとか。パラレル世界ならオリジナルで何やってもいいよ。本編に影響ないし。

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 23:26:41 ID:GQ88ZJba0
tes

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/16(火) 23:54:37 ID:uGqLN/tRO
>>404
哺乳瓶の中身はもしや竜児のせ(自重

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 00:19:36 ID:7X5T1gTW0
OVAはJ.C定番のあれだろ、「手乗りタイガーたん」
「灼眼のシャナたん」、「とある魔術の禁書目録たん」とやって「とらドラ!」でやらない訳がない。
以下妄想(大河が北村の鞄と竜児の鞄を間違えたところをベースに…)

竜児   「やっべー、日直の仕事が長引いちまった。」

大河たん 「誰か来た…!ガサゴソ…(竜児の鞄にもぐりこむ)」

高須家にて

竜児   「あ、進路調査票進路調査票っと…。あれ、なんだこれ?進路調査票に何か見覚えのあるシルエットが…、ぶらさがってる?ってプリントが汚くなるだろう…」

大河たん 「なに、勝手につかんでんのよ、離しなさいよ〜。バタ」

竜児   「あれ?力尽きた?」

ぐ〜〜〜ぐぎゅるるるううう〜〜。

竜児  「腹の音だよな…、チャーハンでも作って食わせるか…。」

みたいなかんじで…。

ドラゴン食堂続編も捨てがたいが俺の弁当を見てくれ!サツ魔イモ、虎肥ゆる秋もOVAやってほしい。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 00:34:04 ID:7X5T1gTW0
>>404
>>410
 
ただ竜児の場合大河の事になると本来の恋愛を忘れるくらい必死だから
ミルクの温度とか砂糖とかの分量とか甘さや量をを気にしすぎてリアル赤ちゃんプレイになりそう。
でもって大河は丸1日竜児の胸で悶えてそうな気が…。



413 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/17(水) 05:34:32 ID:nO3cfVxO0
お題 「なかった」「春田」「ドキドキ」



「高っちゃん、見て見て〜」
「おう春田、それは……アクセサリーか?」
「そ、親父が釣りが趣味でさ〜、ダメになった毛バリを貰って作ったんだ〜」
「へー、なかなかよく出来てるな。でもなんで毛バリ?」
「そりゃアレですよ、釣り針効果!こいつがあれば女の子はドッキドキ!俺はモテモテのパ〜ラダ〜イス!」
「……春田、それはひょっとして『吊り橋理論』じゃねえのか?」
「へ?なにそれ?」
「吊り橋とかで緊張してドキドキするのを、恋愛のドキドキと錯覚するって話だよ」
「えー?俺吊り橋で緊張なんかしないよ?高くて楽しいし気持ちいいじゃん」
「……」


「と、いうことがあってな」
「……あのロン毛虫は本気で底抜けのアホね」
「……残念ながら否定できねえな」
「竜児も気をつけないとアホが感染っとわっ!」
「あぶねえっ!」
「……あー、びっくりした」
「びっくりじゃねえ、春田が底抜けのアホならお前は限りないドジだ。なんでそう何も無いところで躓けるんだよ?」
「う、うるさいわね。好きでやってるんじゃないわよ」
「好きでやられたら堪らねえよ。毎度毎度ハラハラさせられる身にもなってみろ。今だって俺が抱き止めなかったら」
「黙れって言ってるでしょ!というかいつまで人の体に触ってるのよこのエロ魔犬!」
「お前、それが助けられといて言う言葉か!?」
「別に助けてくれなんて頼んでないわよ!」

『『吊り橋理論、吊り橋理論……』』

414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 20:29:15 ID:0ME0hgj80
>>413
乙!
こうやって言い聞かせてたわけだなw

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 23:09:57 ID:IWnd4Elz0
>>413
なるほど>>414のおかげでわかった
GJです

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 23:53:25 ID:NAObSuOs0
このオチはマジ秀逸だわwww

417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/17(水) 23:54:11 ID:eV0/iru90
>>411
手乗りタイガーたん見たすぎるなwOVAかBD化の時に是非

>>413
大河のドジさ加減が常に竜児をゆさぶりにかけていた、とw
吊り橋だけにww

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/18(木) 23:51:00 ID:d/cffcY40
マンガで1番見たいシーンは最終巻の投げチュウだ。
頼んだぞ絶叫氏。

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/18(木) 23:58:25 ID:d/cffcY40
絶叫スレに書き込んでるつもりだったわw。
しかも下げ忘れてるし失礼した。

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/19(金) 00:20:28 ID:zzr7oa210
どんまいw
そして投げチュウ見たい同意
いちちゅっ3000円のほうも可愛いけど竜児の浮かれポンチぶりがww

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/20(土) 23:17:41 ID:RUoVLbni0
※微エロ小ネタ注意





「あのさー、ぱい○りって知ってる?」

「え……なっ……パイ…………!?」

「だからー、ぱ!い!○!り!」

「大声で言うなよ! ちゃんと聞こえてる!」

「で、知ってるの?」

「まあ……一応。つか知らねえ男子高校生はいないと思うが」

「あらそう。じゃあ話は早いわね。してあげるから下脱いで」

「はあ!? おまえ急になに言ってんの!? 大丈夫か!?」

「大丈夫よ、問題ない」

「いや問題ありまくりだろ。第一おまえじゃ挿めなグフッ!」

「挿めるよ! こうやって! ぎゅううっと! 寄せれば! ほらタニマが」

「おう!!」

「ね?」

「でもそんなに寄せたら痛いんじゃねえの」

「平気平気。こーんなに柔らかいんだから♪」ムニュムニュムニュ

「う……」ゴクリ

「挿みたい? 挿みたいでしょ? 挿みたいと言いなさいコラ」

「挿みたいですはい」



ムニュムニュアンアン

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/21(日) 01:10:44 ID:K3DWpZc90
>>99の続きです。

少し空きましたが「シンデレラなんかになりたくない」です。
以下7レスくらい使います。

423 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:12:01 ID:K3DWpZc90

「ねえ、竜児」
「何だよ?」
「会いたい、今すぐ、竜児に会いたい」
「おま、無茶言うなよ」
無茶じゃない、会いたいものは会いたいんだと地団駄を踏むように大河は言い募る。
夜通し電話をしたあの日から幾日も立っていない。
却ってそのことが大河の竜児へ対する気持ちに火を付けてしまった感さえもある。
竜児とてそんな大河の気持ちが分からないわけじゃない。
でも、現実的にそれは難しいのだ。
電車で30分とか1時間で行ける距離なら、思い悩む必要も無く、今度の日曜日に駅前でとでも約束すれば済む話だった。
関東と九州ではそうは行かない。

「どうやって行くんだよ?」
「竜児が来なくていいよ、私がそっちへ行くから」
「こっち来るって、親に黙ってか?」
「・・・・・・うん」
その辺りを竜児に言われると大河の声は小さくなる。
竜児との関係は既に両親にはオープンになっていたものの、まだ、全面的に了承されたわけではないのだ。
そんな中、竜児に会いたいからなんていう理由で大橋の町へ行くことを気持ち良く、両親に理解して貰える自信は大河には無かった。
「日帰りなら・・・バレないし・・・クラスメートと出掛けるって言えば・・・」
「こそこそするみたいで嫌だ」
「竜児は会いたくないの!」
イラ付くような大河の声に竜児も遂に大声を出す。
「会いてえに決まってるだろ!!・・・北村にバイクを借りて飛ばして行きてえくらいだ」
「竜児、免許あるの?」
「・・・ねえよ。あくまでもたとえだ」
それによと・・・竜児はリアルな現実を突きつける。
「電車賃とか・・・あるのかよ?」
「・・・無い」
言いたく無いけど仕方ないから、しぶしぶ言うみたいに大河はつぶやいた。
ひとり暮らしの頃は潤沢すぎるくらいのお金を自由に出来た大河だが、母親も義理の父親も目下、蒸発中の父親、逢坂陸郎の悪しき慣習を続けるつもりは無かった。
現在、大河は高校3年生に相応しい額を毎月、お小遣いという形で母親から貰っているのに過ぎない。
手軽に手に入っていた高価なブランド物のファンションは既に遠い存在になっていたが、大河とてやたら欲しくて買い漁っていた訳ではなかったのだ。
使い切れない金額を渡して来る父親にあてつける気持ちが心の底にあったことに大河は気が付いていた。
だから、それが手に入らなくなってもさほど飢餓感を大河は覚えずに済んだ。
むしろ、少ない金額であれこれやりくりしてコーディネートするのが楽しくすら感じられるほどだった。

・・・大河ちゃん、それすごくない?
・・・すごいって?
・・・それ、東京の有名ブランド・・・あれ?なんて言ったっけ?
・・・「・・・」じゃない?
・・・そう、それ。




424 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:12:55 ID:K3DWpZc90

転校から数ヶ月経ち、大河にも仲の良いクラスメートが幾人か出来ていた。
季節外れの転校生、ルックス十分で小柄でカワイイともなれば否応も無く、注目は高まる。
当然の事ながら、出る杭は打たれるのことわざ通り、大河に対する嫌がらせが一部クラスメートから始まった。
・・・どこの山にもボス猿って言うのは居るのよね。
その頃、竜児への電話で大河が言った台詞である。
まあ、良家の子女がやる嫌がらせで底は浅く、ほとんど大河は無視していたのだが、あることをきっかけに大河は態度を静から動へ切り替えた。

移動教室の変更があったのを大河ひとりを除け者にして連絡が行かない様した小さな陰謀。
しかし、それ自体は成功しなかった。
なぜなら、クラスの中でボス猿の行為を潔しとしないクラスメートも居て、こっそり大河に耳打ちしたのだ。
それが後日、発覚し大河に耳打ちしたクラスメートは教室内でボス猿とその取り巻きから責められた。
幾人かが責められるクラスメートを庇おうと立ち上がったが、ボス猿一派の前に跳ね返されてしまう。
勝ち誇ったボス猿が宣言した。
・・・そのチビと口を利いた人はどうなるか分かったわよね。そんな風になりたくなかったら、大人しく私の言うこと・・・
ボス猿は結局最後まで台詞を言えなかった。

席を立った大河は無造作につかつかとボス猿の机の前まで来ると、スカートがめくれるのも構わず、ダンと大きな音を立てて土足のまま片足を机の上に着いた。
・・・ずいぶん、偉そうな口を利くのね、あんた・・・何様?

猫を被っていたにせよ、押したら泣いてしまいそうな感じを外見に見せていた大河。
その豹変振りに、教室中の誰もが凍りついた。
射る様な大河の視線にボス猿はたまらず、腰を浮かせ、後へ尻餅をついた。
貫禄負け・・・その瞬間、教室中の誰もがボスの交代を認めた。

それがきっかけで大河はクラスの中に友人と言える何人かの知己を得たのだ。

そんな友人から日曜日に遊びに行こうと誘われた大河は気に止めることも無く、あのマンションから持って来たブランド物を着て出掛け、すごいねの声に取り囲まれることになった。
大河にすれば、普段着感覚、とりたてて勝負服でもないし、平気で着たまま竜児の家で寝転がっていたもの。
それが、そんなに驚くほどのことかと逆に面食らってしまった。
あ、とか、え、とか大河が上手く言葉を紡げないでいると周りは勝手に解釈を進めてしまう。
・・・いいなあ、プレゼント?これ。
・・・ああ、私も買ってもらいたいなあ。
・・・無理、無理、成績がクラスでトップにでもなんなきゃ。
・・・そこまで言う。

大河は自分の周りを飛び交う声に、自分が着ているものが一般的な高校生にあって高嶺の花の存在だと改めて気づかされた。
・・・それが、普通なんだ。
大事なこと教えて貰えたみたいで大河は嬉しくなる。
友人の輪に囲まれて歩きながら、大河は楽しい想像をする。
・・・みんなにあのマンションのクローゼット見せたら、どんな顔するだろ。
目を回すかななんて思いながら、大河の顔はひとりでにほころんでいた。



425 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:13:44 ID:K3DWpZc90



だから、竜児に交通費と言われて、大河は沈黙するしかない。
東京へ行って帰って来るのにどれだけか掛かるのか、大河は知らない訳ではないのだ。
それだけにその実現がどれだけ難しいかも即座に理解してしまう。
「この前みたいに新幹線、出世払いで乗れば・・・」
「ダメだ」
以前、福岡の家を飛び出した時に使った手段を提案した大河だが間髪いれず、竜児から否定され、大河は手の内が尽きたことを知った。
電話の向こうでシュンとしてしまった大河にやれやれと言う感じで竜児は切り出した。

「俺が行ってやるよ」
「え?」
「だからさ・・・俺がお前のところへ行ってやるって言ってんだよ」
意味が分からないのかと竜児は言葉を繰り返した。
「嘘!」
「嘘じゃねえ」
「じゃあ、冗談」
「あのなあ、俺がそんなつまらない冗談を言うか」
「・・・じゃあ」
「ああ、本気だ」
ようやく、大河にも竜児が本気で言っているんだということが伝わり、大河の胸の内で嬉しさが徐々に込み上げて来た。
それと同時に大河は心配になる。
竜児のお財布の中身が自分以上に乏しいのを知っているからだった。
確かにお札は詰まってるけど、それは竜児が自由にしていいものじゃない。
あれは高須家の生活費なんだと大河は思う。

その辺りの疑念が竜児に伝わったのか、竜児は心配するなと大河へ伝えた。
「バイトしようと思うんだ」
「だって、バイトはやっちゃんが・・・」
「ああ、うるさく言うだろな・・・でも、じいちゃんの紹介なら文句はねえだろ」
夏休みに入ったら、社会勉強も兼ねて祖父の知り合いの事務所で半月ほど働かせてもらえそうなんだと竜児は種明かしをする。
「大してもらえねえけどよ・・・往復の飛行機代にはなると思うからさ」
だから、会えるのは夏休みの後半だなと竜児は言う。
何時にするか、よく考えて置けよと言う竜児の声に大河は弾んだ声を返す。
「うん。すごく楽しみ・・・ああ、早く夏休みになんないかな」




426 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:14:47 ID:K3DWpZc90


それからの数日間は大河にとって浮き立つような毎日だった。
「ずいぶん、嬉しそうね、大河」
夕食の席で、鼻歌でも歌い出しそうな娘の様子に母親は声を掛ける。
「そ、そうかな?」
「何かいいことでもあったの?」
「ふふん・・・ちょっとね」
薄気味悪いほど上機嫌な娘を前に大河の両親は顔を見合わせる。
そんな両親の様子を気に掛ける事も無く、大河は夕食のメニューをこなしていった。

あらかた食事も終わり掛けた頃、父親が話しを切り出した。
「大河は・・・将来、どうしたい?」
「どうするって?」
父親の問いに、そんなの決まってるだろうと大河の瞳は発言者を見返す。
「もちろん、大河が心に決めた人と結ばれることについて、ボクは反対するつもりはない。その点は大河の気持ちを尊重するよ」
そう言う父親だが、責任を放棄しているわけではない。
義理とはいえ、娘となった女の子の将来を娘の言い分だけで決めるわけには行かなかった。

父親は密かに頼んだ興信所の報告書を思い出していた。
家庭環境や現在の暮らしぶりが事細かに書かれた報告書類。
それに付けられた人物のスナップ写真の中に居る娘の想い人。
それだけ見れば手放しで喜べる状態ではなかった。
・・・世間一般の常識だとこれは無いだろうというのが、父親が最初に抱いた印象だった。
しかし、その一方で他人の調査がどれだけ当てにならないかと言う事も、経営者としての経験が教えていた。

手元に置いてから、半年も経っていないが、娘の人を見る目はそんなに悪くない。
信じてやろうじゃないかと言う気持ちが父親の行動となって現れた。
直接、自分の目で確かめてみようと思い、東京へ出張した最終日、忙しい時間をやりくりして父親は大橋の町を訪れていた。
物陰からそれとなく竜児を眺めて見るだけのつもりだった父親だが、気が変り、学校帰りにエコバッグを提げた竜児に道を聞く振りをして話し掛けていた。


大橋の駅へ歩みを進める父親の顔はどこか嬉しげでとても穏やかだった。
ついさっき、父親は道を教えてくれた竜児へ謝礼を渡そうとしたのだ。
遠慮なく、受け取る様に勧める父親に竜児は受け取りを拒み続けた。
拒む理由を問うた父親に竜児は貰う謂れがないとはっきり答えていた。
父親は謝礼を渡すことで竜児の反応をテストしたとも言える。
・・・十分、合格だな、大河。
父親は歩きながらそう娘に語り掛けていた。




427 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:15:50 ID:K3DWpZc90



「竜児くんはどう思ってるんだい?」
「竜児は・・・大学へ行くって・・・それから、一緒にって」
父親の問いに大河はそう答えた。
「そうか・・・」
父親的には高校を卒業してすぐに一緒になりたいと言い出されるのが一番困ると思っていたので、この返答に内心安堵した。
「大河は反対なのか、竜児くんの考え」
「ん・・・わかんない・・・でも、竜児の夢を邪魔しちゃダメだって言うのは分かってるつもり」
座りながら大河は足の上で握ったこぶしに力を入れた。
「ホントはすぐにでも竜児のとこへ飛び込んで行きたい・・・でも、そんなのって・・・ただのおままごと」
大河は自分がまだまだだって言うことを十二分に自覚していた。
料理の腕も不十分なら、裁縫だって全然ダメ・・・たとえ竜児の服が破れても自分は繕ってあげられない。
公立高校には無かった家政関係の実習で大河は嫌と言うほど自分のその方面の能力が不足していることを思い知らされた。
そんなものがなくても、竜児は気にしないって、大河には分かっているだけにかえって辛かった。

「竜児くんの夢って言うのは?」
「専門知識を生かせる仕事に就きたいって言ってた」
大河は竜児の祖父が会計士をしていて、そういう技能が必要なことをしたいって言ってたと補足した。
「大河も応援するんだよな?」
「もちろん、決まってるじゃない」
「それじゃ、今が受験に向けて大事な時期だ」
「受験?」
「夢を叶えるにはそれなりのレベルの学校へ行かないと難しいだろう」
父親の声に大河は背中を強く叩かれた様な錯覚を覚えた。

・・・高校3年生なんだ。
・・・受験?
・・・何も考えてなかった

大橋高校で独身から再三、求められた進路調査の答えを紙飛行機にして飛ばしてしまったあの日から、そのことに関して大河の思考は止まっていた。

・・・竜児は何て書いたんだっけ?
・・・そうだ・・・就職・・・。
・・・でも、竜児は大学へ行くって。
・・・何のため?
・・・夢の実現・・・夢って?
・・・私と一緒に安心して暮らせる様になりたいって。
・・・だから、大学へ行く。
・・・今、受験勉強の大切な時期・・・。

・・・竜児は・・・

そこまで思い至って、大河は軽い吐き気さえ感じた。
自分はなんと言うことを竜児に求めたんだろうと・・・。



428 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:16:40 ID:K3DWpZc90


「それで、大河はどうする?」
「・・・え・・・」
通っている高校の系列大学へ推薦を目指すか、それとも外部を受験するかと聞かれ、混乱から抜け出せない大河の返答は不明瞭なものになる。
どっちつかずの返答を言い残し、大河は自室へ引き上げた。

そのままバタンとベッドにうつ伏せに身を投げ出して、大河は顔を枕へ埋めた。
竜児への申し訳なさで胸が一杯になる。
出来ることなら、あの電話をした日に帰りたいとさえ大河は願った。

自分がワガママを言ったせいで、竜児は夏休みにバイトをすると言う。
この大事な受験の時期に・・・。
どれだけ、勉強が遅れるのか、大河には想像がつかない。
きっと、竜児のことだから、不足分を埋めようと無理をするのに違いなかった。


しばらくの間、ベッドの上で身じろぎもしなかった大河。
その大河は不意に飛び起きると竜児へ電話を掛け始めた。


「・・・で、何時にするか決まったか?」
何時と言うのはもちろん、夏休みの竜児福岡訪問計画の日程のことだ。
とても楽しみにしていたもので、大河は既に意中の日も決めていた。
その日を口に乗せるだけで待ち望んだ物が手に入る。
大河は抗し切れない誘惑を振り切って、気持ちと裏腹な声を電波に乗せた。

・・・いいわよ、来なくて。

急に何を言い出すんだと電話口で騒ぐ竜児の声を無視して、大河は同じことを繰り返してから一方的に電話を切った。

再度、鳴り出した携帯を枕の下へ押しやり、大河はぎゅっと力任せに押さえつけた。

・・・ごめんね、竜児。
・・・私、全然、分かってなかった。


やがて、力尽きたように携帯が鳴り止むと、大河はそれがまるで竜児であるかのようにそっと頬に寄せた。




429 :シンデレラなんかになりたくない6 ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:17:45 ID:K3DWpZc90


「まったく、おまえは言葉が足りねえ」
「あの時は悪かったわよ」
「急にあんなこと言われた俺の身にもなれ・・・嫌われたかと思ったぜ」
「だから・・・謝るって」
ドレス姿の大河はごめんなさいと横を向いて謝った。

「どっち見てんだよ?」
「だって、私、悪くないから」
「あのなあ・・・あの後、俺がどんなに落ち込んだか知らないだろう」
「うん、知らない」
「大河〜」
竜児の声に大河は声を出して笑った。

あの時、竜児の声を聞くのが辛くて大河は数日、音信不通にしてしまったのだ。
竜児はもうパニック状態で、本当に北村にバイクを貸せと頼みに行っていた。
福岡まで行って直接、大河に問い質すと、目を血走らせ、北村に迫った。
そんな状況を改善したのは櫛枝だった。
その場で大河へ電話を掛け、高須くんが暴走してると告げ、自分の携帯を竜児の耳に押し当てた。

その効果は絶大だった。

携帯のスピーカーから聴こえる大河の声
・・・みのりん?竜児が暴走って・・・北村くんのバイクで?・・・事故とか・・・やだ・・・竜児が死んだりしたら、私、生きていけない・・・ねえ、みのりん、どういうこと・・・ねえ、みのりん・・・




「なあ、大河」
「何よ?」
「会った方が良かったか?」
窓辺に背を向け、大河に向き直った竜児がそんなこと言う。
偉く省略した竜児の台詞だが大河にはすぐに通じた。
「会いたいって言う気持ちは強かった・・・けど」
「けど?」
「・・・あれで良かったって今は思えるの」
少し間を置いて大河は言った。
「竜児は?」
「おまえと同じさ・・・あそこで大河の顔を見たら、お前の手を掴んで何処か遠い所へ駆け出したかも知れねえ」
そんなことになったらと竜児は付け加える。
「・・・今日を完全な形で迎えられなかった」
「完全な形?」
「ああ、そうだ」
再び、窓の外へ目を遣る竜児。
陽光の下、広いテラスの端に竜児の見知った顔が現れ始めていた。
ようやく、前の組が終わり、参列者の入れ替えが始まろうとしている。



430 : ◆x6jzI2BeLw :2010/11/21(日) 01:19:16 ID:K3DWpZc90
今回は以上です。

次回はもっと早く出来るといいのですが・・・。
このペースだと何時、終わるんだろうww





431 : ◆Eby4Hm2ero :2010/11/21(日) 07:04:03 ID:UsooA7SK0
>>430
乙&GJ!
少し切なくも暖かい雰囲気がいいですね。

432 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/21(日) 07:04:54 ID:UsooA7SK0
お題 「終わって」「魔王」「身」



「……おい大河」
「んー?」
 渋い顔の竜児に、大河が返すのは生返事。その視線はゲーム画面から動かずに。
「とっくに0時過ぎてるんだし、いいかげんに帰って寝ろよ」
「ん、キリのいい所まで終わってからね」
「キリのいいって……どこだよ?」
「魔王倒したら」
「クリアしたらじゃねーか、それ」
「うるさいわねー。少しぐらい遅くなってもいいじゃない、夏休みなんだし」
 一度も振り返らずに答える大河に、竜児は溜息を一つ吐くと立ち上がって台所へ。

「ん?」
 漂ってきたいい匂いに思わず手を止める大河。
 身をひねって台所を見れば、何やら調理中の竜児が。
「竜児ー、何作ってるのー?」
「おう、小腹がすいちまったんでな、夜食にきのこスパを」
「私も食べるー」
「おう? うーん……」
「なによ、何か文句でもあるっていうの?」
「いや、文句ってわけじゃねえけど、大河はゲームの途中なんだろ? せっかく作ったもんをながらで食われるのは流石にちょっとな……」
「はぁ?そんなことするわけないじゃない。待ってなさいよ今セーブするから」
「おう、そうかそうか。それじゃゲームも中断したことだし、食い終ったら帰れよな」
「……竜児、あんたまさか……」
「おう、何だ?」
「……なんでもない。いいからさっさと私の分作りなさいよ!」
「おう、実はもうできてる」
「!……やっぱり、最初から……」
「ほら、早く食わないと冷めちまうぞ」
「……つ、次はこうはいかないからね!」


433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/21(日) 14:36:26 ID:w8T78nI00
>>430
今回もいいよーいいよー!
いつ終わるんでも構わないさ。
楽しみはずっと続く方が嬉しいからなw

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/21(日) 22:17:01 ID:D286tDm10
>>430
2人のせつなさとすれ違いっぷりがリアルだなぁ。
大河の啖呵、カコええ。自分のためじゃなく、庇ってくれた子のためというのが大河らしい。
みのりんはいつもGJ!
大変だと思いますが、ゆっくりでもこの密度で読ませてもらえると嬉しいです。

>>432
竜児、いいお母さんにもなりそうだなw
「高須君って、ホント主婦!」



435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/22(月) 00:59:59 ID:OfgZwVeC0
>>421GJ!
はさめる…だと 問題ない 問題ないとも

>>430GJ!
周りの状況を考えられるようになってるところに大河の成長を感じるな
続き待ってるんでマイペースで楽しく書いてくだされ

>>432GJ!
大河の習性を把握してる竜児こそが猛獣使いだなw

436 :U-ma:2010/11/22(月) 21:46:55 ID:6SdIYvA20
435…夜道に気をつけろ……

437 :代理◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:10:57 ID:ERMTk1hr0
永久規制かもしれん。代理投下よろしくたのむ。

新作:「夢の中」

438 :夢の中◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:12:06 ID:ERMTk1hr0
高須竜児が目を覚ましたのは、まだ部屋が暗い時間だった。耳を澄ませてみるが、町は夜の底にあるようだ。ほんの少し首を回して時計を見る。午前4時。

軽く深呼吸する。部屋の空気に触れている顔は少しひんやりしているが、布団の中は暖かい。左隣に妻の体温を感じる。いつものように自分より少し高めの体温に安心して、もう一度深呼吸。まだ十分な睡眠をとっていない体は再びの眠りへとゆっくり沈んでいく。

だが、

『…北村君…』

妻が呟いた言葉に、いきなり頬を張り飛ばされたように目が覚めた。

◇ ◇ ◇ ◇

439 :夢の中◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:13:03 ID:ERMTk1hr0
高校時代に知り合った妻の大河とは、大学卒業後仕事についてようやく結婚することができた。プロポーズから長い月日を経て迎えた結婚生活は、つきあいが長かったにもかかわらずいくつもの驚きに彩られていた。

二人は知り合って最初の一年間、事情があって半同棲生活を営んでおり、竜児は大河の生活に関して相当知っているつもりだった。なにしろ生活能力皆無の大河を半ば引き取ってしまった竜児は、掃除、洗濯、ご飯の用意、後片付け、栄養状態の管理まで行っていたのだ。
手出ししなかったのは睡眠、入浴とトイレ、あと下着の洗濯くらいで、もしそれに手を出していたら完全に同棲だった。

しかし当時二人にはそれぞれ片思いの相手がいたし、何しろその頃の大河は学校で「手乗りタイガー」などというニックネームをもらうほど凶暴だったから、竜児は大河に手を出すなど想像したこともなかった。

それが急転直下、たった一年で二人は婚約に至るのだが、それでも実直きわまりない竜児は高校時代キスまでしか手を出さず、大学に進学してそれなりに深い仲になったものの、とうとう二人で朝を迎えることがなかった。
そんな竜児に大河は幾分あきれ気味だったが、そういった堅さまで含めて竜児のことが好きだったのだから、大河がぐずるということもなかった。

だから、本当に朝まで同じベッドで過ごしたのは新婚初夜がはじめてだったのだ。そして、結婚して竜児をおそった驚きの一つは、人々が深い眠りについた後にやってきた。

最初に気づいたのは新婚旅行から帰ってきて二週間ほど経ってからのことだ。夜中眼をさました竜児は布団の中で首をかしげた。普段体調管理を万全に行っている彼には、夜中目を覚ますなど滅多にないことだった。

部屋の気配を探ってみるが特に不審なこともなく、もう一度寝ようとした竜児は、隣で妻の大河が呟いた言葉に思わず笑い出しそうになった。

『私ハンバーグ』

◇ ◇ ◇ ◇

440 :夢の中◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:14:03 ID:ERMTk1hr0
それから何度も、竜児は夜中に起きて妻の寝言を聞くことになった。大河は恐ろしく寝言が多い女だったのだ。たまに、布団を派手に引っぺがされて寒さに驚いて起きることもあったが、ほとんどの場合、目が覚めてしばらくすると寝言を聞かされた。
おそらく直前に寝言を聞いて目が覚めていたのだろう。

たった一言聞いて終わることもあれば、延々と断片的な話を聞かされることもあった。そして、それは竜児にとって苦々しい事態となった。睡眠不足になるほど長い寝言は滅多になかったが、かなりの確率でどんな夢を見ているのかはっきりわかったのだ。
言い換えれば、高須大河は夢の中でプライバシーをだだ漏れにしていた。

竜児は堅い男である。結婚しているからプライバシーはいらないなどとは考えない。親しき仲にも礼儀あり。慎ましく、きちんとした生活にこそ、魂の安らぎがあると考えている。その竜児の上に、大河はバケツをひっくり返すように自分の小さな脳みその中身をぶちまけてきた。

夢の内容はその時々によって違っていた。

全くとりとめのない冒険話を聞かされることもあれば、食べ物の話のこともあった。一番好きな食べ物はとんかつで、二番目はカレーライスだと言うこともわかった。大河は何を食べたいか聞くと、いつも頭の中が肉でパンクしてはっきりしない答えになるのだが、
寝言の数から統計的にとんかつが一番好きだと言うことがはっきりした。これはまあ予想通り。そして意外にもカレーライスが二位だったわけだが、きっと竜児特製のスパイスのおかげだろう。
普段食べたいと聞かなかったから、やや後ろめたさがあるとは言え、自分のスパイスが認められたのはうれしいかった。

大河の夢は、最近の自分たちの話題はあまりなくて、それよりも少し先の話や親戚、友達の話が多かった。夏休みがとれたらどこそこに行こうとか、おじいちゃん元気かなとか、子供何人ほしい?などという話も何度も聞かされた。それから、昔の話をなぞる寝言も良く聞いた。
一番多いのは、二人が知り合った高校二年生の時の話。それ以降の話は、竜児と一緒の時の話だったり、あるいは竜児が知らない友達の話であることもあった。
どの話も、夢らしくとりとめのない情景が断片的につながっていて、しかも多くの場合突拍子のない方向へと物語は進むようだった。

竜児が一番聞きたくなくて、だけど聞かずにはいられない、二人が知り合う前の話もあった。切れ切れの寝言はだんだんと悲しそうな声色に染められていき、終いには夢の中で泣き出した大河をたまらずに起こしたこともある。
闇の中で「何?」と涙声で問う妻に、「お前、泣いてたぞ。嫌な夢見たのか?」と聞き返した。夢の内容を聞いたなどとは口が裂けても言えなかった。

寝言を聞いているとは、とても言えなかった。そんなことを言ったら、夫婦とは言え気まずくなるだろうし、何より大河が竜児と寝ることに不安を覚えるかもしれない、そう考えただけで竜児は暗い気持ちになった。
つらい少女時代を送った大河を幸せにしてやるというのが竜児の目標であり、大河に自分と寝ることを不安に思わせるなど論外だった。夢のことは竜児が口をつぐんで墓場に持って行けば済むことだ。

◇ ◇ ◇ ◇

441 :夢の中◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:15:04 ID:ERMTk1hr0
『北村君…どうして?』

夢の中で妻は高校二年生の頃をなぞっているようだった。竜児の友達である北村祐作、大河の友達である櫛枝実乃梨。互いの想い人との仲を共同で取り持とうとしていたあの頃。やがて竜児は大河のことを誰よりも大切に思うようになり、
大河も同じように竜児を大切に思うようになった。

ベッドに入るときにはいつも竜児の腕にしがみついて寝る大河だが、今は猫のように丸くなって、つらい夢の中、誰の助けも得られずに孤独に耐えているようだった。学校で手乗りタイガーと恐れられながら、誰も寄せ付けず、
好きな男に声もかけられずに独りで泣いていたあのころの夢をさまよっているのだろうか。

大河は今でも北村のことが好きなのだろうか。それは友達としてだろうか、それとも昔抱いたような恋心を今でも思い起こすことがあるのだろうか。あるいは、夢とは知らずあの頃のつらい片思いにもう一度胸を痛めているのだろうか。

横で竜児は目を見開いたまま、見えない天井を凝視している。優しく起こしてやり、どうした、怖い夢でも見たのかと抱きしめてやればいいのか。何も言わずにそっとしてやればいいのか。今胸が痛むのは、妻を助けてやれないからか、それとも嫉妬なのか。

◇ ◇ ◇ ◇

442 :夢の中◇fDszcniTtk:2010/11/23(火) 02:16:04 ID:ERMTk1hr0
結論のでない逡巡は、妻が漏らす弱々しい寝言とともに続く。心の中に手を差し入れることはできない。昔のことを思い出すなと言うこともできない。思い出していい。ただ、楽しかった思い出として思い出してほしい。
そして願わくば、「竜児を一番愛している」と夢の中でも言ってほしい。

涙声混じりの寝言に心を揺さぶられながら、何年たっても無力な自分に苦い思いをかみしめる。

『…竜児、助けてよ…』
「おう」

寝言に、思わず応える。いつもそうだった。唐突に助けを求めてくる大河に何度手をさしのべたことか。

未だ夢をさまよっているのか、それとも竜児が漏らした声に起きたか、大河が身じろぎしてしがみついてくる。寝たふりをする竜児の横で、再び規則的な寝息を立て始める。

腕に絡みついてきた体温に、われ知らず安堵のため息を漏らす。つかの間迷路をさまよった竜児の意識も、もう一度眠りへと落ちていく。

(おしまい)

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/23(火) 02:53:03 ID:PpqdB4h70
たまには欝ストーリー

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/23(火) 15:42:29 ID:TJi5D70MO
>>438
…良いねぇ。しっとりしてて良い。
夢の中で昔の相手に恋してた頃に返ることもあるさ。で、起きてからちょっとした罪悪感にかられるという。
大河の不器用さが伝わってくる。墓までもってくつもりの竜児もかっこいいなあ。

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/23(火) 22:30:54 ID:cpUoPt120
>>442
GJです!代理さんも乙!
これはじんわりくる…
ぜんぶ知ってる辛さってあるよなぁ
大河、竜児だけだと言ってあげてー!

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/24(水) 16:47:34 ID:BFvg7EbwO
>>442
切ないよGJ


「北村くんを好きなはずなのに、竜児のことが…」
って感じの時期ではないかと思った

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/25(木) 01:23:42 ID:PWauHfyN0
GJ
結婚してからも大河の泣き虫は健在なのか
男には黙っていてやる優しさも時には必要だってばっちゃが言ってた

448 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/25(木) 10:59:47 ID:SMhSeYqb0
お題 「健闘」「私」「そうだよね」



「み、みのりん……それはさすがに恥ずかし過ぎると思うの」
「うん、私も自分で言っててそう思った」
「でしょでしょ。だから別の方法を……」
「大河……せっかく高須くんと一緒に暮らし始めて最初のバレンタインなんだよ?ここで愛情アピールしないでどうするのさ」
「……それはやっぱり普通に手作りとかで……」
「家にいる時間あんまり違わないんでしょ?目の前で作ってたらサプライズにならないじゃん。隙見て作っても残り香でバレバレになるし」
「う……それはそうだけど……」
「確かに恥ずかしいだろうけどさ、高須くんのためにそれを乗り越えることこそ愛じゃないのかね?」
「……うん、そうだよね……私、頑張ってみる!」
「健闘を祈るぜー! ところでさ、大河」
「何?」
「高須くんのホワイトデーのお返しをキャンディにしてもらってさ、同じ方法で……」
「ひ、ひやゃゃ」


「りゅ、竜児、あのね」
「おう?」
「こ、これ……」
 言いながら大河が取り出したのは、一口チョコの特用袋。
「……ひょっとして、バレンタインか?」
「うん」
「……おう、ありがとな」
 微笑んで応えながら竜児は、やはり少しがっかりした様子で。
「それでね、今からあ、愛情込めるから、ちょっと目をつぶっててくれない?」
「おう?わかった」
 言われるままに目を閉じた竜児の前で大河はチョコを一つ取り出し、自分の唇で咥え、そのまま竜児の唇に押しつける。
「!」
 舌先でチョコを竜児の口中へ押し込んで、転がしながら溶けた部分を塗り広げるように。
「ん…………む…………」
 竜児が離れないように首筋にぎゅっと抱きついて、チョコの味が完全にしなくなるまで。
「………………ぷはっ……た、大河……お前……」
「えと……竜児、嫌だった?」
「いや、びっくりしただけで……嫌じゃねえけど……」
「よかった……それじゃ、2個目いくわね?」

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/25(木) 15:35:54 ID:LcHHTNU60
>>448
アマい、アマすぎる! 鼻血が出そうだ! いや出た…

ところで、みのりんのセリフを見ていて、
バレンタインデー: 大河裸リボン
ホワイトデー:   高須某にリボン (キャンディじゃなくてキャンディバー…)
を想像してしまった俺を、誰かなじってくれなイカ?

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/25(木) 16:36:18 ID:B4PF1YVn0
竜児にリボンは大河得いがいないなw

まあラッピングはみのりんとあみちゃんにやってもらって、
大河にサプライズプレゼント作戦だなw

451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/25(木) 23:46:58 ID:22oFtB4k0
>>448
アマアマGJ!
食べ終わる頃には大変なことになってそうだw

>>449
同志よw

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/26(金) 12:27:50 ID:j970wZ+t0
>>449
同志よ

453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/27(土) 04:40:28 ID:mcSKJ13n0
良作。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm6860831

油断してるとショック受けるから少し注意。

454 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/27(土) 17:06:34 ID:Pav4uE7n0
>>453
面白かった。良くできてるなぁ〜
竜児は農作業が似合い過ぎw 
途中、あわわわだったが、最後は「国破れて大河あり」だろとか思ったりして…
三題噺さんが書いてたけど、原作、アニメとはまったく違ったお話も面白い

455 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/27(土) 22:36:15 ID:k4MDpYx60
>>453
油断したwwwwwww面白かったよ

456 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/11/28(日) 23:09:29 ID:kjZ1ARRG0
ここまでまとめました。


いい感じに記憶が薄れてきたので、とらドラP!を再び最初からはじめました。
ツンツンした大河にニヤニヤが止まらないぜ…

そして記憶が薄れすぎて亜美ちゃん下僕エンドからしばらく抜けられなかった…

457 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/28(日) 23:31:03 ID:4sdcEFXj0
まとめ乙!おつおつおつ!

458 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/29(月) 00:46:59 ID:vQt2ENyW0
>>456
超乙っす!ありがたや…

459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/29(月) 01:05:05 ID:nhRCjXLo0
22スレ目にして初投稿だったんだけどなんか自分の書いたのがまとめてもらったの見ると嬉しいね。


勢いで書いた作品にタイトルまでつけてもらってありがとうございました。
ほんとにいつもご苦労様です。

ネコ及び音ゲーネタの作者より。




460 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/29(月) 02:45:28 ID:uoEiMhEt0
>>304の続き

「すぅ…すうぅ…」

隣に寄り添っている女の子は、小さな寝息を立てながら。

「あーあ、こんな所でよくもまあ…虎とは上手く言ったもんだな」

繋いだ手と手に視線を落として、子供じみた体温の高さを感じ取ると。

「そろそろ行くぞー。1本逃したら1時間待ちは確実だからな」

太陽が少し傾いて、海から吹き付ける風に幾許かの冷たさを感じる頃。
遠くに黄色い帽子とランドセルを背負った小学生の姿がちらほらと。

「おーい大河さーん。宿に着いたら豪華海鮮料理と温泉三昧だぞー」
「…私の裸を見ながら食事だなんて痴れ者の極みよねこの変態駄犬」
「どこをどう聞けばそうなるんだよ。何もかも大間違いじゃないか」

毎度の事ながら呆れたように答えると、大河の小さな手を引いて歩き始める。

「あらそうかしら。あんたって昼と夜とで随分違うじゃない」
「それは仕方ないだろ、男の本能ってやつだよ。うん」

461 : ◆Eby4Hm2ero :2010/11/29(月) 11:04:11 ID:hUTNH7wc0
>>456
いつも乙&ありがとうございます!

>>460
のんびりほのぼの、いいね。ところで
>私の裸を見ながら食事だなんて
それなんて女体も(ry

462 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/11/29(月) 11:07:01 ID:hUTNH7wc0
お題 「逢坂」「アホ」「才能」



「くく……くくく……」
 凶眼を歓喜にギラギラと輝かせ、端の吊り上がった口は今にも舌なめずりをせんばかり。思わず含み笑いを漏らす高須竜児に、
「竜児、あんたキモい」
「おうっ!?」
 それをジト目で見つめる逢坂大河。
「今あんた、確実に通報されるレベルだったわよ」
「いや、だって……かのう屋の割引券だぞ? それもこんなに沢山!」
「それで喜ぶのはあんただけだっての。普通は冷蔵庫とかエアコンの方でしょうが」
 そう、文化祭にて完全優勝を成し遂げた2−Cには公約通りの賞品が与えられて。
 その立役者の一人である竜児には、クラスの皆の分のかのう屋割引券が贈呈されたのだ。普通の高校生ではあまり必要が無いから、という理由もあるが。
「しかし、考えてみればこいつは春田のおかげでもあるんだよなあ……」
「そうね、あのロン毛虫がアホじゃなかったらうちの展示は他と被りまくりのコスプレ喫茶になってたはずだし」
「いや、それもあるが……プロレスショーの脚本、よくできてたじゃねえか」
「まあ、どんなダメな人間でも何か一つぐらいはとりえっていうか才能があるもんよね」
「おう、そうだな……って大河、お前何気にひどいこと言ってねえか?」
「その点北村君はすごいわよねー。勉強もスポーツもできて、生徒会活動もしてて、その上かっこいいんだもの。まさに才能の塊!どっかの家事だけが取り柄の駄犬にも見習わせたいもんだわ」
「……そうやって偉そうに言う大河はどうなんだよ。何か自慢できる才能持ってるってのか?」
「……いやだわー。謙虚な私がそんなこと自分で言えるわけないじゃない」
「誰が謙虚だ、誰が」
「ねえ竜児、何でもいいから一つ才能が手に入るとしたら、何がいい?」
「思いっきり話題逸らしやがったな……」
「いいからほら、何かあるでしょ?」
「………………いや、特には思いつかねえな」
「……今妙な間が合ったわねぇ。まさかあんた、エロい事とか考えたんじゃないでしょうね?」
「ん、んなわけねえだろ!」
「怪しい……正直に言いなさいよ!」
「言わねえ!つか言えるわけねえだろ、本当に何も無いんだから!」

 言えるわけがない。
 『大河を幸せにできる才能が欲しい』なんて思ってしまったことは。

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 00:23:30 ID:eBp4ZOjF0
>>421
ギ……ムニュアン乙!
実現できる可能性は限りなく……おや、誰か来たようだ

>>430
乙!
色々障害を乗り越える二人に感動しました。
本当に苦労が絶えない二人だ。
>高須くんが暴走してる
何故か特攻服の竜児が浮かんできてフイタw

>>432
乙!
この大河の可愛さがヤバイw


>>442
乙!
竜児の父心というか、男気がじんわり効きました。
恐ろしく寝言の多い大河ってのもなんだか新鮮だw
代理も乙!

>>448
乙!
ちょっと鼻血出過ぎたから輸血してくる!

>>449
ヘイ!アミーゴ!

>>453
ショック受けちゃった……

>>456
神様仏様まとめ様ぁぁああ!!
いつもありがとうございます!

>>460
乙!
大河の罵倒のセンスがwww

>>462
乙!
竜児しか思いつかないし、竜児じゃないと意味がないっていう
絶妙な距離感が泣けてくる……

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 00:53:06 ID:gpETQq3q0
>>456
サイト更新毎度乙でございました

>>460
GJ!
昼と夜とで随分違うを具体的にkwsk!いや冗談だがw

>>462
GJ!>>『大河を幸せにできる才能が欲しい』
文化祭の直後ならこれくらいのことは普通に思ってそうだな

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 02:05:36 ID:ReupbzgT0
>>460
GJ!
雰囲気ほのぼのしてるのに会話がww
そーいう夢を見てたに一票!
男の本能言いつつ、「だってお前エロ可愛いから」と心の中でデレてるに一票!

>>462
GJ!
文化祭後かーありそう
竜児の「言わないでいること」って明らかにされないままだったけど、作品の根幹から考えて
大河への気持ちであることは推測できるから
こんな感じに積もり積もってたんだろうな〜と妄想したw

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 17:05:01 ID:U4xTjWde0
>>456
いつも本当に乙です!
まとめ人様がつけられるタイトル&サブタイトル? が楽しみでガンス

>>460
あら、ずいぶん艶っぽく… イイね!
さらっと言ってのける竜児オサレ。リア獣は違うなw

>>462
そして、紆余曲折を経て、竜児は手に入れるんだよね、その才能を。 ・°・(ノД`)・°・

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/11/30(火) 20:33:48 ID:mjFNnNfo0
寅年にとらドラ!に出会ったのも何かの縁と思ってたけど、その寅年ももうすぐ終わりだね。
2年後には辰年は来るけど次の寅年は12年後か・・・。
たとえ薄れはしてもこの作品が好きな気持ちは何年経っても変わらない。

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/01(水) 23:39:13 ID:Eva7sTz40
>>466
リア獣に噴いたwww
変換ミスかと思ったが、そんな造語もあるのか…
想像してた意味とは違ったけどw

>>467
寅年終了のあとは完結から二年目が待ってるし、早すぎるよね…
自分は完結直後にハマったんだが、毎日のように竜虎がラブラブしてて困るw
ホント良い作品に出会えて幸せだ

469 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 15:34:39 ID:dtsG5aR90
>>465
> 竜児の「言わないでいること」

二巻のストーカー事件の後で亜美から聞いた「北村にはもう心に決めた好きな女がいて、
それはおそらく大河ではないこと」だと思ってたが違ったのか・・・

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 21:14:05 ID:/sG0ALoa0
>>469
北村→会長はすでに判明してる
> 「そして竜児にも、言わないことはある。たくさんある。実乃梨のことも、それ以外にも……それがなにかは言わないが、ある」 8巻p244
ってやつね。

そうそう、竜児って北村に好きな人がいることを知ってるんだよな
勿論応援してた気持ちは本物だろうけど、
どこかでくっつく事はないと安心してたんだろうなぁ

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 22:36:09 ID:w8fPMXAk0
この

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 22:39:39 ID:97P4hwGk0
駄犬がぁ!!!!

473 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/02(木) 22:44:00 ID:w8fPMXAk0
途中送信orz
この後、あーみんとの会話に流れるわけだが、「言わないこと〜」の直後に大河を見る描写が挟まれるんだよな
ストーリー進行上で必要な一文ではないのに
なんつか描写が行き届いてるなあ〜と。さすがゆゆぽ

>>472
スマンw

474 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/12/03(金) 11:08:35 ID:Em24mnK90
お題 「前」「大河」「中学」



「……高須! 高須じゃないか!」
「え?……あ、中野先生、お久しぶりです」
「でっかくなったなあ!えーっと、確か今高三だったよな?」
「はい。先生はお変わりなく。まだ大橋中で?」
「おう!だけど今年受け持ちの連中は悪ガキだらけでなあ……ホントお前がクラス委員だった時は楽だったよなー」
「……ねえ竜児」
「おう大河、どうした?」
「このおっさん、誰?」
「おっ……おまえ、なんて失礼な」
「いやいや高須、気にするな。俺がおっさんなのは確かだからな」
「すみません……。大河、この人は俺が中二の時の担任の中野先生だ」
「よろしくな。ところで高須、この子はひょっとして」
「はい、その、こ……恋人でして」
「ちょっと竜児!ちゃんと言いなさいよ、婚約者だって!」
「お、おう」
「何!?……そうかそうか、あの高須がなあ……
 大河さんだったか、知ってるとは思うがこいつはいい奴だが誤解されやすくてな。よろしく頼むよ」
「は、はい」
「いやしかし、めでたい!どうだ高須、祝いに奢るから一杯付き合わんか?」
「先生……俺はまだ未成年です」


「……なんとゆーか、豪快?なおっさんだったわねー」
「昔から細かい事を気にしなさすぎる人でなあ……それで助かったところもずいぶんあるんだけど」
「だけど竜児、クラス委員なんかやってたのねー」
「おう、一年間だけな」
「推薦で押しつけられたとか?」
「いや、自分から立候補した」
「あんたにしちゃ珍しいじゃない」
「クラス委員なら皆と接する機会も増えて、早く理解してもらえるかと思ってな……」
「……その微妙な表情からすると、ひょっとして……」
「おう、なんか『逆らったら何されるかわからない』みたいに思われてな……おかげで仕事はいつもスムーズに済ませられたんだけど」
「ぷくく……あんたらしいわね」
「ついた渾名が最も恐いと書いて『最恐のクラス委員』だ」
「ぶふーっ!……っくくく……さ、最恐って……」
「……そこまで笑うか……?」
「ねえ竜児。竜児なら中学のアルバム取っておいてあるわよね」
「お、おう」
「帰ったら見せてくれない?それから中学の時の話とかも聞かせて」
「いいけど……面白い話とかそんなにねえぞ?」
「いいのよ、恋人の事は色々と知っておきたいもんでしょ?」

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/03(金) 22:17:23 ID:p+TMcEhC0
>>474
9巻の小さい竜児想像して笑う大河を思い出したな。
あのシーン、というか9巻全体通して大河のセリフは切なくて泣かされっぱなしだったけど、
同じ「竜児の過去を知りたがる大河」でも障害がなくなってしまえばこんなに自然な恋人同士の会話になるもんだね。

アルバムといえば竜児らにとっては大橋高校の卒アルは一生宝物になるだろうね。

476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/04(土) 00:52:53 ID:C6iZ5gjGO
あるある。誰かの結婚式や同窓会のたびにみんなで眺めて盛り上がるっつーね
>>474
実際こんな風に理解してくれる先生がいたに違いない、って思えた。なんか救われた気持ちになった

原作の今頃はみんなの中が最高にギクシャクしてた頃か…
アフターだとあーみんの部屋あたりに集まって和気藹々と受験勉強会かなw

477 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/05(日) 23:23:12 ID:praiviAa0
>>474
乙!
先生豪快過ぎるw
そして最恐。
竜児には悪いがワロタw
なんか学校祭の準備とかで空気が張り詰めてそうだw

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/05(日) 23:46:14 ID:praiviAa0
「遂に12月よ!」

「あっという間だったな」

「今年もエンジェル大河が竜児にハッピーをぶちかましてくれる!」

「ニュアンスは伝わってるけど、なんでそんなに禍々しいんだよ!?」

「さあ、私をおんぶでも抱っこでも好きにするがいい!」

「なんでだよ!?」

「あんたは気づいてないだろうけど、深層心理ですーっごく寒がってる!」

「はぁ?」

「だからこの等身大エンジェルホッカイロで身体の芯から温めてあげるってわけ」

「おまえ……」

「っていうわけで、とうりゃ!」

「ぐぇっ!?」

「はー、あったか。ほら竜児、早く歩かないと暗くなるよ!」

「おい、大河。お前、歩き疲れただけだろ?」

「ひゅーぴー……ぴゅるるるるr……」

「お前、その口笛も段々鳴るようになってきたじゃねぇか……」


俺が書くとコントかギシアンにしかならないから不思議!

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/05(日) 23:56:19 ID:u0JPtUxo0
そして夜は湯たんぽに…
大河あったかそうだしなw

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/06(月) 01:08:24 ID:qBrhPzVc0
そうやね、最近夜寒いし大河ぶつけられたいね。

481 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/12/07(火) 07:54:35 ID:z/nwQSLp0
お題 「遠ざかって」「拾い」「いきなり」



「くー!」
 抜けるような青空とそれを飾る薄絹のような雲。吹き抜ける爽やかな風。
「りー!」
 辺りには木々が立ち並び、彼方にちらほらと見える紅葉が秋の訪れを示す。
「拾いーっ!」
 大河の姿はいつもと違って、ふりふりふわふわが欠片もないトレーナーにジーンズというシンプルな服装。髪はみつあみで野球帽をかぶり、さらには軍手にスニーカー、籠を背負って火挟みを手にして。
「大河……いきなり叫ぶんじゃねえよ、恥ずかしい……」
 思わず顔を赤らめて周囲を見回す竜児。とはいえ自身含めて同様の格好の人ばかり。先ほどの絶叫もあまり気にはされていないようで。
「だって栗よ栗!栗ごはんにマロングラッセ、モンブラン……」
「いや、その気持ちはわからんでもないが……」
「はっ!秋の味覚が私を呼んでいる!さっさと行くわよ竜児!」
「ああ、こら待て大河!転んだら洒落にならねえんだから走るなって!」
 騒ぎながら遠ざかっていく二人をサングラス越しに見つめながら、亜美は小さく溜息を。
「まったくあいつらは……いつまでたっても全然変わりゃしねーし」
 その肩にぽんと、後から掌が乗せられて。
「いやいやあーみん、あれで大河も結構変わってるんですぜ?」
「実乃梨ちゃん……変わったってどこが?」
「んーとね、やっぱりだいぶ丸くなってるよ。大学でも結構友達作ってるみたいだし」
「へー……あのタイガーがねえ」
「それから、料理が上手になりました!この間御馳走になったんだけど、手際もずいぶんよくなってたよー」
「そういや高3の時から高須くんに習ってるって言ってたっけ」
「愛の力って偉大だよねー。もう幸せそうでさー、ほとんど新婚状態?」
「つまり、やっぱりバカップルっぷりは変わってないってわけね……」

482 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 22:06:26 ID:4Zc8jMEE0
乙!
マロングラッセがわからなくて思わずググったw
いつも通りの微笑ましさにニヤニヤwww

この後は竜虎による栗料理が振舞われるわけか。
みのりんとあーみんにも乙を……

483 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 22:48:46 ID:vNPf8EUF0
>>481
おつおつ!
バカップルにあてられるまわりは大変だろうが羨ましいw
大河の手料理…食べたいw氏の設定だと同棲中かな?
お互い作ったり作ってあげたりしてる毎日を想像すると2828

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/07(火) 23:59:42 ID:J4aLNZUq0
定期での投下、おつでGJ!
とらドラ大好きなんだなホントに

いや俺も大好きだけどw

485 : ◆PqrGZqHjR. :2010/12/09(木) 00:24:26 ID:GeJN0RNK0
以前に一度だけSS投稿した人です。
すっかりSSなんて書く暇がない。悲しい。

クリスマスに合わせて絵だけは描こうと思ってたんですが、
ファイルを見たらお蔵入りしてる大河の絵が何枚かあったので、
その中から一枚気を持ち早めのクリスマスプレゼントと言うことで…

いや、竜児に張り倒されるかw

ちょっとだけえっちぃかもしれないけどセフセフの筈。

http://iup.2ch-library.com/i/i0201324-1291821602.jpg

ほんと読めば読むほどとらドラは絵もSSも書きたくなって困る。

486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/09(木) 00:33:00 ID:527X0u5C0
うおおGJ!
可愛すぎて罪悪感すら芽生える
竜児の特権なんだろうなーこういう大河は

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/09(木) 00:42:12 ID:LdD7kUxR0
なんてこったサンタさんは本当にいたのか・・・
プレゼントもらっちゃったし大河を見習ってエンジェル化して愛と笑顔をふりまいてくるか

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/09(木) 01:38:14 ID:LnbKfPd/0
>>485
かわええええええ!GJGJ!!
色っぽいよ大河!
なんでか竜児の夢としてインプットされたw

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/09(木) 02:10:53 ID:w9iebzFR0
>>481
いつも乙です! 最後のあーみんのセリフに愛を感じたw

>>485
急にレスが増えたw みんな正直で… 大好きだ! 俺も超ドキッとした! 竜児すまない。
なんかこういうシチュのSSあったね。竜児が家に帰ったら、服が転々と床に…

PqrGZqHjR.氏、GJ!です。
あの抑えが効きながらも、2人の想いがにじみ出てくるよな素敵なSSを書きながら、こんないい画も
描けて、ほんと神っす!

やっぱりみんなとらドラ!好きだよねぇ… 「噛み締めるように愛されている」と思う。
BD化も「前向き検討」されているらしいし、いつまでも続くぞ!

今日ワロタのは、NHK広報局のtwitter @NHK_PR

『教育では深夜2:10から「高校講座・地理▽亜寒帯と寒帯〜タイガとツンドラ」です。虎とツンデレ。それでは hasta luego !!』
ttp://twitter.com/NHK_PR/status/12486847879974912

『教育深夜2:10からの「高校講座・地理▽タイガとツンドラ」は、とら●ラじゃないんだからねっ!』
ttp://twitter.com/NHK_PR/status/12488122843537408

きっと、中の人にも愛されているのだろうw

490 : ◆PqrGZqHjR. :2010/12/10(金) 14:41:14 ID:wO4AHYL40
喜んでいただけたようで何より!
クリスマスには再度投下に来れ…るといいな。

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/10(金) 22:41:39 ID:jXrm6pEA0
>>490
超GJっした!可愛すぎて何度も眺めちゃう。うん、竜児に張り倒されてくるw
クリスマスも待機。が、無理なさらずー

ところで最近、大河のフィギュアがよく出てるね
一つくらい竜児とセットがあってもいいと思うんだ…即買するぜ!叶わぬ夢か
ストラップは並べて飾ってるwかわいい

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/10(金) 23:48:27 ID:66WW4Lj10
>>485
うおああああ見れなかったorz

まとめサイトに期待しておこうw

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/11(土) 00:58:24 ID:fVDtxrkc0
ドラクララジオの釘宮が竜児を連発していて困る。

494 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/12/11(土) 06:14:38 ID:V26mDeeB0
お題 「人差し指」「部屋」「チーム」


「はあぁ〜〜……」
 荷物を置いて自分の部屋から出てきた竜児が目にしたのは、憂鬱げな表情で長々と溜息をつく大河の姿。
「大河、どうした?」
「体育祭よ、体育祭。今年は竜児とクラス違うから、チームも別々になっちゃうじゃない」
「おう、そうだな……俺も大河のドジのフォローができないのが心配で仕方がねえ」
「失礼ね……いくら私でもそんなドジばっかりじゃないわよ」
「そうは言うがな大河、おまえ、去年の惨状を忘れたわけじゃねえだろ?」
「う……」
「でだな、一応対策を考えてみたんだが」
「……対策って、何よ?」
 むくれる大河の目の前で、竜児はぴっと人差し指を立てて。
「まず、周りに気をつけること」
「またずいぶんと大雑把ね」
「基本だからな。手元足元とかだけじゃなくて、段取りを事前に確認しておく事なんかも含まれるぞ」
 中指も立てて、Vサイン……ではなくて、
「二つ目、頑張り過ぎないこと」
「手を抜けっていうの?」
「そうじゃねえ。だけど、おまえは必要以上に緊張したり無理しようとしたりすると途端にドジをする確率が高くなるからな。一つ目と繋がるけど、そればっかりになって周りが見えなくなるし」
「……わかったわよ、気をつける」
 さらに立てられる指がもう一本。
「それから最後に」
「まだあるの?」
「当日の弁当のおかずは唐揚げにするつもりなんだが……ドジ一回につき大河の分の割り当てを一個減らすから」
「えーっ!?」



「まさか本当に一回もドジをしないとはな……」
「……わ、私も自分でびっくり」

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/11(土) 07:27:14 ID:bvwtwvsh0
いつもGJです。

496 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/12/11(土) 09:57:18 ID:T2UlFjN40
>>486
ひゃっはー!俺も見れなかったぜ!!

...orz
ちくしょう、どんな絵だったんだ…

497 : ◆PqrGZqHjR. :2010/12/11(土) 10:01:44 ID:WIxK9ikG0
>>496
まとめの人拾えてないとあれなんで再うpしておきますよー。
しかしろだってどこ使うのが一番いいんだろうか…

http://iup.2ch-library.com/r/i0202340-1292029261.jpg

今日は何か短いものを投下したいなー。

498 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/12/11(土) 10:02:03 ID:T2UlFjN40
どどど動揺しすぎてアンカを間違えたたたたた
>>485

499 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/12/11(土) 10:13:43 ID:T2UlFjN40
>>497


…ふぅ



再投下まことにありがとうございました。
迅速な反応に感謝の言葉もありません。
ええ、非常に愛らしい大河ですね。

500 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/11(土) 10:20:50 ID:vQGUNm/c0
>>499
賢者タイム杉ワロタ
いや、気持ちは分かるぜ…

501 : ◆PqrGZqHjR. :2010/12/11(土) 11:21:20 ID:WIxK9ikG0
1レスだけですがSS投下しまーす。

502 :part of scenary  ◆PqrGZqHjR. :2010/12/11(土) 11:24:00 ID:WIxK9ikG0
 今年も12月に雪は降らない。

 サンタは多分やってこないし。
 人知を超えた奇跡もまた、起きないだろう。
 学生がテストに喘ぐのも変わらないし、受験生が憎々しげに街を見渡すのも同じ。
 半日授業になった中学生が詰襟を寄せて、白い息を街へ撒き散らし、悪態をつく。

 今年も、変わらないのだ。

 風は冷たい。陽は短い。吐く息も、いい加減みんな真っ白。
 11月から気温は加速度的に落ちて、もこもこと人並みが着膨れしていく。

 セーター、コートにマフラー…手袋は…ううん、要らないや!

 まだかな、まだかな。
 背を丸くして、かじかむ手を、すり合わせる。
 ああ、さむいさむい。
 赤いマフラーに、白い息がとける。

 日の落ちる前から無数の白ひげは町並みを闊歩して、買い物袋を手にした主婦に、バイト帰りの若者に、駅から吐き出されるスーツの男たちにケーキを売りつける。
 あれがいくらか売れ残って、明日半額で売られるのもまた、変わらない。

 そういう変わらないことは幾つもあって、私の身長もずいぶん昔から、これもまた変わらない。

 140センチそこそこの視線から映る街は、騒がしく、雑然としていて、全ていつものクリスマス。
 寒さを理由に身を寄せ合う恋人も、子供へのプレゼントを抱えて帰る父親も、美味しいご飯を作ろうと意気込む母親も、サンタを信じている子供も。
 みんながみんな、とても幸せそう。

 鼻まですっぽりと顔をマフラーにうずめ、他人事のように私はじぃっと街を眺める。
 確かにそうだ、他人事だ。
 忙しなく歩く人も、イルミネーションを見上げる人も、みんな私とは他人で、彼らの幸せは、私とは関係ない。
 全部が、全部、他人事だ。それはずっと、変わらない。

 彼らはみんな、このクリスマスを他人事の幸せで彩るのだ。

 たたたたと、小走りの音が街路を叩く。
 冷えた色をした空気に、見慣れた人影。

「悪い!!待ったか?」

「遅いぞ馬鹿犬!あまりの寒さに凍りそうだわ!」

「すまんすまん」

 誰かとは違う、幸せがここにはあって。
 きらきら輝くイルミネーションに、眩しそうに仰々しく顔を上げなくてもよくなった。
 これは本当に大きな変化で。私もこのクリスマスにやっと滑り込めたみたいで。

 雪は降らなくても、サンタがこなくても、死ぬほど寒くても、背が伸びなくても。

 あなたが隣にいれば、私は幸せ。

 ぎゅうっと握った手は、部屋まで離れない。



503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/11(土) 14:53:37 ID:rLwzWQfo0
>>502
こんな季節になったんですね。
幸せさがやっぱりいい!

504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/11(土) 23:12:11 ID:7H3n5LYI0
>>502
gjでした

みのりん曰く、辛いに「一」を足せば幸せになるそうだが、
これまでずっと辛いことを強いられるジンクスの中で生きてきた大河にも
竜児という大きな「一」が加わったことで、まさにそうなれたんだよな

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/12(日) 13:49:25 ID:+yLNInsg0
>>494
定期投下乙です!
大河は本気出せばやれる子だからな。自分でびっくりしてる大河かわいいw

>>502
可愛らしい感じにほかほかした
この先のクリスマスはきっと毎年二人幸せに過ごすんだろうね。GJでした

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/12(日) 17:56:56 ID:E0PV6Mho0
>>493
CM見る限りでは「りゅうじ」というよりは「ゆうじ」に聞こえるな。ラジオは違うの?

キャストからしてJCかと思ったら違った。
またくぎゅと堀江さんで男取り合う話やるのか。
とらドラよりはゼロ魔っぽい匂いがする。

それにしても「とらドラ!」に「もしドラ」に「ドラクラ!」ってややこしいね。

507 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/14(火) 22:00:49 ID:DLvGlu6l0
>>494
乙!
ワロタwww
唐揚げ旨いから仕方ないよねw

>>499
おまwww

>>501
乙!
ほんわかでココロがポカポカです。


今年もこのスレでこの季節を迎えることができて幸せだぜ

508 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/14(火) 23:30:26 ID:aXIwCu5m0
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101214-00000048-mai-soci

「あんた何読んでるのさ。」
「ドラッカーっていう経営学者の『マネジメント』って本だ。」
「ふーん・・・まぁ興味ないし。」
「何言ってるんだ!俺が読み終わったらお前も読むんだぞ。」
「えー。どうしてよ!」
「もし・・・俺とお前がドラッカーの『マネジメント』を読んだら・・・」

↓ オチをどうぞw

509 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/12/15(水) 06:02:57 ID:4Zktlhd30
お題 「高須」「靴」「二人」



「……よし」
 竜児はチリ一つ無い自室を見回して満足げに頷く。
 いや、もう元自室と言うべきか。
 布団の無いベッドや空になった本棚を見ていると、やはり少し寂しい気が
「竜児、早くしなさいよ!」
「……あのなあ大河……ちょっとぐらい感傷に浸らせてくれよ」
「な〜にが感傷よ。どうせ土曜には帰ってくるんだし、そもそもその気になればすぐ戻れる距離じゃないの」
「そりゃそうだが……」
「ほら、予定より時間遅れてるんだから」
「その主原因は大河が荷物の整理終わらせてなかったからじゃねえか」
「う、うるさいわね!あんただっていつまでもいつまでも掃除してて……」
「竜ちゃん大河ちゃん、引っ越し業者さんが待ってるよ〜」
 かけられた泰子の声に二人は言い合いを中断、顔を見合わせて。
「お、おう!」「今行くー!」
 
 竜児と大河は玄関で靴を履き、振り返って。
「泰子、くれぐれも刃物と火の扱いには気をつけてな。あんまり無駄遣いするんじゃねえぞ。何かあったらすぐ電話しろよ」
「大丈夫、わかってるよ〜」
「インコちゃんの世話をよろしく頼むぞ」
「頼まれた〜。大河ちゃんも竜ちゃんのことよろしくね〜」
「うん、任せといてやっちゃん」
「どっちかというと、俺が大河の面倒を見る形だと思うんだが……」
「なんですってぇ?」
「ほらほら二人とも、急いで急いで〜」
「おう、それじゃ泰子」「やっちゃん」
「「いってきます」」
 言って二人は手をつなぎ、高須家の扉を開ける。

510 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 15:02:59 ID:Yt4IiQIf0
続きが気になる。

511 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 16:15:28 ID:jtWOE89DO
ぶつ切りはわざとじゃない?新居に引っ越す二人の、希望に満ちたリスタートって感じで
>>509
同棲か新婚かどっちでもおいしい話ごちそうさまです

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 17:47:53 ID:jtWOE89DO
>>508

 〈大河、もしドラ読了〉

「……ダメ!ずぇーったいダメよこんなの!」
「おう!?なんだ急に大声出して。」
「なにのんきな声出してんのよこのビジネス理論犬!あんたが寄越したこの本よ!
 これじゃみのりんが病気になって、私が代わりにソフト部を全国大会に出場させる話になっちゃうじゃない!」
「……いや、あのな、誰も筋をそのまま再現しろとは言ってねえだろ。俺たちのエピソードに応用したらってはなs」
「おまけに私と北村くんの仲は初っ端から最悪、ばかちーは本物のチワワだし、あんたは独神(30)と日々みっちり戦略会議をするハメになるのよ!」
「おうっ……。今のでだいたい配役は見えたぞ。俺が正義なのか、そうなのか大河。
 ってそうじゃねえだろ!だから、なんでそのまま当てはめるんだよ!」
「そりゃあ結局みんな一丸となって、わだかまりもとけるわよ。でもそしたらみのりんは、みのりんは……。」
「た、大河?俺の話を……、おい、泣いてるのか?
 たいgうわぶ!」
「と・に・か・く!二度とこのテの本は持ってこないで!
 ドラッカーだかドラグナーだか知らないけど、すでにアニメ化されてる私達に成功哲学なんて必要ないのよ!」
「ふぉ、本のカドが鼻に……ひでぇ……
 そんなこと言ったってお前、BD化は今微妙なラインだし、ゆゆぽは新シリーズに移っちまったしで、ここらでもう一山当てといたほうがいいんじゃないか?」
「かーっ!そんなんだからいつまでたってもふぉ、フィアンセに犬呼ばわりされるのよこの質実剛犬!
 いーい?あんたと私は本編終了と共に希望に満ちた未来が提示されてるの。また泣くこともあるだろうけど、あんたと一緒なら私はきっと耐えていける。」
「お、おう……。」
「再度儲かる、すなわちメディア化するってことは、その平穏を覆して私達の間にまた一波乱起きるってことでもあるのよ。あんたがPSPで記憶を無くしたみたいにね。
 私はもう……そんなのは耐えられない。あんたの手を離したくない。」

513 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 17:53:54 ID:jtWOE89DO
「大河……。俺だって、離したくねぇよ。危なっかしくて、どこにすっ飛んでくかわかりゃしねえ、俺の愛しのちっこい手だ」
「……えへへ。
 その、だから、あとはこのスレの住人に任せておけばいいの。きっとBD化もすごく応援してくれてるし、これから先も私達をめちゃくちゃ幸せに書いてくれるわ。」
「そんなもんかなぁ。」
「幸せって案外そういうものよ。欲をかかないほうがいいこともあるの。」
「……どの口がそれを言うかねえ。」
「あによ、なんか文句あるっての?」
 ちゅっ。
「なるほどこんな口か。」
「……ばか。リップが落ちちゃったじゃないよ、唇カサカサ犬……。」


 おわる!

514 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 19:18:12 ID:t3W19fEl0
>>513
おぉっ〜!
ぶらぼー!

515 :508:2010/12/15(水) 20:32:55 ID:F5bTr/cG0
>>513
単純にもしドラならぬ「とらドラ!」というオチが来るかと思いきや・・こんなGJなものがくるとは・・。

「いてっ!」
「ばーか。あんたとあたしが読んだら「とらドラドラ」じゃないの!」

516 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:11:34 ID:NOgjx8ar0
>>509
乙です
こうやってずっと手をつないで生きていくんだろうなー

>>513
ナイス繋ぎ!
こういうキャラが作品を俯瞰的に語る形式、なんか好きだわw
うん、展開がないのは正直さみしいが、脳内ではめちゃくちゃ幸せに暮らしてる二人が住み着いてるよ!
バカップルっぷりに2828
それにしても「もしドラ」、ややこしいよねぇ。目にするたびにドキッとするw

517 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:19:07 ID:xDJCAsxX0
小説刊行中は存在すら知らず、アニメ全盛期は興味を示さなかったバチあたりな俺だが、
きまぐれでコミック版を買った今月初頭。そして某動画で観た虎×竜MADの数々…
そしてこのスレとまとめサイトの存在を知ったとき、俺の中で何かが目覚めた。
…ああ、俺の理想郷はここだったんだな、と。

もう年末だけど、今年のうちにこの作品にハマれて本当によかったよ!
偉大なる先人たちに続こうとssなんて書いてみたいけど、いかんせん文才の無い俺。
でも、どうしてもこのネタをぶちまけたいので初投下してみます!
世界的な名作のパクr…もとい、オマージュということで許してください。
ちょっと早いけどクリスマスにちなんだお話です。
いつか完全オリジナルも書いてみたいぜ…

518 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:22:55 ID:xDJCAsxX0
1ドル87セント、これで全部。しかも、そのうち60セントは1セント硬貨の寄せ集め。
八百屋、肉屋、しまいには魚屋でまでも買い物をする度に無理やり値切り、店主のジト目と無言の非難を受け
顔から火が出そうなほど恥ずかしい思いをしながらも、少しづつ浮かせて貯めたものです。
大河はもう一度(これでもう三度目です)昼食の済んだテーブルの上で硬貨を数えてみました。
でも、やっぱり1ドル87セントしかありません。
「はぁ…どうしよう。明日は―――」
―――明日はクリスマスだというのに。


ここは大河と竜児の暮らすアパート。格安の家賃の割におんぼろアパートと呼ぶにはまだ早く、二人がつつましく生活するには十分な家です。
玄関ポストの上には『高須』の表札が貼ってあり、その下にはそれぞれ『竜児』『大河』と書かれた名札、
そして『セールスお断り!』という貼り紙が貼られていました。
毎晩竜児が帰宅すると、大河は必ず、
『おかえり、竜児!』
と、ありったけの想いを込めてぎゅうっと愛する夫を抱きしめます。
もっとも、大河はかなり小柄なので、傍から見れば大河が抱きついているだけに見えることでしょう。

さて、大河が頭を悩ませている原因。明日はクリスマスだというのに、竜児に贈り物を買うためのお金が1ドル87セントしかない。これは大変遺憾です。
なにせ、竜児が仕事で帰らない今日のうちが、こっそりプレゼントを用意する最後のチャンスなのですから。
二人は決して貧しくはありませんでしたが、生活費を差し引いた残金が、月末に財布の中にたんまりと余っているほど裕福でもありません。
ただでさえ出費の多い年末、大河はやりくり上手な竜児の見よう見まね(竜児は店で無理やり値切ったりはしませんが)で自分なりにお金を貯めてきたつもりでしたが、どうやら少々甘かったようです。
「明日は竜児も早く帰ってくる日だし、せっかくいいものを…。」
贈ろうと思ったのに。何か、素敵で、めったにないもの―――竜児が喜んでくれる何かを。

ふと、机に突っ伏していた大河のきらきらとしたブラウンの瞳に、部屋の隅にある姿見の鏡に映る自分の姿が映りました。
ふてくされたような、いたずらを咎められた子供のような顔をした自分の姿が。
「うん、このままウジウジ悩んでてもしょうがないわ。とにかく、午後は町に行きましょう。もしかしたら、竜児へのいいプレゼントが見つかるかもしれないもの。」
よし、と大河は椅子からぴょこんと飛び降り、鏡の前で髪をとかし始めました。
嫁入り道具として持ってきて以来ずいぶんくたびれてしまった櫛で。


519 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:27:49 ID:xDJCAsxX0
高須家には、誰よりも自慢できる宝物が二つありました。
一つは大河の自慢である、竜児が持っている金の懐中時計。
もし、ブランド物の腕時計を自慢気に見せびらかしている人がいても、彼の懐中時計を見れば、あわてて袖の中に腕を引っ込めることでしょう。
ただ、その懐中時計には時計チェーンではなく、大河の携帯電話に付いているものとお揃いのストラップが付けられており、時計、そして持ち主とのアンバランスさが、かえって可愛らしく見えるのでした。
そして、もう一つは竜児の自慢である、大河の長く美しい髪でした。
淡い栗色の髪は彼女の膝まで届き、町を歩けば女性からは羨望の眼差しを受け、男性からはナンパの嵐(もっとも、左手の指輪を見せればそそくさと行ってしまいます)を受けるので、
大河は、竜児との外出時以外は帽子をかぶるのが常でした。

町に出て、様々な店を見て回ることしばし。ついに大河はとある雑貨屋で、竜児に贈られるために生まれてきたとしか思えない一品を見つけました。
それはプラチナでできた懐中時計用の時計チェーンでした。デザインはシンプルで上品。一見冷たく鋭い光を放っていますが、
手にとってみれば、本当はとても優しい光であることを実感させてくれるそれに、大河は竜児の面影を見ました。
産まれつき目つきが悪く、一見すると怖そうに見えるが、溢れんばかりの包容力と優しさで自分を愛してくれる、世界一の夫の面影を。
「み、みのりん!こ、こここれ、いくら!?」
大河は店主に掴みかからんばかり、というかすでに胸ぐらを掴みながら問いかけました。
「さ、32ドルだよ…というか大河、手を離してくれぇ、ぐ、苦じい…。」
「あ、ごめん。…32ドルかぁ、ぜんぜん足らないや。」
大河がぱっと手を離すと、店主―――大河の親友にしてハイスクール時代の同級生。櫛枝実乃梨―――は軽く咳き込みつつ、
「それが気に入ったのなら今日一日取り置きしておくよ。まだまだ時間はあるし、代金が用意できたらまた来なよ。高須君にあげるんでしょ?特別にまけてあげるよ。」
「ほんとう!?」
「おう、まけるぜ〜、超まけるぜ〜。純プラチナだから本当は定価販売なんだけど、なーに親友の大河のためさ、大まけにまけて21ドルでいいよ!」
地獄に仏、渡りに船。実乃梨は大河にチャンスをくれたのでした。

さて、ああは言ってくれたものの、今日中にあと20ドル集めるのは至難の業です。
1ドル87セントの入った財布をポケットの中で握り締め、うんうん唸りながら町を歩く大河の目は、ある一点に釘付けになりました。
『美容室・亜美』
実乃梨と同じくハイスクール時代の同級生。現役モデルでありながら現在はサロン経営もこなす、大河にとっては悪友であり、よき友人の一人でもある、川嶋亜美の店の看板…
…に貼られた、『あなたの髪、買い取ります』というチラシに。

520 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:29:08 ID:xDJCAsxX0
「あら?ちび虎、いらっしゃい。」
ちょうど客足の遠のいた時間なので手持ちぶさたにしていた亜美は、大河に気が付くと、
「どうしたの?前髪や毛先ならこないだ調髪したばかりでしょ?あ、とっくに修正期間過ぎてるから、やり直しは別料金になるわよ。ちゃーんとお代はいただきますからね。」
にやりと笑いながらハイスクール時代と変わらない意地悪そうな、しかし声には友人に向けた柔らかさを含んだ口調で問いかけます。
「ううん、ばかちー。今日は別の用事で来たの。」
大河も、亜美の意地悪口調が冗談であることなど百も承知です。そして、『ちび虎』と言われたら『ばかちー』と返すことは、二人にとってはもう一種の挨拶のようなものとなっているのでした。
「あの、さ。外に貼ってある、『髪、買い取ります』って…ほんと?」
「は?あんた髪切るの!?」
「うん、実はね…。」
大河は最初から順番に理由を説明しました。亜美は終始無言で聞いていましたが、
「なるほど、あんたの気持ちはわかったわ。いい髪はウィッグやエクステの材料に使えるから、ウチとしても助かるけど。ただあんた…本当にいいのね?」
念を押すように再度問いかけてきます。
「うん、竜児のためだもん。それに髪ならまたすぐ伸びるし、いいの。」
「…負けたわ。あんたの髪、買い取らせていただきます。んで、あといくらあればその時計チェーンは買えるの?悔しいけどあんたの髪の質は本物だし、知り合いのよしみで、今回だけ特別に言い値でいいわよ。」
ハイスクール時代、まだ仲の悪かった頃の亜美の口からは到底出てこなかった台詞に、
「ばかちー、あんた…ううん、ありがと!」
「それでいいの。特別なんだから、今回くらい人の厚意は素直にもらっとけちび虎!」
大河も、いつもの軽口や冗談は言わず、心から感謝の言葉を返すのでした。
もはや条件反射になりつつある『ちび虎』『ばかちー』のやり取りだけは残して。

さて、目標の21ドルを手に入れた大河は、その足ですぐに実乃梨の店へとんぼ返りし、
「大河ぁ〜。あんたって娘は、なんて旦那想いなんだい!ちきしょう、高須君は世界一の幸せモンだよ、てやんでぇ!」
目当ての品と、実乃梨からの号泣&ハグをお土産に受け取りつつ、帰路についたのでした。

521 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:31:58 ID:xDJCAsxX0
そして翌日の晩までお話は進み、今日はクリスマス。そろそろ竜児も帰ってくる時刻です。
「ただいま〜。」
「おかえり、竜児!」
大河はいつも通り、竜児に抱きつき(本人としては抱きしめているつもりです)ました。
「おう、ただいま。たい…が…?」
竜児もいつも通り、大河を抱きしめ返しました。しかし、今日は一つだけ、いつもと違うところがありました。
竜児が驚くのも当然です。大河の美しいウェーブのかかった、膝まで届いていた淡栗色の長い髪は、肩口からばっさりと切られてしまっていたのです。
「ど、どうしたんだ、その頭!?」
「え、えーと、イメチェン?」
「質問に質問で返すなよ…。」
竜児は苦笑しながら大河を見つめます。大河も竜児を見つめます。
ふと、
大河は、竜児の瞳がいつもと違うことに気付きました。いえいえ、目つきの鋭さはいつものことなのですが、
その瞳の奥に…怒りとも悲しさとも困惑とも違う、微妙な感情に揺れる光を感じ取ったのです。でも、それはすぐに竜児の瞳から消え、
「まぁいいや、まずは食事にしようぜ。せっかく大河が作ってくれた料理が冷めちまうのはもったいない。」
竜児は愛用の赤いマフラーを外しながら食卓につきました。暖かいシチューに香ばしいとんかつ。バゲットはいつもより厚めにスライスされ、カリカリに焼かれてバターもたっぷり塗られています。
レタスだけのサラダの横にはポテトサラダ、もちろんシャンパンも用意されています。そして、テーブルの中央の大皿には…竜児が初めて大河に作ってくれたものと同じ材料、同じ味付けの、想い出のチャーハン。
さあ、今夜はごちそうです。
「「いただきます!」」
どれもこれも、大河が竜児に教わりながら一生懸命覚えた料理ばかりでした。

「そうだ竜児、私、あんたにクリスマスプレゼントがあるのよ。」
食事の途中で、大河は意を決して話を切り出します。自分の髪を切ってまで手に入れた、竜児への最高の贈り物を渡すために。
「おう、ありがとうな。開けてみてもいいか?」
「うん!きっと気に入ると思うわよ。」
大河は、竜児が箱を開けた瞬間、ぱぁっと表情が明るくなるものだとばかり思っていました。しかし、箱を開けた竜児の表情は、あの微妙な感情に包まれていたのです。
まるで、どう反応すればいいか分からない、とでも言いたそうに。
「なあ、大河。実はさ、帰りに川嶋の店の前を通ったとき見ちまったんだが、まさかお前、このチェーン買うために…。」
「…うん。あたしの髪、買い取ってもらったの。それで、竜児へのプレゼントを買うお金を用意したのよ。」
―――でもね、どうして竜児は、そんな顔をするの?という台詞は続けられませんでした。竜児は、決して怒っても、悲しんでもいませんでしたが、本当に複雑な表情をしていたからです。
「わかった。その理由が知りたいなら、俺のプレゼントを開けてみてくれ。それで、全部わかるからさ。」
さすがは竜児。声に出さなくても大河の心情を察したのでしょう。大河は竜児に手渡された包みを開けてみました。そして、その中に入っていたのは…
「…っ!これ―――」
それは、大河がずっと前から欲しいと思っていた、櫛でした。美しいべっこうでできていて、宝石できらりと縁取りされたそれを、大河が町へ出かけるたびにうっとりと眺めていたのを、竜児は知っていたのです。
「俺さ、その櫛を買うために、あの時計…売っちまったんだよ。」

そう、大河と竜児。二人は、お互いの一番喜ぶ贈り物のために、その贈り物と対になるべき、お互いの一番大切なものを手放してしまっていたのです。

522 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 22:34:03 ID:xDJCAsxX0
しかし、大河は櫛を胸に抱き、やっとの思いでこぼれるのを我慢した、涙をたっぷりと湛えたブラウンの瞳を上げ、微笑んでこう言いました。
「私の髪はね、すぐにもとの長さまで伸びるわ。あぁ、今からこの櫛を使うのが楽しみね!」
竜児も、胸の奥がじぃん、と熱くなるのを感じながら、
「俺の時計だって、すぐに取り戻してやるさ。質屋のオヤジが、『これはとてもいいものだから、他人には絶対売らん。必ず、お前が買い戻しに来い。』って言ってくれたからよ。」
ふっ、と柔らかく微笑み、
「それに、時計に付けてたストラップは、これからは携帯電話に付けりゃいい。そうすりゃ、お前と完璧にお揃いにできるしな。」
と、愛する妻を抱きしめながら、優しく、優しく囁くのでした。

お互いに素敵な贈り物を用意するために、お互いの宝物を台無しにしてしまったこの二人を、あなたは愚かだと思いますか?
いいえ、それは違います。
イエス・キリストが産まれたときに贈り物を持ってきた東方の賢者たちよりも、
今夜、メリークリスマスの言葉と共に贈り物をする全ての人たちよりも、
この二人は、最も愛する人のために、最も賢い選択をしたのです。
彼らこそ、本当の、賢者なのです。

それに、櫛が髪と、チェーンが時計と対になるのは時間の問題。そう遠い話ではないでしょう。
何より、この二人は、虎と、竜は、いつも、いつでも、いつまでも―――

―――対になっているのですから。
――――――そういうふうに、できているのですから。

523 :512:2010/12/15(水) 23:21:33 ID:jtWOE89DO
うひょ〜い初投下で感想貰えて超嬉しいよ〜!たまたまもしドラ読んだばっかりだったから遊んでみたよ。
春田風にはしゃいじゃうよ〜

>>517-522
クリスマスにぴったりのいい改変。きっとO.ヘンリも竜虎に2828さw
お互い新参どうし精進しましょうぜ。

524 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 23:26:16 ID:xDJCAsxX0
>>517->>522
以上です。
元ネタは「賢者の贈り物」から。
偉大なる先人たちには到底及ばないけど、一つの妄想の形ということで許してください。

さて、原作一気買い&一気読み&ポータブル購入祭りの始まりだ…

525 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/15(水) 23:35:55 ID:xDJCAsxX0
>>523
…って、さっきのレス(524)書いてるうちにコメントもらえてたw
ありがとう、超うれしい!

とらドラ!暦2週間の俺だけど、みなさま、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします!

526 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 01:36:44 ID:pxTrLOOo0
>>517
自分もこのスレ108あたりで同じようなこと書いたよ。ようこそ聖地へ!

賢者の贈り物GJ!元の話も好きだけど読んでてじわっと来るね。文才無いとかとんでもない。
自分もこのスレ内で初投稿したけどそれに比べたらよっぽど上手いと思う。

>>512
もしドラは知らないけどすごく2828できた。まさかのメタなオチが来るとはw

お2人とも新参同士これからもよろしく。


それはそうと容量的に次スレ立てなくちゃいけないのかな?やり方わからないんで誰かできる人お願いします。

527 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 18:57:27 ID:ZyrikcDV0
>>509
乙!
引越し当日に何も無い自室を眺めた時の寂しさはすごいんだよね。
この門出はなんだか泣けてくるぜ……。

>>513
乙!
ちくしょう、鼻血が出そうだw
波乱ばっか起こしてサーセンw

>>522
乙!
イイね〜
竜虎らしさがジワジワくる!

ギシアンしか書けない俺よりずっと凄いぜw

スレタイ案募集中。
以下は20スレにあったスレタイ案。どれがいいかな?
【とらドラ!】大河×竜児【ゴロゴロ妄想】
【とらドラ!】大河×竜児【クスクス妄想】
【とらドラ!】大河×竜児【フニャフニャ妄想】
【とらドラ!】大河×竜児【キュンキュン妄想】


528 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 21:19:57 ID:bGajnjaN0
>>527
クリスマスねたも増えるし、フニャフニャに1票!

529 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 21:58:45 ID:bB7bGAHCO
今日もまとめサイトで幸せになってきたよ!まとめ人さんいつもありがとう

>>527
フニャフニャかキュンキュンがいいなあ

530 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 22:23:16 ID:A5hpJZPA0
いまだに新しい書き手さんが現れるってことがスゲェよなw
昔からの人も続きお待ちしていますよ、いつまでも!!!

クリスマスに年末年始、
さぞやラブラブこたつでフニャフニャって感じで一票(´∀`)

531 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 22:31:17 ID:0vjLW5Mc0
>>526 >>527
初投稿でまたコメントをいただけるとは、感激です!今後ともご指導お願いいたします!
昨日、賢者の贈り物を投下した者ですが、作中に誤字脱字を見つけてしまったので
あつかましいお願いとは思いますが、まとめ人さまへ報告させていただきます。

>>521の中で、大河が髪を切った理由を告白する部分、

「なあ、大河。実はさ、帰りに川嶋の店の前を通ったとき見ちまったんだが、まさかお前、このチェーン買うために…。」
「…うん。あたしの髪、買い取ってもらったの。それで、竜児へのプレゼントを買うお金を用意したのよ。」

↑の大河の一人称が『あたし』になってしまっているので、まとめサイトへ拾ってくださる際『私』に直していただければ幸いです。
自分の確認不足が招いたミスなので大変申し訳ありませんが、どうかよろしくお願いいたしますorz

>>527
俺もフニャフニャ、キュンキュンに1票で!

532 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 22:49:23 ID:ZyrikcDV0
フニャフニャに決定!

次スレです
【とらドラ!】大河×竜児【フニャフニャ妄想】Vol23
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1292507029/

仲良く使ってね!

533 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/16(木) 23:33:47 ID:bB7bGAHCO
>>532
乙です!
次スレでもバカップルに全力でフニャフニャするぜぇ

534 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/17(金) 07:45:59 ID:fLPw+Pm60
>>531
ドンマイ!
元の話もそうだけど、相手への思いやりが竜虎にピッタリ嵌ってて温かくなった
締めも上手い。GJです

>>532
乙!

535 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 02:41:05 ID:I1r8e7860

                        \丶  、´ Y´  / /  イ ノ   } /  ヽ {  ノ´! |   :. / ! /   リ
                 ,.  ´ ̄ ̄`\ ヽ ,ゝ’`ヾヘ  ,  /´ ><       ´ /   !   j/  j/  /
                  /       -─ Y´     ヽ{  .'`>く    `ヽ      / ,   / /   , ′
    埋めるよ!    /    ,. ´       !         ^y'´   \          / / /   ´
                      /        ′       .:      ヽ         / /´
                   /         ,         .    /   !     ´
                           /            ' ._     /
        /´ ̄ ` 丶 、                       :. !   ̄  ´
        ,           \    /                、|
         i        _ _ >ァ ´                 丶
         |    ヽ/´  / /                    \
         l     i    / /                      `  .._
       _|     l  / /                        , ´  ,> _
      / :!     l ,   ′                         /   /   ` 、
    /   .:!       ! i  ′                     /  ,           \
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.   /   :.:.. :.:.:..     !- _  - _     :',          / │     _             }
   ′  . :.:.. :.:.:.:..   !三ニ_   ‐-  _:.、_ __ __,/   !   ´
   {     . :.::.. :.:.:.:.:...  !:、三三三ニ‐ __              _ j/                 ,
    \    . :.:.:..:.:.:.:.:.:.:.. .!:.\三三三三三三二ニニ二> ´                  /
      `   _  . :.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:..:.:..`:.<三三三三三ニ> ´             _  -‐   ̄   `ヽ
        !  ̄「`丶:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.. ‐-_ニ=-‐ ´              _  ‐               〉
        l   ヽ . .:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. . ̄                -                  /

536 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 02:44:05 ID:I1r8e7860
             _,.-'"´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ、
           /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\
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          |: : :_:|:::: : :/〈   ・ ヾ   ヽハ:/彡-、 | : : ::| ヽ!
        /: :/-、 |:::::: リ   ̄ ̄ ̄`      ´ ・ ノ |::: ::|: |
        |:: :| i ヽ|::ト、:|   从从        ̄`   リ:::: |: |
        |ハ::| ヽ}ヾヽ!           ゝ 从从 彡::/ヽ!
        | ノ::ヽ {    u               |:::/     う、うなじ……
         |::::::::|`ー,                  ∧(
         |:ハ::::|  ';   u             /
           |:::|  ヽ、    `ー==ニ二フ  /
           |::,|    `ヽ、             /
           |/|!      ``ヽ、       /
         ,.-━┷==、      `ヽ、_/
         |::::::::::::::::::::::::::: ̄``ー┐   |、___
         |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!    |::|::::::::::::::|

537 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/12/18(土) 02:46:27 ID:I1r8e7860
     ,.:<二ヽ    ,. -―‐‐: ァ‐:¬、    ,. -―:ァx
   /:.ヽ: : :―: \ /:/ ̄: : : : : : : : : :}⌒: Y二二:7: :ハ
   |\: : \二: ニ/: :./ : : : : : : : : : : : : : !: : : :.V: : :/: :/:.ハ
   |\:_: :>:.イ: :./ : : : : : : : : : : : : : : :! : : : : V//: /:ノ}
   弋 : :-:-:-: : 个:/: : : : : :/: :!: |: : : : : :/: : : : : : !:ー―':./
    ` ー――‐ {:/ : : : : :/: :/--!: : : :斗‐| :|: : : : ',>‐‐'
          /:/: : : /!|/  |: :/ |/ V!: : : : :!
          /: i : : : | T佗T |/  T佗T !: : : : |
          |: :|: |\i   ̄   ,   ̄ 厶! : : :|
          |: :ハ: : :|  u         ! |/|: :!    ……
          ∨ V少 、     _ _,.   ,ノ   ∨
                ` ーr-  ,. -<
              r‐r<_.}   |―┐
            /  ヽ/   ` マ´\
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