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リリカルなのはクロスSSその117

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 19:49:57.64 ID:F3a9LaTK
ここはリリカルなのはのクロスオーバーSSスレです。
型月作品関連のクロスは同じ板の、ガンダムSEEDシリーズ関係のクロスは新シャア板の専用スレにお願いします。
オリネタ、エロパロはエロパロ板の専用スレの方でお願いします。
このスレはsage進行です。
【メル欄にsageと入れてください】
荒らし、煽り等はスルーしてください。
本スレが雑談OKになりました。ただし投稿中などはNG。
次スレは>>975を踏んだ方、もしくは475kbyteを超えたのを確認した方が立ててください。

前スレ
リリカルなのはクロスSSその116
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1305559263/l50

規制されていたり、投下途中でさるさんを食らってしまった場合はこちらに
本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/6053/1231340513/


まとめサイト
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

NanohaWiki
ttp://nanoha.julynet.jp/

R&Rの【リリカルなのはデータwiki】
ttp://www31.atwiki.jp/nanoha_data/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 19:50:54.60 ID:F3a9LaTK
【書き手の方々ヘ】
(投下前の注意)
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
  ttp://gikonavi.sourceforge.jp/top.html
・Jane Style(フリーソフト)
  ttp://janestyle.s11.xrea.com/
・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認して二重予約などの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・鬱展開、グロテスク、政治ネタ等と言った要素が含まれる場合、一声だけでも良いので
 軽く注意を呼びかけをすると望ましいです(強制ではありません)
・長編で一部のみに上記の要素が含まれる場合、その話の時にネタバレにならない程度に
 注意書きをすると良いでしょう。(上記と同様に推奨ではありません)
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
 前の作品投下終了から30分以上が目安です。

(投下後の注意)
・次の人のために、投下終了は明言を。
・元ネタについては極力明言するように。わからないと登録されないこともあります。
・投下した作品がまとめに登録されなくても泣かない。どうしてもすぐまとめで見て欲しいときは自力でどうぞ。
 →参考URL>ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/pages/3168.html

【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、さるさん回避のため支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は、まとめWikiのコメント欄(作者による任意の実装のため、ついていない人もいます)でどうぞ。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
 不満があっても本スレで叩かない事。スレが荒れる上に他の人の迷惑になります。
・不満を言いたい場合は、「本音で語るスレ」でお願いします(まとめWikiから行けます)
・まとめに登録されていない作品を発見したら、ご協力お願いします。

【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
 議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
 皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
 著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
 いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
 追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
・携帯からではまとめの編集は不可能ですのでご注意ください。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 19:56:53.10 ID:F3a9LaTK
「ミカヤ、なんだ?確かめたいことって。」
 サザが問いただす。唐突に、ベグニオンに言われてしぶしぶではあるが、支度を始めた。
 その隣でミカヤもかつての魔道書と杖を取り出し、サザにとって予想外の言葉を告げた。

「…死体よ。ベグニオンに行って死体を調べるの。」

 …今、なんと言っただろうか?
「ま、待ってくれ!死体を調べるだと!?」
「私だって、こんなことはしたくないわ。でも…もし、この予想が現実のものだったら、早く手を打たないととんでもないことになるわ。」
「…一体、何が起こるって言うんだ?」
「私も…よくは分からないの。でも、断言はできるわ。アイクとセネリオが異世界にいてしまったことと、確実に関係がある。」
 そこまで言う以上、それは真実なのだろう。
 「暁の巫女」ミカヤは幾度となく、神使としての力を使い未来を言い当てていた。今回も、おそらくそうだろう。

「それじゃ、行くぞ。」
「ええ。」
 支度を終えた二人が王城から外に出る。一応、しばらくの間留守にすることは地方の貴族たちにも伝えておいた。
 その間に何か起こしたら、あんたの秘密をこの国中にばらまいてやる、とサザが脅していたが、それは余談だろう。
「ところで、ミカヤ。今から行ってもベグニオンまでは数日かかるぞ。」
「いいえ、セフェランが去り際に残してくれた「リワープ」があるわ。」
 そう言って、ミカヤは先ほどから握っていた杖を見せる。
「サザ、捕まって。」
 その言葉に素直に従い、リワープの杖につかまる。
 その時だった。

「あれ…ミカヤ?」
「…ペレアス?」

 意外なところで再会を果たした。

「ペレアスか。済まないが、しばらくの間俺達はデインを留守に――――」
「ちょうどよかったわ、ペレアス。この杖につかまって。」
 いきなり、旅のお供に連れて行こうとした。
「ミカヤ!?」
「仲間は一人でも多い方がいい。違う?」
 そう言って、ミカヤはサザに微笑む。夫としては、それで許さないわけにはいかなかった。
「あ、少しいい?」
 唐突にペレアスが口を開く。

「旅のお供だったら、それなりの装備を整えてくるよ。そうだな、5分くらい、そこで待ってて。」
 と言い、二人を残して装備を整えてくる。


ペレアスは傷薬や、魔道書をポーチに放りこむ。もちろん、闇魔法最強クラスと言われた「バルベリト」も持参する。
「…これを使う事態だけは、避けたいけどな。」
 ポツリと呟いたが、いざという時のために念には念を入れる。
「さ、国王達を待たせちゃ、いけないな!」
 そう言い、ペレアスは家を飛び出す。
 その表情には、前の戦のときには無かった「楽しい」という感情が浮かんでいた。


「いい?行くわよ。」
 ミカヤが合図し、杖が光り始める。
 杖の光は3人を包み込み、ベグニオン帝国まで飛ばして言った。
 この瞬間から、二つの世界で起こっている事件がくっきりとつながることになった。

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 20:01:40.33 ID:F3a9LaTK
第15章「新たな局面」




 リワープによって一気に、ベグニオン帝国の皇居に転移した3人。
 そこには、サナキ以外に人がいた。
「む、姉上!」
 部屋に入るなり、マントを引きずりながらサナキがやってくる。
 その背後には、しばらく見ていない顔があった。

「お久しぶりです、皆さん。」
 そこに立っていたのは、
「セフェラン―――――」
 ベグニオン帝国元老院議員議長にして宰相、セフェラン。別名、「エルラン」。
 かつて、ベオクと呼ばれる人に近い人種と、ラグズと呼ばれる獣に近い人種が争いを起こし、人に絶望した人。
 絶望のあまり、この世界からベオクを、ラグズを抹消するために、女神アスタルテを起こすという大きすぎる過ちを犯した、「元」ラグズ。
 今では、セリノスの森で静かに暮らしているはずだったが。

「ところで、皆さんはなぜ、ここに?」
 穏やかな物腰でセフェランが尋ねる。
 その言葉を聞いて、ミカヤが切り出す。
「実は――――――」


 話はこうである。
 死んだはずの漆黒の騎士。それが異世界で生きている。では、これまで導きの塔で倒した相手たちはどうなのだろうか。
 彼が生きている以上、他の人間たちも生きている可能性がある。
 ならば、今生きている人間は誰なのか、そして、死んだはずの人間を「生き返らせた」のはだれか、を突き止めるためだった。

「なるほど…」
 口元に手を当てて、セフェランは考える。
「確かに、ゼルギウスが生きている以上、他の人たちが生きている可能性も否めない…」
「それに、異世界には団長たちが行ってしまった。これは、何かあると勘ぐるべきじゃないか。」
 サザがそう言って死体の調査を依頼する。
「………いいじゃろう。」
 皇帝が直々に、許可を下した。
「じゃあ、導きの塔の最下層へ行きましょう。」
 そう言って、一行は導きの塔へと歩き出す。





5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 20:03:35.23 ID:F3a9LaTK
 女神の事件で死んだ兵士たちは、導きの塔の最下層に安置されていた。
 女神のために戦い、殉職した者たちへのせめてもの配慮なのだろう。
 その死体を一つ一つミカヤとセフェランが調べていく。
 死んだ兵士を見るたびに、ミカヤは思った。
(あまり、気持ちのいいものではないわね…)
 聖職者だろうと、なんだろうと、人の死体を見て気分がいいという人はいないだろう。
 しかも、自分たちが殺した人間ならば、なおさらだ。
「ミカヤ、恐れてはいけません。」
 ふと、セフェランから声がかかる。
「罪と向き合うのです。つらいことでも、受け入れることが大切なのですから。」
 そう言って、セフェランは作業に戻って行った。
(そう、目を逸らしちゃいけない。)
 それこそが、償い。少なくとも、ミカヤはそう思っている。
 どんな殺人も正当化はされない。なら、私は全てを受け入れる。
 受け入れること。それが、ミカヤの示した償いだった。
 それはさておき、奇妙なことにミカヤは気付き始める。
(………?)
 小さな違和感。
 それがまだ確信に変わることはなかったが、その違和感の正体は理解できた。
(この死体、外傷が無い…?)
 傷の無い死体。では、なぜこの兵士は死んだのだろうか?
 他にも外傷はあるが、どれも致命傷にはなりえない傷を負って死んでいる者もいた。
 これは、どういうことなのだろうか。



 そのことをセフェランと皆に説明した。そうしたら、セフェランから意外な言葉が返ってきた。
「光魔法か、闇魔法の影響ですね。」
「え?」
「外傷がないから、物理的攻撃ではない。と言っても、理系の魔法でもない。恐らく、光か闇の力で生命力に直接ダメージを与えられたのでしょう。」
「そんなことが…」
「あり得るのですよ。その証拠に、「リザイア」という魔道書があります。これは相手の体力を奪って自分を回復させる魔法ですから。」
 筋は通っている。すると、彼らは光か闇魔法で殺されたのだ。
 そして、次の問題。
「じゃあ、彼らは何のために殺されたんだ?」
 ペレアスが尋ねる。さらに、サナキも続けた。
「そもそも、こ奴らを殺したのは誰なのじゃ?」
 そう、この二つが問題だった。
「そう、それが問題です。誰が何のために彼らを殺したのか。それがわかれば…」
 その時だった。



6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 20:05:16.78 ID:F3a9LaTK
バン!!と大きな音が鳴り響く。その場にいた人々は、その音がドアを開けたものだと即座に気付いた。
 ただの開け方ではない。そう、乱暴に開けたような。
 基本、この塔は立ち入り禁止である。それは女神がここで眠っているからだ。
 それを承知で来るには、皇帝直々の許可がいる。今はミカヤ達意外に許可を出していない。
 とすれば――――――――――――――――――――
「奇襲!?」
 そうミカヤがつぶやいた時、「それ」が降りてきた。
 丸型のロボット―――向こうの世界では、ガジェットドローンと呼ばれるものだが、今のミカヤ達がそれを知っているはずはない―――が、約6体。
 先行する1体をサザが相手する。
 サザは、腰から短剣「ペシュカド」を抜き、ガジェットめがけて投げる。
 それを難なくかわし、ガジェットは光線をサザに向かって放つ。
「っ!!」
 それをサザは、ガジェットめがけて飛ぶことでかわす。
 刹那―――1人と1つがすれ違う。サザはすれ違いざまに叩き込まれた触手を、もう一つの短剣「スティレット」で切り落とす。
 ガジェットが着地し、ミカヤににじり寄る。
 ミカヤが光魔法「セイニー」を唱えようとした時だった。
 サザがガジェットの頭上からペシュカドを突き立てる。動力炉をやられたらしく、そのガジェットはその場で機能を失い、停止する。サザはミカヤに寄り添い、ペシュカドを構えなおす。
「ミカヤ、安心しろ。俺がいる。」
 その言葉だけで、ミカヤはどこか安らぐ気持ちになれたのだった。
 だが、戦いはまだ終わっていない。

「機械であろうと、女神の祝福があらんことを…」
 セフェランが光魔法「クライディレド」を唱えた。
 無数の光がガジェットを包み込み、幻想的な風景を作り出した。
その光がひときわ大きな輝きを放ち、辺り一帯が光で明るく照らし出される。
無数の光からの攻撃を浴びたガジェットは、もはや原形をとどめぬほど粉々にされていた。
その隣では、ペレアスが善戦している。
「くっ!」
 ガジェットの放つ光線に苦戦しながらも、闇魔法を唱える。
「ウェリネ!」
 闇魔法「ウェリネ」を解き放ち、周囲の物体ごと闇に引きずり込む。
 闇にのまれまいと必死に抵抗するガジェットだったが、機械ごときが抵抗してどうにかなるものではない。
 「ウェリネ」はそのガジェットを飲み込み、何事も無かったかのように消え去った。

「ぐぅっ!」
 その声を聞き、全員は振り返る。そこには、人質にされたサナキがいた。
「このッ、放せ!放すのじゃ!!」
 じたばたするが、あまり効果が無い。すると、残り2体のガジェットがサナキの方を向く。
「サナキ様!!!」
 セフェランが今まで出したことの無いような大声を出すが、それらは止まらない。
 もう駄目だ、そう覚悟してサナキは固く目を閉じた。


だが、その瞬間はやってこなかった。
 サナキを捕まえていたがジェットは、横一文字に綺麗に『切られていた』。
 1体は白いブレスに貫かれ、もう1体は何かにより壁まで吹っ飛び、動かなくなった。
「誰だ!!」
 サザがペシュカドを構え、爆発したガジェットの後ろにいる者を凝視する。
 その様子を察したのか、
「安心しろ、私たちは皇帝に用があるだけだ。」
と発する。
 次第に煙が晴れ、その姿があらわになる。
「ソーンバルケさん!?それにニケさんにナ―シルさんも!!」
 そこにいたのは、先の戦いで戦力として大いに役立ってくれた猛者ばかりだった。
「先ほど彼が言ったように、私たちは皇帝に用がある。」
 ニケが化身を解きながらサナキに向き直る。そして、ナーシルが続けた。
「私の方は主に、王子の代理です。正式にクルトナーガ様が王位を継承されたので。そちらの二人は、新たな国の建設に当たっての承認を得に来た、と言ったところでしょう。」
「その通りだ。私は「印付き」の国を、彼女は「ハタリ王国」を立ち上げようと思っている。どうか、承認を頂けないだろうか。」
 ソーンバルケがそう言うと同時に3人は片膝をつき、頭を下げる。幸いなことに、彼女は命を助けられてその願いを無下にするような冷たい皇帝では無かった。

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 20:08:03.32 ID:F3a9LaTK
「よかろう。3人の言い分を受け入れようぞ。ところで…」
 サナキが先ほどのガジェットに視線を移す。
「これは一体なんじゃ?なぜ我らを狙った?」
 その場にいる全員が一番聞きたいことを言う。

「それは異世界の文化。容易に触れてはいけないものよ。」

 その声の主は――ミカヤだった。だが、様子がおかしい。
「ミ、ミカヤ?」
「これはアイク達のいる世界にある兵器。あなたたちはまだ、この兵器の構造を知ってはならない。」
「ま、まさか…女神?」
 セフェランが恐る恐る尋ねる。
「そうよ。久しぶりね、エルラン。」
「ああ…女神よ…」
 感慨深そうにセフェランがつぶやく。しかし、彼らには干渉にふけるよりほかにやることがあった。
「女神。アンタに聞きたい。コイツを「異世界の文化」と呼んだか?」
 女神に対してもいつもの口調を崩さない。サザは、女神がミカヤの体を使うことをあまり快く思っていないからだ。
 先の戦いでも、恐らく、これからも。
「ええ。これらは異世界から来たもの。アイク達がいる世界から。」
「だとするとおかしくないか?」
 ソーンバルケが疑問をぶつけた。
「私は、彼らが異世界に行ったなどとは一言も聞いていない。恐らく、彼女と彼も同じだろう。」
 そう言ってニケとナーシルに目を合わせる。
 無言でうなずき、それが真実であると肯定した。
「なのに私たちはこれらに襲われている。こいつらとは何の接点も無いというのに。」
 よくよく考えてみればおかしい話だった。
 自分たちの利害に関係の無いを人物を襲うなど、ましてや、何の関わりも持たない人物を襲うなど、狂っているとしか言いようがない。
「次に。こいつらはこの世界とは全くと言っていいほど無関係だ。私たちも道中ではこんなものを見たこともない。…なのに。なぜ、ここにいる?」
 ソーンバルケは、先ほど壊したガジェットたちに目を向けた。
「魔道の理など私にはわからんが、少なくとも時空をゆがめるような魔法はリワープだけではないのか?」

 それらの二つの問いに、ミカヤ(の姿をした女神)は答えた。
「私にも、まだわからない。でも、あなたたちを襲った理由は見当がつく。」
 女神はサザを見つめる。
「この子は「ある予想」をしていた。恐らく、これらを送り込んだ人たちは彼女を消したかったのよ。その予想を、誰かに話してしまう前にね。」

8 :代理投下:2011/06/10(金) 20:08:51.92 ID:F3a9LaTK
 
 ちょっと、待て。それじゃあ――――――――
「その「誰か」は、もしかしたら、異世界からミカヤを暗殺しようとしたのか!?」
 その言葉で一同に動揺が走った。女神はそれを肯定するかのように、硬い表情のままだった。
「だからこそ、私がここに来たの。この塔の中なら私も力を発揮できるから。今から、ここに「扉」を作るわ。アイク達の世界につながっている、ね。そこへ数人を送り込んで、アイク達の手助けをしてもらうつもりよ。…さあ、誰が言ってくれる?」
 サザが真っ先に名乗り出た。
「俺が行く。俺は密偵だし、それなりに―――――――」
「いや、今のお前は国王の夫だ。いざという時にいなければ困るだろう。」
 ニケが釘を刺す。と、なれば行けるのは。

「私が行きましょう。」
「僕も、行きます。」
 ペレアスとセフェランが手を挙げた。
「なら、私も付いていくことにしよう。どうせ、私たちの国はオルグとラフィエルしかいないのだからな。」
 ニケも賛同した。
「私は遠慮します。王子…王にお教えすることが、嫌というほどありますので。」
「じゃあ、この3人ね。」
 そう軽く言葉を告げると、大きな光の扉が現れた。
「健闘を祈るわ。」
 女神のその一言を背に、3人は光の扉をくぐった。
 後々、彼らは、いや、2つの世界にいる人物たちは思い知ることになる。

生きるということの「罰」を、死ぬということの「罪」を。
そして何より、「人」はどれほど愚かで、脆いかということを――――――――――――。




To be continued……….


9 :代理投下終了:2011/06/10(金) 20:09:29.69 ID:F3a9LaTK
992 :FE ◆lJ8RAcRNfA:2011/06/08(水) 22:34:32 ID:5KXKWOXk
以上です。
今回はちょっとした伏線をはったりいろいろと考慮した結果、完全にFE回となってしまいました。
次回からは、なのはの世界へ戻ります。
それでは、申し訳ありませんが投下をお願いいたします。


10 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/10(金) 20:56:42.85 ID:Xj3c/7Cx
スレ立て乙!
そしてFE氏も乙です!
アイクがいなくなってからの世界……なるほど、こうなっているのですかw
次回からのなのは世界も、楽しみにしています

11 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 11:55:54.99 ID:eEyWjTjG
スレ立て+投下乙です。

自分も12:45分頃に、リリカルTRIGUNの最新話を投下したいと思います。では

12 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:45:44.81 ID:eEyWjTjG
では、投下を始めます。


13 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:46:27.45 ID:eEyWjTjG
「にゃはは……、心配かけちゃったかな」
「なのは……」

管理局本部にある病室の一つに、フェイト・テスタロッサはいた。
ベッド際の丸椅子に座り、ベッド上で上体を上げる少女を見つめていた。
少女の身体の至る所には包帯が巻かれており、布団の端から覗く四肢にはギブスが装着されている。
普段の活発な彼女からはかけ離れた姿に、フェイトは感情が込み上げてくるのを感じていた。
フェイトの瞳が、揺れる。
痛々しい親友の姿に、自己への不甲斐なさが溜まる。

「そんな顔しないで、フェイトちゃん。私は全然平気だから」

包帯が曲かれた頭部を揺らして、少女・高町なのははフェイトへと笑顔を向けた。
優しい、気遣うような笑顔であった。
でも違う、とフェイトはその笑顔を見て感じた。
何処となく漂うぎこちなさが、心中のやせ我慢をフェイトへと伝えていた。

「ごめんね。フェイトちゃんがあんなに頑張ってくれたのに……私が台無しにしちゃった」
「そんな事どうでも良いよ。なのはが無事で良かった」

フェイトが撃墜した二人の守護騎士は、謎の発光現象の隙に逃亡していた。
恐らくはあのアンノウンが手引きしたのだろう。
なのはを易々と撃墜したアンノウン。
アンノウンとヴァッシュとの邂逅。
そして、あの謎の発光現象に―――月へと穿たれた穴。
管理局の映像記録も白色の極光に阻まれ、途中から役目を果たしていない。
あの時、あの場で何が起きたのか、その全貌を知っているのは高町なのはだけだった。

「傷の具合はどう?」
「当分は安静だって。でも、手足の傷以外はそんなに酷くないって言ってたよ」

なのはの負傷は、受傷の経緯からは考えられない程に軽度なものであった。
程度としては全身に軽度の打撲。
四肢の貫通傷は相応の重傷ではあるが、管理局本部の医療魔法技術があれば、そう時間は掛からずに完治できる。
管理局は、アンノウンの攻撃がおそらく元から殺害を主としない攻撃だったのではと予測していた。
後の観測で判明した事だが、なのはを撃墜した高エネルギー攻撃は、まるで計ったのかのように直撃の寸前で急速な威力の低下を見せている。
あれだけのエネルギーだったのだ。本来ならば吹き飛ばされる余地すらなく、エネルギーに全身を焼かれていた筈だ。
おそらくは、殺害でなく撃墜を目的とした攻撃。
撃墜を優先させた意図についても、管理局は予測を立てていた。
なのはは、『あの時』、あの場にいた。
いや、正確に言うのならば、あの場に連れられたと言った方が良いか。
謎の発光現象を起こした一因とされるアンノウンの手によって、わざわざ連れられたのだ。
恐らく高町なのはに見せたかったのだろう。
ヴァッシュが月をも穿つ脅威の存在だという事を、その身体に宿る脅威を、高町なのはに見せ付けたかった。
まるで、なのはとヴァッシュの関係を知っていたかのような行動である。

「レイジングハートのお蔭だよ。墜落の瞬間に防御魔法を発動させてくれたみたいで」
「そう、良かった……」

なのははフェイトの心配を払拭させるかのように、笑顔を見せている。
傷だらけの身体で、満面の笑顔を浮かべるなのは。
笑顔の裏に隠した、本心。
フェイトは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。

「……なのは、大丈夫?」

その感覚に押されるように、フェイトは言葉を吐き出していた。

14 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:48:08.68 ID:eEyWjTjG
卑怯な質問だと、フェイトは口にして直ぐに思う。
こんな質問をして、なのはが本心を語る訳がない。
心配を掛けないようにと、より強固な仮面を張り付けるだけだ。
フェイトの言葉に、なのはが表情を変える。
だが、それも一瞬だけ。
直ぐさまそれまで以上の笑顔を浮かべて、フェイトを見詰める。
満面の、それでいて儚さの宿る笑みであった。
少なくともフェイトには、そう見えた。

「大丈夫だよ、フェイトちゃん」

名前を呼んで、なのはが答える。
なのはは、あの時から後、とある名前をめっきり口にしなくなった。
前までは毎日のように口にしていた名前。
その名前を、なのはは口にしない。
話題に出す事すら避けているように見える。
やはりあの時、なのはは見たのだ。
月をも撃ち抜く彼の姿を、なのはは白色の世界の中で見た。
その結果が今の状態である。

「私は、大丈夫だから」

儚げな笑顔で、言葉を紡ぐ。
あの時、あの場所で何があったのか、なのはが何を見たのか、なのは以外の誰も知らない。
ヴァッシュが根源となったエネルギーが地上から月を穿った……そんな客観的な視点しか、フェイトは知らない。
だから、歯痒さを感じる。
友達の力になれない自分達が、歯痒い。

「なのは……」

満面の笑顔を見せるなのはへ、フェイトは思わず詰め寄っていた。
言葉を投げ、詰め寄り、そして強く強く抱き締める。
傷だらけの身体を包み込むように、フェイトはなのはを両腕で抱く。
少しでも力になりたい。
でも、言葉では足りない。
だから、身体が動いていた。

「……フェイトちゃん」

肌を通して伝わる温もりに、なのはもフェイトの想いを感じ取る。
フェイトは何も語らない。
なのはも何も語らない。
無言が二人を包み込み、だがそれでも想いは伝達される。
温もりが、言葉よりも深いことろで二人を繋げていた。
静寂が、続く。
緩やかに流れる時が、感じ合う温もりが、頑なに閉ざされた心を溶かしていく。

「……何で、だろう……」

静寂の病室にて最初に口を開いたのは、高町なのはであった。
顔を俯かせ、喉を震わせ、声を紡ぐ。

「……何でだろう、怖くてたまらないんだ……思い出すと、震えが、止まらない……」

言葉の通りに、なのはが震え出す。
小さな身体を小刻みに震わせて、フェイトにしがみつく。
恐怖に負けないように、恐怖に折れないように、なのはは親友の温もりを求めていた。


15 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:50:02.26 ID:eEyWjTjG
「あの人が変わってないのは分かってる……でも、駄目なんだ……『あの光景』を思い出すと…………怖くて、たまらない………」

フェイトも、より一層の力強さをもってなのはを抱く。
親友を救いたくて、少しでも力になるのならと、フェイトは細い両腕に力を込める。

「……嫌だよ…………何も変わってないのに……あの人はあの人なのに………駄目なの………怖くて……怖くて…………押し潰されそう…………」

声には、嗚咽が混じっていた。
今まで通りに一緒に居たいという想いと、理性を越えて想起される恐怖とが、せめぎ合う。
葛藤が、なのはを苦悩へと誘っていた。
そのジレンマは、たかが九歳の女の子には余りに大きな重圧であった。

「もう笑い合えないのかな………もう喋り合えないのかな………もう…………一緒に過ごせないのかな………」

嗚咽で途切れ途切れとなる声に、フェイトはより一層の力でなのはを抱き締める。
その肩に顔を沈め、なのはは感情を吐き出した。

「う、わああああああああああああああああああああ………」

遂には、大声を上げて、涙を流す。
溜め込んでいた感情を、声で、涙で、吐き出す。
一人で抱えようと思っていた痛み。
一人で抱えようと思っていた恐怖。
なのはは打ち明ける。
親友であり、戦友であるフェイトへと全てを打ち明ける。

「……なのは……」

フェイトは、ただひたすらに親友を抱き締めた。
一人分だった泣き声が、いつの間にか二人分へとなり、狭い病室に響き合う。
肩を寄せ合い、抱き合いながら涙を流す、二人の少女。
涙で濡れた部屋にて、二人は縋るように抱き合っていた。








「……フェイトか」

そして、十数分後程の時間が経過した後に、フェイトは扉の前へと立っていた。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードが幽閉されている部屋の、その扉。
顔をつき合わせど、実際に言葉を交わす事はできない。
モニターを通しての面会に、ヴァッシュはそれでも笑顔を見せていた。
弱々しく、儚げな笑顔。
まるで少し前に見た、高町なのはの笑顔のようであった。
心を押し殺して無理矢理に笑顔を造っている、そんな印象の微笑みだ。

「僕に何か用かい?」

見てる方が辛くなる笑みに、フェイトは意を決して言葉を紡ぐ。
なのはを見て、ヴァッシュを見て、決断した想い。
それは、二人の親友としての決断であった。

「ヴァッシュ、なのはを信じてあげて」

真っ直ぐと向けられた瞳が、ヴァッシュを見据える。
フェイトの瞳に、フェイトの言葉に、モニター越しのヴァッシュが表情を変えた。

16 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:51:28.64 ID:eEyWjTjG
「今はまだ難しいかもしれない。でも、なのはは絶対にアナタを受け入れてくれる」

流れ出る声は澱みなく広がっていく。
ヴァッシュは目を見開き、フェイトの声を聞いていた。

「今まで通りに笑いかけて、今まで通りに喋り合って、今まで通りに一緒にいてくれるよ。なのはなら、絶対に」

声に暗い影は欠片もなく、フェイトはヴァッシュを見据える。
ごまかしのない言葉で、ただ自身の内の信頼に任せてヴァッシュへと伝えていく。

「だって、なのはは、私の世界を変えてくれた人だから」

フェイトの言葉は、親友に対する絶大な信頼から紡がれたものであった。
あの時なのはが見た光景は如何なるものだったのか、やっぱりフェイトには分からない。
でも、その苦悩を知った。
その苦悩の大きさも知った。
フェイトは高町なのはによって救われた。
全てを否定された自分を、ただひたすらに想い続けてくれた人。
なのはが居たから、フェイトは道を踏み出す事ができた。
アリシアの代りとしてではなく、フェイト・テスタロッサ自身として、人生を踏み出せた。
絶望しか残っていなかった自分に、光り輝く希望を与えてくれた人。
フェイトにとっての高町なのはは、そんな存在であった。
だから、思う。
なのはなら立ち直れると、フェイトは思う。
そして、もう一つ。
なのはが立ち直れるまで、ヴァッシュが立ち直れるまで、今度は自分が支える番だと。
今まで支えられた分まで、自分が二人を支えようと、フェイトは決意する。

「フェイト……」
「あの時、何があったか私は知らないよ。でも、なのはの強さは知ってる。だから、信じて。なのはを、信じてあげて」

そう言うフェイトは、とても優しげな微笑みを浮かべていた。
それは、高町なのはのお蔭で手に入れる事ができた微笑み。
空っぽなものではない、心の詰まった微笑みであった。

「……ありがとな、フェイト。力になった」

フェイトの微笑みに対する返答は、同様に微笑みであった。
同様の微笑み。だが、力の無い空っぽな微笑み。
ああ、と実際に目の当たりにする事でフェイトは感じた。
何て寂しげな微笑みをするんだろう、と。

17 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:53:27.85 ID:eEyWjTjG
「信じてみるよ、なのはを、フェイトもね。だから、大丈夫。俺はもう大丈夫だから」

自分の言葉は、結局何かの役に立ったのだろうか。
ヴァッシュは変わらぬ微笑みで、全てを自身の内へと仕舞い込む。
なのはのように感情を表に出す事すら、してくれない。

「なのはに伝えといてくれ。怖い目に合わせて、すまなかったって」

それきりヴァッシュは通信を途絶させる。
モニターが黒色に染まり、何も映さなくなる。

「ヴァッシュ……!」

扉に向けて声を飛ばす。
当然ながら返答はない。
無機質な扉がただ無言でそびえるだけである。
フェイトは改めて思い知った。
ある一定の所から内側へと踏み込ませない、ヴァッシュの心。
堅牢な殻に防備された心は、おそらく何者をも拒絶する。
何時ぞやの自分をも上回るだろう心の殻を取り除き、真の安寧を与えられる者は訪れるのか。
ただ辛い。
あの微笑みを、誰をも受け入れない心を、見ていられない。
彼の心の内に眠る、黒色の虚(ウロ)。
それを埋めてあげて欲しい。
力なく頭を垂れたフェイトに、答えを返す者はいなかった。







「ここのデータの数値が出てないぞ、エイミィ」
「え、ごめんごめん。……あー、確かにちょっと抜けてるね」
「しっかりしてくれ。今は余裕がないんだ」

海鳴市の一角に聳えるとあるマンションの、その一室。
闇の書事件・臨時本部として管理局に借用されている部屋は、僅かに殺気立った様相を見せていた。
その雰囲気の大元は、最年少執務官として場を仕切るクロノ・ハラオウンにあった。
どうにもクロノの機嫌が悪い。
無表情を装ってはいるものの、その言葉の端々には棘があった。

「……それにしても厄介な事態になったねえ」

現在、臨時本部に身を置く人物は六人。
指揮官たるリンディ・ハラオウンにその副官たるクロノ・ハラオウン。
オペレーター、事務、情報の総括を一手に引き受けるエイミィに、無限書庫にて『闇の書』についての調査を依頼されていたユーノ。
そして、ユーノのサポート役として動いていたリーゼ姉妹とアルフである。
何時もの明るい口調から数段トーンを落として呟いたのは、リーゼアリアであった。
ソファーに腰掛けながら、頭の所で手を組んで天井を見上げる。
その表情からは僅かばかりの疲労が見て取れた。

「地上から月をも撃ち抜くガンマンとはね……作り話にしてもやりすぎだって」

アリアの隣に座るロッテが言葉を返しながら、何もない空間に指を走らせた。
すると、指の動きに反応するかのようにディスプレイが出現し、お求めの映像が再生される。


18 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:55:24.03 ID:eEyWjTjG
「こうして見ると桁違いって感じだね。単純なエネルギー量だけでも、異常の一言。洒落にもなんないわね」
「月にクレーター作るくらいだからね……エネルギー量だけ見てもSSSランク以上は確実ね」

その映像に、何時しか臨時本部に身を置く誰もが視線を送っていた。
謎の発光現象に、天を昇る光線。
そして、月を震撼させる暗き穴。
現実のものとは到底思えない光景が、画面の中で流れていく。

「ヴァッシュか……そりゃ普通の人間とは何か違うとは思ってたけどさあ」

床に寝転んで映像を見詰めながら、アルフが言葉を零した。
やるせなさと幾分かの恐怖感とが混合された表情である。

「精密検査の結果も数値が異常なんだよね……。普通の人じゃまず有り得ない数値だって」

続くエイミィの顔にも恐怖感があった。
いや、程度の差や表出しているかの差はあるが、誰もが恐怖感は抱いている。
隣で和気藹々と会話をしていた相手が、実は月をも撃ち抜く脅威の存在だったのだ。
恐れるな、という方が無理のある話だ。
予感はあった。
最初の守護騎士との交戦後に、負傷したヴァッシュが管理局へと担ぎ込まれてきたその時。
治療の為に服を脱がし、そして場にいた誰もが息を呑んだというヴァッシュの肉体。
身体中に刻まれた傷の数々。
まるで人間のものとは思えない程に傷付いた身体。
思えばあの時から示されていたのではないか、男の異常さは。
エイミィの言葉に、僅かな沈黙が場を覆う。

「……問題はそこじゃない。月を穿つ砲撃も脅威だが、単純な破壊力ならアルカンシェルの方が上だ。人間じゃないとはいっても、人外の種なんて次元世界には幾らでも存在する」

静寂を破ったのはクロノであった。
リーゼ姉妹の手元にある映像記録と同様のものを巨大スクリーンに映しながら、クロノは続ける。

「問題は、それだけの『力』が意志をもった個人が有しているという事だ」

言葉には、寸分の迷いもなかった。
映像を見詰める瞳にも迷いはない。
ヴァッシュが危険人物だと、クロノは迷いなく断定した。
五人の視線を集めながら手元のキーを叩いて、目的のデータを引き出す。
壁一面のモニターにもう一つ画面が浮かんだ。

「このデータを見てくれ。これは、ヴァッシュが光を放ち始めた直後に観測されたデータだ」

その画面を指差しながら、クロノが後方へと振り返る。
五人の視線が画面の方へと向き、データの内容を見定めていく。
見ると同時に五人それぞれがデータの意味を理解し、そして表情を驚愕に染めた。
「この反応って……まさか……」
「そう、そのまさかだ。これは―――次元断層の反応さ。規模は極小規模で、発生した時間もコンマ数秒にも満たないものだけどね」

その事実に、五人が愕然とする。
次元断層。
それは次元災害の中でも最上位に位置する危険災害。
下手すれば一つの次元世界そのものを消滅させかねない、超ド級の厄ネタである。
その厄ネタが極小規模なものとはいえあの瞬間に発生していた。
目に見えぬ所で発生していた大災害に五人は驚きを隠せ得ない。


19 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:57:07.24 ID:eEyWjTjG
「……ヴァッシュさんの砲撃が次元断層を発生させたって事?」
「そんな事、ありえないって! ロストロギア級の出力がなくちゃあそんなの無理無理」
「次元震ならまだしもね。次元断層ってのはそれこそ桁違いだよ。あのジュエルシードだって、複数集めたようやく引き起こした位だよ」

エイミィが、アリアが、ロッテが、それぞれに言葉を飛ばす。
誰もがその考えを否定する。
次元断層を発生させる砲撃など、その砲撃を独力で発生させるなど、それこそロストロギア級の力もって始めて行える所業だ。
かつて管理局を騒がせたロストロギア『ジュエルシード』ですら、単独の暴走では中規模の次元震を起こすので限界であった。
それでも、危険度としては相当なものだ。
次元断層をも引き起こす砲撃など、想像するだけで空恐ろしい。

「惜しいが、違う。半分正解で半分外れだ」

だが、クロノの推測はその更に上をいく。
クロノが再度指を動かし、画面を操作する。
次元断層の反応が感知されたグラフと、超高エネルギー量が発生したグラフとがピックアップされ、画面に映った。
クロノの操作により、半透明となったグラフ同士が重なり合う。
重なり合うグラフに、今度こそ五人の傾聴者が言葉を無くす。

「次元断層は攻撃によるものじゃない。謎の高エネルギーが発生する直前に、つまり砲撃が放たれる直前に、次元断層は発生してるんだ」

言葉のなくなった臨時本部にて、最年少執務官の言葉が訥々と連ねられる。
その表情に感情はなく、仮面の如く冷徹な色のみが映っていた。
もはや誰も言葉を挟もうとしない。
独壇場となった場をクロノが仕切る。

「アンノウンの攻撃についても調べてみた。こちらもヴァッシュの砲撃と同様だ。ほんの刹那の時間だが、攻撃の直前で次元断層が発生してる。念入りに調査しなければ判別できないレベルの次元断層だけどね」

淀みなく動く五指に従い、モニターの画像が切り替わり、必要な情報を並べていく。
複数の魔導師で形成された結界魔法を、アンノウンが切断する瞬間。
宙を舞うクロノへと、アンノウンが斬撃を飛ばす瞬間。
白刃に四肢を縫い付けられたなのはへと、アンノウンが高エネルギーを放つ瞬間。
それぞれの画像と並んで、その瞬間の数値データとが映し出される。
規模の違いはあれど、データが意味する事は同様であった。
斬撃やエネルギーが発生する直前で、次元断層が発生している。

「おそらくこの二人は次元断層を任意に発動できるんだろう。そして、次元断層で発生したエネルギーを攻撃に転化させて、解き放つ。それがこの異常な破壊力の正体だ」

言葉を失った五人を前に、クロノは締め括る。
任意で次元断層を発動させ、月すら穿つエネルギーを発生させたヴァッシュにアンノウン。
脅威という言葉すら生温く感じる事実に、臨時本部が沈黙に包まれた。
昨日まで普通に喋り合っていた人間の、想像を絶する正体。
あの笑顔の内に隠れていた脅威。
思わず戦慄を感じる。
背筋に冷たい汗が流れ落ちる。
人間の域を越えた、ともすればロストロギアにすら匹敵する圧倒的な存在であった。
彼等は何者なのかと、考えずにはいられない。
次元漂流者として世界に来訪した男は、世界を滅亡させうる『力』を秘めていた。
『闇の書』に加えて現れた、『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』と『アンノウン』という大きな問題。
一つのロストロギアを巡る事件は、更なる要因を含んで混沌の様相を見せ始めていた。

「これで話は終わりだが……言いたい事があるならハッキリと言ったらどうだ?」

沈黙の中、クロノはある人物へと語り掛けた。
この場に於いて沈黙を通す二人の人物の、片割れ。
終始一貫して、不満げな表情を浮かべていた少年がいた。
ユーノ・スクライア。
緑色の瞳でクロノを見詰めながら、彼は促しに従って口を開く。

20 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 12:58:36.38 ID:eEyWjTjG
「ヴァッシュが持つ『力』の危険性は分かったよ。でも、それでも彼の意向を無視して拘束するのはやり過ぎなんじゃないか」

ユーノの言いたい事も理解できる。
何時も明るく飄々と振る舞い、容易く周囲と溶け込んでしまう不思議な男。
高町なのはと愉しげに笑い合う姿は、誰もが心に温もりを感じていた。
ヴァッシュが優しい人物だという事は、彼と触れ合った誰もが知っている。
ヴァッシュは管理局に尽力してくれていた。
守護騎士との戦闘にも進んで参加し、驚異的な立ち回りで他を圧倒した。
アンノウンとの戦闘でも、彼が矢面に立つ事で被害を減らせたとも言える。
優しさと強さを兼ね備え、他人の為に命を賭けられる男であった。
その人柄は、誰もが認めていた。

「重要なのは彼が時空世界に於いて危険かどうかだ。危険と分かった以上、管理局が彼を放免しておくにはいかない」
「でも、ヴァッシュは決して悪い方向にこの力は振るわない。それはクロノだって分かっているだろ?」
「だが、実際に『力』は振るわれたぞ? あの砲撃が市街地に向けられていたらどうなっていたか、想像できない訳じゃないだろ」

ヴァッシュの人間性を問うユーノに、その危険性を問うクロノ。
どちらの言い分が正当かは誰もが、恐らくは反論を飛ばすユーノ自身も、理解していた。
しかし、反論を止めない、止められない理由がユーノにもある。

「でも……なら、なのはの気持ちはどうなるんだ? なのはがヴァッシュを守る為に何をしたか、クロノだって知ってるだろ」

なのはがヴァッシュを庇う為に取った行動。
次元漂流者たるヴァッシュの存在を管理局に知らせず、自宅にて匿った。
なのははヴァッシュに関する何かを知っていて、それで彼を庇おうと行動したのだろう。
なのはとの付き合いが最も長いユーノには分かる。
その想いの強さが、分かる。
だからこそ、クロノの言い分が正当だと理解して尚、反論する。

「分かっているさ。分かっていて、この判断をしたんだ。判断を覆すつもりはない」

食い下がるユーノへと、クロノは冷淡な視線を送るだけであった。
ユーノとクロノの視線がぶつかり合う。
間に座るエイミィがオロオロと顔を左右に振り、荒んでいく事態に不安げな表情を浮かべていた。

「落ち着いて、ユーノさん」

ヒートアップする場に、落ち着き払った声を落としたのはリンディ・ハラオウンであった。
これまで沈黙を続けてきた指揮官が、満を持して声を上げる。
その声は騒然となった場を通り抜け、全員の視線を集める。

「ヴァッシュさんの保護に関してはもう揺るがない事です。彼の人柄は誰だって知ってるわ。なのはさんとの関係もね。でも、やっぱりそれとこれとは話は別よ」

リンディの言葉には凛とした強さがあった。
決して揺るがぬ強さ。 指揮官としての決意が、言葉の端々にまで染み渡っている。

「……それとクロノの気持ちにも気付いて上げてちょうだい。クロノだって今回の処置に想う事がない訳ではないわ。それを押し殺して、決断したのよ。執務官としてね」

リンディの言葉に、冷淡を貫き通してきたクロノの表情が歪む。
痛みを堪えるかのような表情に、ユーノも感情の行き場をなくしてしまう。
ユーノだってクロノの気持ちに気付いていない訳がない。
ただクロノのように割り切れる程、ユーノは大人になりきれてはいない。
だから思わず、クロノへと感情をぶつけてしまったのだ。
クロノの表情を見て、その行動が卑怯なものだったと改めて認識する。
ユーノも身体から力を抜き、側にあったソファへお座り込む。

「……ごめん、八つ当たりだった」
「……気にするな。普通はそうなるさ」

俯き謝罪するユーノに、クロノも僅かに口元から力を抜き答えた。

21 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 13:00:37.78 ID:eEyWjTjG
「……ん?」

その空気を払拭する一報が飛び込んできたのは、直後の事だった。
点滅するモニターが、情報の報告をエイミィへと知らせる。
偵察と警戒に向かわせている魔導師部隊からの報告だろうかと、エイミィは手元を操作し、情報の内容を画面へと映す。
映し出された情報は、誰もが予想し得ぬ驚愕の情報であった。


『―――闇の書の主たる八神はやてについて』


謎の情報は、その一文から始まっていた。
闇の書の主についての全てが記された、謎の一報。
送り主も、どこから送信されたものなのかも、分からない。
ただ、全てが淡々と綴られていた。
闇の書の主たる八神はやてに関する全てが―――その所在地すらも。
それはフィナーレの序章たる最後の一手。
全てが、踊らされる。
男の手中にて、全てが踊らされる。
最後の一手が、時空を統べる者達へと打ち込まれた。



情報の到来に、『仮面の男達』は思う。
始まってしまった、と。
結局、抗う事のできなかった恐怖。
おそらくこの一手で、終焉が始まる。
本来の目的も果たせず、主たるお父様の願いも叶えられず、全てが終わる。
あの男に掌握されたまま、終わりへと突き進む。
情けない。
罪悪感が沸き立つ。
もはや本当にただの裏切り者となってしまった自分達。
管理局も主をも裏切って、恐怖心に動かされるだけの操り人形。
まるで道化であった。
でも、それでも尚、恐怖心は絶大なものであった。
『仮面の男達』は周囲を見渡す。
管理局の人員であっても、あの男は止められない。
せめて少しでも犠牲者が少なくなるように望むばかりであった。
『仮面の男達』は絶望の淵で孤独に包まれながら、恐怖心に震えていた。







これにて投下終了です。
タイトルは『それぞれの孤独・前編』です。
またこの話を投下するにあたり、第六話を少し修正させていただきました。
おそらく次々回くらいで最終決戦に突入できると思います。
夏が終わるまでに禁書クロス共々、リリカルTRIGUNA`sも完結できれば良いなあと思う所であります。

それにしてもアーカイブスが神すぎて、テンションがヤバい。


22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/11(土) 16:29:21.60 ID:lCGlwXb7
GJ!
なのははやっぱりトラウマになってしまいましたか、これはキツいなぁ。
ヴァッシュも管理局から完全にマークされてしまったようだし、この感じだと下手したらロストロギアに認定されるんじゃないか?
本当に展開がどう転ぶのか分からないなあ。続き楽しみにしています!


23 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/11(土) 23:09:27.17 ID:eEyWjTjG
感想ありがとうございます。
GJや投下乙の一言が励みになりますね。

では連投になりますが、0時から禁書クロスを投下させて頂きたいと思います。

24 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:01:57.41 ID:SiG7Dt6B
では、投下を始めます。

25 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:03:43.26 ID:eEyWjTjG
上条当麻がその鬱展開(げんそう)をぶち殺しにいくようです。
第二話『ここまでテンプレ』


気味の悪い浮遊感を感じながら、上条当麻は『ベツヘレムの星』と名付けられた建造物を駆け抜けていた。
その目的はただ一つ、大天使『ミーシャ=クロイツェフ』の阻止。
世界をも滅ぼす程の圧倒的な、それこそ別次元の力を有する大天使。
上条当麻は駆け抜ける。
最大の敵たる大天使の元へと、微塵の恐怖を感じる事もなく、駆け抜ける。
上条当麻は知っていた。
自分の行動が、決して少なくない人達を助けてこれたのだという事を。
何度も何度も他人を傷付け他人に傷付けられてきた数カ月の人生が、決して無駄ではなかったという事を。
知っていた。
知っていたからこそ、走る事ができる。
こんな悲劇的な結末で、この世界は終わらせない。
そいつを食い止めるために、戦ったって良い筈だ。
その一心で、上条当麻は走る事ができる。
着水の轟音と共に世界が揺れ、唯一の足場たる『ベツヘレムの星』が崩壊した。
極寒の海水が流れ込んでくるが、上条は気にも留めなかった。
下へ、下へ、ただひたすらに下へ。
大天使が光る、その最中へと駆け抜ける。
周囲は既に漆黒に染まっていた。
光すらも拒絶される世界の中、大天使と上条は睨み合う。
大天使の放つ圧倒的な殺意が上条を貫き、だが怯ませるにも至らない。
完全なる上位存在であるモノが噴出させた、極上の殺意をもってすら、もはや男を止めるには届かなかった。
そして、二人は激突した。
大天使の光に視覚を失いながらも、上条当麻は最後に見た。

「とうまはどこ?」

自分を探す少女の姿を、上条当麻は確かに見た。
幻想かもしれないその光景に、けれども上条の右腕が伸びる。
少女の絹のような銀髪に触れる寸前で、しかしその右腕は何も掴み取れずに―――全てが漆黒に染まった。
上条当麻は、二度目の『死』を迎える。
そして、世界が変わった。
科学と魔術の交差する世界から、魔法が次元を統べる世界へと。
上条当麻の預かり知らぬ所で、世界は変わっていた。




26 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:05:47.94 ID:ms1Dzpif




ボンヤリとした暗闇が徐々に色を取り戻していた。
血管に凍の針を通されているような寒さが、身体を支配している。
異様なまでの脱力感に包まれた身体は動かす事すらも難しい。
それでも、磨り硝子を通して見ていたかのような世界は段々と明快なものになっていく。
まず最初に視界へと映ったのは、見覚えのない天井だった。
事件を終えた後いつも寝かされていた、あの古ぼけた病室。
内装よりも如何に人間を詰め込むかを主体に置いていた学生寮とも違う。
全くの見覚えのない天井が、意識を回復した上条を待ち構えていた。

(ここは……?)

上条は瞳だけを動かして、周囲の確認に努めた。
直前までの記憶はハッキリとしている。
改めてみると無謀としか思えない方法で、大天使へと特攻を果たした自分。
漆黒の中で灯る大天使の光点へとがむしゃらに駆け、手を伸ばした。
そして、あらゆる異能を打ち消す右手で、大天使に触れた。
そこから先の、記憶はない。
あの時一身に受けた殺意を思い出し、今更ながらに肌が粟立つ。
良くもまああんな事ができたものだと、自分の事ながらに感心してしまう。

「起きたみたいだね」

横の方から声が飛んできた。
声のした方へと上条は視線を動かす。
そこにいたのは一人の少女であった。
漆黒のレオタードと白色のマントに身を包んだ少女。
少女は手に黒色の長斧を握っていて、その矛先を上条へと向けていた。
腰部まで伸びた金色の髪が、少女の動きと合わせて揺れる。
その瞳には警戒の色がありありと浮かんでいた。

「あんたは……?」

鈍った思考は上条から危機感を奪い取っていた。
明確な警戒心を見せて武器を構える相手へと、上条はボンヤリとした口調で、バカ正直に問い掛ける。
上条の問い掛けに、少女の眉根が僅かにつり上がり、武器を握る手に力が籠もった。

『Scythe form Setup.』

手持ちの斧から無機質な声が響くと同時に、その穂先から金色の光が飛び出した。
空気を灼く金色の光に、上条は視線を奪われる。
その光は具体的な形状をもって宙に留まっていた。
黒斧から伸びた金色の光は、まるで死神の持つ大鎌を連想させる。
光が、上条の鼻先へと向けられた。


27 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:06:48.56 ID:ms1Dzpif
「うお!?」
「質問をするのはコッチだ。どうやってここに辿り着いた?」

間近に迫る脅威を見て、上条の思考も流石に覚醒を果たした。
驚愕を顔に宿して、光の刃から逃げるように上体を起こす上条。
刃から少しでも遠ざかろうと身体を動かし、だが直ぐにベッドの縁に背中がぶつかった。
ズイ、と更に一歩少女が前に進み、上条を追い詰める。
空間を挟んで尚、焼けるような熱を感じさせる光は、上条に焦燥感を覚えさせた。

「ちょ、ちょっと待て! 上条さんには何がどうなっているのか、さっぱり分からないんでございますが!」

身体を包んでいた倦怠感など、もはや忘却の彼方である。
目を覚ませば訪れていた窮地に、上条は完全に混乱していた。

「静かに、質問にだけ答えて」

と、少女が冷淡の言葉を浴びせたその時であった。
唐突に、上条の身体が横へ傾げた。
思考の内から消えども、身体に刻まれた疲労感は甚大なものだったのだ。
上条の意志に反して身体が横へ倒れていき、ベッドから転がり落ちる。

「あ、」

少女が上条へと手を伸ばしたのは、殆ど反射的なものであった。
倒れ込む上条へと、無意識の内に武器から片手を離して手を伸ばす。
その行動の起因はやはり、少女が元来持つ優しさなのだろう。
上条の手を掴み、だがその身体を支えきれずに少女も転倒してしまう。
パキン、という音が室内に響いた。

「いてて……わ、悪い、ちょっとバランスを崩しちまって」
「うう……」

上条当麻は馬乗りになる形で少女に覆い被さっていた。
目と鼻の先に迫った少女の顔に、上条当麻は慌てて立ち上がろうとする。
そして、気付く。
自分の身体から服が脱がされているという事実に。
自分の右手が何か暖かなものに触れているという事実に。
少女が身に纏っていたコスプレのような服が、何時の間にか消失しているという事実に。
つまり、今の上条の状態を一言で表すなら、こうだ。
全裸で、全裸の幼女に覆いかぶさって、その平坦な胸を触っている。
文章化するだけで犯罪臭がプンプンの状況に、上条当麻はあった。


28 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:08:51.02 ID:ms1Dzpif
「は……はは……」

顔を引きつらせ、上条は声を漏らした。
この状況なら、久し振りにあの言葉を叫んでも良いだろうと思う。
少女が、痛みに閉じていた目を、ゆっくりと開く。
覆い被さる上条を、キョトンと純粋な瞳で見詰める少女。
目と目が合い、時間が止まる。
上条の顔が引きつりの笑みを取る。
少女の視線が下の方へと動いていった。

「キ、」

少女が、息を呑む。
少女の視界に移る光景は、全裸の男が自分にのし掛かり、同じく全裸となった自分の胸元に触れているその光景であった。
終わった、と上条は正直に思った。
先程見た金色の刃に身体を切り裂かれる光景が、目に浮かぶ。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

かん高い悲鳴が部屋を響かせ、その外にまで届く。
上条が慌てて身体を起こそうとするよりも早く、その声は少女の守護者を呼び込んだ。
ドカンという音と共に、扉が蹴り開けられる。
上条が視線を送ると、そこには中々に際どい服装をした女性が立っていた。
橙色の髪に覆われた頭部には獣耳が鎮座している。
うわあ獣娘のコスプレって初めて見たなー、とか何処か投げ槍な思考を浮かべながら、上条は引きつった笑みに冷や汗を流す。

「は、はは……失礼しました〜……」

スクと立ち上がり、何処だかも分かっていない部屋から出て行こうとする上条当麻。
勿論、そんな事を少女の守護者が許す訳もなく、

「フェイトに何してんだ、この変態野郎おおおおおおおおおおおおお!!」

充分な加速とシフトウェートが加わった拳が、上条の右頬に突き刺さった。
上条の身体が重力から解き放たれ、直ぐ後ろにあった壁へと激突する。

「ふ、不幸だ……」

お決まりの一言を残して、上条の意識が鈍痛と共に再び暗闇の中へと沈み込む。
こんな感じで、上条当麻とフェイト・テスタロッサとアルフとの初の邂逅は幕を降ろした。





29 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 00:10:53.38 ID:ms1Dzpif
これにて投下終了です。
上条さんにとって、ここまでテンプレです。
と、SSの掛け持ちに対して思う所がある方もいるようなので少し弁解を。
前回や今回を見てもらえば分かるように、禁書クロスは文量も短めで、話自体も短くする予定です。
まあ、まだ予定の段階ですがあと3話程で完結だと思います。
飽くまでメインはリリカルTRIGUN。こちらは短編的な軽いノリや、トライガンクロスの鬱気味な展開を読んだ後の口直し的な感覚で読んで貰えれば幸いです。

あと、wikiでのご指摘ありがとうございます。完全にコチラのミスでした。

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/12(日) 03:03:38.55 ID:43xXIYs7
投下乙です。
何という安定の上条クオリティw
掛け持ちは別に書き手の自由だと思うんで問題ないかと

31 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:07:57.36 ID:AFaK1w82
新スレ乙です

さっそく5時半ごろからいきます

32 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:31:33.92 ID:AFaK1w82
 夜遅く、トイレに起きたヴィータは、はやての部屋に明かりがともっているのを洗面所の窓から見つけた。
 こんな遅くに何をやっているのだろう、そう思ったヴィータはそっとベランダに出て、隣に見えるはやての部屋をのぞきこんだ。

 本を開いている。

 革製のアンティークデザインの本の形をした、キーケースだ。
 中のページ部分がくりぬかれ、小物を収められるようになっている。

 古い鍵の、キーホルダーに刻まれた、“NISSAN FAIRLADY Z”のエンブレム。
 はやてにとって唯一残された遺品は、かつてあの悪魔のZに使われたスペアキーだった。

 はやては本を閉じ、備え付けの鎖をかけて、厳重に封印する。

 もう、この封印は二度と解かれることはない。

 悪魔のZの魔力は、この本に封じ込める。そして、自分が墓場まで持っていく。
 自分にできることはそれくらいだ──

「な、リイン──私はいつまでも過去を見てたらやっていけんよな──」

 本を、棚に戻す。
 参考書や学習事典に挟まれて、魔力を封じ込めた闇の書は、ひっそりと眠りにつく。

 ベッドに戻るはやてを、ヴィータは何もできずにじっと見つめていた。



 数日後の海鳴大学病院。
 その日の終業時間が近づき、当直当番への引き継ぎをしていたリインに、病院の館内放送で呼び出しがかかった。

『形成の八神先生──外線2番にお電話です──』

 事務室へ向かい、電話に出たリインの耳に、狂気を隠せない男の声が届いた。

「仕上がったんですね。それにしてもずいぶん早かったですね」

『あのお嬢さんがどうしてもきかなくてね、折角だから君も呼ぼうと思ってね』

「この間病院を抜け出してあなたのところに行っていたそうですね」

『ああ、早く直せとさんざん急かされたよ。とりあえずテスタもポルシェもひととおりキマった。
それでどうだね、お嬢さんの方は9時には来るそうだが』

「ええ、私もあと少しで今日は終わりです。その時間でいいです」

『待っているよ、ブラックバード──』

33 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:35:23.54 ID:AFaK1w82
 ガレージを出たテスタと911が、それぞれのアイドリング音を静かに響かせる。
 お互いに、それぞれの車に乗るのは久しぶりだ。

 リインはフェイトの方を見やり、鋭い視線を送った。

「フェイト・テスタロッサさん……でしたよね。なぜ精密検査の結果を聞きに来ないんです」

 フェイトは一瞬息をのむが、すぐに平静を装う。

「──医者は、あんまり好きじゃないの」

「おいおい、いきなりここでおっぱじめないでくれよ」

 茶化すように後ろからスカリエッティが言う。

 フェイトには、思い出したくない過去の光景があった。
 膝をついてくずおれた母の背中。駆け寄るリニスの狼狽えた表情。絨毯に散った鮮血。
 幼い日の、拭いがたい負の記憶──

「それよりも、さっそく慣らしに行かない?お互い、錆落としが必要なのは同じなんだし──」

「…………」

 フェイトはテスタのコクピットに座り、アクセルをあおる。

 リインはその様子をしばらく見つめ、そして背を向け、911に乗り込んだ。
 スカリエッティは911のナビシートに座る。

「ベース車両としてのポテンシャルはどちらが高いんですか」

 唐突な質問に、スカリエッティは歯を見せて笑った。

「そりゃあ、こっち(911)に決まっているがね。テスタは所詮ロードカーゆえの妥協が数多くある。
キャビン拡大のためのエンジン搭載位置の高さ、それによる重量バランスの悪化、排気量だけはデカくても
高回転で回らない重ったるいエンジン……がそんなコトよりも、彼女自身が望んでいるのだよ。
ギリギリの領域に自分を置き、その時間と空間に生きていることで、自分の命を確かめたいんだ。
それが彼女なりの克服の仕方──何を克服するのかは知らんがね」

 先に出たテスタを追い、911を発進させる。下道では、無駄にトバさず法定速度で走る。
 ピークパワー重視のチューニングエンジンの場合、このような低回転域ではまともにトルクが出なかったりするものだが、
このテスタと911はどちらも、まるでノーマルエンジンであるかのようにスムーズに走る。
 見てくれがどうあっても、チューナーとしてのスカリエッティの腕は確かだ。

「似ていると思わないかね?──ブラックバード、君の走りに」

 リインの脳裏にちらついたのは、幼いころの、無垢なはやての笑顔だった。
 彼女が、憂いを含んだ表情しか見せなくなったのは、いつのころからだっただろうか。

34 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:40:51.33 ID:AFaK1w82
 湾岸線を、銀のスープラが走っていた。
 だが今夜ステアリングを握っているのはクロノではなく、マリーだった。
 とりあえず現時点でのボディとエンジンの様子を見るということで、グレアムを横に乗せて首都高を周回していた。

「似ていましたか?彼は──」

 マリーの質問に、グレアムは遠くを見るような目をした。

「ああ……。本当に、アイツと一緒にいるような錯覚をしたよ」

 クロノの真っ直ぐさ。
 いつでも、目指すべき先を見据えて、絶対に見失わない。

 かなうなら、自分が導いてやりたい。
 そして、連れて行ってほしい。

 クライドが夢見ていた、湾岸最高速、ブラックバード、悪魔のZとの走りへ。

「700馬力くらいかね?」

「ええ。──ただ、かなりロスしてますね。2JでT78ならもっとトルクは出るはずです。
エンジン内部もかなり消耗しているでしょう……
確かに300km/h出るというのは嘘ではないでしょうが、バトルとなれば話は別ですね」

 1車線ずつレーンチェンジする。自分でステアリングを握らなくても、このスープラが
非常に硬く締め上げた足になっているのはグレアムも分かった。
 ツルシの車高調ダンパーに、バネだけをレートの高いものに変える。
 素人のセッティングでビッグパワーを押さえつけるにはそうするしかない。

 つばさ橋を越え、大黒ジャンクションから横浜ベイブリッジへ向かう。

「あの向こうに横須賀基地がある──リンディもそこにいる」

「わが軍のレーダーでも首都高エリアはサーチできませんね」

 マリーはいたずらっぽく言ったが、沈黙するグレアムを見てしばし、慮る。

「──夫だけではなく、息子までも逝かせてしまうことだけは絶対に止めたい」

「彼に降りさせるのですか?」

 グレアムは答えず、沈黙する。言葉を探している。
 探している答えは、そう簡単に見つかるものではない。

35 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:44:28.37 ID:AFaK1w82
 横浜環状線を経由して横羽線に入った時、先行して走る2台の車をマリーとグレアムは見つけた。

 一瞬で車内に緊張が満ちる。

 前を走っているのは、アサルトライフルのような金属的なガングレーメタリックの塗色を纏ったフェラーリ・テスタロッサ。
 その後ろに、すべてを飲み込む闇のような黒色のポルシェ911ターボが続く。

 何も知らない者が見れば、外車オーナーがつるんでツーリングをしているように見えるかもしれない。

 だが、二人にはわかった。
 この2台は本物の戦闘マシンだ。地上の戦闘機。制空エリアは首都高。

 そして、黒いポルシェターボの姿は、グレアムにとって忘れたくても忘れられない、永遠のシルエットだった。

 よみがえる、過去の光景。

 同じように日本に住んで走っていた仲間たちと、パーキングエリアでたわいもないおしゃべりをする。
 軍人であることは名乗らなかったし、自分たちも、彼らのフルネームも知らなかった。
 皆が興味があるのは、誰がいちばん速いのか、それだけだった。

 そのころから、おそろしく速いポルシェターボがいると噂になっていた。

 ──オレなんか先週250km/hでバンパープッシュよ、もォくやしくて──

 ──ハタチ前の医大生だって?フザけた駄々っ子だぜ──

 ──車がいいから踏んでいけるんだよナ、あの小娘は──

 ──続くかよ、どうせすぐ降りるサ──

 違っていた。降りたのは自分たちだった。走り続けられなかったのは自分たちだった。
 仕事上の立場が、とか、もうそんなことをやっていられるほどバカじゃない、とか、言い訳はいくらでもできた。
 だが、そうじゃない。
 本当は怖かった。親友の死に、向き合うことができなかった。目をそらし、背を向けてしまった。

 今、もう一度──過去に向き合わなくてはいけない。
 昼間クロノに言ったように、自分自身にとっても。

36 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:49:53.62 ID:AFaK1w82
 ポルシェのコクピットで、リインは隣に座るスカリエッティに話しかけた。

「今のスープラ──知り合いですか?」

「──運転してた女の方は知らないが、ヨコに乗ってたオヤジは知ってるよ、ようくナ」

 テスタとのペースを合わせながら、一般車の流れる速度よりも少しだけ速いペースで走る。
 ゆっくりとレーンチェンジして追い越しを繰り返すと、ボディと足回りが煮詰められていてエンジンパワーを
きちんと路面に伝えられていることがわかる。なめらかな操作フィールだ。

「あのスープラは最近出てきたんです。若い男の子がオーナーのようですね」

「──気づいていたか、やはり」

「今はまだだが、いずれ上がってくる──以前そう言いましたよね。彼は上がってきます、間違いなく。
あの仲間たちが彼に最高のマシンを与えるでしょう」

 横田基地の顧問官提督、ギル・グレアム。
 そして、その親友だったクライド・ハラオウン。

 リインにとっても、彼らは昔からの縁だった。

「息子さんがいました──彼には。確か、あのころはまだ3つか4つ──
あれからもう20年近くがたちました。あの男の子はもうあのスープラに乗っていてもおかしくない歳なんです」

 スカリエッティは神妙にしている。

 在日米軍は自分の古巣でもあるし、グレアム、そしてハラオウンの名は聞いたことがあった。
 そして、軍での付き合い以上に、走りでのつながりの方が大きかった。
 軍という組織の中では所詮一介の軍医でしかなかったが、
首都高に出れば、地獄のチューナー、無限の欲望として畏れられていた。

「(おだてられていい気になっていたよ、あの頃の私は──)」

 米軍つながりの伝手で、スカリエッティにチューニングを依頼してくる者も多くいた。クライドもその一人だった。

「(私はあんたとの約束を果たさなくてはならないね──あんたの息子が、走り出したというのなら)」

37 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:54:12.26 ID:AFaK1w82
 その日、なのはがバイトしているメイドバーに、意外な客がやってきた。
 普段はおろしている金髪をツインテールにあげて、大きな黒いリボンをつけている。
 この店のカラーを意識したのか、少々ぎこちないしぐさでフェイトはカウンター席に座った。

「(あ、あれ、あのコ、もしかしてフェイトちゃんじゃね!?)」

「(ばっかあのフェイトさんがこんなトコに来るワケねーべ、コスプレに決まってんだろ)」

 奥のテーブル席に座っていたオタっぽいグループがちらちらと見ている。
 もっともフェイトはそういうのはすっかり慣れていた。
 どうせ街に出ても、自分だと気付いてくれる人は、意外と少ない。よく似た別人、と思われるばかりだ。

「おかえりなさいませお嬢様」

 とりあえず形式通りの来店応対をし、なのははフェイトにグラスを差し出した。

「よくわかりましたね、ここが」

「あの、ポルシェの人──ブラックバードに聞いたんです。あなたがここで働いてるって」

「ああ──それじゃシャマル先生が話したんだ」

「それで、あの──私たちの車、とりあえず仕上がったから──」

「偶然ですね、こっちもちょうどエンジンのオーバーホールが終わったとこなんですよ」

「オーバーホールを?」

「ここしばらく調子崩してたんで。以前、あなたと走った時も本当は全然エンジンだめで、
いつブローするかヒヤヒヤしながら踏んでました」

 フェイトは思わず言葉を失ってしまった。そんな状態で、あれだけ走らせていたのか。
 調子を崩したエンジンで、あれだけのスピードで走らせられるのか。

「やっぱり悪いところがあったらちゃんと直さないといけないですよね、ましてや機械ですから、
悪いところが自然に治るわけはないんですからね──」

 機械に治癒能力はなく、人間にはある。だが、人間もまた、悪いところが見つかって、
それを治す方法があるのなら、早く治した方がいいに決まってる。

 ほかの客に給仕するためいったん奥に引っ込んだなのはの姿を目で追いながら、フェイトはグラスに口をつけた。
 ソーダを加えられたカクテルの、アルコールと果実の酸味がのどに染み渡る。
 かすかな違和感を覚え、軽く咳き込む。
 店内の薄暗い照明の下で、口元をぬぐった手の甲に黒いぬめりが見えた。

38 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 05:58:00.61 ID:AFaK1w82
 フェイトはなのはのシフトが終わるまで待っていた。
 待っていたというよりは、帰るタイミングをつかめずにいた。
 もっと話していたいのに、話題が思いつかない。

「えっと、私は次のバイトに行くんですけど」

 店の前で立ち尽くしているフェイトになのはがおずおずと話しかける。

 フェイトははっと我に返ったように顔を上げた。

「あ、う、うん、いってらっしゃい」

 自分がここまで不器用だとは思わなかった。器用な方ではないと自覚はしていたが、
これほどとは思わなかった。あの少女を前に何もできなかった。
 フェイトは強い後悔の念を覚えていた。
 姉なら──と、思い浮かべる。姉なら、もっとうまく会話ができて、すぐになじめていただろう。

 ──家のことは私にまかせて、フェイトは好きなことをしておいで。母さんの面倒も私が見るから──

 アリシアの言葉が、今更のようにフェイトの胸に重しをのせていた。



 スカリエッティのガレージに戻ってきた911とテスタは再度、足回りの微調整を行っていた。
 300km/hオーバーの速度域では、サスペンションにかかる負荷も相当大きい。
 しっかりと足のセッティングが出ていなければ、パワーだけあってもとても踏めない。
 ピロボール式の車高調をあえて使わず、ゴムと硬質ウレタンのブッシュを用いて
限界域での粘りを出すセッティングになっている。

「ところで、お嬢さんの具合は実際どんなものかね。やはりすごく悪いのかね?」

「二度と歌えなくなるかもしれませんね、このままでは」

「ふーん……じゃあなんでもっと強引に病院に入れないんだね?事務所の許可も出ているんだろう」

「あなたならわかるんじゃないんですか?あれだけの事故を起こした車を……さらにパワーを上げてしまうあなたなら」

 リインの言葉に、スカリエッティはトルクレンチをいったん作業台に置いて、笑みを顔に張り付けながら
ゆらりと振り向いた。911の隣には、リヤカウルを開けて12気筒エンジンをさらしたテスタが佇んでいる。
 幽鬼のように、金の瞳がリインを見据える。

「──結局後戻りはできないというわけだね。あのZに魅せられた者は──」

39 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 06:03:08.28 ID:AFaK1w82
 翌日、ラジオ番組の収録を済ませたフェイトは遠見市のマンションにすぐ戻り、近所の貸しスタジオに向かっていた。
 駆け出しの頃はよく使わせてもらった。夜はバイトをして生活費を稼ぎ、昼間、すいている時間に借りて歌の練習をする。
 今でこそ成功して売れっ子になり、少なくとも金回りに不自由はしなくなったが、フェイトにもそんな下積みの時期はあった。

「ひさしぶりフェイトちゃん、もうすっかりプロの顔になったね、CDとかすごい売れてるみたいじゃん」

 軽く会釈をして個室に入る。
 子供のころは、それこそ一日じゅう歌っていても疲れなかった。
 イタリアにいたころ、近所の日本人街に一軒だけあった、小さなカラオケ屋にフェイトはよく通っていた。
 そこで料金の安い平日日中を選び、一日じゅう、ぶっ続けで歌っていた。

 今は、とてもではないがそこまでできない。
 もうこれ以上無理はできない。

 海鳴大学病院でみてもらった限りでは、今の段階ならまだ小さな肉芽腫瘍なのですぐに手術すれば治る、とのことだった。
 喉の使い過ぎが原因か──いずれにしろ、ただのポリープと違って放置していて自然に治るというものでもない。
 手術後、声帯が完全に回復して歌唱に耐えるようになるまで、少なくとも1か月は見なければならない。

 その間、何をして過ごせばいいのだろう。

 声を出せないので、もちろん仕事は休まなければならない。体力を使い、喉に負担をかけるのも禁止だ。
 もちろん、スポーツ走行などもってのほかだ。

 普通、声帯の手術を受ける場合は、安静を保つために入院する。
 無理に日常生活に戻ろうとしてへまをするよりは、きっちり生活リズムを整え、体調を管理してもらった方が楽だ。

 1か月以上、自分が湾岸から離れることができるのだろうか。

 1か月以上、あの少女に会わずに過ごすことができるのだろうか。
 自分は魅せられてしまった。悪魔のZだけではなく、それを操るあの少女にも。

40 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/06/12(日) 06:07:30.40 ID:AFaK1w82
今日はここまでです

フェイトさんはまだなのはさんにちゃん付けで呼んでもらえるまではいかないですねー
もうちょっとです

41 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:12:47.20 ID:48YRzJzb
12時20分以降に久々投下します。

【注意事項】
・悪の組織が百合人気を利用した世界征服を企み、その一環として他ジャンル否定を行ったりし、
なのは達がそれに抗うので作品全体を通してみると百合否定っぽく見えます。
・↑に伴い現状のアニメ界及びヲタを風刺する要素があります
・みんなふざけている様に見えますが、やってる当人達は至極真剣です。
・ディエンドの無駄遣い
・自分の好きなキャラがディエンドに勝手に呼び出されて使役される事に我慢出来ない人には不向き。
・少々オリも出ます



登場作品
・魔法少女リリカルなのはシリーズ
・仮面ライダーディケイド&仮面ライダーBLACK&歴代仮面ライダーシリーズ
・プリキュアシリーズ
・恋姫無双
・ブラック★ロックシューター(ディエンド的意味で)
・ハルヒ(ディエンド的意味で)

42 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:21:10.36 ID:48YRzJzb
「アハハハハハッ!」

 長門が何も出来ず切り刻まれ続けていく様を笑いながら見つめるユリシア。だがそんな時だった。

「はぁぁぁぁぁぁぁ!! たぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふんぬぁぁぁぁぁぁ!!」
「?」

 関羽こと愛紗が青龍偃月刀を振り回し、そして貂蝉が全身の鋼鉄の様な筋肉で行く手に立ち塞がる百合戦闘員や
百合怪人を次々に薙ぎ払いながらユリシア目指して急接近し、愛紗は高々と跳び上がった後で青龍偃月刀を
ユリシア目掛け振り下ろし、貂蝉は正面から鉄拳を打ち込もうとしていた。

「私は武人だ! 戦場とあらば例え相手が幼子であろうとも容赦はせぬぞ!」
「ご主人様待っててぬぇ〜! こんな奴ちょちょいとやっつけて直ぐに帰って来るからぬぇ〜!」

 だがしかし、ユリシアはその両方をそれぞれ片腕で受け止めていた。

「私の青龍偃月刀を片腕で受け止める…幼子の姿をしていてもやはり物の怪の類と言う事か!?」
「物の怪なんて酷い言い草だよね? 私は百合生命体であって妖怪とかそんなんじゃないんだよ。」
「どっちも私にとっては同じだ!」

 愛紗は再び青龍偃月刀を横向きに振り斬りかかるが、それもユリシアの腕で防がれてしまう。
しかも刃の部分。つまり…斬れないのだ。

「君達がご主人様と慕うあの男って沢山の女の子に囲まれてたりするけど、あれって私がこれから作る百合の世界に
おいては重罪なんだよね。あの男の行動がどれだけの数の百合厨の嫉妬の対象になっているか分かっているのかい?」
「貴様…ご主人様の事を知っているのか!? だがそんな事は良い…。確かにご主人様の節操の無さは
私も疑問に思いたくなる事はあるが………だからと言って貴様の様な輩がご主人様を愚弄して良い筋合いは無いぞ!」
「愛紗ちゃん! コイツ放っといたら私達の世界にも攻め込んで来るかもしれないわぁ〜!
この戦いはご主人様だけじゃなく私達の世界全てを守る戦いなのよぉ〜! ふんぬぁぁぁぁぁ!!」

 貂蝉が物凄い汗臭い顔でユリシアへ向け鉄拳を打ち込むが、やはり片腕一本で防がれてしまった。

「いや〜強い強い。君達は他の人達と違って特別な力を持たないただの人間なのにこの場にいて
これだけの力を発揮してるんだから、ある意味本当の勇者と言えるだろうね。でも…私には勝てない。」
「うあぁぁぁぁぁぁ!!」
「はわわわわわ…。」

 ユリシアの手から発せられた衝撃波。それを至近距離から喰らい、愛紗も貂蝉も遥か後方でバトルホッパーに
守られていた朱里ちゃんの所まで吹っ飛び、朱里ちゃんははわわはわわするしか無かった。

「何時までも調子に乗ってんじゃないの!」
「今度は私達が相手よ!」

 今度はキュアブラック、キュアホワイトの二人が百合戦闘員や百合怪人をかわしながらユリシアへ向かっていく。

「だだだだだだだだぁ!」

 キュアブラックのマシンガンのごとき連続突きがユリシアへ襲い掛かるが、ユリシアはそれを楽々裁いて行く。

「はぁぁぁぁ!!」

 次はキュアホワイトがユリシアの手首を掴むと共に投げ払うが、それもユリシアは楽々と足から着地し、
反撃の衝撃波で二人を吹き飛ばしていた。

43 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:23:12.66 ID:48YRzJzb
 しかし二人もただでは転ばない。高速回転しながら吹き飛びつつも、採石場にあった崖の絶壁に着地し、
そこから踏み込む事で同時にユリシア目掛け再度跳んでいた。

「だぁぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁぁ!」

 絶壁からの踏み込みを利用したキュアブラックのパンチとキュアホワイトのキックの両方が同時に
ユリシアへ決まるが、ユリシアの表情は笑顔を絶やさなかった。

「流石ふたりはプリキュアと言うだけの事はある。良いコンビネーションだね。」
「くっ! なら…。」

 二人は素早く後退し距離を取ると共に手を繋ぎ、さらに繋がなかった方の手を高々と天へ掲げていた。

「ブラックサンダー!」
「ホワイトサンダー!」

 突如天から降り注ぐ黒と白の二色の稲妻をキュアブラック、キュアホワイトがそれぞれの掌で受け止め、
キュアブラックには黒の稲妻が、キュアホワイトには白の稲妻がスパークして行く。

「プリキュアの美しき魂が!」
「邪悪な心を打ち砕く!」
「プリキュア! マーブルスクリュゥゥゥゥ!!」

 これこそキュアブラック&ホワイトの必殺技プリキュアマーブルスクリュー。二人の手を繋がなかった方の
手の拳から放たれた黒と白の二色の稲妻が螺旋状になりながらユリシア目掛けて突き進んで行く…が…
それを真っ向から喰らいながらもユリシアは平然としていた。

「女の子同士で手を繋ぐなんて、君達二人もこっち側の人間だと思うんだけどな〜。」
「何馬鹿言ってるのよ! 私は至ってノーマルだから!」
「人は誰とでも仲良くするべきとは思うけど…でも越えてはいけない一線もあるはずよ!」

 キュアブラック&キュアホワイトはなおもマーブルスクリューをユリシア目掛け放ち続ける。しかし…

「そっか…君達も百合には反対か…。こっち側の人間と思ってたのに残念だよ。じゃあ…死んじゃえ。」

 ユリシアはマーブルスクリューを振り払い跳ね除けると共にキュアブラック&ホワイトへ急接近、
掌底を打ち込んで吹き飛ばしてしまった。

「うあああぁぁぁぁ!!」
「アハハハ! ホームラーン!」

 天高々と吹き飛んで行くキュアブラック&ホワイトの姿を笑いながら見上げていたユリシアであったが、
そんな彼女へ向けて背後からキュアドリームが猛烈な勢いで駆け寄っていた。

「キュアドリーム一人なの? 他の仲間の協力の無い君一人の力なんて高が知れると思うんだけどな。」
「そんな事無い! ここにも共に戦う沢山の仲間がいる! あんたなんかに負けないんだから!!」

 ユリシアの言った通り、筆者がドリームしかフィギュアーツ持って無いと言うだけの理由でディエンドが
ドリームしかライドしなかった事もあり、五人+一人で戦ってナンボな5系プリキュアとしては一人で
戦わねばならないと言う不利な状況下であったが、ここにも彼女と共に戦う仲間がいる。彼等の存在が
キュアドリームの心の支えとなり闘志を奮い立たせていた。

44 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:24:23.63 ID:48YRzJzb
「はぁぁぁ!!」
「わーやるやる。」

 マシンガンの様に速い拳や蹴りの連射を叩き込んで行くが、ユリシアはそれさえ軽々と裁いて行く。

「確かココとか言ったっけ、所詮マスコット役に過ぎない妖精なんかと恋愛やらかしちゃって、
それで一体何人の百合厨が涙して嫉妬の炎を燃やしたか分かってる?」
「なっ! ココを馬鹿にしないで! 私が誰を好きになろうと勝手じゃない!」

 一度後方に飛び退いて距離を取ったキュアドリームの両拳が桃色に光り輝き、行く手に立ち塞がる百合戦闘員や
百合怪人を弾き飛ばしながら猛烈な速度でユリシア目掛け突っ込んで行く。

「プリキュア! シュゥゥティングスタァァァ!!」

 これがキュアドリームの単体必殺技。プリキュアシューティングスター。文字通り桃色の流星となった
キュアドリームがユリシア目掛け猛烈な速度で突っ込み体当たりをぶちかましていたのだが………

「直線的に強い力は横からの力に弱いと言うね。」
「え!? あああああ!」

 ユリシアは右手でプリキュアシューティングスターを受け止めながら、残る左手でキュアドリームの横腹辺りを
軽く押した。それだけで軌道が大きく変えられ、プリキュアシューティングスターは横に反れて吹っ飛んで行ってしまった。
いやマジで、直線的に強い力は横向きの力の影響を受けやすかったりするのである。

「さて、君の始末をした後はパルミエ王国にでも攻め込ませてもらおうかな? あの妖精を殺せば百合厨達も大喜びだよ。」

 プリキュアシューティングスターの勢いによって逆に大きく吹っ飛んで行くキュアドリームへ向けてユリシアは右掌を伸ばし
そこからエネルギーの塊を放とうとしていたのだったが………

「プリキュア! クアドラプル! キィィィック!」

 それを阻止せんとばかりにキュアピーチ&パッション&ベリー&パインの四人で放たれるクアドラプルキックが
ユリシア目掛け打ち込まれエネルギー発射は不発に終わった。

「貴女がやろうとしている事はかつてのラビリンスと一緒! そんな事はさせない!」
「そうだよ! そんな事して一体誰が幸せゲット出来ると言うの!?」

 四人は四方向から同時に拳と蹴りの速射砲をユリシア目掛け次々放って行くが、こちらもユリシアは顔色一つ変えずに
それぞれ左右の手で楽々に裁いて行っていた。

「私が百合の世界を作れば世界中の沢山の百合厨が幸せになるよ。」
「じゃあそうでない人はどうなってしまうと言うの!?」
「そんな事は知った事では無いね。」

 直後、ユリシアの全身から放たれた全周囲衝撃波が四人を吹き飛ばしていた。
何とか着地し素早く態勢を立て直す四人だったが、ユリシアは彼女等へ向けて言い放った。

45 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:25:55.46 ID:48YRzJzb
「そもそも君達は私達側に近いと思うんだよね。君達を支持する百合厨も沢山いるし。だからこっちに来ない?」
「冗談言わないで!」
「あいにくだけど私は今のままでも十分完璧だから、態々そんな事する必要無いのよね。」

 ここにきてラブせつ及び、さらに美希たんブッキーを絡ませたネタが百合厨から多大な支持を得ている事を利用して
百合ショッカーへの勧誘を始めていたが四人がそんな物を受け入れるはずが無い。

「皆のハートを一つにするよ!」
「うん!」

 四人が横に並ぶと共に腰に下げている変身アイテム収納ポーチがそれぞれ基調の色に光り輝いた。
それと同時に何処からかディエンドが何かのカードをディエンドライバーに差し込みながら駆け寄って来た。

「君達がそれをやるにはこれが無いとね。」
『プリキュアライド! クローバーボックス!』

 ディエンドのプリキュアライドによって呼び出されたのはクローバーボックス。『フレッシュの世界』における
プリキュアに力を与えるミラクルアイテムであり、これから放たれる必殺技をするのに必要な物であった。

「クローバーボックスよ! 私達に…力を貸して!」

 キュアピーチが手を上げると共にクローバーボックスから強烈な光が放たれる。

「プリキュアフォーメーション!」

 クローバーボックスからの光を浴びながら四人はそれぞれにダッシュの体勢を取る。

「レディ! ゴォ!」

 キュアピーチの掛け声により四人はユリシアへ向けて一斉に走り始める。

「ハピネスリーフ! セット! パイン!」
「プラスワン! フレアリーフ! ベリー!」
「プラスワン! エスポワールリーフ! ピーチ!」
「プラスワン! ラブリーリーフ!」

 まずキュアパッションがハート型の赤いエネルギーの塊を作り出しキュアパインへパスした後、
それを受け取ったパインは黄色のエネルギーの塊を追加した上でベリーへパス、さらにそれを受け取った
ベリーが青いエネルギーの塊を追加してピーチへパス、最後に受け取ったピーチが桃色のエネルギーを与える事で
四色のラッキークローバーが完成していた。

 キュアピーチがそのラッキークローバー状のエネルギーの塊をユリシアへ向け投げ付けると共にそれは巨大化し、
さらに四人がユリシアを取り囲む形でそれの上に跳び乗っていた。

『ラッキークローバー! グランドフィナーレ!!』

 これぞフレッシュの世界における四人のプリキュアとクローバーボックスの力によって放たれる合体必殺技
ラッキークローバーグランドフィナーレ。四人の声がハモると共に、四方向からユリシアへ向けて強烈なエネルギーが照射されて行く…が…

46 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:27:51.64 ID:48YRzJzb
「大輔とかウエスターとかサウラーとか健人とかとのカップリングの方がよっぽど誰得だと思うんだけどね〜。」
「え!?」
「効いてない!?」

 やはり…と言うか例によってユリシアの顔色さえ変える事が出来ない。そして次の瞬間だった。
四人もまたユリシアから放たれる衝撃波によって吹き飛ばされてしまい、それと共にクローバーボックスも消滅していた。

 だがその時、間髪入れず百合戦闘員や百合怪人を薙ぎ払いながらユリシア目掛け接近するブラックロックシューターの姿があった。
そして左眼から青い炎を灯しながら左腕に装着する★Rock Cannonをユリシアへ向ける。

「………………………。」
「君は何も言わないのかい?」
「……貴女を倒す…………。」

 何しろフィグマ付属アニメの本編を見てもイマイチキャラが掴めないのだから仕方が無い。
とりあえず寡黙な女戦士的イメージで解釈してるけど。

 ブラックロックシューターは★Rock Cannonを発砲、毎秒20発の岩石散弾がユリシアへ向けて降り注ぐが
ユリシアは全身からバリアの様な物を展開させそれを防いでいた。

「……………!」

 ★Rock Cannonが通じないと分かるや否や、ブラックロックシューターは素早くユリシアへ目掛け急接近。
★Rock Cannonの砲身そのものを鈍器としてユリシアへぶつけようとするが、それもユリシアは片手で楽々受け止めていた。

「やれやれ、筆者もキャラをつかめて無いんじゃ私も何を言ったら良いか分からないね。とりあえず死んじゃえ。」

 ユリシアは★Rock Cannonを受け止めていない方の手でブラックロックシューターへ攻撃を仕掛けようとしていたが…

「危ない!」

 そこにBLACKが手近にいた百合戦闘員をユリシア目掛け投げ放ちぶつけていた。勿論ユリシアにダメージは
無かったが、ブラックロックシューターへの攻撃は阻止する事が出来た。

「今度は世紀王ブラックサンが相手か。太陽と月、二つのキングストーンを合わせて創世王になれば
さしもの私も危ないと思うけど、どちらか片方しか無い世紀王ごときにこの私を倒せると思ってる?」
「倒せると思うからやるわけじゃない! 世界と人々の平和と自由の為にもお前はここで倒さなくてはならないんだ!」

 BLACKの腰に巻かれたベルトからキングストーンの眩い光が放たると共にBLACKは高々と跳び上がり…

「ライダーキィィィック!!」

 BLACKの脚にキングストーンエネルーを集中させたライダーキックと合わせる様にブラックロックシューターもまた
ユリシア目掛け再び★Rock Cannonを振りぶつけようとするが………

「さしずめダブルブラック攻撃と言う所か〜。これは流石に喰らったら痛そうだな〜。」

 とまるで舐めてるとしか思えない位に棒読みでそう言いながら後方に跳びかわし、その二人も
ユリシアの衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。

47 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:29:47.31 ID:48YRzJzb
 だがここですかさずストロンガー&RX&電王&キバが四人同時攻撃を仕掛けて来ていた。
ストロンガーの拳が高圧電流を帯びてスパークを起こし、RXのリボルケインが光り輝き、
電王のデンガッシャー・ソードモードの切っ先、キバの拘束具の外された右脚がユリシアへと向けられていた。

「ストロンガーの電撃は痺れそうだし、RXは不思議な事が起こったりしそうだし、
電王はクライマックスとか言いそうだし、キバはキバって行くんでしょ? でも私は倒せないよ。」
「痺れるどころか感電死させてやる!」
「例え女の子の姿を取っていようが、百合ショッカーによって作られた敵であるのならば容赦はせん!」
「俺は最初から最後までクライマックスだぜー!」
「キバって行くぜ!」

 ストロンガーの電キック、RXのリボルケイン、電王のデンガッシャー・ソードモード、
キバの必殺キック・ダークネスムーンブレイクによる攻撃が四方向から同時にユリシアへ襲い掛かった…が…
ユリシアの身体は高圧電流を遮断し、かつ鋭利な刃でも切り裂く事は出来ず、キックは回避されてしまい
それどころか反撃時の衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。

「ふぅ…次々来るから忙しいね〜。」

 ユリシアが一息付こうとした時、背後から自身の頬を弾丸が掠めて行くのを感じた。後を見てみると、そこには
リイン・G3とアギト・アギトの姿があった。

「なのフェイの百合程では無いにしても、リインフォースU×アギトの需要もあると思うんだ私は。」
「何馬鹿言ってますか!」
「あたしはゼストの旦那一筋だ! そんな気はねぇ!」

 リイン・G3はG3システム専用銃であるGM−01スコーピオンにグレネーユニット装着したGG−02サラマンダーの
弾丸に自身の冷凍系魔法を込めた物を発射し、そしてアギト・アギトはグランドフォームのパワーに自身の火炎の魔法を上乗せした拳で
ユリシアへ突撃する。しかし、ユリシアの身体はサラマンダーの爆発力で吹き飛ばす事も弾丸に込められた凍結系魔法で凍らせる事は愚か
凍傷にさせる事も出来ず、かつアギトの火炎拳でも燃やす事は愚か火傷さえ負わせる事は出来なかった。

「リインフォースUがG3システムを装着したって、アギトがアギトに覚醒したって所詮は紛い物のライダー。
その力は高が知れるよ。そんな事よりユニゾンデバイス同士の百合を見せて欲しいな〜。見せてくれないのなら……。」

 ユリシアの掌から放たれるエネルギーの塊がリイン・G3とアギト・アギトの二人へ向けられようとした時、
そこへディエンドのディエンドライバーから放たれた弾丸がユリシアの後頭部に炸裂していた。

「ねぇ、貴方は百合をお宝として認識しないの?」
「お宝と言うのは貴重で尊い物でなければならないんだ。今の時代において百合なんてその辺に転がってるし
二束三文で買える様な物じゃないか。勿論君が作る百合の世界と言うのになればなおさらさ。」
『ファイナルアタックライド! ディディディディエンド!』

 ディエンドは素早くディエンドライバーからディメンションシュートを放つが、それもユリシアへは通じない。
片手でいなす様にエネルギーの軌道を曲げられてしまった。

「ならばこれはどうだい?」
『プリキュアライド! ブロッサム! マリン!』

 ここでさらにディエンドはプリキュアライドでキングダークJSとの戦いと言う役目を終えて一度消滅した
キュアブロッサム&キュアマリンをライド召還していた。フィギュアーツ発売記念のサブライズである。

48 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:31:37.63 ID:48YRzJzb
「それいけー!」

 ディエンドがディエンドライバーによる援護射撃を行いつつ、キュアブロッサムとキュアマリンが
猛烈な速度でユリシア目掛け駆け出して行った。

「君達も私に抵抗するの? 君達の百合も結構需要あるのに?」
「そんな事は関係ありません! いずれにしても沢山の世界の人達に迷惑をかけている貴女達の行為は
許されない事です! 私…堪忍袋の尾が…切れましたぁぁぁぁぁ!!」
「海よりも広い私の心もここらが我慢の限界よー!!」

 キュアブロッサム&マリンはユリシアへ突撃しながらそれぞれブロッサムタクト&マリンタクトを握り締め、
それと共に強烈なエネルギーを放ちながら猛烈な速度でユリシア目掛け突っ込んだ。

「フローラルパワー!! フォルテッシモォォォォ!!」

 桃色と水色の流星と化したブロッサム&マリン、そして再び放たれるディエンドのディメンションシュートの
同時攻撃がユリシアへ襲い掛かるが……それぞれを片手で防がれてしまった。

「なっ!」
「ハートキャッチオーケストラの大質量で殴り潰して来るならともかく…そんなんじゃね〜。」
「退け! 二人とも一度距離を取るんだ!」

 ディエンドの叫びも空しく、ユリシアの反撃がブロッサム&マリンに襲い掛かろうとしたその時だった。
それを防がんと言わんばかりに右足から封印エネルギーを放ちながらクウガが駆けていた。

「百合が好きな人もそうで無い人も両方が納得出来て皆で笑顔になれる方法がきっとあるはずだ! 俺はその為に戦う!!」

 クウガはマイティキックをユリシアめがけ放とうとするが、ユリシアはクウガの脚の部分を掴み払ってしまった。

「アルティメットフォームならともかく、マイティフォームじゃ大した事は出来ないよ。」
「くそっ!」

 ユリシアはクウガへ向けて手を振り上げようとしていた。

「やれやれ。見てられないな。ユウスケを助けといてやるか。」

 ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込む。

『カメンライド! カブト!』

 ディケイドは仮面ライダーカブトにライド変身し、さらにもう一枚のカードをディケイドライバーに差し込んでいた。

『アタックライド! クロックアップ!』

 ディケイドカブトはクロックアップの能力から来る超速でクウガを救出しつつユリシアを叩きのめそうと
急接近していたのだったが………

「私がクロックアップの事を知らないとでも思ったのかい破壊者さん?」
「何!? うあぁぁ!!」

 ユリシアはまるでクロックアップの先を読んだと言わんばかりの勢いでディケイドカブトを容易く叩き飛ばし、
それにはディケイドカブトもダメージの余りライド変身を解除させられ元のディケイドに戻ってしまっていた。

49 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:33:28.33 ID:48YRzJzb
「君も私の作る百合の世界においては邪魔な存在だよ。せっかく百合の世界を作ったとしてもそれを破壊されちゃ堪らないからね。」
「確かにお前の作る百合厨しか生きる事を許されない世界とやらは俺にとっても過ごしにくい世界になりそうだ。」

 体勢を立て直したディケイドはライドブッカーからまた別のカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。

『プリキュアライド! サンシャイン!』

 ここでディケイドはキュアサンシャインにプリキュアライド。そしてまたさらに別のカードを取り出し
ディケイドライバーに差し込んでいた。

『ファイナルアタックライド! ササササンシャイン!』

 ディケイドサンシャインの手にキュアサンシャイン専用アイテムである、ヒマワリの花状のタンバリン『シャイニータンバリン』が
現れ、そこから放たれた無数のヒマワリの花状のエネルギー塊がユリシアの全身に打ち込まれその身体を拘束して行く。
これはキュアサンシャインの必殺技『プリキュアゴールドフォルテバースト』に相当する物であった。

「よし! 今だ! やれユウスケ!」
「分かった士!」

 姿はキュアサンシャインになっても声は相変わらず門矢士のままなのがやっぱり違和感大爆発であったが
ゴールドフォルテバーストでユリシアを拘束している今が攻撃のチャンス。クウガは右足にエネルギーを集中させ、
マイティキックを放とうとしていたのだが…

「甘いよ!」
「何!?」

 後少しでマイティキックがユリシアに打ち込まれると思われた所でユリシアがゴールドフォルテバーストの
無数のヒマワリの花状のエネルギーを跳ね飛ばし、あろう事かディケイドサンシャイン及びクウガをも吹き飛ばしてしまった。
しかし意外な事にその後ユリシアが取った行動は、二人に追い討ちを掛けるのでは無く、別方向へ駆け出す事だった。

「ん!? 立場的に貴様のが優勢なのに何故逃げる!?」
「何故って…私には破壊者さんより先に始末しておきたい相手がいるからね。」
「何をする気かは分からんがそうはさせん!」

 ユリシアを追うディケイド&クウガだったが、百合戦闘員や百合怪人がユリシアを守る様に立ち塞がり
ディケイド達は足止めを余儀なくされてしまった。そしてユリシアが何処へ向かったのかと言うと…
それはなのは達のいる場所だった。

 ユリシアの接近と共になのは達を取り囲んでいた百合戦闘員達は一旦下がり、ユリシアはユーノを指差した。

「そこにいる淫獣を始末すれば母子ともに一生遊んで暮らせる環境を私が用意してあげるよ。悪い条件じゃないでしょ?」
「何を馬鹿言ってるの!? ユーノ君にそんな事出来るわけないし…ユーノ君は淫獣なんかじゃない!」

 なのははユーノを両手で抱きしめ庇おうとする。そして、なのは自身に対してもヴィヴィオとアインハルトが
前に出て守ろうとしていた。

「なのはママ達は私が守るもん!」
「私も!」
「君達二人も素直に大人しく聖王、覇王としていれば良かったのに…。」

 ヴィヴィオはストライクアーツで、アインハルトは覇王流の技でユリシアへ殴りかかるが、その拳が当たる前に
手で軽々といなされ逆に弾き飛ばされてしまった。

50 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 12:34:55.23 ID:48YRzJzb
「聖王、覇王の力を引き出し行使出来ない今の君達に私を倒せるはず無いじゃない?」
「二人とも危ない! 全力全開! ディバインバスタァァァァ!!」

 今度はなのはのレイジングハート先端がユリシアへ向けられ、ディバインバスターが放たれた。
極太の桃色魔力光がユリシアの全身を飲み込んで行くが…それだけだった。ユリシアの身体にも衣服にも
焦げ目一つ付かず、ただエネルギーが彼女の身体を沿って流れていくだけだった。

「そんな物は効かないよ。今までの私の戦いを見て何も思わなかったのかな?」
「くっ!」

 直後、ユリシアは素早くなのはからユーノを取り上げていた。そしてユリシアは右手でフェレット形態のユーノを握り掲げる。

「ユーノ君!」
「君達にやる気が無いのなら代わりに私が始末してあげる。淫獣が死ねば世界中の百合厨が大喜びだよ。」
「やめてぇ!」

 ユリシアがユーノを握り潰そうとしていたが、そこでヴィヴィオとアインハルトがユリシアに掴みかかり止めようとしていた。

「ユーノくんを離して!」
「そんな事絶対にさせない!」
「ええい離して!」

 二人がかりでユーノを取り返そうとしていたヴィヴィオとアインハルトだったが、いかんせん力に差がありすぎた。
ユリシアによって軽々と振り払われてしまう。

「何故君達がたかがこんな淫獣一匹必死になって守ろうとするのか理解出来ないな〜。こんなのがいたって
喜ぶ奴なんて何処の世界にいるのかい?」

 ユリシアは気を取り直しユーノを握り潰そうとしていたのだったが………その時だった。

『ここにいるぞぉぉぉぉ!!』
「!?」

 突如として響いた三国志の馬岱の名台詞を髣髴とさせる謎の声。それも一人や二人の物では無かった。
その場にいた皆が一斉にその声の響いた方向に目を向けると、その先には採石場へ駆け付ける謎の一団の姿があった。

「ん?」
「アイツ等は一体何だ………?」

 ディケイド達も立ち塞がる百合戦闘員を倒しながらその存在に気付き疑問に感じていた。彼等は………

「司書長が死んでしまったら困る人間なんて幾らでもいるぞー!!」
「お願いだからユーノ君を殺さないでー!!」

 彼等は無限書庫に勤める司書達や、少なからず存在するユーノのファンだった。百合厨が圧倒的多数を占め、
その百合厨によって弾圧迫害を受ける中でも数が少ないながらにユーノを根強く支持するのが彼等である。
そんな彼等がユーノのピンチに黙っていられずこうして駆け付けて来ていたのだった。

「ハハ…何かと思えばただ声の大きいだけの少数派じゃないか。たかが雑魚が数十人集まった程度で何が出来ると言うんだい?」

 ユリシアは構わずユーノを握り潰そうとする…が……その時だった。

51 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 13:00:10.46 ID:48YRzJzb
『待て待て待てぇぇぇ!!』
『ここにもいるぞぉぉぉ!!』
『ここにも!』
『私達もいるよぉぉぉぉ!!』
「!?」

 さらに次々に響いて行く謎の声。無限書庫の司書やユーノのファンだけじゃない。他にも東西南北様々な方角から
様々な集団が次々に採石場へ殺到し、それどころか別の世界からも次元のオーロラを通って様々な集団が駆け付けていたのだった。

「な…何なの……?」

 もはや採石場周囲を取り囲み密集する程の凄まじい大軍団となったその様にはなのは達も思わず動揺してしまう。
彼等は一体…………

「俺達は確かに百合カプも好きだけど、物によってはノマカプも好きだぞー!!」
「そもそも百合の世界が来たら○○○は俺の嫁〜! とかだって出来なくなってしまうじゃないかー!」
「そんな百合しか許されない世の中なんて真っ平御免だー!」

 彼等は各世界におけるヲタ達だった。しかし百合厨とは異なり、百合も好きだが他ジャンルも好む者達であり、
彼等はその百合以外のジャンルを否定されるのが嫌で立ち上がったのだった。しかし彼等だけでは無い。

「私達も801とか好きだけどー! ノマカプも好きだよー!」
「そういう事も許されない世の中なんて嫌だよー!!」

 そう。彼女達は各世界における腐女子である。当初は百合化を進める百合ショッカーの思想は
BLや801を好む腐女子達にとっても利害が一致する為に腐女子達もまた百合ショッカーを支持すると
思われていたのだが、百合ショッカーの手によって総百合化してしまった際に起こる弊害に気付き、
彼女達も反対の意思表示をする為に駆け付けて来ていたのだった。

「おいおい…。何か凄い事になってるな…。」

 採石場を取り囲んだヲタや腐女子の大軍団は各々の気持ちを何度もぶつけ続けた。この様には
百合戦闘員や百合怪人、そして百合厨達も動揺し浮き足立つばかりだった。そして…ユリシアもまた…

「何故!? 何でなの!? 何故皆嫌がるの!?」

 あれだけの余裕を誇っていたユリシアは思わず手に握っていたユーノを離してしまい頭を抱え始めていた。
百合生命体として作られた彼女は、百合を好むヲタと女性キャラが百合しまくれば自分達も思う存分に801やBLを
楽しめると考える腐女子の両方が幸せになれると信じここまでやって来た。しかし、ここまで大勢のヲタや腐女子に
反対され、自分自身の存在義意に疑問を持ち始めていたのだった。

52 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 13:01:09.85 ID:48YRzJzb
「百合はいけないの!? ねぇ! 私が百合の世界を作るのはいけない事なの!?」
「別にそこまでは言ってないぞ。」
「!」

 ユリシアの前にはユリシアが手から離した際に落ちたフェレット形態のユーノを滑り込みキャッチしていたキュアパイン及び、
それをフォローする様に同じく接近していたディケイドの姿があった。そして隣にはクウガの姿もある。

「そういうのは百合したい奴同士で勝手にやってれば良いもんであって、そうで無い者を迫害して良い理由にはならないんだよ。」
「そうだ! 周りを見てみろ! あれこそ百合が好きな奴もそうでない奴も皆が納得出来て笑顔になれる世界の姿じゃないか!」

 クウガは採石場の周囲に展開する人々を見せ付ける様に腕を左右に広げそう訴えた。しかし、ユリシアはそれを認めなかった。

「うるさいうるさいうるさい! 偉そうに! あんた何様のつもりだよ!」
「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」
「!!」

 ディケイドの何時もの名台詞が決まり、それにはユリシアの表情も怒りで歪む。そして百合怪人や百合戦闘員達が
動揺し浮き足立っている隙を突く様に、なのは達がディケイドの周囲に集結して来ていたのだった。

「行くぞ! 今度こそお前を倒すぞ百合生命体!」
「何を言うかな〜…。今までの戦いで私には敵わないって分からないのかな〜?」

 思わず苦笑いしてしまうユリシアだったが、なのはやディケイド達は恐れなかった。

「確かに貴女は強いよ凄く。」
「だが戦っているのは俺達だけじゃない。」
「あそこにいる沢山の人の笑顔を守る為なら…俺達は負けない!」
「行くぞ! これが最後の戦いだ!」

 無数のヲタや腐女子の声援を受け、皆は闘志を奮い立たせていた。百合生命体ユリシアと、彼女に率いられる
百合ショッカーは強大だ。しかし、様々な世界で今も戦う者達の為にも負けるわけには行かなかった。

 最後の戦いはここから始まる。

53 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/12(日) 13:02:03.51 ID:48YRzJzb
ここで次回に続きます。今回は長かったので案の定さるやさん喰らっちゃいましたorz

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/12(日) 14:18:46.31 ID:Kw6/+Pxv
>>29
乙!
掛け持ちの件も乙!

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/12(日) 20:25:42.90 ID:1CnNGqbO
遅ればせながら新スレ立て+職人の皆様、投下GJです

56 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/12(日) 20:54:34.80 ID:ms1Dzpif
皆さま投下乙です。それと感想ありがとうございます。

唐突ですが少し報告を。
>>15>>16のフェイトとヴァッシュとの会話シーンですが、間違えて推敲前のものを投下してしまいました。
まとめwikiの方で修正版と変更しておきましたので、念の為に報告をさせていただきます。

57 :マクロスなのは 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 21:41:35.99 ID:Hq9z15sH
スレ立てと投下乙です。
23時頃よりマクロスなのはの第22話を投下したいと思いますので、よろしくお願いします。

58 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:13:14.60 ID:Hq9z15sH
では時間になったので投下を開始します。

マクロスなのは 第22話「ティアナの疑心」

六課にサジタリウス小隊が来てから2週間。ティアナ・ランスターは不安に苛まれていた。
なのはの個人的都合≠ェサジタリウス小隊のさくらに対するプライベート訓練であると知ったからだ。
無論彼女はそれだけで怒るような狭い心の持ち主ではない。
そしてさくらに対してもまた、敵意を持っているわけでもない。
それどころか戦法が似ているため、ティアナはさくらに「地上における射撃戦」を。逆にさくらは一撃必殺である「魔力砲撃による狙撃」を教えたり、果
ては部屋に招待して泊まり会を開くほどに馬が合った。
そんなティアナが不安に思うこと、それはさくらの技量向上のスピードが異様に早いことだった。
年齢も階級も2つ〜3つ上であることは確かだが、それ以上の何かがあるような気がしてならなかった。
そこでティアナは朝早く起き出し、訓練を覗くことにした。

(*)

0530時 宿舎
そこの玄関では、一通り身支度したティアナが訓練場に向かって走っていた。

(やっば・・・・・・30分も過ぎちゃってる・・・・・・)

ティアナはその身の不覚を恨んだ。
朝起きると、すでにさくらから聞いていた開始時刻、5時を回っていたのだ。
そして彼女にはもう1つ不覚があった。それは─────

「ねぇティア、さくら先輩頑張ってるかな?」

背後を走る青い髪にハチマキを着けた相棒が聞いてきた。
彼女の相棒であるスバルは、今回朝が早いため起こさないつもりだった。しかし寝坊に慌てたティアナは、起き上がった際に頭を二段ベッドの上の
段にぶつけ、そこで寝ていた彼女を起こしてしまっていた。
ティアナは走る速度が鈍らないようにしながら振り向く。

「たぶんね。でもいいの? あんた、昨日遅く寝てなかった?」

ティアナの脳裏に、家族に手紙を書くため机に向かっていたスバルの姿がフラッシュバックする。
しかしスバルはかぶりを振った。

「ううん。私の体は2〜3日寝なくても通常行動には何の問題もないようにできてる≠ゥら全然大丈夫ぅ〜。それに、ここまで来て引き返せないよ」

「ま、そうよね」

そうこうするうちに訓練場に到着した。しかしなのはにも、さくらにさえ見学しに行くことを言っていないため隠れて見ることになる。
茂みに隠れ、模擬戦をやっているらしいなのは逹を見つけたスバルが一言。

「実戦さながらだね・・・・・・」

彼女の言う通り、訓練場を超低空で浮かぶなのはとさくらの2人は、中距離で撃ち合い激戦を繰り広げていた。


59 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:15:25.95 ID:Hq9z15sH

──────────

さくらのカートリッジ弾がなのは目掛けて発砲される。
なのははそれを数発迎撃するが、数が多いため魔力障壁とシールド型PPBを併用して幾重にも張り巡らす。
そうして着弾したカートリッジは1番外側にあった魔力障壁に着弾し、そこで爆発した。
爆発は一瞬にして障壁を破り、内部のもう1枚を破るが、外から3枚目に展開されたシールド型PPBに完全にブロックされた。
いわゆるスペースド・アーマー≠フ原理を応用したシールド展開術だ。
最近アップデートされたカートリッジ弾は、成形炸薬型と触発または遅発砲弾型、そして空中炸裂型の3種類のモードの選択が可能だ。
成形炸薬型は装甲を高温高圧のジェットで溶かし、内部の乗員(主に装甲車の)を殺傷する質量兵器の成形炸薬(HEAT)弾と同様に、炎熱変換の
ジェットでそれを行う。
スペースド・アーマー≠ヘ、主に装甲車に使われる機構で、対成形炸薬装甲として有名だ。
高温高圧のジェットは最初の1枚目で最大の威力を発揮する。そのため1枚目と2枚目の間の空間を設けることにより、ジェットを減衰、無力化するのだ。
さくらの発射したのはホログラム弾だが、ホログラムによってこの現象が精密に再現されている。
しかし残念ながらこの現象は1秒に満たない間に起こるので、ティアナ逹にはなのはがシールドを2枚犠牲にして身を守ったとしか認識できなかった。
なのははシールドを解除すると、その機動力を生かしてローリングするように次弾を回避して同時に反撃に転じる。
放たれた10を超える大量の魔力誘導弾。1発1発に撃墜≠ニいう揺るがぬ意思のこもった誘導弾は鋭い機動でさくらに迫る。
さくらはEXギアからチャフとフレア。ライフルからは魔力弾を連続発射して後方から迫るそれらを撃ち落とす。輝く光弾に数発の誘導弾が吸い寄せ
られ、無益に自爆した。
その間もなのはから次々と畳みこむように放たれる誘導弾。その数は最初から数えて40は超えているだろう。
さくらは迎撃を続けながらも健気に牽制射撃を織り混ぜ、ようやく空中炸裂設定のカートリッジ弾の弾幕で作った散弾でなのはに回避の時間を作ら
せることに成功する。
しかし稼げた時間はコンマ5秒に満たない。
それでもさくらはなのはから無理やりもぎ取った隙を突いて、したたかに生成していたらしいハイマニューバ誘導弾で応戦した。

──────────

ティアナはその模擬戦を見ながら息を飲んだ。
いつも自分達がやっている模擬戦のほとんどが、例え難しくともクリアが可能なように作られたゲームに感じられる程の息つかせぬ攻防。
これほど内容が密ならば、短い内に技量が格段に向上するのもわかる気がする。
しかし同時に、ある疑問が頭をもたげた。

(どうしてなのはさんは私達にゆっくりと基本ばかり教えるんだろう・・・・・・?)

確かに4人もいるため、多少ゆっくりになることがあるかもしれない。しかし最近では個々の訓練になって手が足りないというわけではないはずだ。
またなのはの教導は、ティアナのアカデミーの教官曰く、

「期間は短いが、テンポよく、スピーディー。内容がしっかりしており、エースの名に恥じぬ教導」

と絶賛していた。
つまりなのはは極めて短時間で新人を1人前まで叩き上げられるということになる。
しかし自分は教導が始まって5カ月が経ったというのに、強くなった実感が℃揩トずにいた。
そしてそのことが、彼女は1つの結論を導き出させてしまった。

「なのはさんは・・・・・・私達に手を抜いてる・・・・・・」

「え?」

スバルがキョトンとした顔で振り返る。
そんな彼女にティアナは自分の結論を並びたてた。
スバルはそれを静かに聞いていたが、どうも懐疑的だったようだ。
しかしこちらの言い分も理解できると見え、折衷案を提案してきた。

60 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:16:55.43 ID:Hq9z15sH

「じゃあ、今度の定期模擬戦で、なのはさんに勝っちゃうってのはどうかな?」

スバルの言う定期模擬戦とは、数ある模擬戦の中で唯一日程の決まった模擬戦の事だ。
基本演習の合間に行われる模擬戦は抜き打ち≠ェ常道だが、普段忙しいフェイトが参加するため、やむを得ずスケジュールとして組み込まれていた。
この模擬戦は、今目前で行われている2人の模擬戦に負けず劣らずハードであり、形式は分隊ごとに分隊長vs新人2人で行われる。ちなみに新人
の目標は隊長に一撃を与えることだ。
この5カ月で4度行われたが、スターズの2人は3度完璧に押さえ込まれ、4度目で初めて時間切れという引き分けに持ち込んでいた。
なのはによると、訓練の進度に応じて難度を上げているため、引き分けられれば十分合格だという。
確かにこれに勝てば、彼女の驚きは大であろう。

「面白そうね。でも訓練どうりやると引き分けちゃうから、何か秘策を考えなきゃ」

2人はその後、時間が許すまでその場で対策を考えた。

(*)

12時間後

ティアナとスバルの2人は通常の訓練を終え、宿舎の反対側にある雑木林に集まっていた。

「ティアは何か思いついた? 私は全然〜」

早くも投げ出した相棒に不敵な笑顔を見せてみる。

「大丈夫、ばっちりよ」

サムズアップ(握った拳から親指を上に突き出す動作)して見せると、スバルは

「さっすがティア!」

と囃し立てた。

「じゃあ作戦を話すわよ。まず、通常のクロスシフトAを装うの」

クロスシフトとは、2人の戦術の名前だ。
ティアナの射撃で敵を釘付けし、スバルが接近戦で止めを刺す方法がA。その逆のBの2種類がある。

「私は最初にクロスファイアで誘導弾をばらまいて姿をくらますから、あんたはなのはさんを、まるでこっちが本命であるように見せかけて釘付けに
して。そのあと私が砲撃する」

「え? ティア、砲撃はまだ時間がかかるから無理だって─────」

そう言うスバルのおでこを軽く指で弾く。

「バーカ、フェイク(幻影)に決まってるでしょ。第一、私の砲撃が歴戦のなのはさんの魔力障壁を貫けるわけない。引き分けならそれでも良いけど、
私達は勝たなきゃいけないの。だから私は─────」

ティアナはカード型になったクロスミラージュを起動、2発ロードする。
果たしてそこには銃剣を着けた一丁拳銃の姿があった。
ティアナが接近戦という発想がなかったスバルが絶句する中、話を続ける。

61 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:17:45.67 ID:Hq9z15sH


「これならシールドを切り裂いて一撃を与えることぐらいは、できるはずよ」

スバルも驚くとうり、なのはも想定していないはずだ。訓練では射撃と指揮が主な内容で、接近戦など習ってない。
失敗すれば一網打尽だが、成功すれば見返りは大きい。
ティアナは作戦に確かな手応えを持って、特別訓練に臨んだ。

(*)

その後1週間、通常の訓練の合間を縫ってスバルと新戦術クロスシフトC≠フ訓練に明け暮れた。
内容は主にティアナの近接戦闘の訓練と、上空に止まるであろうなのはへの隠密接近である。
近接戦闘についてはスバルは臨時教官として適役であり問題はなかったが、接近方法に難があることがわかった。
空を飛べない2人はスバルのウィングロードが空≠ヨの唯一の足場であり、スバル自身はマッハキャリバーのおかげで約90度の斜面を余裕で
登る事ができる。
しかし己の足で走るしかないティアナにはスバルの使用する急斜面のウィングロードは使えない。
しかしティアナに合わせるという客観的に見て極めて特殊で無駄な機動はなのはに作戦が感ずかれる可能性があり、訓練は困難を極めた。
そこは結局

『どうせ1発勝負なんだから』

というティアナの一言により、なのはの上空を通るウィングロードを敷き、そこにクロスミラージュのアンカーを打ち込んで一気に上がる案が採用され
ることになった。

(*)

模擬戦前日の夜

2人は特訓による最終調整を終え、明日に備えての余念がなかった。
いつもはデバイスの自己修繕機能やクリーニングキットによる整備、1回で終わらせるところだが、今回はオーバーホールして1部品ごとに磨いていた。

2100時

オーバーホールを始めて1時間が経ったこの時、2人の部屋に訪問者がやってきた。
ピンポーン≠ニいうインターホンに、ティアナはトリガープル(引き金)を磨く手を休め

「開いてますよ」

と訪問者に呼び掛けた。

「失礼します。うわ・・・・・・なんだか凄いことになってますね・・・・・・」

入ってきて目を白黒させたのは、さくらだった。
確かに部品数の比較的少ないティアナはともかく、可動部が多いため必然的に部品数も多いスバルのデバイスの部品が、床一面に広げられてい
る光景は驚くに値するだろう。

「こんばんわ〜さくら先輩」

マッハキャリバーのローラー部を組み立て、油を挿すスバルが手許から目を離さずに挨拶する。

「こんばんは。明日の準備ですか?」


62 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:18:28.04 ID:Hq9z15sH

さくらの質問にティアナが頷き、作業に戻る。

「そうですか・・・・・・じゃあ、邪魔しちゃ悪いですね。私の教導期間はもう終わりましたから、また明日にでもこれ≠竄閧ワしょうね」

さくらはトランプをシャッフルする手真似をする。

「は〜い。待ってますよぅ〜」

スバルの返事を聞くと、さくらは出ていった。
さくらが持っていた冊子には、2人とも気づかなかった。
この時もし、もっとさくらと話を続けていたら、この先の未来は違ったかもしれない。

(*)

さくらはロビーに着くと、ソファーに座り、何度も読み返したその冊子を再び開いた。
それは20ページほどで、訓練終了とともになのはから

「今後の参考に」

と貰ったものだった。
そこにはこの3週間の訓練記録や今後の「近・中距離機動砲撃戦術」の発展予想。短い今回の訓練期間で抜けきれなかったクセの解消方法や、こ
の戦術のバルキリーへの転換に関するアイデアやアドバイスなどのあれこれが書いてある。
しかもこれらは全てなのはの経験に基づいて書かれており、とてもデータベース化して量産≠ウれたどこにでもあるような対策集とは違う、思いや
りがあった。
なぜならどれも自分の特性に合わせてわざわざ新たに書いてくれたものらしく、彼女の砲撃のように正確に的を射ている。
そんな目から鱗の冊子の最後にはこう手書き≠ナ書かれていた。


──────────


3週間の訓練ご苦労様
さくらちゃんはこの3週間よく頑張ったと思います。
戦術はテクニックさえ身につければできるものではなく、基本の習得が最低条件です。だから少し厳しかったかもしれないけど、よく着いてきてくれ
ました。ありがとう。
でも1つ、謝らせてね。
演技でも意地悪な態度を取ってごめんなさい。本当はうちの4人みたいにゆっくり、優しく教えてあげたかったのだけど、出来なくてごめん。
これからも空を守る友達でいてね。
私はさくらちゃんと一緒に空を飛べる時を楽しみに待ってます。

高町なのは

Dear my friend 工藤さくらちゃんへ


──────────


さくらは読み返すうちに何度も込み上げる嬉しさに身震いした。

63 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:19:27.81 ID:Hq9z15sH

(やっぱりなのはさんはいい人だった!だってずっと私を見ていてくれたんだもの!)

こうしてなのはの教導の卒業生から構成された俗に言うなのは軍団≠フ名簿にまた1人、その名が加えられた。
そこに宿舎内に併設された大浴場から出てきたのか、マイ桶にタオル等を入れて持つ、アルトと天城が現れた。

「よう、さくらちゃん。どうだい、訓練の方は?」

なんにも知らない天城が聞く。彼はこの3週間、アルトとの模擬戦と小隊としての任務(スクランブル待機など)に徹していた。
そのためこの3週間で20数回あった敵出現の報の内、小規模だった15回は天城と基地航空隊のCAP任務部隊のみでケリをつけていた。
この働きのおかげで、六課の4人やさくらの訓練を中止しなくてもよくなり、大変感謝されていた。

「はい、今日終わりましたよ。とてもいい経験ができました。これも支えて下さった天城さんやアルト隊長のおかげです。本当にありがとうございました」

アルトは深々と頭を下げるさくらから、机に広げられている冊子に視線を移す。

「お、早速読んでるみたいだな」

さくらは顔を上げて

「はい!」

と頷くと、冊子を手に取り胸に抱く。

「もう感動しちゃって・・・・・・まさかここまで私のために考えてくれているなんて!」

「だから言っただろ。諦めずに頑張ることだって」

「はい!アルト隊長のお言葉があったればこそです!」

シンパシーで通じ合っている2人はともかく、天城にはなんのことかわからず首を捻るが、2人は構わず話を続けていった。

「それにしてもアルト隊長の言う通りですね。ティアナさん達が羨ましいです」

なんでもさくらは冊子を受け取った後、なのはから六課の4人の分を見せてもらったという。
なのはによると、4人の教導がちょうど半年になるため、明日の模擬戦終了時に渡すらしい。

「ページ数は同じ20ページぐらいだったんですけど、内容の密度がすごいんです!よく入ったなぁ〜ってぐらい」

「・・・・・・そういえば、俺も20ページ前後だったな。何かこだわりがあるのか?」

「はい、なのはさんによると─────


──────────


2時間前 六課隊舎3階 中央オフィス

ズラリとコンピューター端末が並ぶ中、さくらとなのはは通常勤務時間外で他には誰もいないこの部屋に来ていた。


64 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:20:28.40 ID:Hq9z15sH
なぜならなのはに明日4人に配ろうと思っているという冊子の添削の助言を求められたためだ。
さくらはまだ電子情報の文書をスクロールしていく。

「・・・・・・あの、なのはさん、どうして20ページに収めようとするんですか?この内容だと50ページぐらい使った方が無難だと思うんですが・・・・・・」

さくらは極めて≠謔ュまとまった文書を批評する。さくらの目には、この内容を記載するのに、A4用紙12枚(表紙、背表紙で2枚)は余りに少なく映った。
文字が小さくて多い、俗に言うマイクロフィルム≠フようだ。というわけではない。
図は効果的に使っているし、紙一面文字がびっしりというわけでも、文章の構成が下手というわけでもない。
たださくらには、行間からにじみ出る文字にならない声≠ェ聞こえて仕方ないのだ。
つまり、なのはの言いたいことがまだあるような気がしてならないのだ。
この寸評に、なのはは頭を掻いて

「う〜ん、そうなんだけどね。今まで教導してきたみんなにこういうのをを渡してるんだけど、だいたいこれぐらいじゃないと実戦で活用しきれないん
だよねぇ・・・・・・」

と困った顔。
どうやらこの20ページというのは経験則に基づいた数字らしい。
確かに貰った方も、多すぎて覚えきれなければ扱いきれないことになる。
ならばまとめた方が覚えやすいかもしれない。それに彼らにはまだ半年の教導期間があるのだ。

(覚える時間がそんなにないティアナさん逹にはちょうどいい分量なのかもしれないな)

さくらは思い直し、文書に目を戻した。


──────────


「なるほどな。あいつらしい理由だ」

思い返すと、アルトの冊子も確かに要点のよくまとまった構成で、重要事項を後で思い出すのに苦労した覚えがなかった。

「はい。それに時間が長かったせいか内容がよく練ってあって・・・・・・ちょっと、妬いちゃいますね」

さくらがいたずらっ子のような笑顔を作る。

「そうだな。あいつらに、なのはの優しさが伝わってるといいんだが・・・・・・」

アルトの呟きにさくらも

「そうですね・・・・・・」

としみじみ頷いた。

(*)

ティアナが目を開けるといつもの天井が見えた。
二段ベッドの上の段≠ニいう名の天井は、ティアナの現(うつつ)への帰還に気づいたのか、ガタガタ揺れる。

「おはよ〜、ティ〜ア〜」

65 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:21:25.81 ID:Hq9z15sH
顔を横に向け、天井の端から伸びる逆さの相棒の顔を意識のはっきりしない頭で数十秒眺める。するとやっと脳の言語中枢がアクセス状態になり、
相棒の言った言葉の意味が、頭の中で固まる。

「・・・・・・おはよう。あんた、顔真っ赤よ」

「それはティアがなかなか返事してくれないからぁ〜!」

彼女はそう言って頭を上に引っ込めた。
ティアナは起き上がろうとして、自らの右手が枕の下に入っていることに気づいた。

「・・・・・・あれ?」

引っ張ってみたが抜けない。
だが彼女の朦朧とした頭はなぜか?≠ニいう問いを考えることを放棄し、枕に乗った頭を浮かせて抜くことに専念した。
すると、ゆっくり動き出した。
スーッ≠ニいうシーツと枕を摩擦する音と共に出てきたのは縛ってあるのではないか?と、疑いたくなる程しっかりと握られた拳銃形態のクロスミ
ラージュだった。
確か昨日、ベッドの中で目視による最終点検をしていたうちにウトウトしてそのまま眠ってしまったらしい。
初陣でゴーストを前に、クロスミラージュを落としてしまったことに悔しい思いがあった。そのため寝ながらも体の一部のように握り続けていられた
のはこれまでの訓練の賜物だろうか?
ともかく、それを見て始めてティアナの意識は覚醒した。

(そうだ。今日はXデーだったわね)

ティアナはムクリと起き上がると、頬を叩いて気合いを入れ直し、洗面台へと向かった。

(*)

「―――――はい、それでは今月の定期模擬戦、行ってみようか!」

「はい!」

市街地になった戦場(訓練場)は今、ティアナとスバル、そしてなのはしかいない。
ライトニング分隊とヴィータは遠方のビルから観戦していた。

「それでね、今日はEXギアのアルトくんが参加しま〜す」

なのはの一言に唖然とする2人。それを尻目にアルトがなにくわぬ顔で参上した。

「よぅ、俺も混ぜてもらうぜ」

「何で、何でですか!?」

「安心しろ。俺は直接、戦闘には関与しない。ただ、今日はホログラムの調子が悪いだろ?」

頷く2人。今日はアルトの言う通り、静止物の具現化は問題ないのだが、ホログラム製の模擬弾などの高速移動物の映りが劣悪だった。
そのため午前、午後の訓練は共に予備の実弾(魔力が封入されている実戦用のカートリッジ弾)で行われていた。

「それでスバルが殴り合う分にはいつも通りなんだが、なのはもティアナも非殺傷設定で戦うことになる。だからもしもの時の保険だそうだ」


66 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:23:28.95 ID:Hq9z15sH

アルトはEXギアを着けながら器用に肩を竦めて見せた。
以前にも記述したように、非殺傷設定と言えどAランクを越えるリンカーコア保有者の砲撃は危険なのだ。
なのはのAA°奄フ砲撃をもし、シールド等で減衰せず直撃を受けた場合、被弾場所には2度の魔力火傷を負うことになる。
魔力火傷は全身に3度で致死レベルなため、死にはしないが危険と言わざるをえない。
そこでアルトは負傷の場合の緊急搬送などの保険と言うことらしかった。
とりあえず彼の戦力外通知に安心した2人は

「バリアジャケットに着替えて」

というなのはの指示通りにすると、相棒とアイコンタクトした。
アルトが空中に飛び上がると全ての準備が整う。
ジリジリと夏の暑い日射しがホログラムのアスファルトを、建物を、そして生身のティアナ達を熱する。

「それではよーい、始め!」

(*)

ヴィータやフェイト、ライトニングの2人にアルトのおまけとして来たさくらは、ビルの中から観戦していた。
ホログラムとは便利なもので、本物と同じように太陽からの赤外線を完全にシャットアウト。また冷房がつくためバリアジャケットをしていなくともずい
ぶん涼しかった。
そして今そこでは模擬戦の様子が手に取るようにわかった。

「・・・・・・お、クロスシフトだな」

ヴィータがホロディスプレイに映るティアナ達を見て呟く。

『クロスファイヤー、シュート!』

その名の通り両腕をクロスして放たれた大量の誘導弾は上空に居座るなのはへと殺到する。

「・・・・・なんだ? このへなちょこな機動は?」

「コントロールはいいみたいだけど・・・・・・」

ヴィータとフェイトが首を捻る。
それらは、『とりあえず数だけでも揃えてみました』と言って当たるかどうかを度外視して放たれているように思えた。

「たぶんなのはさんの回避行動を抑制するのが目的ではないでしょうか」

「・・・・・・まぁ、そうか」

さくらの推測は妥当だった。これがスバルが要のクロスシフトAであるなら、なのはの回避機動の制御は必須であり、納得できる。
しかし─────

(こんな露骨な作戦をアイツがなのは相手にやるのか)

ヴィータは引っ掛かるものを感じながらもなのはに対して本当に強行突破し、弾かれたスバルを眺める内、

(新人ならそんなもんか)

67 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/12(日) 23:26:04.21 ID:Hq9z15sH
と疑念を打ち切った。

(*)

「こらスバル、ダメだよ!そんな危ない機動!」

弾かれ飛んでいったスバルを、口で追い打ちする。

「すみません!でも、ちゃんと防ぎますから!」

彼女はそう返すと戦闘機動を再開した。
背後から風を切る音。それに任せて見もせずに後方から来た誘導弾をひょいと回避する。
そうして今まで存在を忘れていたもう1人の敵戦力を思い出した。

(ティアナは?)

首を回して周囲を見渡すと、左目の視界の一点が一瞬真っ赤に染まった。
残像による視界不良はすぐに回復し、ビルの屋上から伸びる赤い一条の光線が目に入った。
その先にはこちらをレーザー照準し、見慣れないターゲットゲージで狙うティアナの姿があった。

(砲撃!)

長距離スナイピングはさくらの十八番であり、彼女がそれを教えたかも・・・いや、教えるよう仕組んだ≠フだから使ってくるだろう。さくらの訓練
を認めたのもその目的を達成するためでもあったからだ。

(ちょっと失敗だけど・・・・・・うん、まぁ合格かな)

レーザー照準によるロックは正確だが、こちらに発見されるリスクを増やし、事実こちらが発見できたので失敗だ。
だがティアナなら通常のデバイス補正でも十分当たるだろうし、その場合不意討ちなので十分勝算がある。
ティアナ達は私のシールドを絶対破れない聖壁のように思っているようだが、実はそうじゃない。
2.5ランクダウンした私は、すでに成長したスバルの攻撃を受け止めるのに精一杯で、続く砲撃を受け止めるなんてとてもじゃないけどできない。
だから今回の模擬戦は自信が付くように普通に頑張れば十分自分に一撃を与えることができる≠謔、な戦力配分がなされていた。
そして絶妙なタイミングでスバルが再び迫る。
私はティアナを見なかったことにすると、スバルに相対した。
こちらが放つ誘導弾を、スバルは機動と迎撃で乗り切り殴りかかって来る。

「うぉりぁぁぁ!」

打たれたその腕は轟音とスパークと共にシールドに当たり、進攻を止めた。

(さぁ、今だよ!)

なのはは待ったが、なかなか撃って来なかった。

(*)

こうして、彼女の思いを他所に、ティアナ達の作戦が最終段階を迎えた。

68 :マクロスなのは ◆fN6DCMWJr. :2011/06/13(月) 00:01:39.92 ID:Kc9g8O1M

(*)

ティアナは幻影を連続続行にすると、自身に光学迷彩とクロスミラージュのOT『アクティブ・ステルス・システム』を作動。隠れていたビルの1階から出る。
あれほど

『ティアナ・ランスターここにあり!』

とわざわざレーザーポインターで示したのに、気づいてもらえない≠ニは。
自分がここにいないという引き付けが十分でないかもしれないが、予想通りの場所でスバルと相対している今が好機だ。
ティアナはアンカーを2人の相対している上空のウィングロードに打ち込み、巻き上げて急速に上昇していく。
まもなく幻影は解除されるだろうが問題ない。何しろあの幻影に気づいていないのだから。
そしてついに2人を通り越して最高点へ。
ティアナは右手のアンカーを頼りに天井(ウィングロード)に足を着くと、左手のクロスミラージュを2発ロード。魔力刃を展開する。
激突した2人は1歩もその場を動かない。
ティアナは自らを言い聞かせるように呟く。

「バリアを抜いて、一撃!」

最終目標地点をロックオン!
ティアナは意を決し、アンカーを解除すると同時に天井を蹴った。


この日、白い悪魔は確かに降臨したという・・・・・・


To be continue ・・・・・・


以上投下終了。
ありがとうございました。


69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/13(月) 18:41:26.92 ID:Bvz90hiP
投下乙です!

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/13(月) 21:45:23.98 ID:WrCbVlEA
みなさん投下乙です

>>40
取り返しのつかない事にならないと良いけど、こういう場合ってたいてい最終的に……

>>68
ああ、次回はあそこか……

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/14(火) 10:25:56.50 ID:6IqXMRfh
マクロスの人乙
なのはさん
わざと食らうように手心を加えるというのもこれはこれでなんかひどいな・・・

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/15(水) 22:01:28.95 ID:nx3fdfyn
ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira008248.jpg

ガンダムとクロスするならこれが最適。

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/15(水) 23:46:47.68 ID:Thr5yaWY
アロウズが世界征服を狙う悪の組織になってて、なぜか金ピカ大使が所属してて、
何故か最終決戦地がアクシズだったりする劇中劇じゃないかw

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/16(木) 00:59:23.81 ID:l3yNmUKn
>73
SEEDのポーズで決めたら即撃墜されたり
MSの振りをしたグレンガランが出てくる作品でもある。
あと黄金大使が乗っている機体はアルヴァトーレじゃなくてスペリオルドラゴン。

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/16(木) 07:03:26.98 ID:K+pYQPOh
>>74
あれは盛大に吹いたな

そういやガンダムも聖竜騎士ゼロガンダムとか元ゴッド丸な爆凰とか絡みやすいと言うか絡みが美味しいのがSDには多い

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/16(木) 11:48:40.32 ID:Uh9XVzKW
>>72
着ぐるみなんだぜ、これ・・・

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/16(木) 15:29:56.14 ID:Jl5tAZhA
>>76
じゃあバリアジャケットでイケるな!

78 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 22:10:07.15 ID:uvedugEc
23時45分に『上条当麻がそげぶするようです。』の最新話を投下させていただきます

79 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:46:34.54 ID:uvedugEc
では投下を始めます。


80 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:47:31.41 ID:uvedugEc
上条当麻がその鬱展開(げんそう)をぶち殺しにいくようです。
第三話『彼女を縛る幻想』


フェイトとアルフは困った顔で男を見下ろしていた。
フェイトからすれば、母の願いを阻害する為に外部勢力が派遣した侵入者やもしれぬ男。
アルトからすれば、大切な主に全裸で襲いかかっていた男。
どちらにせよ良い印象はない。
特にアルフからの印象は、フェイトからある程度の弁解はあったものの最悪をぶっちぎりで更新してしまっている。
アルフは感情そのままに男を追い出そうとしていた。
大規模な次元間移動が可能な転送装置へと、気絶中の上条当麻(一応服代わりの毛布を着用させて貰った)を押し込み、フェイトの制止も聞かずに術を発動。
適当な次元世界へと追い出してしまうつもりだったのだが―――どうにもおかしい事態となった。
転送魔法が発動しなかったのだ。
ウンともスンとも云わない転送装置にアルフとフェイトも首を傾げるが、その理由は分からない。
結局、男を部屋へと連れ戻しその処遇について相談していた所だった。

「コイツの事どうすんのさ、フェイト」
「とりあえず目が覚めるまでまで待ってみよう。話を聞いて、母さんの邪魔をするっていうなら、私が何とかするよ」

一抹の警戒を宿らせた瞳で、フェイトは上条の事を見ていた。
フェイトの拠点たる『時の庭園』は、外部からの侵入に対して充分な対策が練られている。
それを易々と突破し、『時の庭園』の主たるプレシア・テスタロッサにもバレていない現状。
男の存在は警戒に値した。
加えて、自分のバリアジャケットをいとも容易く砕いた『力』。
ジャケットがパージされる様子もなければ、強力な魔法攻撃を受けた様子もなかった。
ただ男の右腕が触れただけ。
それだけでバリアジャケットは結合を失い、宙へと砕け散った。
更には、通常ならばバリアジャケットの解除と共に起動する筈の衣服の復元機能も発動しなかった。
だからこそ、全裸でのご対面となった訳だ。
その時の事をバルディッシュに問い掛けるも、彼自身理解が追いつかない事象だったという。

「ん……う……」

二人の視線の先で、床に寝かされている男がもぞもぞと動く。
どうにも覚醒しかけているらしい。
フェイトは再度バルディッシュを起動させ、臨戦態勢を整える。
その横ではアルフが拳を鳴らしていた。

「イン……デックス……」

インデックス。
一度目の覚醒前も、男はうわ言のようにその単語を口にしていた。
付箋という意味を持つその単語が、彼にとってはよっぽど思い入れのある名詞なのか。
当然ながらフェイトには分からないし、大して興味もなかった。
ただ今は母さんの害敵になるかもしれぬ存在に、淡々と対処するのみであった。

「う、う……あれ、此処は?」

そして、再び男は目を覚ます。
謎の『力』に警戒しながら、フェイトはバルディッシュを突き付けた。
数十分前に行われたやりとりが、殆ど同様に繰り広げられる。

「あ」

フェイトの姿を視界に捉えた男が、表情を固める。
男の脳裏に映し出される光景。
全裸の自分が、何故か一瞬で全裸となっていた少女の胸を触り覆い被っている、その光景。
全てを思い出した男の行動は迅速かつ無駄のないものだった。

81 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:48:42.52 ID:uvedugEc
「す、すみませんでしたあ!!」

眼前の少女が自分より一回りも二回りも年少である事など、男には関係なかった。
手を折畳み、膝を曲げ正座の態勢を取り、上体を倒す。
なりふり構わず、男は速攻で日本人ならば誰もが知る態勢を取った。
土下座。
男の行動は謝罪から始まった。







「ってな訳で、目が覚めたらここにいたんだけど……」

超速の土下座から数分後、男は自身についてを細々と語らされていた。
物凄い剣幕で睨んでくる獣耳のコスプレイヤーに、無表情で武器を突き出し話を促す少女。
アウェー極まる状況に男も逆らう事ができずに、これまでの経緯を語っていった。
勿論、第三次世界大戦の核心に迫ることや、大天使のことやらは黙っていたが。
取りあえずは、探し人を求めてロシアへと赴き、そこで世界大戦に巻き込まれて命からがら逃げていたら、謎の飛行物体が向かってきて衝突したらここにいた、という話にしておいた。
誤魔化しきれるかは甚だ疑問だが、相手がどんな人物なのか分からない以上、第三次世界大戦の渦中にいたという真実を話すのは余り宜しくない気がする。
そう判断し、男は語りを終えたのだが―――やはり相手方の反応は良くなかった。
明らかに怪訝な視線を、男へと向けていた。

「つまりあなたはどうやって此処に辿り着いたのか、ここが何処で誰がいるかも分からないってこと?」
「まあ、そうだな。本当に気付いたらここに居たんだ。その間の事は何も分からない」
「はっ。こんな奴の話なんか聞く事ないさ。こいつはただの不法侵入者。ボコって適当に外へ放っぽっとけば良いんだ」
「は、ははは……それはちょっと……」

男―――上条の言葉に、やっぱり二人は警戒を弱めない。
アルフに至っては、その半端じゃない敵意を隠そうともしていなかった。
余りの居心地の悪さに上条は視線を泳がせながら、顔を引きつらせる。
上条としては、その発言の一つ一つが気が気じゃない。
本当に何もかもが分からない状況なのだ。ここが極寒のロシアならば、この状態で外に出されただけで死んでしまう。
出来れば丁重に事を運びたいところであった。
何とか彼女達の警戒を解かなければ、と思案したその時、上条は気付いた。
フェイトの左手に巻かれた包帯と、服に覆われていない手足に走る薄い傷跡。
よくよく見れば傷跡は手足の至る所に存在した。
この様子だと服の内側にまで傷はあるように思える。

「お前、怪我してんのか?」

元来のお人好しな性格ゆえか、気付けば上条は問い掛けていた。
思いがけぬ問いに、フェイトは驚いた様子で目を開く。
それは隣に立つアルフも同様であった。

「大丈夫かよ。全身に傷があるみたいだけど」
「……あなたには、関係ない」

そう言うとフェイトは白色の外套で身体を隠してしまう。
表情の警戒は相変わらずだったが、僅かな変化も見えた。
痛みに耐えるように眉間へ皺を寄せる。
それは、肉体的な痛みというより精神的な痛み。
フェイトは数時前に執行された折檻を思い出し、俯いた。


82 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:49:46.69 ID:uvedugEc
(切り傷か……? 戦いで負傷したって事か。なら、やっぱこいつらは魔術師なのか?)

何も知らない上条は、その傷が戦闘によるものなのかと予想付けていた。
フェイトが使用した謎の異能もその予想の根拠となっていた。
異能を操り身体中に傷を負う程の戦闘をしていた者、とすれば寸前まで第三次世界大戦の渦中にあった魔術サイドの人間か。
終戦と共に戦闘も終わり、帰還の途中にでも拾ってくれたのだろう。
『ベツヘレムの星』落下地点の側にいた魔術サイドの人間とすれば、上条も関わりの深いイギリス清教の人間という可能性が高い。

(なら、ステイルとかに連絡を取って貰えれば警戒も解けるんじゃないか? おお、ようやく光明が!)

などと考えながら、上条が口を開く。
ステイルや神崎の名前でも出して、自分が危険人物でないと証明しようとする上条であったが、寸前で邪魔が入る。
フェイトと上条の間の空間に、50センチ四方程の光の壁が出現したのだ。
魔術と科学の両方にある程度精通した上条が、今更これくらいの事で驚くことはない。
ただ余りの間の悪さに、思わず苦い顔をしてしまう。

『フェイト、何をしているの』

まるで宙に浮かぶテレビ電話だな、と思いながら上条は光の壁を見ていた。
光の壁には一人の女性が映し出されており、フェイトと会話を始めている。
生気の少ない、虚ろ気な表情であった。
何処となくフェイトと似ているようにも見えるが、気のせいのようにも見える。
状況の掴めない上条は、ただこれ以上事態が悪化しないように願うだけであった。

「す、すみません、母さん。その、侵入者らしき人物を発見して……」

だが、上条の願いも虚しくフェイトは正直に現状を告げてしまう。
上条のいる方へと視線を動かし、画面内の女性に確認を促す。
フェイトの視線を追って、女性の視線が動いていく。

『フェイト……』

次なる女性の言葉は、寒気を覚える程の冷たさを孕んでいた。
ソクリと、上条の肌が粟立つ。

『誰も、いないわよ?』

フェイトが目を見開く。いや、フェイトだけでなくアルフも上条さえも驚愕に目を見開く。
画面の中の女性は、上条の存在に気付いていなかった。
視線は、上条を視界にとらえるに充分な位置の筈だ。
ただ、その姿を視認していない。
これには、場にいる誰もが驚きを隠せない。
特にフェイトの驚きよう、その焦りようは群を抜いていた。

『……何であなたはいつもそうなの? 母さんの言う事も聞かないで、母さんを困らせてばかりで……あなたは母さんのことが嫌いなの、フェイト』
「ち、違……」
『何が違うの!? 言う事もきかないでこんな事ばかりして! 言い訳するくらいなら、早くジュエルシードを集めてきたらどうなの!?』

しどろもどろになりながらも返答しようとしたフェイトを女性の一喝が阻止した。
その剣幕たるや、直接向けられた訳でもない上条さえも恐怖を覚える程だ。
ビクリと肩を震わせフェイトが俯く。
そんな主の姿を見て、歯ぎしりをするアルフ。怒りの籠ったアルフの視線は画面内の女性へと向けられている。
どうにも事態が読めていない上条にも、その剣呑な空気は感じ取れた。
女性の異常なまでの怒り様に、上条も思う所がない訳ではない。
だが、何もかもが分からない現状では、流石の上条も言葉を挟めない。


83 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:51:35.59 ID:uvedugEc
「……ごめんなさい、母さん。直ぐに第97管理外世界へと発ちます」
『……分かれば良いのよ。早く行ってきなさい』

そして上条を置いてけぼりにして女性とフェイトの会話は終わった。
光の壁が消え、元通りの何もない空間へと戻る。
残された気まず過ぎる静寂に、上条はどうすれば良いのか分からない。

「その……何か、悪い……。俺が原因で親と喧嘩になっちまったみたいで」

俯くフェイトとアルフを交互に見て、思わずといった様子で上条は謝っていた。
魔法を以て行われていた通信に上条当麻の『幻想殺し』が作用した結果が、先の擦れ違いであった。
魔法を介した通信に『幻想殺し』が反応し、主たる上条当麻の姿を認識させなかったのだ。
なので上条の謝罪があながち間違っているという訳でもない。

「どうする、フェイト。動けないよう痛めつけて部屋に縛っとく?」
「は!?」

話が唐突に物騒なものへと変化し、上条は思わず目を剥いた。
結局、先の通信により状況は悪化してしまった。ようするに時間切れというやつだ。

「今お前に構ってる暇はないんだ。面倒だから強制的に大人しくなってもらうよ」
「いや、だからってそれは流石に急ぎすぎではないでしょーか!? 俺の言う事が信じられないのならステイルや神崎に連絡取ってくれ! そうすりゃ俺は怪しい奴じゃないって分かる筈だ!」
「ステイル? 神崎? そんな名前聞いた事もないね」
「……あっれー? じゃ、オルソラとかアニェーゼは?」
「知るか」
「ってことは、上条さんの予想は大外れだったって事でせうか? ……あっれー!?」
「……もう良いか? 心配すんなって、痛いのは一瞬だから」

やる気満々といった様子の獰猛な表情で歩み寄ってくるアルフに、上条も本格的に危機感を覚え始めた。
これはマジでやばいんじゃないか!? と焦った思考を回しながら上条が後ずさる。
後方は壁で、唯一の出口はアルフとフェイトの後ろ側だ。
数多の不幸から上条を救ってきた『逃亡』という切り札も、この状況では使用できない。
上条当麻は忙しなく視線を動かしながら、如何にして現状を切り抜けるかを考える。

「じゃ、寝てな」

だが、時すでに遅しといった奴だ。
気付けばアルフは床を蹴っていて、上条も目を見張る速度で距離を詰めていた。
使い魔たる獣人の顔で上条の視界が染まる。
身体に詰まった疲労感に、上条の反応は遅れる。
防御の姿勢すら碌に取れないままアルフの拳が徐々に迫ってきて―――そして、

「待って」

フェイトの声が拳を止めた。
凛とした瞳でアルフを見詰めながら、フェイトは上条の側へと近づいてくる。



84 :リリカルTRIGUN ◆96GgaZtJ22v. :2011/06/17(金) 23:53:40.75 ID:uvedugEc
「……私が、やるよ。アルフが汚れ役になる必要はない」
「フェイト!」
「分かってる。たぶんこの人は悪い人じゃないよ。でも拘束しておかなきゃダメなんだ。だから、私がやる」


その選択は、決意に満ちたものであった。
やっぱり事情が掴めない上条は、もしかしたら助かるのかもと願望めいた予想を覚える。
そんな上条の視界が、今度は金色の光に染め上げられた。
反応する暇もない。フェイトが振るった魔力刃が上条の身体を斜めに斬り落とす。
三度目の意識の暗転に、やっぱり上条は声も上げられない。

「……ごめんね」

ただ、暗闇の中で上条は聞いた。
フェイトの、自責に満ちた贖罪の言葉を―――。


こうして『幻想殺し』が意識を喪失し、魔法少女たちの物語が再開する。
それは最後に救いはあるものの、やはり悲劇と呼ぶに相応しい物語。
だが、今この物語に一石が投じられた。
『幻想殺し』上条当麻。
彼の存在により物語は変化を見せる。
それは最後に救いがもたらされるものの、やはり悲劇と呼ぶに相応しい物語。
変化は大きなもので、しかしながら悲劇という結果に変わりはない。
とある世界で様々な人間に多大な影響を与えてきた上条当麻。
この世界で彼の拳はどんな『幻想』を打ち砕くのか。
今はまだ、誰にも分からない。





これにて投下終了です。

85 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 19:19:47.00 ID:Uqf+nEpn
リリカルTRIGUN氏投下乙です!
本編は、ヴァッシュが段々と鬱になっていきますね……
彼がこれからどう乗り越えていくのかが、とても楽しみですね。
自分は氏に影響されて、トライガン原作を全巻読んでその素晴らしさに気づけました。
氏には非常に感謝しております。

そして禁書の方もGJです!
幻想殺しでフェイトちゃんのバリアジャケットが……上条さんの不幸は相変わらずですねw
かと思えば、プレシアの事を知ってしまってこれからどうなるか。
彼がどんな風に、鬱展開(げんそう)をぶち殺してくれるのかが楽しみです。

氏もお忙しいかもしれませんが、今後とも頑張ってください!
応援してます!

そして自分も、ディケイドForceの最新パートを21時より投下させていただきます。

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/18(土) 20:46:40.09 ID:E0V/uGgO
GJ!
でもよく考えたら元着ていた服はどうなったんだろ?
フェイトは素っ裸からBJ着装してるのか。

87 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:56:07.24 ID:Uqf+nEpn
それでは、そろそろ時間なので投下させていただきます


 全知全能の神が生み出す、アンノウンハンド。
 数え切れないほどの異世界宇宙より集められた、あらゆる悪意が蠢いている空間。
 時に誰かを欺き、時に誰かを滅ぼした者達。
 自我を持たずに己の本能のまま、破壊を繰り返した邪悪。
 悪質な陰謀によって、多くの希望を踏みにじった邪悪。
 古今東西、長きに渡って存在し続けた悪が、この宇宙全てを埋め尽くしていた。
 その闇の中で、一つの悪意が立っている。
 腰にまで伸びた紫色の長髪、植物の蔦を思わせるような髪留め、雪よりも白い肌、蛇の如く鋭い瞳、二メートルにも届きそうな細い巨体、それを包む黄緑と黒と金と白の四色を基調としたローブ。
 元は管理国家ラビリンス総統、国家管理コンピューターメビウスが球根植物のDNAより生み出した生命体。
 北 那由他という偽りの名前を持つ、アンノウンハンドによって再び命を得たラビリンス最高幹部、ノーザ。
 彼女は、目の前のモニター画面を見つめていた。
 そこに映し出されているのは、アンノウンハンドの生み出した悪意とそれに抗う者達の戦い。
 アルハザードに送り込んだ同胞達と、進入した無粋者達。
 別の異世界宇宙に進撃した悪意達と、それに立ち向かう者達。
 この宇宙に潜り込んだ、一人の『ウルトラマン』。

「フフフッ……揃いも揃って無駄な事を」

 戦いが映し出されたモニターを見ながら、ノーザは嘲笑を浮かべる。
 ここは決して戦いの影響を受けない、絶対なる神の加護を受けた暗黒。
 何者も入る事は出来ないし、何者にも壊す事が出来ない。
 そんな場所で眺められる、愚か者達が潰れる様。
 出撃命令がまだ出ていないため、この至福の時間を堪能出来る。
 今は足掻いているが、いつまでそれが持つか。
 そして、奴らに守られているだけの人間達はどんな絶望を見せるか。
 人の不幸は蜜の味。
 それを考えただけでも、ノーザの感情は高ぶっていた。

「キュアピーチ……果たしてどこまで持つかしらね」

 冷たい瞳の先にある物。
 ダークザギによって新たな命を与えられた前から、数え切れないほど煮え湯を飲まされた相手。
 幾度となく、ラビリンスの邪魔をしてきたキュアピーチ。
 『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』やディバイダー保有者と共に、このアルハザードに乗り込んできた。
 恐らく、今度も邪魔をするつもりだろうが、無駄な事。
 アルハザードには、究極の闇が向かったのだから。

「彼は本当に暴れ出したら、手を付けられないのだから……怖い怖い」

 モニターに映る者達に向けられた、ノーザの嘲笑。
 しかし、それは決して全てが冗談などではなかった。
 彼女自身、送り込まれた究極の闇には、少なからず畏怖を感じている。
 創造主が闇より作り出した、グロンギの王。
 聞いた話によると、彼は元々の世界では数多くの命を奪っていたらしい。
 人間だろうと同族だろうと、一切の区別をせず。
 ラビリンスにもそのような人材がいれば、FUKOを一瞬で貯める事が出来たかもしれない。
 だが、問題は彼の素性だ。
 あのような存在を抱えて集団行動など、出来るわけがない。
 最もそんな事を、考える必要など無いが。

88 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:56:53.24 ID:Uqf+nEpn
「光栄に思いなさい、キュアピーチ……偉大なるダークザギ様の生け贄に、貴方達が選ばれたのだから」

 宇宙を支配するアンノウンハンドの如く、暗くて冷たい声。
 そして、残酷に笑う。
 ノーザが浮かべる笑みに、人間味と言った物は一片たりとも感じられない。
 魔女の唇は、刃物のように鋭く曲がっていた。
 『仮面ライダー』達に脅威を振るった怪人達の中でも、究極と呼ばれる白きグロンギ。
 闇の中で浮かぶモニターには、魔神がアルハザードに向かっている様子が映し出されていた。




「はああぁぁぁぁぁっ!」
「ウラアァァァァァッ!」

 闇の中で響き渡る、二つの咆吼。
 振るわれる、武器が握られた二つの腕。
 激突する刃。
 甲高く鳴り響いた、金属音。
 僅かに飛び散る、火花。
 果てしない闇が広がるアルハザードでは、未だに戦いが続いている。
 別の宇宙に進行しようとする悪意と、それを食い止めようとする者達の激戦が。

「だあっ!」
「オラアッ!」

 ディケイドとビルゲニアの、叫びが重なる。
 その瞬間、互いの得物が激突した。
 ディケイドが片手で持つ、ライドブッカー。
 ビルゲニアの両手に握られた、ディバイダー928とビルセイバー。
 神速の勢いで振るわれる全てが、闇を切り裂きながら、互いの敵に迫る。
 しかし、一つたりとも相手に衝突する事はない。
 異世界を生きる仮面ライダーの力が込められた剣。
 世界を殺す毒と称された剣。
 ガイアメモリの力によって生み出された剣。
 全てが両者の間で、衝突するだけに終わってしまう。
 されど彼らは、止まらなかった。
 形状の違う双剣を振るって、ビルゲニアは敵を両断しようとする。
 だが、ディケイドは後ろに飛んで空振らせた。
 そこから反撃の一撃を、横に振るう。
 次の瞬間、ビルゲニアは魔剣でそれを弾いた。
 続くように、ディバイダー928の刃先を素早く突き出す。
 迫り来る銀色の刃を前に、ディケイドは微かに身体を横へずらした。
 結果、ディヴァインアーマーの肩部を掠るだけになる。


89 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:57:55.02 ID:Uqf+nEpn
 直後、ビルゲニアは硬直した。
 ほんの一瞬の隙を、ディケイドが見逃す事はない。
 彼はライドブッカーを握り締めて、素早く振るった。

「ウグッ!?」

 右斜め上に、ビルゲニアの胸板に傷が刻まれる。
 衝撃は鎧の下にも伝わり、微かな火花を飛び散らせた。
 敵の動きが止まったのを見て、ディケイドは追撃を加えようとする。
 しかし、ライドブッカーはビルセイバーによって阻まれた。
 そこからビルゲニアは、背後に飛んで距離を取る。
 離れた矢先に、ディバイダー928の銃口をディケイドに向けた。
 銃剣を握る右腕に、魔力を込める。
 そのまま力強く、引き金を引いた。
 すると甲高い銃声と共に、魔力で構成された弾丸が発射される。
 闇を切り裂きながら、高速の勢いでディケイドに向かった。
 だが着弾する直前、彼は素早く横に跳躍する。
 それによって回避に成功し、弾丸はディケイドの脇を通り過ぎて、地面に激突。
 爆音と衝撃が発生して、辺りが震えた。
 それに構うことはせずに、ディケイドは敵を睨み付ける。
 対するビルゲニアは、笑みを浮かべていた。
 血に飢えた魔獣のような狂気を、瞳に込めて。

「ハッハッハッハッハァッ! 面白いな『仮面ライダー』!」
「そうかよ!」

 凶暴な笑い声を吹き飛ばすように、ディケイドは一喝した。
 彼の反応に満足して、ビルゲニアの感情は高ぶっていく。
 そして、地面を勢いよく両足で蹴った。
 常軌を逸した速度で、ディケイドに迫っていく。
 目前にまで迫った瞬間、ビルセイバーが振るわれた。
 鋭い刃を立ち向かうために、ディケイドもライドブッカーを掲げる。
 激突して、刃は甲高い音を鳴らした。
 力の拮抗が始まるも、次第にディケイドは押されていく。
 純粋な腕力では、ビルゲニアの方に分があった為。
 それでもディケイドは、何としてでも押し返そうとしていた。
 必死に藻掻く彼の姿を嘲笑いながら、ビルゲニアは隙となった脇腹を見つめる。
 そこを目がけてもう片方の腕に握った、ディバイダー928を振るった。
 ディケイドにそれを避ける手だてはない。
 魔師殺しは容赦なく、彼に新たな傷を刻んだ。

「ぐあっ!?」

 衝撃と痛みが走り、ディケイドの身体は揺らぐ。
 ビルゲニアは体勢が崩れた彼の腹部に、鋭い蹴りを放った。
 不安定な所に重い右足を受けた事で、ディケイドは悲鳴と共に吹き飛ばされていく。
 そのまま地面に叩き付けられて転がるが、すぐに起きあがった。
 そして、ビルゲニアを見据える。
 一瞬の時間が経過した後、ディケイドは地面を蹴って特攻した。


90 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:58:33.83 ID:Uqf+nEpn
「アアアアアアアアッ!」

 疾走と共に、腹の底から咆吼を発する。
 シンケンレッドは携える刀を、全力で振るった。
 大気を切り裂きながら、輝く刃はムシバーンに向かう。
 しかし、それは呆気なく弾かれた。
 ムシバーンが振るった得物によって。
 激突の瞬間、まるで電流が流れたような振動が、シンケンマルを通じて両腕に流れる。
 すると、衝撃によってシンケンレッドの動きが止まった。
 それを見て隙が出来たとムシバーンは確信し、邪悪な笑みを作る。

「デアアァァァッ!」

 そして力のまま、エネルギーの剣を振るい続けた。
 神速の勢いで次々と繰り出される、重い斬撃。
 迫り来る刃にシンケンレッドは対抗するが、捌ききれない。
 少しの回避を成功しただけで、ほとんどが彼の身体を切り刻んでいった。
 赤い衣から、次々と火花が飛び散る。
 全身に激痛が生じるが、歯を食いしばって堪えた。
 反撃のためにシンケンレッドは、刀を強く握り締める。
 彼は勢いよく、シンケンマルを振るった。
 すると二つの刃は激突し、シンケンレッドとムシバーンは衝撃で後退する。
 彼らに、僅かながらの距離が開いた。

「ッ!?」

 その直後、一本の刃が高速で接近してくる。
 振り向きながら、シンケンレッドは両腕を掲げた。
 シンケンマルと襲いかかった剣による、激突音が響く。
 彼の目前には、ガオウがいた。
 幾つもの棘が突き出た刃、ガオウガッシャーを持って。
 輝きを放ちながら、二つの武器は互いに軋む。
 互いが互いを突き飛ばそうと、力比べを行っていた。

「オラアッ!」

 しかし、拮抗はすぐに終わる。
 ガオウが力を込めて、両腕を前に突き出したため。
 その勢いに負けてしまい、シンケンレッドは後ろに蹌踉めいてしまう。
 それが決定的な、隙となってしまった。
 がら空きとなったシンケンレッドの身体を目がけて、ガオウは剣を振るう。
 ガオウガッシャーは凄まじい勢いで、彼の身体を切り裂いた。
 ムシバーンに負わされた傷の上に、更にダメージが溜まる。
 されどシンケンレッドは、何とかシンケンマルを横薙ぎに振るった。
 それによりガオウガッシャーと激突して、勢いを一旦止める事に成功。
 距離を取るために、シンケンレッドは一旦背後に飛んだ。

91 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:59:11.19 ID:Uqf+nEpn
「フン、この程度か? 『スーパー戦隊』!」
「こっちは全然食い足りねえぞ? 少しは真面目にやれ」

 ムシバーンとガオウは、それぞれ涼しい笑みを浮かべる。
 一方でシンケンレッドは、マスクの下で脂汗を流しながら、シンケンマルを握った。
 目の前に立つ奴らは、強い。
 恐らく、血祭ドウコクや脂目マンプクのような強豪とも、それぞれ単体で互角に渡り合える。
 それほどの力量が、感じられた。
 事実、彼の推測は正しい。
 ムシバーンはかつて、五人のプリキュアとミルキィローズを相手にしても、有利に戦えていた程の強さを持つ。
 ガオウもまた、四人の電王やゼロノスと同時に戦っても、圧倒していた。
 最も彼がそれを知る事はないし、知ったところで意味はない。

(とんでもない化け物だな……だが、引くわけにはいかない!)

 ムシバーンとガオウに脅威を感じるも、シンケンレッドは自身にそう言い聞かせる。
 今までどんな敵が現れようとも、家臣と共に打ち破ってきた。
 同じように今回も、異世界に生きる者達と共に、外道どもを斬る。
 それだけだ。
 両脇を締めながらシンケンレッドは、闇より生まれし悪魔達を睨む。
 暗闇の中では、鋭い殺気が激突していた。
 その刹那。

『KAMEN RIDE DEN−O』
『KAMEN RIDE NEGA DEN−O』

 シンケンレッドの耳に、二つの電子音声が響き渡る。
 振り向くと、戦いの場に新たなる戦士が姿を現していた。
 ディエンドライバーの力によって呼び出された、二人の仮面ライダー。
 一人は、時の運行を守り続けた戦士、仮面ライダー電王 ソードフォーム。
 もう一人は、電王とよく似た姿を持つ紫色の戦士、仮面ライダーネガ電王。

「よくわからねえけど、何だか面白そうじゃねえか! 行くぜ行くぜ行くぜえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「俺の強さは、別格だ!」

 方や大きく吼え、方や静かに呟く。
 二人は剣を構えながら、ムシバーンとガオウに突っ込んでいった。
 本来生きる電王の世界ならば、彼らは敵同士。
 しかし今は、同じように肩を並べて戦う意志を持っていた。
 だが、電王とネガ電王の間に、絆といった繋がりがあるかどうかは定かではない。

「フン……」
「ハッ、あの時の奴か…………面白え!」

 ムシバーンは、ネガ電王を冷めた視線で見つめながら。
 ガオウは、かつての自分を葬った電王を見たことで、仮面したで歓喜の笑みを浮かべながら。
 迫りくる刃を自身の得物で防いだ。
 唐突に乱入してきた二人の仮面ライダーを見て、シンケンレッドはマスクの下で呆けた表情を浮かべる。
 そんな彼の元に、ディエンドは近づいた。

92 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 20:59:46.55 ID:Uqf+nEpn

「お前……」
「助っ人参上……って所かな」

 隣に現れた男に、シンケンレッドは目を向ける。
 仮面の下では、してやったりと言うような表情を浮かべているのは、容易に想像できた。
 そのままディエンドは、二人の電王についていくように、ムシバーンとガオウに向かっていく。
 少し進むと、振り向いた。

「何をしてるんだい、殿様? 早くあいつらを倒さないと駄目なんじゃないのかな?」
「…………そうだったな」

 そう呟くと、シンケンレッドもまた走り出す。
 今は奴の真意など、考えたところで仕方がない。
 ディエンドが胡散臭いのは事実だったが、少なくとも裏切ることはしないはずだ。
 あいつは、海東大樹は士達の仲間なのだから。



「フンッ!」
「くっ!」

 弾丸の如き勢いで放たれたガドルの拳を、キュアピーチは真横に飛んで避ける。
 しかし、異形の攻撃は止まらない。
 ガドルは矢継ぎ早に、四肢をフル活用して攻撃を放った。
 打撃、蹴撃、手刀、正拳、掌底。
 グロンギの発達した身体能力による、凄まじい打撃。
 だがキュアピーチはそれら全てを見切って、回避し続けた。
 彼女もまた、プリキュアが持つ身体能力を余すことなく使っている。
 一瞬でも気を抜いてしまえば、攻撃を受けてもおかしくない。

「ダアッ!」

 やがてガドルは、左足を用いて上段回し蹴りを繰り出す。
 対するキュアピーチは、左腕を掲げてそれを防いだ。
 直後、重い衝突音が響いて、大気が振動する。
 キュアピーチは腕に衝撃を感じて、両目を見開いた。
 されど、歯を食いしばって激痛に耐える。
 そこから彼女は腕に力を込めて、ガドルの足を押し返した。
 敵が蹌踉めく一方で、キュアピーチは腰を深く落とす。

「はあっ!」

 そのままガドルの胸板を目がけて、右腕で正拳突きを放った。
 キュアピーチの拳は鍛え抜かれた肉体に、勢いよく突き刺さる。
 打撃音が響くが、ガドルは僅かにしか揺らがない。
 いくらキュアピーチが高い攻撃力を持とうとも、相手は「ゴ」に属する集団の中でもトップの実力者。
 屈強たるガドルの肉体に、ダメージを負わせる事は出来ない。

93 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:04:29.58 ID:Uqf+nEpn

「だあああぁぁぁぁっ!」

 しかしそれでもキュアピーチは、攻撃を止めなかった。
 叫び声と共に、再び拳を放つ。
 胸、肩、腹と身体の各部に目がけて、連続攻撃を繰り出した。
 無論、ガドルも黙って受けるわけではない。
 拳が来れば、それを掌で受け止めて反撃する。
 蹴りが来れば、同じように蹴りを放って弾き返す。
 肘打ちが来れば、体勢をずらして避ける。
 キュアピーチの一撃全てを、確実に捌いていた。
 かなりの素早さだが、まるで重くない。
 どれだけキュアピーチが速度を上回ろうとも、純粋な腕力はガドルに分があった。
 加えて、この世界は敵地であるアルハザード。
 よってこの打ち合いで、キュアピーチは次第に不利へ追い込まれていく事となった。
 それでも彼女は、この状況を甘んじて受け入れるつもりはない。
 ガドルの拳が、大気を振るわせながら迫る。
 それに対し、キュアピーチは横に飛んで、相手の脇に回り込みながら回避。

「やあっ!」

 勢いを保ったまま、彼女は全身を大きく捻って蹴りを放った。
 しなやかな足は、ガドルの脇腹に勢いよく叩き込まれる。
 それによって、微かに蹌踉めきながら後退するも、すぐに立て直した。
 一方でキュアピーチは、右足を地面に付ける。
 目の前の怪物は強い。でも、例え一人でも立ち止まるのは駄目だ。
 ガドルに対して抱いた戦慄を、キュアピーチは振り払う。
 しかし一方で、灰色に染まった巨大な爪が、勢いよく接近していた。

「くっ!」

 ドラゴンオルフェノクが、視界の外から襲いかかってくる。
 キュアピーチは咄嗟に振り向いて、後ろに飛んだ。
 その俊敏な反応により、ドラゴンオルフェノクの爪は空を切る。
 これまで繰り広げた戦いによって養われた経験と勘が、彼女の助けとなった。
 しかしドラゴンオルフェノクの攻撃は、止まらない。
 棍棒を振り回すかのように、二本の爪を力強く振るった。
 まるで全てを砕く竜巻のように、キュアピーチに襲いかかる。
 だが、彼女はドラゴンオルフェノクの攻撃を確実に見切り、全て避ける。
 左右に跳躍。背後へ飛んで距離を取る。
 敵との間を空けたが、気を抜く事は出来ない。
 それを狙ったかのように、ガドルが迫ってきた為。
 突撃と共に剛拳が振るわれるが、キュアピーチは左手で静かに受け止めた。
 鈍い音が響き、衝撃が小さな身体に伝わるが耐える。
 そしてキュアピーチは、一気に力を解放した。

「うりゃあぁぁぁぁぁぁっ!」
「ムッ!?」

 相手の勢いを受け流すように、彼女は左腕を払う。
 するとガドルは体勢を崩し、キュアピーチの横を通り過ぎた。
 まるで闘牛士が、血の気が盛んな牛をあしらうかのように。
 ガドルは予想外の事態によって、足元がふらつくもすぐに立て直す。
 だが、キュアピーチはそちらに目を向けていない。
 ドラゴンオルフェノクが、鋭い爪による猛攻を続けていたため。
 彼女は回避を続けるも、完全ではない。
 故に所々に、掠り傷が生まれていた。
 それでもキュアピーチは回避し続けながら、攻撃の隙を伺っている。
 しかし、それも長くは続かなかった。

94 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:08:15.62 ID:Uqf+nEpn

「フンッ!」
「きゃあっ!」

 細い体躯に、ドラゴンオルフェノクの爪が叩き込まれる。
 それによって感じたのは、鋭くて重い衝撃。
 キュアピーチは悲鳴を漏らしながら、大きく背後に吹き飛ばされていった。
 そのまま彼女の身体は、勢いよく地面に叩き付けられていく。
 数回バウンドし、全身に汚れが付着されていった。
 増していく傷と痛みに堪えて、キュアピーチは立ち上がる。
 彼女の目前では、ドラゴンオルフェノクとガドルが佇んでいた。
 しかし、どちらもキュアピーチの方を向いていない。

「ねえ、ガドル君。僕の邪魔をしないでよ」
「何?」
「君みたいな足手まといが一緒にいるなんて嫌だからさ、あっちに行ってくれないかなぁ?」

 闇の中で映し出される北崎の顔は、ガドルに嘲笑を向けている。
 その光景に、キュアピーチは違和感を覚えた。
 あいつらは仲間のはず。
 それなのに互いを思いやる気持ちや、気遣う様子が感じられない。
 むしろ、一緒にいる事に不満すら持っていそうだった。

「ふざけるな、邪魔者は貴様だ。北崎」

 その直後。
 ガドルは淡々と口を開くと、勢いよく拳を振るった。
 すぐ隣に立っていた、ドラゴンオルフェノクに対して。

「えっ……!?」

 キュアピーチは、自分の目を疑った。
 何の前触れもなく、ガドルが隣にいる仲間を殴りつけた事に対して。
 それによってドラゴンオルフェノクは揺れるも、すぐに姿勢を立て直した。
 そして、北崎の虚像が現れる。

「……調子に乗るなよ?」

 先程の戯けた様子とは違い、相手を脅すような冷たい声だった。
 その瞳も、鋭利な刃物のように鋭くなっている。
 ガドルとドラゴンオルフェノクのやり取りを見た事によって、キュアピーチは確信した。
 この二人には、仲間意識など欠片も無い。
 互いが互いの事を、邪魔と思っている。
 チームで行動するのなら、例え一人一人の能力が高くても、支え合わなければ意味がない。

(そんなことじゃ……駄目なのに!)

 プリキュアのみんなと一緒に、多くの困難を乗り越えてきたキュアピーチだからこそ、導ける考え。
 彼女は、ガドルとドラゴンオルフェノクを睨みながら、再び構えを取る。

「アアアアアァァァァッ!」

 直後、凄まじい咆吼が聞こえた。
 それに反応して、三者は皆そちらに振り向く。
 見ると、巨大な蠍となったスコルプが、口を大きく開けていた。
 その中から、奇妙な光が発せられている。
 キュアピーチはそれを見た瞬間、反射的に跳躍。
 刹那、スコルプの口より光線が発射された。

95 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:13:06.42 ID:Uqf+nEpn
 闇の中で、大気と辺りに存在する物質を焼きながら、一直線に進む。
 すると光線は地面に激突して、盛大な爆発を起こした。

「きゃああぁぁぁぁぁっ!」

 悲鳴と共に、キュアピーチは吹き飛ばされる。
 直撃を免れたとはいえ、爆発による衝撃波は彼女を襲った。
 浮遊感を感じる中で、キュアピーチは空中で身体を回転させる。
 何とか体勢を立て直しながら、地上に着地。
 少し息を切らしながらも、彼女は敵に振り向いた。
 同じように光線の直撃を免れた、ガドルとドラゴンオルフェノク。
 そして、新たに乱入したスコルプ。
 いずれも、キュアピーチを上回るほどの実力者達だった。
 だからといって、退くつもりはない。
 キュアピーチは自分にそう言い聞かせながら、走り出した。





「ダアアアァァァッ!」

 白き巨大な鎌、デスサイズが振り下ろされる。
 死神が振るう鎌は、トーマの頭部を両断しようと迫った。
 しかし標的にされた少年は、背後に跳躍。
 距離を取った事で、デスサイズの一振りは空振りで終わった。

「チイッ!」

 それを見て、アルビノジョーカーは舌打ちして、トーマに右腕を向けた。
 すると白い手の平から、禍々しい輝きが放たれる。
 直後、そこから高熱の球体が、勢いよく連続で発射された。
 エネルギー弾を前に、トーマは動く。
 一発目は、左に飛んで回避。
 二発目は、ECディバイダーを横に振るって両断。
 三発目は、再び横へ飛んで避けた。
 トーマはその直後、ECディバイダーのトリガーを引く。
 発射された魔力弾は、アルビノジョーカーが放ったエネルギー弾と衝突させた。
 二つの力は激突の瞬間、轟音と共に爆発する。
 それを見たトーマは、発生した粉塵の中を切り抜けるように疾走。
 一瞬で、アルビノジョーカーとの距離を詰めた。

「何ッ!?」
「はああぁぁぁっ!」

 トーマはECディバイダーを、横薙ぎに振るう。
 アルビノジョーカーには、それを防ぐ余裕が無い。
 故に、白き死神は肌を切り裂かれてしまった。
 ECディバイダーの一振りによって、アルビノジョーカーは後ろに吹き飛ばされる。
 そのまま地面を転がるが、すぐに起きあがった。

「人間が…………調子に乗るなぁっ!」

 アルビノジョーカーの瞳が、怒号と共に怪しく輝く。
 その直後、周囲の闇が死神に集まっていった。
 白き異形は、一瞬で暗黒に飲み込まれる。
 アルハザードを覆うアンノウンハンドは放電しながら、ゆっくりと上昇。
 しかし、暗闇は一瞬で炸裂した。

96 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:16:39.38 ID:Uqf+nEpn

「なっ…………!?」

 中から現れた存在に、トーマは絶句する。
 そこには先程まで戦っていた、アルビノジョーカーが存在していなかったため。
 代わりにいるのは、巨大な怪物だった。
 山をも越える圧倒的な白い巨体、鋭い一角が生えた頭部、左右から二本ずつ生えた四つの腕、蛇のように太く伸びた尾。
 本来ならばアルビノジョーカーが、ブレイドの世界に存在するカテゴリーキング達の力を合わせて作り出したバニティカードと、栗原天音と呼ばれる少女を利用して得た姿。
 しかし、今はアンノウンハンドを取り込んだ結果その力を手に入れた。
 超古代の絶対的な最強の力、邪神フォーティーンへと。
 その中央には、アルビノジョーカーが埋まっていた。

「ハハハハハッ、粉々になってしまえ!」

 笑い声と共に、フォーティーンは吼える。
 そして、その口から巨大な火球を勢いよく放った。
 トーマは反射的に飛んで、それらを避ける。
 火球は地面に激突し、次々にクレーターを生み出した。
 破壊で生まれる衝撃波に吹き飛ばされそうになるも、トーマは必死に耐える。

「どうした、反撃しないのか?」
「くそっ!」

 嘲笑を発するフォーティーンの攻撃を避けながら、ディバイダーの銃口を向けてトリガーを引いた。
 魔力弾は一瞬で命中する。
 だが、フォーティーンにとって蚊を刺す程度すらも感じない。
 先程とは違い、全てのスペックが圧倒的に上昇している為。
 トーマも、放たれる威圧感からそれを感じていた。

「消し飛べえぇぇぇぇっ!」

 一方で、フォーティーンは炎を放ち続ける。
 火山弾の如く降り注ぐ熱気は、容赦なく辺りを焼いた。
 反撃をする暇も、トーマには与えられない。
 ただ避ける事しか、許されなかった。

「トーマッ!」

 熱球が激突しそうになった瞬間。
 一陣の風が走り出し、トーマの体を攫っていった。
 それにより、フォーティーンが放ったエネルギー弾は空振りとなる。
 一方でトーマは、地面に着地。
 彼の傍らでは、クウガが立っていた。

「ユウスケさん!」
「大丈夫か!?」
「はい、ありがとうございます!」
「そうか、よか――――ッ!?」

 言葉は最後まで発せられない。
 クウガは後ろに振り向きながら、右の拳を放つ。
 その先からは、ムカーディアが左腕を振りかぶりながら迫るのが見えた。
 視線と共に、二つの拳が激突。
 鈍い音を鳴らしながら、辺りの空気が震撼した。
 互いに眉を顰め、呻き声を漏らす。
 その瞬間、クウガとムカーディアは同時に後退した。
 距離を取り、四つの瞳は睨み合う。
 しかし、視線の拮抗はすぐに終わりを告げた。
 上空より、巨大な炎が次々と降り注いだ為。

97 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:20:32.71 ID:Uqf+nEpn

「「「なっ!?」」」

 それに気づいた三人は、すぐに飛んだ。
 炎は彼らの立っていた位置に、隕石の如く激突する。
 その衝撃で、大地は凄まじい音と共に爆発した。
 フォーティーンの火炎によって、至る所から火柱が昇る。
 そして、膨大なる熱気が戦場を広く焦がした。

「あいつ、見境無く攻撃してる!」
「トーマ、間違ってもあんなのに当たるなよ!」
「分かってますって!」

 天より降り注ぐ熱の塊を、トーマとクウガは次々と避けていく。
 あんなのに当たったら、一巻の終わり。
 どう見ても、明らかだった。
 しかし彼らは、一片の絶望も持っていない。
 フォーティーンの火炎を避けながら、トーマとクウガは反撃の機会を窺っていた。




「ぐあああああぁぁぁっ!」
 
 誰かの悲鳴が、辺りに響く。
 その瞬間、盛大な爆発が起こった。フォーティーンと巨大な魔獣となったスコルプの吐く、怪光線によって。
 爆風により、ディケイド、シンケンレッド、キュアピーチ、クウガ、トーマ、ディエンドの六人は容赦なく吹き飛ばされた。
 勢いよく地面に叩き付けられた彼らを囲むように、敵は迫る。

「クックックックック、どうしたカスども?」
「そうだよ、君達はゲームの駒らしく、ちゃんとプレイヤーを楽しませなきゃ駄目じゃないか」

 ビルゲニアとドラゴンオルフェノクは、邪悪な笑みを向けていた。
 二人にとって侵入者達は、敵ではなくただの玩具。言葉からは、それが容易に感じられた。

「ゲームの駒だと……!?」
「ふざけるなっ!」

 ディケイドとトーマは、同時に怒りを発する。
 そんな二人のように真摯な表情で、キュアピーチは一歩前に出た。

「あなた達は一体、何が目的なの! この世界を闇に飲み込んで、何を企んでるの!?」
「偉大なる冥王の復活だ」

 ガドルは冷たく、彼女の疑問に答える。

「この世界が存在する宇宙全てを、影(アンノウンハンド)で飲み込んだ偉大なる我らが主……ダークザギ様」
「ダーク……ザギ?」
「そうだ、戦いの果てに消え去った我々に、再び肉体を与えた御方だ。貴様らは、その生け贄に過ぎない」
「何ですって……!」

 その言葉を聞いたキュアピーチの脳裏に思い浮かぶのは、プリキュア達と共に打ち破った邪悪な存在。
 ブラックホール達も、世界全てを闇に飲み込んでみんなから幸せを奪い取ろうとする。それでもみんなで力を合わせて、平和を守る事が出来た。
 けれど今度はダークザギという奴が、また世界を絶望の闇に包もうとしている。そんな事を、許せるはずがない。


98 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:23:38.79 ID:Uqf+nEpn
「そうだ……そしてダークザギ様は、俺達にもこの力を与えた! 偉大なるアンノウンハンドの力を!」

 ビルゲニアは叫びながら、ディバイダー928を向ける。すると銃口から、漆黒の球体が膨れ上がっていき、次の瞬間に放たれた。
 それを見た六人は、瞬時に回避して体勢を立て直す。そんな一瞬の反応に、ビルゲニアは笑みを強めた。
 この連中は、やはり狩り甲斐があると。
 そんな思考が芽生えた故に、気付くことが出来なかった。
 遠くより迫りくる新たな戦士と、それが放ったエネルギー弾を。
 複数の光が、闇より現れた怪人達に着弾するまで。
 

「うぐああぁぁぁぁっ!?」
「何ッ!?」

 突然の出来事に、ディケイドの思考は驚愕で埋まる。
 最も、それは他の五人とて同じだったが。

「だっ、誰だあっ!?」

 答えが得られぬまま、ビルゲニアが憤怒の表情で吼える。激情に任せながらディバイダー928を掲げて、引き金を絞ろうとした。
 姿の見えない相手を、隠れている場所ごと吹き飛ばすために。
 ビルゲニアは、魔力弾を放とうとした。




『CYCLONE』『JOKER』




 しかし、それは誰かに当たることはない。空しく、闇の中を切り裂くだけに終わってしまう。
 変わりに漆黒の中から返ってきたのは、野太い二つの声。それは先程ヴェイロンがビルゲニアになる為に取り込んだ、ガイアメモリから放たれたのと同一だった。
 瞬間、誰かがそれに気づく暇もなく、闇から一つのシルエットが飛び出してくる。
 その影は、勢いよく戦場に現れた。

「お、お前は……!」

 ディケイドは、乱入者に一番早く反応する。
 突然現れたのは、彼が知っている仮面ライダーの一人だった故に。
 緑と黒に左右半分で分かれた鎧、額より『W』の形に伸びた触覚、炎のように赤い瞳、風に棚引く銀色のマフラー、腹部に付けられた赤いバックル。
 バックルの中には、二本のUSBメモリが埋め込まれている。それは、現れた仮面ライダーのトレードマークとも呼べる、ガイアメモリだった。
 かつてスーパーショッカーを打ち破る際に、力を借りた「Wの世界」の代表である戦士である彼は、ディケイドに振り向く。

「仮面ライダーW……いや、左翔太郎! そしてフィリップ!」

 そう、二人で一人の仮面ライダー。
 風都を泣かせる悪魔、ドーパントと戦い続ける戦士。左翔太郎と相棒のフィリップが変身する仮面ライダー。
 仮面ライダーW サイクロンジョーカーが、このアルハザードに姿を現したのだ。

「よう、また会ったな。仮面ライダーディケイド……いや、門矢士」

 左翔太郎の声と共に、彼の意志が宿るボディサイドの右目が、赤い輝きを放つ。

99 :仮面ライダーディケイドForce ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:26:02.67 ID:Uqf+nEpn
「何故、お前がここにいる?」
「説明は後だ、今はあいつらを倒すのが先だろ?」
「……そうだったな」

 ディケイドの疑問はあっさりと遮られた。だが、大して気に止めない。
 彼はWと共に、怪人達に振り向いた。そこでは先頭に立つビルゲニアが、怒りを露わにしている。

「仮面ライダー……Wだとぉ!?」
「ああ、そうだ」
「その通りさ」

 Wは不敵に答えた。
 今度は翔太郎だけではなく、左のソウルサイドに宿るフィリップの意志も。

「俺達は――――」
「僕達は――――」

 そして、二人は力強く名乗った。

「「二人で一人の仮面ライダー……仮面ライダーW!」」

 始まりの夜、ビギンズ・ナイトの日に誕生した仮面ライダー。
 町を泣かす悪魔から人々を守ると決意した左翔太郎が、地球の本棚を持つ園咲来人――――フィリップと呼ばれた少年と相乗りを果たした末に誕生した戦士。
 仮面ライダーWの名を力強く告げた彼は、左腕を怪人たちに向けて、手で拳銃を形作る。
 そして、いつもの決め台詞を言う。仮面ライダースカルに変身する鳴海荘吉からの、受け売りである台詞を。
 街のみんなを守りたいという、揺るぎ無い意志を込めて。

「「さあ、お前達の罪を数えろ!」」


100 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/18(土) 21:33:15.25 ID:Uqf+nEpn
以上で、今回の投下を終了です
一話の投下ベースが毎度毎度遅くて、申し訳ありません
TRIGUN氏を初めとした職人様達を、見習いたいです…………
現在四兄弟本編と合わせて、ディケイドForce冒頭部分を修正or加筆中です
収録日は未定ですが、なるべく早めを心懸けたいです。

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/19(日) 14:16:30.34 ID:GsFLrPJg
「受け売り」は酷いな
そんな軽薄な気持ちで二人はその台詞を言わないぞ

102 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/19(日) 15:34:38.26 ID:xm8k44Y5
>>101
誠に失礼しました
W原作を愛する方々の気持ちをきちんと理解せずに、申し訳ありません。


それでは指摘していただいた部分を
そして、いつもの決め台詞を言う。仮面ライダースカルに変身する鳴海荘吉からの、受け売りである台詞を。
から
そして、いつもの決め台詞を言う。仮面ライダースカルに変身する鳴海荘吉より受け継いだ、町を泣かせる悪魔に向ける台詞を。

以上の形で修正させていただきますが、よろしいでしょうか?

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/19(日) 17:02:50.23 ID:6QUsO4vL
いいんじゃないかな
俺も>>101に言われるまで気付かなくてちょっとハズカシ

104 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:16:28.64 ID:8xwCNGlI
どうもです
20時半ごろから投下しますー

105 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:31:47.82 ID:8xwCNGlI
 横田基地家族住宅の片隅に据えられた仮設ガレージで、スープラはエンジンを降ろされ、
ボディとエンジンそれぞれでの強化作業に入っていた。ボディは内装やコーティングをすべてはがし、
鉄の下地をむき出しにした状態で溶接個所を増やし、補強板を当てて構造強度を上げていく。
 エンジンはシリンダー内スロットに強化素材を打ち込み、鍛造ピストンに交換し、各シャフトは
タフトライド処理をほどこして強度を上げる。
 時たま、非番の兵士が作業の様子をのぞきにきたりもした。

 クロノは店にシフトの変更を申し出て、さらに集中的に稼ぐスタイルにかえた。
 今までは走り込みのために休日をとったりしていたが、これからスープラが完成するまでは、毎日フル出勤になる。

「若いうちは無茶をしてみるのもいい経験だよ」

「無茶はするが無理ではないだろ、こうみえても体力には自信があるんだ」

「ははは、さすがハラオウン君」

 ヴェロッサもそう言って茶化したりしてみた。
 寮ではほとんど寝て休息をとるだけ、夕方の開店から明け方の閉店まで、ずっと、騒がしいフロアで
女たちの相手をし、酒を飲み、踊り、トークを続ける。

 確かに体力も精神力もすり減らす仕事だ。
 だが、それはけして無駄にすり減っていくわけではない。
 しごかれ、削られた気持ちの、芯が見えてくる。そんな気がしていた。
 自分を追い込んで行って、その時、素直な気持ちが見えてくる。

 そんな気がしていた。

 疲れて眠りに落ちた時、夢を見ることはない。
 今は、過去の思い出に浸るときではない──

 グレアムは、チューニングの手配はするが、その話に乗るかどうかはあくまでもクロノの意志だと言った。
 仲の良い人間なら、好意からタダで手伝ってやったりなどあるが、その対象が車ともなれば、
それだけでは済まない責任が発生する。事故った時のリスクなどだ。
 改造によって危険になった車を渡し、そのせいで死んだなどとあってはそれは運転者の責任だけでは済まされない。
 金は払ってもらう、その代わりに責任もすべて持つ──だから、安心して走っていい。
 チューナーに金を払うとはそういうことだ。チューニングにかかる金というのは単にパワーを出すためだけではなく、
そのパワーを確実に操れるようにするための費用でもある。客に万全な状態の車を渡すことがチューナーの責任だ。

 だから、もうクロノを監視したり、外野から口を出すことはしない、思い切り、気の済むまで走ってくれ。

 クロノはその話を受け、そしてグレアムは、クロノがそれで満足し、走りから次第に離れていってくれればいい、と、
心のどこかで願っていた。

106 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:36:52.94 ID:8xwCNGlI
 大音量のダンスミュージックが流れるフロアに、やや気まずそうにして入ってくる少女がいた。
 彼女を連れてきたのは、どこかおっとりとした、一見どこぞのお嬢様のような、
清楚でそれでいてスタイル抜群という、アメリカ人なら誰もが憧れるような妙齢の日本美女だった。

 促され、本革のソファに腰を下ろす。日本人のほうはよく通っている太客でもあるので、ヴェロッサが応対する。

「ひさしぶり、ヴェロッサくん。今日は私の後輩をつれてきたんですよ、ほらフェイトちゃん、ごあいさつ」

「こ、こんばんわ……」

 雰囲気におされたように、フェイトは縮こまっている。ヴェロッサはフェイトを目上にするように、
隣で肩を寄せて笑顔で語りかけた。

「ははは、そんなに緊張しないで、こういうお店は初めてかい?」

「ねーフェイトちゃん、あなたに足りないのは色気だと思うんですよ、こういうとこはいい勉強になりますよ」

「や、でもいきなりこんな──それにこういうとこ、ミウラさんのイメージじゃ」

「あらぁ、今は演歌も海外で人気なんですよ」

 彼女は声優界でもフェイトの先輩としてよく指導していた。その中で、さらに歌手志望であったというつながりもあった。

 ヴェロッサはクロノをフェイトとミウラの前に連れてきて、うちの店のホープ、と紹介した。
 通じ合うのは、外国人同士、というだけではない。

「す、すいませんミウラさん……折角連れてきてもらって申し訳ないんですが、今夜はちょっと……」

「あら、それは残念ねぇ、でもまた今度ね」

「はは……ハイ」

 ソファから多少ふらつきながら立ち上がったフェイトに、クロノが声をかける。

「帰るならオモテまで送りますよ、フェイトさん。この時間はなかなかタクシーつかまらないですから」

「あっ、大丈夫です、私自分の車ですから」

「六本木は混みますからね。強化クラッチ組んだテスタじゃあツラいんじゃないですか?」

「!」

 フェイトは息をのみ、そしてクロノと視線が合う。
 出会うのは、運命だった。──そんな、気がした。

107 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:41:07.87 ID:8xwCNGlI
「おかしいな……テスタに乗ってるコト、どんな雑誌にも出してないはずなのに」

 クロノはクールに微笑む。

「有名ですヨ、特に首都高走ってる人間には」

「なるほど……じゃあ、あなたも首都高を走ってるの?」

「ええ。車は80スープラ、色は銀です」

「あの時の──」

 ブラックバードと二人で慣らしに行ったときに遭遇した車だった。あの時、ステアリングを握っていたのは
米軍基地の整備士だった。そして、横に乗っていたのは──

「見たコトあります──。母さんが、NATOのプロジェクトの顧問をしてた時に」

「つながりはあるんですね」

 クロノはポーカーフェイスを崩さない。
 それは単に今の身分がホストだから、ではなく、会うべきときに会うべき場所で会いたい、そんな気持ちの表れだ。
 クロノはそういう男だ。

「近いうちにまた首都高で会いましょう。今、僕の車は工場に入っています。あなたのテスタと、ブラックバード、
そして悪魔のZ──僕はあなたたちと走りたい」

「──私も、です。私も、あの悪魔のZにとりつかれ、追っているんです」

 クロノ・ハラオウン。フェイト・テスタロッサ。
 同じ目的を持つ少年と少女は、同志でもあり、そしてまたライバルでもある。



 フェイトの仕事場であるアニメのアフレコ現場に、今日はリインも来ていた。
 ガラス越しのスタジオを見ながら、マネージャーであるアルフと一緒に並んで壁に背をもたれ、待っている。
 今日の収録も滞りなく終わりそうだ。

「ここ最近よくカオ出してるじゃないか?やっぱり医者としてかい?それともプライベートで?」

 アルフが渋そうに声をかける。
 リインは黙って、フェイトの演技を見ている。

108 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:46:52.55 ID:8xwCNGlI
 いつもの産業道路でセッティング出しをしていたなのはは、海鳴臨海公園に見知った二人が来ているのを見つけた。
 Zを一般道へつながる道端へ停め、公園に向かう。

 はやてと、ヴィータの二人が待っていた。

「はやてちゃん!っと、それと、ヴィータちゃん、だっけ」

 ヴィータはやや気まずそうに、なのはを見上げている。

「リインから聞いてきたんだ、おまえがいつもここでせってぃんぐだし?してるって」

 小学生のヴィータは専門用語がわからず、妙なアクセントになっている。

「Z、すっかり調子戻ったみたいやん」

「わかる?はやてちゃんも」

「兄ちゃんが乗ってたころはもっと速かったで」

 ほんの一瞬の間がある。沈黙。
 はやてとなのはの、感情の駆け引き。

「ヴィータがな、どうしてもなのはちゃんと一回話したいて」

「えっ、えっと」

 はやてに促され、ヴィータはおずおずとなのはの前に出てきた。Zのエンジン音が三人を包んでいる。

「こないだはその……悪かった。やっぱ、あたしも、どっかでふりきれてなかったとこがあったんだ……
はやてがもういいって、もう大丈夫だっていうんなら、あたしも文句はねえ。
このZは、高町……おまえの車だよ」

「──はやてちゃん?」

「大丈夫やよ、わたしは」

 心の底では、もしかしたら未練や負い目は、わずかに残っているのかもしれない。
 それでも、こうやって言葉を口に出すということは、自分の心をそちらへ進めてゆこうという意志の表れた。

109 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 20:52:01.81 ID:8xwCNGlI
 アニメの音声収録というのは通常、動画制作と並行して行われる。
 声をあてる声優が目にするのは、線画とセリフのおおまかなタイミングを書き込んだ仮の映像だ。

 フェイトも、日本でかなり名が売れてきていて、固定ファンも付き始めている。
 エンドクレジットに“声の出演 Fate Testarossa”と名前が載ると、それだけで視聴率がいくらか上がり、
DVDや関連グッズの売り上げが変わるといわれるほどだ。

 そんな中で1か月とはいえ休業するのは、正直なところ経営層からすれば惜しいことだ。

 しかし、そこで無理をさせては元も子もない、というのは、現場の人間ならだれもがわかることだ。

 リインは今日も、フェイトの仕事を見に来ていた。
 今出演しているアニメの収録は今週で終わる。入院と手術はその後ということになるが、まだ本人の了承が取れていなかった。
 Zのほうもエンジンのオーバーホールを終わらせたと聞く。
 この状況で、素直にフェイトが入院してくれるか──

「おつかれーフェイトちゃん!」

 同僚の声優たちが帰っていく。
 フェイトは一人残り、スタジオのロビーで待っていたアルフとリインのもとへ向かう。

「お疲れ、フェイト」

 アルフが缶コーヒーを渡す。
 リインはしばらくフェイトを見据え、そしてゆっくりと口を開いた。

「テスタロッサさん……退院したら、またあのZを追うつもりですか?」

 アルフが表情を曇らせる。フェイトがつらい目をみるのは、アルフもまたつらい。

「うん。もう、あのZとあのコを追うのが私の生きがいといっても過言じゃない──」

「乗り手である彼女もまたあなたの心をとらえた、と」

「……ええ」

「──フェイト」

 外の駐車場には、テスタを持ってきている。
 エンジン出力はもはやロードカーとしては常軌を逸した1180馬力に達し、ギア比設定からの計算上では、
最高速度はじつに370km/h以上となる。
 エクステリアがそれほど大きく変わっていないゆえに、外見からは判別しにくい、闇に潜んだ怪物になった。

「次の水曜の収録でいちおうラストなんですよね。そのあたりにしますか?走る(ヤる)のは……」

 フェイトはコールドの缶コーヒーを握りしめながら、リインを見つめる。

「まちがいなく彼女も出てきますヨ」

「──はい。それでいいです」

110 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 21:00:32.57 ID:8xwCNGlI
 スープラはモノコック側の補強が終わり、サブフレームと一体化したロールケージを組み込む作業に入っていた。
 マリーが久々に車をつくるというので、横田基地の整備士仲間たちも応援に来てくれていた。
 ガレージに、溶接機の閃光がバチバチと飛んでいる。

「先輩、今回のスープラってかなりガッチリ補強組んでますよね、どれくらいのエンジン載せるんですか?」

 興味津々に聞いてくるのは、横田基地でマリーの後輩にあたるシャリオ・フィニーノだ。

「900馬力ってとこね。これでもタービンはツインでレスポンス重視よ」

「すっごいですねぇー。でもなんか、それだけじゃない気がするんですよね」

 シャリオはスープラのモノコックを眺めながら言う。

「固めきってないっていうか、なんか、頑丈なはずなのにどっかヤワく感じるような」

「スルドイわね。でも、それだけじゃあ正解とはいえないわ。なぜこーゆう構造のボディなのか──
ヤワく感じる、それは間違いではない。でも見方を変えれば、それはそれだけ力を受け止められるということよ」

「ボディ剛性を担当してるのは今回ほとんどサブフレーム側ですよね。
モノコックにかかる応力は最低限減らしてる」

「乗員にかかる負荷もあるしね」

 マリーは、グレアムの意図に気づいていた。
 この車に実際に乗ればそれは誰でもはっきりわかるだろう。
 サブフレームはパワーをダイレクトに伝え、それは乗り手に強烈なパワー感として伝わる。
 普通の車なら、車体側で吸収してしまう敏感なインフォメーションを、体に感じるヤバさとして伝えてくる。
 危ういパワーに、踏み切れなくなる。踏み切ることができた人間だけがその先を見られる。

 クライドが命を落としたのは、危険な車に乗っていたからでも、
ましてや無謀な運転のせいでもない──それを確かめたかった。

 このスープラを操って、湾岸最高速ステージを走る。
 そして、クライドの目指したものが幻ではなかったのだと確かめたい。

 その先には、悪魔のZ、そしてブラックバードがいる。


   SERIES 4. 幻の最高速ランナー END

111 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 21:06:21.92 ID:8xwCNGlI
◆ SERIES 5. 運命


 夕日が山の向こうに沈む頃、海鳴臨海公園からZは発進した。
 サイドシートにはヴィータを乗せ、はやては、戻ってくるまでしばらく公園で待つと言った。
 横浜横須賀道路から、本牧ジャンクション経由で湾岸線に入る。大黒線を渡って横羽線上りに入り、環状へ向かう。

「いつもこっちを通るのか?」

 4点ハーネスの締め具合を確かめながらヴィータがたずねる。

「うん、横羽は結構好きなんだ、コーナーいっぱいあるし、感触を確かめるのにいいから」

「リインはいつも海側の道を行ってるよ、まっすぐだしそっちのが早いんじゃないのか」

「にゃはは、まーね」

 空はまだ、夕日の残光でうっすらと仄明るい。交通量もまだ多く、攻める走りはできない。
 平和島の料金所でしばらく並び、そこから、ゆっくりと再発進していく。

 このような法定速度の走りでも、Zのエンジンはしっかりついてきてくれる。
 一般的に、チューニングを進めてパワーを出していくと、その分低回転域の扱いやすさは犠牲になる。
 もちろん、このZでもそれは例外ではなく、普通のノーマル車に比べるとかなり回転数を上げなければ動きが鈍い。
 ブーストのかからない低圧縮の状態では、鈍くなった回転はゆったりと車体を動かし、それは恐ろしさを半減させる。

 両国ジャンクションから向島線に入り、隅田川を左に見ながら高架の上を走り抜けていく。
 ヴィータは黙って、Zのサイドシートに座っている。

 堀切ジャンクションから中央環状を経由して湾岸へ向かう。直線は長く、一般車の流れも速くなり、
そしてスピードは乗りはじめる。140km/hで、一般車の流れをわずかにリードしながら走る。

「はやてを、悲しませるよーなコトには絶対にするなよ」

 つぶやくような小さな声で、絞り出すように力を込めてヴィータは口に出した。

112 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 21:12:01.91 ID:8xwCNGlI
「はやてちゃんは友達だよ」

 ヴィータはだいぶ落ち着いて、座席にゆったりと腰を落ち着けている。

「あたしも、リインがここを走ってるのはあんまり好きじゃなかったんだ、事故は怖いし、取り締まりだってもちろんある、
でも、リインは走るのが好きなんだ、それはあたしにはどうしようもなかった──」

「どーしようもないってあきらめたかな?」

「運命だと思うんだよ、はやてがいて、リインがいて、おまえがいて、それでおまえとはやては友達で、
おまえとリインはライバルで──そんで、リインがポルシェに乗って、おまえがZに乗って、
そうやって出会ったのは運命だと思うんだよ」

 葛西ジャンクションから湾岸に入る。
 この時間は、一日の配送を終えて埠頭に戻るトラックが多い。また、仕事帰りの一般車も多い。

 いちばん左側の第3車線を選び、無理にトバさず、流れに乗って走る。

 回転がスムーズになった。全開で踏んだ時の回転の谷にばかり気を取られていたが、
こうしてゆっくり流すと、エンジン全体のパーツの組み合わせがあって初めて回転が成り立っているとわかる。
 どこかに調子の悪いところがあれば、それは全体に影響を及ぼす。
 低回転域での鈍さも、はっきり軽減されてスムーズに回っているのがわかる。
 自分はまだまだ技術的には素人だし、ユーノやコウちゃんに手伝ってもらったといっても、
このL28エンジンをきっちり精密に組み上げることができたわけではない──わけではないが、
それでも、組み直されたエンジンは、はっきり、リフレッシュしているのがわかる。
 確かに、そのあたりのディーラーで売られている普通の新車と比べれば、
回転はラフだしパワーカーブもでたらめで、雑な作りの改造車と感じるかもしれない。
 それでも、秘めたパワーは本物だ。

 乗り手と作り手の意志が、吹き込まれ、はっきりと保たれている。

 このZをつくった人間の意志が──

113 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 21:19:04.02 ID:8xwCNGlI
 つばさ橋を迎え、再び本牧まで戻ってきた。海鳴まではもう少しだ。

「ヴィータちゃん、運命ってさっき言ったよね、でもね、私はそれって、もう少し違うものだと思うんだ。
遠く離れたそれぞれの人間が、それぞれの気持ちで歩いて、そうして出会ったときっていうのは、
遠く離れたそれぞれの人間の、気持ちが同じ流れの上にあったってこと。それを、運命って呼ぶんじゃないのかな」

「同じ流れに──」

「たとえばさ、今こうして湾岸を横浜方面に走ってる車って何百台もいるよね、で、同じところに向かう車もたくさんいるよね」

 一般車の流れの中、静かに現れる。
 赤いR32GT-R。乗っているのは、フェイトといつも一緒にいる、マネージャーの女だ。

「同じ目的で同じ場所に同じ道で向かっていれば、出会う確率は高い──それはきっと、運命って呼べるよ」

 なのははZを32Rの横に並べ、ウインカーを点けながら前に出た。
 ついてこい。そう気持ちを込めて。



 はやての待つ海鳴臨海公園の入り口前に、Zと32Rが停まる。
 車から降り、軽くお辞儀をする。

「フェイトさんと一緒にいるの見ました、えっと──」

「アルフ」

「アルフさん、ですね。私は高町なのはです」

「あんたのことはよくフェイトから聞いてるよ、フェイトはあんたに会いたくてたまらないみたいだね」

「ええ、こないだ私のバイトしてる店に来てました。テスタ、直ったみたいですね。そろそろ走り(ヤり)ますか?」

 なのはとアルフ、二人のやりとりを、はやてとヴィータは固唾をのんで見守っている。

114 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/20(月) 21:25:04.22 ID:8xwCNGlI
今日はここまでです

語尾の「ヨ」とか最近湾岸訛りが(汗)
ミウラさんはVividのほうじゃなくてどたぷーんなほうですが
FD3Sには本作ではのってないです(汗)

ではー

115 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:14:47.52 ID:2KsmiFxl
13:30以降に続き書きます。

【注意事項】
・悪の組織が百合人気を利用した世界征服を企み、その一環として他ジャンル否定を行ったりし、
なのは達がそれに抗うので作品全体を通してみると百合否定っぽく見えます。
・↑に伴い現状のアニメ界及びヲタを風刺する要素があります
・みんなふざけている様に見えますが、やってる当人達は至極真剣です。
・ディエンドの無駄遣い
・自分の好きなキャラがディエンドに勝手に呼び出されて使役される事に我慢出来ない人には不向き。
・少々オリも出ます



登場作品
・魔法少女リリカルなのはシリーズ
・仮面ライダーディケイド&仮面ライダーBLACK&歴代仮面ライダーシリーズ
・プリキュアシリーズ
・恋姫無双
・ブラック★ロックシューター(ディエンド的意味で)
・ハルヒ(ディエンド的意味で)

116 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:31:01.59 ID:2KsmiFxl
 18:最終決戦! 百合ショッカー最期の日編

 四方八方からの無数の人々の声援はなのはやディケイド達の闘志を奮い立たせ、ユリシアや彼女に率いられる
百合ショッカー百合戦闘員や百合怪人、百合厨達を動揺させ浮き足立たせていた。

 確かに彼等の声援が直接的な力になるわけでは無い。しかしなのは達には今戦っているのは自分達だけでは無いと
感じさせ心の支えとなり、またユリシアには百合の理想郷を作ると言う彼女の存在意義を揺るがせる結果となっていた。

「行くぞ!」
「今度こそ貴女を………!」

 横に並ぶディケイドとなのはを先頭とし、皆はユリシアへ向け戦闘体勢を取った。
しかし、ユリシアは多少苦笑いしながらも表面的には平静を装っていた。

「学習しない人達だね、君達は私に敵わないって私がさっき見せ付けたばかりじゃない?」
「学習してるさ! 学習してるからこそ今度は同じ轍は踏まない!!」

 まず最初にユリシアへ接近したのはクロノ・ジョーカーだった。ジョーカーメモリによって与えられた
高い身体能力を駆使して百合戦闘員の間を縫う様に駆け抜けユリシアへ向け跳びかかる。

「エイミィ! カレル! リエラ! お父さんは…頑張ってるぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 仮面ライダージョーカーとしての身体能力と拳にクロノ=ハラオウンとしての魔力を上乗せした渾身の
ライダーパンチがユリシアの顔面に打ち込まれた。ユリシアはやはり微動だにしなかったが…
直後、クロノ・ジョーカーはユリシアの全身を得意とするバインドが縛り上げると共に離脱していた。

「今だ! やれぇぇぇ!」
「分かった!」
「今行くわよぉぉぉ!」

 次にユリシアへ接近するのは愛紗と貂蝉だった。

「私はご主人様の為ならば鬼をも喰らう羅刹となると決めたのだ! 今度こそ取らせてもらう!」
「君のナマクラ青龍刀で私は斬れないのは見せたはずだけど?」
「斬れなくとも出来る事はある!」
「行くわよぉぉ! ふんぬぁぁぁぁぁ!」

 バインドで身動き取れなくされた隙にユリシアに掴みかかった貂蝉は高々と彼女を持ち上げ
猛烈な勢いで投げ付けた。幾らユリシアがアリシア=テスタロッサに瓜二つとは言えそれでも体重十キログラム近くは
あると言うのに、それをまるで野球のボールの様に軽々かつ剛速球で投げ飛ばしていたのだ。凄まじい怪力である。
そしてその先には青龍偃月刀を構える愛紗の姿があった。

「これがご主人様が教えて下さった天界の兵法…野球と言う物だ。受けて見ろぉぉぉぉ!!」

 貂蝉に投げられ猛スピードで愛紗へ突っ込んで行くユリシアを愛紗は青龍偃月刀を野球のバットの様に振るい高々と打ち上げていた。
確かに青龍偃月刀を持ってしても斬れなかったユリシアの身体であったが、こうして打撃を与える吹っ飛ばす事なら出来た。

117 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:32:14.66 ID:2KsmiFxl
 ユリシアが吹っ飛ばされた先には何故か縄が張られていた。そして上手い具合にその縄がユリシアの首に引っかかり
喉元に強く食い込む形となり、これには流石のユリシアも息が出来なくなってしまった。

「ゲホッゲホッ! 何でこんな所に縄が…!?」
「はわわわわわ…上手く行きました〜!」

 その縄を張ったのは朱里ちゃんだった。まさに孔明の罠ならぬ孔明の縄と言う奴である。

 続いてユリシア目掛け駆けて来たのは長門有希。大勢の百合戦闘員に集られ全身を切り刻まれ串刺しにされていた
彼女であったが、それも既に完全に修復出来ていた。

「平行して存在する様々な世界と繋がった事で情報統合思念体とも10%だけコンタクトが取れた。」

 長門の上司に当たる情報統合思念体の意思と力もこの世界にまでは及ばない為に本気の何割か出せれば良い方と
思える程に弱体化していた長門であったが、こうして様々な世界と繋がった事によりわずかながらに情報統合思念体の
アシストを受ける事が出来た。その情報操作によって長門の拳にエネルギーが集束されて行き…それを持って
ユリシアに全力パンチをお見舞いしていた。

「たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「てぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 次に決まったのはキュアドリームの跳び蹴り。さらに逆方向からはキュアピーチの拳が決まり、見事に挟まれ
ユリシアはキックとパンチのサンドイッチとなっていた。

「ダブルプリキュアサンドイーッチ!」
「うっ!」

 さらにキュアベリーとキュアパインもまたそれぞれ反対方向から同時にユリシアへ拳及び蹴りを打ち込みサンドイッチにする。

「調子に乗って……!」
「そうはさせない!」

 反撃の為に起き上がろうとしていたユリシアの身体をキュアパッションが掴んだ。直後にアカルンワープ。
ワープした先にはキュアホワイトがいた。

「!?」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 キュアホワイトはユリシアの手首を掴むと共に猛烈な速度で投げ転がし、しかも百合かごの残骸として転がっていた硬い金属塊に叩き付けていた。

「なっ!」

 キュアホワイトの投げによって頭から重金属の残骸の山に突っ込み埋もれてしまうユリシア。これは流石に痛かったらしく
思わず頭を手で押さえていたのだったが、その上空からキュアブロッサムが跳びかかっていた。

118 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:33:59.95 ID:2KsmiFxl
「ブロッサム! インパクトォ!」
「痛!」

 キュアブロッサムのエネルギーを拳に込めて放たれる技『ブロッサムインパクト』が先程ユリシアが重金属の塊に
打ち付けられた脳天に打ち込まれ、さらなる痛みが襲う。しかもそれだけでは無く、間髪入れずにキュアマリンが
ユリシアに体当たりをかける様に抱き付くと共に…

「マリンダイナマイトォォォ!!」

 その名が指す通り、キュアマリンの全身からエネルギーを広範囲に展開させ爆砕する『マリンダイナマイト』
その爆発力はユリシアの周囲に転がる聖王の百合かごの残骸さえ吹き飛ばしてしまう程だった。

「今度は俺達が行くぞ! ブラック!!」
「ダイナミック!!」
「……スペシャル………。」

 仮面ライダーBLACK、キュアブラック、ブラックロックシューターのブラック三人衆がユリシアの上空にまで
高々と跳び上がっていた。そしてブラックロックシューターの★Rock Cannon砲口から放たれる無数の岩石が
ユリシアへ降り注ぎ、それに混じる形となってキュアブラックの拳とBLACKのライダーキックが打ち込まれていた。
名付けてブラックダイナミックスペシャル。

「俺達も続けて行くぞ!」
「おう!」
「俺は最初から最後までクライマックスだぜー!」
「キバって行くぜ!」

 今度はストロンガー、RX、電王、キバが各々の得意技を持ってユリシアへ向けて突撃する。
その一連の技は既にユリシアに破られ今度も通用しないと思われたが……その時不思議な事が起こった!
RXの持つキングストーンと太陽のハイブリットエネルギーが唸りを上げ、リボルケインの出力が従来の数倍に増すのみならず
ストロンガー、電王、キバのパワーまでをも一時的に増幅させていたのだった。
それによる四方向からの同時攻撃はユリシアの身体も感電させ斬り裂き吹き飛ばさんとする程の勢いを誇っていた。

「く〜! もう皆何してるの!? 私をフォローしてよね!」
「ユリー!」
「ユリー!」

 流石のユリシアも怒ったのか思い切り感情を丸出しにして叫んでおり、百合戦闘員や百合怪人達も慌てふためいて
ユリシアの周囲に集まって来るのだったが、次の瞬間何処からか放たれた銃弾砲弾の嵐によって吹き飛ばされていた。

「雑魚を盾になんてさせないよ。」
「うわぁぁ〜! 照準が上手く付けられないですよぉぉ〜!」

 そこにいたのはディエンドとリイン・G3。ディエンドはディエンドライバーを連射して百合戦闘員や百合怪人を
次々に射殺していたが、リイン・G3はG3−X専用ガトリングガンGX−05ケルベロスをやたら滅多に撃ちまくり
まさに下手な鉄砲数撃ちゃ当たるの理論で攻撃していたのだった。

119 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:35:26.45 ID:2KsmiFxl
「次はあたしが行くぞうぉらぁぁぁぁぁ!!」

 ディエンドとリイン・G3の露払いによりユリシアへ攻撃する隙を掴む事の出来たアギト・アギトは
両足で地面を踏ん張ると共に手を正面に突き出し横向きにゆっくりと動かした。そしてアギト・アギトの
頭部クロスホーンが展開し、さらに右足の踏み込まれている地面からもクロスホーンをイメージした形状の
金色の光の紋様が現れ、そのエネルギーが右足へ集中していく。

「とりゃぁぁぁぁぁ!!」

 アギト・アギトのライダーキックがユリシアのどてっ腹に命中し、右足から金色のエネルギーが放たれていた。

「よし! 次は俺が行くぞぉぉぉ!!」

 次は俺の番だとばかりにクウガが右足に封印エネルギーを集中させながらユリシア目掛け駆け、マイティキックを放とうとしていたのだったが…

「調子に乗るんじゃないのぉぉぉぉ!!」
「なっ!?」

 ついにユリシアが切れた。物凄い形相となったユリシアは全身から360度全方位へ向けた猛烈な衝撃波を飛ばし、
それは周囲にいた全ての者達…一番近くにいたクウガから百合戦闘員&百合怪人、果てには後方にいたなのは達に
至るまで無差別に吹き飛ばしていた。

「なっ……あれだけ痛め付けてまだこれだけの力が…。」
「調子に乗るからそうなっちゃうんだよ。君達が私の作る百合の世界を否定するならそれでも良い。
ならば私は否定する人を皆殺しにして、百合を受け入れてくれる人だけを集めて百合の世界を作るだけだからね。」

 彼方此方に百合戦闘員百合怪人百合厨達の屍が転がり、なのはやディケイド達もまた死んでこそいなかったが
相当なダメージを受けて中々起き上がる事が出来なかった。

「くそ…やはり奴を倒すには力が足りないのか…。」
「頑張らなきゃ…もっと頑張らなきゃいけないのに…。」

 ディケイドはライドブッカー・ソードモードを、なのははレイジングハートを杖代わりにして何とか
起き上がろうとしていたが、その膝はがくがくと振るえ…また倒れてしまった。

「くそ〜…応援する事しか出来ない自分達が悔しい…。」
「俺達にももっと力があれば……。」

 採石場の周囲を取り囲むヲタや腐女子達は必死に声援を送り続けていたが、その一方で応援する事しか出来ない自らの無力さを悔やんでもいた。
ついには百合生命体ユリシアを中心にして闇が広がり周囲は夜の様に暗くなって行く。

「アハハハハハ。結局ただ騒いでるだけじゃ私は痛くも痒くも無いよ。」

 優勢となり余裕と冷静さを取り戻したユリシアは笑いながらそう言う。確かにそうだ。当初こそヲタや腐女子達の
声援は彼女を動揺させたが、今となってはもはやそれも通用しなくなっていた。直接彼女にダメージを与える事は出来ないのだから。

120 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:36:53.90 ID:2KsmiFxl
「果たしてそれはどうかな…。確かに彼等の応援には何の力も無いかもしれない…けど…僕は
彼等の応援を力に変える事が出来る方法を知っているよ。」

 ディエンドは地面に転がり起き上がれない状況ながらもディエンドライバーに何かのカードを刺し込み、
それを空中へ向けて発射していた。

『プリキュアライド! ミラクルライト!』

 次の瞬間だった。ディエンドライバーから放たれたそれは広範囲に広がる光の粒となり、その一粒一粒が
採石場周囲を取り囲むヲタや腐女子達の手に渡っていた。それはキーホルダー程度の大きさで桃色の小さな懐中電灯だった。
これこそがミラクルライトである。

 『ミラクルライト』
 それは『プリキュアオールスターズの世界』におけるパルミエ王国がナイトメアやエターナル等の様な闇の脅威に備え開発、
量産し同盟関係にある他の様々な妖精の国に配った代物で、闇を浄化するのみならず対フュージョン&ボトムと言う強大な敵との
戦いで体力を使い果たし窮地に陥ったプリキュアにパワーを与える等、まさに奇跡のアイテムであったのだ。

 量産品であるが故に決してお宝とは言えないが、これは何かに使えると考えたディエンドはこれをカード化して携帯していたのだが、
今ここに来てまさにこのミラクルライトの力が必要になる時が来たのである。

 ディエンドによってライドされたミラクルライトの一つ一つが採石場の周囲に無数に展開するヲタや腐女子達の手に渡っていく。
それだけでは無い、世界と世界を繋ぐ次元のオーロラを通って各世界で百合ショッカーと戦う人々やその応援をする人々の手にも渡っていた。

 人々がミラクルライトを手にした時、その先端のライト部分から虹の様に七色の光が放たれる。その一つ一つは小さな光であったが、
何百…何千と言う数のミラクルライトから一斉に放たれる光はやがて闇夜すら昼の様に明るく照らす強烈な光となっていた。

「なんだいこれは? ただの明かりじゃないか。別に殺傷力があるわけじゃないんだからこんなの平気だよ。」

 ユリシアは余裕の表情で笑ってさえいたが、しかしその時不思議な事が起こった。

 何千何百と言う沢山の人の手によって振られるミラクルライトから放たれる光の一つ一つがなのはやディケイド達
一人一人へ降り注ぎ…その傷を癒して行くのである。

「こ…これは…何て温かい光…。」
「良く分からんが力がみなぎって行くぞ。」

 ミラクルライトから放たれる光を浴びながら一人、また一人と立ち上がって行くなのは達。その光は不思議な事に
傷のみならず連戦で疲れた体力さえ回復させ、あろう事か力をみなぎらせていた。

「懐かしいこの感じ…これならまだ戦える!」

 キュアドリームが立ち上がり拳を握り込もうとした時だった。

「おーいキュアドリームー!」
「!?」

 突然キュアドリームの事を呼ぶ声が聞こえる。その声の先に目を向けると、そこには彼女にとって見知った顔があった。

121 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:38:30.07 ID:2KsmiFxl
「ブンビーさん!」
「おーい! 私も応援してるぞー!」

 そこには両手にミラクルライト持って凄い勢いで振りまくるブンビーさんの姿があった。彼は『プリキュア5の世界』において
ナイトメア、エターナルの二大組織にそれぞれ属して何度もキュアドリーム達と激闘を繰り広げた宿敵と言っても良い存在であったが、
最終的に和解し、今では一人の人間としてブンビーカンパニーなる小さな会社を起業し、細々と頑張っていた。

「ただでさえ今でも会社の経営は火の車なのに百合ショッカーなんてわけわからんもんが攻めて来たら一体どうなってしまうか
想像も出来ないじゃないかー! だから頑張ってくれー! あんた達の強さと恐ろしさは何度も戦って来た私が一番良く分かってるんだー!
その時の力をもう一度見せてくれー! じゃなきゃあんた達に何度も負けた私が惨めになっちまうだろー!?」
「ブンビーさん……。」

 筆者が5系フィギュアーツはドリームしか持って無い事を理由にディエンドが5系プリキュアからはドリームしか
ライドしてくれなかった為に本来の仲間である他の4人+1人不在と言う実は心細い状況にあったキュアドリームであったが、
この状況にあってブンビーさんの応援がこうまで心強く感じるとは彼女も思わなかった。ちなみにブンビーさんはナイトメア時代に
彼をさんざイビったカワリーノなる者そっくりの男を何故か社員として雇用しており、実は彼もブンビーさんの隣にいたのだが
物凄い勢いでミラクルライト振りまくるブンビーさんと違って彼は直立不動だった。

「どうして私がこんな事しなきゃいけないんですか〜?」
「良いから黙って振れよバカ!」

 この光景にはキュアドリームも思わず吹いてしまっていたのだったが、これが彼女をリラックスさせる結果となっていた。


 だが応援に来ていたのは何も彼等に限った話では無かった。周囲を良く見渡して見ると、今まで影も形も見せなかった
はやてやらシャマルやらザフィーラやらエリオやらキャロやらルーテシアやらゲンヤやらギンガやらリオやらコロナやら
アイシスやらトーマやらリリィやら色んな人がミラクルライトを手に持って振り応援していたのだった。
おまいらも戦ってやれよと…。

 しかも百合ショッカーに協力してたヴィータ、シグナム、スバル、ティアナの四人までもがドサクサに紛れて一緒に
ミラクルライトを振ってる始末である。

 97管理外世界・地球・日本国・海鳴市においてもなのはの両親である高町士郎や桃子、友人のアリサやすずか、
そして同じく海鳴市に住んでいるクロノの妻のエイミィとその子供のカレルとリエラもまたミラクルライトを振り、
海鳴市上空に出現していた採石場における戦闘の様子が投影された次元のオーロラを見守っていた。

 また、実は採石場にいたスカリエッティ、ウーノ、クアットロの三人の手にもミラクルライトが渡っていたりしたのだった。

「何故私がこんな事をしなければならんのだ? 馬鹿馬鹿しい。と言うか百合生命体は私と百合神博士が共同で作った
言わば最高傑作とも言える代物。それを倒す為の応援など誰がするか!」

 スカリエッティは手に握られていたミラクルライトを地面に投げ捨て様としていたのだったが、そんな時にウーノの口が開いた。

122 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:40:16.64 ID:2KsmiFxl
「お言葉ですがドクター…。もしも百合の世界が来てしまったら…私達はどうなってしまうのでしょう?」
「何を今更…。百合の世界が来れば男女が愛し合う事も出来なくなり、結果的にクローンニングで
種の保存をしなければならないと言うまさに私の時代が来るに決まってるじゃないか。」

 スカリエッティはニヤリと笑みを浮かべながら主張するが、ウーノの表情はどこか暗かった。

「果たしてそうなんでしょうか? 私には百合の世界が来たら男女がそれぞれ隔離されなければならない世の中に
なる様に思えます。そうなれば私達とドクターも離れ離れに……。」
「私もドクターと離れ離れなんて嫌ですよー!」

 ウーノの言った通りかもしれない。百合の究極の形は男女がそれぞれ隔離して生活する環境。それはスカリエッティの
周囲にも例外でなく、スカリエッティとウーノ達の別れを意味する。これにはクアットロも思わず嫌だとばかりに半泣きになっていた。

「だからごめんなさいドクター! 私…これを振って応援させて頂きます!」
「わっ私もー!」

 ついにウーノとクアットロもまたミラクルライトを振って応援を始めていたのだったが、スカリエッティは動かなかった。

「私はジェイル=スカリエッティだぞ。幾らなんでも管理局の犬を応援する等私のプライドが許さん。」
「そうですか…。」

 少し悲しげな表情になるウーノ。しかし、スカリエッティはこうも続けていた。

「だから…………私は仮面ライダーとプリキュアを応援するぞ! うおぉぉぉー!! 管理局の奴等はやられても良いから
仮面ライダーとプリキュア頑張れぇぇぇぇぇ!!」
「ええ〜?」

 凄まじい言い分にウーノもクアットロも逆に呆れてしまっていたが、結局スカリエッティもミラクルライトを振り始めるのだった。
調子の良い男である。だがこの選択も人の道。クローンニングの権威として各世界から賞賛されながらも孤独に生きなければならない未来よりも、
一人の人間としてウーノやクアットロと普通に暮らす道を選んだと言う事なのだから。

123 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/06/23(木) 13:41:18.15 ID:2KsmiFxl
ここで次回に続きます。

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/23(木) 18:13:22.79 ID:94AXH6ZG
ミッドナイトの人乙ですん

125 : 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/06/26(日) 21:03:12.01 ID:4u+Ck6bX
職人の皆さん乙です!
次はだれが投下してくれるかな〜♪

126 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:15:03.76 ID:Xr2XwdBo
どうもです
18時半から投下します〜

127 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:32:00.64 ID:Xr2XwdBo
 法定速度の流す走りでも、なのははこの32Rがかなりのハイレベルにチューンされた車だとわかっていた。
 ノーマルタービンを使い、パワー自体はそれほど飛びぬけた数値ではないがとにかくレスポンスが良い。
 足もノーマルの良さを生かし、無理に最高速を引き上げず、ノーマル+αで出る250km/hレベルでの動きをよくする。
 すべては、あのテスタを見守るために──。

 そういう車なんだと、なのはも後ろから見るだけでわかるようになってきていた。

「ま……こーゆうコトはあんまり言いふらさない方がいいのかもしんないけど」

「大丈夫ですヨ、私は」

「今度の水曜、一応ね。ブラックバードと一緒に湾岸に出る──あの先生、なんでかフェイトのこと気にかけてくれててね。
今は形成なんだけど、昔は外科全般もやってたんだって?執刀を引き受けてもいいって話してるらしくてサ」

 ブラックバードの名を聞き、はやてが顔を上げる。

「あ、そうなんですか──実はあの子、ブラックバード──八神先生の親戚なんですよ。
だよね、はやてちゃん」

「そうなのかい?」

「あっ、うん……リインはいちおーわたしのイトコにあたるけど……」

「ふーん……」

 近しい人間がこのような危険な行為をしているのを、気にならないわけはないだろう。
 口に出しそうになって、アルフは言葉を抑えた。
 会ったばかりのこんな少女に話してどうする。共感を得たいのか、それは一時の慰めだ。

「私はいつも通り横羽から上がりますから」

「わかった、伝えとく。期待しないで待ってるよ」

 アルフは32Rに乗り込み、走り去っていく。
 後ろで、はやてとヴィータが心配そうに見ている。

128 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:37:34.43 ID:Xr2XwdBo
 32Rの排気音が道の向こうに聞こえなくなってからしばらくして、ヴィータが重く口を開いた。

「……高町、やっぱり行くのか、どうしても」

「別にフェイトさんが来るからとかそーゆうのじゃないよ。どっちにしても水曜は走りに行くつもりだった……
それで、たまたま同じ日にフェイトさんも走る──それだけのことだよ」

「友達じゃないのか、その、フェイト、って人は」

 そういえば、はやてやヴィータはフェイトのことを知らない。今のアルフもそうだ。
 アニメにそれほど詳しいわけではないだろうし、最近結構な枚数を売っている歌手、としては
テレビなどで目にしたことがあるかもしれないが、名前を聞いてすぐには記憶を結び付けられない。
 ましてや、芸能人のマネージャーなどソレ単体で名前が知られることなどまずない。

「うーん、どうなのかな。あんまりそういうのって、考えたことなかったんだ、どんな人間とでも、
永遠に一緒にいられるってわけじゃあナイし……たとえば、学校はいつか卒業するし、
バイトもいつかはヤメるだろうし、そしたらその場で出会ってた人たちとは離れちゃうワケでしょ。
はやてちゃんだって、高校に入ってからはしばらく会ってなかったしね」

「…………」

「でも、今はこうしてまた会ってるわけでしょ。それってやっぱり、なんていうかな、縁みたいなもの、
あるんじゃないのかな。さっきヴィータちゃんが言ってた、運命みたいなものね」

「──フェイト、って人は、おまえと出会う運命だったのか?」

「私は、湾岸に行くよ。フェイトさんが湾岸に来ようという思いがあるなら、きっとどこかで会えるんじゃないかな」

 夕日を浴びて、Zがあかね色に染まっている。

 なのはは昔からこういう人間だった、とはやては思い返していた。
 幼いころは、ぽややんとしたのん気な人間に見えたが、長じていくと、それがどこか世の中を達観し、
自己の認識と枠組みをきっちり持っている人間なんだと気付いていった。
 来る者は拒まないし去る者は追わない、それをいちばん体現した人間だとはやては思っていた。

129 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:43:12.49 ID:Xr2XwdBo
 夕暮れがうっすらと闇に沈んでいく中、アルフは32Rを遠見市へ向けて走らせながら、
あの少女の顔を思い出していた。
 高校3年生ということは、フェイトよりもひとつ下になる。
 それなのに、どこかずっと大人びて見えた。

 心の中では、迷いや不満もあるのかもしれない。でも、そういった自分の中の負の要素に、逃げることなく向き合っている。
 だからこそ、あのZを乗りこなすことができるのだろうか──



 約束の水曜の夜、リインは海鳴大学病院からいったん常盤台へ向かい、スカリエッティを拾ってから
三ツ沢線経由で首都高へ上がった。今回、フェイトは一人で乗る。

「気になりませんか?あれほどの極端なチューンをした車なら……」

 ナイトロシステムを搭載したテスタは、全力加速ではまさしく手の付けられない暴れ馬となる。
 首都高エリアでこの車の最高速度を発揮するには、神奈川湾岸線、川崎トンネルからつばさ橋までが
完全なクリア状態であることが必要だ。

「横に同乗者がいるのはやはり気になるものだからね。もし何かあっても自分だけで済む──それに」

 大師のオービスを越え、羽田線エリアに入ると同時にテスタと911は速度を上げていく。

「私にできるのはマシンのチューンだけだよ。彼女個人のメンタルな部分にはタッチできない」

 フェイトはまだ、テスタのフルパワーを操り切れていない。今なら、余裕でオーバーテイクできる。
 コーナーごとに車体半分だけラインをイン側に寄せつつ、リインはテスタの動きを注視する。

 気の済むまで走る──それは実を言えば、自分の限界を超えるところまで踏み込み、自分の力のなさに
打ちひしがれるという意味だ。本当に満足して湾岸を去っていく者などいない。
 ほとんどの人間は、これ以上走り続けられないと悟って降りていく。
 たとえば車を維持するための資金が尽きたり、取り締まりにあって免許がなくなったり、
あるいは事故で一生ものの後遺症を負ったり、命を落としたり──

 今までは、他の走っている者たちがどんな結末を迎えようと気にも留めなかった。

 だが、今は、あの歌手の少女がそうなってしまうのが、つらい。
 それは彼女に、仲間意識以上の何かの感情をいだいたからなのか。

130 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:49:10.18 ID:Xr2XwdBo
 浜崎橋を左へ折れ、環状外回りへ入る。数周回ってタイミングをとり、湾岸へ出る。

「同乗者がいると気になる──と言いましたよね……もちろんそれは私でも」

「ははっ、まあ君なら多少のプレッシャーは平気だろうがね」

「運転技術そのものよりも走りこんだ経験の差が大きいと」

「もちろんそれもある。だが、長い間、たくさんの走る人間を見ているとわかるのだよ。
彼らは仲間を求めて走ることもあれば、仲間を拒絶するために走ることもある──」

 パワーに慣らしていくように、テスタはパワースライドの量を調節している。ちょうどよい荷重のかけ方と
加速時のアクセルの開け方、フェイトならばすぐにこの車の乗り方をつかむだろう。

 湾岸を一度横浜方面へ下っていき交通量の流れをつかんだら、横羽経由で環状に戻り、
そこから本気のアタックに臨む。時間的にも、ドライバーの体力的にもそれが限界だ。
 今夜、その時だ。



 同時刻、中央自動車道八王子インターを東京方面へ、スープラが発進した。
 組みあがったエンジンをボディに載せ、問題なくパワーが出ていることを確かめてからセッティングに入る。
 900馬力を出すためにはタービンをただ組んだだけではできない。増大した吸気量に合わせて、
燃料噴射量と点火タイミングをきっちり調整しなければパワーは出ないし、最悪エンジンブローの危険もある。

 セッティングのためにマリーがナビシートに乗り、アリアの運転で環状線に向かう。

「っちょ、待──!!」

 走行車線に入るなりいきなり踏み込んでいくアリアに、マリーは思わずノートパソコンを抱えて叫ぶ。

 アリアは素早くシフトアップし、回転を抑えたまま速度を乗せていく。

「大丈夫よ、回転(レブ)はオーバーしてない」

「だからっていきなり全開はないでしょ全開は!ったく貴女ってコは……!」

「初期アタリはつけてるんでしょ?だったら平気よ」

「まあーそりゃそうだけど……ッ!」

131 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 18:55:57.43 ID:Xr2XwdBo
 大排気量ターボエンジン独特の太く重い振動を伴った排気音が響く。環状を周回し、低速コーナーでの
エンジンのツキからストレートでのノビまで、全域にわたって感触を確かめる。
 普段の澄ました顔に似合わず、走りの激しさはロッテよりも上かもしれない、とマリーは思っていた。

「そういえば、この近くなのよね、クロノ君が働いてるの」

 環状線の高架の上からは、六本木のビル街が光の海のように見える。銀河の上を滑る船だ。

「降りてみる?この時間ならお客もひけ始めてるんじゃないかな」

「OK──じゃ下に降りてから電話入れてみましょう」

 飯倉出口から下道に降り、外苑東通りから六本木へ向かう。
 客待ちのタクシーが道路端に群れをなし、その中を、時折高級外車が走り抜けていく。

 この場所では、スープラはまるで華やかな舞踏会に紛れ込んだ野獣のようだ。

「停められるトコある?」

「大丈夫っしょ、こんな車警察もレッカーしないって」

 二重駐車でスープラを停め車から降りるマリーとアリアだが、アリアはともかくマリーはいつも基地で着ている
ツナギ姿なので、六本木の街にはあからさまに違和感を放っている。ちょっとよく見れば軍属だとわかるので、
それだけで人々は若干避け気味になる。

「クロノくーん!」

 客らしき女を待たせ、クロノはマリーのもとに駆け寄ってきた。

「ごめんね、急に呼び出しちゃて」

「いえ、いいですよ──スープラ、組みあがったんですね」

「まあまだとりあえず組んだだけ、ってところだけどね。今夜は一応セッティング出しで環状を回るけど、どうする?」

「そうですね、一応店が3時までなんで、それからでいいですか」

「了解。じゃあそれまでに大体のセッティングはキメとくから、仕事が終わったら湾岸で踏んでみよう」

「わかりました」

 クロノは女のところに戻り、アリアとロッテはしばし、六本木の人ごみを眺めた。
 日本は狭い国だ。よく言われることだが、心の距離は、しかしもっと離れているような気がする。

 視界に入る何十人もの人間たちは、名前も知らない、昼間何をやっているのかもわからない、
赤の他人だ。そして、見知った人間は、人ごみの中に紛れればあっという間に見失ってしまう。

132 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:03:10.42 ID:Xr2XwdBo
 午前2時45分、Zは浜崎橋ジャンクションから環状内回りへ入った。最近、なのはは内回りの方が
時間帯によっては道がすくと気付いていた。外回りは、主に環状の周回タイムを競ういわゆるルーレット族が
走るため、それこそ時間帯によっては走り屋の車で混雑が起きてしまうほどだ。
 内回りならば、それほど攻めて走る車がいないので、周回しつつ湾岸へ出るタイミングをはかるにはいい。

 内回りを一周し、なのはは浜崎橋から台場線経由で湾岸へ出る道へ乗った。
 レインボーブリッジを走り抜け、有明ジャンクションから湾岸西行きへ乗る。

 海底トンネルを踏みきった後、すぐに大井ターンで環状に戻り、今度は江戸橋から湾岸へ向かい、辰巳から乗る。
 頭の中でルートを組み立てながら連絡路を降りた時、本線を走ってくる車の姿を、なのはは見た。

 ポルシェ・911ターボ。フェラーリ・テスタロッサ。



 アフターファイヤーの閃光とともに、テスタのリヤハッチ両サイドから白い湯気のようなものが噴出する。

「パージバルブ!?」

 ナイトロシステムを搭載する車両には、空燃比の急激な変化を避けるため、配管内の空気を強制排出する装置が
取り付けられる。テスタも、NOS噴射のオンオフを頻繁に繰り返す方式を採っているため、
レスポンスアップのために余剰酸素をすばやく追い出すパージバルブを装着していた。

「これは冗談抜きで速いよね、レイジングハート──!」

 Zも、全開加速からのすばやいシフトアップで、ブローオフバルブの鋭い排気音を吐き出す。

「全力でいかなきゃあ──いつだって!」

 ギアチェンジに伴うクラッチのオンオフによって、ドライブトレーン全体がねじれるほどのトルクがかかる。
 2基装着されたK26タービンはほとんど回転数を落とすことなく、圧縮された高圧空気を大気解放する。
 ZはMAXブーストで2.5kg/cm2まで掛かる。調子が良ければ2.8kg/cm2まで掛かり、そこで
ウエストゲートが作動しはじめることを確かめている。

 バシュッ、バシュッという鋭い過給音を鳴らして、3台の車はエンジン全開で突っ走る。

133 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:10:25.50 ID:Xr2XwdBo
 このZが何馬力出ているかというのも、シャーシダイナモで測ったわけではないので正確なところは分からない。
 過去に制作されたチューンドS30Zの例からいくと、L28改3.0リッターにブースト2.1kg/cm2かけて
800馬力という車両がある、とコウちゃんから聞いていた。
 なのはは正直なところ、数値の大小よりも、Zがパワーを出していることを実感する方が好きだった。

 全力を振り絞って走るZは、たまらない快感だ。そしてその快感は、一時のものであって永遠には続かない。

 直線区間はすぐに終わり、きついS字にアップダウンがついたようなレイアウトの浜崎橋ジャンクションに突入する。
 環状内回りに向かう場合、ここは手前の直線でスピードをのせたままターンインすることになるので
車体が跳ねる。ストロークの良い足回りでなければタイヤが浮いてしまう。
 パワーを出すだけではない、きちんと踏める足に仕上げることが、速い車をつくるためには必要だ。

 先頭からZ、テスタ、911と続く。そのまま汐留のS字へ。ゆるい左の後にきつい右が待ち構える。
 コーナー入り口での車線が広く、さらに八重洲との分岐のため出口は極端に狭い。
 狭まっていく道路に、意識を振り切られたら、そのときは壁に張り付くだけだ。

 アウトぎりぎりまで道幅を使って立ち上がるZ。横Gをねじ伏せるようにパワーに任せて立ち上がってくるテスタ。
 911は余裕をもってついてくる。

「くくく、よくやるねぇお嬢さんも。この狭い環状でよくもあれだけ自在にテスタを振り回せるもんだ」

 おそろしく乗れている。ドライバーの意のままに動いている、テスタの後姿がそう伝えてくる。
 だがそれは、綱渡りのように一瞬であっけなく切れてしまうタイトロープだ。

「しばらくチューンの様子を見ていて気付いたんですが」

 銀座シケインエリアで速度は落ちてくる。3台とも、狭い道にアクセル全開時間を長く取れない。

「ピークパワー重視で下は切り捨て、ではないんですね。トルクカーブもずいぶんフラットで──」

「踏みっぱなしとゆーワケにはいかないからね、公道は。100km/h以下に落ちる時間が長いこの環状なら
2速中心でいける──そこから踏み足して加速していくとき、中速トルクの太さがものをいうよ。深川に回ればわかる」

134 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:18:37.58 ID:Xr2XwdBo
 江戸橋ジャンクションを右へ入り、箱崎の合流へ突入。一般車は少ない。
 その中に、見覚えのある車が現れた。フェイトの注意が、一瞬、Zから後方のスープラに移る。

「80スープラ──クロノくん!?」

 深川線へ入る並行路を、それぞれ右側をスープラと911、左側をZとテスタが走り、高架の上で合流する。

「マリー、あの車は──!」

 クロノがつぶやく。マリーも、目を見張るようにして先行するポルシェのテールを見つめている。

「間違いない。スカリエッティチューンの3台──!」

 悪魔のZ。そしてブラックバード。さらに、ガンメタのテスタも続く。
 単なる数字以上の速さがあるといわれる、恐るべき車たち。

 クライドとグレアムが追っていた、首都高の帝王。それは現実の存在として、クロノたちの前に現れた。

「今夜はオーナー本人のドライブのようですね」

 バックミラーに目をやり、リインが言う。スカリエッティはサイドミラーでスープラの姿を留め、
笑みを消して見つめている。

「あれかね、君も連中に何かのしがらみがあるのかね。だとしても、私のことを気にする必要はないよ。
走る以上、いつだって自分のために踏んでいきたまえ。でなければ死ぬだけだ」

 リインは正面を見据え直し、アクセルを踏みきっていく。
 鋭く加速する911は福住の立ち上がりでテスタをパスし、Zに並んだ。

「(グレアム提督──貴方は、この私を撃墜することを目的にあのスープラをつくった──
しかし、提督──貴方はその事実をクロノ君に教えているんですか──)」

 スープラは組みあがったばかりでエンジンを全開で回しきれないのだろう、最後方でやや距離をとってついてくる。
 湾岸に入れば、おそらく離れる──だが、ここで出会った以上、きっちりと走り切らなければ、心の決着がつかない。

 リインもまた、過去の──クライドの思いを知っていた。

135 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:27:00.23 ID:Xr2XwdBo
「(私が在日米軍を離れるとき、慰留してくれたのはあなただったね、ギル・グレアム提督──
たしかにあの時の私の選択は正解とは言えなかったかもしれない、だが私は自分に嘘をついたつもりはナイ──
選ぶのはいつだって自分自身だ、そしてその結果を受け止めるのもまた自分自身だ──)」

 在外軍人の事故死。軍務中の事故ではなく、しかも駐留先の日本で起こした事故。
 ただでさえ風当たりの強かった米軍は、日本からの追及を恐れ、クライドの事故を隠ぺいしようとした。

 妻であるリンディも本国艦隊に配属替えとなり、スカリエッティも軍を離れ、一民間人
として生きていくことになった。

 そして、クライドが死んだとき、もっとも近くにいたのがリインだった。

「(アクシデントは魔の時には起こらない──“走り”で死ぬことは絶対に無い、確かにそうだった──
走りではない、ただの下道で、スピードもまったく出ていなかったのに──)」

 また今度──いつものようにそう挨拶して別れ、交差点をそれぞれの方向へ曲がろうとしていた、
ダブルエックスと911の2台に向かって、アクシデントは迫ってきた。
 原因となった歩行者はすぐにどこかへいなくなった──いや、原因というのも憚られるかもしれない、
とにかく、道端から飛び出してきた酔っ払いをよけようとして車線変更しようとした911に、
隣の交差点から出てきたトレーラーが、直進のまま突っ込んできた。
 そこで、咄嗟にリインの911をかばおうとしたのか、ダブルエックスが割り込んで──

 ほとんど真正面からトレーラーヘッドに蹴散らされたダブルエックスは、車体がちぎれるほどに大破し、
病院に搬送された時点で、ドライバーは死亡が確認された。
 トレーラーとの衝突軌道からダブルエックスによって押し出され、ハーフスピン状態で停車した911は、
 車体側面にダブルエックスの銀色の塗料がひっかいていた。

 911を降り、なすすべもなく立ち尽くしていたリインの目の前で、潰れて横転したダブルエックスは、
クライドを乗せたままガソリンに引火して爆発炎上した。

 誰も、目撃者はいなかった。
 当時のリインはまだ医大生で、研修医としては勤務していたが、まだ処置を任されるほどにはなっていなかった。
 しかも、当事者が米軍人であるということで民間の病院は救急受け入れを拒んだ。

 クライドを助けられなかった──その悔やみは、ずっとリインの胸に深く残っていた。

136 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:34:21.51 ID:Xr2XwdBo
 木場の高架を湾岸へ向かって、テスタ、Z、911、スープラが疾走する。
 クライドの死から10数年がたち、今や彼の息子が、父親が乗っていたのと同じ名の車で走り始めた。

 どんな選択をするのも、どんな結果を見るのも、それはすべて自分自身の意志だ。

 それを教えることが、クライドとの約束だった。
 自分の意志で走れ。誰に強制されるでもない、誰の後を追うでもない、自分の意志でこの世界に踏み込んで来い。

 しっかり見てくれ。

 辰巳ジャンクションへの合流路へ向かい、Zと911が並んで踏み込む。
 そのすぐ後ろからテスタが続く。

 スープラは50メートルほど後方、この合流路通過でいったんは差は詰まる。

「マリー、今ブーストいくつでいける」

「──ッ、い、1.8!今燃調を補正したから、このまま踏み切って!」

「よし──とらえた!」

 クロノの視界に、ポルシェの丸いテールと、テスタの四角く平べったいテールが見えている。
 懐かしささえ覚える。
 あのポルシェ、ブラックバードを初めて見たのはほんの数週間前のはずなのに、ずっと前、
幼い記憶の中に、あのポルシェがいたような気がする。
 父が自分を車でどこかに連れて行ったという記憶はない。
 だが、今こうして走っているときに、懐かしさを感じている。

「クロノくん──!」

 湾岸に出たテスタは、この4台の中ではトップのパワーだ。本気で踏んでいけば間違いなく
トップスピードはいちばん上だ。踏んでいければ、だが。

「似た者同士って感じたのは──車だけじゃない、走りだけじゃない──!」

 4速シフト。元々6800rpmがレブリミットのテスタは、そのままではかなりワイドなギア比を持つ。
 Zや911が5速にいれる速度でも、まだ4速で引っ張れる。その分、加速で有利だ。

137 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:43:22.70 ID:Xr2XwdBo
 辰巳から湾岸に合流すると、道はわずかに左へそれている。辰巳から有明まではおよそ2キロメートル、
全開で踏めばものの数十秒で走り切ってしまう距離だ。
 第1車線がクリア状態だ。一般車はほとんどいない。

 踏み込む。

 Zと911が5速へシフトアップし、激しくアフターファイヤーを噴く。速度は250km/h。ここからの加速、
5速オーバードライブギアでの加速が、湾岸での勝負どころだ。
 テスタの加速力はZも911をも完全に凌駕していた。NOSを噴射し、シフトアップに伴う回転落ちの
隙をついていっきにテスタが前に出る。

 270km/h、6速ミッションを搭載するスープラがシフトアップ。
 第2車線を走っていたコンパクトカーを右側からかわす。オーバーテイク時の風圧は
車体を瞬間的に揺さぶる。

 290q/h。テスタはここで5速に上げる。

 普通のエンジンがオーバードライブ(減速比が1未満のギア)であえぎながら加速していく中、
テスタは余裕を持ったトルクで加速できる。

 東京ビッグサイトのシルエットが視界の左端に瞬く。

 クラッチを踏みつけ、シフトレバーを右奥の4速ゲートから、右手前の5速ゲートへ叩き込む。
 左足を戻し、クラッチがつながる──

「!!」

 クラッチペダルを通して連続的な打撃音が伝わる。金属がひしゃげ、引きちぎれる音がする。
 駆動力を抜けない。すぐさまシフトレバーをニュートラルに戻し、
ブレーキを踏みながらダブルクラッチで4速へ。
 だが、これでも金属音がやまない。どのゲートに入れても手応えがない。
 すべてのギアが使用不能になっている。

「(クラッチじゃない!?ミッション……まさか、デフなの!?)」

 テスタの車速が落ちるにしたがい、金属音のトーンが変わってくる。おそらく、デフケース内でギアが割れたのだ。
 欠けた歯がケース内で暴れ、ぶつかる音だ。こうなっては駆動力を伝えることができないので、
このまま止まってしまえば再発進はできなくなる。

 Zと911はそのまま加速して道の向こうに消えていく。
 なんとか惰性走行で高速を降りようとするフェイトだったが、速度の落ちが激しくランプまでたどり着けそうにない。

「(ブローしたギアの抵抗が大きすぎる──このまま路肩で立ち往生かナ──)」

 パージバルブから、最後のナイトロガスが噴出され、白い煙となって消えていく。

「(──!?)」

 フェイトがふとバックミラーを見ると、スープラがテスタに従って減速し、ハザードランプを点けていた。

138 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 19:52:14.43 ID:Xr2XwdBo
 高速出口そばの一般道の路肩に、テスタとスープラは並んで停まった。
 スープラから、クロノとマリーが降りて駆け寄ってくる。

「ごめんね、手間かけさせちゃって──ゲホッ、ゲホッ!!」

「っ、だ、大丈夫!?」

 激しく咳き込むフェイトに、マリーがあわてて駆け寄って背中をさする。
 街灯の明かりだけではわかりにくいが、クロノは飛び散る血滴を見た。

「はは、は……やっぱ、医者の言うことはちゃんと聞いてたほうが、よかっ、……」

 道端の縁石に腰を下ろし、フェイトは顔を伏せた。
 もう体力の限界だ。予想以上に消耗していた。だから、シフト操作をミスってしまった。
 クラッチは確か許容トルク150kgmのトリプルプレートにしていたが、デフの方が耐えられなかった。

「あとの2台は」

「レイブリ経由ですぐ戻ってこれます、この電話に──すみません、もう声が、ゲホッ」

 短縮ダイヤルを表示させた状態でフェイトはクロノに携帯電話を手渡した。そのまま、発信ボタンを押す。
 やがて、電話のスピーカー越しでもはっきりとわかる、空冷ポルシェのエンジン音が聞こえてきた。

「……もしもし」

「やあ、お嬢さんじゃないのかね?電話もできないほどひどい怪我かね。それとも──」

「──大丈夫です、今牽引して高速を降りたところです」

 クロノはスカリエッティの言葉をあわてて遮った。たとえ冗談でも、この少女がそのような目に遭うことは考えたくない。

「場所は有明出口降りてすぐの──そう、りんかい線国際展示場駅の近くです」

「わかった。すぐに拾いに行くよ。お医者様もお急ぎだからね」

 スカリエッティはそう言って一方的に通話を切った。

 クロノはフェイトに携帯電話を返し、マリーはテスタの様子を見ている。

「とりあえず車体に目立ったダメージはないようね……それにしてもよほどのパワーが出ていたのね」

「直るのか?」

「フェラーリに限らずMR車は駆動系がイクと厳しいからね──
デフとトランスミッションが一体化してるから、ギアボックスごとアッセンブリー交換で300万円コースよ」

「キツいな」

「でも、もっとキツいのは彼女の方よ──」

139 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 20:00:30.74 ID:Xr2XwdBo
 数分後、有明出口で待っていたフェイトたちのところにZと911がやってきた。
 スカリエッティは911を降りるとすぐにテスタの様子を見に向かう。

 リインはゆっくりとフェイトの前に立ち、体育座りでうつむいているフェイトに静かに声をかけた。

「──こんな終わり方じゃあ納得しませんか」

 フェイトは顔を伏せたまま、じっと、思いをかみしめていた。

 母は、どうして自分に黙っていたのか。
 もともと身体が弱いのに、どうして無理をして仕事を続けたのか。

 そんな母を知っていたのに、どうして自分は家を出て、遠く離れた海の向こうの国へ来て、こんなことをしているのか。
 家族のことを、もう放り出してしまったのか?もう、母が人知れず死んでも、知らんぷりをするのか?

 思いはどんどんあふれてきて、止まらない。

 自分もまた、母と同じことを繰り返すだけなのか。咳き込んだ時に口を押えた手のひらには、赤い血が散っている。

「くくく、きっちり踏み切ってくれたようだね。いやチューナー冥利に尽きるよ。
4速全開で引っ張って5速につないだ瞬間のミッションブローだね。
まあ予想していたほどダメージはひどくはないよ、エンジンは無傷だ」

「こうなることをわかっていたんですか?駆動系の容量アップをしたのに、まるでデフだけを──」

「マリー、やめろ」

 スカリエッティに食い下がろうとするマリーをクロノがなだめる。

「──じゃあ、行きましょうか。すでにオペの手配はしました。隣に乗っていきますか?20分で海鳴まで行きます」

「うん、頼むわ──」

 よろよろと立ち上がり、フェイトは911のナビシートに腰を下ろす。

 スカリエッティは自分の電話で、レッカー業者を呼んでいる。

「マリー、オレたちも帰ろう。長居してもしょうがない」

 後ろでじっと黙っていたなのはは、ゆっくりと、911に歩み寄って、サイドウインドウ越しにフェイトに呼びかけた。

140 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 20:06:03.98 ID:Xr2XwdBo
「スカリエッティさんに伝えてください。私が退院するまでに、絶対テスタを直しておいて、
チューン代の追い金もあとで持っていくから──」

「──うん」

 スープラがエンジンをかけ、走り去っていく。2JZエンジン独特の、力強い排気音が響く。

「フェイトさん」

「さん付けはいらないよ、ファーストネームだけでいい」

「声が直ったら、また一緒に走ろう、フェイトちゃん。それまでコレ、持っててね」

「うん、なのは──」

 なのはは髪を留めていたリボンをほどき、フェイトに渡した。フェイトも、同じようになのはに渡す。
 白と黒の交換。お互いに髪をおろした姿に、柄にもなく、なのははどきりとしていた。

 911の運転席につき、リインは澄んだ怜悧な赤い瞳でなのはを見上げた。

「それじゃあ、高町──あとは私に任せろ」

「お願いします」

 フェイトを乗せ、リインは911を発進させた。
 このまま国道357号を走り、臨海副都心ランプから再び湾岸に乗って海鳴まで向かう。

 後には、スカリエッティとなのはだけが残された。

 Zは、エンジンをかけたままアイドリングし続けている。

「ん、テスタは私が責任を持って預かっておくよ、君は気にせず帰りたまえ」

 スカリエッティはわざとらしく言い放ったが、なのはは、よく考えればこの男に会うのは初めてだった、と気づいていた。
 ジェイル・スカリエッティ。無限の欲望、地獄のチューナーと畏れられ、そしてこの悪魔のZを
つくりあげた男。このZは、何十年かぶりに、制作者の前に戻ってきたのだ。

「ジェイル・スカリエッティさん──ですよね。あなたが、このZをチューンしたんですよね」

「ふむ、最近私は若いお嬢さんがたに人気のようだね」

「どうしてこのZが、“悪魔のZ”と呼ばれているのか、教えてください」

 Zのアイドリングは、900rpmで安定している。チューニングエンジンとしては驚くほどのなめらかさだ。
 スカリエッティの視線の威圧にも、なのははひるまず、見据え返している。

 悪魔のZ。その作り手、そして乗り手──出会ったのは、運命だった。


   SERIES 5. 運命 END

141 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/06/27(月) 20:12:37.80 ID:Xr2XwdBo
今日はここまでです

随分長くなりましたー
パージバルブとはワイルドスピード2で主人公のGT-Rがやっていたやつです
ちょうどデバイスの余剰魔力放出のように水煙が出ます
アフターファイヤーの色も魔力光を反映しているかな?

湾岸線はビッグサイトのすぐそばを通ってますからねー
国際展示場駅といえば湾岸の基地外騒ぎことコ○ケではおなじみでしょうかー

もし立ち寄ったらあのシーンはこの辺だったかな?とかやるのも面白そうですねー

ではー

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/27(月) 21:39:37.32 ID:8slbHdHD
投下乙です
フェイト無茶しすぎだろw
でもなんと言うか、らしい気もする
それにしても相変わらずカッコいいな

143 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:20:53.42 ID:g3j6GQZ2
職人の皆様、投下乙です!
>◆e4ZoADcJ/6氏
ミラクルライトキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
一発逆転のアイテムにして、希望の象徴でもあるあれがここで出るとはw
百合ショッカーから、ディケイド達はブンビーさんを初めとした人々の希望を守りきれるのか
期待ですね

>Gulftown 氏
フェイトさん……何だか見ていて辛くなりそうな程、頑張ってますね
それが彼女の魅力かもしれませんが。
リインの方も、クライドさんを救えなかった過去を持っているとは……
哀愁を感じさせますね。


それでは自分も、この後7時45分より地獄の四兄弟最新話を投下させて頂きます

144 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:46:09.09 ID:g3j6GQZ2
時間なので、これより投下を開始します



 キックホッパーは、迫り来る打撃を全て避けていた。
 フォルミカアルビュスワーム達は、それぞれ三方向より四肢を用いて攻撃を仕掛けてくる。
 先制攻撃のように放たれるフォルミカアルビュスワームのジャブ、素早く振るわれるオキュルスのストレート、相手を砕かんとばかりに放たれるマキシラの回し蹴り。
 しかし、どれもキックホッパーにかわされてしまう。どれも乱暴で、力任せの攻撃だったため。
 威力は凄まじいかもしれないが、武術に心得さえあれば避ける事など容易い。

「フンッ!」

 そしてまた一度、乱暴に迫るオキュルスの拳を横に飛んで避けながら、キックホッパーは蹴りを放つ。
 左足は異形の脇腹に沈み込み、激突の勢いで地面に叩き付けた。
 フォルミカアルビュスワームは、口から白いガスを吐き付けてくる。しかしキックホッパーはそれも軽々と避けて、反撃のキックを叩き込んだ。
 続くように、キックホッパーはマキシラの腹部に前蹴りを繰り出す。6.5トンもの威力によって、ワームはまた一匹吹き飛んだ。
 その一方で、ザビーとエリオの戦いに割り込もうとするワームを見つける。しかしキックホッパーは、神速の蹴りでその動きを阻んだ。
 誰であろうと、弟の邪魔をさせるつもりはない。

『矢車さんは……僕を助けてくれた矢車さんを殺すなんて事は、例えストラーダだろうとさせはしない!』

 あいつの言葉を、その思いを聞いた。
 そこに闇など一片も感じられず、光に満ちている。
 いつもなら、それは『下らない』と吐き捨ててから、ザビーを見捨てたかもしれない。
 でも今は、聞き逃してはならないように感じる。
 だから、目の前のワームどもにザビーの邪魔をさせたりはしない。

「ライダー……ジャンプッ!」
『Rider Jump』

 キックホッパーは、ホッパーゼクターの脚部であるタイフーンに手をかける。
 発せられる音声と共に、彼は全身を低く沈めた。ゼクターの中央が強い輝きを放ち、膨大なタキオン粒子が全身に流れる。
 そして、キックホッパーは跳躍した。衝撃によって、地面が僅かに砕ける。
 上空高くまで跳んだキックホッパーは、再びタイフーンを倒した。

「ライダーキック!」
『Rider Kick』

 タキオン粒子と共に吹き出す、ゼクターの声。直後、力が流れていく左足をワームに向けながら、キックホッパーは急降下を開始した。
 膨大なエネルギーを纏った蹴り、ライダーキックはマキシラの胸部に激突する。左足のアンカージャッキが稼動し、踵からタキオン粒子が流れていった。
 マキシラを踏み台にしながら、キックホッパーは再び跳ぶ。空中で身体を捻りながら、キックの方向を変えた。
 その先にいるオキュルスに、ライダーキックを叩き込む。そこから跳躍して、フォルミカアルビュスワームに最後の一撃を放った。
 キックホッパーが地面に着地した瞬間、ワーム達の身体は轟音と共に爆発する。ZECTの生み出したマスクドライダー達の必殺技は、対象を分子レベルにまで崩壊させる威力を持つため。

145 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:47:11.23 ID:g3j6GQZ2

「エリオっ!?」

 不意に、女の声が聞こえた。
 キックホッパーは、そちらに振り向く。見るとそこには、以前出会った金髪の女が立っていた。
 その身体は、黒いジャケットと白いマントという、対極に位置する色の服を纏っている。
 あの女は弟を襲ったワームのオリジナル。ワームは人間の記憶や人格を擬態する能力を持つため、あの時エリオに向けた態度が本来の元と思った。
 だが弟は、あの女をライダーキックから庇おうとする。何が何でも、守ろうという意志が感じられた。

「……あの時の女か」
「あ、貴方は……!?」

 女は自分の事を、警戒しているような目を向けている。もっとも、以前襲いかかったのだから当然かもしれない。
 別に弁解などするつもりはないし、誤解を解く気もなかった。危険人物と思うなら、勝手にすればいい。
 だが、前回のように戦いを仕掛ける気にはなれなかった。恐らくあの女は弟にとっての光で、守るためなら竹篦返しも恐れない程の存在かもしれない。
 しかし闇に堕ちてしまったから、目を背けるようになってしまう。真相は知らないが。

「こいつは、本物だ」
「えっ?」
「ワームと戦った……本物の『エリオ・モンディアル』だ」

 倒れたエリオを見ながら、キックホッパーは真実を語る。
 女は怪訝な表情を浮かべるが、別にどうでもいい。あの女からは、擬態したワームが持っていた悪意が感じられなかった。
 だから、弟を任せても良いかもしれない。何よりも、これ以上前に立つ事が出来なかった。
 それほどエリオが、眩しく見えてしまう。闇に堕ちても尚、光を守ろうとする心が。
 そして、弟達がワームである事を知っても、結局は見捨てようとはしない。むしろ自分の正体も話した。
 もう、まともに見る事など出来ない。だから、二人から背を向けた。

「ま、待ってください!」

 市街地の時のように、引き留めようとするあの女の声が聞こえる。
 しかしキックホッパーは、振り向くつもりも止まるつもりもなかった。そんな事をしても、何の意味もない。
 彼は知らないが、奇しくもその行動は似ていた。エリオが初めて仮面ライダーザビーに変身した日、ここにいるフェイト・T・ハラオウンから去っていった理由と。

「私は時空管理局執政官のフェイト・T・ハラオウンと言います! 貴方の話を、詳しく聞かせていただけませんか!?」

 フェイトの名乗りを耳にするが、キックホッパーは気に止めなかった。
 穴蔵の中へ潜るかのように、闇を進んでいく。その身体が完全に飲み込まれるまで、時間は必要なかった。





「…………ちく、しょう」

 異形の足元は、壊れかかった人形のようにふらついていた。
 蜂を彷彿とさせるようなその怪物、ポリティスワームは使い物にならなくなった左腕を支えながら。
 それこそが『エリオ・モンディアル』に擬態したワームであり、ストラーダを奪った張本人。
 ザビーとの戦いの末に吹き飛ばされたが、咄嗟に高い戦闘能力を誇るこの身体に変わり、力を振り絞って撤退した。
 だが魔力とタキオン粒子の暴走はそれだけで防げる物ではなく、重傷を負ってしまう。

146 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:50:17.58 ID:g3j6GQZ2

「何でだよっ、何で……何で僕が負けるんだよっ! ふざけんなっ!」

 ポリティスワームは忌々しげな声を漏らした。
 プロジェクト・Fによって生み出されたコピー品に、優良種たるワームが負ける。
 そして、キックホッパーという名のイレギュラーが介入。あまりにも、不条理かつ不愉快な結果が続いた。
 こんな事があって良いはずがない、こんな事が許されて良いはずがない。
 ここは一旦撤退して、管理局まで戻る。そして、奴らが敵である事を報告して潰しに行く。
 ポリティスワームの中で、憎悪が膨れ上がっていた。その時。

「何で負けたかって? そんなの君が弱いからに決まってるじゃん」

 憤怒の言葉は、嘲笑で返される。
 その直後、彼の視界に青白い極太の光線が入り込んできた。彼は知っている、それがディバインバスターの輝きであると。
 あまりにも唐突過ぎて、ポリティスワームに反応する余裕が与えられない。いや、仮にあったとしても傷の影響で回避など取れなかったが。
 ポリティスワームの身体は一瞬で輝きに飲み込まれ、吹き飛ばされてしまう。

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 凄まじい絶叫と共に、元々深い傷が刻まれていた左腕が、跡形もなく消滅した。
 そのまま、ポリティスワームは地面に叩きつけられていくが、何とか体勢を立て直す。
 彼が振り向いた先では、白いバリアジャケットを纏った青髪の女、スバル・ナカジマに擬態したワーム・ゼロセカンドが立っていた。

「全く……仲間がせっかく駆けつけてくれたのに負けるなんて、全然駄目じゃん」

 その瞳は、憐憫が感じられる。しかし、情などは一切込められていない。
 むしろ、強者が弱者を見下すような目線だった。

「な、何の真似……で」
「負けた上に、ワーム数体を無駄に死なせた。もう君みたいな無能はいらないよ」

 ゼロセカンドの声が、徐々に嘲りで染まっていく。
 それを見たポリティスワームは、確信した。このままでは、自分は殺されてしまう。
 巫山戯るな。そんな事があってたまるか。
 相手は凄まじい力を誇るワームだが、今は脆弱な人間の姿を取っている。
 いくらバリアジャケットを纏っているとはいえ、その隙を付いてクロックアップをすれば勝機はある筈だ。
 そう思いながら、ポリティスワームは疾走しようと前に踏み出す。その直前だった。
 何処からともなく、一陣の影が見える。それは勢いよくポリティスワームの腹部に激突し、爆発を起こした。

「ぐあっ!?」

 突然の衝撃で、その身体は再び地面を転がる。その度に傷口が広がり、痛みが増していった。
 数度の回転の末、ポリティスワームはようやく止まる。顔を上げた先では、ゼロセカンドが黒いカブト虫を握っていた。
 それはマスクドライダーシステムの変身に扱う為の機械、ゼクター。しかも、かつて地球で繰り広げられた人類とワームの戦いの末に消えたと言われる、ダークカブトゼクターだった。

「まさか君が、この実験台になるとはね」
「な、何っ……!」

 その瞬間、ポリティスワームは気付く。ゼロセカンドの腰に、銀色のベルトが巻かれていた事を。
 戦いの傷で視界が歪み、存在に意識が向かなかったそれを、ポリティスワームは知っていた。ゼクターと一緒に使う変身道具である事を。

147 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:52:16.65 ID:g3j6GQZ2
 
「変身」
『Hensin』

 淡々とした声で、マスクドライダーの資格者達の象徴とも呼べる言葉を、ゼロセカンドは告げる。
 するとダークカブトゼクターも、低い電子音声で変身の単語を告げた。
 それによって、ゼクターの心臓部であるセブンダイアルが、闇の中で輝きを放つ。同時に、ゼロセカンドの身体がタキオン粒子で構成されるヒヒイロノカネに、包まれていった。
 瞬く間に、彼女の身体は銀色の鎧と漆黒のサインスーツに覆われる。最後に、頭部に位置する巨大な一つ目が黄色に輝いた。
 ポリティスワームの目の前に、ゼロセカンドはいない。変わりにいるのは、かつての戦いでネイティブにされた人間が扱っていたマスクドライダーのプロトタイプ。
 仮面ライダーダークカブト・マスクドフォームへと、ゼロセカンドは変身していた。

「僕が……実験台!?」
「そうだよ?」

 ダークカブトは呆気なく答えながら、右手を構える。そこには二つのスピナーが装着されている、銀色の籠手が顕在していた。
 そして両足には、本来のダークカブトには存在しないはずの、クリスタルの埋め込まれたローラーブレードが組み込まれている。
 それは本物のスバル・ナカジマが長らく愛用していた、リボルバーナックルとマッハキャリバーだった。
 呆然と立ちつくすポリティスワームを前に、ダークカブトはゼクターホーンに手を付ける。

「キャストオフ」
『Cast Off』

 そのまま、反対側へと押し倒した。
 マスクとゼクターから、同じ言葉が違う声でそれぞれ発せられる。すると、ゼクターの心臓部が光を放ち、そこから電流が全身に迸った。
 すると、ダークカブトに覆われた重厚なマスクドアーマーが弾け飛び、ポリティスワームに激突する。声にならない悲鳴を漏らすが、何とかその場に踏ん張った。

『Change Beetle』

 その一方で、ダークカブトは既に姿を変えている。分厚い銀色のアーマーは既に無く、漆黒一色だけ。
『カブト』の名を示すかのように、本物のカブト虫を思わせるようなスリムな装甲だった。マスクには一本の角が、夜空に伸びている。
 ライダーフォームへと変わったダークカブトは、ゆっくりと足を進めた。

『One』

 そしてダークカブトは、ゼクターのスイッチを叩く。
 それによって響く音声を耳にして、ポリティスワームは後退った。目の前にいるダークカブトが、地獄の底から自分を引きずり下ろそうとしている死神のように見えて。
 鎧を彩る黒が、禍々しい闇に見えて。

『Two』

 響き渡るのは死へのカウントダウン。本能的に、そう感じた。
 このままでは殺される。もはや火を見るよりも明らかな、未来。
 だが、そんな事を大人しく受け入れられるわけがない。ポリティスワームは、全身の力を込めて逃走しようとした。
 しかしその動きは、すぐに止まってしまう。突如として虚空から青白い鎖が数本現れ、ポリティスワームを縛り付けたのだ。
 それがダークカブトの生み出したバインドであると、瞬時で察する。もっとも、それに意味など無いが。

「な、何ッ!?」
「逃がさないからね?」
『Three』

 半端な体勢で縛られたポリティスワームの耳に、二つの声が響く。嘲笑うようなダークカブトと、ダークカブトゼクターの声が。
 ポリティスワームはバインドを引きちぎろうとするが、満身創痍の身体ではビクともしない。
 むしろ、藻掻けば藻掻くほど強くなっていくようだった。その度に、バインドがポリティスワームの傷に食い込んでいく。

148 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:54:43.57 ID:g3j6GQZ2

「フフフッ……」
『Rider Kick』

 ダークカブトはゼクターホーンを反対側に倒して、再度反転させた。電子音声が鳴り響くのと同時に、タキオン粒子がダークカブトゼクターより吹き出していく。
 腹部から上半身、首から頭部の角を駆け巡りながら瞳の輝きを一瞬だけ、強くした。そこから稲妻を模したエネルギーは、腰を通ってマッハキャリバーが顕在する右足に流れる。

『DIVINE KICK EXERION』

 すると今度は、マッハキャリバーが輝きを放ちながら詠唱した。それにより、ダークカブトの足元に三角形の魔法陣が生成される。
 全ての頂点に円形が付いているそれは、青白い輝きを放ちながら回転した。この意味は、オリジナルのスバル・ナカジマが長きに渡る修行の末に、会得した技への繋ぎ。
 エリオに擬態したポリティスワームと同じように、ダークカブトは奪ったのだ。

「じゃあね、出来損ないの後輩君」

 嘲笑の声が聞こえる頃には、既に黒いライダーは目前に立っている。
 すると、ダークカブトは左足を使った回し蹴りを、勢いよくポリティスワームに叩き込んだ。

「――――ッ!」

 声にならない悲鳴と共に、吹き飛ばされる。脇腹に叩き込まれた事によって、内蔵が次々と潰されていった。
 そのまま体内に何かが流れ込み、暴風雨のように暴れ出すのを感じる。激痛が神経を駆け巡ったが、それも一瞬だった。
 身体が地面に叩き付けられた瞬間、遂に限界を迎える。ダークカブトのキックによって、ポリティスワームは盛大な爆発を起こした後に、この世界から消滅した。




 闇の中で燃え盛る炎を、ダークカブトは冷たく見つめている。
 マスクドライダーと、インテリジェントデバイスという二つの技術を複合させた技。どちらか片方でもそれなりの能力を得る事は出来るが、連動すれば桁違いの性能を誇った。
 いくら負傷していたとはいえ、強靱たるワームの片腕を吹き飛ばす程。加えてバインドは、千切るどころか軋ませる事も許さなかった。
 ザビーの排除に失敗した愚か者の始末は億劫だったが、新兵器テストと考えれば悪くない。
 それに最後のポリティスワーム。殺す直前の顔は、人間で例えるならばさぞ間抜けで絶望に染まっていたに違いない。
 灼熱が辺りに広がる中、ダークカブトはそう考える。その直後、ダークカブトゼクターがベルトから離れ、マスクドアーマーを構成するヒヒイロノカネが崩れていった。
 そしてバリアジャケットも解除し、銀と青に彩られた防災士長の制服に戻る。腰に巻かれていたライダーベルトは、既に消滅していた。
 新しく搭載されたシステムとして、ベルトはマッハキャリバーに収納されるように出来ている。それだけでなく、管理局から定期検診があったとしても、察知されないように特殊なシステムが働くようになっていた。
 闇の中に生身を晒したゼロセカンドは、唇を歪ませた。それは本来のスバル・ナカジマが作る表情とは、あまりにもかけ離れている。



149 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:56:20.75 ID:g3j6GQZ2
「それで、マッハキャリバー……どうだった? あたしの戦いぶりは」
『見事の一言に尽きます。貴方のような方が新しい相棒になってくれて、心より光栄に思います』
「フフッ、良い事言うね君も。じゃあ、本物さんの方はどうかな?」
『かつてのマスターは、もう見限りました。あのような無能な鉄屑などとは、共に戦っていたと思い出しただけで反吐が出ます』
「あはははははははっ! そうなんだ!」

 水色のクリスタルとなったマッハキャリバーの言葉を聞いて、ゼロセカンドは哄笑した。

「まあ、テストも終わったしこの辺で帰ろうか? まだ、管理局にいなきゃ駄目かもしれないし」
『そうですね――相棒』

 そのやり取りを終えた途端、ゼロセカンドは胸ポケットにマッハキャリバーをしまう。
 彼女は未だ、冷たい笑顔を浮かべていた。そこに、スバルが持つ暖かみといった感情は、一片たりとも感じられない。

(そういえば本物さんも、もしもこの事を知ったら後輩君みたいな顔を浮かべるのかな?)

 不意に、そんな感情が芽生える。異世界へと消えたオリジナルは、この事実を知ったらどんな感情を抱くか。
 自分が代わりとなっていることを、消えても悲しむ人間がいることは一人もいないことを、マッハキャリバーが既に相棒でなくなっていることを。

(それに、本物さんが今まで助けた人達が本物さんに裏切られてるって事を知ったら……どう思うんだろ)

 可能性としては低いが、もしかしたら本物がこのミッドチルダに再び姿を現す可能性がある。その時の楽しみとすればいい。
 それにその気になれば、奴の薄っぺらい正義感や矜持を潰す事などいくらでも出来る。そう思いながら、彼女は笑う。
 そんなゼロセカンドはダークカブトゼクターと共に、闇の中を進んでいった。



 ミッドチルダ地上本部。
 その医療室で、フェイト・T・ハラオウンは不安げな表情を浮かべていた。清潔感溢れる白いベッドには、エリオ・モンディアルが未だ眠っているため。
 彼の全身には大量の包帯が巻かれており、見る者に痛々しさを感じさせる。すぐそばで微かな電子音を鳴らしながら、脈拍を伝える医療器具がそれを引き立てた。
 仮面ライダーキックホッパーの話によれば、ここにいるのは本物のエリオ。だとすると、彼はエリオの事を知っている。
 キックホッパーから事情聴取をしようと思ったが、すぐそばにはエリオが倒れていた。加えて他の局員も、別所に反応があったワームとの交戦している最中。
 だから、彼の追跡をする事は出来ずにエリオを運ばざるを得なかった。

(それに……あのブレスレットは一体?)

 フェイトはもう一つ、ある疑問を抱いている。
 エリオを見つけたときに見つけた、黒く焦げた謎のブレスレット。あのような物を、いつの間に手に入れてたのか。
 見たところファッション用にも見えないし、そもそもエリオがそういった事を始めたとも聞いていない。
 それにストラーダが破壊された一方で、ブレスレットは健在だった。
 故に、ティアナ・ランスターがブレスレットを受け取って、解析をしていた。話を聞いた彼女自身、何か引っかかる部分があったため。
 デバイスすらも破壊させる衝撃でも健在だったブレスレットなんて、ミッドチルダに流通している筈がない。
 思案を巡らせている中、トントンと部屋の扉をノックする音が聞こえる。それによって、フェイトは意識を戻した。

150 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 07:58:12.65 ID:g3j6GQZ2

「失礼します」
「どうぞ」

 ティアナの声が聞こえて、フェイトは答える。次の瞬間、ドアが開いてティアナが現れた。
 その手には、ファイルと思われる用紙が何枚か握られている。

「先程テスタロッサ執務官が回収したブレスレットに関してですが……」
「何か分かったの?」
「はい……少々時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 ティアナは何処か浮かない表情をしていた。フェイトはそれに疑問を抱きながら、頷く。
 そして二人は、目を覚ます気配を見せないエリオを一瞥すると、医療室から出ていった。



「これって……一体どういう事!?」

 フェイトの目は、驚愕で見開かれている。机に設置された電子機器の画面には、信じられない光景が映っていた為。
 その傍らには、黒く焦げたブレスレットがコードで繋がれていた。恐らく、これの正体を検索していたのだろう。
 そして画面にデータが映し出された。
 このブレスレットには、特殊な電波を発する装置が付けられている。それがドレイクゼクターに搭載されていたのと、完全に一致していた。
 それ以外にも、大量のタキオン粒子反応が検出される。ワームとの戦いが始まって、ミッドチルダ各地に見られるようになった物質。
 そして、タキオン粒子を元に生み出されるヒヒイロノカネの反応もあり、それが人型の形を作っていた。

「私にもよく分かりませんが……確か、エリオがこのブレスレットを持っていたのですよね!?」
「ええ、エリオがこんなブレスレットを買ったなんて話は聞いていないけど……」
「だとすると、以前テスタロッサ執務官がキックホッパーとの交戦に突入した際に、貴方を庇ったマスクドライダーの正体って……!?」

 ティアナもまた、フェイトと同じように判明されたデータに驚いている。
 画面には、数日前の戦いで存在を知るきっかけとなった、マスクドライダーの一人がいた。それも、キックホッパーとの戦いでフェイトを庇ったザビーと呼ばれるマスクドライダー。
 調べた結果、これは風間大介から預かったドレイクグリップとほぼ同じ存在。マスクドライダーとなってワームと戦うアイテムの一種だ。
 エリオがこれを持っている。それが示すのは、ザビーの正体は彼だったという事以外に有り得ない。

「でも、エリオは一体いつこれを……まさか、私達の前にいたエリオはエリオに擬態したワーム……!?」
「……私も、その可能性があると思います」

 フェイトとティアナは、思い当たった可能性に表情を歪めた。
 真実に気づけなかった自身に対する不甲斐なさ。そして本当のエリオを裏切ってしまった罪悪感。
 そして、もう一つ。エリオ・モンディアルがずっと戦っていた、仮面ライダーザビーとして。
 何故、彼がそうなったのか。そして、何故エリオがマスクドライダーの道具を手に入れたのか。
 その鍵は仮面ライダーキックホッパーが握っている。しかし、居所は分からない。

「エリオ、貴方は一体……?」

 謎が増していく中で、フェイトはエリオの名前を呼ぶ。だがそれに答えられる者は、誰もいなかった。


151 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:00:25.41 ID:g3j6GQZ2

 一体何処まで歩いたのか。
 そんな事は知らないし、考えた事もない。
 気がついたときには、矢車想は既に森の中を歩いていた。闇に覆われた木々の間を。
 視界にはうんざりするような漆黒が広がるが、もう慣れた代物だ。地獄を知ったときから、ずっと。
 今はただ、光から逃げ出したかった。これ以上求めては、再び竹篦返しを喰らうような気がして。エリオという名の光は、それほど眩しかった。
 ああそうか、あの時みたいになるのが怖いと思って、俺は逃げたのか。このまま一緒にいては、エリオに待っているのは相棒と同じ末路。
 それにあいつは常日頃、光を求めようとした様子が見えた。だったら縁を切るのにちょうどいい。
 フェイトと名乗ったあの女は、恐らく時空管理局とか言う組織の人間だろう。エリオがあそこに戻ったからには、愚かな自分の事を伝えるかもしれない。そして、人間ではない弟達の事も伝えるだろう。
 しかし矢車は、不思議と悲観していなかった。弟の思いを聞いたからかもしれない。全てを知っても尚、あいつらを受け入れようとした。
 もっとも、汚い奴は当然いるだろう。ワームである事を知ったら、即刻排除しようとするか戦いに利用するか。
 だがどちらにせよ、その時になったら戦う以外にない。果てに待つのが死だとしても、それはそれでいいだろう。薄汚い自分には、そんな惨めな死に方が相応しい。

「相棒……兄弟……」

 矢車は、雑草や枝を踏み付けながら呟く。
 その足取りに、アテなど無い。ただ、弟達を見つけるために動いていた。圧倒的強さを誇る怪人と戦った途中、ワームになってしまった二人を。
 その最中、パチパチと手を叩くような乾いた音が聞こえる。矢車は、反射的にそちらを振り向いた。

「おやおや、こんな所にいたのですか……探しましたよ」

 目の前に現れたのは、周囲の闇とは明らかに浮いている純白の衣服を身に纏った男。白峰天斗だった。

「お前は……」
「いやいや、素晴らしかったですよ……愛すべき弟達のために戦うとは実に見事ですね」
「フン、まったくだな!」

 手を叩く白峰は笑顔を浮かべている。しかしその視線には、明らかな侮蔑が感じられた。
 白峰の傍らでは、レイキバットと呼ばれる白い蝙蝠が闇の中より現れる。その無機質な瞳も、相手を嘲笑っているような雰囲気を放っていた。
 人と機械。二つの視線を向けられた矢車は、顔を顰めた。

「ザビーは管理局に身柄を保護される……随分と奮闘しましたね」
「何……?」

 しかし白峰はそんな事など知った事ではないかのように、笑みを浮かべている。
 その態度からは、こちらを見下しているのが簡単に読みとれた。まるで、愚か者を見ているかのように。

「……何が言いたい?」
「いえ、僕は貴方を褒めているのですよ。戦いに勝利したのですから」
「はぁ?」
「それに、見事に道化を演じていてくれた……つくづく素晴らしい方と思いますよ」

 紡がれ続ける白峰の言葉に、矢車は更に不快感を刺激された。
 笑われるのはいつもの事だが、気分が良くなるわけがない。だがこの白峰という男は、余計に嫌気を感じる。
 アルハザードとかいう世界で共闘したときもそうだが、どうにも気に入らない。不自然に続く拍手が、それを強めていた。



152 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:04:15.95 ID:g3j6GQZ2
「お前ら……!?」
「驚くのはまだですよ」

 流石の矢車も動揺する中、白峰は飄々と口を零す。
 画面に映し出されている二人は、幽鬼の如く静かに立ち上がった。弟達はまるで、血に飢えた野獣を彷彿させる程に歪んでいる。
 すると影山と剣は、川辺で行った戦いのように大きく吼えた。そのまま彼らは、ワームの姿へと変わっていく。蠍とよく似たスコルピオワームと、蛹のような外見のネイティブワーム。
 彼らが異形へと変わった瞬間、彼らの周りを覆っていた闇が突然晴れた。電気の光に照らされた部屋には、新たに奇妙な格好をした女達が見える。
 その数は三十を超え、その姿は全て同じだった。屍のように生気を感じさせない肌、瞳を隠している無機質なバイザー、高い背丈に覆われたレオタード。全てが寸分の狂いなく、同一。
 女達の手には、多種多様の武器が握られていた。ある者は剣を、ある者は槍を、ある者は鉄球を、ある者はライフル銃を、ある者はガトリング銃を。
 構えている武器を女達は、スコルピオワームとネイティブワームに向ける。そこから攻撃が始まった。近距離用の武器を持つ者達は突貫し、遠距離用の武器を構える者達はトリガーを引く。
 しかし標的となったワーム達もまた、床を蹴って走り出した。スコルピオワームは前方から迫る刃物を持つ女の腕を握って、勢いよく投げ飛ばす。
 ワームの筋力によって宙を漂った末に、別の女と激突。そのままスコルピオワームは、右より迫る鉄球を鋭利な爪で砕きながら、持ち主である女の腹部を貫く。そして、爪を引き抜きながら別の個体に振り向いた。
 その先にいる女達が持つ銃から、弾丸が嵐のように放たれていく。それはスコルピオワームに着弾するも、微動だにしない。強靱な肉体を誇るワームには、石ころ程度の威力すら感じなかった。
 そのまま、スコルピオワームは走り出して、空いた距離を一瞬で詰めると同時に腕を振るう。女達は一瞬で引き裂かれた瞬間、その身体は勢いよく爆発した。
 一方で、ネイティブワームも辺りを囲む女達に、鋭く伸びた爪を突き刺している。貫かれる度に身体が溶解し、一瞬で爆発を起こした。
 盛大な炎がネイティブワームを飲み込む。しかし、その巨体は微かに焦げていただけで、五体満足で残っていた。そのままネイティブワームは、スコルピオワームと共に女達を爪で切り裂く。

『グオオオオオオオオオッ!』
『アアアアアアアアアアッ!』

 ワーム達は凄まじい咆吼と共に、爪を振るい続けていた。
 画面の中に映る光景は、凄惨の一言に相応しい。同じ格好をしている女達は次々と現れて襲いかかるが、一瞬で散る。
 暴虐を行っているスコルピオワームとネイティブワームからは、一切の理性が感じられない。貪欲で、血に飢えた化け物と呼ばれても違和感がなかった。
 通常のワームといえども、ここまで酷くない。そんな考えが矢車の中で浮かぶと同時に、モニター画面が消滅した。

「まあ、こんな所でしょうね」

 耳に入る、白峰の声。それを聞いて矢車はようやく、呆然とした状態から立ち直る。
 振り向いた先では、相変わらず白峰は淡々とした笑顔を向けていた。

「あれはマリアージュといって、屍を元に生成される古代より蘇った兵士です……まあ彼らにとっては敵ではなかったようですが」
「貴様……!」
「おやおや、貴方は忘れてはいませんか? 弟達は僕の仲間が探すと……」
「何……!?」



153 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:09:00.97 ID:g3j6GQZ2
 飄々と語る白峰を前に矢車は激高しながらも、自らの記憶を辿った。エリオを取り戻すために戦っている間は、奴の仲間が弟達を探すと言っている。
 ――簡単だ。奴らの仲間とは、自分達の敵。
 その答えに思い当った瞬間、矢車は白峰の襟に掴みかかる。

「何をしたっ!?」
「ほう、貴方でもそんな顔をするのですね」
「答えろっ!」

 襟首を締め付けながら、憤怒の感情を吐き出した。今にも絞殺されかれない勢いだが、白峰は未だに笑っている。その態度が、矢車の怒りを煽る事となった。
 しかし白峰は、そんな彼を呆気なく右手で突き飛ばす。

「どうやら、貴方ともあろう方が少々夢を見過ぎていたみたいですね……そもそも、彼らを初めとしたワームが生きていた事に何の疑問を抱かないのですか? そして、貴方がこの世界に現れてしまった理由にも」
「何?」
「まあそれを説明したところで、貴方にはどうしようもないですがね。結局彼らがワームとして生きる事には変わりないのですから」
「――――ッ!」

 その一言が、きっかけとなった。矢車は渾身の力を込めて疾走し、白峰に右足で回し蹴りを繰り出す。
 奴はワームの一味であるという確信が既にあったため、躊躇う理由はない。何より弟達を笑った奴など、許す事など出来なかった。
 何かを仕掛ける前に攻撃すれば、勝利に繋がる。その思考と共に、距離は一瞬で縮まっていった。
 矢車の蹴りが当たろうとした瞬間、白峰は素早く身を低くする。微かに髪の毛が掠っただけで、ダメージが与えられていない。
 しかし、それだけで終わる事はなかった。矢車は続くように、逆の足で前蹴りを放つ。
 その瞬間白峰は両足を屈め、背後に跳んだ。そのまま一っ飛びで、巨木の枝に着地する。そんな彼の傍らで、レイキバットも翼を羽ばたかせていた。
 常人には信じがたい光景だが、今更矢車は驚かない。元々レイとかいうライダーに変身する時点で、ただの人間とは思えなかった。
 だから常軌から外れた身体能力を発揮しようと、可笑しくはない。

「まあ、それはそれとして……」
「黙れッ!」
「話は最後まで聞いて欲しいですね! 僕は彼らを救う手段を教えようと言うのに……」

 白峰は見下ろすような視線を向けながらぼやくが、矢車は信用するつもりなどなかった。
 そしてこれ以上、奴と話す事など何も無い。矢車は現れたホッパーゼクターを手に取り、ゼクトバックルを開いた。
 そのまま、変身しようとした――

「おいおい、そんなことはさせねえよ!」

 接触するまであと僅か。その直後、レイキバットの声が聞こえる。
 同時に、異変が起こった。矢車の足元に奇妙な魔法陣が現れ、光が彼の身体を飲み込んでいく。
 それは数時間前、アルハザードという世界に乗り込んでいく際に使用した、転送魔法陣と呼ばれたレイキバットの生み出す代物だった。

「何ッ!?」
「これから貴方には、懐かしい世界へと帰って貰います。そこでワームと共に、我々の邪魔を企てようとする者達を、少しでも潰してください」

 思わず動きが止まってしまった矢車の耳に、白峰の声が響く。しかしその姿は、光に邪魔されて見えなかった。
 ただ、奴は俺の事を笑っている。それだけは、確かだった。

154 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:13:39.88 ID:g3j6GQZ2

「貴方の働き次第では、弟さん方はみんな光を掴めるかもしれませんよ? 貴方がかつて望んだような……」

 白峰の声が聞こえる中、矢車はキックホッパーに変身しようとする。
 しかし足元が地面から離れるのを感じ、体のバランスが崩れた。その直後、光が波のように襲いかかり、彼の身体を容赦なく飲み込む。
 これが意味する事。あいつは、自分を利用しようとしている。あいつは、弟達を利用しようとしている。
 巫山戯るな。
 そんな事があってたまるか。
 笑われてたまるか。
 弟達をあいつらに渡してたまるか。
 ここで奴らを倒さなければならないのに。
 こんな光が、自分を邪魔するのか。こんな光が、弟達を闇に落とすのか。
 ならば光などいらない。光など二度と求めない。
 人間の光もワームの光も、全て潰す!
 矢車は必死に足掻くが、憎むべき白峰には全く届かない。

「僕は応援していますよ? 貴方が弟さん達を取り戻すために、精一杯戦う事を」
「貴様ァァァァァァァァアアアアアアアアアアッ!」

 矢車の絶叫が響いた。彼がいくら白峰を潰そうとしても、それは光に阻まれてしまう。
 そのまま矢車想が、この世界から消滅するのにそれほどの時間は必要としなかった。





 矢車が消えた頃、枝に登っていた白峰は地面に降りる。
 レイキバットが生成した転送魔法陣は既に消え、辺りには闇が戻っていた。
 先程の光景を思い出して、白峰は更に笑みを強める。
 変わり果ててしまった同類を見て、狼狽えていた顔をする矢車想。加えて転送魔法陣に飲み込まれながらも、足掻いて自分を潰そうとする。
 まさかあそこまで愉快な反応を見せてくれるとは。もっとも、元々ワームや劣化クローンを『弟』と呼ぶような変人だから、あのような奇行を取るかもしれないが。
 夢も誇りも、全てを捨てた人間の末路など、こんなものかもしれない。

「あらら? 何かと思って来てみたけどもう終わってたんだ」

 白峰が笑みを浮かべていると、背後から足音と同時に声が聞こえる。振り向くと、異形の怪物が立っていた。
 額から伸びた飛蝗を連想させるような触覚、醜悪さを漂わせている緑色と紫の皮膚、人間のように実った胸部、しなやかながらも発達した四肢、体中から生える棘。
 それは今、この世界ではスバル・ナカジマと呼ばれている戦闘機人、タイプゼロセカンドの正体であるワーム、アイプロスワームだった。
 アイプロスワームを見て、白峰は思わず目を僅かに見開く。ゼロセカンドとして行動している事が多い故、ワームとしての姿を見る事が滅多になかったのだ。

「おや、その姿でいるとは珍しい」
「フフッ、たまにはこっちの姿でいたい気分もあるんだよ〜? 君も乙女心は分からないとね〜」

 おどろおどろしい外観からは想像出来ないほど、明るい声を発する。顔の下では、恐らく年相応の少女が浮かべるような笑みを作っているはずだ。
 もっとも、その内面ではこちらを嘲笑っているかもしれないが、どうでもいい。天使のような顔を作りながら、悪魔としての本質を胸中に宿らせる。それはワームとしては当たり前の事だからだ。
 改めてそう思っている中、アイプロスワームの身体が突然変化を起こす。その姿は一瞬で、青髪の少女へと変わっていった。
 見る物全てに愛らしさを抱かせる容姿は、笑顔となっていた。

155 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:18:18.87 ID:g3j6GQZ2
「で、白峰君は何やってたの一体?」
「いえ、キックホッパーに取引を持ちかけたのですよ。今のサソードとパンチホッパーを見せつけて……それから、我々の生まれた世界に送りましたね」
「ふうん、もしかしてそれがさっき言ってた『やってみたいこと』って奴?」
「ご名答」

 白峰は相変わらず、飄々と答える。

「まあ僕の仕事もこれで終わりですから、一旦帰還する予定です」
「そうなんだ」
「それにもしかしたら、我々もあちらの世界に派遣される時が訪れるかもしれませんし」
「ああ、それはあたしも楽しみにしてるんだ!」

 その瞬間、ゼロセカンドの笑みが更に増した。彼女は懐から水色のインテリジェントデバイス、マッハキャリバーを取り出して、白峰の目前に掲げる。

「もしもマッハキャリバーの相棒があたしになった事を知ったら、本物さんはすっごく悔しがるかもしれないじゃん! だから、それを見たくって!」
「随分と、良い趣味をしてますね」
「あはは、ありがとう!」

 けらけらと大きく笑うゼロセカンドと対照的に、白峰は苦笑を浮かべた。
 やはりこの女は、ワームという生命体を象徴するような狡猾さを、あどけない顔に潜めている。まあだからこそ、管理局内で暗躍出来るのかもしれないが。
 任務以外に持っているゼロセカンドの目的は、オリジナルを徹底的に蹂躙する事。それもただ殺すのではなく、全てを奪い取って絶望させた上で。

「さて、この辺りで帰還しなければ……レイキバット」
「行こうか! 華麗に激しく!」

 白峰の呼びかけに答えるかのように、レイキバットは両目を輝かせる。
 するとその瞬間、白峰とゼロセカンドの足元には、巨大な転送魔法陣が一瞬で生成された。
 魔力による光は一瞬で彼らを飲み込み、その姿をこの場から消滅させる。森は転送魔法陣の眩い輝きに照らされたが、それもほんの僅かだけ。
 辺りが元の暗闇と静寂を取り戻すまで、それほどの時間は必要なかった。

156 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:20:31.95 ID:g3j6GQZ2

 謎の青年、白峰天斗によってこの世界から消えた矢車想

 それをきっかけとして、魔法の世界ミッドチルダで繰り広げられる物語は一時の閉幕を迎える

 これは地球より姿を消して、ミッドチルダに流れ着いた男達を追う物語

 異世界より姿を現した宇宙生命体――ワーム

 スバル・ナカジマとして君臨しているゼロセカンドの真意とは何か

 時空管理局に保護された風間大介の運命は

 ワームに捕らわれた影山瞬と神代剣の運命は

 そして、己の罪から逃げ出した末に、本来いるべき場所へと戻ったエリオ・モンディアルの運命は



 これよりミッドチルダの運命が、大きく変わる

 次元の歪みと共に、時代は混乱を迎える

 今まで繰り広げられてきた二つの戦いは、ここから一つに混ざり合う

 二つの世界を繋いだ物語は、ここから始動する




To be continued




仮面ライダーカブト レボリューションに繋がる




天の道を往き、総てを司る



157 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/06/30(木) 08:31:41.52 ID:g3j6GQZ2
以上です
これにて、全10話を予定していた地獄の四兄弟は完結です。
完結と言っても『第一部完』みたいな感じなので、ミッドにやってきた地獄兄弟や大介の今後
そしてワーム復活の謎などは、レボリューション本編で扱う予定です。


自分がこのスレに参加してから既に3年近くになります
その間、他書き手氏や読者の皆様から多くの事を学ばせて頂き、お世話となりました。
そのおかげで文章力もある程度上がり、複数連載やパロロワ関係スレに参加したりなど
今の自分が出来たのだと思います。
まだまだ執筆ペースは遅いですが、今後ともよろしくお願いします。

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/06/30(木) 20:27:38.60 ID:cqycGi+1
GJ!
こんな形でレヴォリューションとクロスするんですね
キバのキャラも出て、どうなるのか今後も期待しております

159 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:21:09.12 ID:q49UhsCu
17時半から投下します

>>143
どうもですー
フェイトさんは結構切れるとすごいとこがあると思うのですよー

160 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:30:21.01 ID:q49UhsCu
◆ SERIES 6. 首都高の白い悪魔



 オーバー200km/hで走ると、まわりの車は止まって見える──

 250km/h──止まった車は自分に向かって突っ込んでくるようになる──

 そして300km/h──まわりの動きが、人間が知覚できる限界を超え始める──

 湾岸、最高速──
 永遠に終わりのないとびきりの瞬間──

 もっと、もっと速くとあなたは急かす──

 ──それは、ただひたすらに純粋な欲望。

 東の空が白み始める頃、まるで悪魔が太陽の光を避けるように、その白いZは消えていく──



 早朝の海鳴市、ガレージに戻ってきたZは、しばしのアフターアイドルを終えてエンジンを切られた。
 熱くなったエンジンオイルが、チリチリと音を立ててポンプとオイルタンクの中で眠りにつく。

 ほとんど日課のようになった走りの余韻を、なのははしばらくかみしめていた。

 もともと、体力には自信がある方だった。剣術をやっていた兄の稽古に付き合って、夜遅くまで、
また朝早くから鍛えていた。毎晩の走り込みも、苦にならない。
 走り込むごとに、このZの奥深さがわかっていく。同時に、このZを作り上げた人間の、妥協のない願いも。

 その願いは、時に、危険な魔力となって人間に牙をむく。

 首都高の白い悪魔と恐れられたこのZ。誰も乗りこなせなかった危険な車。
 だが、それは違うとなのはは思っていた。
 こいつはただ純粋なだけなんだ。純粋に、速く走ろうとしているだけなんだ。
 変な色眼鏡をつけて見るから、このZの姿を正しく見ることができないんだ。

 自分だけは、このZを信じていたい。信じる。そう、なのはは願っていた。

161 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:37:22.01 ID:q49UhsCu
 いつもの3人で、屋上でお昼を食べていると、シャマルがやってきた。

「一緒にいいかしら?高町さん、ここんとこちゃんと学校に来てるみたいね」

「ええ、まあ」

「そーそ、なのは、あんたも素材はいいんだからキレイにしてりゃーモテモテよ?」

 アリサは相変わらず調子がいい。中学のころまでは、こういうふうに言うとなのははあどけない
照れ笑いを見せていたが、今はずっと大人っぽい、遠くを見るような微笑みをする。

「ん……別にいいかナ、そーゆうのは」

「これだもんー、なのは、あんたもさー、こーんな男っけのない青春じゃあツマンナイでしょーが」

 ピリリ、となのはの携帯が鳴る。

「おーっ、なのはにもついにオトコが」

「ユーノ君からだよ、えーっと、うん、Zの車検、ちょうど更新だったから手続き頼んでたんだ」

 Z、という言葉にわずかにシャマルの瞳が曇る。

「えー車検って、あんなごっつい改造車でも車検だいじょうぶなの?」

「大丈夫だって、ちゃんと申請すれば」

「アリサちゃんも見たでしょう、なのはちゃんのZ、ナンバーが横浜33になってたでしょ?
2000cc以上のエンジンの車は3ナンバーになるから、今の3100ccエンジンでちゃんと登録されてるのよ」

 すずかが補足する。本来のS30Zは2リッターエンジンを搭載した5ナンバー(小型乗用車)の車だが、
改造申請によって3ナンバー(普通乗用車)として登録されている。
 公認を取得した立派な公道走行可能な車両だ。
 中身はほとんどすべてに手を入れられていても、現代日本の定める最低限の基準はクリアしている。

162 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:43:48.94 ID:q49UhsCu
 携帯をしまって、空の弁当箱を包みに戻してから、なのははシャマルに声をかけた。

「先生、今夜あいてます?聖祥の問題児の夜遊び、また見張りに行きませんか」

「おーっ?教師と生徒の禁断のカンケイ」

 アリサがわざとらしく茶化す。

「なっ、なのはちゃん、アリサちゃんもっ、あんまり大人をからかうもんじゃありません」

 頬をふくらませるシャマルだったが、まんざらでもなさそうだった。
 正直なところ、はやての大切な親友であるなのはに、ヴィータも懐きはじめていて、シャマルとしても
気になるところではあった。それだけに、毎晩一人で走りに出かけているというのは気をもむことだ。

 わいわいとはしゃいでいるアリサとすずかを後目に、なのはは制服のスカートを翻す。

「どーします?迎えに行ってもいいですけど」

「ううん、10時にあなたのガレージに行くわ。はやてちゃんを心配させるのもまずいし──」

「わかりました」



 海鳴から首都高まで、普通に走れば30分ほどで入れる。
 平日の早めの時間帯、帰宅ついでに雰囲気を味わいたい者たちがそれなりに通りがかってきている。

 いろんな車が走っているのを見るのも楽しい、となのはは思っていた。

 走りの定番であるシルビアや180SX、そしてRX-7、GT-Rなど──
 もちろん、スポーツ系車種だからといってすべて走りに使われているわけではない。
 単なる足として、でも、どこかに少しだけの自己主張がある。

 そんなささやかな気持ちでも、うれしい。

163 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:52:16.26 ID:q49UhsCu
 環状を数周し、湾岸を回って芝浦パーキングに入る。
 さすがに平日では停まっている車も少ない。

「先生、コーヒーでいいですか?」

「……結構走り方変わったのね、なのはちゃん」

「そーですか?」

「なんていうか……動きに安心感があるっていうか。確かにスピードは速いんだけど、
危うさを感じさせないっていうかね。車に詳しくない私でも、隣に乗っているとわかるわよ」

「でもブラックバードにはかないませんよ」

「…………」

 シャマルはしばし黙る。

「──彼女はヒトを横に乗せないから──はやてちゃん以外はね」

 言葉が途切れたところで、パーキング入口に野太いエキゾーストノートが響いた。
 1台、入ってくる。

「この音は──」

 銀のボディに青と黒のカッティングシートで、魔法の杖をモチーフにしたバイナルグラフィックが描かれている。
 JZA80スープラ。ボディサイドには青いアンダーネオンが装備された、いかにもアメリカ西海岸風の
チューンドスープラだ。なめらかなタービンの過給音と、ブローオフバルブの排気音が鋭く奏でられる。

 左ドアとボンネットを使って、“デュランダル”と描かれている。
 室内に張り巡らされたロールケージとも相まって、じつに迫力のあるシルエットが出来上がっていた。

164 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 17:59:47.68 ID:q49UhsCu
「いい音させてますね」

「あら、なのはちゃん来てたの」

 クロノとマリーだ。それぞれ軽く挨拶する。
 そういえば、この二人の場合休日は関係ない。それこそ毎晩でも出てこられる。
 その意味では、出会いやすい、同じ流れの中にいる人間ということができる。

「あっ、こっち、私のガッコの先生です」

 なのはは後ろにいるシャマルを紹介した。
 さすがに、いかにも本物風の人間に近づくのはシャマルも腰が引けている。

「へえ、学生さんだったの、ってことはそのZの改造費もアルバイトして?」

「ええまあ、最初からある程度パーツはついてたんで、オイルとか消耗品関係ですかね、
あと知り合いの工場貸してもらってオーバーホールとか。バラしてみるとけっこースゴいんですヨ、
もうサビだらけススだらけで」

「それはイイわね、やっぱり自分の手でやるのがいちばん覚えるのよ」

「スープラはもう完成ですか?」

「ええ、セッティングもほぼキマったし。あとはクロノ君の慣れね」

「おいおい、オレを誰だと思ってる」

 900馬力をたたきだす2JZ-GTEエンジンは、さらに仕上げのナイトロシステムを組み込まれ、
完全な補強によって1.7トン近くになった重い車体を自在に動かすパワーを得ている。
 機械が、力を持っている。力にあふれた機械のみずみずしさ、躍動感。

 たまらなく惹かれるカタチだ。

165 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 18:05:23.36 ID:q49UhsCu
 なのははクロノから、ブラックバードと悪魔のZにまつわる話を聞いた。
 スカリエッティからは、悪魔のZに施されたチューニングの内容を聞いた。

 そのいずれもが、客観的に見ればきちんと理解のできる話だった。

 80年代末、日本がバブル景気に沸き高性能スポーツカーが深夜のハイウェイにあふれていた中、
旧時代の化石のような古い車が、そんな最新の車たちを圧倒するスピードを持って現れた。

 限界を超え、常軌を逸したチューニングを施されたその車は、ベース車両としてS30を、
エンジンはL28改3.1リッターツインターボを採用し、掛け値なしの320km/hオーバーを出す車だった。

 ジャパニーズ・チューンドカーの、ひとつの究極のカタチがそこにあった。

 それは、妥協のできない人間が作り上げた、まさに異形だった。

 そしてその異形は、まわりと折り合いをつけ、ウマく世の中を渡ろうと苦心していた人間たちの、
心の後ろめたさを抉るような鋭さを持っていた。
 そんな生き方でいいのか。周囲に合わせ、自分をひっこめ、他人に同調して、そんなことでいいのか。
 自分の気持ちは、自分の意志はどうした。ごまかすだけか。本当の気持ちをなぜ隠す。

 悪魔のZ。

 悪魔は、いつだって人間の心の中に隠れているものだった。

 湾岸を、160km/hでクルージングする。一般車よりもわずかに速いそのスピードは、路面の振動で
テールランプを揺らし、色とりどりのサンゴの海をゆったりと泳ぐような感触を与える。
 ここからアクセルを一杯まで踏み込んでいけば、そこには別世界が現れる。
 別次元といってもいい世界へ飛び込める。

 ひとたびその世界を知ってしまったら、もう目をそらすことはできない。

166 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 18:12:13.57 ID:q49UhsCu
 その屋敷は、時の庭園と呼ばれていた。
 一線を退き、悠々自適に過ごすために、プレシア・テスタロッサはこの屋敷を手に入れた。
 それはアリシアが進言したことでもあった。落ち着いた静かなところで暮らそう、家族みんなで、と。

 幼い顔立ちでも、ずっと大人びて、他人を慮ることのできた姉だった。

 フェイトはそんな姉をずっと見ていた。

 プレシア、リニス、アリシア、アルフ──みんなが、この屋敷で穏やかに過ごせる──

 不器用な母親だと、子供心にも思えたものだった。
 アリシアが生まれてからも仕事は続けていたが、家に帰ることも少なく、ひたすら働きづめだった。

 ありていに言えば、仕事と家庭を両立させられなかった、それだけなのだが、それは、単純に
心のリソースが半分になるというわけではない。自分がそういう状態に置かれているという認識が、
さらに心をすり減らさせていく。

 妥協のできない人間だった。
 自分の事情はみんなわかってくれていたのに、仕事を周囲に任せることができず、
全部自分で抱え込んでいた。周囲を頼ろうとしなかった。

 はた目にも、無理しているというのは分かりすぎていた。

 それでも無理がきくうちはまだいい。だが、しょせん人間、いつか限界は来る。

 だからどうか、もう何も心配せず、この夢のような時の庭園で、静かに生きていこう──

 ──そうしよう、母さん──

167 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 18:23:10.06 ID:q49UhsCu
「母さん──……」

 目を開けると、見慣れた銀髪と赤い瞳がフェイトを見下ろしていた。

「すみませんね──あなたのお母さんじゃあナイんですよ」

「ブラックバード……」

 つぶやくように声に出す。そういえば、彼女を本名で呼んだことはなかった、とフェイトは思い出していた。

 八神凛、はやてたちからはリインと呼ばれている。
 海鳴大学病院で外科医を務める優秀な医師だ。
 若くしてドイツ留学帰りの経歴を持ち、将来を嘱望され、美人で腕も立つ。
 何一つ不足のない人生を送っているように見える。

 そんな彼女がなぜ、危険な湾岸の走りをしているのか──
 ──もっとも、フェイトも人のことを言えたものではないが。

「ひとまず日常会話は大丈夫です──歌うのは、もう少し待ってください」

「はい……」

「今度は勝手に抜け出したりしないでくださいヨ」

「わかりました」

 あなたに才能があるのは私がよくわかってる。アリシアはフェイトにそう言った。

 正直、自分は姉のように一家を背負って立つ自信がなかった。
 歌で、自分の才能をつかって稼ぎ、一人で生きていく。その方が性に合う。
 そう思いながら、後ろめたさをぬぐいきれなかった。
 いつだって自分の生き方を自分で決める。そう思ってやってきたはずなのに、ここにきて、
今更のように母や姉との思い出に囚われている。
 本当はみんなと一緒に暮らしたかったのか?一人は寂しかったのか?

 この気持ちに決着をつけなければ、もう一度あのZとともに走ることはできない。
 こんな気持ちの状態で走ることを、きっとあのZは許してはくれないだろう。

168 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 18:31:04.32 ID:q49UhsCu
 リインがその日の勤務を終えて帰ろうとしていたとき、病院の駐車場に見覚えのあるGT-Rがいるのを見つけた。

「面会の受け付けは終わりましたヨ」

「いやわかってる、ちょっと寄ってみただけだよ……本人が休んでても、マネージャーの仕事はたくさんあるんだ」

 リインはいつも911を職員駐車場のいちばん奥にとめている。外見からはけして派手な改造車という
わけではなく、いっけん普通のポルシェのように見える。

「珍しいキーホルダーだね」

 きらめくメタリック塗装にアルフが目を留めた。
 剣を十字架のように束ねた意匠の、金のカギだ。

「ええ……はやてがくれたんですよ。ドイツのアクセサリー屋でさがしてきたとか……
“シュベルトクロイツ”というそうですね」

 キーを差し込み、エンジンをかける。静かな夜に、地鳴りのような水平対向エンジンの始動音が響く。
 ポルシェを特徴づける、空冷エンジンの音。それでも、この音をかき消して、聞こえてくるような気がする。

「Zの彼女はドクター・スカリエッティに会いました。色々と聞いたでしょう──あの車のことを」

 アルフは黙っている。

「どうしても、追うのかい。アタシにはわからない……」

「いいんですヨ──私も、無理にわかれとは言いません。ただ、私にはよくわかることで……
私が走り続けるのは事実です」

 ポルシェが発進し、夜の通りに消えていく。

 アルフのGT-Rは、基本的にパーツ自体は何も換えず、ブーストコントローラーで
設定値を0.9kg/cm2に上げただけだ。パワー的には400馬力弱といったところか。
 とりあえず格好だけでもそれなりのものを見せてやればフェイトも満足だろう、と思っていたが、
今は、フェイトが自分のそばを離れ、今にも手の届かない遠くへ消えてしまいそうで怖い。
 振り返ることなく、誰も彼もを捨てて、あの悪魔にいざなわれて消えていってしまいそうだ。

 一蓮托生を決めたのではなかったのか──自分の覚悟が足りなかったというのか。

 アルフにできることは、このGT-Rで首都高を流すことだけだった。

169 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/07/02(土) 18:36:51.72 ID:q49UhsCu
今日はここまでです

ついに白い悪魔の称号が!でましたー
スープラに搭載されたNOSはさしずめエターナルコフィンですかねー
NOSとは亜酸化窒素ガスの気化熱で空気を冷却します
しゅーっと白い煙が出ますよー

ではー

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/03(日) 11:23:25.46 ID:5hvxYmck
投下乙です

>スープラに搭載されたNOSはさしずめエターナルコフィンですかねー
>NOSとは亜酸化窒素ガスの気化熱で空気を冷却します
>しゅーっと白い煙が出ますよー

ヤベ、想像するだけで楽しい

171 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 16:56:04.45 ID:X0c9hEhO
職人の皆様投下乙&GJです。
17時頃より、魔法少女なのは☆マギカ第5話の投下を開始します。

172 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:06:25.88 ID:X0c9hEhO
 暁美ほむらは、未来人である。
 似て非なる一ヶ月間を何度も何度も繰り返して来たのだから、その日何が起こるのかな
どは始めから知っているし、何が起こるのかを知っていれば、自分のやるべき事も合理的
かつ計画的に決めて行ける。繰り返す度に多少ずれる事や変わる事もあるにはあるが、発
生する事件の軸は大抵の場合で同じなのだから、対応は容易だと思われた。
 例えば、その日現れる可能性のある魔女についてだって、ほむらなら戦う前から相手の
情報を知る事が出来る。もっと身近な所で言うならば、抜き打ちテストだって魔女と同様
の理由で何も怖くはない。
 戦闘に於いても生活に於いても、これ程の情報は他の誰もが知り得ないのだから、事実
として、時間を繰り返す度に、暁美ほむらは有利になっていくのであった。
 だけれども、ほむらは別にこんな能力が欲しかった訳ではない。いくらやり直す事が出
来たって、いくら未来の事が分かったって、たった一つの目的を叶える事が出来ない以上、
そんなものには意味も価値も存在しないのだ。
 本当にこの力に感謝出来る日が来るとすれば、それはほむらの目的が成就された時のみ。
その為にも失敗は許されない。未来を変える為の第一歩は、この日の戦いに懸かっていた。


 見滝原中学校は、教室と廊下を仕切る壁だけでなく、廊下と外を仕切る壁すらもガラス
張りである。ガラスの壁は外からの景色を遮る障害物には成り得ず、西へと傾き始めた太
陽の光は、ワックスで磨かれた廊下を橙色に煌めかせながら、ほむらの目を強く刺した。
 今はこんなにも眩しい黄色の空も、あと二、三時間もすれば、夕暮れとなって、茜色へ
と変わってゆくのだろう。眩しい日差しも収まれば、夜は幾分か過ごしやすくはなるだろ
うが、この日ばかりはそんなのんきな事を考えている余裕は無かった。
 今から数時間後、戦いが始まる。
 この戦いで上手く立ち回る事が出来なければ、結局今回も今までに繰り返したパターン
と同じ事になるだろう。今まで繰り返した時間軸は全て、最終的にはまどかが魔法少女に
なって終わってしまうのだから、今回こそは同じ轍を踏む訳にはいかなかった。
 その為にも、今までの時間軸で有り得た「まどかの魔法少女化」への可能性は、片っ端
から潰してゆく。既に最初のキュゥべえとの出会いから断ち切る作戦は失敗しているのだ
から、これ以上ミスを重ねる訳にもいかない。今日一日、ずっとそんな事を考えていたほ
むらは、何事にも興味のなさそうな凪いだ表情は崩さぬまま、しかし心の炎は静かに熱く、
燃やし続けていた。
 そんなほむらの気など知る筈もないチャイムが、一日の終業を告げるべく学校中に響き
渡って、それを合図に校舎内が一気に喧騒に包まれた。
 長い授業を終えた学校中の生徒達が、一日の疲れを吐き出すように楽しそうに談笑を始
めたのだ。ある者はこの後何処へ遊びに行くかについて話し合ったり、ある者は一緒に次
のテスト範囲の勉強をしようと友達を誘ったりと、話の内容は多種多様である。
 ほむらが横目に眺める鹿目まどかと美樹さやかも、そんな喧騒の一部だった。楽しそう
に談笑しながら、足並み揃えて教室を出てゆく二人を確認するや、ほむらも机の上の筆記
用具と教科書を鞄へと片付け始めた。
 急ぐ必要は無い。彼女らがこの後何処へ行くかは既に知っているし、そこで起こる最悪
の可能性も知っている。何も今すぐに追いかけてゆかなくとも、必要な時に必要な場所に
自分が居る事が出来れば、それでよいのだ。

「ねえほむらちゃん、良かったら今日、一緒に」
「ごめんなさい。今日も用事があるの」

 最後まで聞く必要もないと断じたほむらは、にべもなく立ち上がった。
 この学校の女子生徒は、隙あらば毎日のようにほむらを遊びに誘おうとする。彼女らは
所詮「転校生」という珍しい肩書きに興味があるだけで、ほむら自身に興味がある訳では
ないのだろう。興味があるのだとしても、それはほむらの上辺にだけだ。
 そんな奴らと過ごす時間など、それこそ授業以上にどうでも良かった。
 ……だけれども、この日ばかりはいつもとは少しだけ違ったらしい。

173 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:12:32.64 ID:X0c9hEhO
 
「用事ってもしかして、魔法少女のお仕事?」

 この教室内で、ほむらが魔法少女だと言う事を知っている人間などは数える程しかいな
い。この瞬間まで興味も持たず、見向きもしなかった女生徒を、横目にちらと見遣る。
 そこで微笑んでいたのは、二つに結んだ栗色の髪の毛の持ち主……高町なのはであった。
 出た、と思った。高町なのはは、ほむらにとっての最大のイレギュラーである。まどか
や魔法少女に関わっている以上、捨て置く事も出来はしないし、かといってほむらは彼女
の情報をほとんど何も知りはしない。それでも彼女との会話を試みようとすれば、自分の
ペースを見失いそうになる事があって、気に入らない。
 正直な話、出来ればこんな重要な日に関わっていたくはない人間であった。
 故にほむらは、最初からそこには誰も居なかったように、誰からも声を掛けられてなど
いないように、無視を決め込んだ。何事も無かったかのようになのはの横を通り抜けて行
こうとするが、やはりというか案の定というか、そのまま素通りなど出来はしない。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 なのはの横を一歩通り過ぎた時点で、ほむらはその腕をぐっと掴まれた。なのはとて身
体の細さはほむらとさほど変わらない筈なのに、華奢な外見によらずその力は強い。流石
に無視するのは不可能であると悟ったほむらは、なのはには背を向けたまま口元を歪めた。

「……何かしら。用事があると言ったはずだけれど」
「え、えーっと……ごめんね、ほむらちゃん? でもそれって、魔法少女のお仕事だよね?
 それなら、私も一緒にいちゃ迷惑かなあって思って……」
「迷惑よ。足手まといは必要ないと言ってるの」
「あ、足手まといって……!!」

 凪いだ瞳でなのはを見遣れば、なのはは強い意志を持った瞳でほむらを見返した。
 まるで言っても聞かない子供のようだった。なのはと言葉を交わした数は少ないが、そ
れでもほむらは、十分過ぎる程に彼女の異質さは実感している。
 なのはは「ほむらと友達になりたい」などと言っていたが、恐らく本気でそう思ってい
るのだろう。どんなに邪険にあしらわれても、なのははほむらと友達になれると信じてい
るのだろう。
 まどかを除けば、彼女は今までの時間軸で一度も出会った事の無かったタイプの人間で
ある。実際、この時間軸のみで語るならば、なのははまどかよりも優しく接してくれる。
 それに対して嫌な気などはしないが、そんな相手には尚更どう接すればいいのか分から
なくなるのだった。優しい言葉に慣れないほむらは、本当の優しさに触れた時の対処法を
知らずにここまで来てしまったのだから、そうなるのも仕方がない。
 悔しいが、根っこの部分は最初の時間軸から大して変わってはいないのだと思い知らさ
れた気がして、ほむらは一人自己嫌悪した。
 
「……分かったなら離して。あなたと遊んでいる暇はないの」
「ほむらちゃんってば、ひっどい! 私、これでも結構役に立つんだよっ!?」

 ほむらの苛立ちも知らず、なのはは唇を尖らせて子供っぽい怒鳴りを上げた。
 魔法少女ですらない女が一体どうやってほむらの役に立つというのだろう。どう考えた
って足手まといにしかならないのだから、そんな滅茶苦茶な事を言われても困る。
 なのはの無力を説明してやるのも面倒に思えたほむらは、嘆息して、次に周囲の視線に
気付いた。教室に残っていた生徒達の視線のほぼ全てが、ほむらとなのはに向けられてい
たのである。
 それまで周囲で談笑していた生徒達も、そればかりか偶然教室の前を通り掛かっただけ
の生徒ですらも。皆してほむら達二人をちらちらと眺めながら、ひそひそと何事かを話し
ていた。
 その中の一人と視線を合わせれば、慌てた様子で視線を逸らされた。
 現状を纏めてみる。事情を知らない周囲の生徒からすれば「友達を作らない孤高の転校
生が、クラスでも割と人となりが良いと評判の女の子と揉めている」という事になるのだ
ろう。

174 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:15:09.49 ID:X0c9hEhO
 一応なのはの事は軽く調べているので、彼女がクラス内で如何に人望があるかも知って
いる。なのはは誰に対しても優しく接するのだろうし、理不尽な我儘を言う事もない。そ
の言い分にはいつだって筋が通っているのだから、なのはと喧嘩をしたいと思う生徒は居
ないらしい。寧ろ大体は、望んでなのはと友達になろうという生徒の方が多いようである。
 何にせよ、このままではなのははほむらの腕を決して離さないだろう。そうしている限
り時間は無駄に過ぎてゆくし、何よりも話題に飢えた生徒達にとっては恰好のネタ話だ。
 重要な戦いを前にして、これ以上下らない事に神経をすり減らしたくは無い。
 ほむらは小さく息を吐いて、呆れたようになのはに向き直った。

「いいわ……少しだけなら付き合ってあげる」
「本当に? ありがとう、ほむらちゃん!」

 了承を得た途端に、なのはの表情がぱっと明るくなった。
 腕に込められた力が緩められ、心の底から嬉しそうな表情でほむらの横に並ぶ。
 高町なのはの当初のイメージは、腹の読めぬ達観した人間、といった所であったが、ど
うやらそれだけではないらしい。やけに悟った部分があるかと思えば、まだ未成熟であど
けない部分があったりと、本当にこの女は訳が分からない。
 だからこそ自分はこの女のペースに飲みこまれてしまうのだろうか。もしもこれが全て
計算の上で成り立った人格形成だとするならば、彼女はやはり油断ならない相手である。
そんな事は万が一の可能性ではあるが、一応警戒はしておいた方が良さそうだなと、ほむ
らは思った。


 ほむら達が通う中学は、海鳴市内の見滝原という小さな町に存在する。
 見滝原と言えば、ほんの二十年も前まで遡れば、何の変哲もない小さな町だった。特に
目立った施設がある訳でもないし、とりわけ知名度が高かった訳でもない。日本中何処を
探したって幾らでも見付かる、普通すぎるくらいに普通な町であった。
 無理くりにでもその利便性を挙げるとするならば、ビルが立ち並ぶ海鳴の都心に近いと
いう事くらいだろうか。その影響もあって、なのはの実家がある藤見町と比べれば、些か
遊びに来る若者も多いか、という程度のものだった。
 ところが、近年になって、見滝原の開発は急速に進んだ。海鳴の中心部と比べても引け
を取らない程に近代的な建造物が次々と建てられ、それからというもの、目覚ましい勢い
で人が集まるようになっていった。
 その結果の一つとして真っ先に挙げられるのが、見滝原中学校だ。
 見滝原中学校とは、数十年前、この町で一番最初に開校された私立中学である。
 学力ランクで言うならば、それなりの上位校。受験する者も毎年大勢いるが、合格して
この学校に通う資格を得る事が出来る生徒は、その半分にも満たない。小学生時代までな
のは達が通っていた聖祥大学の付属中学よりは幾らか上のランクに位置する中学だった。
 また、私立中学であるが故、学費は当然公立中学よりも高くなる。そんな事実もあって、
この学校に通う生徒も割と裕福な家の子が多く、競争率の高い受験戦争を勝ち残って来た
生徒を多く抱えた見滝原中は「ちょっとしたお嬢様学校」などと呼ばれていて、この学校
に通う事自体が、一種のステータスでもあるのだった。
 さりとて、歴史が古いと言うことはつまり、校舎の老朽化が他よりも進んでいるという
事でもある。そんな折、町の開発の波に乗った見滝原中学は、校舎全体を改築し、一気に
近代都市に相応しいだけの最新設備を備えた学校へと変貌を遂げたのだ。
 一通りの最新設備は全て揃え、併せて学科をも増設した見滝原中学のネームバリューは
一気に跳ね上がり、その校舎の美しさも手伝って、生徒数……ひいては、町内の人口も増
大。結果として、中学校の改築は、見滝原町全体に大きな利益をもたらした事になった。
 今となっては見滝原は若者が集う町としても有名で、さやかやまどか達も、休みの日に
は一緒に都心部まで遊びに行く事もあるようだった。

175 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:18:14.00 ID:X0c9hEhO
 ほむらは今聞いて知った事だが、なのはの実家は隣町で、学校からはほんの十数分程度
歩けばすぐに到着する距離らしい。故に、少しくらい遅くなっても、終電を気にしたりす
る必要はないようで、なのはとしても見滝原で遊ぶのは気が楽だと言う事だった。
 二人はそんな他愛もない話をしながら見滝原の駅前まで徒歩で向かい、一件のファース
トフード店に入店した。
 駅前のファーストフード店と言えば、放課後の中高生の憩いの場である。当然この時間
帯は近隣の学生達でごった返していて、人混みをあまり好まないほむらにとっては、あま
り長居をしたい場所とは言えなかった。
 居心地悪そうに周囲を見れば、見滝原の生徒もちらほらと見掛けた。しかし、その中に
ほむらが知っている生徒は居ない。幾分か気が楽になったほむらは、二人用のテーブル席
に腰掛け、買ったばかりのジュースのカップにストローを突き刺した。

「……悪いけど、あまり時間がないの。用件があるなら手短にお願いするわ」
「うーん、用件って程でもないんだけど……前にも言ったでしょ、お友達になりたいって」
「それだけじゃないでしょう。本当の狙いは私の目的を知りたいからって所かしら」
「それも全くない訳じゃないけど、それ以上にお友達になりたいって気持ちは本当だよ?」
「……どうかしらね」

 面白くもなさそうに、ほむらはストローに口を付けた。
 なのはは、こういう人間だ。それが心の底からの言葉なのかどうかは別として、少なく
ともほむらがこれまで接して来た高町なのはは、こうだった。
 掴みどころがなくて、何を考えているのかも計り知れない。その上友達になりたいだな
んて浮ついた言葉を恥ずかしげもなく言う辺り、子供らしいのか大人らしいのかも分から
ない。存在自体がイレギュラーである高町なのはは、その人格もまた、ほむらにとっては
理解に苦しむイレギュラー―変わり者―であった。
 そんな高町なのはが、何かに気付いたように手を叩く。

「あっ、そうだ、ほむらちゃん!」
「なにかしら」
「良かったら、アドレス交換しようよ」
「アドレス……? どうして?」
「んー……どうしてって、そんな難しい事訊かれても困っちゃうなぁ」

 なのははにゃははと苦笑いをして、本当に困ったように指先で額を掻いた。
 どうやらクラスメートにアドレスを訊く事の意味を問うのは、難しい事であるらしい。
 そもそもほむらには、今まで誰かとメールアドレスを交換したという経験がほとんどな
い。今時の若者は皆、メールでやり取りをするのだという事くらいは知って居たが、ほむ
らにはメールアドレスを交換してまで話したいと思う友達などはいない。故に携帯に登録
されている電話番号なんて親や学校くらいしかないし、それはどちらも頻繁に連絡を取り
合う類の相手ではない。
 ほむらにとって、携帯電話という道具は無くても構わない程度の認識でしかなかった。

「えっと、ほら、私達って一応クラスメートだし」
「クラスメートだと、アドレスを交換するのは普通なのかしら?」
「だって、いざという時に連絡が取れないと困っちゃうでしょ」
「そうかしら。私は別に困る事なんて何もないけれど」
「ふぇぇ……ほむらちゃんってば意地悪だよぉ……」

 あどけない子供のように唇を尖らせて、なのはは不機嫌そうに呟いた。
 自分の返答の何が意地悪で、なのはは何に対してそんなに不機嫌そうにしているのかが、
ほむらにはさっぱり分からなかった。どうやら、善くも悪くも、ほむらの認識は他の人間
とは少しばかりズレているらしい。
 暫し考えるが、なのはの反応に納得の行く答えなどは出なかった。だけれど、別にどう
でもいい事かと考えるのを止めて、ほむらは鞄から携帯電話を取り出した。
 メールのやり取りを頻繁に行うかどうかはまた別の問題として、アドレスを交換するく
らいならば自分に損失はない。あまりしつこいメールが送られて来るようなら、アドレス
を変えてしまえばいいだけの話だ。
 ろくに使用されていなかった携帯電話は新品同様で、ストラップすらもつけては居なか
った。折り畳み式の携帯を開いて、十字のキーを操作して……二度三度、ぽちぽちとボタ
ンを押すが、それ以上ほむらの手は動かなくなった。

176 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:20:38.98 ID:X0c9hEhO
 さて、アドレスの交換とは、つまり何をすればいいのだろう。紙にアドレスを書くのだ
ろうか。否、今の時代はそんなアナログな手法は取らない筈だ。それくらいは携帯電話を
ろくに使わないほむらにだって分かる。
 ほむらにとってはもうずっと過去の話、かつて繰り返した時間軸において、まどか達と
アドレスを交換した時の事を思い出そうとするが、あの時も携帯の操作は全て彼女らがや
ってくれたのだから、アドレス交換の手順などほむらの知る所ではない。
 少なくとも、皆がそれぞれの携帯のボタンを操作して、数秒と掛からずにアドレス交換
が終わっていたような覚えはある。
 そもそもの話、ほむらは元より他人と積極的にコミュニケーションを取れるタイプの人
間では無かった。まどかと出会うまでは気の許せる友達なんて一人も居なかったのだから、
携帯電話の扱い方など熟知していよう筈もない。
 涼しげな表情は崩さずに、しかし動かなくなってしまったほむらの顔を、なのはが覗き
込んで来た。

「どうかしたの、ほむらちゃん?」
「アドレス、交換してもいいけれど……」
「本当に!? やったあ! ありがとう、ほむらちゃん!」
「え、ええ……別にこれくらいなら礼には及ばないわ」
「それじゃあ、私が受信するね?」
「………………」

 言葉の意味が分からなかったほむらは、何も言わずに携帯の画面から視線を外してなの
はを見た。「受信」と言う言葉の意味は分かるが、この状況下における「受信」が一体何
を意図したものであるのかが分からなかったのだ。
 だけれども、なのははそんなほむらなど意にも介さず、嬉しそうに携帯電話を操作して
ゆく。小さな携帯のパネルの上を、滑るようにして動くなのはの指は相当に速い。かなり
手慣れた手つきだった。
 やがて、数秒と待たずになのはの携帯のイルミネーションが点滅を始めた。なのははそ
れを垂直に持ったままほむらの眼前へと差し出すが、その行動の意味が理解出来なかった
ほむらは、何をするでもなくなのはの顔を見詰める。

「えっと……ほむらちゃん?」
「……ごめんなさい。携帯の操作に慣れていなくて」

 そう言うと、なのはが「プッ」と小さく吹き出した。次いで、心の底から愉快そうに笑
い始める。周囲の迷惑にならない程度に声を上げて笑うなのはの楽しそうな表情が、笑う
事を忘れたほむらには理解出来なかった。
 だけれども、何となく不愉快ではあった。何がそんなに面白くて笑っているのかは知ら
ないが、何となく、友達が少ない事を笑われたような気がして、ほむらは図らずも機嫌悪
そうになのはを睨んだ。事実、ほむらには元々友達が居なかったのだから、そこに触れら
れて嬉しい訳がないのだ。
 ほむらの険悪な表情に気付いたなのはは笑うのを止めて、申し訳なさそうに両手を合わ
せた。

「にゃはは……ごめんね? ほむらちゃんも可愛いところあるんだなあって思ったの」
「別に……携帯が使い慣れない事の何が可愛いというのかしら」
「もう、そんなに尖らないで。ほら、私に貸してみて?」
「あっ……ちょっと……っ」

 身を乗り出したなのはが、ほむらの返事などは待たずに、携帯電話をひったくった。
 携帯のほむらに画面を見せるように持って、なのはが軽く十字キーを押す。一定時間操
作されず、真っ暗になっていた携帯電話の液晶画面に、再び待ち受け画面が表示された。
最初から携帯のデータ内に入っていた、初期設定の待ち受け画面である。
 それから、見慣れない画面を数回経て、あっと言う間に「赤外線送信」と表示された画
面を表示させた。なのははこの画面までの道のりを分かり易く説明してくれたつもりらし
く、この画面までの行き方は、携帯に疎いほむらにも理解出来た。

177 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:23:57.99 ID:X0c9hEhO
 促されるままに、ほむらはなのはから返された携帯を垂直に構える。なのはもまた、そ
れとは並行に携帯電話を構えると、数秒と経たずにほむらの画面に「送信しました」と表
示された。どうやらこれで、携帯のアドレスを送信出来たらしい。一瞬である。

「あなた、使い慣れてるのね……携帯」
「にゃはは、小さい頃からこういうのは大好きだったから。家電量販店にも良く行くんだ」

 そう言いながら携帯電話を見せて笑うなのはは、本当に楽しそうだった。
 自分の話をする事が楽しくてたまらない。それが他人の役に立つ事であるのなら、尚更
嬉しくなる。なのはの顔にはでかでかとそう書いているような気がして、表情には出さな
いまでも、少しだけおかしくなった。
 だけれども、そんななのはは、ほむらとはやはり何かがずれているのだと思う。
 人の為に笑う事なんて、ほむらはもうとっくの昔に忘れてしまったのだ。
 なのはは楽しそうに「物心ついた時から機械いじりが好きだった」とか「家電量販店に
いると落ち着く」とか、そういう他愛もない話を聞かせてくれるが、ほむらは凪いだ気持
ちでそれを聞き流すくらいしか出来はしない。
 何度も何度も、数え切れない程に絶望の未来を見て来たほむらは、色んな意味で、彼女
らと同じ時を生きてはいないのだ。楽しそうに話してくれるなのはには悪いが、例え周囲
がどんなに嬉しそうに笑っていたって、自分も一緒になって笑おうなどと思える筈もない。
 この通り、ほむらの心と時間は気付いた時にはもう、ずっとずれてしまっていたのだ。
それも全てはまどか一人の為であるが、いつの日かまどかと共に明日を迎えられる日が訪
れたとして、ほむらはまどかと一緒に笑う事が出来るのだろうか。
 全てが終わって、希望の未来を掴み取ったとしても、まどかにどう接すればいいのか、
今よりももっと分からなくなってしまうのではないか。
 そんなとりとめのない事を考えるが、どんなに考えたって、そんなに先の事は見えなか
った。ほむらが今考えるべきなのは、全てが終わった後の事では無く、全てを終わらせる
為に何を成すかであり、それはまさしく、今なのだ。
 今日の戦いは、その為の重要な一戦だ。その為にも、こんな所でこれ以上下らない日常
会話に割く時間などはない。楽しそうにお喋りを続けるなのはには悪いが、ほむらは静か
に席から立ち上がった。

「ごめんなさい。そろそろ時間だから、行かないといけないの」
「えっ……あっ、ごめんね? 私、そんなに長いこと話してたかな……」
「ええ、それなりに……けど、楽しかったわ。ありがとう」

 本当は真剣に話を聞いていた訳ではないし、内容だって要所要所しか覚えてはいないが、
ありがちな社交辞令を述べて、ほむらは踵を返した。別にこちらから望んで嫌な奴だと思
われる必要もないだろう。
 店内入口付近に設けられたダストボックスの前で立ち止まり、紙カップを処分する。カ
ップと氷を分けて捨てながら、ちらと横目に見れば、高町なのはもまた自分の分のトレイ
を持って、慌てた様子でほむらを追い掛けようとしているようだった。
 想像通りといえば想像通りだった。内心で軽く呆れながらも、ほむらは店を出て歩き始
めるが、数秒と経たずになのはに追い付かれた。

「ねえ、ほむらちゃん!」
「急いでいるの。悪いけど、止めても無駄よ」
「ううん、止めないよ。だけどせめて、着いて行くくらいならいいでしょ?」

 本当に面倒臭い女だと思った。多分、高町なのははどれだけ言って聞かせた所で、今の
姿勢を崩しはしないのだろう。これから魔法少女として戦いに行くのだと知られている以
上、彼女はどうしたって着いて来る。
 一緒に過ごした時間は少ないが、それくらいはほむらにだって容易に想像出来た。

「あなたの命まで守り切るだけの余裕はないかもしれないけれど」
「それでもいいよ。こう見えても、私は自分の身くらいは自分で守れるから」
「そう……なら勝手にしなさい」
「いいの!?」
「どうせ言っても聞かないでしょう」
「うん!」

178 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:26:11.65 ID:X0c9hEhO


* * *


 辿りついた場所は、見滝原総合病院だった。
 なのはが小さい頃から通っていたのは、自宅からの距離が最も近い海鳴総合病院だ。そ
れ故、なのはが見滝原総合病院に訪れたのはこれが初めてになるのだが、ついつい海鳴総
合病院と見比べてしまって、こんなに大きな病院だったのかと驚きを隠せなかった。
 町ぐるみで開発を推し進めた見滝原は、今や他のどの町にも劣らない大都会と言って差
し支えはない。そんな大都会に存在する病院がそこらの病院よりも劣っている訳も無く、
この病院もまた、見滝原中学と同じくして建て直され、最新の設備が取り入れられた病院
であった。
 迷いなく進んでいくほむらは、見滝原総合病院にどんな用事があるのかと尋ねても、答
えてくれようとはしなかった。もしかしたら、この病院にほむらの大切な人が居て、その
人の為にほむらは戦っているのだろうか。そんな疑問も浮かぶが、それはすぐにただの勘
違いであると知る事になる。
 ほむらが立ち止まったのは、見滝原総合病院の駐輪場だった。そこには誰がいる訳でも
なくて、ただ色取り取りな自転車が一定の間隔で並んでいるだけだった。こんな所に一体
何の用事があるのかとほむらを見遣れば、ほむらは何も言わずに空間に門を作っていた。
 それが魔女空間に侵入する為、魔法少女が作り出す魔法の門であるのだという事は、こ
こ数日の間、マミに付き合って魔女空間に入る事もあったなのはも既に知っている。

「ほむらちゃん、もしかして、最初からこれに気付いてたの……?」
「そうでなければ、ここには辿り着けないわ」

 最初からほむらは、ここに魔女が結界を作る事を知った上で、それを討伐する為にこの
病院へ訪れたのだという。見た所ソウルジェムを使う事もなかったし、一体どうやってそ
れを感知する事が出来たのかは分からないが、どうせそれについて質問した所で、ほむら
は決して多くは語ってくれないのだろう。
 なのはもそれ以上質問をすることもなく、ほむらと共に魔女空間への門をくぐった。


 今回の魔女が生み出した結界は、お菓子だらけの結界だった。
 キャンディにドーナツ、ポテトチップスにチョコレート。壁も天井も、何処を見てもお
菓子だらけで、所々に手術器具が並んでいる。普通なら薬を入れておく筈の小瓶の中には、
お菓子や苺などの果物が入って並べられていた。
 なのはだってお菓子は好きな方だし、別に病院が苦手という訳でもない。二年前は、割
と長期間の入院生活をしていたくらいだ。だけれども、異常なまでのお菓子と病院という
組み合わせは、何処か不気味で、気持ち悪いとすら思ってしまう。
 それはなのはがかつて入った薔薇の空間だって同じだ。薔薇は美しいと思うが、何処を
見ても薔薇ばかりでは気味が悪い。こう感じてしまうのは、もしかしたらなのはの肌が、
魔女が放つ威圧感や負の感情を、本能的に感じ過ぎているからなのかも知れない。
 しかし、それ以上になのはに居心地が悪いと感じさせてしまうのは、目の前で繰り
広げられる二人の睨み合いによる所が大きかった。

「もう一度言うわ。今回の獲物は私が狩る……あなた達は手を引いて」
「そうは行かないと言っているでしょう。美樹さんを迎えに行かないと」

 ほむらはいつも通り、何を考えているのかも分からぬ凪いだ表情でマミに詰め寄るが、
マミは一歩も引き下がる様子もなく、挑戦的な態度でほむらを睨んでいた。
 なのはとまどかはと言うと、二人してどうすればいいのかも分からずに、ただ見守る
ことくらいしか出来なかった。
 そもそも、なのは達がここでマミ達と出会ったのは完全な偶然だった。ほむらの進む道
の先にマミ達が居るだなんて思う筈も無かったし、出会い頭にこんなにも険悪な雰囲気が
漂うだなんて、もっと思っていなかった。
 聞けば十数分前、この病院で孵化直前のグリーフシードを偶然発見したのは、まどかと
さやかの二人らしい。今はまだ魔女は孵化していないが、もしも魔女が孵化してしまえば、
病院に入院する大勢の患者の命が犠牲になってしまう。そんな結果は最悪中の最悪だ。

179 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:29:03.95 ID:X0c9hEhO
 故に、さやかが目印として孵化直前のグリーフシードの元に残り、まどかが急いでマミ
を呼んで来たらしい。
 だとすればこんな所でいがみ合っている場合ではないのではと思うが、どうやらマミと
ほむらの相性はそれ程良くはないようである。マミはほむらの言葉に聞く耳を持たないし、
ほむらはマミをこの先には進ませる気はないらしい。

「あなたが手を引いてくれるなら、美樹さやかとキュゥべえ、それから高町なのはの安全
も私が保証するわ」
「そんな話、信用すると思って?」

 マミの手が、綺麗に巻かれた金の髪の毛を軽く払った。その指に嵌められたソウルジェ
ムの指輪が一瞬煌めいたかと思えば、ほむらの周囲から飛び出したのは、マミの魔力を伴
った赤い帯だった。魔力で出来た帯は硬く素早く、ほむらに次の一手を打たせる事なく、
その身体を全方位から絡め取った。
 ほむらの顔が苦痛に歪む。身体を締め上げられ、吊るし上げられ、自由を完全に奪われ
たのだ。四肢が完全に封じられたとあっては、然しものほむらと言えども出来る事など何
もない。ほむらはそれでも、声を張り上げた。

「ば、馬鹿ッ……、こんな事やってる場合じゃ……!」
「勿論怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」
「今度の魔女は、これまでの奴とは訳が違う……!」
「大人しくしてたら、帰りにちゃんと解放してあげる」

 二人の会話は噛み合わない。マミには最初からほむらの言葉に耳を貸すつもりはないよ
うだったし、そうなれば、拘束されて言葉しか使えないほむらに出来る事などは、本当の
意味で何もなくなってしまう。
 マミはそれ以上の興味を失ったかのように、まどかの手を引いて結界の奥へと消えて行
った。魔女が創り出した結界なんて、一寸先は闇だ。マミとまどかの姿は、程なくしてな
のはの視界からも消え去った。

「ほむらちゃん……」

 見上げたほむらは、らしくもない表情で歯噛みしていた。どんな窮地にだって畏れすら
見せないと思われたほむらの余裕は、こうも簡単に打ち砕かれてしまうのだ。
 だけれども、マミの判断を間違っているとも思えないなのはに、下手人であるマミを責
める事など出来はしない。
 そもそも、マミ達魔法少女組の間での暁美ほむらの共通見解は「悪人」である。利己的
な理由でその力を振るい、キュゥべえをも傷め付けた悪の魔法少女だと、少なくともマミ
らはそう考えているのだ。
 そんな悪人が、一刻も早く救出するべき人が居る状況で現れたなら、誰だって警戒する
ものだ。それなら、邪魔をされる前に怪我をさせない程度に拘束してしまえばいいと思う
のはマミのみならず普通の考えだと思うし、寧ろ正解に近いとさえ思う。
 だけれど、それは仮に暁美ほむらを本当の悪人と定義した場合の結論だ。なのはは、ほ
むらを心からの悪人だなどとは思っていないのだから、マミの行動を間違いだと否定する
事は出来ないまでも、正解だと肯定する事も出来なかった。
 では、この状況で自分が出す答えとは、一体何か。
 マミとは違う、なのはが信じる正解の対応とは、一体何か。
 それは、至って簡単な方法――腹を割った「話し合い」である。

「ねえ、教えてほむらちゃん。ほむらちゃんは一体、何をするつもりだったの?」
「さっき言ったでしょう。今日、ここに現れる魔女を、私がこの手で狩るつもりだった」
「どうしてそんなに自分の力で魔女を倒そうとするの? やっぱり、手柄が欲しいから?」
「そんなものは必要ないわ。巴マミがそれを欲しがるなら、好きに持っていけばいい」
「なら、どうして……」

 問うが、結論は見えない。
 相も変わらずの遠回しな発言は、事の真相へと繋がる道のりを険しくするだけだった。
だけれども、ここで諦めては話は何にも進まないままだ。その気になればここで自分がほ
むらを救う事は容易に出来るだろうが、それをするのはせめて、今彼女が何をしようとし
ていたのかを見極めてからでなければならない。

180 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:31:46.11 ID:X0c9hEhO
 なのはは、目的の無い力を振るうのが嫌だった。

「今日現れる魔女には、今の巴マミでは勝てないわ」
「どうして……そんな事、やってみなくちゃわからないじゃない!」
「分かるわ、残念だけど。二人を守りながら、巴マミがあの魔女に勝つのは不可能だって」
「そんな事っ……、なら……どうすればマミさんを助ける事が出来るっていうの?」
「この拘束さえ解ければ、まだ間に合うかも……――ッ!?」

 拘束から逃れようと、赤い帯の中で身悶えしたほむらが、苦しそうな呻きを漏らした。
 ほむらが足掻けば足掻く程、マミの拘束魔法はきつくその身体を拘束するのだ。帯がぎ
しりと軋みを上げる度、ほむらの華奢な身体は締め上げられ、体力は消耗されてゆく。
 それは、一度拘束されてしまえば、逃れる事の叶わない蜘蛛の巣のように思われた。

「じゃあ……ほむらちゃんは、マミさんを助けようとしていたの?」
「巴マミが死ねば、また同じ事の繰り返しになる……最悪の未来に繋がってしまう。それ
じゃあ、意味がないのよ……」

 その言葉を聞いて、なのははほっと安心した。
 きっとほむらの言葉に嘘はないのだと思う。「また」というのが何を指すのかは分から
ないが、あのほむらがなのはからの信頼を得る為だけにこんな狂言を言うとは思えないし、
そもそもなのはに「マミを救いたい」などと打ち明けた所で、なのはに力が無ければほむ
らを救う事など出来はしないのだから、ほむらにしてみれば無力ななのはにそれを打ち明
ける意味はない。
 ほむらはもう、抵抗する事すらも諦めた様子だった。力無く項垂れて、その表情には、
諦めと苛立ちにも見える暗い陰りが挿していた。
 まだ、諦めるのは早いよ。そう思って、なのははほむらに手を差し伸べた。

「たった一つだけ、助かる方法があるよ」
「……何のつもりかしら。あなたに一体、何が出来ると言うの」
「出来るよ、何だって。私には、想いを貫く為の力と、空を駆ける翼があるから」

 そう。この力がある限り、なのははきっと、何だって出来るのだと思う。
 目の前で泣いている人が居る限り、目の前で助けを求める人が居る限り、なのはにはや
るべき事がある。この胸にあるのは、哀しみを終わらせる勇気の誓い。この手の力は、涙
を撃ち抜く奇跡の魔法。
 ほむらがそんなにも哀しい顔をするなら、なのははその哀しみを撃ち抜くまでだ。そし
て、それはマミの命をも救う事になるのであれば、迷いなんて一片たりとも存在しない。

「きっと助けるから。マミさんの事も、あなたの事も」
「あなたは一体、何を言っているの……?」

 ほむらは、最悪の未来に繋がると言った。だけれども、未来なんてものは、誰にも分か
りはしないのだと、なのはは思う。仮に決められた未来があったとしても、そんなものは
自分達の力でいくらだって変えて行ける。
 一人で無理なら二人で。二人で無理なら共に戦う仲間達と共に、だ。みんなの絆が一つ
になれば、それは必ず未来へと続いてゆく、光差す道となる。
 抗えぬ運命など存在しない。決められた運命など存在しない。もしもここでマミが魔女
に負ける事が運命だというのなら、そんな下らない運命は全力全開でブチ壊してやればい
い。今までだって、ずっとそうしてみんなで一緒に歩んで来たのだ。
 今更それが不可能だなどとは、誰にも言わせはしない。
 結んだ絆は、どんな奴にだって壊させはしない。

「未来は変えられるって、私が証明するから――」

 胸元の赤き宝玉を掲げれば、それはなのはの想いに応えるように眩く瞬いた。
 物語は、まだ何も始まってはいない。自分達の全ては、まだ始まってもいないのだ。
 なれば、こんな所で始まってもいない物語を終わらせはしないし、終わらせるつもりだ
って毛頭ない。みんなで未来の扉を叩いて、その先に待つ果てのない道をこれからも走り
続けて行くのだ。

181 : ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/04(月) 17:34:20.26 ID:X0c9hEhO
 
「――だから! これが終わったら、一緒に始めよう……私達の、未来を!」

 桜色の閃光は、なのはの周囲の全てを覆い隠した。
 この空間そのものを形作るお菓子の山を、そこらをひっきりなしに歩き回っていた小さ
な使い魔共を、赤の帯に拘束されながらもなのはを見詰めるほむらの顔を。なのはの身体
から満ち溢れる魔力の光が、何もかもを飲み込んで、全ての視界を遮った。
 愛機レイジングハートを掴み取ったなのはの身体を、光が包み込んだ。光は形をとって、
見滝原中学女子に指定された制服は、瞬く間に新たな形へと作り変えられてゆく。目も覚
めるような純白過ぎる純白に鮮やかな青が彩られたドレスは、暗過ぎるこの空間において
は天使の如き輝きを放って見えた。
 胸元で、黄金の装甲が煌めいた。青の袖は、高速回転するビスによって形を留められ、
金属質な鋼の手甲となった。握り締めた魔道師の杖の穂先、その根元には、白と青の羽根
が取り付けられて、機械仕掛けの魔法少女への変身は完了した。
 高町なのはの魔力光が放つ輝きは、薄暗い魔女空間では余りにも眩し過ぎる。溢れ出た
魔力は、純白の羽根となって二人の間に舞い上がって、まるで夜空を照らす星光のように
全てを明るく照らしてくれた。
 数秒程、時間が止まったような沈黙が流れて、やがてなのはの周囲に四つの輝きが浮か
んだ。眩し過ぎて、最早限りなく白銀に近い光に見えるが、それは見まごう事なくなのは
の魔力の強さに応じて煌めき、膨らみ続ける桜色の魔力スフィア。

「高町なのは……あなたは、まさか……そんな!?」
「さあ、行くよほむらちゃん。すぐにそこから解放してあげる!」

 ちゃき、と音を立てて、レイジングハートを構える。金の矛先が狙う照準は、縛られ、
吊るし上げられた暁美ほむら。桁違いの空間把握能力を以て操られた魔力スフィアは、高
速で空を駆け抜け、刹那の内にほむらの身体を縛る帯を撃ち貫いた。
 如何に強力な魔力で構成されたバインドと言えども、この場に術者の居ない魔法などは、
なのはの敵には成り得ない。撃ち貫かれたマミのバインドは、穿たれた場所から萎むよう
に縮んで行き、あれ程ほむらが苦戦した帯は、あっと言う間に光となって消え去った。


* * *


 巴マミは、その日始めて、魔女の孵化の瞬間を目撃した。
 場所は、他よりも明らかに広く、広大なドーム状の空間だった。周囲にはここに辿り着
くまでの道のりで見かけたお菓子がいくつもいくつも無造作に並んでいて、あちこちから
一本の支柱に支えられた円形のテーブルが伸びている。高さは、人の数倍くらいだろうか。
それは明らかに、人が用いるテーブルなどではなかった。
 広大な空間の中心には、一際特別なテーブルがあった。これからお茶会でも始めるつも
りなのか、そのテーブルにだけ二つの長椅子が設置されていて、一対の人形が向かい合っ
て座っている。小さな女の子が好みそうな、可愛らしい雰囲気の人形だ。
 マミが目を付けたのは、ピンクの人形の方だった。それが出現すると同時に、ドームの
半円に、真上から墨汁を垂らしたような闇が拡がっていった。闇はすぐに茶色く色付き、
それが溶かされたチョコレートだと判別出来るようになる頃には、薄暗かった空間は人形
と同じ、明るいピンク色に染まった。魔女空間の完成である。

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 18:16:55.04 ID:Rx69+jUr
代理で投下します

 一連の空間の変化から、マミは魔女の正体はピンクの人形であると判断したのだった。

「折角の所悪いけど、一気に決めさせて貰うわよ!!」

 標的を見定めたなら、後は攻撃するだけだ。マミの行動は迅速だった。
 一足跳びにピンクの人形が鎮座した長椅子の根元まで飛び込んだマミは、両手で構えた
マスケット銃を、鈍器の要領で振り抜いた。全力で放たれたマスケットの打撃攻撃は、人
形が座る長椅子を容易に叩き折って、それまで座っていた場所を失った人形は自由落下を
始める。
 抵抗する事なく落下して来た人形を、同じ要領でマミはもう一度殴りつけた。ホームラ
ンバットとなったマスケットの打撃は、本来の使い方とは違っているとはいえども強力だ。
 殴られた人形は、その小さな身体を思いきり凹ませて、半円の壁まで吹っ飛び、叩き付
けられた。初動から、ここまでの連続攻撃に掛かった時間はほんの数秒。瞬く間にマミは
先手を取り、抵抗する間すらも与えずに圧勝しようとしていた。
 今なら、どんな敵にも負ける気がしない。
 その確信が、マミの動きを速く、鋭く変える。

(身体が軽い……こんな幸せな気持ちで戦うのは初めて)

 今のマミは、一人ぼっちではない。
 損とか得とか、そういう打算無しで、これからもずっと一緒に居てくれると言ってくれ
た仲間がいる。一緒に肩を並べて戦ってくれるパートナーが、今、マミの勝利を信じて後
ろで待ってくれている。負ける事など許されない。カッコ悪い姿など、見せられない。
 マミを孤独から連れ出してくれた鹿目まどかの為にも、この勝利はまどかに捧げる。そ
して、終わったら一緒に最高の魔法少女コンビ結成を祝して、パーティをするのだ。美味
しいケーキを食べて、美味しいお茶を飲んで、それから、それから――。
 家族を失ってからというもの、ずっと一人ぼっちだったマミにも、ようやく生きて帰る
理由が出来たのだ。なればこそ、こんな魔女なんかにこれ以上割いてやる時間などはない。

(もう、何も怖くない!)

 突き付けたマスケットの銃口は、寸分の狂いなく人形を狙い定めていた。
 怒涛の勢いで、マミは激しい弾丸の嵐を見舞った。一発撃ったマスケットはすぐに投げ
捨て、次のマスケットを掴んでは撃ちを繰り返す。人の常識で計れる速度を遥かに超えた
圧倒的な速度の射撃は、人形の小さな胴を蜂の巣へと変えた。
 それでも魔女は魔女。回復能力は生物の比ではなく、落下するまでに穿たれた穴は大抵
塞がってしまう。だけれども、そんな事はお構いなしにマミは歩を進め、身動き一つ取ら
ずに落下した人形の頭にマスケットを突き付け、ゼロ距離で弾丸を発射した。
 人形の頭に気持ちがいいくらいの風穴が空いて、そこから溢れ出した金色の魔力が、無
数の帯となって人形を締め上げ、遥か上方へと吊り上げた。全身を拘束魔法に縛られた魔
女に回避など出来る訳もない。マミは最後の一撃を放つ為、巨大な大砲を作り出した。
 大砲から放たれた必殺の一撃は、狙い過たず人形の胴をブチ抜いた。
 マミの持てる最高威力の砲撃魔法を受けた人形に、これ以上の戦闘は不可能。そう思わ
れたが、身体を潰された人形は、その小さな口から、巨大な何かを吐き出した。
 人間の体よりもずっと大きく長い。胴は黒く、ウツボのようにしなっていた。
 何かが出て来た。目の前で起こった事象をそう捉えた時には、既に黒い何かは、マミの
眼前に迫っていた。巨大な身体からは想像もつかない程の速度で、しかしそいつは特に変
わった戦法を用いる事もなく、至って普通な動作で、ただマミに接近したのだった。

「――え?」

 時間が止まったように感じたのは、どうしてだろう。勝利を確信していたマミの眼前ま
で迫った黒い魔女は、白塗りの顔でマミを見下ろすと、大きな口を開いていた。口の中に
は白く輝く牙がびっしりと並んでいて、その奥に見える舌は、唾液にぬめっていた。
 まるで、これから好物のお菓子を食べる子供の舌のように。
 反射的に、直感的に、本能的に。食べられる、と思った。

183 :代理:2011/07/04(月) 18:21:45.14 ID:Rx69+jUr
 身動きなんて取れる筈もなくて、マミはただ立ち尽くすだけしか出来なかった。目の前
で大口を開く魔女に意志の全てが集中していたマミは、魔女の遥か後方、チョコレートの
闇に覆われたドームの天井部分で、星々が煌めいた事にも気付かなかった。
 魔女の牙がマミの頭を飲み込もうとしたその刹那。夜空に輝く星々の如き輝きの中でも、
一際大きく、そして美しく輝く桜色の星が、人が知覚出来る光量を越えた閃光となって、
地へと降り注いだ。
 閃光は、今まさにマミを食い殺そうとしていた魔女の身体を猛烈な勢いで抉り、その巨
体を地へと縫い付ける。凄まじい轟音は、マミの耳を劈かん勢いで唸りを上げて、閃光が
伴った衝撃波は、マミの身体を吹き飛ばさん勢いでこの身を煽った。
 最も至近距離でその衝撃を受けたマミが感じたのは、痛みさえ覚える程の衝撃。それは
一瞬思考停止したマミの意識を、急速な勢いで呼び覚ましてくれた。

「一体、何が……!」

 見上げたマミの瞳を、眩い輝きが強く刺した。
 思わず目を背けたくなる思いを堪えて、それでも空を凝視する。チョコレートで出来た
闇は、最早夜空ですら無くなっていた。眩し過ぎて白銀にしか見えない夜空は、夜を引き
裂いて訪れた夜明けのようであった。
 やがて夜明けの光の中心から、何かがゆっくりと舞い降りてくる。
 純白の翼は、強い光を伴って美しく瞬いていた。眩しいくらいに輝いて見える白のロン
グスカートは、風に振られてふわりふわりとはためいて見える。優雅に舞い降りるその人
影は、光の天使のように思われた。

「高町……さん?」



184 :代理:2011/07/04(月) 18:22:59.74 ID:Rx69+jUr
 舞い降りた天使は、マミの良く知る高町なのはであった。
 良く見れば、胸元や腕は、機械の装甲のように見える。持っている杖だって、魔道師の
杖というよりは、赤い宝玉を金属の穂で覆い、それを白と青の機械の装甲で武装した槍の
ように見えた。だけれども、なのはが携えるソレの柄には青いグリップと引き金が付いて
いるようだし、それが杖なのか槍なのか銃器なのかは、マミにも検討は付かなかった。
 それ以前に、何故なのはが空を飛んでいるのか。何故なのはが魔法少女に変身している
のか。いくつもの疑問が濁流となって押し寄せて、思わずぽかんと見上げてしまうマミで
あったが、そんなマミの表情を見るや、なのはは満足そうに微笑んだ。

「良かった、マミさんが無事で……本当に良かった!」

 喜びも束の間だ。天使のように笑いかけるなのはの背後で、巨大な魔女がゆっくりと鎌
首をもたげた。魔女の表情は怒りに歪んで居るように見えたが、トゥーンコミック風の白
塗りの顔の所為で、些か滑稽に見える。だけれど、それはある意味では余計に不気味さを
引き立てるスパイスにも成り得る。
 なのはの危機に誰よりも早く気付いたマミは、状況の整理は後回しにして、まず叫んだ。

「高町さん、後ろっ!」

 それから、即座にマスケット銃を取り出し構えるが、マミの出る幕ではないようだった。
 何の警戒も示さないなのはを喰らおうと、魔女は大口を開けて迫る。だけれども、魔女
の牙がなのはに触れるよりもずっと早く、魔女の頭が爆ぜた。それから、胴、尻尾と、爆
発は次々と連鎖して、赤黒い爆煙を発生させた。先程のなのはの砲撃による魔力爆発とは
明らかに異なった、質量を持った兵器による爆発のように見えた。
 魔女は堪らず姿勢を崩し、ぐったりと横たわる。目の前の事実を認識し、なのはの無事
にマミが胸を撫で下ろした時には既に、もう一人の魔法少女がそこにいた。
 なのはの白とは対になる、黒の衣装を身に纏い。艶やかな黒髪を優雅に靡かせて佇む彼
女の名は、暁美ほむら。先程確かに、この手で拘束し動きを封じた筈の女だった。
 なのはは笑顔。ほむらは無表情。表情は全く違っているけれど、背中合わせに並んだ二
人は、同じ目的の為に手を組んだ仲間のように思われた。

「どういう事!? どうして二人が……まさか、高町さんまで!?」
「にゃはは……これには深い訳があって……えーっと、後できちんと説明しますから」
「その必要はないわ。もうこれ以上、巴マミに出る幕はないから」
「もう、ほむらちゃん……そういう言い方は良くないよ?」


185 :代理:2011/07/04(月) 18:23:50.10 ID:Rx69+jUr
 例え魔法少女の姿をしていても、高町なのはは高町なのはのままであった。
 いつも通りの優しいなのはのままである事が分かって、マミは少しだけ安堵する。だけ
れど、状況がさっぱりわからない事に変わりはないし、マミの教え子であったなのはがい
つの間にか魔法少女になっていて、しかも敵である筈の暁美ほむらと共に現れたとなれば、
これはどうあっても納得の行く説明が必要だ。
 ちらと後ろを見れば、物陰に隠れていたさやかとまどかも、どう反応していいのか分か
らないといった様子で、ただ見ているだけしか出来ないようだった。

「あなたはそこで見ていなさい。あの魔女は、私が狩るわ」
「私達が、の間違いでしょ、ほむらちゃん?」

 ほむらは一瞬だけ、不服そうな表情でなのはを見遣るが、しかしそれ以上は何も言わず
に、その姿を掻き消した。何処かへ飛んだとか、移動したとか、そういう事では無く、本
当の意味で消えたのだ。不可解な現象に眉を顰めるマミを後目に、なのははにゃははと苦
笑いをした。
 それから、なのはのブーツから光の翼が現出して、なのはも飛び上がった。
 まるで大空を飛び回る鳥のように、自由自在に宙を飛び回るなのはを見ていると、魔女
が生み出したこの広大な空間でさえも、小さく狭い箱庭のように思われた。
 空を自由に駆け回るなのはを捕らえようと、魔女はその長い身体を屈伸させてなのはに
襲い掛かる。だけれども、どんなに魔女が空を飛び回っても、なのはの速度には敵わない。
捕捉する事など出来はしないし、追い付く事さえも出来てはいない。
 それでもなのはを追い掛けていると、魔女の身体が突然爆発した。もんどりうって苦し
む魔女の脇のテーブルに、涼しい顔をしたほむらが着地した。
 今回も、ほむらが何処から現れたのを見極める事は出来なかった。突然現れて、突然消
えてゆくのだ。あれがほむらの能力で、ほむらが敵に付くというのなら、あの瞬間移動の
トリックを見極めない事にはマミに勝ち目はない。
 今度こそほむらの動きを見極めようとするが、そんなマミの目を奪ったのは、桜色の閃
光だった。先程の閃光よりも小さいが、しかしまるで意志を持ったかのように空を飛び回
る光は、今度はほむらに襲い掛かろうとした魔女の眼前を横切って、翻弄する。
 そうしていると、いつの間にか消えていたほむらが、また別のテーブルの上に現れて、
同時に魔女の身体が派手に爆ぜる。だけれども、魔女はしぶとい。先程ピンクの人形が、
口から魔女を吐き出したのと同じ要領で、黒い魔女は再び口から自分を吐き出した。再生
された魔女は、先程までに受けたダメージなどは忘れたように元気そうに飛ぶ。
 だけれど、結果は同じだ。今度は、魔女が数メートル飛んだところで、爆発した。
 顔が、胴が、尻尾が爆発して、魔女は再び口から新たな身体を吐き出す。何度なのはの
砲撃を受けても、何度ほむらの爆発―恐らくほむらの攻撃だと思う―を受けても、魔女は
幾らでも再生する。これではキリがないと思った、その時であった。
 なのはが放った砲撃が、魔女を飲み込み、焼き払った。同時に、ほむらが空間の中心の
テーブル席に現れて――そこに座っていた小さな人形を、真上から踏み潰した。
 ぷぎゃ、と音が聞こえて、魔女の再生は止まった。

186 :代理終了です:2011/07/04(月) 18:25:24.65 ID:Rx69+jUr
 気付いた時には全てが終わって居た。マミの耳に入って来るのは、爆発音でもなければ、
破壊音ですらない。遠くから聞こえる自動車の走行音と、何処かで鳴く鴉の声だけだ。
 お菓子だらけの異質な空間なんて何処にもなくて、マミの目の前にあるのは大きすぎる
病院と、等間隔で並べられた色取り取りの自転車だけだった。
 高町なのはも暁美ほむらも、既に見滝原中学の制服姿に戻って居て、つい数十秒前に遡
れば、ここで魔女と魔法少女の戦いが繰り広げられていたなんて、信じられないと思える
程だった。
 魔女に勝ったのだという実感は、ない。
 事実として、マミは魔女に負けたのだ。命こそ助かったものの、これはなのは達がたま
たま駆け付けてくれたから、今こうしてここに立って居られるというだけの話だ。
 自分で倒すつもりで挑んだ魔女だって、いつの間にか彼女らに倒されて居たのだから、
この戦いでマミが成し遂げた事など、実際には何一つない。
 あまりにもあっけなさすぎる結末だと思う。命が助かったのは喜ばしい事であるが、そ
れを素直に喜べる程マミは能天気ではない。だけれども、なのはとほむらに対して負の感
情を抱くのも何か違う気がして、マミは気まずそうに俯いた。
 後ろを振り向けば、さやかとまどかも、怒っていいのか喜んでいいのかわからない、と
いうような複雑な表情をしていた。多分、今の自分も後ろの二人と同じような表情をして
いるのだと思う。
 だけれど、どんなに気分が良くなくても、何かを言わなければ始まらない。今はまず、
なのはとほむらの二人から話を聞く事が先決なのだと思う。マミは顔を上げて、真っ直ぐ
になのはを見据えた。

「……どういう事なのか説明して貰えるかしら、高町さん」

 なのはは嫌な顔一つせずに頷くが、ほむらはマミ達にそれ以上の興味などない様子で、
落ちていたグリーフシードを拾い上げた。それから、ちらとマミ達を見渡したほむらは、
何も言わずに立ち去って行った。
 なのははほむらを呼び止めようとしたようだったが、結局、何も言わずにその口を閉ざ
した。だけれども、そんななのはの表情は、どうにも釈然としないマミとは違っていて、
とても満足そうだった。
 なのははマミの無事を素直に喜んでくれた。その言葉にも、その笑顔にも嘘はないのだ
と思う。それは分かっているのに、分かっているからこそ、そんななのはの笑顔を見てい
ると、自分一人だけが惨めな気持ちになっている気がして、マミは誰にも気付かれないよ
うに緩く歯噛みをした。


今回はここで終了です。
最近の悩みはwikiで「* * *」がきちんと表示されない事くらいでしょうか。
……それから、wikiのコメントログとやらの実相についても少し悩んでいたりします。

海鳴と見滝原の設定を無理くり合わせてみたり、なのはが変身したり、今回は割と急展開です。
動きがあるSSというのはどうにも難しいもので、今回もまたいい勉強になったかと思います。
全体的に稚拙で見苦しい文章かとは思いますが、今後もよろしくお願いします。
それでは、また次回お会いしましょう。

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 20:10:37.07 ID:jMsrMpHZ
投下乙です
マミさん……あの衝撃の結末から回避出来ましたか
本編とは違い、生存ルートに迎えた彼女の今後が楽しみですね!

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 21:03:36.19 ID:GDFcEhaV
まどマギのSSってマミさんの生存率結構高いよね
それだけ愛されてるんだろうけど

ところで今回QB出なかったよな…
なんか怖い
なのはを見てどういう反応するんだ?

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/04(月) 22:25:11.72 ID:U1ee20wD
織莉子が暗躍している様子がいまだ見れないところからすると
何らかの方法でクリームヒルトは如何にか出来る見込みがあるという事か

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/05(火) 22:38:50.94 ID:FAVmHrnC
投下乙
ただ、ほむらは優しさを知らずに来た訳じゃなく、まどかの優しさを知りながらもそれを突き放して来た訳だから、優しさを知らないってのは適切じゃないよ。
けど携帯使い慣れてないほむらは可愛かったw
そしてマミさんの生存ルートは更なる死亡フラグとしか思えないのは俺だけなんだろうか

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/06(水) 00:49:04.36 ID:vXN9hSuY
優しさを知らない、ではなく返し方を知らないってことじゃね
だとしてもまどかに報いるために延々ループしてまでいるのだから
過去ループの仲良しっぷりがただ受け取るだけだったとかに陳腐化するし
”本当の”優しさの返し方もわからないとかどんだけ下に見てるんだって話だが

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/06(水) 05:21:36.15 ID:xjD62sfz
叩くだけなら誰にでも出来る

193 :なのマギ ◆bv/kHkVDA2 :2011/07/06(水) 10:38:08.78 ID:sXh66pA1
感想とご指摘ありがとうございます。皆様の感想が執筆意欲へと変わります。
はてさて、既に収録された分になりますが、先程指摘された点を修正してきました。

えー、正直なところですね、件の一文を書いた時は、あまり深く考えずに書いてしまって
いた&その所為もあってか、過去にループを繰り返して起こった出来事や、ほむらが蓄積
した思いといったものを無意識の内に蔑ろにしていたようで。
その結果、初稿ではああいった心情描写になってしまったのですが、
なるほど確かにこれだとまずいなと思い、小さな変化ですが修正させて頂きました。
納得して頂けるかは分かりませんが、これで幾分かはマシになったかと思います。
お騒がせしてしまい、申し訳ありませんでした。

194 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 09:45:21.36 ID:YdwA5rGf
10時以降に投下いたします。

【注意事項】
・悪の組織が百合人気を利用した世界征服を企み、その一環として他ジャンル否定を行ったりし、
なのは達がそれに抗うので作品全体を通してみると百合否定っぽく見えます。
・↑に伴い現状のアニメ界及びヲタを風刺する要素があります
・みんなふざけている様に見えますが、やってる当人達は至極真剣です。
・ディエンドの無駄遣い
・自分の好きなキャラがディエンドに勝手に呼び出されて使役される事に我慢出来ない人には不向き。
・少々オリも出ます



登場作品
・魔法少女リリカルなのはシリーズ
・仮面ライダーディケイド&仮面ライダーBLACK&歴代仮面ライダーシリーズ
・プリキュアシリーズ
・恋姫無双
・ブラック★ロックシューター(ディエンド的意味で)
・ハルヒ(ディエンド的意味で)
・ウルトラセブン

195 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:01:37.53 ID:YdwA5rGf
 採石場の周囲のみならず数多の世界から照らされるミラクルライトの光、それは次元のオーロラを通って
一箇所に集結しつつあった。それは何となのはのレイジングハートに…である。

「え!? レイジングハートが…。」

 レイジングハートが眩く輝く様になのはは驚いていた。しかし、普通に考えたならば高熱を伴っても良い程の
凄まじい光を発しているにも関わらず、その光は温かくむしろ優しささえ感じられた。

「レイジングハートが皆の想いを集めているんだ。」
「え? ユーノ君…そんな事ってあり得るの? スターライトブレイカーみたいに魔力を集めるのとは違うんだよ?」

 なのはの左肩に乗っていたユーノがそう説明する。しかし、なのはにはそんな事が起こり得るのか分からなかった。
そもそもミッド式魔法は、魔法と名が付いてこそいるが決して奇跡の力では無く理論と術式に則った代物であるからだ。
だからこそ、ミラクルライトを通して集められた皆の想いが力となってレイジングハートに集中して行く様が信じられなかった。

「本当の事を言うと僕も良くは分からないさ。でも魔法も元を正せば高度な精神力の具現化と言える。
そのミラクルライトと言う物が、人の想いを増幅して光に変換する力を持ったツールとするならば…
こういう事も起こり得る…と言う事じゃないかな?」
「これもまた『この世界はこんなはずじゃない事ばかり』の一つの形と言うわけだね。」

 無数の人々の応援が直接的な力となるわけでは無い。しかし、その一人一人の想いを力に変える事が出来るのがミラクルライト。
そしてレイジングハートはスターライトブレイカーの前準備として魔力を集める様に、ミラクルライトから放たれた光を
通して集まった皆の想いを受け取っていた。

 しかし、ミラクルライトを通して集まった皆の想いはもう一つの奇跡を起こしていた。なのはの身体が桃色に、ユーノの身体が
翠色に光り輝くと共にその姿が元の大人の姿へと変わって行く…いや戻ったのである。そう。双方ともに子供、フェレットの姿となって
いなければならない程にまで疲弊していた二人の体力と魔力をも本来のそれへと回復させる力さえ見せ付けていたのである。

「ユーノ君…その姿…。」
「なのはもだよ…。」

 元の大人の姿へと戻ったなのはとユーノは互いを見つめ合う。もう久しくこの姿にはなっていなかった様に感じ、感慨深い物があった。
これにはヴィヴィオも思わず喜んで駆け寄る程であった。

「小さいなのはママやとフェレットのユーノくんも可愛いけど、やっぱりなのはママもユーノくんもこっちの方が格好良くて好きだよー!」
「ヴィヴィオありがとう。」
「おっと、まだ敵はかなりの数が残ってるんだから喜ぶのはそこまでにしような。」

 ディケイドの言う通り、確かに採石場の周囲や他の数多の世界でミラクルライトが輝いているが、採石場にはまだまだ健在の
ユリシアやその他大勢の百合戦闘員、百合怪人、百合厨達の姿があったのである。

「確かに体力は回復したが、それでもアイツを倒すのは骨が折れそうだぞ。それにこの世界と他の世界が繋がったと言う事は
アイツ等も他の世界から戦力を呼び寄せる事が出来ると言う事にもなるからな。さてどうするか…。」
「それに関してですけど士さん…と皆さんにお願いがあるんです。」
「ん? どうした言ってみろ。」

 ここに来て提案を始めたなのは。これにはディケイドを初めとして他の皆も耳を傾け始めた。

「私はこれからレイジングハートを通してありったけの力を集めたスターライトブレイカーをあの子目掛けて撃ちたいと思います。」
「やっぱりあのユリシアという子を何とかするには、今この場に集まった皆の想いをミラクルライトが変換した力を
徹底的に集め、一点に集束させないと無理でしょうからね。」
「でもその為には大きな隙が出来てしまうんです。」
「だから集束が完了するまで皆さんで何とか足止めが出来ませんか?」

 なのはとユーノは真剣な表情で共にそう頼み、皆に頭を下げてさえいた。つまり、それだけ本気だったのである。
だが、それに対し皆は一斉に笑い始めた。

196 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:02:24.83 ID:YdwA5rGf
「アハハハハッ! なんだ頼みってそういう事か!」
「何ですか皆笑って! こっちは真面目に言ってるんですよ!」
「すまんすまん。その位の頼みなら別に真面目に頼まれなくても問題無いって事だ。」
「よし分かった! パワーを集めるのなら徹底的に集めるんだぞ。それまで俺達が何とか敵を足止めしてやる。」
「よーし! 何か良く分からないけどあの二人が何とかするまで傷一つ付けさせないぞー! 決定ー!」

 直後、ディケイドを中心にしてなのはとユーノの二人を除いた皆が一斉にユリシアの方へ振り向いた。
ユリシアは未だ健在。されどディケイド達は不敵な笑みを浮かべていた。無表情がデフォな人はそうでないけど。

「作戦会議は終わったのかな?」
「ああ。今度こそお前達を全滅させてやる。」
「そうなの頑張ってね。」

 ユリシアはあざ笑うかの様にそう言うと共に指をパチンと鳴らした。するとどうだろうか、ユリシアの周囲に
世界と世界を繋ぐ次元のオーロラが出現し、そこから次々に百合戦闘員や百合怪人達が現れていたのである。

「これでも全滅させるなんて事が出来ると思うの?」
「まだあんだけの数が…笑っちゃうよね。」

 体力が回復したとは言え、ユリシアがその気になればまだまだ次々に増援を繰り出す事が出来る事を考えると
ついつい戦闘意欲が萎えてしまう所であったが、皆の応援と先程なのはとユーノとした約束がある。
そう簡単に引く事は出来なかった。

「さあ行けー! 皆殺しにしちゃえー!」
「ユリー! ユリー!」

 ユリシアが指差すと共に百合戦闘員や百合怪人達がさながら大津波の様に一斉に突撃を開始した。
その向かう先はエネルギーチャージ中のなのはとユーノ。無数のミラクルライトから放たれたパワーを
集めている事はお見通しであった様である。

「やはり連中もこっちの魂胆はお見通しか!」
「そうはさせないよ! だってちゃんと足止めするってあの二人と約束したんだもんね!」
「そういう事だな。行くぞ!」

 ディケイドを先頭に皆もまた一斉に百合戦闘員や百合怪人の軍団へ向けて駆けて行き、
その様をなのはは心配そうな表情で見つめていた。

「皆…頑張って…。」
「さあ、皆が時間を稼いでいる間にこっちも皆の力を集めるだけ集めるんだ。反動の相殺に関しては僕に任せて。」

 ユーノはチェーンバインドであえて自身となのはを縛ると共に地面へ打ち込み固定する。こうする事によって
反動によって自身が吹き飛んでしまう事を防ぐのだ。何も敵を縛り上げる事だけがバインドの能じゃない。
そしてなのははレイジングハートを高々と天へ向けて掲げ、そこを中心にしてミラクルライトがパワーに変換し
集結する無数の世界の人々の想いを受け止め集めていた。

197 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:03:07.79 ID:YdwA5rGf
「すっ…凄い力…なのにまだ集まって来る…これだけの力…上手く制御出来るかな…潰れてしまいそう…。」

 確かにミラクルライトの光を通じて集まって来る力は凄まじい。だが、それ故に自分自身もレイジングハートも
それを制御出来るのか…となのはは心配していたのだったが、そんな時にユーノもまたレイジングハートを掴んでいた。

「弱気になってはいけない。僕も出来る限りのフォローをするから。」
「ユーノ君…。」

 なのははつい弱気になった自分が恥ずかしいと思った。正面を見れば今もディケイド達が百合戦闘員や百合怪人を
足止めする為に頑張っているし、自身の直ぐ傍にもユーノが自分の出来る限りのフォローをしてくれる。
自分は一人では無い。そう考えるとどれだけ凄いパワーでも制御してしまえる気がした。


 なのはとユーノ、そしてレイジングハートのエネルギーチャージが完了するまでの間、ディケイド達は
なおも次々現れる百合戦闘員や百合怪人軍団を必死に足止めしていた。

 ストロンガーは電撃を周囲に放射させる事で敵を感電させて行き、RXはリボルケインでばっさばっさと
敵を刺し殺し、電王はデンガッシャー・ソードモードで斬り倒し、キバは荒々しいファイトで次々に敵を叩き倒して行く。

 キュアブラックはマシンガンのごときパンチの連撃で敵を次々殴り飛ばし、キュアホワイトは敵を
手当たり次第に掴んでは投げ飛ばして行く。

 キュアパッションが連続アカルンワープで敵陣を撹乱した隙にキュアドリームのプリキュアシューティングスター、
キュアピーチのラブサンシャインフレッシュが射線上の敵を蹴散らして行く。

 キュアベリーは華麗にダンシングする様に戦場を滑り抜け、次々に敵を蹴り飛ばし、
キュアパインは攻撃…と言うよりも癒しの力で敵の戦意を低下させたりなんかして行く。

 キュアブロッサムとキュアマリンもまたフローラルパワーフォルテッシモで射線上の敵を薙ぎ飛ばしていく。

 愛紗が青龍偃月刀で次々敵を切り刻み、貂蝉が超筋力から繰り出される怪力で次々吹き飛ばし、
さらには朱里ちゃんもまた直接戦う事は出来なくとも、愛紗と貂蝉をかわしてなのはとユーノへ
突撃しようとしていた敵を孔明の罠ならぬ孔明の縄で次々足を引っ掛け転ばせて行った。

 長門有希は情報操作による物理法則書き換えによって様々な怪現象を引き起こし、それによって浮き足立った敵を
ブラックロックシューターが★Rock Cannon砲口から矢継ぎ早に放たれる無数の岩石で次々に撃ち砕いて行く。

 クロノ・ジョーカーが自身の得意とするバインドで敵を次々縛り上げ行動不能にさせた隙にライダーパンチで、
そしてアギト・アギトもまた自身の得意とする火炎系魔法を上乗せしたライダーパンチで敵を次々殴り飛ばして行く。

 ディエンドは右手に握るディエンドライバーから通常弾丸からディメンションエネルギー弾まで様々な
弾丸を発射、正確な射撃で敵を次々に撃ち倒し、リイン・G3は自身の凍結系魔法を上乗せした
G3専用の各種火器でとにかくやたら滅多に撃ちまくり下手な鉄砲数撃てば当たる理論で倒して行く。

198 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:04:14.34 ID:YdwA5rGf
 ヴィヴィオとアインハルトはそれぞれ変身魔法で大人の姿へ変身し、ストライクアーツの技を駆使して
百合戦闘員や百合厨達に果敢に挑んでいく。

 BLACKはキングストーンエネルギーを、クウガもまた霊石アマダムのエネルギーを解放させ
そこから放たれるライダーパンチやライダーキックとそれに伴う爆発で敵を吹き飛ばしていく。

「敵が数で来るならこっちも数だ。」
『アタックライド! イリュージョーン!』

 ディケイドはライドブッカーから取り出したイリュージョンのカードをディケイドライバーに刺し込み
アタックライド・イリュージョンを発動させた。これによってディケイドを中心に彼の分身が無数に出現、
突撃して来る百合戦闘員や百合怪人、百合厨達目掛けて一斉にライドブッカー・ガンモードを向けていた。

『アタックライド! ブラスト!』

 ディケイド&無数のディケイド分身軍団のライドブッカー・ガンモードから一斉にディケイドブラストが放たれた。
それぞれが残像が見える程にまでの破壊光弾高速連射で敵を次々に撃ち抜いて行った。

「へ〜結構頑張るじゃない。でも、私の手駒は無尽蔵だよ。それ〜どんどん行け〜!」

 ユリシアはなおも笑みを崩さず次元のオーロラを操作し、それに伴い次々に新たな百合怪人・百合戦闘員の
大軍団が次元のオーロラを通って出現して行くが………

「そうはさせるかぁぁぁぁぁ!!」
「こいつ等の相手は俺達に任せろぉぉぉぉ!!」
「え!?」

 突如響き渡った謎の声と共に新たな次元のオーロラが出現。そこからまた別の大軍団が雪崩れ込んで来たでは無いか。
彼等こそ数多の別世界でそれぞれ百合ショッカーと戦っていた勇士達。この採石場と数多の世界が次元のオーロラを
通して繋がった事によってユリシアが数多の世界から百合戦闘員・百合怪人を増援として呼び寄せる事が出来ると言う事は
すなわち、彼ら百合ショッカーと戦う勇士達が採石場に集結出来る事も意味していた。

「お前達の好き勝手にはさせん!!」
「貴方達の相手は俺達だ!」

 無数の百合戦闘員・百合怪人の軍団の進軍を阻むべく、数多の世界から集結した勇士達が向かって行く。
その中には龍騎、555、ブレイド、響鬼、カブト、W、オーズ等の他の平成仮面ライダーの皆様の姿もあった。
彼らが無数の百合戦闘員・百合怪人軍団に挑み足止めしていたのだった。

「もう! みんな何をしてるの!? こうなったら私が直接出向いてチャージを邪魔するしか無いじゃない!」

 なのはとユーノへ近付く事も出来ずに次々倒されて行く百合戦闘員や百合怪人達を不甲斐なく思った
ユリシアは思わずその場で地団太を踏むと共に未だチャージ中のなのはとユーノへ向けて駆け出した。

199 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:05:30.89 ID:YdwA5rGf
「ちょっと待った! 今度こそ俺の攻撃を受けてもらうぞ!」
「私もなのはママとユーノくん守るもん!」
「私も!」

 クウガ&ヴィヴィオ&アインハルトの三人がユリシアの前に立ち塞がるが、ユリシアは笑っていた。

「君達三人が私に何が出来るって言うのかな?」
「出来るさ! 皆の笑顔が俺に力をくれた! 今ならやれる! やってみせてやるさぁぁぁぁ!!」

 クウガが全身に力を込めると共に光と闇が混じった様なエネルギーが全身から放たれ、その姿を
漆黒と金色の混じった姿へと変えて行く。それこそ究極を超えたクウガの最強形態ライジングアルティメット。
そしてその目は赤い。それはクウガ自身がライジングアルティメットの力を完全に制御出来ている事を意味していた。

「何だか良くわからないけど私も今は凄い力が漲って来る! 今度は負けないよ!」
「私も負けない!」

 皆の応援と想いをパワーに変換したミラクルライトが起こした奇跡か、破損し失われたはずの
聖王の鎧&覇王の鎧が復元し、ヴィヴィオとアインハルトにそれぞれ装着された。しかしその心は元のまま。
二人はヴィヴィオ&アインハルトのまま聖王、覇王の力を得たのだ。

「そんな姿に変わったって私は倒せないよ! 三人まとめてどっか行っちゃえぇぇ!」

 正面に突き出されたユリシアの掌から放たれた衝撃波が三人を襲う。しかし、その衝撃波を
ヴィヴィオ&アインハルトがそれぞれ着込んだ聖王&覇王の鎧が持つ超防御力が防いでいた。

「え!?」
「今度はこっちが行くぞぉ! はぁぁぁぁぁぁ!!」

 自信を持って放った衝撃波を防がれユリシアは一瞬たじろいだ。だが、その隙をクウガライジングアルティメットが
逃さず、100トンの威力を誇るとされるライジングアルティメットパンチがユリシアの左頬に打ち込まれ吹き飛ばしていた。

「んぐぁ!!」

 地面を何度もバウンドし擦りながら凄まじい勢いで吹き飛ばされて行くユリシア。

「調子に乗るんじゃないよぉ!!」

 どうにか踏み止まって叫んでいたユリシアだったが、その直後だった。なのはとユーノの二人がいる場所…
レイジングハートから猛烈な光が放たれている事に気付いていた。

「エネルギーチャージ完了!」
「皆下がるんだ!」
「分かった! 後は頼んだぞ!」

 その凄まじき輝き…それはもはや星は星でも『恒星の光』と呼ぶべきレベルですらあった。
それだけの輝きを放つレイジングハートの先端をなのはとユーノはゆっくりとユリシアへ向けて行き、
皆は一斉にその場から退避して行く。だがそれだけでは無かった。

200 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:06:40.08 ID:YdwA5rGf
「ついでに受け取れ! 俺達の…。」
「私達の力を!」

 皆は射線上から退避しつつ、同じくミラクルライトによって与えられた自身のエネルギーをレイジングハートへ
向けて照射して行く。そうする事によってレイジングハートから発せられる光はますます強くなる。
後はそれをユリシアへ向けて撃ち込むのみ。

 しかし…ディケイドただ一人だけは退避せずその場に残り続けていた…

「行くよ! これが私達の全力全開! スターライト!」
「ファイナル!」
「ブレイカァァァァァァァァァァ!!」

 ミラクルライトを通して集められた皆の想いを受けたスターライトブレイカー、いや『スターライトファイナルブレイカー』
と呼べるそれは従来のそれを遥かに凌ぐ凄まじい出力を誇っていた。ユーノがあらかじめチェーンバインドを
地面に打ち込んで固定していてもなお二人もまとめて吹き飛ばしてしまいそうな反動が発生する程にまで……

 ユリシアへ向けて突き進むスターライトファイナルブレイカー。だが、その射線上にはディケイドの姿があった。
しかし決して逃げ遅れたわけでは無い。彼には彼なりの考えがあったのだ。そして背後から桃色の光が迫る中
何事も無いかの様にライドブッカーから一枚のカードを取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。

『ファイナルアタックライド! ディディディディケイド!!』

 ディケイドとユリシアを一直線で結ぶ空間に十枚の光のカードが現れた。そこを潜りながならライダーキックを決める
ディケイド必殺のディメンションキック。しかし、今回だけは違った。何と背後から迫るスターライトファイナルブレイカーを
ディケイドが背中から受けたのだ。一見自殺行為かに見えたが…それは違っていた。

「とあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 何という事であろうか。スターライトファイナルブレイカーのエネルギーを受けディケイドは超加速した。
それは通常のディメンションキックの何倍…いや何十倍とも言えるスピード・勢いとなり、さらにはディケイドの
全身を桃色のエネルギーが纏って行く。そう、ディケイド自身が流星と化したのだ。

 数多の世界から集められた無数の人々の想い。それら一つ一つがディケイドの足先へ凝縮されて行く。

「そんなものぉぉぉぉぉぉ!!」

 ユリシアもまた両手を突き出し、己のエネルギーの全てを込めて弾き返そうとするが…
ディケイドはその膨大なエネルギーをも貫き突き進んで行く。

「あぁ…。」

 それは一瞬の出来事だった。スターライトファイナルブレイカーのエネルギーを受け流星と化した
ディケイドの足がユリシアの腹部に食い込み突き刺さると共に、ユリシアの全身を様々な人の想いが駆け巡って行く。
単純に○や×の二元論で決める事の出来ない多種多様な感情の数々。百合生命体として、百合以外の感情を否定するべく
作られたユリシアにはとても許容し耐え切れる物では無く、木っ端微塵かつ跡形も無く砕き消滅させていたのだった―――――――――

 今度の今度こそ百合生命体ユリシアの最期、そして百合ショッカーの最期である。
これを皆が確信した時、その場から…いや数多の世界から一斉に無数の人々による歓声が沸いた。


「うむ…。」

 遠い宇宙の彼方からこの戦いを見守っていたウルトラセブンもまた、なのは×ユーノ同人誌片手に
彼等の勝利を喜び軽く頷いていた。

201 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/07(木) 10:07:23.05 ID:YdwA5rGf
今回はここまで。次回に続きます。

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/08(金) 04:13:30.97 ID:CdFNmpc4
>>201
乙です。ついに決着ですか。
色んな所から雑多にキャラを持って来たのは
この最後の全戦力結集をやりたかったからなんですね。
まだ続く様ですがこの先どうしめるのでしょうか?

203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/08(金) 16:27:58.85 ID:YI//GQTG
うんこ

204 :Gulftown ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 20:55:41.17 ID:5QfjaQSI
どうもですー
今日は22時ごろからいきたいと思います

なんとかクロスらしくそれぞれの登場人物をだしたい(汗)

205 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:02:34.09 ID:5QfjaQSI
 静かなアンビエント系の環境音楽が流れ、一種独特の異世界のような雰囲気をつくっている。
 透明度の高いルージュでメイクアップしたなのはは、その夜もいつものように客の相手をしていた。

 海鳴市にも、中心街をやや外れた地下の一角に、近寄りがたい匂いを感じさせる風俗街がある。

 近隣の横浜や遠見から流れてきたような、島宇宙のような空間だ。

 その特異な性格ゆえに求人の審査条件は厳しい。だが、その分給料もいい。
 なのはの場合、メイドバーが6時から9時まで、その後でクラブが12時まで(走らない日は2時まで)だ。
 両方あわせて一日あたり2万円以上はいく。

 都内のこぎれいなメジャーな店と違い、未だに旧世紀のアンダーグラウンドな雰囲気が海鳴には残っている。

 毎晩のように首都高の走りをしていれば、ガソリンはもちろん、タイヤやオイルをはじめとした消耗品の
交換頻度も高くなる。Zはタイヤサイズが225幅の16インチのため、ハイグリップラジアルの
4本セットで10万円程度だ。ガソリンも、一晩で70リッター使うとするとそれだけで1万円近くになる。
オイルもまたしかり。2週間に一度の交換で、2缶使う。それにオイルフィルターも換える必要がある。
 オイルフィルターやエアクリーナーなどの小物パーツはユーノのつてである程度安く入手できるにしろ、
スポーツカーというのは普通の乗用車に比べて途轍もなくランニングコストがかかるものなのだ。

 そして、乗りっぱなしでろくに整備をされていない車両も、実際はかなり多い。いや、ほとんどがそうだ。
 毎日乗る車をきちんとメンテナンスしてコンディションに気を使っている人間などほとんどいない。
 どこかが故障してからあわててショップに駆け込んでも、その時点ですでに大ダメージを受け、
再起不能になっていることも多い──。

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/09(土) 22:08:07.96 ID:xLhK4Y7O


207 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:11:08.04 ID:5QfjaQSI
 ある夜、オーナーの昔の知り合いが来るというので、クラブの店長はその応対になのはを指名した。
 君なら話も合うだろうから、と言われ、最初は何のことかと思っていたが、
やがて現れたその客の男の顔を見てすぐに理解できた。同じ匂いを持つ者どうしなんだと。

「アーリータイムズでいいですか?」

 二人にグラスを差し出す。
 清純なドレスに身を包んでいても、向こうは、たぶんこのフロアに入ってきた瞬間に空気を感じ取ったのだろう、
なのはを見て、緊張とも違う高揚した表情を浮かべている。

「たまたま、こないだケンちゃんから君のコトを聞いてネ」

 坊主頭で大柄な体格をしたオーナーが言う。
 ケンちゃん、というのはここの店長のあだ名だ。嬢でも長く勤めている者からはあだ名で呼ばれることもある。

「ラジオでやってた頃から聴いてました、城島洸一さんですよね」

「懐かしいね、あれ確か8年位前だよね」

「車関連の番組って当時ほとんどなくて、城島さんのぐらいだったと」

 なのはが車に興味を持ち始めたのは、スポーツ系車種をよく扱っていたそのラジオ番組を偶然聞いてからだった。
 当時、F1やGT選手権のテレビ中継もほとんど枠がとられなくなり、モータースポーツ番組自体が消滅しかかっていた。
 もはやかつてのようなスポーツカーなど売れない、コストばかりかかって、商品として成り立たない。
 21世紀を迎え、自動車メーカー各社は売れ筋のミニバンやコンパクトカーに注力し始めた。

「実はここへ来る途中で見てきたんだ──うすうす予感はしてたけど、本当だったんだね」

「あ、見たんですか」

「今更かもしれないが圧倒されたヨ。本当にいたんだ、と──悪魔のZが」

208 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:18:30.76 ID:5QfjaQSI
 閉店時間にはまだいくらか早かったが、なのはは城島とオーナーと一緒に外に出た。
 先輩ホステスの一人がなのちゃんの初アフターだね、などと冷やかしていた。

「けっこー意外でした?」

「まあー、オレの頃でも全く居なかったてワケじゃあないヨ、女のコのドライバーは」

 路地裏に路駐されたZは、まるでその周辺だけがタイムスリップしたかのように、不思議な時空感覚を
醸し出している。S30が全盛だった70年代の空気と、国産チューンドが隆盛を誇った90年代。

「そーゆう雰囲気みたいなのって、やっぱりあるんですね」

「ああ、これはオレと松木サンが昔やってたショップ──“ゼロ”の頃から口癖みたいなモンだった──
──本当に速い車にはオーラがある、と」

 気持ちのいい熱い冷や汗を垂らしながら、城島が言う。
 今夜は、アシとして使っているベンツSL600で来ていた。これはベンツのスポーツクーペ現行の
2シーターカブリオレ、V型8気筒エンジンを搭載するモデルだ。パワーは排気量5.5リッターに
ツインターボを組み合わせて517馬力、トルクは実に84.6kgmを誇る。
 なのはのZも2シーターでお互いに2人ずつしか乗れないため、それぞれの車で移動する。

 ドレスを着て車を運転するのは初めてだったが、Zはこのようなシチュエーションにもよく似合う。

「“氷の微笑”みたいだな」

「オイオイ城島あ、お前のキャラじゃねーだろォソレ」

 オーナー松木が笑いながら肩を叩く。なのはもやや苦笑しつつ、それでも優雅さを崩さない。

「いや昔そーゆう映画があったのヨ、シャロン・ストーンが主演で、ロータスエスプリをバリバリ乗り回してたもんさ」

「エスプリってゆうとあの背の低い尖った感じのヤツですよね、あーゆう系のデザインはスキです、
今じゃああんな低いのはムリなんですかね、安全基準とかあって──」

 車体の大きいベンツと並ぶと、S30はとても小さく見える。
 だが、その車体に不釣り合いなほどの幅広タイヤを履き、トレッドを広げてツライチにセットし、
直進安定性を出すためにネガティブキャンバーを強くかけたアライメントセッティングにしているZは、
獰猛かつ均整のとれた肉食獣のようなたたずまいを見せている。

209 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:25:02.19 ID:5QfjaQSI
 普段、そのコワモテから、嬢たちからもあまり話しかけられないオーナーだが、今はその理由がわかった。

「オーナーはもともと風俗の人じゃあなかったんですよね」

「最初はキャバの雇われ店長だったヨ──そっからいろいろ任され始めてネ、なんだかんだで──
でも今はそれもそうわるくはなかったと思ってるよ、コイツも今は落ち着いたし──」

「──いるべきところにいる、それはそれだけでとても幸せなコトなんだ、って」

「そうですね」

 大通りの端から、道行く車と人ごみを眺める。
 通勤する嬢たちも、危険な道は避けるにしろ、わざわざ見せびらかすように通りを歩いてきたりはしない。
 日陰者だということを、心のどこかで認識している。

 そんな空気を感じ取ったから、どこまでも親しくなりきれない部分があったのだ。

「実は今日はKレコードさんに呼ばれて行ったんだよ、そしたらアシスタントの交代の件で話が出てね」

「あ、それで」

「わりと狭い業界だからね、フェイトちゃん経由でオレのところに噂が聞こえてきたワケさ、
とんでもなく速いS30Z──“悪魔のZ”が、まだ走り続けているってね」

「確かフェイトちゃんは今……」

「ああ、事務所とも話はさせてもらって、復帰第一号の仕事としてオレの番組に来るってことで
進めてもらってるよ、向こうさんにとってもいいキャリアになると思うしね」

「ま、だからこそオレも今のまんまは惜しいと思ってンだけどな、出演、構成、企画、ついでに渉外まで、
ナンでもやれる城島ほどのマルチタレントは今どきいねーだろって」

210 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:36:13.43 ID:5QfjaQSI
「彼女ほどのフェラーリ乗りも今世界中さがしてもいないと思いますよ」

 城島の目はいきいきとしている。もうだいぶ年をとり、落ち着いた自動車評論家としての地位を
固めてきているというのが世間の評価だが、まだその闘志は衰えてはいない。
 オーナー松木も、普段は見せない笑顔を見せている。

「だよな、1000馬力だっけ?ただでさえジャジャ馬なフェラーリをあれだけのパワーアップだろ、
サーキットでも持て余すだろうにそれを公道じゃあ、とてもマトモに踏めたもんじゃないだろーて」

「そのベンツも確か600馬力くらいあるんじゃないんでしたっけ?」

「いやーこれはただのSLだから、トップグレードなら確かにそんくらいはいくけどナ、でもどっちみち
フェラーリとはだいぶ性格が違うよ、こっちは」

 素敵な玩具を前に、はしゃぐのを抑えきれない男の子のように。
 いくつになっても変わらない気持ち、というのはある。普段は抑えていても、それを忘れないことが
心を錆びつかせないために必要だ。逆に、いくら年齢だけ若くても、それを忘れてしまったら
あっという間に心も体もすれてしまう。

 自分の未来に対する漠然とした不安を振り切るために、自分より先を歩いてきた大人たちの姿を見たい──

 またそれを見ることが必要なんだと、なのはは思いはじめていた。

「ソッコー口説き入れたいとか思ってます?」

「いーぜぇ城島、オレんとこの娘ナンだから」

「いえいえ、今日はそーゆうのじゃなくて」

 ネオンの明かりを反射する白いZは、一見宝石のように、しかしどこまでも深い魔力を放っている。

「勇気をもらった気ィするんですよ──自分の生きてきた人生が間違ってなかったっていう、
世代交代しても、あとに続く人間が一人でもいてくれるっていうだけで──」

211 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:42:26.46 ID:5QfjaQSI
 なのはは思い返しながら、確か昔のラジオ番組をやっていた頃で30過ぎだった、と記憶を確かめた。

「やっぱりいくつになっても必要ですか?勇気、ってのは──」

「単純にトシだけ食えばいいてモンじゃあナイのよ、要はその時間の中でどれだけの経験を自分のものに
できるかってコトだろ?経験ってのは要するに物事の判断基準なワケだ、それをどれだけ自分の中に
たくわえられるか──てコトだ」

「今までの基準で判断できないことにぶつかったとき──」

「そう、そーゆうときに大事なのは勇気なワケよ、立ち向かうにしても、引くにしても」

 ベンツのフェンダーをそっとなでる。車に詳しくない人間には、一見ただの高級車にしか見えないだろう。
 だがこの車も、ひとたびフルスロットルをくれれば瞬時にレーシングスピードに突入できる。
 ダイムラー・ベンツの擁するトップスポーツであり、ダイムラーもまたドイツツーリングカーレースで
活躍しているれっきとした自動車メーカーだ。成金向け高級セダンばかりをつくっているわけではない。

「単純に立ち向かえば勇気がある、引いたら勇気がない──そーゆうワケじゃあナイですよね」

「もちろんサ──引くってのはものすごく勇気がいるコトなんだ、自分の欲望、恐怖、あと体面とか──
そーゆうモノをきちんと飲み込まないと、引くってことはできないんだ、それは単にアクセルを踏まないとか
スピードを落とすとかじゃないよ」

「ですね──私も、この車に乗るようになってわかったんです、勇気を出して踏んでいかないと、
また抜くとこではきっちり抜かないとダメなんですね、腰が引けてる状態で走らせちゃあ、
この車はそれを見逃してくれないんですね──」

 Zに乗り始めたばかりの頃、ブラックバードとのバトルでの2度のクラッシュ。
 自分と向こうと何が違ったのか、それは経験の差だった。がむしゃらに踏み込んでいくだけではだめだし、
また中途半端にアクセルを抜くような、ビビった走らせ方をすると、このZはたちまち機嫌を損ねてしまう。

212 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:51:18.67 ID:5QfjaQSI
 チューニングカーのセッティングとしては、いわゆるコントロールの幅が狭い車──にあたることだが、
それがこのように言葉に表すと、とても身につまされるとなのはは思った。
 無謀な若者──偏見が含まれているにしても、本当に、無謀な乗り方ではこのZは速く走らせられない。
 悪魔の車、上等だと言ってやたらにアクセルを踏んでいっても、それではこの車はこたえてくれない。

 確かに以前の自分はそういう乗り方、走らせ方をしていたと思う。ひたすら息を止めて、
心臓がすくみそうになるのをこらえて、1秒でも長くアクセルを開けることが速く走る方法だと思っていた。
 それだけでは、車を速く走らせることはできない。
 鉄砲玉のように飛ばすだけでは、壁にぶつかるだけだ。

 ブレーキを踏むことは恐怖に負けることではない。恐怖に負けたと思いたくない自分の心を、
冷静に見つめて処理すること、それが本当の勇気だ。

「確かにオレは評論家としていろんな車を乗ってきたし、いろんな車の走らせ方もわかる。
どういう操作をすればどういうふうに車が動くかというのも分かっている、それをどんなときでも
きちんと自分の引き出しから取り出せるコトが大事なんだ、頭を真っ白にして踏み込むだけじゃあ
命がいくつあっても足りない、そーゆうのは勇気とは呼ばないんだ──」

「私のZを見て──、何か、得られることはありましたか?私と話しても──」

「そりゃああるさ、たくさん──できれば、話し続けていきたいよな」

「ありがとうございます。私も、城島さんとこうして会えてよかったと思ってます。
首都高に来れば、きっとまた会えます」

「なあ、城島──オレも、なのはちゃんがうちの店に来てくれてよかったと思ってるんだよ。
やっぱ、好きなコトから目をそらして、言い訳付けてガマンしてちゃあココロによくないってな。
あのFC、まだあるんだろ。なんだかんだで結局まだ見せてもらってなかったよナ──いつか持ってきてくれよな。
きっちり、仕上げてあるんだろ」

「はい──オーナー」

「城島先生──『クラブ・アグスタ』は、いつでもご来店をお待ちしてます」

213 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 22:59:58.71 ID:5QfjaQSI
 東京都文京区にオフィスを構えるKレコードのエントランスに、赤いR32GT-Rと黒いポルシェ911ターボが
停まっていた。深夜の目白通り、仕事帰りの人通りもひと段落して道はまばらになっている。

「おやおや、来てたのかいブラックバード」

 スカリエッティの姿を認め、リインはかるく会釈する。スカリエッティは今日はアルフの車に同乗し、
リインは病院の勤務を終えたその足でここに来ていた。

「無愛想なカオしてても気になるのかね、あのお嬢さんが」

「それはそっちも同じじゃないんですか」

 なめらかなV8ツインターボの音が近づいてくる。
 アルフはこの音をいちど聞いたことがある。スカリエッティも、この音の持ち主がただならぬ雰囲気を持った
ドライバーであることにすぐ気付いた。

「ども……おひさしぶりですスカさん」

「城島か……何年振りかね」

 スカリエッティの雰囲気に多少押され気味ではある。後ろからジト目で腕を組み、アルフが割り込む。

「オッサン、んなのァ今はいーから──城島サン、今日は確か海鳴に行くって言ってましたよね、
どうでしたか……?」

「ああ、ちゃんと会ってきたよ。Zの彼女に──フェイトちゃんのこともいい感触で受け止めてくれてたよ」

 Z。
 悪魔のZ──それは、ここにいる皆だれもが、心を構成する要素の一つとしてとらえている偶像(アイドル)だ。

 城島洸一は、ゼロ時代にスカリエッティとは旧知であった。
 ゼロのオーナー松木が、もともとはスカリエッティにチューニングを依頼していた客であったからだ。

 そこでポルシェターボをしばらくやり、その後、松木自身がチューニングショップを設立するにあたって
城島が専属ドライバーとして迎えられた。

 とくに信頼性に重点を置いたチューニングスタイルで、『速くて壊れない』と高評価を得ていたショップだった。
 それはチューナーたちの腕と、車をきちんと乗りこなせる城島の腕の両方があってこそだった。

214 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:08:46.38 ID:5QfjaQSI
「スカさんがあのコのフェラーリをチューンしたと聞いたときは正直おどろきましたヨ……
もう日本でのチューニングはやってないと思ってましたから」

「ま、いろいろとあってナ」

「そんなにすごいかったんですか、このオッサン」

 アルフもさすがに聞き捨てならなかったようだ。

「ウチもずいぶん勉強させてもらいましたよ、チューナーからチューナーへ、人づてに渡っていったノウハウは、
やっぱりスカさんあってこそでした、やっぱりドコの世界でも日本人は2番手──そう痛感させられました」

 スカリエッティが行っていたチューンは、けして目新しいものではなかった。
 セオリー通りにきっちりエンジンを組み直し、ブロックとヘッドを加工し、ガソリンと排気ガスの抜けをよく、
メカニカルロスを少なくする。言葉にすれば当たり前のことだが、それをどのような手段で実現するか
ということが、日本ではどうしても遅れがちだった。
 設計の古い、開発技術もまだなかったころのエンジンで、いじるにしても
元々のつくりがよくないから、などと言い訳もできた。
 だが、スカリエッティはそれら日本産エンジンも果敢にチューンしていった。
 設計が古いなら、加工してつくりなおせばいい。ベースはすでにある。そして、改良の余地もある。
 それは自動車メーカー自らが証明して見せていることだ。それをチューナーがやってはいけないという道理はない。

「考えてみれば当たり前のコトなんですがね──燃焼室の形状ひとつとっても、きちんと半球型に
削りなおしてピストントップも形状合わせて、プラグもバルブ位置もガイド打ち直して──
手間がかかる、もとからそういうエンジンだったから、は言い訳にならないんだって、
あの当時の我々は思い知らされたモンですよ」

「今のチューニングはもっと進んでいるのではないのかね?あのZだってもう機械としては古くさいモノだよ」

 悪魔のZがどのようなチューンを施されているか。それはあの車を追う誰もがのどから手が出るほど
ほしい情報だ。リインとアルフは目をかすかに引く。

215 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:15:49.89 ID:5QfjaQSI
 Kレコード本社ビルから目白通りを走ってすぐの護国寺ランプから首都高5号池袋線へ乗る。
 城島のSL600にはスカリエッティが同乗し、リインの911ターボ、アルフのGT-Rが先行して走る。

 SL600は電動メタルハードトップを備えるオープンボディの車だ。
 ボディ剛性は、強固なモノコックシャーシによって発揮される。ピークトルクはわずか1900rpmで84.6kgmを発生し、
911やGT-Rにも余裕をもってついていける。

「あのZは今もスカさんがみているんですか?」

「いーや、私はずいぶん前に手放したよ。いくつもの事故を重ね、何人もの走り屋の命を奪い──
──解体屋送りにされたと聞いてはいたが、まさかそれをまたなおした人間が現れるとは」

 城島はわずかに息をのむ。

 スカリエッティがチューニングショップを事業として成功させられなかったのは、その妥協のなさゆえだった。
 そこそこにおさめ、安全マージンを十分残した車をつくる、そういうことができなかった。
 常軌を逸した速さと、その代償となる危うさ、乗る人間の技量が追い付かなければあっという間に
限界を超えさせてしまう、そんな危険な車だった。

「今は私はあの車はサワってない。というか、むしろあの彼女がそれを望んだんだ。
このZは自分の思うようにしていく、私には頼らないでやってみたい──と」

「確かフェイトちゃんと同い年でしたよね──」

「いや、1コ下だったな。今年の春に免許を取ったばかりの女子高生だ。しかし、彼女にはセンスがあるよ」

「遅い奴はいつまでもダメですからね。単純な運転技術は反復練習でそこそこのレベルにはもっていけますが、
車を乗りこなすセンスは才能です、後付けではどうにもなりませんから」

 スカリエッティの言葉通り、悪魔のZに施されたチューンというのは、“当時のストリート仕様としては”という
但し書きがつけばこそハイレベルではあったが、レースシーンで使われた枯れた技術で
組み上げられたものだった。新しいアプローチをあえて避け、確実にパワーを発揮できるようつくられていた。

216 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:22:25.92 ID:5QfjaQSI
 竹橋ジャンクションから環状線外回りに入る。
 911とGT-Rは江戸橋直進で湾岸へ向かい、城島もSL600を2台に続ける。

「送っていきますヨ、スカさんは今はどちらに?」

「保土ヶ谷だ、常盤台で降ろしてくれればいいよ」

「わかりました、湾岸本牧から神奈川環状へ回ります」

 深川線に入ると、2台はがぜんスピードを増した。

「もともとのベースエンジンは横田基地に持ってきた米国仕様の1975年式S30に載ってたヤツだ……
当時ですでにL28Eというインジェクション仕様があったんだが、いかんせん当時のインジェクションは
信頼性が低くてね。すぐに使い慣れたソレックスキャブ3連装に取り換えた」

 SL600のハンドルを握りながら、城島はスカリエッティの話に聞き入る。

「日本国内でL28エンジン搭載車が出るのはそれから3年後の……S130へのモデルチェンジ後ですね」

「インジェクション自体、排ガス規制に適合させるためのものだった。当時のキャブ化はそれだけでパワーが上がった。
だがもちろんそれだけでは終わらせない。シリンダーボアを89ミリに拡げ、3リッター化する。
これにストローク83ミリのクランクシャフトを組み合わせることで排気量は3.1リッターだ。
これはもちろん当時のポピュラーな排気量アップだ……3リッター版のほうが高回転では有利だったが、
ライナーとピストンリングの加工でこれもクリアした。ノーマルのターンフローヘッドはLYヘッドに付け換えたが、
どちらにしろ2バルブSOHCなもんだからヘッド周りには余裕がある、私は迷わずツインプラグ化したよ。
キャブエンジンはとにかく確実な点火が必要だ、でないとすぐにカブるからね。
バルブとカムシャフト、ロッカーアームにはタフトライド加工で強度を上げ、バルブスプリングは135kgf/mmに
荷重セットした。バルブガイドはもちろん全部打ち直してある。で仕上げはドライサンプ化だ、
エンジン底部のオイルパンを取っ払ってポンプを付ける。ヘッド周りを確実に潤滑するには強力な
オイル供給圧を保てるドライサンプが不可欠だ。オイルタンクはタービンの反対側に置いた。
左右の重量バランス的にも、冷却面でも合理的だ。タービンはKKKのK26を2基掛けだ。インテークから
エキマニを経由してタービンアウトレットへ、パイピング全体がS字を描くようにレイアウトした。
バンパー中央にインタークーラーとラジエーター、左右にそれぞれオイルクーラーと
エアコン用コンプレッサーを配置する。これらはすべてサブフレームに取り付けている」

217 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:30:34.41 ID:5QfjaQSI
 スカリエッティの作る車の特徴の一つとして、どんな車でも例外なくサブフレームを採用することがあった。
 もともとリジッド(直付け)の車の場合、わざわざパイプフレームを使って現車合わせで製作するほどだった。

「私はモノコックボディというものを信用していないんだよ」

 SL600のサイドシートでスカリエッティは笑う。

「ボディ剛性の低さは日本車のウィークポイントでしたからね」

「第2世代GT-Rでようやく及第点といったところだ。それくらい、モノコックというのは大パワーに弱い。
どこか1か所でもクラックが入ればたちまち全体がダメになる。応力分散のためにはセパレートフレーム
構造は不可欠だ。ちなみにお嬢さんのテスタはもともとパイプフレームシャーシだが、
生産効率の点からセンターキャビン部のみモノコックになっている。もちろん前後のパイプフレームを
ロールケージで連結する、これだけでフェラーリの走りはグンとよくなる。
あのS30には、ロールケージと連結したサブフレームを車体底面全体に組み込んだ。ボディパネルは
ほとんど応力を受けないようにしてある。前後左右4か所のストラットタワーをそれぞれ上面と底面のタワーバーで
連結し、箱型をつくる。これにクロスバーを入れる。これだけで簡易的なパイプフレームシャーシが
できあがる。サスは純正のストラット式がこの場合相性がいい。ロアアームを直接サブフレームに取り付けられるから、
がぜん剛性が高くなる。キレのいい走りの秘密はここだよ。フロントがバタつかないから
アクセルが踏みやすくなる。ハンドルを切りながらでも自在に加減速ができる」

「スペック上は同じ馬力でも、スカリエッティチューンの車は速かったですもんね──
パワーさえあればいいというわけではなかった、我々が気づくのはかなり後になってからでした」

 現時点で、悪魔のZが発生させているパワーはおそらく650馬力程度だろうとスカリエッティはみている。
 オーバーホールしたとはいえ、経年劣化によって各部のクリアランスや重量バランスも悪くなっているし、
セッティングも安全マージンを大きくとったものにせざるを得ない。
 もし本気で速さを取り戻そうとするのなら、スカリエッティとしてもZのエンジンに手を入れるほかないと
考えているが、なのはは今のまま走りたいという。

「(ま、せいぜいがんばってみたまえ──L型はエンジンを学ぶにはもってこいの教材だ、
君はあの悪魔のZを師匠に、走りの修業を積んでいくんだ──)」


   SERIES 6. 首都高の白い悪魔 END

218 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:37:29.44 ID:5QfjaQSI
◆ SERIES 7. 決意と選択


 海鳴市、スクライア商会のガレージになのははZを預けていた。
 もう一度エンジンを開け、内部をセッティングする。エンジンを下ろすためにはクレーンが必要なので、
スクライア商会の工場を使わなければならない。
 ユーノにも手伝ってもらい、通常のエンジン脱着工賃5万円で、クレーンを使わせてもらえることになった。

「どこをいじる?こないだのオーバーホールで、少なくともパワーの谷は消えたよ……
特に悪い部分がないのなら、手を付けない方がいい──どんな機械でもそれは基本だ。
組み直しのわずかなミスで、それまで悪くなかったところに故障を引き起こしてしまう危険もあるんだ」

「うん……。でも、Zがもっと速く走ろうとしている、そんな声が聞こえるんだ。
今のセッティングじゃあ全然満足できない、もっと速く、もっとパワーをって、走ってると、
そんなふうに急かされている気さえするんだ。私のセッティングじゃあぜんぜんこのエンジンの
パワーを引き出せてない──やってみないと気が済まないよ」

 なのはの目は、もはやZを疑ってはいなかった。
 本当に、このZは魔力を持っている。そして、なのはにはそれにこたえる資質がある。

「わかった……。ただ、最後にもう一度だけ言うよ。エンジンの中に手を入れるってことは、
そくブローの危険をはらむことになる──ラフな運転は絶対にできない、それだけを忘れないで」

「うん、ユーノ君」

 タービンの配管を取り外し、サージタンクをあらかじめ外しておいてからエンジンクレーンをかける。
 L28エンジンの巨大なクランクケースには、軽量化のために穴あけ加工が施された
レーシングフライホイールが鈍い銀色の光を放っている。クラッチはカーボントリプルプレートで、
大パワーに耐える用意はある。
 エンジンさえ力を取り戻せば、このZはもっと速くなれる。車体もサスペンションも、そのパワーを想定して
セッティングされている。もっとパワーを出していったところに、このZがバランスするポイントはある。

 L28改ツインターボは、悪魔の心臓のように、太い血管のようなインテークパイプをまとわりつかせている。

219 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:44:00.59 ID:5QfjaQSI
 収録を行うスタジオの駐車場に、フェイトはテスタを乗り入れた。
 とりあえずリハビリ期間ということで、NOSはスイッチを切り、エンジンも回転上限を7000rpmまで抑えて
ECUセッティングによりパワーをセーブしている。
 顔合わせはすでに済んでいるので、原稿を読み合わせた後すぐに収録に入る。

 この番組はもともと主要メンバーに車好きのタレントを男女一人ずつ迎えていた。
 今回、メンバー交代に伴いフェイトに声がかかったというわけだ。

 司会を務める城島の軽快なトークに、フェイトも素直に話を合わせる。
 普段、アルフからは煙たがられていた車談義も、このメンバー、いやこの男となら素直に楽しめる。

 環境が変わるということはこれほどまでに人間の生き方を変えてしまう。
 もっと、いい仕事ができる。
 気持ちが、すうっと軽くなっていくようだとフェイトは思っていた。

「お疲れ、初めてだったから僕も抑えたけどどうだったかな、こういうテンションは初めてだろ」

 城島もメンバーへの気配りを忘れない。

「ええ、むしろどんどん突っ込んでもらっていいですヨ、なんかもうハマってる感じで」

「いいね、今度フェラーリ本当に引っ張ってこよーか、F355ならいい伝手もある」

「いいですねソレ、もちろん私が乗って」

「外ロケもたのしいヨ、結構いろんなショップも車両を提供してくれてるからね、いろんな車に乗れる」

 チューニングカーに触れる仕事に携われる。そのうれしい思いはフェイトの胸の中ではずむ。

「ん?あんまりうれしくないかな?」

「いえ──うれしいですよ、もちろん──ただ、なんていうんですか、いいのかなって思っちゃって、
私だけこんな──」

「カン違いしないでくれよ、オレは君の才能(スキル)を評価したんだ。君は車に対する情熱を持ってる。
単にトバして走りたいだけの若者とは違う、車を走らせる、車の成り立ちを考える、車を評論する、
そーゆう車にかかわるすべてがスキなんだ。そしてそのための知識と思考力を持っている。
それは才能なんだぜ、ただスキってだけじゃあ仕事はできない。能力をそなえるからこそ
仕事はできるんだ、歌手や声優だってそうだろ?単に歌がスキでも歌がヘタじゃあコンサートは開けない」

「はい──」

220 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:50:35.00 ID:5QfjaQSI
 テレビ番組のロケというのは何本か分をまとめて行う。スケジュールを集中的にとることで、
放送のためのストックをためておく意味もあるし、出演するメンバーや機材の手配もしやすい。

 この日の収録では、千葉県の某ショップが制作した白いポルシェターボが持ち込まれていた。

 ブラックバードの乗る964型よりひとつ新しい993型だ。このモデルからサスペンション形式が
見直され、より路面追従性が増している。
 借り切ったワインディングをゆったり走らせるだけでも、スムーズかつ力強いな走りができる車だとわかる。

「スカリエッティさんに会ったんですよね」

「ああ、あの人も昔と変わらないようだった。今は君のテスタとブラックバードの2台だけなのかな、みているのは」

「みたいですね。そういえば、なのはは──」

「あのコも一人でいろいろ試行錯誤しているみたいだヨ」

 フェイトは、いつもブラックバードのそばにいた栗色の髪の少女を思い出していた。
 家族か、親戚か──海鳴大学病院にもよく通い、一緒に帰宅していくのを、1か月の入院の間に何度も見た。

 あの少女はなのはの友人だと聞いた。彼女は、学校でのクラスメイトからはどう思われているのだろうか?
 学生のうちからスポーツカーを乗り回し、湾岸を走るなど、少なくともいい目では見られないはずだ。

 彼女はどういう気持ちで走っている──今の自分のように、恵まれた環境を探していくことは、
学生の身分ではいろいろと制約が大きいはずだ。

 仕方のないこと、ではすませたくない。
 フェイトは、もっとなのはに近づきたいと思っていた。
 近づき、お互いがより見える領域を探したい。

 今は、それは深夜の首都高だ。
 共に走る仲間、それだけかもしれないけれど、でも、今の自分はそれ以上を求めている。

 もっと、それ以上を。

221 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/09(土) 23:58:55.84 ID:5QfjaQSI
 はやてが暮らす八神家は海鳴市のはずれにあるが、リインは普段は八神家には住んでいない。
 もともと実家も別だったし、家の世話はシャマルとシグナムに任せているので自分が出張っていくことはない
と考えていた。シャマルは聖祥での仕事もあるし、ヴィータは子供、ということで、そこに
自分が割り込んでいくのはあまりいいことではないと。

 資産管理をしてくれている親類というのが、ギル・グレアム提督だというのは以前から知っていたことだった。
 医大時代のドイツ留学に際しても、現地の大学への根回しがあったと耳にした。

 グレアムはどのような意図で八神家にかかわっているのか──リインは、かすかな疑念は持ち続けていた。

 クロノ・ハラオウンにモンスタースープラを与え、対ブラックバード撃墜マシンに仕立て上げた。
 リーゼ姉妹の手でドラテクの特訓をさせ、首都高ランナーとしての経験を積ませていった。

 そうして、いずれクロノは自分の前に現れる。
 ブラックバード撃墜を目指す走り屋として。

 海鳴大学病院の駐車場から911を発進させるとき、いつもリインは首都高の方角を見て、思いをはせる。

「(クライドが望んでいたのは私とのケリをつけること──それは確かにそうだった──)」

 あのダブルエックス2.8も当時としてはトップクラスの速さを持つチューンドだった。
 その車で、自分のポルシェターボとの決着をつける。

 夢を果たせないまま、クライドは逝ってしまった。

 クライドは、自分に妻と子供がいることは、ごく親しい人間にしか話していなかった。
 そのことを聞いていたのは、グレアムをのぞけば自分とスカリエッティ、おそらくこの二人だけだ。

 だからこそ、スカリエッティもクロノに対しては目をかけようとしている。
 それゆえに、この911ターボを完璧に仕上げようとしている。向こうもプライドをかけてつくってくるであろう
最速のスープラを、完璧なポルシェターボで迎え撃つ。それは首都高を走る者としての、退けない戦いだ。
 ブラックバートと戦うということは、スカリエッティと戦うということを意味する。

 目的は一致している。スカリエッティは作り手として、自分は乗り手として。

 911のノーズを首都高へ向け、リインは決意を確かめる。

222 :リリカルミッドナイト ◆mhDJPWeSxc :2011/07/10(日) 00:06:23.92 ID:LCiMogYp
今日はここまでです
支援ありがとうございましたー

文京区にあるレコード会社ってどこでしょうねー(某)
なのはさんが店で着ている衣装はSts7話のやつをイメージしてください(汗)
お店の名前も・・・

ではー

223 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/10(日) 00:22:48.78 ID:5WppsR70
投下乙です
魔性の女ならぬ、魔性の車ですな

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/11(月) 21:34:19.83 ID:BiRomJEn
お疲れ様です

225 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:02:15.83 ID:fX7ROSVl
18:15以降に投下します。

【注意事項】
・悪の組織が百合人気を利用した世界征服を企み、その一環として他ジャンル否定を行ったりし、
なのは達がそれに抗うので作品全体を通してみると百合否定っぽく見えます。
・↑に伴い現状のアニメ界及びヲタを風刺する要素があります
・みんなふざけている様に見えますが、やってる当人達は至極真剣です。
・ディエンドの無駄遣い
・自分の好きなキャラがディエンドに勝手に呼び出されて使役される事に我慢出来ない人には不向き。
・少々オリも出ます



登場作品
・魔法少女リリカルなのはシリーズ
・仮面ライダーディケイド&仮面ライダーBLACK&歴代仮面ライダーシリーズ
・プリキュアシリーズ
・恋姫無双
・ブラック★ロックシューター(ディエンド的意味で)
・ハルヒ(ディエンド的意味で)

226 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:16:07.77 ID:fX7ROSVl
 19:戦い終わって…編

 ユリシアに挑むも一発で遠くに吹き飛ばされていたフェイト。彼女が目を覚ますとそこにはアルフの姿があった。

「ん…ここは…。そこにいるのは…アルフ?」
「良かった! フェイト生きてたんだね!」

 フェイトが目を覚ました事が余程嬉しかったのだろう。アルフはフェイトに思わず抱き付いてさえいたのだが、
フェイトは不思議な事に全身の傷が完璧に手当されている事に気付いていた。

「アルフが助けてくれたの?」
「違うよ。この人がフェイトを助けてくれたんだよ。」
「え?」

 アルフが指差した先には一人の女性の姿があった。これにはフェイトも思わず頭を下げる。

「あ…ありがとうございます。」
「良いの良いの。困った時はお互い様だからね。それよりも…。」

 謎の女性はフェイトの顔を見つめてこう続けた。

「その顔…見た所何か嫌な事があったのかもしれないけど、元気を出して生きなさい? その内良い事もあるからね。
それじゃあ私はそろそろ行かせてもらおうかな? これでもまだまだ旅の途中だから。」
「あ…ちょっと待って下さい! せめて…せめてお名前だけでも教えて下さい!」

 フェイトは自身を助けてくれた謎の女性の事が不思議と気になり、思わず呼び止め名前を聞いていた。
それに対し女性は立ち去ろうとしながらもフェイトの方を振り向き、口を開いた。

「私の名はアリシア。アリシア=テスタロッサだよ。それじゃあさようなら。また何処かの世界で会いましょう…?」
「え…アリシア=テスタロッサって…それってどういう…。」

 アリシア=テスタロッサとはどういう事か…フェイトが問おうとした時には既に遅く、
彼女は次元のオーロラを通って何処へと立ち去り、そのオーロラも直後に消滅していた。

「アリシアが生きていた…? いやそんなはずは無い…じゃあ彼女は一体……………。」

 フェイトは彼女がただの同姓同名では無く、アリシア=テスタロッサ本人であると確信していた。
しかしアリシアはもう既に昔に亡くなっているはずである。じゃあ一体彼女は何なのか…分からなかった。

 フェイトは気付かなかった。彼女…アリシアはフェイトの知る世界とは異なる歴史を辿った世界…
そもそも『最初からアリシア=テスタロッサが死ぬ事無く生き延びた世界』におけるアリシア=テスタロッサである事に。

227 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:17:18.68 ID:fX7ROSVl
 一方、採石場では今度こそ戦いが終わった事を皆が確認しあっていたのだったが、そんな時に鳴滝が姿を現していた。

「鳴滝…今頃何しに来たんだ?」
「くそ! 今度も死にそびれおったな!? おのれ! ディケイドォォォォォ!!」

 やはり例によってディケイドを罵倒する鳴滝であったが、そんな時にディエンドが前に出ていた。

「そう言えば君は以前プリキュアと一緒なら踊るとか言ってたよね。なら今ここで踊ってもらおうかな。」

 ディエンドがディエンドライバーを鳴滝へ向けると、それに合わせる様にキュアブラック、ホワイト、ドリーム、
ピーチ、パッション、ベリー、パイン、ブロッサム、マリンの9人が鳴滝へ向かって行く。不敵な笑みを浮かべながら
迫ってくる9人のプリキュアの姿に鳴滝も思わず苦笑いしながら後ずさりしてしまっていた。

「ちょっ、ちょっと待て! 良い子の味方のプリキュアが一般人に手をあげて良いと思ってるのか!?」
「ごめんね〜今の私達はあの青い人の操り人形だから〜。」

 とか、どう考えても自我を維持してるのにも関わらずこういう時だけディエンドのライドで呼び出された存在=
自我を持たない操り人形と言う事にする都合の良い五人に鳴滝も真っ青になった。

「おのれぇぇぇ! これで終わったと思うなよディケイドォォォォォォ!!」

 慌てて鳴滝は次元のオーロラを通って何処へと逃げ出してしまった。

「ふぅ…これで全ては終わった…と言う所か。」
「そうだよね〜。」
「じゃ、俺達は先に帰らせてもらおうかな。」
「おつかれちゃん。」
「帰ろう帰ろう。」
「もう帰っちゃうの? 休んでいけば良いのに…。」

 戦いはこれで完全に終わったと言う事で、ストロンガー&RX&電王&キバはそそくさと次元のオーロラを
通って帰ってしまった。連戦を終えたばかりだと言うのだから少し休んで行けば良いと思うなのはであったが
さっさと帰ってしまう辺り彼等も彼等で忙しいのだろう。

「俺等は休ませてもらおうかね。」
「疲れた疲れた〜。」

 他の皆はその場に残って一休みと言う事で一斉に変身を解いた。ディケイドは士へ、BLACKは光太郎へ、
クウガはユウスケへ、ディエンドは大樹へ、クロノ・ジョーカーは消滅しクロノの精神も抜け殻になったクロノの身体へ戻り、
アギト・アギトも元々アギトの力自体が一時的に与えられた物に過ぎない為に制限時間が来たのか自然に元のアギトへ戻り、
リインが着込んでいたG3システムもディエンドの変身解除に伴い消滅していた。

 変身を解除したのはプリキュアも同様で、ブラックはなぎさへ、ホワイトはほのかへ、ドリームはのぞみへ、
ピーチはラブへ、パッションはせつなへ、ベリーは美希たん、パインはブッキーの、
ブロッサムはつぼみ、マリンはえりかの姿姿へと戻っていた。

 ヴィヴィオとアインハルトが着込んでいた聖王覇王の鎧も消滅し、変身魔法も解除して子供の姿になっていた。

 なのはもまたバリアジャケットを解除していたのだったが、子供の姿になる事は無かった。
そもそも子供の姿自体が疲弊した体力魔力の回復の為に取っていた姿なのだから。それはユーノもまた同様であった。

228 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:18:15.14 ID:fX7ROSVl
「さて…戦いが終わったわけだが…腹が減ったな。」
「そうだよね…。」
「結構長い間飲まず喰わずで戦い続けてたもんね〜。」

 戦いが終わって緊張の糸が切れた事もあり、皆は一斉に空腹感を感じていた。何しろ飲まず喰わずで
長時間の連戦を続けていたのだから。いくらミラクルライトの力で体力が回復してたと言ってもこれはどうにもならない。
だが、そんな時だった。

「お腹が空いてるならおじちゃんのドーナツでも食べるかい?」
「ん?」

 突然そこへ現れた謎の自動車。そしてそこから現れたサングラスをかけた一人の男の姿があった。

「カオルちゃん!」
「誰? 知り合い?」

 なのは達が首を傾げる中、ラブは思わず男の所へ駆け寄っていた。

「やあラブちゃん元気かい?」
「それよりカオルちゃんどうしてここに!?」
「細かい事は気にしない。グハッ!」

 その男は『フレッシュプリキュアの世界』において移動ドーナツ屋をしており、プリキュア4人から
カオルちゃんと呼ばれ慕われる男だった。その他にも色々と謎の多い面も持っていたりするのだが、
彼の店舗も兼ねた自動車に乗っていたのは彼だけでは無かった。

「実は途中でこの子達も乗せて来たんだ。」
「夏みかん!」
「士君百合ショッカーをついに倒したんですね!」

 カオルちゃんの自動車に乗っていたのは仮面ライダーキバーラから変身を解除した光夏海、そしてリンディとクロノだった。
ユリシアによって活性化され凶暴化した百合戦闘員や百合厨に追われ窮地に陥っていた彼女達であったが、
なのはやディケイド達がユリシアを倒した事によって何とか助かったと思われる。

「まあそんな事よりもおじちゃんのドーナツでも食ってきなよ。何ならジュースも付けるよ。」
「あ…ありがとう…。」
「でもこれ…凄く美味しい!」

 とりあえずカオルちゃんのドーナツで空腹感を満たす事にしていたが、いくらお腹が空いてる時は
何だって美味しいと言うが、それを差し引いてもなお余りある程にまで美味しかった。

「ほぉ…これは確かご主人様がおっしゃっておられた天界の菓子、確かに美味であるな。」
「美味しいですよ〜。」
「これはぬぇ〜ドーナツって言うお菓子なのよぉ〜。」

 皆ドーナツを楽しんで食べていたのだが、そんな時にカオルちゃんが士の方に歩み寄っていた。

229 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:19:48.57 ID:fX7ROSVl
「さて士君。旅の方はどうかね?」
「まあボチボチと言う所だな。」
「そうか…頑張りたまえよ。」

 ディケイドがプリキュアの世界(第一作目〜ハートキャッチまで)を旅していた事は既に説明されている通り。
故にこの通り既にカオルちゃんとも知り合いになっていたのだが、カオルちゃんは士が数多の世界を
渡り歩く者である事を知っている様子だった。

 そして皆に一通りドーナツを配り終えると、カオルちゃんは自身の自動車に乗り込んで行った。

「それじゃあおじちゃんは先に帰るから。ラブちゃん達も皆が心配してるから早めに帰るんだよ。」
「ありがとうカオルちゃん。」

 別れの挨拶を済ませると共にカオルちゃんを乗せた自動車は次元のオーロラを通って何処へ消え去った。

「結局何だったのかな…あの人…。」
「さあ…。」

 なのはもユーノもカオルちゃんの得体の知れなさに首を傾げていたのだが、そんな時だった。

「あぁぁぁぁぁぁ!!」
「どうしたのヴィヴィオ!?」
「まさか敵の生き残りがいたの!?」

 突然叫び出したヴィヴィオに皆の表情が緊張する。これは何か大変な事が起こったに違いないと
皆の表情は緊張していたのだったが、ヴィヴィオの手には何かが握られていた。

「クリスが…私のクリスが…こんなんなっちゃってるよぉぉー! 誰ー!? こんな事したのー!」
「え!?」

 ヴィヴィオの手に握られていたのはボロボロになり、中のデバイス部分も砕け動かなくなったクリスの姿があった。
これにはヴィヴィオも真剣に泣いていたのだったが、直後、ユウスケが士の肩を強く引っ張っていた。

「士! こうしてはいられない! 早く旅を再開しよう!?」
「ああそう言えばあのでっかいウサギのぬいぐるみの相手をしたのはお前だったよな!」
「わぁぁぁぁ! それを言うな士ぁぁぁぁ!!」

 そう。クリスがボロボロになってしまった原因はクウガことユウスケにあった。百合ショッカーによって
改造され巨大化されたクリスが百合ショッカーの尖兵として立ち塞がって来た際に相手をし、激闘の末に
倒したのがクウガであるから。

「まさかお兄ちゃんがクリスにこんな事したの…?」
「ヴィヴィオを泣かすなんて…許せない…。」

 ヴィヴィオとアインハルトはユウスケを強く睨み付け、ユウスケは真っ青になった。

230 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:22:13.95 ID:fX7ROSVl
「うっうああああああ!! ごめんなさぁぁぁぁぁい!!」
「待てぇぇぇぇぇぇ!」

 その場から猛烈な速度で逃げ出したユウスケをヴィヴィオとアインハルトが物凄い形相で追い駆けて行ったが、
一方光太郎も立ち上がり、ヘルメットを被りつつバトルホッパーへ乗り込んでいた。

「さて、俺もそろそろ行かせてもらおうかな?」
「え? もう行っちゃうんですか光太郎さん?」
「もう少し休んでいけば良いのに…。」

 光太郎との別れを名残惜しむなのはやユーノであったが、彼はこう続けた。

「百合ショッカーは確かに滅んだが俺の世界のゴルゴムは無傷であるし、今も何かの陰謀を巡らせているかもしれない。
それにシャドームーン…信彦もあの程度で死んだりはしないだろう…。俺の戦いもまだまだ続くのだ。」

 そう。百合ショッカーと言う数多の世界を巻き込んだ巨大な脅威は去っても、その世界その世界に
元々から存在していた脅威は消えない。その為に仮面ライダーBLACKこと南光太郎の戦いはこれからも続くのだ。
だが、バトルホッパーと共に立ち去ろうとしていた光太郎の所へ朱里ちゃんが思わず駆け寄っていた。

「はっ…はわっ…。ちょ…ちょっと待って下さい…。」

 朱里ちゃんは光太郎を前にしてはわわはわわしていた。何しろ朱里ちゃんがディエンドによってライド召還された時には
光太郎はずっとBLACKの姿を取っていたのだ。だから元々から妖怪黒バッタ男とでも思い込んでいた為に
実はちゃんとした人間(改造されてはいるが)だと知って逆に驚いていたのである。それでも一生懸命彼女は言った。

「が…頑張ってください…御武運を…お祈りしていましゅぅぁ! はわわぁ! かっ噛んじゃったぁ〜!」

 一生懸命ながらも緊張の余り言葉を噛んでしまい、それに顔を赤くして恥ずかしがっていた朱里ちゃんだが、
光太郎は優しく彼女の頭に手を置いていた。

「君の協力が無ければ俺も危なかった。やはり君は諸葛亮孔明だったな。ありがとう。」
「………………。」

 そう言い残すと共に光太郎は朱里ちゃんの頭から手を離し、バトルホッパーのアクセルを吹かして次元のオーロラを通って
元の『BLACKの世界』へ帰って行き、朱里ちゃんは次元のオーロラが消えた後もその先を見つめていた。

「さぁて! 私達も帰るわよぉ〜。ご主人様も心配してるかもしれないわぁ〜。」
「そうだな。朱里、我々にも我々の戦いがある。もう帰るぞ。」
「はっはい! 分かりました愛紗さん!」

 こうして愛紗&朱里ちゃん&貂蝉もまた次元のオーロラを通って『恋姫夢想の世界』へ帰って行った。彼女の世界も
百合ショッカーの侵攻こそ未然に防がれた物の、彼女等の世界に元々からあった乱世の平定と言う戦いが残っているのだ。

「私も帰る…。本来の任務に戻らなければならない…。」
「夏に出るPSP版まで…さようなら…。」

 長門有希とブラックロックシューターもまた、それぞれ次元のオーロラを通って自分達の世界へ帰って行く。
彼女達にも彼女達の世界でそれぞれにやるべき事がある。それに一刻も早く戻らなければならなかった。

231 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:24:08.81 ID:fX7ROSVl
「私達もプリキュアとして戦って世界を守って来たつもりだったけど…。」
「今回の事でまだまだ沢山の脅威が残ってる事を知りました。」
「ラビリンスだけじゃない…全てのパラレルワールドを支配しようと狙う者は幾らでもいる…。」
「だから私達はこれからもそれぞれ頑張っていきたいと思います。」
「今度はどんな敵が現れても何とかしてみせるわ。だって私完璧だもの。」
「私達が力を合わせれば必ず本当に平和な世界に出来るって私、信じてる。」
「でもその前にまずは帰って皆に無事な所を見せないとね。決定ー!」
「それじゃあ帰ろっかー!」
「そうですね。」

 と、こうしてそれぞれのプリキュア達もまた次元のオーロラを通って元の世界へと帰って行った。
何かもう彼女達は本人なのかディエンドがライドした複製なのかかなり曖昧になってる気がしたけど気にするな。

 そして士、夏海、大樹もまた立ち上がっていた。

「さて、じゃあ俺達もそろそろ旅を再会しようかね。」
「そうですね。」
「次は何処の世界に行くんだい?」

 彼等も元々旅の途中だったのだ。それ故に旅を再開しなければならない。

「おーい! ユウスケー! そんな遊んでないでもう行くぞー!」
「そんな事よりこっちを助けてくれよー!」

 ユウスケは未だにヴィヴィオとアインハルトに追い駆けられていたのだったが、とりあえず何とか
合流して士達は旅を再会しようとしていたのだが、そんな時になのはとユーノが呼び止めた。

「ちょっと待って下さい士さん!」
「僕達…また会えますよね?」
「さあな。俺達はこれからも旅を続ける。今回の事でまだまだ俺の知らない世界も沢山ある事が分かったからな。
もしかしたらその旅の中で再開する事もあるかもしれない。それまでひとまずのお別れだ。」

 士は首に下げていたカメラをなのはとユーノの二人へ向け、シャッターを押した。

「今の君達の姿こそこの世界におけるお宝さ。流石に僕が持ち帰るのは無理だけどね。」
「じゃあな。」
「さようなら皆さん。」
「とっとりあえずウサギさん壊しちゃってごめんな…。」

 こうして士&夏海&ユウスケ&大樹は帰って行き、戦いが終わり平穏を取り戻した採石場に
なのは&ユーノ&クロノ&リンディ&リインフォースU&アギト&ヴィヴィオ&アインハルトの八人が残された。

232 :なのは&ディケイド 超百合大戦 ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:25:58.29 ID:fX7ROSVl
「とりあえず…どうするかな?」
「帰ろうか…。」
「そうですね。」

 なのは達もまたそれぞれの場所へ帰って行く。百合ショッカーに滅茶苦茶にされた世界を
立て直さなくてはならないし、これからも百合厨が騒いでゴタゴタもあるだろう。
彼女達の戦いはまだまだ続いて行くのである。

「ちょっと待ってよー! 私のクリスはどうなっちゃうのー!?」
「後でちゃんと直してあげるから。」

 ちなみにヴィヴィオはまだクリスを壊された事を根に持っていた様だが、修理してもらう事で何とか怒りを治めていた。


 一方光写真館では、光栄次郎が一人椅子に座っていた。

「いや〜また偉い目にあってしまった。もうこういうのは本当に懲り懲りだよ。」

 百合神博士となっていた彼であったが、ディケイドによって倒される事によってそれから開放され
こうして元に戻って光写真館に戻っていたのだった。そしてもう二度とこんな事が無いようにと
自身を百合神博士ドーパントへと変えていたガイアメモリを処分するのだった。


 そして、聖王の百合かご内部で凄まじい強敵として立ち塞がりながらすっかり存在の忘れ去られた仏像泥棒。
彼もまた逃げた先でハヌマーンに見付かって握り潰され、『ハヌマーンと五人の仮面ライダーの世界』における
地獄に強制送還されてしまったそうな。


 20:エピローグ編

 旅を続ける中で『リリカルおもちゃ箱の世界』にやって来た門矢士はある光景に出くわしていた。
それは一人の少女が複数の男達に集られ揉みくちゃにされている光景。

「見てられんな。ちょっと助けといてやるか。おいお前等その辺にしとけ!」

 とりあえず人として助けといてやろうと士は前に出た。だがそんな事をすれば一人の少女に
よって集る男達に睨まれるのも当然の事だった。

「誰だお前は!!」
「俺は通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。変身!」
『カメンライド! ディケーイド!』

 士はディケイドライバーを腰に巻きディケイドへ変身する。そしてライドブッカーからさらにカードを
取り出し、ディケイドライバーに差し込んでいた。

「リリカルなのはの世界で手に入れたカードだ。」
『リリカルライド! なのはぁ!』

 ディケイドの姿がなのはへと変わり、ライドブッカーもまたレイジングハートへ変異していた。

「お前等全員揃って頭冷やしてもらおうか?」


                       END

233 : ◆e4ZoADcJ/6 :2011/07/14(木) 18:31:11.89 ID:fX7ROSVl
これで完結です。当初考えていた以上に時間が掛かってしまいました。

今回は完結編と言う事で色々な面での総括的な意味合いがあるんですが、
MOVIE大戦2010のラストで、スカルの人が死ぬ事無く
現在も活躍中って世界がどこかに存在している事が明らかになった様に
ディケイド理論ならば何処かにアリシアが死なずに年齢を重ねた歴史を
辿った世界があっても良いのではないかと考えた結果がその展開です。

ではまた次何時か機会があれば…

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/15(金) 19:36:01.09 ID:C6dxhGSX
>>233
完結乙です
貴方の作品に関して色々騒がれたりとかありましたが
終わってみると感慨深い物ありますね。

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/16(土) 17:45:27.96 ID:AF9usaYD
色々ありましたが、全体で見れば発想は面白いと思った点が多かったです
完結まで、お疲れ様でした


236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/19(火) 21:57:55.59 ID:GgECzHJk
完結乙
色々あったし、一時は俺も作者の対応に腹が立った事もあったけど、終わってみればよく完結まで頑張ったと思う
あれだけ叩かれ、感想もろくに貰えない状況でもめげずに続けられたのは凄い事だと思う
後半は素直に熱いと思える展開だったし、広げまくった風呂敷をこうやってきちんと畳んで短期間で完結させた事も一種の才能だと思うわ
次以降は百合やオタを風刺したギャグでなく、まともなクロスをこの規模で見てみたいな
それなら今よりきっと伸びると思う

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/20(水) 09:41:43.61 ID:qPh5TydA
(・ ・ ≡ ・ ・)キョロキョロ

238 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 09:43:50.12 ID:qPh5TydA
書き込みテスト終了。
きっと皆覚えていないと信じている、LBです。
10:15に投下開始します。

先に謝ります。鬱嫌いのHappy End主義でごめんなさい。

注意事項
 容量:35KB以上
 漢字が多いかもしれない(ぇ

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/20(水) 10:00:56.15 ID:VBPBLC6B
待ってました

240 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:17:41.92 ID:qPh5TydA
「さて、問題はこれからね」
 アースラ・ブリーフィングルームにて、女提督の柏手(かしわで)が鳴り響いた。
 あの後、使い魔と執務官によるジュエルシードの取り合いへ発展。
 互いに三個ずつ入手し、不利を悟った使い魔は、言葉にならない声で叫びながら水飛沫を上げて撹乱しつつ逃走。
 魔導師三名を帰還させた後、セラへ伝えた輸送機事故の情報を残る二名にも説明し、ようやく本題へ入る所であった。
「クロノ。事件の大元について、心当たりは?」
 壁にもたれていたクロノが背を浮かし、数歩足を進め、
「はい。エイミィ、モニターに」
『はいはーい』
 相変わらずオペレーター室から、スピーカー越しにエイミィの声が届く。
 長方形テーブルの中心、赤い大きな球から立体映像が浮かび上がる。
「あら、画面で見た事のある顔」
 映っていたのは、一人の女性に関するデータだった。
「ええ……ミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサです」
 リンディと対面に座す三人のうち、少女二名が反応する。
 一人は名前から、もう一人はそれに含まれた単語から。
「フェイトさんのお母さん、ですか?」
「フェイトちゃん、あの時、“母さん”って……」
「親子、ね……」
「話を続けます。専門は、次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって、放逐された人物です」
 続ける提督、話を戻す執務官。ミッドチルダの二人が顔を知っているという事は、余程の有名人だったと見える。
「登録データとさっきの魔力波動も、一致しています。間違いないでしょう」
「そ、その、フェイトちゃんなんですけど」
 一区切りした所で、なのは。
「驚いてたっていうより……何だか、怖がってるみたいでした」
 これに内心で苦慮したのは、セラとリンディだ。
 提督は顔の前に置いた両手の指を組み、迷い子は誰にも知られることなく顔を俯かせる。
 親へ恐怖の感情を向け、次元跳躍攻撃を受ける。ただ事ではない。
 嫌っているフリをされた経験のあるセラは、あれは本気でフェイトを嫌っているのではないかと思案。
 “虐待”の単語が脳内でちらついたリンディは、情報を求めんと指示を出した。
「エイミィ! プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる? 放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも」
『はいはい、すぐ探します』

241 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:21:08.60 ID:qPh5TydA
 なのはは映像の女性を見つめ、ユーノはなのはを見守り、クロノは再び思案に耽り始めた上司の仕草を観察する。
 セラは思い出の中から母に手を上げられた記憶を辿るものの、纏わりつく死の光景が顔色を悪化させている事に自分で気付いていない。
「――ごめんなさいね」
「え?」
 正面から、小さな小さな謝罪の声。
 顔を上げるものの、セラの視界にこちらを映す瞳は一つとしてなかった。

          第八章 そして歯車は狂い始める
             〜Advice from Mothers〜

 庭園深部、地下。
 そこは豪奢な廊下や広間でも、紙の資料が積まれた研究者特有の部屋でもなく、赤い洞窟のような空間だった。
 一言で洞窟と言っても、ピンからキリまで広義に渡る。例えば住居のように狭いものやトンネルのように広いものなど。今回は後者である。
 赤い岩でできた地面・壁・天井に角はなく、全体が半楕円形に近い構造をしている。
 その中で朽ち果てた木々が生え、乱雑に建てられかつ傾いたものもある円柱が地面から突き出し、その地面もあちこちが裂けていた。
 どこまでも真っ赤に荒れ果てた、閉鎖空間。
 まるで、今の自分のよう。内心でプレシアは一人ごちた。
 眼前の僅かな白煙が立ち消えれば、現れるのは自分が開けた巨大な穴。後ろを振り返れば、長い階段の上で立ち尽くす少年の姿があった。
 何事もなかったように、プレシアは階段へ歩み寄る。
「手を出さなかったことには礼を言うわ」
 話し掛ければ、少年の肩が僅かに震えた。
 それでも気丈に、視線と言葉で返す。
「いいんですか? 直前で逃げたみたいですけど」
 今度はこちらの足が止まる。
「……あの怪我でできる事など、たかが知れているわ」
「管理局へ通報された場合、どうします?」
「好都合よ。所在の判明しているジュエルシードは、全て向こうが持っているもの」
 全て問題無い。管理局員が乗り込んできた際、ジュエルシードを保有する魔導師から強奪すればいい。
 精神的に揺れているであろうフェイトが少々厄介ではあるものの、この面子なら可能だろう。
「他にも局員が出てくるでしょうけど、その時はあなたに回すから」
「分かりました」
 そこまで話していて、少年の両手が視界に留まった。
 強く握った拳から、僅かだが血が流れている。

242 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:25:49.31 ID:qPh5TydA
 人工生命たる少年に、血縁者はいない。最初から存在する味方が存在しない。
 なのに、何故こちらの事情にそこまで感情移入できるのか。
「……あなた、育ての親や兄弟はいるの?」
「え……あ、はい。姉が一人」
「血縁?」
「いえ。出身が同じだけです」
 正直に答える、生まれてからまだ二年の少年。早い内に味方が手に入ったのは確かに僥倖だろう。
 しかしそうなると、こちらの言う通りにして敢えて手を出さない理由が分からない。
「……大事なガールフレンドの為なら、姉を手に掛けられる?」
 しばらく考えて、問う。
 硬直した少年は、答えられないのか俯いてしまった。
 ……成程。
 少年の信念、その根源には“セレスティ・E・クライン”の存在が大きい。十日間の会話で知り得た情報の一つである。
 もう一人の迷い子たるその少女の為なら、人殺しを辞さない。何百人、何千人殺してでも突き進むつもりだ。
 誰かを守る為なら、いくらでもその手を血で汚す。信念のベクトルは自分に近いものがある。
 しかしこちら程の……身内まで手に掛ける程の覚悟がない。だから共感はできて口出しはできない。
 一歩間違えれば、少年も同じだから。
「あの子の説得、任せるわ。その位できるでしょう?」
「……わかりました」
 少し考えて出した指示も、俯いたままで反論は返ってこなかった。
 感情で納得できなくても、建前なくして抗する術なし。
 論破したプレシアは、悠々とその場を去っていった。

243 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:29:08.66 ID:qPh5TydA
                   *

「な・の・は・さん!」
「わっ!」
 アースラのとある廊下にて、進行方向を遮られたなのはは思わず仰け反った。
 上が暗くて下が明るく全体的に薄暗ければ、驚くのも無理はない。
 しかし考えごとに夢中では周りが見えないのも、また道理である。
「お、おどかさないでよ〜」
「なのはさんに元気がなさすぎるからです。折角家へ帰るのに、そんな顔でいたら心配されます」
「にゃうう……」
 逆に言い返された。しかも言う通りなので反撃できない。
 隣のユーノも苦笑するばかりである。

 プレシア・テスタロッサの経歴は、先程判明。どうやら有名な技術局長だったらしい。
 しかし家族関係や行方不明直前の行動は綺麗にデータを消されていたらしく、現在本局に調べてもらっているそうだ。
 結果は一両日中に出るとの事。行方の手掛かりすら掴めない一個分を除けば、ジュエルシードは全て回収済み。やる事がない。
 テスタロッサの両名は大量の魔力消費を行ったためすぐには動かないだろうし、次元跳躍魔法対策にアースラのシールド強化が必要だ。
 攻撃を受けたフェイト程ではないにしろ、なのはにも休息は必要。民間協力者二名は、一度高町家へ戻る事になった。

 なのははその時、帰宅を渋った。結局リンディに押し切られる形で帰る事になったものの、なのはの顔は未だに晴れない。
 セラにはそれが気になったのだろう。
「家に戻るのがそんなに嫌ですか?」
「う、ううん! そうじゃなくて!」
 十日も家に帰ってなかったのだから、心配していると思う。
 事情説明等はリンディが直々に同伴して誤魔化すらしいので、その辺りは何とかなるだろう……とはセラの弁。
 しかし、原因はそこではない。
「フェイトちゃんの事……お母さんを怖がってて、それであんな事されてて、その……」
 上手く表現できないらしく何度も口ごもり、結局問いの形にしかならなかった。
「セラちゃんは、何とも思わなかったの?」
「思わないわけじゃないですけど……それがどうかしたんですか?」
「だから、その……」
 先を続けられないなのはに、金髪碧眼の少女が再び尋ねてくる。
「今のなのはさんには、何ができますか?」
「それは……」

244 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:32:01.71 ID:qPh5TydA
 何かしなければいけない、とは思う。
 けれど、フェイトの為になる方法が見つからない。
 彼女の居場所はどこなのか、プレシアとの関係はどうなっているのか、解きたい疑問も解決したい問題も多い。
 だから、居ても立ってもいられない。
 しかして肝心のアースラ艦長は“休め”と言う。実際家族へ連絡をとるべきだと思う反面、納得がいかない。
 何故、動いてはいけないのか。
「なのはさんがすべき事は、次のためにもきちんと休むことです」
「次の、ため……?」
 セラの意見も同じ。しかし気になったのは、“次”という単語。
「一個だけ除いて、全てのジュエルシードが今回の戦闘で回収されました。次にフェイトさんが何をするか、分かりますか?」
 首を傾げそうになって、あ、と呟く。
「そう……方針が変わらなかったら、直接なのはへ仕掛けてくるんだ。ジュエルシードを奪う為に」
 と、それまで傍観していたユーノの声。
 ここまでフェイトが回収した数は八つ。必要な数までまだ足りないとしたら、数が多くて所在の明らかな“なのは”を直接狙ってくる。
 海上戦で使い魔が「三つしかない」と不満を露わにしていたのも、こう考えると辻褄が合う。
 しかしなのはは魔導師である。簡単には奪えない。となると、確実な勝利を掴む為に万全の体勢で現れるのだろう。
 だからこそ、なのは自身も心身を整える必要が出てくる。家へ戻すのも、精神面の休息を行う一環という訳だ。
 今まで、気付こうともしなかった。
「焦っちゃダメです、なのはさん。動きようがないなら、一旦落ち着きましょう」
「……うん」
 なんでこうも冷静なのだろうと考えて、頭の中から当然という答えが返ってくる。
 セラはフェイトの事を知らない。直接面と向かった事も、話した事もない。フェイトに至ってはセラの顔すら知らないだろう。
 だからこそ、冷静でいられる。必要な行動を把握できる。
 彼女の言う通り、確かに自分は焦っているのかもしれない。
「言ったじゃないですか。最後はジュエルシードの取り合いになるから、気長に待ちましょうって」
 少しだけ口元を緩めるセラ。反応するのは少年。
「そこまで読んでたの?」
「フェイトさんが幾つか持ってるんですから、アースラの皆さんが追いかけると思ってました」
 ああ、と相槌をうつユーノ。二人はここからしばらく会話を続ける事になる。
 その間、なのははいつぞやの如く硬直していた。

245 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:35:09.78 ID:qPh5TydA
 ……まただ……
 自分だけ、置いてけぼりにされている感覚。ここ数日で生まれるようになった、見えない線引き。
 セラへの態度や雰囲気の端々が、自分と周りとで微妙に違う。
 普段は皆大して変わらないものの、話題が切り替わった時に漠然とした違和感を覚える。
 表面上仲良くしているように見えて、靄がかかったような雰囲気を感じ取れるのなら、まだ表裏を利用した外交みたいなものと取れるだろう。
 “半分は本当に仲良くしていて、もう半分は真意を悟らせない”という中途半端だからこそ、奇妙だと思える。
 腹の探り合いと表現するには、余りに曖昧。これを近い年代であるユーノやセラも纏っているのだから、少し怖い。
 次元漂流者というものは、そこまで難しい立場なのだろうか。
 仲間外れにされている状態なのだが、不思議と負の感情は湧いてこない。それでも今回ばかりは業を煮やし、ユーノへ念話を送る事にした。
(ユーノくん……みんな揃って、わたしに何か隠し事してない?)
 大した感情もない、純粋な疑問を。
(……あー、分かっちゃった?)
 そろそろばれる頃と予想していたのか、あっさり返事。セラには念話している事も分からないだろう、表面上は動揺の気配すらなかった。
(わたしだけ置いてけぼりにして……)
 僅かに頬を膨らませる。無論セラには見られていない。
(ごめんごめん。でもこう言っちゃなんだけど、学校の友達に隠し事してるなのはも同じだと思うな)
(うっ)
 痛い所を突かれて黙り込む。
(答えもなのはと同じ。ちゃんと終わったら話すから)
(……うん。分かった)
 結局、それだけで念話が終了する。
 ユーノがなのはを信じてジュエルシード集めを頼んだのだから、自分もユーノを信じなければいけない。
 何より、約束を破る人でもない。それだけの信頼関係はあるつもりだ。
 だからこそ、会話の締めは簡潔なものであった。
「あ、念の為に言っておきますけど」
 ふと、なのはの首元を碧眼が凝視する。既に奇妙な一線は隠れていた。
「今はレイジングハートさんがいないんですから、戻ってこない内にフェイトさんと戦ったりしないでくださいね?」
「に、にゃはは……」
 胸元の宝玉は、現在管理局へ預けている。

246 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:38:25.34 ID:qPh5TydA
 ――丁度いい機会だから、こっちでメンテナンスしてみない?
 思えば結構無茶をさせてきた気がする。レイジングハートとユーノによる不可解なまでの強い推奨もあり、女提督の提案を受け入れた。
 明日の昼頃には終了して、こちらへ届けられるらしい。
 というか、この辺りでもユーノ達の言動が少し怪しかった。レイジングハートまで共犯なのだろうか?
「返事は?」
「はいっ!」
 そんな思考を遮る問いに、強めの返事を送る。なんとなく、そうしなければいけない気がしたから。
「よろしいです」
 海上での事件後から、初めて口元を緩める迷い子の少女。ちゃんと返して正解だったらしい。
 最初は沢山お話しようと思ったけれど、すっかり予定とあべこべになった関係。
 まるで、年の近い姉のように面倒を見てくれる。それが今は、とても嬉しい。
「折角ですから、休む時はしっかり休んでください」
「……うん!」
 余計な事を考える必要はない。難しい事は、ユーノ達なら何とかしてくれる筈だ。
 迷いなく、笑顔と共に大きく頷いた。


247 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:41:24.31 ID:qPh5TydA
                   *

「ん……んぅ……」
 誰かに運ばれている感覚から、ぼんやりと目を開ける。
 目に入るのは、銀髪銀眼を備えた白人の顔。先日ジュエルシードの暴走で流れ着いてしまった少年だ。
 その背景に、豪奢な天井が見える。おそらく、庭園の廊下辺りだろう。
 何故か片頬の腫れている少年が安堵に顔を綻ばせる一方、フェイトは状況を把握できない。
 天井が一定方向に流れている。最初に感じた通り、移動しているようだ。
「あ、起きた?」
 気付いてこちらを覗きこんでくる。それにしても顔が近い。
 身体にも妙な浮遊感。まるで眼前の少年に抱かれているような、
「――あ」
 ようやく意識が目を覚ます。“ような”ではなく本当に抱きかかえられていた。
 俗に言う、お姫様抱っこである。
「わわわわわっ!」
「ちょっと、無理して動いたら!」
 顔を真っ赤にしているのが自分でも分かる。
 少年の警告は無視。大慌てで身を捩り、腕の中から抜け出そうとして、
「痛っ! 〜〜……」
 まともに動く事もできなかった。全身を痛覚が襲い、言葉にならない声を上げる。
「えっと、大丈夫? ……今フェイトの部屋に行ってるから、じっとしててね」
 腕の中で悶絶するこちらを気遣う、人畜無害そうな少年。
 少年の心情は分からないでもないが、こういうのは寧ろ自分の使い魔が率先して行う筈。
 マルチタスクで何とかそこまで考えて、自身に見覚えのあるマントがかけられている事に気付く。
 知っている。使い魔のものだ。
「アルフは?」
「先に行ったよ。行き先も目的も分からないけど、多分大丈夫だと思う。精神リンクは?」
 力なく首を振る。会話中に同時並行で念話を使ってみたものの、応答がない。
「まあ、何か考えがあるんじゃないかな……と、着いたよ」
 気がつけば、昔は明るかった自分の部屋。
 器用に開けられた扉の向こう側には、子供三人が遊んでもまだ余裕を持てる程広い部屋。
 ドーム型の天井には、プラネアリウムのように星空を散りばめられている。
 ここにはもうフェイトとアルフしか来ない為、家具も少なく閑寂としていた。
 大きな窓の下に置かれた大きなベッドまで運ばれ、傷に障らないようゆっくりと降ろされる。

248 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:44:54.66 ID:qPh5TydA
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
 アルフやリニスにされた経験はあれど、それ以外……ましてや異性に抱えられた事は一度としてない。
 今でも心臓がうるさく鳴り響いているのだが、彼には聞こえていないだろうか。
「それと、プレシアさんから通達。最低でもあと六個以上必要だって」
 聞こえていないのだろう、母からの連絡事項を伝えてきた。
 一瞬で熱が冷め、余計な思考を頭から追い出す。
「六個……分かった」
 転移した一個を除き、ジュエルシードは全て発見された。この状況で六個入手するとなれば、手段は一つしか存在しない。
「プレシアさんと一緒にモニターしてたよ。あの子と、戦うんだね?」
「……うん」
 入手したもう一方と、直接奪い合う。恐らく、次が最後の戦いになるだろう。
 ――友達に、なりたいんだ。
 対決するであろう少女を思い出し、顔を曇らせる。心情を察したのか、少年が片方だけ腫れた顔を近付ける。
「フェイトは、あの子にどう答えたい?」
「……分からない」
 真っすぐ過ぎて、どうすればいいのか戸惑ってしまう。
 接し方が浮かばない。そもそもどうすれば友達になれるのか、自分は知らない。
 そこまで考えている内、会話が途切れている事に気付く。
 いつの間にか俯いていた頭を上げれば、口元へ手をあて両眼を閉じた少年の顔。
 部屋の扉から差し込む光が、腫れた片頬と綺麗な銀髪を映している。
 何かを思い出すように長く思案するその口から、僅かに漏れる独り言。
 ――ぼくと姉さんのとは、違うよね――
 こう言ったのだろうか。フェイトには判断がつかない。
「……どうしたの?」
「あー、うん。ちょっと昔の事思い出してて」
「昔の事?」
 頷いた少年はしばし言いよどみ、
「フェイトの気持ち、分からない訳じゃないんだ」
 え? と首を傾げるこちらに構わず、続ける。
「プレシアさんのために勝ちたくて、でもあの子の気持ちにどう答えればいいか分からない。合ってるよね?」
 その通りなので、フェイトは肯定を返す。
「じゃあ、答えるのは後。まずはやる事を済ませて、それからちゃんと話そう」
「後回しにするの?」
「早く決めた方がいいのかもしれないけれど、今はやっぱり決められない。なら、状況が落ち着いてからでも遅くないと思うんだ」

249 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 10:49:23.70 ID:qPh5TydA
 二度瞬きして、天井を見上げて、三秒。
「そっか……そうだね」
 成程、理にかなっている。
 こんな所で迷っていてはいけない。先に目の前の事態から対処して、それから考えればいいのだ。
 アルフだったら、考えるなとか聞く耳持つなとか言うのかもしれない。
 でもこの少年は、あの少女の言葉を決して無碍にしない。その上で必要な事を教えてくれる。
「じゃあ、まずは休むこと。でないと、勝てるものも勝てなくなるよ」
「うん。……その」
「何?」
「母さんに、酷い事されなかった? ……それだって」
 今まで聞く機会がなかった点を見やる。
「ああ、これ?」
 苦笑しながら、少年は顔の輪郭が微妙に歪んでいる程腫れた頬に手をあて、
「幾らなんでもフェイトに攻撃するのはおかしいんじゃないかって言ったら……ね」
 会って十日も経っていないのに、この少年はこちらのためを思ってプレシアへ意見したのだ。
 あの時、少女の言葉で動きを止めなければこうはならなかっただろう。
 そう思うと、自分の不甲斐無さに悲しくなってくる。
「落ち込まなくていいよ、ぼくが首を突っ込んだだけだし。プレシアさんも、自分が何をしてるかちゃんと分かってたから」
「で、でも……」
「実際、これ以外は結構まともに生活できてる。ぼくの世界に興味ができたみたいで、よく話し相手になってるんだ」
 意外さに、フェイトは目を瞬かせた。
 あの母が、まともに話している。信じられない。
 そんな事ができるのは、フェイトの知る限り恩師のリニス位だ。
「本当?」
「ホントだよ。フェイトも聞きたい?」
「……うん、聞きたい」
 世界の大まかな話しか聞いていないから、細かい部分までは知らない。
 とても厳しい世界に住んでいたはずなのに、眼前の少年に悲壮感など影も形も見当たらない。
 知りたい。母に興味を持たせる程の世界とは、どんなものか。

 どれだけ凍えていても、熱気納まらぬ人の街並み。どれだけ暗くなっても、シティを良くしていこうとする為政者達。
 少年から伝えられる世界には、未来がまだ残っているように聞こえた。悪人がいないように聞こえた。

 その夜。睡魔に負けて途中で眠ってしまうまで、フェイトは異世界の話に聞き入り続けた。
 残酷な現実を、一切教えてもらうことなく。

250 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:01:09.84 ID:qPh5TydA
                   *

「っくしゅん!」
 オペレーター室に響き渡った小さなくしゃみの音に、クロノは思わず眉を顰めた。
 幼馴染のオペレーターが手を止め、隣に立つこちらを窺う。
「クロノ君、風邪? こないだ雨にうたれたから?」
「いや、それはないだろう。バリアジャケットは防水機能も付いている」
「なら、噂だね」
 悪戯っぽくエイミィは微笑み、
「リンディ提督に言われてるんじゃない? 『うちのクロノは愛想なくって』とか」
「……余計なお世話だ」
 しかめっ面を崩す事なく、内心でクロノは溜息を吐いた。
 先日の海上戦から、もう直ぐ一日。
 現在、上司は民間協力者――なのはの家を訪問し、直々に口裏合わせを行っている。
 しばらく話してからなのは達を自然に外し、本題へ入る事だろう。
 娘さんの事は、責任を持って我々が必ず保証します――と、そんな感じで。
 ここまで読める辺り、自分も母へ近付いただろうかとついつい自惚れてしまう。
 責任持つ者に慢心などあってはならない。気を引き締めなければ。
「でも、良かったの? なのはちゃんとフェイトちゃんを戦わせて」
 唐突なエイミィの疑問は、最もだと思う。自分も母も、基本的に理路整然を貫くタイプだ。
 特にクロノの場合、ギャンブルを許可する事自体が少々珍しい。
「元よりこうでもしないと、なのは自身が納得しないだろう」
 とはいえ、人の子である。情がない訳じゃないし、部下・同僚・上司の精神面を鑑みて行動するのはむしろ当然。
 故に、理由の一つとしてこれは挙がる。
「能力、人格ともに問題無いしね。リンディ提督がスカウトしたがる気持ちも、ちょっと分かる気がする」
 それを認識した上での判断と理解してくれたのか、エイミィが微笑んだ。

 エイミィの寝癖を直しつつ、似たような話題を二日後に行っているなど、二人は知る由もない。

「……問題は、彼女だ。そろそろ結果が来るんだろう?」
 次の瞬間、ただでさえ暗いオペレーター室が更に暗くなる感覚。
「うん……」
 もう一つ抱えている、一番身近で一番慎重に取り扱わねばならない問題。
 先程、とうとう大詰めに入った。

251 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:06:30.22 ID:qPh5TydA
 ――Please help her.
 決め手を作った情報提供者を思い出す。
 彼女はとっくに知っていた。それでも十日以上黙っていた。
 主の害となるか否か。情報を管理局へ伝えた場合、友人関係が破綻しないか。それらを全て見極める為に。
 事件が大きく動いた今になって、ようやく彼女は決断した。
 心を閉ざしている少女を、救いたいと。敵対する魔導師へ集中するしかない主の為、自分達で何とかするしかないと。
 他でもない彼女によって、賽が投げられたのだ。
「どう、なるのかな」
「母さんの交渉術次第、だな」
「伝えないとね。管理局が、セラちゃんの思っている程酷い所じゃないって」
「……ああ」
 管理局は、基本的にお人好しの多い組織だ。
 法を遵守し、犯罪者を取り締まる。性格審査も厳しく、他の職業と比べて間違いなく狭き門。
 上を目指す者達はいい意味で競争心も強く、真剣に未来を憂いている。
 しかし、内情はやはり“組織”だった。
 門は狭く規模が広い故の人材不足、実力主義故に配属の偏る魔導師達。
 事件を解決するためなら、多少法に触れる辺りは上も下も同じ。必要とあらば、嫌々ながら犯罪者と手を組む場面だって稀に存在する。
 守りたいものがあるならば、綺麗なままではいられない。絶対の正義など存在しない。
 不殺を貫ける力があっても、世界を何とかしたいと思う心があっても、覚悟なくして何も通りはしない。
 強く思い知らされて、それでもクロノは進むと決めた。
「ただ……事実を伝えても、どうするかは彼女次第だ」
 真実を知っても、セレスティ・E・クラインにとっては危険な組織なのかもしれない。
 こちらが心を開いても、少女は敵意を向けてくるかもしれない。
 善でも悪でもない、もしかしたら両方かもしれない。それでも、セレスティ・E・クラインを害するつもりはない。
 それを本人へ伝える事の、なんと難しい作業か。
 少なくとも、自他共に不器用と認める己に、その所業は向いていない。
 許されるのは、結末を見届ける事と、少女が暴走した場合に備える事。
 ……不甲斐ないな。
 仏頂面を深めて、俯いた。

252 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:12:11.68 ID:qPh5TydA
「クロノ君……」
 袖を掴む手の存在。本来の席からにしてはやけに近くで聞こえる声。
 思わず顔を向けようとして、本局からの通信を告げる電子音に硬直した。
「はーい、エイミィですけど?」
 振り返っても、操作卓を向いているオペレーター。
 気のせいか。いや、今はそんな事を考えている場合でもない。
『あ、エイミィ先輩! 本局メンテスタッフのマリーです! 例の件、結果出ました!』
 映ったのは、緑髪に眼鏡を掛けた白衣の少女――マリエル・アテンザの姿。
 とうとう、明るみに出たのだ。決定的な証拠が。

253 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:18:12.10 ID:qPh5TydA
                   *

 相も変わらず豪奢な廊下を、ディーは歩く。腫れた頬にはフェイトの手で湿布が張られている。
 向かう先は、プレシアの私室。
 先程、フェイトは出発した。次が恐らく最後の戦い。
 ――私に何かあったら、母さんをお願い。
 発つ直前、毅然とした表情で零した少女の言葉。
 脳裏に響くそれを無視して、プレシアの私室をノックする。
「入りなさい」
「失礼します」
 横に本棚、あちこちに書類の散らばった部屋。中央にはこちらと対面する為のデスクを備え、研究者然りの雰囲気で座すプレシアの姿。
 女王から研究者へと変わった辺り、最初の頃よりは関係が改善されたと言える。
 それでも、この女性が心を開く事は未だにない。
「……聞きたいことが、いくつかあります。よろしいですか?」
「答えられるものなら、ね」
 おそらく、自分とセラが帰還する期日の前後辺りが正念場。これが最後の状況確認となるだろう。
「次の戦闘が終わったら、ぼくはどうなりますか?」
「勝っても負けても管理局行きよ。あなたの役目は、それまでここを死守する事」
 この時点で、少女の願いは叶えられない事になる。フェイトの戦闘中に管理局がこちらへ突入する可能性は、限りなく低いのだから。
 余程のイレギュラーでもない限り、自分の出番はない。
「勝ち負けが関係ない、というのは?」
「どの道、フェイトの持っているジュエルシードを使うまでよ。物質転送で、奪われる前に引き戻すわ」
 必要数揃っていなくても、この大魔導師はアルハザードへ向かうらしい。管理局側の増援も見越しているようだ。
 そして敗北した場合、そのままフェイトを置き去りにするつもりである。
 今までフェイト達を連れていくとも置いていくとも言ってはいないものの、これまでの態度から考えて後者だろう。
 その位は容易に想像できる。
「本当に、こんなことまでして蘇らせたいんですか?」
 顔を顰めて、問う。そこまでする必要があるのかと。娘を捨てる価値があるのかと。

254 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:24:09.12 ID:qPh5TydA
「ええ」
「……後悔、しませんね?」
「誰に言ってるの?」
「……すみません、失言でした」
 少なくとも、覚悟は本物だ。確認したディーは、それ以上追及しなかった。
 誰を蘇らせたいのかは、知らない。娘……は、フェイトがいるから有り得ないだろう。
 その娘より大事なのだから、やはり夫だろうか。その程度の推測しかできない。
 フェイトがかわいそうだ。しかし自分はどうすればいい?
 少なくとも今は、見届けるしかない。
「戦闘になったら、ぼくも観戦していいでしょうか?」
「構わないわ」
 ありがとうございます、と返す。本心だった。
 戦闘に介入するのはアウト。封印状態のジュエルシードすら、自己領域に反応しかねないのだから、必然的に空戦不可=戦闘参加不可。
 観戦許可をもらえたのは、せめてもの僥倖だろう。もう時間がないのだから。
 今日はこれで、と言い残し、ディーは部屋を辞した。
 このままでは、後味の悪い結末が訪れる。そんな気がした。


255 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:30:05.53 ID:qPh5TydA
                   *

 海上戦から二日目。アースラのとある一室に、三人の影があった。
 金属製の床・壁・天井。出入り口側の椅子にセラが座り、反対側にリンディ。セラの後方、ドア近くの壁に寄り掛かるクロノは後見人。
 殺風景なその場所で、最後の尋問が行われていた。
「健康診断で発見した未知の器官、用途不明の所有物、所々に見られる不審行動……」
 一見すると楽な姿勢を取っているようにしか見えないクロノの右手には、待機状態のS2Uが握られている。
 述べる上司の台詞を聞き流しつつ、いつでも戦闘体勢へ移せるように身構え続けるのが、現状におけるクロノの役目である。
 少女は一言も口を開かない。後ろにいるクロノには、彼女の表情を窺い知る方法が存在しない。何を考えているかも不明である。
 その方がいいと判断したからこそ、セラの背後で構えている。
 顔を見ない分躊躇する可能性は減るし、距離をとる事で死角に侵入されない。相手の死角にいれば対処もされ難い。
 真正面かつ自分より距離の近いリンディの方が、明らかに危険である。
 しかし、“緊急時でも自分が何とかするまでなら凌ぎ切れるだろう”という、上司と部下だけでは築き切れない信頼関係が自分達にはあった。
 やがて、空間モニターが対面する二人の真横に出現。紅きデバイスのメンテ作業と並行して入手した、とある映像の一部始終である。
「そしてこの映像。レイジングハートさんが提案し、許可もいただきました」
 提督からの一方通行染みた説明が、遂に佳境へ突入した。ここからが決定的な証拠の提示であり、正念場。
 ……さあ、どう来る……?


256 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:36:27.69 ID:qPh5TydA
 既に着替え終わり、フェレット形態のユーノを背後から見つめるのは、現在モニターを見ているセレスティ・E・クライン本人。
 映像の少女は、何かを躊躇するように眉根を寄せる。
 次の瞬間。何もない空間から、次々と正八面の結晶体が現れたのだ。
 なのはとの念話に集中しているのだろう、ユーノは気付かない。
 十ある結晶体の一個がユーノの真後ろまで近寄り、何の反応も示さない事を確認して、画面の少女は一つ頷く。
 直後、画面内に存在する全ての宝石が溶けるように消えていく。
 ユーノの見ていないところで残ったのは、少女ただ一人。鞄に入っていた筈の宝石達は、影も形も既になし。
 そしてユーノが撮影者――レイジングハートを訝しげに見やったところで、映像は途切れた。

 深い沈黙が、場を支配した。
 誰がどんな思考を巡らしているのか不明瞭な空気の中、先に口を開いたのは少女だった。
「……なのはさん達は、どうしましたか?」
「レイジングハートさんに誤魔化されたので、この情報を知らないままあの子達は許可を降ろしました」
 そのデバイスがグルだったのだから、何とも言えない。
 ユーノはレイジングハートの様子から察してメンテナンスを提案しただけであり、内容は見ていない。
「なのはさん達は知らないまま、ですか……」
 その部分だけ拾ったセラは、どちらの意味で呟いたのだろうか。
 自分を止められる戦力が少ない事に。友達になった彼女達を巻き込まずに済んだ事に。
 知らない方がいい。今はまだ。希望的観測を、今だけは殺す。
「これから、どうするんですか?」
「あなたの話を聞いてから決める事にするわ」
「……わかりました」
 途端に居住まいを正し、
「その……隠しててごめんなさい、です」
 座ったまま、謝罪の礼をとった。

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/20(水) 11:40:52.77 ID:U/5jk8KV
支援

258 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:42:45.46 ID:qPh5TydA
「理由を、聞かせてもらえるかしら?」
 最初にこちらが知るべきは、やはり動機。ある程度予想はつくものの、確認を含めて本人からの証言が欲しかった。
「わたしやディーくんには、力があります。少なくとも、今のなのはさんの世界では手におえないくらいの力が」
 “ディー”も何らかの力を持っている事は想定していたので、問題はない。
「私達にも分かる例えでは?」
「わたしの場合、経験の方はなのはさんと数カ月程度しか違いがありません。けど……」
 多少言い淀んで、
「実際に戦ったら、たぶんわたしが勝っちゃうと思います」
 ここもほとんど想像通り。様子からして謙虚も慢心も見当たらない。
 短期間ながらも魔導師について調べてきたが故の、客観的自己評価であった。
「だから、危険だと?」
「はいです。なのはさんの世界どころか、ミッドチルダでも」
「具体的には?」
「……きっと、戦争になります」
 やはり、賢い子だ。今まで発言の端々でわずかに漂っていたぎこちなさも、全く見えない。
 根が善人である事は、これまでの言動でも明確。念話で短く確認も取る。
(提督)
(ええ。決定ね)
 ここまで追い詰められて反抗するつもりがないなら、もう危険視する必要はないだろう。
 少なくとも、判決を下して本格的に身の危険を感じるまで、少女に力を使うつもりがないと、たった今証明されたのだ。
「あなたの処遇を決定します」
 だからこそ、これ以上苦しめる訳にはいかない。
 怯えるように肩を縮め、きつく両目を瞑っているのだろう少女の心を、解き放つ。
「結論から言うと……不問です」
「……え?」
 きっかり二秒経ってから顔を上げるセラの顔は、背後からでも容易に想像がつく。
 呆然と目を瞬かせているだろう。
「魔力を感知できないその特殊な力を、その世界では危険な代物と判断し、秘匿した行動は評価に値します」
 安全な世界へ来たのなら、その強大な力をもって思うように過ごせる筈だ。管理局の存在を知らないなら尚更。
 使えば戦争に繋がるから。自覚はないのだろうが、そう確信している時点で、己の実力に自信がある何よりの証拠である。
「半月にも満たない期間でしたが、把握した貴女の人格から、あくまで自己保身の為である事も分かりました」
 しかし少女は力を振るわなかった。その気になれば助けられる人が目の前にいても、諸々の事情で介入できず傍観する事がどれだけ苦しいか。

259 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:48:12.32 ID:qPh5TydA
「こちらへ危害を加える意思がない以上、誤解を解く為にも話し合い、友好的な関係を築くべきと考えました」
「い、いいんですか?」
「いいも何も、お互いのために必要と思ったの」
 うろたえるセラへ微笑むリンディ。管理局員としてではなく、一人の母親としての顔だ。
「で、でも!」
「もういいのよ、無理しなくても。話して不利になる事柄は殆どないのでしょう?」
 隠していた事自体が責める所であって、他は関係ない。このまま艦内に不穏分子を残すよりは余程いい。
 しかし彼女は納得しなかった。
「そんなことありません!」
 両眉を吊り上げ、少女は勢いよく立ちあがる。今まで決して強く出ることのなかったセラの意外な挙動に、二人は眼を見開く。
 なのは以外には誰からも一歩引いて接し、時になのはを諭してすらいたセラの、子供としての一面。
 ただ一人事情を知らないなのはと接している時にしか見せなかった、セレスティ・E・クライン個人の感情が露呈したのだ。
「わたしのおかあさんは、わたしのためにたくさんの人をころした犯罪者なんですよ――?」
 わずかな逡巡を諸共に吐き出したのだろう発言は、クロノを驚かせるに十分値する内容であった。
 間違いなくセラの素行は悪くない。その母親が大量殺人者と聞けば、その分耳を疑う。
 隠している部分を差し引いても、セラの世界は過酷だ。犯罪が横行していてもなんらおかしくはない。
 背後のクロノは僅かに怯む。対するリンディは、引き締めた口を開く。
「犯罪を犯したのはあなたの母親です。あなた自身が何もしていないのでしたら、あなたに罪を被せることのできる法律を時空管理局は持ち合わせていません」
 事実だ。母親が犯罪者でも、その子供にまで法に掛ける事はない。まして本人が犯罪を起こしていないなら、尚更。
 しかし何より注目すべきは、驚愕の真実を聞かされても間を開けずに返答するリンディの姿勢だ。
「わたしは同じように能力をもってる人たちと違って、おかあさんの遺伝でこの力をもったまま生まれてきた世界でもものすごく珍しい実験サンプルで、世界中からねらわれてるんですよ――?」
「あなたの持つそれは倫理的にも多大な問題を孕む為、実験動物扱いすることは絶対にありません!」
 これで即座に言い返すとは、ここまで予想していたのだろうか――否、動揺はしている。

260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/20(水) 11:50:13.61 ID:U/5jk8KV
懐かしい人に、支援

261 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 11:54:27.36 ID:qPh5TydA
 普段なら表に出してしまうような驚愕を、己の意思で無理やり抑え込んでいるのだ。
 少女のぶつけるような言の葉に、少しの間も開けずして返すために。
 これまで少女が抱えてきた不安を、余すことなく受け止めるために。
 目の前で涙を浮かべる、周りに沢山の人がいながら何も打ち明けられずに一人ぼっちだった少女を、この世界でだけは決して犯罪者としないために。
 まさしく執念であった。
「ディーくんも犯罪者で、わたしのために何百人も人をころしてて、わたしとディーくんは世界に向けて宣戦布告したテロリストの一員なんですよ――?」
「未確認の世界で起こした犯罪を取り締まる法律なんて、この世のどこにもありはしません――!」
 何もしていない、何の罪も犯していない少女を罰するなど、外道の諸行。
 時空管理局は、セレスティ・E・クラインを受け入れる。受け入れてみせる。
「けど! けど……!」
「いいのよ。もう、背負い込まなくていいから……」
 尚も言いつのり、しかし言葉が浮かばず俯くセラを、席を立ったリンディが優しく抱き締める。
 きっとこの少女は、守られながら生きてきたのだろう。
 それがどれだけ血に染まったものであっても、生きる他なかったのだろう。
「ごめんなさいね……とても辛かったのでしょう?」
「わたし……わたし……」
 眼尻に涙を浮かべたリンディの胸の中、とうとうセラが嗚咽を漏らした。
「ごめんなさい……本当にごめんなさいね……」
 悲鳴をあげていた少女の心が、ようやく開かれたのだ。


262 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 12:00:23.28 ID:qPh5TydA
                   *

「その……済まなかった。ここまで君を追い詰めていたとは」
 背後からリンディの隣へ移動したクロノが、真っ先に謝罪を口にした。
 暫くして泣き止んだセラは、元の席に座って落ち着いている。
「えぇっと、本当ですよね? 解剖とか、実験とかしないんですよね?」
「本当です、そしてやりません」
 親子揃って苦笑している。危険視されていた事に内心複雑のようだ。
 聞けば、生命操作を始めとした倫理的に問題のある技術は、公式で禁忌とされているらしい。
 魔導師について調べてばかりいた分、管理局法に一切目を付けていなかった。だからこそ起きてしまった、些細な誤解。
 もう、管理局を恐れる必要はない。深く深く、セラは安堵の溜息を吐いた。
 ……どうなるかと思いました……
 最悪、誰かを人質にとって地球へ転送してもらう辺りまでは考えていた。
 色々と穴はあるし難しいと分かっていても、セラにはその位しか思いつかなかった。
 何にせよ、万事丸く収まったのは非常にいい事だ。無意識に張っていた体中の筋肉が緩んだ気がする。
 前方二名の視線が生暖かいものになっているのは何故だろう。それよりもセラには第二第三の問題が残っていた。
 この世界の誰にもまだ話していない、魔法士及びマザー関係。現状、もう長くは隠せない。
 問題は話す機会なのだが、先程逸してしまった。次があるとすれば、事件の後だろうか。
「さて、あなたは今後どうするの? 事件解決に協力してくれるなら、民間協力者としてこちらで手配はできるようにしてあるけれど」
「……え?」
「艦長――?」
 とにかく周りが落ち着いてから話そうと結論付けた直後、リンディからの提案で我に返る。
 執務官も驚いた辺り、事前に知らされてはいないようだ。
「私としては最初から予定に入れていたの。なのはさんより強いのでしょう?」
「……もしかして、わたしに事件の情報を教えていたのって」
「例え敵対しても、そうすれば事件の危険性を考えて余計な干渉はしないでしょう?」

263 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 12:06:12.17 ID:qPh5TydA
 ジュエルシードの暴走と、プレシア・テスタロッサ。
 双方の予測不可能な行動を考えれば、唯一の避難先である地球を壊されないためにも配慮はしてくれる。
 セラの性格からそこまで考えていたのだろう。にこにこと擬音のつきそうな笑顔は、上機嫌そのものである。
 リンディの言う通り、自分にデメリットなんて一つもない。ないのだが。
 ……真昼さんみたいです。
 してやられたという気分になってしまうのは、気のせいじゃないかもしれない。
 今度は別の意味で溜息が漏れた。しかも執務官とシンクロで。
「話を戻しますけれど、戦闘はできるのですね?」
「確かに戦闘だけなら、皆さんのお手伝いができるかもしれません。今さらですけど、ジュエルシードは封印できませんし」
 封印どころか近寄れない。ジュエルシードの近くで戦闘など勘弁してほしい。
 と、ここで唐突に電子音。リンディの傍らで空間モニターが発生し、エイミィの顔が映る。
『――艦長、宜しいでしょうか』
「どうしたの、エイミィ? ……覗き見はよくないわよ」
『すいません、心配だったもので』
 よくよく眼を凝らすと、両の眼じりに涙の跡が見える。
 一部始終を見届け、もらい泣きしたらしい。今頃になってセラの顔が温度を上げた。
「それで、用件は?」
『なのはちゃん達から連絡です。“フェイト・テスタロッサの使い魔らしき大型犬を、友人が拾った”と』
「アルフさん、ですか……?」
 突拍子もない出来事に、思わず声を上げる。何故ここであの使い魔なのか。

264 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 12:15:45.24 ID:qPh5TydA
『聞いた特徴からして、まず間違いないそうです。怪我をしているらしく、丁重に保護されているとか』
 あのプレシア・テスタロッサの事だ。向こうで一騒動あったと考えるべきなのだろう。
「使い魔との会話は可能か?」
『学校が終わった後に、二人が直接向かうって』
「わかった。それじゃあ――」
 的確に指示を出すクロノを横目に、セラとリンディは顔を見合わせる。
「事件も大詰めのようね」
「はいです」
 ここからは、腹の探り合いではない。事件解決への円満な交渉だ。
「とりあえず、経緯やまだ隠している事は後にしましょう。――まずは」
 直後、リンディの目つきが鋭く変わる。
 初めて見た敏腕提督としての顔に、セラも気持ちを切り替える。
「あなたに何ができるのか。その力で何をしたいのか……教えてちょうだい」




 そんな数日間を終えて、五月十日の午前一時十三分がやってくる。
 強制帰還まで、二十四時間を切った。


265 :LB ◆ErlyzB/5oA :2011/07/20(水) 12:16:59.38 ID:qPh5TydA
投下終了。

二章から立ちっ放しだったフラグ、これにて回収。あの頃からこのつもりでした。

(この文章は蜂の巣にされました)
(この文章は情報解体されました)

あと、投下中に誤字発見。プラネアリウムじゃないだろプラネタリウムだろと(ry
以上。

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/20(水) 19:31:49.47 ID:c5tIpKd7
おおおお!GJ!
続きキター!

267 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:47:10.36 ID:licPaM16
 更新が遅くなってしまって申し訳ありません、FEです。
 16章の投下を行いますが、スレが規制されて以来なかなか自分で投稿していないため、
 1レスあたりの文章が凄く少ないです。申し訳無いです。それでは、投下します。

268 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:49:54.63 ID:licPaM16
夢を、見た。
 今までのようにトラウマにとらわれた夢ではなかった。
 それは、見ている者からすればほほえましくなるほどの平凡な夢。

 朝起きて、家族と共に過ごして、笑いあい、生きていく。

 そんな、普通とも言える幸せな夢。
 だが、彼は知っていた。本来の自分には、そのような甘い幸せが訪れないことも、訪れてはいけないことも。
 夢の中で、笑いながら過ごしている自分を見つめながら思う。

―――本当だったら、こんな風に過ごしていたのかもな―――
 常人とはかけ離れた生活を送り、常に生死の境を彷徨うような戦場にいた。
 もし、俺に戦いが無かったら。もし、俺が傭兵では無ければ。
 こんな生活を送っていたのかもしれない。

 だが、今の彼は戦いの意味を知ってしまっていた。
 いまさら、こんな幸せにありつこうとは思わない。何故なら、
「俺は、殺人者だからな――――――――――」

 第16章「再開する勇者達」


 久しぶりに寝覚めが良かったので、アイクは一人で河原に向かっていた。
「…平和、だな。」
 アイクは昇りつつある朝日を見ながら一人、呟く。
 それは、何とも美しい景色。
 彼は戦うことを決意してから、どれほどこの景色を見たのだろうか。
 戦いの間でこういった景色を見ることはあっても、何も考えずにこの景色を見るのは初めてではないだろうか。

 ふと、黒い気持ちが流れ込んできた。

269 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:51:55.30 ID:licPaM16
オマエハ夢ノ中デミタ、アノヨウナ家族ヲイクツモ破壊シタ。
――黙れ
イマサラ、平和ヲ夢ミタトコロデ、オマエハ幸セニナル権利ガアルノカ?
――…黙れ
ソウダ。オマエノ居場所ナド、戦場シカナイ。
平和ナド、所詮幻想ニスギナイ。ソンナ下ラナイ物ノ為ニ、己ノ剣ヲ振ルウノカ?
――確かに、平和は幻想だ。だが、それを実現させようと頑張るのが俺たちだ。
オマエハドウダ?ソレデ満足カ?
――どういう意味だ?
オマエハ戦イヲ求メテル。ソウダロウ?
無用ナ戦イハ避ケナガラモ、敵ト対峙シタ時ニハ容赦ハシナイ。
ソレハ、ツマラナイ戦イハシタクナイト言ウコトダロウ?
――…
ソウダ。我慢ヲスルナ。罪ナドキニスルナ。タダ、戦イヲ求メテ―――

 そこで、アイクは思考を打ち切った。これ以上考えたら、自分が自分ではなくなるだろうと思ったから。
 
暫くして、アイクはようやく自分の姿に気づく。
先ほどの心の対話で強い恐怖がにじみ出ていたのか、彼の体は汗だらけだった。

「戦いを求めている、か…」
 否定ができない。
 確かに、彼は強者を求めている。平和という幻想など望んでいない。
 だが、一つだけ間違っている物がある。

「罪は、償うべきだ…例え、神が許しても、罰が恐くても―――――」

 俺の犯した罪は、消えないのだから――――


270 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:55:10.44 ID:licPaM16
「あの…セフェランさん。ここは、何処、でしょうか…」
 ペレアスがおずおずと口を開く。無理もない。
 誰だって、見ず知らずの場所にいきなり飛ばされたら同じことを思うだろう。
 そもそも、ここは彼等からすれば「異世界」だ。
 誰に聞いても仕方がないのだが、それでも聴かずにいられないのが人間の性である。
「すみませんが、私も分かりません。ですが、ここまで科学が発展している世界ならば、地図の類のものは探せば出てくるでしょう。」
 そう言ってセフェランは目の前の光景を見渡す。
 走る自動車に、信号。高層ビルや、その他もろもろ。
 ペレアス達にとって、カルチャーショックを受けざるを得ない光景だった。
「しかし…科学はここまで発展できるのか…」
 ショックを隠しきれない表情でニケがつぶやく。
 アイク達の世界ではどちらかと言うと魔法が発展してきた世界だ。
 いや、魔法を使わず、魔法の様なことができる、と言った方が的確か。
「ニケさん、できればオオカミのお姿でいてください。町中に耳や尻尾をはやした人は奇異の目を向けられますよ。」
「それもそうだな」
 ニケは機嫌を損ねたそぶりを見せず、オオカミの姿に変わる。
 彼女はいまだに「王者」であるため、化身に精神集中はいらないのだ。
 だが、セフェラン達も各々の姿をよく見るべきであった。
 マントを着て魔道書をもつ男と、見るからに優しそうな司祭。そして、剣を持ち歩く袴姿のイケメンな剣豪、そしてオオカミ一匹。
 …彼らはそのまま街を出歩き、警察官に任意同行を求められたのだった。

271 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:57:11.64 ID:licPaM16
「はーい、じゃ、朝の訓練始めるよー。今回は、ライトニング&スターズ対アイク達とギンガの模擬戦。これから10分後に始めるから、各自、用意は整えてね。」
「「「「はい!」」」」

「アイクさん、よろしく!」
「ああ」
「よろしくお願いします。」
………たったそれだけの自己紹介。ある意味、彼ららしいといえば、彼ららしい。
「では、今回の作戦を言います。ギンガさんは…」
 セネリオが切り出す。今回の模擬戦も退屈しなさそうだと、アイクはひそかに思った。


「じゃ、いくよ。模擬戦…」
 スタート、という直前で通信が入る。
『なのはさん、フェイトさん!!旧市街地にガジェットドローンV型、30機が出現!!直ちにスターズとライトニング隊をつれて現場に急行してください!!』
「「了解!」」
 その通信を受けて全員が用意を始める。

 この時からすでに、終焉へと向かう歯車は回りだしていた。もう、すでに止まらない。
 行きつく先は滅亡か、それとも別の終わりか。
 少なくとも、今この時は彼らがそれを知ることはなかった。

272 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 21:59:14.53 ID:licPaM16
「!!」
「どうした、セフェラン。」
「何かの気配を感じます。恐らくは、先日戦ったあの機械か、その類か。」
「何にしても、こ奴らをどうにかせねばその場に行けぬぞ。」
「ちょっと、何を話してるか知らないけど…」
 言いかける警察官の目の前にセフェランが杖を突き付ける。
 次の旬がん、警察官な音もなく倒れ伏した。
「ソーンバルケさん、何か言いました?」
「セフェランさん、法律スレスレじゃないですか?…」
 セフェランがスリープの杖で眠らせた警察官をかわいそうに見つめるセフェラン。
 先ほどの警察官から聞いた話では、「公務執行妨害」とか言っただろうか。
「さあ、余談はここで終わりです。行きますよ。」
 さっき押収された武器類を取り返し、セフェランについていく二人と一匹。
 その向かう先は、地図によると旧市街地。
 その先にはアイク達がいるのだが、今の彼らには知るすべはなかった。


「アイクさん、伏せて!」
「ッ!!」
 ティアナとアイクがコンビネーションを駆使して確実に敵を撃破していく。
「あの二人、すごくいいコンビネーションね…」
「そりゃそうだよ!!だって、もうこの隊の中では公認カップルだもん」
「確かに…でも、アイクさんはティアナの気持ちに気付いているのかしら?」
「…そこが問題なんだよね〜。アイクさんは心の機微には凄く鋭いくせに、恋愛に関しては驚くほど鈍いんだもん。」

273 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 22:01:15.64 ID:licPaM16
 スバルとギンガがお互いに背中を預けながらしゃべりあう。
 仮にも、ここは戦場なのでそう言った油断は危険極まりないのだが、残りはアイクとティアナが相手にしている3体のみ。
「ハァッ!」
 大きな声がしたかと思うと、残りの3体が一気に爆発して飛び散る。
「いや〜突然だったから何があったかと思ったけど、行ってみれば大したことは―――」
「ッ!スバル、後ろ!!」
 安心したようなスバルの背後から2体のガジェットが飛び出てきた。
 スバルはそれに気づくには遅すぎた。
「!!」
 それに気づいて振り向いたが、それはすでに攻撃態勢に入っていた。
 とっさに防御魔法を展開したとしても間に合わないだろう。
 激痛を覚悟して、スバルは目を瞑る。

 いつまでたってもその痛みがやってこないことを変に思い、そっと目を開ける。
 ガジェットはその場から1ミリも動いていなかった。いや、動くことができなかった。
 スバルは遅れて、そのガジェットに横一文字に切れ目が入っていたことに気がついた。
 真っ二つにされたがジェットが少しずつスライドして向こう側にいた人が見えてくる。
 そこには、緑の髪をした袴姿の剣士が立っていた。
「どうして…お前が…」
 アイクが絶句する。

「ソーンバルケ、なぜお前がここにいる!?」
「アイク、その話は後だ。今はこいつらを斬るのが先だ。」
 ソーンバルケは言いながらも、獲物を見定めてヴァーグ・カティを構える。
 そんな彼らにガジェットは何も考えずに突っ込んでくる。
 だが、この二人に挑むこと自体がこの兵器にとっては運の尽きだった。
 ガジェットは音もなく、二人によって複数の塊に変えられた。
「私に挑むというのなら、剣の腕で勝負願いたいものだな。」
「フッ、お前に勝てる奴なんて数えるくらいしかいないだろう。」

274 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 22:03:17.60 ID:licPaM16
 軽口をたたきあい、何事もなかったかのように剣を鞘に納める。
「あの、アイクさん。そちらの方は…」
「紹介が遅れた。剣聖のソーンバルケ。まぁ、…あちらの世界で彼とともに戦った仲だ。」
「さっきも聞いたが、なぜお前はここに…」
 言いかけた時に、後ろの建物の陰から気配を感じ、振り返る
 そこには。
「久しぶりだな、アイク。剣の腕は衰えては無いようだな?」
「…アイク、久しぶりですね。」
「えっと、お久しぶりです、アイクさん!」
 ニケ、セフェラン、ペレアスが陰から姿を現す。
 本来ここにいるべきではない人物が4人もいることにアイクもセネリオも驚きのあまり、言葉を失っている。
 そんな中、おずおずとティアナが切り出す。
「あの…立ち話も何なので、六課で話を聞いてみませんか?」


 ここは闇の中。
 その中でゆらりと蠢く影があった。
「彼等も来たか…」
 ゼルギウスは手にかけたエタルドから手を離し、呟く。
 その視線の先には、アイク、ニケ、セネリオ、、ソーンバルケ、ペレアス、そしてセフェランがいた。
「あの方も来るとは思わなかった…だが、これで。」
―――私の目的が果たせる。スカリエッティにも伝えたあのことを、彼にも伝えれば。
「全ては、女神のため…か。私にとってはさしずめ、もう一度「死ぬ」ためか。」
 この計画はしくじってはならない。もし失敗すれば、少なくとも2つの世界が「奴ら」の手に落ちる。
 そうなったら、誰も「奴ら」を止めることはできない。
「支配欲に取りつかれた愚かな者どもに世界を握られるくらいなら、私は。」
―――我が身の破滅と引き換えに、この世界を束縛から解き放つ。

 ゼルギウスは身を翻し、一度は光に染まりかけた心を無理やり闇に沈め、影の中へと戻って行った。

275 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 22:05:20.14 ID:licPaM16
「それで、この人たちがアイク達の世界から来た人たちなんやな?」
 執務室にてアイク達一同がはやてと向き合う。
「そうです。私たちは女神の意思により、この世界にやってきました。そして、ある重要なことを伝えに来ました。」
 そう言って、セフェランは表情を引き締める。
 次の瞬間、その場にいる人たちからは考えられない言葉を発した。

「そう遠くないうちに、私の世界とあなた方の世界の、戦争が始まります。」




To be continued……

276 :FE ◆GNWCFdnKG2zU :2011/07/20(水) 22:07:34.72 ID:licPaM16
 以上で投下終了です。
 長い間投下してなかったので、1話投下するのに時間がかかって仕方がありません。
 とはいっても、僕自身のせいなのでこつこつと頑張っていきます。
 アドバイスがあれば、遠慮なく言ってください。感想等、待ってます。

277 :一尉:2011/07/20(水) 22:22:06.47 ID:PmSCqVq8
支援

278 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 07:06:00.21 ID:S1JDnBtx
職人の皆様、投下乙です!

>Gulftown 氏
うむむ……何やらとてつもない車のようですね、悪魔のZ
これを乗る彼女が無事でいられるのか、とても続きが気になりますね。

>◆e4ZoADcJ/6 氏
百合大戦、完結おめでとうございます!
ついに百合ショッカーを打ち破り、ディケイドも次の世界に向かうのですか……
そして大好きなプリキュアに否定された鳴滝さんは、ご愁傷様です……
あと、カオルちゃんがチョイ役ながらも出てきたのには、思わずニヤリときましたw
次の作品も、頑張ってください!

>LB氏
お久しぶりです。
ああ、リンディさんがマジで女神ですね……
この人なら、これからセラが立ち直らせてくれそうですね、本当に

>FE氏
セフェランさんやソーンバルケさん達が登場ですか!
しかも、FE世界とミッドで戦争が起こりそうとは……今後も気になりますね


それでは自分も、この後9時より投下予告をします。
そして注意事項として、アインハルトファンの方々は『刑事』をNGワードにすることを
オススメします。

279 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 08:56:57.20 ID:S1JDnBtx
そろそろ時間なので、投下を開始します
エ、エ、SS読むときは、部屋明るくして離れて見てね♪



 次元世界の中心、ミッドチルダ。
 魔法が発達した世界であり、数多の次元世界を守るための組織である時空管理局が、存在する世界でもある。
 新暦79年。人々は変わらぬ平和を過ごしていたかのように思えた。
 だがしかし、この世界で小さな事件が起きている。ある日突如として現れた、ハイディ・E・S・イングヴァルトと名乗る謎の人物。
 毎晩、イングヴァルトは格闘技の有段者達を襲撃しているという自体が多発している。幸いにも事件扱いにはなっていないが、時空管理局としても黙って見ているわけにはいかない。
 実際操作の手を広めたが、イングヴァルトが発見されたという例はゼロ。被害は拡大する一方。
 そこで時空管理局は、この事態に対して異世界に存在するスーパーポリスマンに協力を要請した。
 特殊刑事課と呼ばれる、ハードで最強の男達に。





 その晩は、人通りの少ない街路が月明かりに照らされていた。
 夜空は二つの満月と肉眼でも見える惑星、及び無数の星々で輝いている。全てが、まるで芸術品のように美しかった。
 それらの下では、本来平和な静けさに包まれているかもしれない。

「ぐああああぁぁぁぁぁっ!?」

 しかし、それを打ち破る絶叫が響く。
 声の主である男は、勢いよく壁に叩き付けられた。体格は筋骨隆々としており、一流の武道家であるという雰囲気を醸し出している。
 だがそんな彼が破れた。目の前に立つ、一人の少女によって。
 その顔立ちは端整なフランス人形のように整っており、美しかった。普段、それを隠している筈のバイザーは、足元に転がっている。
 赤いリボンで二つに纏められている、腰に届くほどの長さを持つ明るい緑色の髪。年相応の体を包む白と緑を基調としたバリアジャケットと、しなやかな脚部に履かれた白いソックス。


280 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 08:58:09.89 ID:S1JDnBtx

「えっ……!?」
「お前か」

 目の前に立つのは、一人の男。
 鷹のように鋭い瞳を、アインハルトに向けていた。二つの目からは凄まじい威圧感が放たれていて、凄腕だろうと震え上がらせてしまうような雰囲気を放つ。
 だがしかし、アインハルトはそこに気を向けていなかった。現れた男の格好が、あまりにも有り得なかったため。
 オールバックの黒髪、太い眉毛、赤と黒の二色を持つネクタイ、右手首に巻かれた時計、右肩と左足に付けられた拳銃のホルダー、二足の革靴。ここまでは普通かもしれなかった。
 問題なのは、男の筋肉が露わになっていた事。筋骨隆々としており、無駄な脂肪が一切見られない。見るだけで、強者である事を窺わせる。
 だが、それがまるで隠されていなかった。男が身に纏っているのは「きたの」と名前が書かれた、黒い海パンのみ。
 小学生がプールの授業で履くような代物で、男から感じられる厳格な雰囲気とはまるで合っていなかった。しかも、異常なまでに股間がモッコリとしている。
 この男は変態。それが、アインハルトが抱いた第一印象だった。

「ここ最近、格闘技の有段者達を次々に襲っている、ハイディ・E・S・イングヴァルトとは」

 その異様さにアインハルトが呆然としていると、男は口を開く。その声には凄みがあり、瞳と同じく圧倒的な迫力が感じられた。
 しかしアインハルトは、蹴落とされずに構える。

「……貴方は、一体何者ですか」
「質問をしているのは私だ。イングヴァルトとはお前の事か?」
「否定はしません」

 そして、彼女は男の問いかけに淡々と答えた。
 目の前に現れたのは、新たなる敵。しかも、全く知らない相手だ。海パン一丁で戦う男など、聞いた事がない。
 だが何者だろうと自分と戦うのであれば、それ相応の礼儀で答えなければならない。
 進む道の果てに待つ、覇王の悲願を果たすために。

「やはりそうか……ならば、これ以上罪のない人々を傷つけさせるわけにはいかん」
「そうですか……でも、私も負けるわけにはいきません」
「ほう、ならばどうするつもりだ?」
「決まっています」

 言葉と共に、アインハルトは姿勢を低くする。そして、勢いよく跳躍した。
 夜の冷たい空気が、大きく振動する音を耳にする。そのまま、弾丸の如く突進した彼女と男の距離は縮む。
 神速と呼ぶに相応しい動きの中、アインハルトは腰を勢いよく回す。男との距離が零になった瞬間、左の拳を放った。
 空気を裂くような勢いで、男の顔面に叩き付けようとする。今まで数え切れないほど、屈強な男達を倒してきた自慢の拳。
 今回も同じように、現れた変な男を叩き潰す!
 しかし、アインハルトのそんな思いは届かなかった。固く握った拳が当たろうとした瞬間、男は首を僅かに横へずらす。
 それだけで、打撃を回避したのだ。アインハルトは微かに驚愕を感じながらも、二発目を放つ。だが男は頭部を傾けるだけで、またしても呆気なく避けた。
 アインハルトは攻撃の目的を変える為に視線を下へ移して、脇腹にフックを放つ。しかし男が体制を横にずらした事で、空振りに終わった。
 彼女は矢継ぎ早に、四肢をフル活用して拳や蹴りを数え切れないほど振るう。だがその全てが、男に掠りさえもしなかった。
 一発一発をこちらが放つ速度より、上の動きで避けている。

「まて、落ち着くんだ」
「くっ!」

 攻撃を躱す男は呟くが、そんな事を聞くつもりは無い。アインハルトは敵を倒すことだけを一心に、攻撃を続ける。
 鍛えられた脇腹に蹴りを放つが、またしても避けられた。裏拳や手刀も、全力を込めて放つ。
 しかし一向に当たる事は無く、夜風が震える音だけが響いた。それを耳にして、彼女の中で焦りが生まれていってしまう。
 それなりに拮抗する相手と巡り会った事はあるが、これ程のフットワークを誇る戦士など知らない。
 恐らく、純粋な身体能力なら自分を凌駕するだろう。認めたくないが、そこには純粋に敬意を感じなければならない。
 だからといって、負けるつもりなど毛頭無かった。

281 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 08:59:19.17 ID:S1JDnBtx

「やああぁぁぁぁぁっ!」

 気合いの声と共に、鋭いストレートの一撃を放つ。しかし、避けられるという結果が変わる事はない。
 このままではラチがあかないと思い、彼女は一旦背後に飛んだ。それによって、アインハルトと男の距離が数歩分開く。
 後ろに下がった彼女の息は、乱れていた。予想外の動きを見せる相手にペースが崩され、動きの中に焦りが生じた故。
 それとは対照的に、目の前の男は平然と佇んでいる。それにアインハルトは苛立ちを感じ、怒りで表情を顰めた。

「なるほど、なかなかキレのある拳と蹴りだな」

 互いの目線がぶつかり合い、夜風だけが聞こえる中。突如、男が静かに呟く。

「どうやらただの通り魔ではなさそうだな……お前の一撃からは、信念が感じられる」
「そうですか……貴方こそ、一筋縄ではいきませんね」
「だが、無駄な戦いは止めるんだ。こんな事を続けていても、無意味だ」
「貴方にとっては、そうかもしれません。ですが、私にとっては大いにあります」

 その瞬間、アインハルトは身体の底に力を込めた。
 この男は、やはり圧倒的強さを誇っている。これまで倒してきた男達など、まるで比較にならないほど。
 このまままともに戦っても、勝てる見込みは薄い。

「……どうやら、このままでは貴方に勝てそうにありません。貴方はそれほどまでに強い」
「ほう」
「ならば、私は私の全てを出して、貴方を打ち破ります」

 冷たい一言と共に、アインハルトは魔力を開放。一瞬で拳に流れ、闇を切り裂く輝きを放つ。
 それは彼女が、これまで数多くの勝利を得るために繰り出した最大の奥義。
 先祖代々より伝わる、覇王の強い血を持つ者だけが扱う事を許される必殺技。
 魔力の光に目をくらまされたのか、男の瞼が少しだけ狭まるのが見える。それを好機と察して、アインハルトは地面を蹴った。

「むっ!?」
「覇王――」

 弾丸をも上回る速度で、彼女は疾走する。己が信じる名前を、大きく告げながら。
 自分の力を、全てを拳に込めてアインハルトは走る。目の前の敵を倒し、自分が上である事を証明するために。そして、覇王が最強である事を証明するために。
 それが今の自分の、存在理由だから!

「――断空拳ッ!」

 やがて男の目前にまで迫った瞬間、アインハルトは拳を繰り出した。それは引き締まった筋肉に容赦なく叩き付けられ、凄まじい衝撃を生む。
 男の身体は吹き飛び、雷のように盛大な轟音を鳴らして夜の闇を揺らした。大量の粉塵が沸き上がり、冷たい風によって広がっていく。
 手応えは、確実にあった。この技は今まで戦った全ての者を倒してきたのだから、当然。
 そう思った瞬間、彼女の膝は一気に崩れて地面に落ちる。いくら勝ったとはいえ、最後まで得体の知れない男だった。もしもこれ以上関わっていたら、自分の中の何かが壊れていたかもしれない。
 だが、もう終わった事だ。何よりもあんな男なんか、これ以上思い出したくない。
 今日は早く帰って、体を休めよう。勝利を確信したアインハルトは立ち上がり、その場を立ち去ろうとした。

「フフフハハハ……なるほどな」

 その直後、あの声が聞こえてくる。
アインハルトはそれに反応して、反射的に振り向く。見ると、粉塵の中からゆっくりと立ち上がってきた。先程断空拳を叩きつけたはずの、男が。
 その顔に浮かべている不敵な笑みを見て、アインハルトは戦慄する。あの技を受けて立ち上がる者がいる事が、信じられなかった為。
 男が叩きつけられた地面のアスファルトは陥没しているから、確実に食らっていた筈。だが、男の身体に見えるのは僅かな砂埃のみ。
 傷なんてものは、まるで見えなかった。

282 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:04:12.36 ID:S1JDnBtx
「う、嘘……!?」
「良い技だ、まさか我が汚野家秘伝のオイルを塗ったこの身体を吹き飛ばすとは……やはりお前の力は本物のようだな」

 あの一撃を受けたのにも関わらず、眼光と声からは未だに強い覇気が感じられる。それを向けられて、アインハルトは一瞬だけ震えた。
 まるで蛇に睨まれた蛙のように。アインハルトはそんな今の自分に気づくと、すぐに抱いた恐怖を振り払った。
 そして、男を睨み返す。

「貴方は……貴方は一体何者なんですか!?」
「そういえば、私としたことがまだ名乗っていなかったようだな」

 アインハルトが疑問を叫ぶと、男は歩みを止めた。

「股間のモッコリ伊達じゃない!」
「っ!?」
「陸に事件が起きたとき、海パン一つで全て解決!」

 そして、胸を堂々と張りながら叫びだす。異様な行動に、アインハルトは目を見開いた。そんな彼女のことなど構いもせず、男は言葉を続ける。

「特殊刑事課三羽烏の一人!」

 やがて、悠然とした態度で力強く名乗りを上げた。
 その男は、アインハルトが知らない世界から現れた、特殊刑事課と呼ばれるエリート刑事集団の一員。警視庁では警部補の位を持ち、特殊刑事課会員番号1番に任命された男の名は、汚野たけし。
 そしてもう一つ、人々を守ると決意した際に背負った名前がある。その名は――

「海パン刑事だあっ!」

 男は圧倒的な威圧感を込めながら、海パン刑事の名前を大きく告げた。声に含まれた物を感じて、アインハルトは確信した。
 海パン刑事と名乗ったこの男は、やはりとんでもない変態。それでいて、とんでもない強さを持つ戦士だ。断空拳を受けても尚、立ち上がるのだから間違いない。
 しかしそれでこそ、身体に流れる覇王の血が熱くなる。これほどの強者と戦えるのだから、喜ばないわけが無い。
 アインハルトの感情は徐々に高ぶっていく、その最中だった。突如、ピピピと軽い音が鳴り響く。
 海パン刑事は身に付ける腕時計に目を移して、脇のスイッチを押してアラームを止めた。突然の出来事にアインハルトが怪訝な表情を浮かべる中、海パン刑事は自身のパンツに手を突っ込む。

「えっ!?」
「失礼、エネルギー補給の時間だ」

 そして、その中からバナナを取り出して、皮を剥く。
 パンツの中から、出てきたバナナ。そんなワードが頭に思い浮かび、アインハルトの顔は思わず赤くなってしまう。一方、海パン刑事は中身の果肉を口に含んだ。
 何故、あんな所にバナナを入れていたのか。あんなのをパンツに入れたまま、戦っていたというのか。そして、何故あんな所から出した物を食べられるのか。
 有り得ない。断じて、有り得ない。アインハルトの中で疑問が広がる中、海パン刑事はバナナの皮をパンツの中に戻した。
 中身を食べ終えた彼は、肩と足首に付けた拳銃を地面に放り投げる。

「どうやら、お前に敬意を示して私も全てを出さなければならないようだ」
「えっ?」

 告げられた言葉に、アインハルトはぽかんとした顔を浮かべた。一方で海パン刑事は、パンツの両サイドに手をかける。
 そのまま一気に下ろして、それを放り投げた。

283 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:07:38.76 ID:S1JDnBtx

「あ……っ!」

 パンツの下から現れた物を見て、アインハルトは思わず目を見開いてしまう。海パン刑事が、正真正銘の全裸になったため。

「な、な、な、な、な、な、なっ……!?」

 それによって見える物は一つ存在した。股間から天に向かって伸びた棒、棒に濃く浮き上がる血管、二つの球が隠されている袋、それらの真上に生えた大量の縮れ毛。
 それは男ならば皆、一年間で一日たりとも見るのを欠かさないかもしれない存在。
 それは例えられるのに、ソーセージやマンモス等様々な物が使われる存在。
 それは男にとって、排泄などに使われる存在。
 それはメディアで映し出されたら、高確率でモザイクに隠されてしまう存在。
 それはアインハルトにとって知識で得ているが、実際に目で見た事がない存在。だから彼女は、絶句するしかない。

「なああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 そう、それは『男の証』である。海パン刑事の『男の証』を見て、アインハルトは凄まじい悲鳴を発した。
 そして、頬が真っ赤に染まってしまう。普段の彼女からは、まるで想像出来ないような様子だった。
 それでもアインハルトは、何とかして平静を保って海パン刑事を睨む。しかしその瞳からは、うっすらと涙が溢れていた。

「な、なんで裸になるんですかっ!?」
「何を言う、我々人間は生まれたときは裸だろう? それに動物は皆、裸で生きている……私は自然の摂理に従うまでだ」
「……ッ!」

 あまりにも突拍子も無く、常識から外れた理論にアインハルトは言葉を失う。
 海パン刑事は『男の証』を晒して、恥ずかしがる気配を見せない。むしろ、誇っているようにも感じられた。
 アインハルトは海パン刑事に対する羞恥と、先程自分が抱いた感情に関する失望を抱いてしまう。あんな男を、一瞬でも尊敬してしまった自分が恥ずかしかった。 
 だが怒りよりも、それを遙かに上回る動揺によって彼女の身体は動かない。そんな中、海パン刑事は得意げな表情で両腕を広げながら、足を進めた。
 一歩、また一歩と進むたびに『男の証』もブラブラと揺れながら近づいていき、アインハルトの瞳に大きく映ってしまう。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」
「恐れる事など何も無い。私は君と話し合いたいだけだ、友達になるために」
「なりたくありません!」

 アインハルトは全力で否定した事で、思わず構えを崩してしまう。
 海パン刑事はこれまでとは違って優しく語りかけるが、とても信じる事など出来ない。全裸になって『男の証』を晒す奴の言う事など、まず耳にする事自体が不可能だった。
 仮に真実だとしても、こんな男と友達になんてなれるわけがない。いや、なりたくなんてない。もしもなってしまったら、覇王の血が泣くに決まってる。
 これ以上、巨大な『男の証』を直視するなど、まだ11歳の彼女には到底耐える事など出来なかった。生理的な嫌悪感を感じてしまい、思わずアインハルトは両手で顔を隠してしまう。
 それが、致命的な隙となってしまった。

「今だっ!」
「えっ!?」

 その刹那、海パン刑事の鋭い声が聞こえる。同時に凄まじい敵意が襲いかかるのを感じ、アインハルトは顔を上げた。
 すると、陸上選手のように身体を低くしながら走る海パン刑事の姿が、彼女の瞳に飛び込んでくる。その速度は韋駄天のようで、瞬時に距離が縮んでいった。
 疾走する海パン刑事と目が合った瞬間、アインハルトの全身に悪寒が走る。このままだと何をされるか分からない。少なくとも生きて帰れるとは思えなかった。

「う、うわあぁぁぁぁっ!」

 アインハルトは絶叫に近い悲鳴をあげながら、勢いよく拳を振るう。しかし当たろうとした瞬間、海パン刑事は跳躍した。
 それを追うために、アインハルトは上空を見上げる。すると、海パン刑事の『男の証』が大きく見えてしまい、彼女は一瞬だけ固まった。
 それがまた、致命的な隙となってしまった。

284 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:10:58.08 ID:S1JDnBtx
 
「海パン・キイィィィィィィィクッ!」

 海パン刑事は大きく叫び、右足を向けながら急降下した。その勢いは凄まじく、硬直していた事もあって回避が間に合わない。
 迫り来る跳び蹴りを見て、アインハルトは両腕を交差させてガードの体勢を取った。海パン刑事の足は両腕に激突し、鈍い音を鳴らす。
 腕が引きちぎられてしまいそうな激痛を感じてしまい、アインハルトは悲鳴を漏らしながら、数歩だけ後退った。それほどまで、海パン刑事の一撃は重い。
 だが、止まっている暇など無かった。ここで動かなければ敗北に繋がってしまう。色んな意味で。
 アインハルトは何とか足元を安定させて、海パン刑事に振り向く。その間がまた、致命的な隙となってしまった。

「え――?」

 彼女の目に飛び込んできた物。それは、大の字となって高く跳び上がる海パン刑事の姿だった。
 そして、彼の股間が頭の高さまで昇っているのを、アインハルトは見てしまう。何事かと彼女は思った瞬間、顔面に『男の証』が激突した。
 グニュリ、と柔らかい物が潰れるような音を鳴らして。

「が、あ……ッ!?」

 海パン刑事の一撃を受けて、奇妙な呻き声と共にアインハルトは背中から倒れる。それは物理的衝撃は当然の事、彼女の精神にも多大なダメージを与えていた。
 アインハルトの視界を埋め尽くすのは、生暖かさを感じる人肌。そして、放たれる爽やかな香り。アインハルトは現状を認識していたが、認めたくなど無かった。
 自分の顔面が今、海パン刑事の『男の証』を受け止めている事を。

「む、むぅぅぅぅぅぅぅぅむぅぅぅ!」

 夜の闇を、言葉にならない絶叫が切り裂いた。いや、声を出す事など出来ない。
 彼女の唇は、海パン刑事の『男の証』によって塞がれていたからだ。象徴とも呼べる棒が口の中に入っていないのは、不幸中の幸いかもしれない。だが、彼女にとっては何の慰めにもならなかった。
 アインハルトは四肢をばたつかせて足掻くも、何も変わらない。海パン刑事の『男の証』が、彼女の顔面を圧迫するだけだった。

「んんんんんううぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 地面の上で、手足が何度も暴れる。何度も藻掻く。
 もはや、まだ生きているから戦えるなどという問題ではない。アインハルトの中に宿る、オンナノコとしての部分が断末魔の叫びをあげ続けているのだ。
 彼女はまだ性の知識に関しては、あまりにも乏しい。そんなアインハルトに対して、何の勉強も無しに『男の証』を顔にぶつけるなど、拷問以外の何者でもなかった。

「んんんんんんんぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 暴れている内に、次第にアインハルトは息が苦しくなるのを感じる。
 零距離に存在する『男の証』によって、呼吸の自由までもが奪われていた。『男の証』の進入を防ぐため、反射的に口を閉ざしたがこういったデメリットもある。
 だからといって今、呼吸をする事なんて出来るわけがない。もしそんな事をしてしまっては、海パン刑事の『男の証』が口の中に――
 アインハルトはその先から考えるのをやめた。それは想像しただけで吐き気を促したため。
 だがこのままではそこに到達するのも時間の問題。そんなのは、死んでも嫌だ!

「んんんむううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 アインハルトは錯乱しながらも、残る全ての魔力を右腕に込める。視界が『男の証』に遮られてはっきりしない中、拳を振り上げた。
 その直後、海パン刑事の『男の証』が目前から消えて、変わりに綺麗な星空が瞳に映る。
 アインハルトはすぐさま体を起こした。

「ぶはあぁっ! ……はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 ようやく取り戻せる酸素を精一杯吸っては吐く。しかしアインハルトの呼吸は、明らかに荒くなっていた。
 『男の証』が顔に激突する。それは、彼女にとってあまりにも残酷すぎた。
 しかし終わりの時が訪れたわけではない。彼女の聴覚は一つの足音を捉える。それでアインハルトは反射的にピクリ、と身体を震えさせた。
 恐る恐る、彼女はゆっくりと振り向く。そして見つけてしまった。
 未だ『男の証』を、堂々と晒している海パン刑事を。


285 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:16:04.16 ID:S1JDnBtx
「あ、あ、あ、あ、あ、あ……ああ、っ!?」
「まさか私のゴールデンクラッシュを受けても尚、抵抗出来るとは」
「い、嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 海パン刑事の言葉には驚愕が混ざっていたが、アインハルトにとってはどうでもよかった。この男がまるで獲物を狙う獰猛な肉食獣に見えて、彼女は更に絶望してしまう。
 そして、彼女の心は恐怖に埋め尽くされてしまい、瞳からポロポロと涙を流し出した。もはや、アインハルトの精神は限界をとっくに迎えている。
 こんな男にこれ以上関わりたくない。こんな男をこれ以上見たくない。
 いや違う。そもそも今は現実ですらないんだ。
 目の前で起こっているのは、ただの夢。目の前に立っている男は、ただの幻。目の前から聞こえる声は、ただの幻聴。
 アインハルトはついに、現実逃避にまで陥ってしまった。しかし辺りから感じる夜風の冷たさと、地べたの感覚がそれを否定する。
 それだけでなく、目の前から迫る海パン刑事の足音も、これが夢や幻などではない正真正銘の現実であると教えていた。

「や、やめて……! もう、やめて……! 来ないでっ……! 来ないでぇっ……!」
「必殺のゴールデンクラッシュを耐えるという事は、やはり君は正真正銘の戦士のようだ……!」
「ひっ、ひっ、ひっ、ひいぃぃぃぃぃぃっ!」

 恐怖で震えるアインハルトは泣きながら懇願するが、海パン刑事は笑いながら近づいてくる。『男の証』を前にした彼女は腰を抜かしてしまい、四肢で後退るしかできない。
 海パン刑事の言葉は耳に届いているが、その意味を受け取る余裕など既になかった。
 度重なるダメージによって、立ち上がる事が出来ない。もしも今、そんな事が出来たのならアインハルトは迷わずこの場から逃げていただろう。
 今の彼女は、誇り高き覇王の末裔ではない。理性も矜持も完全に壊され、恐怖に震える一人の少女。それほどまで、アインハルトの心は絶望に蝕まれていた。
 もっとも、一体誰がそんな彼女を責める事が出来るだろう。誰だって、今のアインハルトと同じ状況にまで追い込まれてしまったらこうなるしかない。
 もしも何も知らない人間がこの光景を見たら、全裸となった男が強姦魔として一人の少女を襲っているように見えるだろう。恐らく、百人中百人。
 しかし現実は、異世界より現れた刑事が通り魔を逮捕する為に戦っているという、全く正反対の出来事だった。

(助けて……助けて……助ケテ……タスケテ……たすけて……!)

 これまでたった一人で戦ってきたアインハルトが求めたのは、救いの手。だが、学園でも物静かな雰囲気を放ち、他者とのコミュニケーションは必要最低限程度しか取らなかった彼女を助ける者など、誰もいない。
 最早、アインハルトに待つのは絶望のみ。それを察した彼女の歯は、ガチガチと音を鳴らしていた。
 その時だった。どこからともなく冷たい風が吹いてくる。その直後、海パン刑事のネクタイが首から離れて宙を舞った。

「むっ!?」
「えっ!?」

 それに二人は、一瞬だけ驚愕する。
 アインハルト自身は気付く事は出来ないが、それは『男の証』を押しつける海パン刑事への抵抗の結果。放った拳自体は当たる事はなかったが、込められた魔力がネクタイの一部を引き裂いていた。
 それはアインハルトにとっては、あったからといってどうという事もないかもしれない。しかしそれが彼女をこの危機から救う事になった。

「い、嫌……」
「へっ?」
「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 凄まじい悲鳴が辺りに響き渡る。これまでとは違ってアインハルトではなく、海パン刑事が顔を真っ赤に染めていた。
 これまで感じられた強者の雰囲気から一転、まるで無理矢理服を脱がされた少女のように。

「オウ、マイガアアァァァァァァァァァァッ!」

 先程までネクタイがあった所を両腕で隠しながら、海パン刑事は脱兎の如く逃げ出した。そして、すぐに見えなくなる。
 あまりにも唐突な変貌に、アインハルトはぽかんと口を開けた。一瞬、何かの罠かと思ったが、彼女はようやく安堵する。
 そして、よろよろと手摺を支えに立ち上がった。


286 : 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/07/21(木) 09:19:27.69 ID:01qjHQDa
SHIEN

287 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:20:20.99 ID:S1JDnBtx

「よ、よかった……助かった」

 彼女は純粋な意味で、息も絶え絶えながらにそう呟く。
 助かったという事実に、生きているという事実に、素直に喜んでいた。今のアインハルトに、戦意や敗北に対する憤りなどは微塵もない。
 海パン刑事から開放される。たったそれだけが、アインハルトに生きている喜びを感じさせていた。
 不意に彼女は、首を横に動かす。そこには、夜空の輝きに照らされた海が広がっていた。

「綺麗……」

 普段は何とも思わなかったそれが、やけに美しく見える。まるで、無数の宝石が散らばっているかのように思えて。
 アインハルトは涙を拭わないまま潮風を浴び、海を眺め続ける。今日は夜なのに35℃を超えて結構暑いが、そうしていたかった。
 それが失敗である事を知らずに。

「ん……?」

 海の美しさに見入っていた彼女の瞳は、ある物を見つけた。少し離れていた場所で、不自然に海水が盛り上がっているのを。
 何だろうと思った瞬間、花火のようなな爆音が唐突に響いた。それによって盛大な水柱がそこから立ち上り、大量の海水を辺りに散らす。
 そして、地面も大きく揺れた。

「きゃあっ!」

 突然の衝撃に、惚けていたアインハルトは驚愕のあまりに尻餅をついてしまう。安心しきっていた事で油断してしまい、それに反応出来なかった。
 雨水のように降り注ぐ大量の海水に、彼女の体は濡れてしまう。一体何が起こっているのか、まるで分からない。
 更なる疑問が生まれようとした瞬間、揺れる海の中から一機の潜水艦が現れた。それがアインハルトの視界に現れると同時に、上部のハッチが勢いよく開く。
 すると、そこから虹色の光が溢れ出してきた。

「タ〜〜ララ〜〜ラ、ラ〜〜ララ〜〜!」
「!?」
「海を愛し、正義を守る! 誰が呼んだかポセイドン! タンスに入れるは、タンスにゴン!」

 辺りを照らす輝きの中に、回転している人型のシルエットが見える。回れば回るほど、人影の姿がはっきりと映ってきた。
 潜水艦から現れたのは、口髭と眉毛を生やし、まるでトドのように体型が丸い中年男性。
 茶色のリュックサック、上着だけの水兵服と赤いスカーフ、両足に履かれた白い靴下と下駄、見慣れない五角形のマークが刻まれた褌。
 いきなり現れた男の格好に、アインハルトはデジャブを感じてしまい、軽い悲鳴を漏らす。さっき逃げ出した海パン刑事のように、この男もまた『男の証』を隠す褌以外、ロクに服を着ていなかったから。

「タ〜〜リラ〜〜ララ〜〜ララ〜〜! 私は水上警察隊隊長、海野 土佐ェ門!」

 そして海パン刑事のように、堂々と宣言する。すると、海野 土佐ェ門と名乗った男の額に、イルカのようなマークが現れた。
 それだけでなく、禿げた頭の上にちょこんと小さなヤシの木。そして口にくわえられるように、パイプ煙草までもが出現する。
 現れた男、海野 土佐ェ門は海パン刑事と同じように、アインハルトの知らない世界で生きる特殊刑事課の一人。警視庁特殊刑事課会員番号5番に任命され、警視の階級を持つ。
 イルカの調教師、ガラス職人、漫画家の職業を経た末に、刑事になった彼にもコードネームが与えられていた。

「お茶目なヤシの木カットがトレードマークの、ドルフイイイイイィィィィィン刑事だっ!」

 決めポーズを取りながら、ドルフィン刑事は潜水艦の上で大きく名乗る。それを聞いて、呆然としていたアインハルトはハッとしながら、ようやく立ち上がった。
 しかしその表情は、完全に怯えで染まっている。ようやく海パン刑事がいなくなったと思ったら、また似たような変態が出てきた。
 もしもここでドルフィン刑事とか言う奴の相手をしていたら――考えるだけでも、鳥肌が立ってしまう。今度こそ、命を落としかねない。
 震えるアインハルトは、ほんの少しだけ後退る。その直後だった。

「ムーンライト・パワー! メエェェェイクッ! アァァァァァップ!」

 何処からともかく、ドスの効いた男の声が聞こえてくる。それに流れるように、奇妙な音楽も聞こえてきた。
 一昔前に放送された、魔法少女アニメの変身シーンに使われるような、とても軽快で控えめながらも華やかさを持つBGMが。


288 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:23:44.18 ID:S1JDnBtx

「えっ、えっ、えぇっ!?」

 度重なって起こる奇妙な出来事を前に、アインハルトは動揺しながらキョロキョロするしか出来ない。
 いきなり聞こえた声に、訳の分からない音楽。それがアインハルトの不安をより一層、煽る事になる。
 次の瞬間、上空より二つの気配を感じた。何をすればいいのか分からないまま、彼女は反射的に上を見上げる。
 二つの満月を背に現れたのは、筋骨隆々とした肉体をセーラー服で纏い、逞しい髭を生やした二人組の男。
 それもただのセーラー服ではない。1990年代に大ヒットを巻き起こし、今なお絶大な人気を誇る美少女戦士が変身した際に着るようなコスチュームを。
 そして、男達はアインハルトの前に着地した。

「華麗な変身、伊達じゃない! 月のエナジー背中に浴びて、異世界に巣くう悪を撃つ! 月よりの使者、月光刑事ッ!」

 三日月の模様があるフライトガールが被るような桃色の帽子、そこから流れる黒いツインテール、角張った金色の眼鏡、帽子と同じ色を持つリボンとスカート。
 彼もまた、ミッドチルダとは違う世界から現れた、正義を志す男だった。コスチュームチェンジをする事で、七つの特殊能力が使えるようになる特殊刑事の一人。
 聖羅 無々の名前を持つ、満月の時のみ出動する刑事。月光刑事。

「同じく、美茄子刑事!」

 そして彼の相棒である、黄色のスカートと緑色のリボンを胸に付けた男も、美茄子刑事の名を堂々と名乗った。

「「只今、見参ッ!」」

 満月の空を守る二人の男は、力強くポーズを決める。それは夜空に浮かぶ満月のような、圧倒的存在感を放っていた。
 同時に、何処から流れてくるのか分からないBGMも止まる。

「……」

 ヒュウゥゥゥゥゥ、と音を立てながら冷たい風が流れた。
 アインハルトはそれを、唖然とした表情で見るしかできない。だが彼女は、自分のするべき行動を瞬時に導き出す。
 突然現れた、三人組の変態。褌一丁が一人と、セーラー服が二人。多分、いや絶対に海パン刑事の仲間だ。
 本能でアインハルトはそう察する。そして、彼女の脳裏に蘇る光景。目前に『男の証』が大きく映り、顔面に勢いよく叩き付けられた。
 悪夢という言葉すらも生温い記憶に、アインハルトの瞳から涙が蘇っていく。

「……い、い、いっ、嫌ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そして彼女は背中を向けて、一目散に逃亡した。それも神風のように全力全開のスピードで。
 今の彼女に、ドルフィン刑事や月光刑事や美茄子刑事を潰すという選択肢を取るなど、死んでも出来なかった。
 もしここでそんな選択を取ったらどうなるか? 考えるまでもない、今度こそ命を落としてもおかしくない。
 その恐怖でアインハルトの生存本能が覚醒し、走る速度を一気に上昇させた。

「「「逃がさんぞっ! 通り魔!」」」
「ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 男達の厳つい声が聞こえる。ババババババ、と巨大なプロペラが回転するような音も聞こえる。
 それを聞いて彼女は振り向いたが、すぐに前を向いた。後ろから夜空を背に、巨大な戦闘機が夜空を背に現れたため。
 あれはずっと前に読んだとある本で見覚えがあった。確か異世界に存在する戦闘機で、月光とかいう名前だったはず。
 だから月光刑事なのか、と一瞬だけアインハルトは思った。しかしすぐに思考を振り切る。
 まるで何かが爆発したかのような轟音が、次々と後ろから聞こえてきたからだ。

「ぎええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 あまりにも奇妙な悲鳴をあげるアインハルトの顔は、既に涙でぐしょぐしょになっていた。
 彼女はひたすら走る、走る、走る。しかしあの爆発音は立て続けに聞こえる。一度爆発する度に「月に変わってお仕置きよ!」や「全力全開!」なんて月光刑事の言葉が聞こえてくる気がするが、まともに聞いてはいけない。
 話を聞く末に待っているのは、破滅だけ。

「助けてくださ〜〜い! おまわりさ〜〜ん!」

 やがてそんなアインハルトの悲鳴が、夜のミッドチルダに駆け巡ったそうだが真相は定かではない。


289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/21(木) 09:26:16.76 ID:01qjHQDa
紫煙

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/21(木) 09:27:37.99 ID:01qjHQDa
 

291 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:28:30.35 ID:S1JDnBtx

 ドルフィン刑事の乗る潜水艦から、数え切れないほどのミサイルが放たれる。月光刑事と美茄子刑事が乗る月光には変なレーザー砲が付けられていて、そこからまた変な光線が発射された。
 その標的は、緑色の長髪を揺らしながら逃げまどう一人の少女。だが攻撃の範囲はあまりにも凄まじく、周りの物を容赦なく破壊していた。
 まるでテロリストのように悪質に見えるが、その本質は刑事なので尚更タチが悪い。
 そんな地獄のような光景を、一人の男が呆れた表情で少し離れた位置から眺めていた。黒い角刈りの髪型、異様なまでに太いカモメのような形をした眉毛、ゴリラのように逞しいが妙に低い背丈、それを包む警察官の制服。
 亀有公園前派出所に勤務する警察官、両津勘吉巡査長は溜息を付いた。そこには、通り魔に対する同情も少しだけ込められている。

「よりにもよって史上最悪の変態集団に狙われるとは……なんて、運の悪い通り魔だ」

 ある日、いつものように適度にサボりながら適度に交番勤務をしていた時。特殊刑事課の連中が急に派出所に現れて、自分をこんな所に連れてきた。
 どうやらこのミッドチルダとか言う世界で、あのハイディ・E・S・イングヴァルトとかいう女が人々を襲っているようだから、その逮捕に無理矢理協力されられる。
 その割には、調査などはほとんど特殊刑事達が済ませたので、自分の出番はほとんどなかったが。

「……やれやれ、わしはこんな貧乏くじを引く役かよ! ちくしょう!」

 やがて両津は八つ当たりのように、道端の石ころを蹴る。それは数回地面を跳ねた後、草むらの中に消えていった。
 そして彼は、すぐそばで蹲っている全裸の男に振り向く。今まで何度も煮え湯を飲まされてきた変態、海パン刑事へと。
 その外観からは普段の偉そうな調子は微塵も感じられず、まるで全裸を見られた女子高生のように羞恥に染まっていた。それもそのはず、今の海パン刑事にはネクタイが巻かれていないため。
 どういう理由かは知らないが、海パン刑事はネクタイを取られると急に恥ずかしくなってしまうようだ。しかも『男の証』は決して隠そうとせず。
 だがこんな海パン刑事を人前に出すわけにもいかない。横暴で姑息な両津だが、一応最低限の良識は持っていた。

「ほら海パン、行くぞ!」
「いやあぁぁぁぁん! 離してよ、エッチ!」
「お前が言うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 胸を隠しながら蹲る海パン刑事の腕を引く両津は、鬼のような顔で怒鳴る。
 前々から思っていたが、こいつらは非常に鬱陶しい上に面倒くさい。おまけに何度、とんでもない目に遭わされたか。
 正直、特殊刑事課とまともに関わっては命がいくつあっても足りない。本音を言うなら、こんな状態の海パン刑事を引き連れるのも嫌だ。でも、ここでこいつを見捨てたら何をされるか分からない。
 だから無理矢理にでも、引き連れる必要があった。
 両津が海パン刑事を引っ張る中、胸ポケットから振動を感じる。彼はそこに収納されている携帯電話を取り出し、もう片方の手で通話に出た。

「もしもし?」
『もしもし両津さん、そっちはどうですか?』
「おお、ランスターか。今ドルフィンと月光達が、犯人を追っている所だ」

 向こうから聞こえるのは、この世界の案内をしてくれたティアナ・ランスター執務官。特殊刑事達なんかとは違って、まともな常識人だ。
 加えて、この世界に来てからイングヴァルトを捜索するとしても、自分をあんな奴らとは別行動をさせてくれたので、マリアのように良心溢れる人物でもある。



292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/21(木) 09:30:13.35 ID:01qjHQDa
こち亀支援

293 :覇王VS特殊刑事課三羽烏! ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 09:33:30.96 ID:S1JDnBtx
『そうですか、引き続き追跡を続けてください。私達もすぐに向かいますから』
「わかったよ」
『それと、両津さん……一つ言いたい事があるのですが』
「ん、何だよ?」
『えっと……人事には恵まれてないかもしれませんが、どうか気を落とさないでください。悪い事ばかりが続くわけじゃありませんから。それでは、失礼します』

 そう言い残すと、ティアナは電話を切った。それを聞いた両津は、何とも言えない気分となる。
 特殊刑事課の奴らによって、連れてこられた自分に同情してくれるのは結構だが、あの言葉からすると同僚と思われていた。だとすると、逆に悲しくなってくる。

「……とにかく、行くぞ。海パン」

 やがて両津は溜息を吐きながら、抵抗する海パン刑事を無理矢理引っ張ってその場を去っていった。
 その背中に、妙な哀愁を放って。


 余談だが、この日を境にハイディ・E・S・イングヴァルトが格闘技の有段者を襲撃するという報告は、一切入らなくなる。
 ちなみにアインハルト・ストラトスがこの後どうなったのかは、誰も知らない。



以上で、こちら葛飾区亀有公園前派出所とのクロス短編を終わりです。
今回の特殊刑事課はほぼアニメに準じた設定となっております。
もしもアニメが今でも続いていたのなら、飛鷹家や早矢達やハルを始めた大阪組
そしてクララやミレニアム刑事、ラジコン刑事とかもいつか出る機会があったかな〜 と思う日もあったり。
今度の実写映画も、見てみたいなぁ……


長々とスレを消費して、大変失礼しました。
それではまたいつか

294 :地獄の四兄弟 ◆LuuKRM2PEg :2011/07/21(木) 10:57:09.64 ID:S1JDnBtx
>>279>>280の間が少し抜け落ちておりました、失礼
収録時に、追加します

295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/21(木) 23:02:42.24 ID:tzevGgh5
覇王応答しろ、覇王、覇王ー!?
海パン刑事、ここで『それ』をやっては駄目だ!
18禁になってしまう、R-TYPEだ!(R指定的な意味で)

上記は冗談ですが、テレビでもガチで変態だったから困るw
四兄弟氏、色んな意味で乙GJです!

296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/21(木) 23:17:50.44 ID:+Gy95RY4
GJ!
まさかのこいつらwww

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 00:48:10.46 ID:umZaYHu1
リリカル・ブレイン八話を登録しました。

レイアウトは、あとで調節させていただきます。

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 03:28:02.34 ID:MSJK4MAi
気が付けば494KB。

299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 05:12:57.19 ID:YTtVaQ5c

覇王様はもうお嫁にいけない体にされてしまったな・・・

300 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 09:20:21.69 ID:0pN0cZZF
次スレを立てました
リリカルなのはクロスSSその118
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1311293938/l50

301 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 10:48:33.42 ID:ZBstdkn6
乙!

変態しか出てこない面白いと感じてしまう自分が悔しいww

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 17:10:26.10 ID:fWVimYYr
    : .: .   : .: .       ∧  : .: .     : .: .: .    : .: .: .       : .: .
    : .: .   : .: .        / }  : .: .     : .: .     : .: .: .       : .: .
    : .: .               { ノ___ / ̄,>  : .: .     : .: .: .      : .: .: .
    : .: .   : .: .    n/   o 。Y ̄    : .: .     : .: .        : .: .
    : .: .   : .: .    | Y   x ゙}      : .: .     : .: .       : .: .
      : .     : .       V´)、   .ノ      : .: .     : .: .       : .: .
    : .: .   : .: .    / /) {>マト、      : .: .     : .: .       : .: .: .
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     : .     : .   /  {       トー 、    、   /  /ヽハ : .\|       : .: .: .  次スレ乙です
    : .: .  _, イ /  |   /  |-┘ 、   `   , イヽ.,ィ \\: .: .: .      : .: .: .
      , イ´  ,  イ  .∧    __》、   `T ´i , ィ</\ ヽ` ー---  .... _: .: .
.     (    (  /  / ∧  / _,. -―ミヽ、!<´XXX/\ ` ー―--  .... _   `ヽ
   : .: .ヽ.   \  / /  V         \ZZZZZZZzz-、            `ヽ  \
        \   `ー-  _           ` ー- 、ZZZZZ>: .: .       V   ハ
    : .: .   \         ̄  ミ 、: . .    ` : . . \    \          i    }
    : .: .   |` ー ┬―┬‐┬-- 、\          、ト、     \      ,′ , .リ
.     : .     |   .! |  |  ! ヽ   \ ヽ、    : : . ヽ \ \   `  、   /  / ,′
.    : .: .    |  || .八   ! }/   ヽミニ=-' : : : : . .|.  \  ヽ    \/ ,.イ /
      : .     |  l l、   ヽ、 ノ ,ィ=======-、  、 |.   \-=ニ二_´_, ィ´ / /
    : .: .     ヽ. ハ\ \ /彡イ⌒ー-----'⌒ヽミ、 \      ヽ` 、\  ハ j/

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/22(金) 19:17:53.86 ID:gHVDrv9E
特殊刑事の方ドモデース
顔面にエロゲ的な仕打ちを受けているのに全くエロくないのはなぜだ

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2011/07/24(日) 10:06:07.12 ID:KbkouLIq
初期のヴィヴィオが同じ仕打ち受けたらマジで↓みたいな状況になるな

            ‥  __. -‐----、_ , '⌒ヽ
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     .: | |ナ  _|斗壬弍. :リ7尓Y:}:}.:.ト..:!
         .| |. .::' ̄|i/.ィ;;バ V  込!。レメ.:.} リ
        .| | i.i.:.::::代込ジ   ,~'゙  |ハリ  .:
      .:   | .ハ:.:ヾ.:.:ゝo`"゙   __,   ハ
          } :弋^ゞュ:ゝ    (;:ソ ,.兮{、
         ./ .:.:/T´:个 -  .._ /\イ))
        / .:.:ノ  \:.:.`\  リ\:.:. },ノ
     .: ./  .:/    入.:.:.ト}` ̄`ヽリ川'| :.      ‥
      / / :/\_ .::| ,)リ.}   工ニイ |       , -‐- 、
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